(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6024872
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】ディスクモータ及びそれを備えた電動作業機
(51)【国際特許分類】
H02K 9/06 20060101AFI20161107BHJP
H02K 5/20 20060101ALI20161107BHJP
A01D 34/68 20060101ALI20161107BHJP
A01D 34/78 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
H02K9/06 F
H02K5/20
A01D34/68 B
A01D34/78 Z
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-111041(P2012-111041)
(22)【出願日】2012年5月14日
(65)【公開番号】特開2013-240182(P2013-240182A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2015年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】日立工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】谷本 英之
【審査官】
三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−080603(JP,A)
【文献】
特開昭60−039336(JP,A)
【文献】
特開昭59−067847(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第02358523(GB,A)
【文献】
特開2005−210846(JP,A)
【文献】
特開2004−274907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/06
A01D 34/68
A01D 34/78
H02K 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクモータを備える電動作業機であって、前記ディスクモータは、
出力軸と、
前記出力軸に同軸的に固定されたコイルディスクと、
前記コイルディスクに電流を供給する電流供給部と、
前記コイルディスクに対向し、前記出力軸を周回するように配列された複数の磁石と、
前記複数の磁石を保持し、前記コイルディスクが内側に位置するケースと、
隣り合う磁石の間を通り、各々の磁石の前記出力軸側とその反対側を渡す磁石風路と、
前記磁石風路を通る気流を発生させる気流発生手段とを備え、
前記ケースは、前記出力軸の径方向で各々の磁石の前記出力軸側とその反対側にそれぞれ風路排出口と風路吸入口とを有し、
前記磁石風路により前記風路排出口と前記風路吸入口とが連通し、
前記風路排出口と前記風路吸入口がそれぞれ使用時に下方となる方向に開口する、ことを特徴とする電動作業機。
【請求項2】
前記風路排出口は各々の磁石の前記出力軸側に設けられ、前記気流発生手段は、前記出力軸に同軸的に設けられて前記出力軸の回転力で回転する遠心ファンであって前記風路排出口から前記ケース内の空気を引き込む、請求項1に記載の電動作業機。
【請求項3】
前記出力軸を支持するベアリングが前記ケースに設けられ、前記出力軸方向の座標に関して前記遠心ファンの羽根の可動範囲と前記ベアリングの存在範囲とが少なくとも部分的に重複している、請求項2に記載の電動作業機。
【請求項4】
前記ディスクモータは、前記遠心ファンの外周側を覆うファンカバーを備え、前記ファンカバーの側面のうち前記風路吸入口から離れた部分に、前記遠心ファンから外周側に抜ける風の排気部が設けられている、請求項2又は3に記載の電動作業機。
【請求項5】
前記ケースは、前記複数の磁石を保持するベース部と、前記ベース部に被せられたカバー部とを有し、前記ベース部に前記風路排出口と前記風路吸入口とが設けられている、請求項1から4のいずれか一項に記載の電動作業機。
【請求項6】
前記風路排出口と前記風路吸入口は前記複数の磁石の各々に対して別々に設けられ、前記出力軸方向から見て、前記出力軸と各々の磁石の中心とを結ぶ仮想直線上又はその近傍に前記風路排出口と前記風路吸入口の中心が位置する、請求項1から5のいずれか一項に記載の電動作業機。
【請求項7】
各々の磁石の側面の少なくとも一部が前記磁石風路の内面の一部を構成している請求項1から6のいずれか一項に記載の電動作業機。
【請求項8】
前記ディスクモータは、前記ケースの内側において前記磁石風路から前記コイルディスク側への風漏れを規制するガイドを備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の電動作業機。
【請求項9】
前記ガイドが前記磁石風路の内面の一部を構成している請求項8に記載の電動作業機。
【請求項10】
出力軸と、
前記出力軸に同軸的に固定されたコイルディスクと、
前記コイルディスクに電流を供給する電流供給部と、
前記コイルディスクに対向し、前記出力軸を周回するように配列された複数の磁石と、
前記複数の磁石を保持し、前記コイルディスクが内側に位置するケースと、
隣り合う磁石の間を通り、各々の磁石の前記出力軸側とその反対側を渡す磁石風路と、
前記磁石風路を通る気流を発生させる気流発生手段とを備え、
前記ケースは、各々の磁石の前記出力軸側とその反対側にそれぞれ風路排出口と風路吸入口とを有し、前記磁石風路により前記風路排出口と前記風路吸入口とが連通し、
前記気流発生手段は、前記出力軸に同軸的に設けられて前記出力軸の回転力で回転する遠心ファンであって前記風路排出口から前記ケース内の空気を引き込み、
前記遠心ファンの外周側を覆うファンカバーを備え、前記ファンカバーの側面のうち前記風路吸入口から離れた部分に、前記遠心ファンから外周側に抜ける風の排気部が設けられている、ディスクモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流の流れるコイルディスク及びそれに対向する複数の磁石を有して出力軸を回転駆動するディスクモータ及びそれを備えた電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のディスクモータは、出力軸と、出力軸に固定され略円板状であってコイルパターンが印刷されたコイルディスクと、コイルパターンと接続される整流子と、コイルパターンに対向するように配置される磁石と、整流子に電流を供給するためのブラシとから主に構成される。
【0003】
ディスクモータの回転数は、ブラシから供給される電圧、ディスクモータの電流、コイルディスクのコイルパターン、磁石の磁束、ブラシの数(極数)等により決定される。ブラシから供給される電圧及びディスクモータの電流が一定である場合には、コイルディスクのコイルパターン、磁石の磁束、ブラシの数を変更することによりディスクモータを所望の回転数に設定することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3847717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のディスクモータは、高出力を得るために導体パターンに流す運転電流を増加すると電気抵抗によって発熱が生じるため、磁石としてディスプロシウム等のレアメタルを多く含むネオジム磁石を使用しなければ、高熱により磁石が永久減磁してしまう。しかし、ディスプロシウムは非常な高価な材料であるため、多く用いると製品価格が高騰してしまうという課題があった。
【0006】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、磁石の放熱性を良好にして従来よりも磁石が減磁しにくい構成としたディスクモータ及びそれを備えた電動作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、
電動作業機である。この
電動作業機は、
ディスクモータを備える電動作業機であって、前記ディスクモータは、
出力軸と、
前記出力軸に同軸的に固定されたコイルディスクと、
前記コイルディスクに電流を供給する電流供給部と、
前記コイルディスクに対向し、前記出力軸を周回するように配列された複数の磁石と、
前記複数の磁石を保持し、前記コイルディスクが内側に位置するケースと、
隣り合う磁石の間を通り、各々の磁石の前記出力軸側とその反対側を渡す磁石風路と、
前記磁石風路を通る気流を発生させる気流発生手段とを備え
、
前記ケースは、前記出力軸の径方向で各々の磁石の前記出力軸側とその反対側にそれぞれ風路排出口と風路吸入口とを有し、
前記磁石風路により前記風路排出口と前記風路吸入口とが連通し、
前記風路排出口と前記風路吸入口がそれぞれ使用時に下方となる方向に開口する、ことを特徴とする。
【0009】
前記風路排出口は各々の磁石の前記出力軸側に設けられ、前記気流発生手段は、前記出力軸に同軸的に設けられて前記出力軸の回転力で回転する遠心ファンであって前記風路排出口から
前記ケース内の空気を引き込んでもよい。
【0010】
前記出力軸を支持するベアリングが前記ケースに設けられ、前記出力軸方向の座標に関して前記遠心ファンの羽根の可動範囲と前記ベアリングの存在範囲とが少なくとも部分的に重複していてもよい。
【0011】
前記ディスクモータは、前記遠心ファンの外周側を覆うファンカバーを備え、前記ファンカバーの側面のうち前記風路吸入口から離れた部分に、前記遠心ファンから外周側に抜ける風の排気部が設けられていてもよい。
【0013】
前記ケースは、前記複数の磁石を保持するベース部と、前記ベース部に被せられたカバー部とを有し、前記ベース部に前記風路排出口と前記風路吸入口とが設けられていてもよい。
【0014】
前記風路排出口と前記風路吸入口は前記複数の磁石の各々に対して別々に設けられ、前記出力軸方向から見て、前記出力軸と各々の磁石の中心とを結ぶ仮想直線上又はその近傍に前記風路排出口と前記風路吸入口の中心が位置してもよい。
【0015】
各々の磁石の側面の少なくとも一部が前記磁石風路の内面の一部を構成していてもよい。
【0016】
前記ディスクモータは、前記ケースの内側において前記磁石風路から前記コイルディスク側への風漏れを規制するガイドを備えてもよい。
【0017】
前記ガイドが前記磁石風路の内面の一部を構成していてもよい。
【0018】
本発明の別の態様は、
ディスクモータである。
このディスクモータは、
出力軸と、
前記出力軸に同軸的に固定されたコイルディスクと、
前記コイルディスクに電流を供給する電流供給部と、
前記コイルディスクに対向し、前記出力軸を周回するように配列された複数の磁石と、
前記複数の磁石を保持し、前記コイルディスクが内側に位置するケースと、
隣り合う磁石の間を通り、各々の磁石の前記出力軸側とその反対側を渡す磁石風路と、
前記磁石風路を通る気流を発生させる気流発生手段とを備え、
前記ケースは、各々の磁石の前記出力軸側とその反対側にそれぞれ風路排出口と風路吸入口とを有し、前記磁石風路により前記風路排出口と前記風路吸入口とが連通し、
前記気流発生手段は、前記出力軸に同軸的に設けられて前記出力軸の回転力で回転する遠心ファンであって前記風路排出口から前記ケース内の空気を引き込み、
前記遠心ファンの外周側を覆うファンカバーを備え、前記ファンカバーの側面のうち前記風路吸入口から離れた部分に、前記遠心ファンから外周側に抜ける風の排気部が設けられている。
【0019】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、隣り合う磁石の間を通り、各々の磁石の出力軸側とその反対側を渡す磁石風路と、前記磁石風路を通る気流を発生させる気流発生手段とを備えるため、磁石の放熱性を良好にして従来よりも磁石が減磁しにくい構成とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる刈払い機1の斜視図。
【
図2A】
図1に示す刈払い機1の駆動部6の断面図。
【
図2B】駆動部6における隣り合う磁石41及びその近傍の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態にかかる刈払い機1の斜視図である。電動作業機の例示である刈払い機1は、電源部3と、パイプ部4と、ハンドル部5と、駆動部6と、刈刃7とを備える。
【0024】
電源部3は、電源たるバッテリ301を装着可能に有する。パイプ部4は、電源部3と駆動部6とを機械的に接続する(連結する)。また、パイプ部4の内部には、電源部3と駆動部6とを電気的に接続する配線(図示せず)が挿通されている。この配線により、電源部3から駆動部6に電力が供給される。駆動部6は、ヘッドハウジング61の内部にディスクモータを収容しており、電源部3からの供給電力により刈刃7を回転駆動する。ディスクモータの構成は後述する。
【0025】
ハンドル部5は、パイプ部4の中間、すなわち電源部3と駆動部6との間に取り付け固定されている。ハンドル部5は、一対のアーム51の先端にそれぞれグリップ52を取り付けてなる。一方のグリップ52には、スロットル53が設けられている。作業者は、スロットル53を操作することにより、駆動部6への供給電力を調整可能、すなわち、刈刃7の回転数を調整可能である。刈刃7は、略円板状で、その周縁に鋸刃が形成されている。また、刈刃7中心には後述するディスクモータの出力軸に装着される孔(図には表れず)が形成されている。
【0026】
図2Aは、
図1に示す刈払い機1の駆動部6の断面図である。なお、
図2Aに示すように、出力軸31の延出方向を上下方向と定義する。駆動部6は、ケース61の内部にディスクモータ80を有する。ケース61は、例えばアルミ等の金属製であり、カバー部62及びベース部63を嵌合しネジ止め等で一体化してなる。ディスクモータ80は、ステータ81と、ロータ82と、一対のブラシ83とを有する。一対のブラシ83は、ディスクモータ80の回転軸(出力軸31)について対称に設けられ、カバー部62のブラシホルダ65に支持される。各ブラシ83は、下面が後述する整流子ディスク35上の銅等の導体の整流子パターンと当接するように、バネ83Aによって整流子ディスク35側(下側)に付勢される。ブラシ83は、
図1の電源部3に接続されており、ロータ82の後述するコイルパターンに電流を供給する電流供給部として機能する。
【0027】
ステータ81は、磁束発生部としての磁石41と、軟磁性体である上ヨーク42及び下ヨーク43とを有する。リング状の上ヨーク42は、カバー部62の下面に例えば不図示のネジで固定される。上ヨーク42と略同径のリング状の下ヨーク43は、ベース部63の下面に形成されたリング状溝部631内に例えばネジで固定される。磁石41は、ベース部63の上面に形成された穴部633内に嵌め込み固定される。なお、穴部633はベース部63に貫通孔として形成されるが、下ヨーク43が穴部633の下側を塞ぐため、下ヨーク43の上面の一部が穴部633の底面を成している。穴部633の深さ(上部開口から下ヨーク43の上面までの深さ)は、磁石41の高さよりも小さい。このため、磁石41の側面の一部は穴部633の開口から上に出てケース61内で露出している。なお、穴部633をベース部63に非貫通孔として形成してもよく、この場合も、磁石41の側面の一部が穴部633の開口から上に出てケース61内で露出するように穴部633の深さを設定する。
【0028】
図3は、
図2Aに示すステータ81の模式的平面図である。本図に示すように、例えば円板形状の磁石41は、例えば10個、円周上に等角度ピッチで並んで配置される(磁石41を収容する
図2Aの穴部633も円周上に同数並んで存在する)。円周の中心は、ディスクモータ80の回転中心と略一致する。隣り合う磁石41は、上面の磁極が相互に異なる。磁石41としては、ネオジム磁石等の希土類磁石が好ましい。上ヨーク42及び下ヨーク43は、後述するロータ82のコイルパターンに印加される磁束密度を高めるものである。
【0029】
図2Aに示すように、ロータ82は、出力軸31(ロータシャフト)と、整流子ディスク35と、コイル部36と、支持部材37とを有する。出力軸31は、カバー部62に固定された上側軸受け311(ベアリング)及びベース部63に固定された下側軸受け312(ベアリング)によって回転自在に支持される。出力軸31の下方側端部には雄ネジ31aが形成されており、留め具8によって刈刃7が固定される。整流子ディスク35の上面は、ブラシ83の摺動面である。
図1に示す電源部3からブラシ83及び整流子ディスク35を介してコイル部36に電流が供給される。
【0030】
図4は、
図2Aに示すロータ82の側面図である。本図に示すように、出力軸31に同軸的に固定された支持部材37は、略円筒形状の円筒部37Aと、略円板形状のボス37Bとから構成される。ボス37Bは、円筒部37Aの側面から出力軸31と垂直に外側に突出する。軸方向視でボス37Bと同形状の絶縁板38,39が、同じく同形状のシート状の接着層502,503(絶縁性)によってボス37Bの上下面に接着固定される。絶縁板38の上面には、シート状の接着層501(絶縁性)を介して整流子ディスク35が接着固定される。絶縁板39の下面には、エポキシ樹脂などの接着性の部材であるシート状の接着層505(絶縁性)を介してコイル部36が接着固定される。
【0031】
コイル部36は、第1コイルディスク361〜第4コイルディスク364をシート状の接着層507(絶縁性)を挟んで積層してなる。シート状の接着層507は、各コイルディスクと軸方向視で同形状であり、各コイルディスクの表面略全体を覆う。第1コイルディスク361〜第4コイルディスク364は、ボス37Bよりも大径であり、それぞれ両面にコイルパターンが形成されている。整流子ディスク35はボス37Bとほぼ同外径であり、第1コイルディスク361に接着されている。
【0032】
次に、磁石41を冷却する風路の構成について
図2A、
図2B、
図5〜
図7を参照して説明する。
【0033】
ベース部63には、磁石41の外周側に風路吸入口9、内周側に風路排出口10を設けている。風路吸入口9及び風路排出口10は共に外部に対して下方に開口する。
図6に示すように、風路排出口10と風路吸入口9は複数の磁石41の各々に対して別々に設けられる。出力軸31の軸方向から見て、出力軸31と各々の磁石41の中心とを結ぶ仮想直線131上又はその近傍に風路排出口10と風路吸入口9の中心が位置する。
【0034】
磁石41とコイル部36の間にはガイド11(保護板)が設けられる。ガイド11は、ケース61の内側において磁石風路12から上方(コイル部36側)への風漏れを規制する。ガイド11は、
図7に示すように、中央に孔部111を有する例えば薄い円板形状であり、電気的絶縁性の高い例えば樹脂材料から成る。ガイド11は、剛性のある板状であってもよいし可撓性のある板状(シート状)であってもよい。
図2Aに示すように、ガイド11の外周部上面は全周に渡ってカバー部62の外周凸部62aと接触し、ガイド11の外周部下面は風路吸入口9に臨む部分を除いて全周に渡ってベース部63の外周凸部63aと接触し、またガイド11の内周部下面は全周に渡ってベース部63の内周凸部63bと接触している。さらに、ガイド11は、磁石41の上面と接触ないし近接する。
【0035】
図2Bに示すように、隣り合う磁石41の間は、磁石風路12となっている。磁石風路12は、ベース風路部63cの上面(ベース部63の内底面)と、ガイド11の下面と、磁石41の側面のうちベース部63の内底面から上に出ている部分とにより規定される。磁石風路12の一端(入り口)は風路吸入口9であり、他端(出口)は風路排出口10である。
【0036】
図2Aに示すように、出力軸31には、遠心力で冷却風を外周側に送り出す遠心ファンとしての冷却ファン14(気流発生手段の例示)が出力軸31の回転力により回転可能に(例えば出力軸31と一体に回転可能に)取り付けられている。出力軸31の軸方向の座標に関して冷却ファン14の羽根の可動範囲と前述の下側軸受け312の存在範囲とが少なくとも部分的に重複している。冷却ファン14の外周側には、ファンカバー16がベース部63の下部に設置(例えばネジ止め固定)されている。ファンカバー16は、風路吸入口9よりも出力軸31側となる位置においてベース部63の下面から下方に立ち上がる例えば円筒側面形状であり、下端縁が刈刃7に近接対向するとともに、下端縁の一部が凹状に切り欠かれて排気部15が設けられている。排気部15は出力軸31回りで複数設けられる。なお、排気部15はファンカバー16の下端縁近傍に貫通孔として形成されてもよい。
【0037】
上記構成によって、冷却風13は、風路吸入口9からケース61内部に入り、磁石風路12を通って磁石41を効率よく冷却し、風路排出口10を通ってケース61から排出され、冷却ファン14の遠心力によってファンカバー16の排気部15を通って外周側(大気中)に排出される。
【0038】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0039】
(1) 冷却ファン14で発生する多量の風量を磁石41に直接吹き当て、磁石41を効率良く冷却可能である。すなわち、磁石41の放熱性を良好にして従来よりも磁石41が減磁しにくい構成のディスクモータとなり、高価なディスプロシウムを用いない安価な磁石が使用可能なため、ディスクモータ及びそれを用いた刈払い機1(電動作業機)を安価に実現できる。
【0040】
(2) 磁石風路12はガイド11によりコイル部36等の発熱源と仕切られているため、低温の冷却風を磁石風路12に直接当てることができ、冷却効率が高い。
【0041】
(3) 風路排出口10と風路吸入口9は複数の磁石41の各々に対して別々に設けられ、かつ出力軸31の軸方向から見て出力軸31と各々の磁石41の中心とを結ぶ仮想直線131上又はその近傍に風路排出口10と風路吸入口9の中心が位置するため、磁石41の上側の側面(磁石風路12の内面の一部を成す側面)全周に効率良く冷却風を当てることが可能で、冷却効率が高い。
【0042】
(4) 風路吸入口9及び風路排出口10が共に外部に対して下方に開口しているため、水滴やゴミなどが磁石風路12に侵入し難くなる。このため、高効率の磁石冷却機能を有しながら防塵防滴機能も持たせることができる。
【0043】
(5) コイル部36と磁石41の間にガイド11が備えられているため、冷却風に水滴、ゴミが混じっていたとしてもガイド11が保護板として機能して水滴、ゴミはコイル部36には付着しない。このため、高効率の磁石冷却機能を有しながら防塵防滴機能も持たせることができる。
【0044】
(6) 出力軸31に冷却ファン14が備えられているため、強制的に冷却風を発生させることができ、自然には冷却風が得られない環境下でも磁石41を効率的に冷却できる。
【0045】
(7) 出力軸31の軸方向の座標に関して冷却ファン14の羽根の可動範囲と下側軸受け312の存在範囲とが少なくとも部分的に重複しているため、下側軸受け312の側方の空間を有効に使うことができて冷却ファン14の設置スペース効率が良い。
【0046】
(8) ファンカバー16の下端縁又はその近傍に排気部15が設けられるため、排気部15はファンカバー16の側面の中では風路吸入口9(ファンカバー16の上端部の外側に位置する)から離れた位置となり、排気部15から排出される温風は風路吸入口9に戻りにくく、冷却効率の悪化を防ぐことができる。
【0047】
(9) ファンカバー16により、冷却ファン14にゴミが絡まることが防止でき、冷却ファン14の故障が発生しにくい。
【0048】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素には請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0049】
風路吸入口9はカバー部62に設けられてもよい。
【0050】
ファンカバー16は、有底筒形状であってもよい。この場合、ファンカバー16の底部と刈刃7とが近接対向する。
【0051】
磁石41の個数とその配置角度ピッチは、要求される性能やコストに応じて適宜設定可能である。
【0052】
電動作業機は、実施の形態で示した刈払機のほか、ディスクモータを搭載したベルトサンダーやロータリバンドソー等、ディスクモータによる回転駆動部を有する種々の電動工具であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1・・刈払い機、10・・風路排出口、11・・ガイド、12・・磁石風路、13・・冷却風、14・・冷却ファン、15・・排気部、16・・ファンカバー、3・・電源部、301・・バッテリ、31・・出力軸、311・・上側軸受け、312・・下側軸受け、31a・・雄ネジ、35・・整流子ディスク、36・・コイル部、361・・第1コイルディスク、362・・第2コイルディスク、363・・第3コイルディスク、364・・第4コイルディスク、37・・支持部材、37A・・円筒部、37B・・ボス、4・・パイプ部、41・・磁石、42・・上ヨーク、43・・下ヨーク、5・・ハンドル部、507・・接着層、51・・アーム、52・・グリップ、53・・スロットル、6・・駆動部、61・・ケース、62・・カバー部、63・・ベース部、63a・・外周凸部、63b・・内周凸部、63c・・ベース風路部、631・・リング状溝部、633・・穴部、65・・ブラシホルダ、7・・刈刃、8・・止め具、80・・ディスクモータ、81・・ステータ、82・・ロータ、83・・ブラシ、83A・・バネ、9・・風路吸入口