特許第6024876号(P6024876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6024876
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】ノイズ除去装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/21 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   H04N5/21 B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-135155(P2012-135155)
(22)【出願日】2012年6月14日
(65)【公開番号】特開2013-229841(P2013-229841A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年1月28日
(31)【優先権主張番号】特願2012-69318(P2012-69318)
(32)【優先日】2012年3月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 克幸
【審査官】 西谷 憲人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−029826(JP,A)
【文献】 特開平07−007639(JP,A)
【文献】 特開2010−004266(JP,A)
【文献】 特開平01−194581(JP,A)
【文献】 特開昭63−157574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/14−5/217
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力映像信号Youtを1画面分遅延した遅延映像信号Ypreと入力映像信号Ynowとの差N1を生成する第1減算器と、
前記第1減算器の出力信号の振幅を動き信号MVによって調整する振幅調整部と、
前記振幅調整部の出力N2を入力映像信号Ynowから減算する第2減算器と、
前記第2減算器の出力映像信号Youtを1画面分遅延した遅延映像信号Ypreを生成するフレームメモリと、
1画面を構成する各画素について遅延映像信号Ypreに対する入力映像信号Ynowの変化量を算出し、前記変化量が所定閾値未満の各画素については、前記動き信号MVとして、その所定閾値未満の全ての画素のうち所定割合の画素が動きとする信号を生成する動き検出部とを備え、
前記動き検出部は、
1画面を構成する各画素について、前記遅延映像信号Ypreに対する入力映像信号Ynowの変化量が第1閾値TH1以上のとき、動きとする動き信号M1を生成する第1動き信号生成部と、
1画面を構成する各画素について、前記遅延映像信号Ypreに対する入力映像信号Ynowの変化量が前記第1閾値TH1未満の第2閾値TH2以上のとき、動きとする動き信号M2を生成する第2動き信号生成部と、
前記動き信号M1が動きでないことを示す全ての画素のうち前記所定割合の画素について、動き信号M2が動きと示すように、前記第2閾値TH2を調整する閾値制御部とを備え、
前記動き信号M2を前記動き信号MVとする
ことを特徴とするノイズ除去装置。
【請求項2】
出力映像信号Youtを1画面分遅延した遅延映像信号Ypreと入力映像信号Ynowとの差N1を生成する第1減算器と、
前記第1減算器の出力信号の振幅を動き信号MVによって調整する振幅調整部と、
前記振幅調整部の出力N2を入力映像信号Ynowから減算する第2減算器と、
前記第2減算器の出力映像信号Youtを1画面分遅延した遅延映像信号Ypreを生成するフレームメモリと、
1画面を構成する各画素について遅延映像信号Ypreに対する入力映像信号Ynowの変化量を算出し、前記変化量が所定閾値未満の各画素については、前記動き信号MVとして、その所定閾値未満の全ての画素のうち所定割合の画素が動きとする信号を生成する動き検出部とを備え、
前記動き検出部は、
1画面を構成する各画素について、前記遅延映像信号Ypreに対する入力映像信号Ynowの変化量が第1閾値TH1以上のとき、動きとする動き信号M1を生成する第1動き信号生成部と、
前記動き信号M1が動きではないことを示すとき、ランダムに前記所定割合以上を動きとする動き信号M3を生成する疑似動き信号生成部と、
前記動き信号M1及び前記動き信号M3の何れか一方が動きを示すとき、動きとする前記動き信号MVを生成する動き信号混合部とを備える
ことを特徴とするノイズ除去装置。
【請求項3】
出力映像信号Youtを1画面分遅延した遅延映像信号Ypreと入力映像信号Ynowとの差N1を生成する第1減算器と、
前記第1減算器の出力信号の振幅を動き信号MVによって調整する振幅調整部と、
前記振幅調整部の出力N2を入力映像信号Ynowから減算する第2減算器と、
前記第2減算器の出力映像信号Youtを1画面分遅延した遅延映像信号Ypreを生成するフレームメモリと、
1画面を構成する各画素について遅延映像信号Ypreに対する入力映像信号Ynowの変化量を算出し、前記変化量が所定閾値未満の各画素については、前記動き信号MVとして、その所定閾値未満の全ての画素のうち所定割合の画素が動きとする信号を生成する動き検出部とを備え、
前記動き検出部は、
ランダムノイズN3を生成するノイズ生成部と、
1画面を構成する各画素について、前記遅延映像信号Ypreに対する入力映像信号Ynowの変化量が第1閾値TH1以上のとき、又は、前記遅延映像信号Ypreに対する入力映像信号Ynowの変化量に前記ランダムノイズN3を加算した値が前記第1閾値TH1以上のとき、動きとする動き信号MVを生成する動き信号生成部とを備える
ことを特徴とするノイズ除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル信号処理による映像信号のノイズを軽減するノイズ除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、映像信号のノイズを軽減するために、様々な方法が存在するが、その手段の1つとして時間軸方向にフィルタ処理を行う方法がある。ここでノイズとはランダムに発生するノイズを意味する。そのフィルタ処理は、例えば、出力映像信号Youtを1画面分遅らせた遅延映像信号Ypreと入力映像信号Ynowに対して、
Yout=Ynow+K×(Ypre−Ynow)
の演算を行う。この演算では、時間軸方向のIIRフィルタによる帯域制限フィルタが実現されており、時間軸方向に帯域制限がかかり、静止画であれば、時間軸方向のノイズが減衰する。ここで、Kは0から1の間の値をとるフィルタ係数である。そして、動画のときはこのフィルタをかけると残像が生じるため、動き検出を行って、動きがあるときは前記IIRフィルタを切ることが行われている。動きの有無の判断については、入力映像信号Ynowと遅延映像信号Ypreとの差が大きいときには動画、小さいときには静止画とする。
【0003】
しかしながら、ノイズの影響で動き検出が間違った判定をし、フィルタをかけたくないときにフィルタがかかり、残像が生じることがある。このため、従来、特許文献1に開示の技術では、動き量に応じて適応的にノイズを除去することにより、動きのある部分で生じる残像を抑えるようにしている。
【0004】
ここで、特許文献1の動作を特許文献1に示されているノイズ除去装置の構成を図9に、同図内の係数生成手段の特性を図10に示し、この2つの図を併用して、その動作の概要を説明する。
【0005】
図9において、入力映像信号Ynowからノイズ除去された出力映像信号Youtを画像遅延部905にて1画面分遅延した遅延映像信号Ypreを生成する。そして、減算器901で入力映像信号Ynowから遅延映像信号Ypreを減算して生成した信号D1に、乗算器903にて係数生成部902で生成した減衰係数Kを乗算して信号D3を生成する。そして、信号D3を入力映像信号Ynowから減算して、ノイズ除去された出力映像信号Youtを得る。ここで、係数生成部902では、動き検出部906にて入力映像信号Ynowと遅延映像信号Ypreそれぞれの周辺画素の平均値の差分の絶対値に対して、図10に示す特性にて動き信号である減衰係数Kを生成する。これにより、信号D1が差分の絶対値A以下のときが静止、差分の絶対値Aから差分の絶対値Bの間が、静止と動きが不明瞭な区間、差分の絶対値B以上が動きと判断され、静止と動きの判定が不明瞭な区間で、ノイズがある程度減衰するので、残像を減らすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−29826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、映像によっては、コントラストが極めて小さく動いてもほぼ静止と判定される(図10のA付近)映像が存在する。ほぼ静止と判断されるために、映像が動いても、静止しているときの処理、すなわち時間軸方向の帯域制限フィルタがかかるため、残像が残ってしまうのである。
【0008】
ここで、残像が残る様子を図12を用いて説明する。図12(a)の波形が次のフレームでは同図(b)の波形になり、更にその次のフレームで同図(b)の波形から同図(d)の波形になったとする。フィルタのフィードバック係数Kを0.5とすると、Yout=Ynow+K×(Ypre−Ynow)であるので、出力映像信号Youtは同図(c)の波形となる。同様に、その次のフレームでは、波形が同図(c)の波形である映像信号Ypreと、波形が同図(d)である入力映像信号Ynowとの演算になるので、出力映像信号Youtは同図(e)の波形となる。同図(c)の波形や同図(e)の波形の点線で示す部分が残像になる。実際に係数Kは0.5より小さく、残像部分は小さくなるが、映像によってはこの小さい振幅の信号が目立ち、映像の品位を損なうことがある。例えば、図11に示すように、同図(a−1)の画像が次のフレームで同図(a−2)となるとき、明るい灰色の四角と背景の黒の差は大きいため、同図(b)の斜線部のように動きが検出されるが、明るい灰色の四角の中の少し暗い灰色の丸は明るい灰色との差があまりないため、動きが検出されない。その結果、同図(c)のように、少し暗い灰色の丸の残像が生じる。尚、図11では丸の形状が区別できるように、暗さを強調している。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、その目的は、低いコントラストの映像が動いたときでも、時間軸方向の帯域制限フィルタによるノイズ除去の効果を有効に発揮しつつ、残像を効果的に減らすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、請求項1〜3記載の発明のノイズ除去装置は、出力映像信号Youtを1画面分遅延した遅延映像信号Ypreと入力映像信号Ynowとの差N1を生成する第1減算器と、前記第1減算器の出力信号の振幅を動き信号MVによって調整する振幅調整部と、前記振幅調整部の出力N2を映像信号Ynowから減算する第2減算器と、前記第2減算器の出力映像信号Youtを1画面分遅延した遅延映像信号Ypreを生成するフレームメモリと、1画面を構成する各画素について遅延映像信号Ypreに対する入力映像信号Ynowの変化量を算出し、前記変化量が所定閾値未満の各画素については、前記動き信号MVとして、その所定閾値未満の全ての画素のうち所定割合の画素が動きとする信号を生成する動き検出部とを備える構成を前提とする。
【0011】
そして、請求項1記載の発明は、前記動き検出部を限定して、1画面を構成する各画素について、前記遅延映像信号Ypreに対する入力映像信号Ynowの変化量が第1閾値TH1以上のとき、動きとする動き信号M1を生成する第1動き信号生成部と、1画面を構成する各画素について、前記遅延映像信号Ypreに対する入力映像信号Ynowの変化量が前記第1閾値TH1未満の第2閾値TH2以上のとき、動きとする動き信号M2を生成する第2動き信号生成部と、前記動き信号M1が動きでないことを示す全ての画素のうち前記所定割合の画素について、動き信号M2が動きと示すように、前記第2閾値TH2を調整する閾値制御部とを備え、前記動き信号M2を前記動き信号MVとすることを特徴とする。
【0012】
更に、請求項2記載の発明は、前記動き検出部を別の構成に限定して、1画面を構成する各画素について、前記遅延映像信号Ypreに対する入力映像信号Ynowの変化量が第1閾値TH1以上のとき、動きとする動き信号M1を生成する第1動き信号生成部と、前記動き信号M1が動きではないことを示すとき、ランダムに前記所定割合以上を動きとする動き信号M3を生成する疑似動き信号生成部と、前記動き信号M1及び前記動き信号M3の何れか一方が動きを示すとき、動きとする前記動き信号MVを生成する動き信号混合部とを備えることを特徴とする。
【0013】
加えて、請求項3記載の発明は、前記動き検出部を更に別の構成に限定して、ランダムノイズN3を生成するノイズ生成部と、1画面を構成する各画素について、前記遅延映像信号Ypreに対する入力映像信号Ynowの変化量が第1閾値TH1以上のとき、又は、前記遅延映像信号Ypreに対する入力映像信号Ynowの変化量に前記ランダムノイズN3を加算した値が前記第1閾値TH1以上のとき、動きとする動き信号MVを生成する動き信号生成部とを備えることを特徴とする。
【0014】
従って、請求項1〜3記載の発明では、遅延映像信号Ypreに対する入力映像信号Ynowの変化量が所定閾値以上の各画素、即ち、動き検出と明瞭に判定できない画素では、そのような動きと静止との判定が不明瞭な総画素数のうち所定割合(例えば50%)の画素については動きと判定される。そして、1画像毎にこの動き判定が繰り返し行われると、連続で静止と判定される画素の個数は指数関数的に減少するので、低いコントラストの映像が動いた際にも、残像が急激に減少する。
【0015】
しかも、振幅調整部は、残像を低減するように振幅値(従来のフィルタ係数値)を小値に設定する必要がなく、その振幅値を比較的大値に設定できるので、時間軸方向の帯域制限フィルタが有効にかかって、効果的なノイズ制限効果が得られる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明のノイズ除去装置は、低いコントラストの映像が動いた際にも、時間軸方向の帯域制限フィルタによるノイズ除去の効果を有効に発揮しつつ、残像を効果的に低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態のノイズ除去装置のブロック構成図である。
図2】(a−1)は遅延映像信号Ypreの画像を示す図、同図(a−2)は入力映像信号Ynowの画像を示す図、同図(b−1)は1画面中で動き信号M1が動きである領域を示す図、同図(b−2)は1画面中で動き信号M1が静止である領域を示す図、同図(c)は残像が低減されている様子を示す図である。
図3】同実施形態のノイズの振幅調整の特性の図である。
図4】本発明の第2の実施形態のノイズ除去装置のブロック構成図である。
図5】同実施形態の疑似動き信号の発生確率の一例を示す図である。
図6】同疑似動き信号発生確率の他の一例を示す図である。
図7】本発明の第3の実施形態のノイズ除去装置のブロック構成図である。
図8】同実施形態でのノイズ減衰係数の特性図である。
図9】従来のノイズ除去装置のブロック構成図である。
図10】同従来のノイズ減衰係数の特性図である。
図11】(a−1)は遅延映像信号Ypreの画像を示す図、同図(a−2)は入力映像信号Ynowの画像を示す図、同図(b)は1画面中で動き検出がされた領域を示す図、同図(c)は従来技術において残像が残る様子を示す図である。
図12】(a)は現フレームの波形の一例を示す図、同図(b)は次フレームの波形の一例を示す図、同図(c)は次フレームでのノイズ除去後の映像信号Youtの波形を示す図、同図(d)は次々フレームの波形の一例を示す図、同図(e)は次々フレームでのノイズ除去後の映像信号Youtの波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
(第1実施形態)
<ノイズ除去装置1の構成>
図1に、本発明の第1の実施形態におけるノイズ除去装置1の構成を示す。
【0020】
図1に示すように、ノイズ除去装置1は、入力映像信号Ynowから遅延映像信号Ypreを減算した信号N1を生成する第1減算器101と、信号N1の振幅を動き検出部2で生成した動き信号MVに応じて調整した信号N2を生成する振幅調整部102と、入力映像信号Ynowから信号N2を減算した出力映像信号Youtを生成する第2減算器103と、入力映像信号Ynowと遅延映像信号Ypreとから動きを検出し、動き信号MVを生成する動き検出部2と、出力映像信号Youtを1画面分遅延するフレームメモリ104とを備える。
【0021】
前記動き検出部2は、入力映像信号Ynowと遅延映像信号Ypreとの差の絶対値が第1閾値TH1以上のとき動き、第1閾値TH1未満のとき静止であるという動き信号M1を生成する第1動き信号生成部105と、入力映像信号Ynowと遅延映像信号Ypreとの絶対値の差が前記第1閾値TH1未満の所定値である第2閾値TH2以上のとき動き、第2閾値TH2未満のとき静止であるという動き信号M2を生成する第2動き信号生成部107と、1画面を構成する総画素のうち、動き信号M1が静止を示す画素において、動き信号M2が動きである割合が半分(所定割合)になるように、次のフィールドで第2閾値TH2を増減する閾値制御部106とを備える。
【0022】
<ノイズ除去装置1の動作>
図1のノイズ除去装置1の動作について、図2図3を併用して説明する。
【0023】
図2(a−1)のように黒い背景に明るい灰色の四角があり、明るい灰色の四角の中に明るい灰色の部分とのレベル差が第1閾値TH1以下の少し暗い灰色の丸が存在する画像が静止状態であったところに、明るい灰色の四角が次のフレームで同図(a−2)のように移動したとして、同図(a−2)の画像が図1の入力映像信号Ynowの画像として入力されるときの動作について述べる。
【0024】
先ず、遅延映像信号Ypreは図2(a−1)となっており、第1減算器101では、入力映像信号Ynowから遅延映像信号Ypreを減算した信号N1が生成される。この信号N1を振幅調整部102において、動き信号MVが0(静止)のときには、信号N1に計数K(例えば0.5)を乗算した値、動き信号MVが1(動き)のときは、0となる信号N2を出力する。ここで、動き信号MVが1であるのは図2(b−1)の斜線部の領域全部と図2(b−2)の斜線部の領域のうち所定割合(50%)である。そして、第2減算器103にて、入力映像信号Ynowから信号N2が減算されて、出力映像信号Youtが生成される。よって、出力映像信号Youtは、動き信号MVが0(静止)のときには、入力映像信号Ynowから信号N2を減算した信号になり、動き信号MVが1(動き)のときには、入力映像信号Ynowがそのままの信号になるので、図2(c)に示すように明るい灰色の中の少し暗い灰色の丸の残像(左側の斜線部の丸)が低減される。この残像が低減される詳細は、次の動き検出部2の動作の説明で述べる。
【0025】
次に、前記動き検出部2の動作を説明する。
【0026】
第1動き信号生成部105では、入力映像信号Ynowと遅延映像信号Ypreとの差分の絶対値が第1閾値TH1以上のときは、動きと判定して、動き信号M1として1を出力し、第1閾値TH1未満のときは静止と判定して、動き信号M1として0を出力する。同様に、第2動き信号生成部107では、入力映像信号Ynowと遅延映像信号Ypreとの差分の絶対値が第2閾値TH2以上のときは、動きと判定して、動き信号M2として1を出力し、第2閾値TH2未満のときは静止と判定して、動き信号M2として0を出力する。そして、閾値制御部106では、第1動き信号生成部105の出力が0、すなわち静止のときに、信号MVが1である割合が50%より多いときは第2閾値TH2を上げ、50%より少ないときは第2閾値TH2を下げる。そして、この動き信号M2が前記動き検出部2からの動き信号MVとして出力され、前記振幅調整部102に入力される。
【0027】
これにより、図3に示すように、1画面を構成する総画素のうち、入力映像信号Ynowと遅延映像信号Ypreとの差分の絶対値が第1閾値TH1以下の画素では、図2(b−2)に示す斜線部のうち50%が動きとして処理される。更に、静止の処理がされた50%の画素では、次のフレームで、更に50%が動きとして処理されるので、2フレーム連続で静止として処理される画素数、すなわち残像となる画素数は25%になる。以下同様に連続で静止として処理される画素数は50%ずつ減っていき、連続で静止として処理される画素数は7フレーム後には1%未満となる。すなわち、7フレーム後には残像となる画素数は1%未満になり、またそれ等の残像となる画素は1画面内で散在するので、ほとんど残像はわからなくなる。そして、このように動き信号MVが1である割合を所定割合(50%)にする制御によって、残像の低減効果が得られるので、振幅調整部102での振幅調整(係数Kの調整)では、残像を低減するようにその係数Kを小値(例えばK=0.1)に設定する必要がなく、比較的大値(例えばK=0.5)に設定できるので、明らかに動きと判定される部分を除いた50%の領域に対して時間軸方向の帯域制限フィルタが有効にかかって、時間軸方向の帯域制限によるノイズ低減効果が効果的に得られる。
【0028】
以上の動作により、低コントラストの画像が動いたときでも、時間軸方向の帯域制限かけることによるノイズ低減効果を効果的に得つつ、残像を有効に低減することができる。
【0029】
尚、動き信号M1の生成にあたって、光の3原色である緑、青、赤の信号それぞれで動き信号を生成し、3つの動き信号の何れか1つが動きであるならば、動きとするようにしても良いし、輝度信号、色差信号それぞれで動き信号を生成し、その何れか1つが動きであるならば、動きとするようにしても良い。
【0030】
また、図11と同様に図2では、説明を判り易くするために、四角の移動量及び丸と四角と丸の明るさの差を強調した図としている。
【0031】
更に、本実施形態では、動き信号M1が動きでないことを示す全ての画素のうち50%(所定割合)の画素について、動き信号M2が動きと示すように、第2の閾値TH2を制御したが、本発明はこれに限定されず、所定割合として50%以外の%値を採用できるのは、勿論である。
【0032】
(第2実施形態)
<ノイズ除去装置1Bの構成>
次に、図4に、本発明の第2の実施形態におけるノイズ除去装置1Bの構成図を示す。ここで、第1の実施形態と同じ構成部分は同じ記号を使用し、その説明は省略する。
【0033】
図4に示すように、ノイズ除去装置1Bは、動き検出部2B以外は同じ構成であるので、動き検出部2Bの構成についてのみ述べる。
【0034】
動き検出部2Bは、入力映像信号Ynowと遅延映像信号Ypreとの差の絶対値が第1閾値TH1以上のとき動き、第1閾値TH1未満のとき静止であるという動き信号M1を生成する第1動き信号生成部105と、動き信号M1が静止を示す画素において、ランダムに50%を動きとする動き信号M3を生成する疑似動き信号生成部406と、前記動き信号M1と動き信号M3の何れか一方が動きの時、動きとする動き信号MVを生成する動き信号混合部407とを備えている。
【0035】
<ノイズ除去装置1Bの動作>
動き検出部2B以外の部分の動作は前記第1実施の形態と同じであるので、その説明は省略し、動き検出部2Bの動作のみを説明する。
【0036】
第1動き信号生成部105は、入力映像信号Ynowと遅延映像信号Ypreとの差分の絶対値が第1閾値TH1以上のときは、動きと判定して、動き信号M1として1を出力し、第1閾値TH1未満のときは静止と判定して、動き信号M1として0を出力する。疑似動き信号生成部406では、動き信号M1が0、すなわち静止のときに、乱数を発生させ、図5に示すように、所定割合としてランダムに50%を動きとする動き信号M3を生成する。そして、動き信号混合部407では、動き信号M3と動き信号M4との何れか一方が動きの時、動きとする動き信号MVを生成する。
【0037】
これにより、図2(b−2)の斜線部分の領域のうち50%が動きとして処理されるので、前記第1の実施形態同様に、低コントラストの画像が動いたときでも、時間軸方向の帯域制限フィルタによるノイズ低減効果を有効に得つつ、残像を効果的に低減することができる。
【0038】
前記第1実施形態との違いは、第1実施形態の場合は、動き信号M1が0のとき、動き信号MVが1になる画素は画像に依存するが、本実施形態では、画像に関係なく均一に50%の画素が動きとして処理される点である。これは、本来平面であるはずの映像が、カメラのレンズや撮像素子の特性により厳密には微妙な起伏を伴っており、そうした映像にはその起伏の影響を受けることなくノイズ除去の判断を行うことができる点で、有利である。
【0039】
また、図6に示すように、動きの確率を入力映像信号Ynowと遅延映像信号Ypreとの差分の絶対値によって変化させても良く、更に、画像の状態を判断し、高周波成分が多いところでは、図6の特性とし、高周波成分が少ないところでは図5の特性としても良い。
【0040】
尚、動き信号M1の生成にあたって、光の3原色である緑、青、赤の信号それぞれで動き信号を生成して、3つの動き信号の何れか1つが動きであるならば、動き信号M1を動きとするようにしても良いし、輝度信号、色差信号それぞれで動き信号を生成し、その何れか1つが動きであるならば、動きとするようにしても良い。
【0041】
更に、疑似動き信号生成部406において、ランダムに50%(所定割合)を動きとする動き信号M3を生成したが、本発明はこれに限定されず、所定割合として50%以外の%値を採用できるのは、勿論である。
【0042】
(第3実施形態)
<ノイズ除去装置1Cの構成>
図7に、本発明の第3実施形態におけるノイズ除去装置1Cの構成図を示す。ここで、前記第1の実施形態と同じ構成部分は同じ記号を使用し、その説明は省略する。
【0043】
図7に示すように、ノイズ除去装置1Cは、動き検出部2C以外は同じ構成なので、動き検出部2Cの構成についてのみ述べる。
【0044】
動き検出部2Cは、動き信号生成部705とノイズ生成部706とを備える。ノイズ生成部706は、ランダムノイズN3を生成して動き信号生成部705に与える。動き信号生成部705は、入力映像信号Ynowと遅延映像信号Ypreとの差の絶対値と、この絶対値にランダムノイズN3を加算した信号とについて、それぞれ第1閾値TH1と比較し、それ等のうち少なくとも何れか一方が第1閾値TH1以上のときに動き、それ以外とき静止であるという動き信号MVを生成する。
【0045】
<ノイズ除去装置1Cの動作>
前記動き検出部2C以外の部分の動作は、前記第1実施の形態と同じであるので、その説明は省略し、動き検出部2Cの動作のみを説明する。
【0046】
動き信号生成部705は、入力映像信号Ynowと遅延映像信号Ypreとの差分の絶対値が第1閾値TH1以上のときと、ノイズ生成部706から与えられた疑似的なノイズ信号N3を前記入力映像信号Ynowと遅延映像信号Ypreとの差分の絶対値に加算した信号が第1閾値TH1以上のときとに動きとして、動き信号MVを1にし、その何れもが0のときに、動き信号MVを0にする。
【0047】
これにより、前記差分の絶対値が第1閾値TH1未満だった静止となる画素のうち、50%の画素がランダムに動きとして処理されるので、前記第1実施形態と同様に、低コントラストの画像が動いたときでも、時間軸方向の帯域制限かけることによるノイズ低減効果を有効に得つつ、残像を効果的に低減することができる。
【0048】
このとき、第1の実施形態で述べたように、信号N2の加算をON、OFFするだけでなく、図8に示すように、入力映像信号Ynowと遅延映像信号Ypreとの差分の絶対値に信号N3を加算した値から、図8に示すような特性になるように振幅調整部102で制御しても良い。
【0049】
尚、動き信号M1の生成にあたって、光の3原色である緑、青、赤の信号それぞれで動き信号を生成して、3つの動き信号の何れか1つが動きであるならば、動き信号M1を動きとするようにしても良いし、輝度信号、色差信号それぞれで動き信号を生成し、その何れか1つが動きであるならば、動きとするようにしても良い。
【0050】
更に、疑似動き信号生成部406において、ランダムに50%(所定割合)を動きとする動き信号M3を生成したが、本発明はこれに限定されず、所定割合として50%以外の%値を採用できるのは、勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明したように、本発明のノイズ除去装置は、低コントラストの画像が動いたときでも、時間軸方向の帯域制限かけることによるノイズ低減効果を有効に得つつ、残像を効果的に低減することができるので、デジタルカメラやビデオカメラなどの映像機器に適用して、有用である。
【符号の説明】
【0052】
1、1B、1C ノイズ除去装置
2、2B、2C 動き検出部
101 第1減算器
102 振幅調整部
103 第2減算器
104 フレームメモリ
105 第1動き信号生成部
106 閾値制御部
107 第2動き信号生成部
406 疑似動き信号生成部
407 動き信号混合部
705 動き信号生成部
706 ノイズ生成部
図1
図2
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