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特許6024891ホスホリルコリン基含有(メタ)アクリレート化合物、その製造方法、及びその重合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6024891
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】ホスホリルコリン基含有(メタ)アクリレート化合物、その製造方法、及びその重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 30/02 20060101AFI20161107BHJP
   C07F 9/09 20060101ALI20161107BHJP
   C07F 9/655 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   C08F30/02
   C07F9/09 VCSP
   C07F9/655
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-244518(P2012-244518)
(22)【出願日】2012年11月6日
(65)【公開番号】特開2014-91803(P2014-91803A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081514
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敦
(72)【発明者】
【氏名】道西 准也
(72)【発明者】
【氏名】姜 義哲
【審査官】 岸 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−139789(JP,A)
【文献】 特開平07−330783(JP,A)
【文献】 特開2001−212807(JP,A)
【文献】 特開2007−086389(JP,A)
【文献】 特開2004−331637(JP,A)
【文献】 特開2009−263357(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0040053(US,A1)
【文献】 特開平11−049788(JP,A)
【文献】 特開2014−091692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 30/02
C07F 9/09
C07F 9/655
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるホスホリルコリン基含有(メタ)アクリレート化合物。
【化1】
(式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は−(CH2)n−もしくは−CH2CH2OCH2CH2−、R3は−(CH2)m−を示す。ここで、nは1〜4、mは2〜10の整数である。(AO)は炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。xはオキシアルキレン基の平均モル数であり、x=0〜30の整数である。)
【請求項2】
式(2)で表されるジオキサホスホラン基含有(メタ)アクリレート化合物。
【化2】
(式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は−(CH2)n−もしくは−CH2CH2OCH2CH2−、R3は−(CH2)m−を示す。ここで、nは1〜4、mは2〜10の整数である。(AO)は炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。xはオキシアルキレン基の平均モル数であり、x=0〜30の整数である。)
【請求項3】
式(3)で表される水酸基含有(メタ)アクリレート化合物と、式(4)で表される2-クロロ-2-オキソ-1,3,2-ジオキソホスホランとを反応させることを特徴とする、請求項2記載のジオキサホスホラン基含有(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【化3】
(式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は−(CH2)n−もしくは−CH2CH2OCH2CH2−、R3は−(CH2)m−を示す。ここで、nは1〜4、mは2〜10の整数である。(AO)は炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。xはオキシアルキレン基の平均モル数であり、x=0〜30の整数である。)
【請求項4】
請求項2記載のジオキサホスホラン基含有(メタ)アクリレート化合物と、トリメチルアミンとを反応させることを特徴とする請求項1記載のホスホリルコリン基含有(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載のホスホリルコリン基含有(メタ)アクリレート化合物の単独重合体。
【請求項6】
請求項1記載のホスホリルコリン基含有(メタ)アクリレート化合物と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、接着剤、成形材料、インキ、印刷材料、電気絶縁材料、光学材料、歯科材料、医療材料等の分野で幅広く利用することが可能な、新規なホスホリルコリン基含有(メタ)アクリレート化合物、その製造方法及びその重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
反応性が高いことで知られる(メタ)アクリレート系のモノマーは、熱、紫外線、電子線、ラジカル重合開始剤などを用いて、(メタ)アクリレート系のモノマー単独で、あるいは他のエチレン性不飽和化合物と共重合することにより、様々な要求に応じられる汎用性の高い高分子化合物が得られる。(メタ)アクリレート系のモノマーは、例えば、粘着剤、塗料の分野等で用いられる他、最近では電子材あるいは歯科材の分野でも用いられている。特に医療用材料の分野では、ヒドロキシエチルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、ビニルピロリドン、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)等の親水性を有する(メタ)アクリレート化合物が提案され、既に実用化されている。
このような(メタ)アクリレート系のモノマーは、高純度、かつ高機能性が求められる電子材や歯科材等の分野に使用され始めたことに伴い、非水性材料との親和性、接着性や親水性等に優れる性質、更には光重合性等の機能性が新たな課題として要求され始めている。
【0003】
このような要求に対応したモノマーとしては、例えば、特許文献1にホスホリルコリン基を有する(メタ)アクリレート化合物が報告されている。
しかし、このモノマーを含む組成物の重合体や、それを用いた塗料を基板に適用した場合、密着性等における課題解決は十分とは言えない。従って、光重合性、接着性に優れた新規な(メタ)アクリレート系モノマーの開発が熱望されている。
非特許文献1には、メタアクリロイルオキシエチルイソシアナート(MOI)と、グリセロールホスホリルコリン(GPC)とをウレタン化反応させてなるメタアクリレート化合物が報告されている。
しかし、これはモノマーの合成の容易さにおける課題解決が十分とは言えない。具体的には、GPC 1モルに対してMOIが2モル結合した副生成物が生成するために収率が低いこと(42.5%)、精製にカラムクロマトグラフィーを必要とすること等が問題である。
重合体に親水性基を導入する手法としては、例えば、特許文献2に、イソシアネート基を有する重合体にグリセロールホスホリルコリンを高分子反応させる方法が、特許文献3に各種の親水性基を有する重合体を得る方法が提案されている。
しかし、これらは高分子反応時に重合体がゲル化する点や、合成の容易さにおける課題解決が十分とは言えない。従って、重合体の原料であるモノマー自体に接着性や親水性などの機能があることが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭54-63025号公報
【特許文献2】特開2003-040942号公報
【特許文献3】特開2011-154367号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】T. Oishi, Polymer Bulletin, 47, 415-420 (2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、分子内に親水性の高い構造を有し、かつ高い光重合性を示すホスホリルコリン基含有(メタ)アクリレート化合物及びその重合体を提供することにある。
本発明の別の課題は、前記ホスホリルコリン基含有(メタ)アクリレート化合物を容易に得ることができる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、分子構造中に(メタ)アクリレート基と、親水性のホスホリルコリン基およびウレタン結合を併せ持つホスホリルコリン基含有(メタ)アクリレート化合物が上記課題を解決しうることを見出し、更に、このような化合物の製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、式(1)で表されるホスホリルコリン基含有(メタ)アクリレート化合物(以下、化合物(1)と略すことがある)が提供される。
【化1】
(式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は−(CH2)n−もしくは−CH2CH2OCH2CH2−、R3は−(CH2)m−を示す。ここで、nは1〜4、mは2〜10の整数である。(AO)は炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。xはオキシアルキレン基の平均モル数であり、x=0〜30の整数である。)
また本発明によれば、式(2)で表されるジオキサホスホラン基含有(メタ)アクリレート(以下、化合物(2)と略すことがある)が提供される。
【化2】
(式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は−(CH2)n−もしくは−CH2CH2OCH2CH2−、R3は−(CH2)m−を示す。ここで、nは1〜4、mは2〜10の整数である。(AO)は炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。xはオキシアルキレン基の平均モル数であり、x=0〜30の整数である。)
【0009】
さらに本発明によれば、式(3)で表される水酸基含有(メタ)アクリレート化合物と、式(4)で表される2-クロロ-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホラン(COP)とを反応させる、化合物(2)の製造方法が提供される。
【化3】
(式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は−(CH2)n−もしくは−CH2CH2OCH2CH2−、R3は−(CH2)m−を示す。ここで、nは1〜4、mは2〜10の整数である。(AO)は炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。xはオキシアルキレン基の平均モル数であり、x=0〜30の整数である。)
さらにまた本発明によれば、化合物(2)と、トリメチルアミンとを反応させることを特徴とする化合物(1)の製造方法が提供される。
また本発明によれば、化合物(1)を含有する重合性原料を重合してなる重合体が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の化合物(1)は、(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に親水性のホスホリルコリン基とウレタン結合を有しているので、光重合性に優れ、親水性や生体適合性も期待できる。従って、これら化合物及びこれらの重合体は、医療分野を含め幅広い分野における原料や材料としての利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1−1で調製した化合物(1)の1H-NMR測定結果を示すグラフである。
図2】実施例1−1で調製した化合物(1)の31P-NMR測定結果を示すグラフである。
図3】実施例2−1で行った、[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルエチル-N-メタクリロイルオキシエチルウレタンのUV照射時間とモノマー転化率の関係、並びに比較例2−1で行ったMPCのUV照射時間とモノマー転化率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の化合物(1)は、前記式(1)で表されるジオキサホスホランリン酸エステル化合物である。また、本発明の化合物(2)は、前記式(2)で表されるジオキサホスホラン基含有(メタ)アクリレート化合物である。
式(1)又は(2)において、R1は水素原子またはメチル基を示す。R2は−(CH2)n−もしくは−CH2CH2OCH2CH2−を示し、ここで、nは1〜4の整数である。R2の−(CH2)n−としては、例えば、メチレン基(−CH2−)、エチレン基(−CH2CH2−)、プロピレン基(−CH2CH2CH2−)、ブチレン基(−CH2CH2CH2CH2−)、−CH2CH2OCH2CH2−が挙げられる。
式(1)又は(2)において、R3は−(CH2)m−を示す。ここで、mは2〜10の整数である。R3としては、例えば、エチレン基(−CH2CH2−)、プロピレン基(−CH2CH2CH2−)、ブチレン基(−CH2CH2CH2CH2−)が挙げられる。(AO)としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。
式(1)又は(2)において、(AO)は炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。xはオキシアルキレン基の平均モル数であり、x=0〜30の整数である。
【0013】
式(1)で表されるホスホリルコリン基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルエチル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルプロピル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルブチル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルペンチル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルヘキシル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルヘプチル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルオクチル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルノニル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルデシル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルポリエチレングリコール-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルポリプロピレングリコール-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルエチル-N-メタクリロイルオキシエトキシエチルウレタン、が挙げられる。
【0014】
式(2)で表されるジオキサホスホラン基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2-(2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリルオキシ)エチル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、3-(2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリルオキシ)プロピル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、4-(2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリルオキシ)ブチル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、5-(2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリルオキシ)ペンチル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、6-(2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリルオキシ)ヘキシル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、7-(2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリルオキシ)ヘプチル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、8-(2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリルオキシ)オクチル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、9-(2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリルオキシ)ノニル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、10-(2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリルオキシ)デシル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリルポリエチレングリコール-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリルポリプロピレングリコール-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、2-(2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリルオキシ)エチル-N-メタクリロイルオキシエトキシエチルウレタンが挙げられる。
【0015】
本発明の化合物(1)を調製するには、例えば、まず、前記式(3)で表される化合物と前記式(4)で表されるCOPを反応させて化合物(2)を調製する。次いで、化合物(2)と、トリメチルアミンとを開環付加反応させる方法により得ることができる。
式(3)中、R1、R2、R3、(AO)及びxは、式(1)及び式(2)と同様である。
【0016】
前記式(3)で表される化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、2-ヒドロキシエチル-N-[2-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)エチル]ウレタン、3-ヒドロキシプロピル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、4-ヒドロキシブチル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、5-ヒドロキシペンチル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、6-ヒドロキシヘキシル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、7-ヒドロキシヘプチル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、8-ヒドロキシオクチル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、9-ヒドロキシノニル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、10-ヒドロキシデシル-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、ポリエチレングリコール-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、ポリプロピレングリコール-N-(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタンが挙げられる。原料入手の容易さからは、前記式(3)のR1がメチル基、R2が−CH2CH2−もしくは−CH2CH2OCH2CH2−、R3が−CH2CH2−、(AO)がオキシエチレン基であり、xは0〜15である化合物が好ましい。例えば、2-ヒドロキシエチル-N-メタクリロイルオキシエチルウレタン、2-ヒドロキシエチル-N-[2-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)エチル]ウレタン、ポリエチレングリコール-N-メタクリロイルオキシエチルウレタンが挙げられる。これらの前記式(3)で表される化合物から得られる前記化合物(1)としては、例えば、[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルエチル-N-メタクリロイルオキシエチルウレタン、[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルエチル-N-メタクリロイルオキシエトキシエチルウレタン、[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルポリエチレングリコール-N-メタクリロイルオキシエチルウレタンが挙げられる。
【0017】
式(3)においてxが0である化合物は、式(7)で表される化合物であり、式(5)で表される化合物と式(6)で表される化合物とをウレタン化反応させることによって得られる。式(3)においてxが1〜30である化合物は、式(7)で表される化合物に炭素数2〜4のアルキレンオキシドを付加させることによって得ることができる。
【0018】
【化4】
式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は−(CH2)n−もしくは−CH2CH2OCH2CH2−で表される基、R3は−(CH2)m−で表される基を意味する。ここで、nは1〜4、mは2〜10の整数である。
【0019】
前記式(5)で表される化合物としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールが挙げられる。
前記式(6)で表される化合物としては、メタクリロイルオキシエチルイソシアナート、アクリロイルオキシエチルイソシアナート、メタクリル酸2-(2-イソシアナート-エトキシ)-エチルエステル等が挙げられる。このような化合物は市販品を用いても良いが、公知の合成方法を駆使することにより既知の原料から合成したものを用いても良い。
【0020】
本発明の製造方法に用いる式(4)で表される2-クロロ-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホランの使用量は、式(3)で表される化合物に対してモル比で0.5〜2.0倍量、好ましくは0.8〜1.5倍量、最も好ましくは1.0〜1.1倍量である。ここで、式(4)で表される化合物の量が、式(3)で表される化合物に対してモル比で1.0倍量より少ない場合は、高い反応転化率が達成できないおそれがある。また、式(4)で表される化合物の量が、式(3)で表される化合物に対してモル比で2倍量より多い場合は、添加量に見合った反応転化率が得られない。
【0021】
本発明の製造法において、式(3)で表される化合物と式(4)で表される化合物との反応に用いられる溶媒としては、一般に非プロトン性溶媒であれば特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、塩化メチレン、アセトニトリルが好ましく挙げられ、化合物の溶解性、化合物の反応性の点からテトラヒドロフランが最も好ましく挙げられる。非プロトン性溶媒の使用量は、式(3)で表される化合物に対して重量比で通常1〜20倍量、好ましくは2〜15倍量、最も好ましくは4〜10倍量である。
【0022】
式(2)で表される化合物を得る反応では、発生する塩化水素をジイソプロピルアミン、トリエチルアミン等のアミンの存在下でトラップするか、不活性ガスを反応系内に吹き込むことで塩化水素を系外に取り除きながら行うことが好ましい。
【0023】
塩化水素トラップ剤の使用量は、式(4)で表される化合物に対してモル比で通常1〜10倍量、好ましくは1〜2倍量である。塩化水素トラップ剤の使用量が、式(4)で表される化合物に対してモル比で1倍量より少ないと、塩化水素を十分にトラップすることができないおそれがあり、またモル比で10倍量より多くても、添加量に見合った塩化水素のトラップ量の向上が望めない。
【0024】
本発明の製造法において、式(3)で表される化合物と式(4)で表される化合物との反応における反応温度は、通常−50〜50℃ 、好ましくは−30〜30℃ 、最も好ましくは−20〜20℃の範囲である。反応温度が−50℃ よりも低い場合は、反応に長時間を要する恐れがある。また反応温度が50℃より高い場合、更なる反応速度が望めないうえ、式(3)で表される化合物と式(4)で表される化合物との反応が発熱反応であるため反応温度の制御が困難となり危険になるおそれがある。反応時間は、反応温度、濃度などの条件により異なるが、通常0.5〜12時間程度が好ましい。
【0025】
本発明の製造方法において、式(2)で表される化合物に、トリメチルアミンを開環付加反応させるにあたっては、開環付加反応を非プロトン性溶媒中で行えばよい。非プロトン性溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、塩化メチレン、アセトニトリルが好ましく挙げられるが、極性が高い溶媒を用いるのが開環付加反応によい点からは、溶媒としてアセトニトリルが最も好ましい。
開環付加反応における溶媒の使用量は、式(2)で表される化合物に対して重量比で1〜20倍量、好ましくは2〜15倍量、最も好ましくは3〜10倍量である。
【0026】
本発明の製造法に用いるトリメチルアミンの使用量は、式(2)で表される化合物に対してモル比で通常1.0〜10.0倍量、好ましくは1.5〜8.0倍量、最も好ましくは2.0〜5.0倍量である。このときトリメチルアミンの使用量が、式(2)で表される化合物に対してモル比で1.0倍量より少ないと、高い反応転化率が達成できないおそれがある。またモル比で10.0倍量より多くても、添加量に見合った反応転化率が得られない。
【0027】
本発明の製造方法において、前記開環付加反応の反応温度は、通常0〜100℃、好ましくは40〜80℃、最も好ましくは60〜80℃の範囲である。反応時間は、反応温度、トリメチルアミンの使用量などの条件により異なるが、通常1〜24時間程度が好ましい。以上の反応により、化合物(1)を得ることができる。
【0028】
本発明の製造方法により得られる化合物(1)は、後述する重合性原料を調製する際の原料としてそのまま未精製で使用できる他、減圧乾燥、再結晶、カラム等の処理により単離、精製した後に用いることもできる。
【0029】
本発明の重合体は、前記化合物(1)を含有する重合性原料を重合してなる重合体である。
本発明の重合体の分子量は、特に限定されず、各用途において要求される性能が発揮しうるように重合条件等を調整して適宜決定できるが、通常、重量平均分子量で5000〜1000000程度である。
【0030】
重合性原料は、化合物(1)単独、又は化合物(1)と共重合が可能な他のモノマーとの混合物であってもよい。
前記他のモノマーとしては、例えば、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリル酸エステル;メチルビニルエーテル等の各種ビニルエーテル;その他、アクリルアミド、N,N’−ジメチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸、アリルアルコール、アクリロニトリル、アクロレイン、酢酸ビニル、ビニルスルホン酸ナトリウム、スチレン、クロロスチレン、ビニルフェノール、ビニルシンナメート、塩化ビニル、ビニルブロミド、ブタジエン、ビニレンカーボネート、イタコン酸、イタコン酸エステル、フマル酸、フマル酸エステル、マレイン酸、マレイン酸エステル等の各種ラジカル重合性モノマーが挙げられる。また、重合体を簡便に得る点からは、重合性原料は化合物(1)単独であることが好ましい。
重合性原料において前記他のモノマーを用いる場合、その配合量は任意であって適宜選択できるが、化合物(1)の性能を引き出すために化合物(1)が重合性原料中に5質量%以上含まれることが好ましい。
【0031】
重合性原料は、そのままバルク状態で重合に用いてよく、また溶媒を加えて重合に供することもできる。該溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、水およびこれら有機溶媒との混合物、他の各種極性溶媒が挙げられる。このうち、重合性原料の溶解性の観点からはメタノール、メタノールと水の混合物および水が好ましく挙げられる。
【0032】
重合性原料の重合は、ラジカル重合又は光重合により行うことができる。
ラジカル重合は、ラジカル開始剤を用いて行うことができる。該ラジカル開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシネオデカノエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル等のアゾ化合物が挙げられるが、作業性の観点から、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルが好ましく挙げられる。
ラジカル開始剤の使用量は、重合性原料100質量部に対して、通常0.1〜5.0質量部が好ましい。重合温度及び重合時間は、ラジカル開始剤の種類、他のモノマーの有無や種類等によって適宜選択して決定できる。例えば、化合物(1)単独からなる重合性原料を、ラジカル開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを用いて重合させる場合、重合温度は好ましくは50〜90℃、重合時間は5〜48時間程度が適当である。
【0033】
前記光重合は、例えば、波長254 nmの紫外線(UV)又は加速電圧150〜300kVの電子線(EB)照射等により実施できる。この際、光重合開始剤の使用は任意であるが、反応時間の点からは使用することが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられ、溶解性等の点から2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンが好ましく挙げられる。
【0034】
前記重合性原料を重合させてなる本発明の重合体は、例えば、公知の加工方法により、フィルム、ペレット等の形態とすることができ、これらは、塗料、光学材料、歯科材料、電子材料、印刷材料、医療材料等の素材として利用することが可能である。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
製造例1−1
ナス型フラスコに、エチレングリコール34.29g、トリエチルアミン0.93g、テトラヒドロフラン34.29gを加え、メタクリロイルオキシエチルイソシアナート28.57g(昭和電工社製)を秤取って、滴下ロート及びカルシウム管を装着した。室温遮光下において、メタクリロイルオキシエチルイソシアナートをゆっくりと滴下させた後、50℃に設定したオイルバス中で7時間反応させた。反応終了後、トリエチルアミンを減圧留去し、水/トルエンで分液して水層を回収後、水/クロロホルムで分液してクロホルム層を減圧留去した。収量32.42g、収率81.1%で、白色固体の(2-ヒドロキシエチル)-N-メタクリロイルオキシエチルウレタン(式(3)のR1がメチル基、R2がエチレン基、R3がエチレン基、(AO)の平均モル数xが0で表される化合物)を得た。1H−NMRおよびESI-MSの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(CD3OD):1.9 ppm(s, 3H, CH2=CH(CH3))、3.4−4.2 ppm(m、8H, OCH2CH2N HCOOCH2CH2OH)、5.6,6.1ppm(s,2H,CH2=CH(CH3))
ESI-MS:m/z=218.6[M+H]+、240.6[M+Na]+
【0036】
製造例1−2
ナス型フラスコに、エチレングリコール28.51g、トリエチルアミン0.77g、テトラヒドロフラン28.51gを加え、メタクリル酸2-(2-イソシアナート-エトキシ)-エチルエステル30.50g(商品名:カレンズMOI-EG、昭和電工社製)を秤取って、滴下ロートおよびカルシウム管を装着した。室温遮光下においてメタクリル酸2-(2-イソシアナート-エトキシ)エチルエステルをゆっくりと滴下させた後、50℃に設定したオイルバス中で7時間反応させた。反応終了後、トリエチルアミンを減圧留去し、水/トルエンで分液して水層を回収後、水/クロロホルムで分液してクロホルム層を減圧留去した。収量31.6g、収率79.0%で、2-ヒドロキシエチル-N-[2-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)エチル]ウレタン(式(3)のR1がメチル基、R2が−CH2CH2OCH2CH2−、R3がエチレン基、(AO)の平均モル数xが0で表される化合物)を得た。
【0037】
製造例1−3
ポリエチレングリコール-N-メタクリロイルオキシエチルウレタンは、特開2003-73331号公報に記載の方法に従い、以下の合成方法により製造した。
製造例1−1において合成した(2-ヒドロキシエチル)-N-メタクリロイルオキシエチルウレタン4.34g(0.02モル、水分量0.1重量%)、ヒドロキノンモノメチルエーテル64mgを気密反応容器に入れて混合した。次いで、トルエン0.7gを添加後、温度25℃で無水塩化第二スズを0.13g仕込み空間部分を窒素ガスで置換しゲージ圧を0.05MPaにした。攪拌しながら圧力を0.4MPa以下、温度25〜40℃でエチレンオキシド8.81g(0.2モル)を8時間で圧入し、1時間熟成反応を行った。10℃に冷却後放出し、キョーワード(登録商標) 500(協和化学工業製)を0.4 g添加して減圧下で攪拌し、60〜70℃で2時間処理した後にろ過を行い、ポリエチレングリコール-N-メタクリロイルオキシエチルウレタン(式(3)のR1がメチル基、R2がエチレン基、R3がエチレン基、(AO)がオキシエチレン基であり、その平均モル数xが10で表される化合物)を得た。収量は10.39g、収率は79%であった。
【0038】
実施例1−1
ナス型フラスコに、製造例1−1で調製した(2-ヒドロキシエチル)-N-メタクリロイルオキシエチルウレタン4.34g、テトラヒドロフラン30.00mL((2-ヒドロキシエチル)-N-メタクリロイルオキシエチルウレタンに対して重量比で6.2倍量)、トリエチルアミン2.78mL (COPに対して1モル倍量)を加え、COP2.85g((2-ヒドロキシエチル)-N-メタクリロイルオキシエチルウレタンに対して1モル倍量)を秤取って、滴下ロート及びカルシウム管を装着した。0℃下において、COPをゆっくりと滴下させた後、20℃で30分間攪拌させた。反応終了後、副生成物として析出したトリエチルアミン塩酸塩をろ別し、2-(2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリルオキシ)エチル-N-メタクリロイルオキシエチルウレタン(式(2)のR1がメチル基、R2がエチレン基、R3がエチレン基、(AO)の平均モル数xが0で表される化合物)を得た。
得られた生成物に関する31P-NMRの測定結果を以下に示す。
31P-NMR(CDCL3):18.6ppm
【0039】
次に、耐圧ビンに、上記で得られたろ液全量、アセトニトリル30.00mL(COPに対して重量比で3.7倍量)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン0.03g、トリメチルアミン4.41mL(COPに対して2.5モル倍量)を加え、70℃に設定したオイルバス中で14時間反応させた。過剰のトリメチルアミンを留去後、反応液を−20℃で半日放置し、結晶を生成させた。生成物をろ過し、[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルエチル-N-メタクリロイルオキシエチルウレタン(式(1)のR1がメチル基、R2がエチレン基、R3がエチレン基、(AO)の平均モル数xが0で表される化合物)を得た。収量は5.7g(0.015mol)、収率は75%であった。得られた生成物に関する1H-NMR、31P-NMRおよびESI-MSの測定結果を図1図2および以下に示す。
1H-NMR(CD3OD):1.9ppm(s,3H,CH2=CH(CH3))、3.2 ppm(s,9H,CH2N(CH3)3)、3.4?4.2 ppm(m、12H,OCH2CH2NHCOOCH2CH2O、OCH2CH2N(CH3)3)、5.6,6.1 ppm(s,2H,CH2=CH(CH3))
31P-NMR(CD3OD):0.8ppm
ESI-MS:m/z=383.0[M+H]+、405.0[M+Na]+
【0040】
実施例1−2
(2-ヒドロキシエチル)-N-メタクリロイルオキシエチルウレタンの代わりに、製造例1−2で合成した2-ヒドロキシエチル-N-[2-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)エチル]ウレタン5.23gを用いた以外は実施例1−1と同様に反応させ、2-(2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリルオキシ)エチル-N-メタクリロイルオキシエトキシエチルウレタン(式(2)のR1がメチル基、R2が−CH2CH2OCH2CH2−、R3がエチレン基、(AO)の平均モル数xが0で表される化合物)を得た。この反応終了後、副生成物として析出したトリエチルアミン塩酸塩をろ別した。
次に、得られた生成物のろ液を用いた以外は、実施例1−1と同様に合成し、[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルエチル-N-メタクリロイルオキシエトキシエチルウレタン(式(1)のR1がメチル基、R2が−CH2CH2OCH2CH2−、R3がエチレン基、(AO)の平均モル数xが0で表される化合物)を得た。収量は6.2g(0.015mol)、収率は73%であった。得られた生成物に関する1H-NMR、31P-NMRおよびESI-MSの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(CD3OD):1.9ppm(s,3H, CH2=CH(CH3))、3.2ppm(s,9H,CH2N(CH3)3)、3.4?4.2 ppm(m、16H,CH2CH2OCH2CH2NHCOOCH2CH2O、OCH2CH2N(CH3)3)、5.6,6.1ppm (s,2H, CH2=CH(CH3))
31P-NMR(CD3OD):0.8ppm
ESI-MS:m/z=427.6[M+H]+、449.6[M+Na]+
【0041】
実施例1−3
(2-ヒドロキシエチル)-N-メタクリロイルオキシエチルウレタンの代わりに、製造例1−3で合成したポリエチレングリコール-N-メタクリロイルオキシエチルウレタン13.16gを用いた以外は実施例1と同様に反応させ、2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリルポリエチレングリコール-N-メタクリロイルオキシエチルウレタン(式(2)のR1がメチル基、R2がエチレン基、R3がエチレン基、(AO)がオキシエチレン基であり、その平均モル数xが10で表される化合物)を得た。この反応終了後、副生成物として析出したトリエチルアミン塩酸塩をろ別した。
次に、得られた生成物のろ液を用いた以外は、実施例1−1と同様に合成し、[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルポリエチレングリコール-N-メタクリロイルオキシエチルウレタン(式(1)のR1がメチル基、R2がエチレン基、R3がエチレン基、(AO)がオキシエチレン基であり、その平均モル数xが10で表される化合物)を得た。収量は7.6g(0.01 mol)、収率は46%であった。得られた生成物に関する1H-NMR、及び31P-NMRの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(CD3OD):1.9ppm(s,3H,CH2=CH(CH3))、3.2ppm(s,9H,CH2N(CH3)3)、3.4?4.3 ppm(m、52H,OCH2CH2NH,(CH2CH2O)11、OCH2CH2N(CH3)3)、5.6,6.1ppm(s,2H,CH2=CH(CH3))
31P-NMR(CD3OD):0.8ppm
【0042】
実施例2−1
実施例1−1で合成した[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルエチル-N-メタクリロイルオキシエチルウレタン1.0g、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン1mg及びイオン交換水1mlを石英ガラス製の四面透過セルに加えた。続いて、アルゴン雰囲気下、400W高圧水銀ランプを用いてUV光を照射し、重合体としてポリ[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルエチル-N-メタクリロイルオキシエチルウレタンを得た。
<転化率の評価>
上記重合体の製造の際に、経時的に少量のサンプリングを行い、イオン交換水により1000倍希釈した。各サンプルは吸光光度計を用いて220nmにおける吸光度を定量することにより、[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルエチル-N-メタクリロイルオキシエチルウレタンモノマー含量を算出した。
[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルエチル-N-メタクリロイルオキシエチルウレタンのUV照射時間とモノマー転化率の関係を図3に示す。
【0043】
比較例2−1
[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルエチル-N-メタクリロイルオキシエチルウレタンの代わりに、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)を用いた以外は、実施例2−1と同様にして重合体を得た。MPCのUV照射時間とモノマー転化率の関係を同様に測定した。結果を図3に示す。
図3より、[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルエチル-N-メタクリロイルオキシエチルウレタンは、MPCに比べて優れた光重合性を示すことがわかる。
【0044】
実施例2−2
実施例1−1において合成した[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルエチル-N-メタクリロイルオキシエチルウレタン1.0g、水/メタノール混合溶媒5ml(1/9(v/v))及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル5mg(重合性原料の0.5質量%)をねじ口試験管に秤取り、30秒間アルゴンガスでバブリングした。すばやく密栓した後、予め60℃に設定した振とう機によって24時間反応させた。24時間後、反応溶液を透析膜(商品名スペクトラ/ポア、分画分子量3500)にとり、1Lの水中で、3時間毎に水を交換して12時間透析操作を行った。この溶液を300mlのナス型フラスコに取り、凍結乾燥することにより収量890mg、収率89%で、重合体としてのポリ[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルエチル-N-メタクリロイルオキシエチルウレタンを得た。
得られた重合体は容易に水に溶解し、無色粘性の溶液を与えた。この溶液を下記条件においてGPCを用いて分子量を測定した。その結果、得られた重合体の重量平均分子量は、約73000であった。
(GPC条件)
溶離液:20mM燐酸緩衝液、カラム:TSKgelG4000PWXL+TSKgelG2500PWXL、検出器:RI、送液速度:0.6ml/分、カラム槽温度:40℃、標準物質:ポリエチレンオキシド。
【0045】
実施例2−3
実施例1−2において合成した[2-(トリメチルアンモニオ)エチル]ホスホリルエチル-N-メタクリロイルオキシエトキシエチルウレタン0.92g、メタクリル酸ブチル(東京化成工業(株)製)0.08g(全モノマー中のメタクリル酸ブチルのモル%:10%)、メタノール5ml及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル5mg(重合性原料の0.5質量%)をねじ口試験管に秤取り、30秒間アルゴンガスでバブリングした。すばやく密栓した後、予め60℃に設定した振とう機によって24時間反応させた。24時間後、反応溶液をイソプロパノールに滴下することにより重合体を沈殿させた。これを濾別した後、減圧乾燥して白色粉末状の重合体を得た。収量は840mg、収率は84%であった。
得られた重合体は容易に水に溶解し、無色粘性の溶液を与えた。この溶液について実施例2−2と同様の条件でGPC分子量を測定した。その結果、得られた重合体の重量平均分子量は約51000であった。
【0046】
実施例3
<配合液の作製>
2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、実施例1−1、1−2、1−3で調製した化合物もしくはMPC、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)、および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を表1に示すように組み合わせて配合液を作製した。なお、モノマーとしてHEMA及びMPCを用いた配合液は、比較試験のためのものである。
<含水フィルムの作製>
厚さ0.1mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)板の両面をポリプロピレン板2枚で挟み、さらにそれを外側からガラス板で挟みこむことでセルを作製した。セル内に配合液を流し込み、窒素置換したオーブンを用いて100℃、2時間加熱することで重合を行った。重合後、硬化したフィルムをセルから取り出し、メタノールに4時間以上浸漬後、イオン交換水に24時間以上浸漬させることで含水フィルムを得た。
<透明性の評価>
含水フィルムを浸漬させておいたイオン交換水から取り出し、これを目視で確認した。フィルムに濁りがなく均一なものを透明とした。結果を表1に示す。
<含水率の評価>
含水フィルムを直径1cmの円状に切り抜き、表面についている水分をふき取った後、重量を測定した。次に125℃のオーブンで2時間加熱した後の重量を測定した。加熱前後の重量差からフィルム中に含まれる水の重量を算出し、含水したフィルムとの重量比を求めることにより含水率を算出した。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1より、実施例1−1、1−2および1−3で調製した化合物を用いることにより、透明で含水性に優れたフィルムを得ることができた。この結果は、これらの物質が高い親水性を有しているためであり、例えば、コンタクトレンズ素材としての応用が可能であることを示す。
図1
図2
図3