特許第6024892号(P6024892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6024892酸素吸収性樹脂組成物及び酸素吸収性接着剤樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6024892
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】酸素吸収性樹脂組成物及び酸素吸収性接着剤樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/06 20060101AFI20161107BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20161107BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20161107BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   C08L67/06
   C08K5/14
   C08K5/29
   B01J20/26 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-249332(P2012-249332)
(22)【出願日】2012年11月13日
(65)【公開番号】特開2013-129821(P2013-129821A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2015年10月21日
(31)【優先権主張番号】特願2011-257788(P2011-257788)
(32)【優先日】2011年11月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 庸一
(72)【発明者】
【氏名】太田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】田所 洋一
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−302874(JP,A)
【文献】 特開2002−088265(JP,A)
【文献】 特開2011−144281(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/105887(WO,A1)
【文献】 特開2011−127023(JP,A)
【文献】 特開2004−063517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/00−67/08
C08K 5/00−5/59
B01J 20/00−20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸成分(A)に由来する構造単位を含むポリエステルと有機過酸化物を含有する酸素吸収性樹脂組成物であって、有機過酸化物の10時間半減期温度が90℃以下である前記酸素吸収性樹脂組成物
酸成分(A):(i)及び(ii)からなる群より選ばれる構造を有する酸成分;
(i)下記構造(a)及び(b)の両方の基に結合し、かつ、1個の水素原子と結合した炭素原子を有し、該炭素原子が脂環構造に含まれているジカルボン酸若しくはジカルボン酸無水物;
(a)炭素−炭素二重結合基、
(b)カルボニル基;
(ii)不飽和脂環構造内の炭素−炭素二重結合に隣接する炭素原子が電子供与性置換基及び水素原子と結合し、かつ、該炭素原子に隣接する別の炭素原子がカルボニル基と結合しており、該電子供与性置換基と該カルボニル基とがシス位に位置しているジカルボン酸若しくはジカルボン酸無水物
【請求項2】
(i)の構造を有する酸成分が4−メチル−Δ3−テトラヒドロフタル酸又はその誘導体であり、(ii)の構造を有する酸成分がcis−3−メチル−Δ4−テトラヒドロフタル酸又はその誘導体である、請求項1に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項3】
ポリエステルのガラス転移温度が−20〜2℃である、請求項1又は2に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項4】
ポリエステルの酸価が5mgKOH/g以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項5】
有機過酸化物がジアシルパーオキサイド、アルキルパーオキシエステル及びパーオキシジカーボネートからなる群より選ばれる構造を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂組成物と、硬化剤として脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート系硬化剤、及び溶媒として酢酸エチルを含有する酸素吸収性接着剤樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸素吸収性樹脂組成物及び酸素吸収性接着剤樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料、食品及び医薬品の包装材料用途として種々の酸素吸収性樹脂材料が提案されている。特に、特許文献1〜3には酸化触媒としての遷移金属塩を添加することなく酸素吸収機能を発現し得る樹脂材料が提案されている。これらの材料は遷移金属触媒による過剰な酸化反応を抑えることにより分解臭成分の抑制を実現した材料であり、包装材料用途として特に優れている。しかしながら、これらの材料は製造条件や加工条件による酸素吸収性能の変化が大きいため、安定的に優れた酸素吸収性能を発揮させることが困難であった。
また、特許文献4にはアリル水素や3級炭素に結合した水素を分子中に有する熱可塑性樹脂に酸素吸収反応開始剤として有機過酸化物を添加した酸素吸収組成物が提案されているが、機能発現のために高温長時間の熱処理が必要であり、実用性のあるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2005/105887号パンフレット
【特許文献2】特開2007−302874号公報
【特許文献3】特開2011−144281号公報
【特許文献4】特開2002−88265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は遷移金属触媒を添加することなく、実用性が高く、安定的に優れた酸素吸収性能を発揮する酸素吸収性材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、酸成分(A)に由来する構造単位を含むポリエステルと有機過酸化物を含有する酸素吸収性樹脂組成物を提供する。
酸成分(A):(i)及び(ii)からなる群より選ばれる構造を有する酸成分;
(i)下記構造(a)及び(b)の両方の基に結合し、かつ、1個の水素原子と結合した炭素原子を有し、該炭素原子が脂環構造に含まれているジカルボン酸若しくはジカルボン酸無水物;
(a)炭素−炭素二重結合基、
(b)カルボニル基;
(ii)不飽和脂環構造内の炭素−炭素二重結合に隣接する炭素原子が電子供与性置換基及び水素原子と結合し、かつ、該炭素原子に隣接する別の炭素原子がカルボニル基と結合しており、該電子供与性置換基と該カルボニル基とがシス位に位置しているジカルボン酸若しくはジカルボン酸無水物
また、本発明は、前記酸素吸収性樹脂組成物と、硬化剤として脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート系硬化剤、及び溶媒として酢酸エチルを含有する酸素吸収性接着剤樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、遷移金属触媒を添加することなく、実用性が高く、安定的に優れた酸素吸収性能を発揮する酸素吸収性材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、酸成分(A)に由来する構造単位を含むポリエステルと有機過酸化物を含有する。
酸成分(A)は、(i)及び(ii)からなる群より選ばれる構造を有する。
(i)下記構造(a)及び(b)の両方の基に結合し、かつ、1個の水素原子と結合した炭素原子を有し、該炭素原子が脂環構造に含まれているジカルボン酸若しくはジカルボン酸無水物;
(a)炭素−炭素二重結合基、
(b)カルボニル基;
(ii)不飽和脂環構造内の炭素−炭素二重結合に隣接する炭素原子が電子供与性置換基及び水素原子と結合し、かつ、該炭素原子に隣接する別の炭素原子がカルボニル基と結合しており、該電子供与性置換基と該カルボニル基とがシス位に位置しているジカルボン酸若しくはジカルボン酸無水物
【0008】
上述の構造(i)及び(ii)は、置換基効果により、優れた酸素との反応性を有する分子構造である。
(i)の構造を有する酸成分として、Δ2−テトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体、Δ3−テトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体、Δ2−テトラヒドロ無水フタル酸若しくはその誘導体、Δ3−テトラヒドロ無水フタル酸若しくはその誘導体を挙げることが出来る。好ましくは、Δ3−テトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体又はΔ3−テトラヒドロ無水フタル酸若しくはその誘導体であり、特に好ましくは4−メチル−Δ3−テトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体又は4−メチル−Δ3−テトラヒドロ無水フタル酸若しくはその誘導体である。4−メチル−Δ3−テトラヒドロ無水フタル酸は、例えば、イソプレンを主成分とするナフサのC5留分を無水マレイン酸と反応させた、4−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸を含む異性体混合物を、構造異性化することにより得ることが出来、工業的に製造されている。
【0009】
(ii)の構造を有する酸成分として、特に好ましくはcis−3−メチル−Δ4−テトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体又はcis−3−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸若しくはその誘導体である。cis−3−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸は、例えば、トランス−ピペリレンを主成分とするナフサのC5留分を無水マレイン酸と反応させることにより得ることが出来、工業的に製造されている。
【0010】
前述の(i)の構造を有する酸成分及び(ii)の構造を有する酸成分は、酸素との反応性が非常に高い。これらの(i)の構造を有する酸成分及び(ii)の構造を有する酸成分は単独で使用することも出来るが、2種類以上を組み合わせて使用することも好ましい。前述の(i)の構造として好適な4−メチル−Δ3−テトラヒドロ無水フタル酸と(ii)の構造として好適なcis−3−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸の混合物は、トランス−ピペリレン及びイソプレンを主成分とするナフサのC5留分を無水マレイン酸と反応させた、cis−3−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸と4−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸の混合物を構造異性化することにより、工業品として低コストで容易に得ることが出来る。このように安価な異性体混合物を使用することは、産業応用を考えると特に好ましい。
本発明で使用するポリエステルを重合する際、ジカルボン酸及びジカルボン酸無水物はメチルエステル等にエステル化されていてもよい。
【0011】
また、本発明の酸素吸収性樹脂組成物には、酸素吸収反応を促進させるために酸素吸収反応触媒(酸化触媒)を添加しても良い。しかしながら、前述の(i)の構造を有する酸成分及び(ii)の構造を有する酸成分に由来する構造単位を含むポリエステルは、酸素との反応性が極めて高いことから、酸素吸収反応触媒の不在下において、実用的な酸素吸収性能を発現することができる。また、本発明の酸素吸収性樹脂組成物を用いて接着剤を調製する際、又は接着剤を用いた加工をする際に、酸素吸収反応触媒が原因となる過度の樹脂劣化に起因するゲル化等を防止するためにも、触媒量の酸素吸収反応触媒を含まないことが望ましい。ここで、酸素吸収反応触媒としては、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅の遷移金属と有機酸からなる遷移金属塩が挙げられる。また、「触媒量の酸素吸収反応触媒を含まない」とは、一般に酸素吸収反応触媒が遷移金属量で10ppm未満であることを意味し、好ましくは1ppm未満である。
【0012】
本発明で使用するポリエステルには、酸成分(A)の他に、芳香族ジカルボン酸や脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ヒドロキシカルボン酸など、他の酸成分(酸成分(B))及びその誘導体を原料として含んでもよい。
芳香族ジカルボン酸及びその誘導体としては、テレフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸などのベンゼンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、スルホイソフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、又はこれらの誘導体等が挙げられる。これらの中でもベンゼンジカルボン酸が好ましく、特に好ましくはテレフタル酸である。
脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、3,3−ジメチルペンタン二酸、又はこれらの誘導体等が挙げられる。これらの中でも、アジピン酸、コハク酸が好ましく、特にコハク酸が好ましい。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体としては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘキサン酸、又はこれらの誘導体が挙げられる。
これらの酸成分は、例えばテレフタル酸ジメチルやビス−2−ヒドロキシジエチルテレフタレートのようにエステル化されていても良い。また、無水コハク酸のように酸無水物であっても良い。これらは、単独、又は、2種類以上を組み合わせて使用できる。前記酸成分を共重合させることによって、得られるポリエステルのガラス転移温度を容易に制御することができ、酸素吸収性能を向上させることが出来る。さらには、有機溶剤への溶解性を制御することも出来る。
また、酸成分(A)は重合中の熱によりラジカル架橋反応を起こしやすいため、酸成分(B)によってポリエステル中に含まれる酸成分(A)の組成比が減少すると、重合中のゲル化が抑制され高分子量の樹脂を安定的に得ることが出来る。
【0013】
酸成分(A)の全酸成分に対する割合は、好ましくは35〜95モル%であり、より好ましくは50〜95モル%である。
酸成分(B)に由来する構造単位の全酸成分に対する割合は1〜30モル%である場合が好ましく、より好ましくは5〜20モル%である。
本発明で使用するポリエステルのガラス転移温度は、十分な酸素吸収性能を得るために、好ましくは−20〜2℃であり、より好ましくは−15〜2℃の範囲であり、さらに好ましくは−12〜2℃の範囲である。また、ガラス転移温度が上記の範囲より低い場合は樹脂の凝集力すなわち耐クリープ性が低下し、高い場合は他の材料への密着力すなわち接着強度が低下するため、接着剤として本発明の2液硬化型酸素吸収性樹脂組成物を適用する場合は好ましくない。
本発明で使用するポリエステルの酸価は、十分な酸素吸収性能を得るために、好ましくは5mgKOH/g以下であり、より好ましくは1mgKOH/g以下である。ポリエステルの酸価が5mgKOH/gを超える場合には、速やかな自動酸化反応が妨げられ、安定した酸素吸収性能が得られない場合がある。
【0014】
本発明で使用するポリエステルは、さらにジオール成分に由来する構造単位を含む。ジオール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−フェニルプロパンジオール、2−(4―ヒドロキシフェニル)エチルアルコール、α,α―ジヒドロキシ−1,3−ジイソプロピルベンゼン、o−キシレングリコール、m−キシレングリコール、p−キシレングリコール、α,α―ジヒドロキシ−1,4−ジイソプロピルベンゼン、ヒドロキノン、4,4−ジヒドロキシジフェニル、ナフタレンジオール、又はこれらの誘導体などが挙げられる。好ましくは、脂肪族ジオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールであり、さらに好ましくは1,4−ブタンジオールである。1,4−ブタンジオールを用いた場合は、樹脂の酸素吸収性能が高く、更に自動酸化の過程で生じる分解物の量も少ない。これらは、単独、又は、2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0015】
本発明で使用するポリエステルは、さらに多価アルコール、多価カルボン酸、又はそれらの誘導体等に由来する構造単位を含んでもよい。多価アルコール及び多価カルボン酸を導入し分岐構造を制御することにより、溶融粘度特性や溶媒に溶解したポリエステルの溶液粘度特性を調整できる。
多価アルコール及びその誘導体としては、1,2,3−プロパントリオール、ソルビトール、1,3,5−ペンタントリオール、1,5,8−ヘプタントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、3,5−ジヒドロキシベンジルアルコール、グリセリン又はこれらの誘導体が挙げられる。
多価カルボン酸及びその誘導体としては、1,2,3−プロパントリカルボン酸、メソ−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、クエン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、又はこれらの誘導体が挙げられる。
また、多価アルコールや多価カルボン酸等の3官能以上の官能基を有する成分を共重合させる場合は全酸成分に対し5モル%以内にすることが好ましい。
【0016】
本発明で使用するポリエステルは当業者に公知の任意のポリエステルの重縮合方法により得ることが出来る。例えば、界面重縮合、溶液重縮合、溶融重縮合及び固相重縮合である。
本発明で使用するポリエステルを合成する場合に、重合触媒は必ずとも必要としないが、例えばチタン系、ゲルマニウム系、アンチモン系、スズ系、アルミニウム系等の通常のポリエステル重合触媒が使用可能である。また、含窒素塩基性化合物、ホウ酸及びホウ酸エステル、有機スルホン酸系化合物等の公知の重合触媒を使用することもできる。
さらに、重合の際にはリン化合物等の着色防止剤や酸化防止剤等の各種添加剤を添加することもできる。酸化防止剤を添加することにより、重合中やその後の加工中の酸素吸収を抑制できるため、酸素吸収性樹脂の性能低下やゲル化を抑えることができる。
本発明で使用するポリエステルの数平均分子量は、好ましくは500〜100000であり、より好ましくは2000〜10000である。また好ましい重量平均分子量は5000〜200000、より好ましくは10000〜100000であり、さらに好ましくは20000〜70000である。分子量が上記の範囲より低い場合は樹脂の凝集力すなわち耐クリープ性が低下し、高い場合は有機溶剤への溶解性の低下や溶液粘度の上昇による塗工性の低下が生じるため、接着剤として本発明の2液硬化型酸素吸収性樹脂組成物を適用する場合に好ましくない。上記範囲内の分子量の場合には、凝集力、接着性及び有機溶剤への溶解性に優れ、接着剤溶液として好適な粘度特性を有する酸素吸収性接着剤樹脂組成物を得ることが出来る。
本発明で使用するポリエステルは、合成の際、重縮合反応とラジカルによる熱重合反応の両反応により分子量が増大し、その結果比較的分子量分布の広い樹脂となる。特に重縮合反応効率が悪い重合条件においては、分子量分布の広がりが増し、この場合該ポリエステルの酸素吸収性能、特に初期酸素吸収性能が低下する傾向にある。本発明の酸素吸収性樹脂組成物および酸素吸収性接着剤樹脂組成物においては、有機過酸化物による酸素吸収反応促進効果により、重合条件によってばらついた該ポリエステルの酸素吸収性能を安定化させ、実用的で安定的な酸素吸収性能を発現するのである。
【0017】
有機過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド、アルキルパーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、パーオキシカーボネート、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ケトンパーオキサイドなどが挙げられる。ジアシルパーオキサイドとしては、具体的にはジイソノナノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドなどが挙げられる。アルキルパーオキシエステルとしては、具体的には3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソノナノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−アミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシピバレート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート、t−アミルパーオキシアセテート、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシベンゾエートなどが挙げられる。パーオキシジカーボネートとしては、具体的にはジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(セカンダリーブチル)パーオキシジカーボネートなどが挙げられる。パーオキシカーボネートとしては、具体的にはt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートなどが挙げられる。パーオキシケタールとしては、具体的には1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、エチル3,3−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブチレート、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)シクロヘキサンなどが挙げられる。ジアルキルパーオキサイドとしては、具体的にはジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−アミルパーオキサイドなどが挙げられる。ハイドロパーオキサイドとしては、具体的には1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−アミルハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。ケトンパーオキサイドとしては、具体的にはメチルエチルケトンパーオキサイドなどが挙げられる。
有機過酸化物としては、好ましくは10時間半減期温度が90℃以下のものである。このような有機過酸化物としては、例えばジアシルパーオキサイド、アルキルパーオキシエステル、パーオキシジカーボネートなどが挙げられる。ジアシルパーオキサイドとしては、具体的にはジイソノナノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドなどが挙げられ、10時間半減期温度はそれぞれ61℃、64℃、73℃である。アルキルパーオキシエステルとしては、具体的には 3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−アミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシピバレート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどが挙げられ、10時間半減期温度はそれぞれ37℃、38℃、44℃、66℃、48℃、53℃、58℃、77℃、82℃、46℃、55℃、75℃である。パーオキシジカーボネートとしては、具体的にはジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(セカンダリーブチル)パーオキシジカーボネートなどが挙げられ、10時間半減期温度はそれぞれ49℃、51℃である。
これらの有機過酸化物は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機過酸化物は、前記ポリエステルに対して、固形分重量部で0.01〜20phr(parts per hundred resin)添加することが好ましく、より好ましくは0.1〜10phr、さらに好ましくは0.5〜5phrである。添加量が少なすぎると、実用性が高く安定的した酸素吸収性能を発揮することが困難であり、多すぎると、ブリードアウトが発生するため好ましくない。
【0018】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート系硬化剤と共に酸素吸収性接着剤樹脂組成物として使用することができる。イソシアネート系硬化剤を用いた場合、接着強度及び凝集力が高くなり、また、室温付近の低温でキュアが可能となる。脂肪族イソシアネート系硬化剤としては、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リジンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、n−ペンタン−1,4−ジイソシアネート等が挙げられる。脂環族イソシアネート系硬化剤としては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート等が挙げられる。これらの中でも、脂肪族イソシアネート系硬化剤としては、XDI及びHDIが好ましく、脂環族イソシアネート系硬化剤としては、IPDIが好ましい。特に好ましくは、XDI及びIPDIであり、最も好ましくはXDIである。XDIを使用することにより、本発明の酸素吸収性接着剤樹脂組成物は最も優れた酸素吸収性能を発揮する。IPDIとXDIを組み合わせて使用することも好ましい。一方、芳香族イソシアネート系硬化剤は、樹脂の接着性及び凝集力を向上させるものの、酸素吸収性能を著しく低下させるため、好ましくない。この理由として、芳香族イソシアネート系硬化剤が、主剤であるポリエステル末端の水酸基と反応して形成された芳香族ウレタン部位が、酸化防止剤である芳香族アミンと同様の働きで、ラジカルを失活/安定化させるためであることが考えられる。
これらの脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート系硬化剤は、アダクトやイソシアヌレート、ビュレット体等、分子量を増大させたポリイソシアネート化合物として使用されることが好ましい。
また、これらの脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート系硬化剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート系硬化剤成分は、主剤であるポリエステルに対して、固形分重量部で3phr〜30phr添加することが好ましく、より好ましくは5phr〜20phr、さらに好ましくは7phr〜15phrである。添加量が少なすぎると、接着性及び凝集力が不十分となり、多すぎると、樹脂単位重量中に含まれる酸素吸収成分の配合量が少なくなり、酸素吸収性能が不十分となる。また、硬化により樹脂の運動性が著しく低下した場合、酸素吸収反応が進行しにくくなり、酸素吸収性能は低下する。
また、上記の脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート系硬化剤は、鎖延長剤として主剤であるポリエステルを高分子量化する目的で使用することも出来る。これらのイソシアネート系硬化剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
本発明の酸素吸収性接着剤樹脂組成物は、有機溶剤等の溶媒を含有することが好ましい。溶媒としては、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、イソプロパノールなどが挙げられる。特に、酢酸エチルは残留溶剤を原因とする異臭トラブルが比較的少ないことから、軟包装のドライラミネート用接着剤の溶媒として一般的であり、産業応用を考慮するとトルエンやキシレン等を含有しない酢酸エチル単一溶剤を本発明の溶媒として用いることが好ましい。
本発明の酸素吸収性接着剤樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じてシランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、防カビ剤、硬化触媒、増粘剤、可塑剤、顔料、充填剤、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の各種添加剤を添加することができる。
【0021】
本発明の酸素吸収性接着剤樹脂組成物は、通常のドライラミネート用接着剤と同様に複数のフィルムを積層する目的で使用することが出来る。特に、酸素バリア性を有するフィルム基材と、ヒートシール性及び酸素ガス透過性を有するシーラントフィルムの積層に好適に使用できる。この場合、外層側から酸素バリア基材層/酸素吸収性接着剤層/シーラント層の積層構成となり、外部から透過進入する酸素を酸素バリア基材により遮断することにより、容器外酸素による酸素吸収性能の低下を抑えると共に、酸素吸収性接着剤が酸素透過性シーラントフィルムを介して容器内部の酸素を速やかに吸収できるため好ましい。
酸素バリア性を有するフィルム基材及びシーラントフィルムはそれぞれ単層でも積層体でもよい。酸素バリア性を有するフィルム基材としては、バリア層としてシリカ、アルミナ等の金属酸化物或いは金属の蒸着薄膜や、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリル酸系樹脂或いは塩化ビニリデン系樹脂等のガスバリア性有機材料を主剤とするバリアコーティング層を有する、二軸延伸PETフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム或いは二軸延伸ポリプロピレンフィルム等を好適に使用できる。また、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリメタキシリレンアジパミドフィルム、ポリ塩化ビニリデン系フィルムやアルミ箔等の金属箔も好ましい。これらの酸素バリア性を有するフィルム基材は、同種基材や2種以上の異種基材を積層して使用することも出来、また、二軸延伸PETフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、セロファン、紙等を積層して使用することも好ましい。
【0022】
シーラントフィルムの材料としては低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、環状オレフィン重合体、環状オレフィン共重合体、或いはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダム又はブロック共重合体等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体やそのイオン架橋物(アイオノマー)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等のエチレン−ビニル化合物共重合体、ヒートシール性を有するPET、A−PET、PETG、PBT等のポリエステルやアモルファスナイロン等を好適に使用できる。これらは二種以上の材料をブレンドして使用することも出来、同種材料や異種材料を積層して用いることも出来る。
【0023】
本発明の酸素吸収性接着剤樹脂組成物を用いて複数のフィルム基材をラミネートする際、公知のドライラミネーターを使用することが出来る。ドライラミネーターにより、酸素吸収性接着剤樹脂組成物のバリアフィルム基材への塗布、乾燥オーブンによる溶剤揮散、50〜120℃に加温したニップロールでのシーラントフィルムとの貼り合わせの一連のラミネート工程を実施することが出来る。酸素吸収性接着剤樹脂組成物の塗布量は、固形分で0.1〜30g/m2、好ましくは1〜15g/m2であり、さらに好ましくは2〜10g/m2である。酸素吸収性接着剤樹脂組成物を用いてラミネートされた酸素吸収性積層フィルムは、室温付近の温度、例えば10〜60℃で硬化反応を進めるためにエージング(キュア)することも好ましい。硬化は主にイソシアネート系硬化剤による架橋反応によるものであり、硬化により接着強度や凝集力が向上するため好ましい。なお、エージングは、酸素吸収性積層フィルムを、例えば酸素不透過性の袋等で密封することにより、酸素不在下若しくは酸素遮断下で行うのが好ましい。このようにすることにより、エージング中における空気中の酸素による酸素吸収性能の低下を抑制することが出来る。
また、本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、溶剤に溶解させることなく、無溶剤型接着剤として使用することもできる。この場合、公知のノンソルラミネーターを用いて酸素吸収性積層フィルムを得ることが出来る。
さらに、本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、接着剤用途に限らず塗料用途にも使用することができ、各種フィルム等のコーティング膜として塗工することができる。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、熱履歴により有機過酸化物が分解、すなわちラジカルが発生し、そのラジカルが本発明で使用するポリエステルの水素引き抜きに伴うラジカル発生を促進することにより、安定したラジカル自動酸化反応が生じ、実用的かつ安定的な酸素吸収性能を発揮する。本発明の酸素吸収性接着剤樹脂組成物においては、ラミネート工程中の乾燥オーブンやニップロールの熱、およびキュア中の熱により有機過酸化物からのラジカル発生が起こる。特に、10時間半減期温度が90℃以下の比較的分解しやすい有機過酸化物を使用することにより、通常のラミネート条件での有機過酸化物の分解とそれに伴う安定的な酸素吸収性能の発現が可能である。通常のラミネート条件で熱量が不十分の場合は、さらに熱処理工程を加えることも好ましい。
【0024】
本発明の酸素吸収性接着剤樹脂組成物を用いてラミネートされた酸素吸収性積層フィルムは、種々の形態の袋状容器や、カップ・トレイ容器の蓋材に好適に使用できる。袋状容器としては、三方又は四方シールの平パウチ類、ガセット付パウチ類、スタンディングパウチ類、ピロー包装袋等が挙げられる。
酸素吸収性積層フィルムを少なくとも一部に用いた酸素吸収性容器は、容器外部から透過する酸素を有効に遮断し、容器内に残存した酸素を吸収する。そのため、容器内の酸素濃度を長期間低いレベルに保ち、内容物の酸素が係わる品質低下を防止し、シェルフライフを向上させる容器として有用である。
特に、酸素存在下で劣化しやすい内容品として、例えば、食品ではコーヒー豆、茶葉、スナック類、米菓、生・半生菓子、果物、ナッツ、野菜、魚・肉製品、練り製品、干物、薫製、佃煮、生米、米飯類、幼児食品、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、食用油、ドレッシング、ソース類、乳製品等、飲料ではビール、ワイン、フルーツジュース、緑茶、コーヒー等、その他では医薬品、化粧品、電子部品等が挙げられるが、これらの例に限定されない。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。各値は以下の方法により測定した。
(1)数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー社製;HLC−8120型GPC)により、ポリスチレン換算で測定した。溶媒にはクロロホルムを使用した。
(2)酸成分(A)に由来する構造単位を含むポリエステル中の各モノマー単位の組成比。
核磁気共鳴分光法(1H−NMR、日本電子データム社製;EX270)により、コハク酸由来のメチレンプロトン(2.6ppm)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸及びコハク酸から誘導されたエステル基に隣接するメチレンプロトン(4.1〜4.2ppm)のシグナルの面積比から樹脂中の酸成分の組成比をそれぞれ算出した。溶媒には基準物質としてテトラメチルシランを含む重クロロホルムを使用した。
このとき、樹脂中の酸成分の組成比は、重合に使用した各モノマーの仕込み量(モル比)とほぼ同等であった。
(3)ガラス転移温度;Tg
示差走査熱量測定器(セイコーインスツルメンツ社製DSC6220)を用いて、窒素気流中、昇温速度10℃/分で測定した。
(4)酸価
JISK0070:1992に準じて測定した。
(5)酸素吸収量
2cm×10cmに切り出した積層フィルム試験片を、内容積85cm3の酸素不透過性のスチール箔積層カップに仕込んでアルミ箔積層フィルム蓋でヒートシール密封し、22℃雰囲気下にて保存した。3日及び14日間保存後のカップ内酸素濃度をマイクロガスクロマトグラフ装置(アジレント・テクノロジー社製;M200)にて測定し、フィルム1m2当たりの酸素吸収量を算出した。3日区で50ml/m2以上且つ14日区で300ml/m2以上の酸素吸収量を満足するものを良好(○)、それ以外を不良(×)とした。
【0026】
(実施例1)
攪拌装置、窒素導入管、Dean−Stark型水分離器を備えた3Lのセパラブルフラスコに、酸成分(A)として4−メチル−Δ3−テトラヒドロ無水フタル酸を45モル%及びcis−3−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸を21モル%含有するメチルテトラヒドロ無水フタル酸異性体混合物(日立化成社製;HN−2200)を898g、その他の酸成分として無水コハク酸(和光純薬社製)を60g、ジオール成分として1,4−ブタンジオール(和光純薬社製)を702g、重合触媒としてイソプロピルチタナート(キシダ化学社製)を300ppm、及びトルエン20mlを仕込み、窒素雰囲気中150℃〜200℃で生成する水を除きながら約5時間反応させた。引き続いて反応系よりトルエンを除いた後、0.7kPaの減圧下、200〜220℃で約6時間重合を行い、酸素吸収性接着剤用樹脂を得た。このときMnは約3400、Mwは27100、Tgは−6.8℃、酸価は0.5mgKOH/gであった。
得られた酸素吸収性接着剤用樹脂を酢酸エチルに20wt%の濃度で溶解した(以下、この溶液を基本溶液Aとする)。この基本溶液Aに対して、硬化剤(三井化学社製;A−50、脂環族・脂肪族混合イソシアネート系硬化剤、固形分濃度75%)及び有機過酸化物としてジラウロイルパーオキサイドを固形分換算で、それぞれ10phr及び3phrを添加、振騰し、酸素吸収性接着剤溶液を調製した。調製した接着剤溶液を、12μm透明蒸着PETフィルム(凸版印刷社製GL−AE)の蒸着面側に、#18のバーコーターにて塗布した。100℃の電気オーブンにて1分間処理して接着剤に含まれる溶剤を飛ばした後、透明蒸着PETフィルムの接着剤塗布面と、30μmLDPEフィルム(タマポリ製;AJ−3)のコロナ処理面を対向させて70℃の熱ロールで圧着し、透明蒸着PETフィルム/酸素吸収性樹脂組成物(接着剤)(膜厚4μm)/LDPEからなる酸素吸収性積層フィルムを得た。
得られた酸素吸収性積層フィルムを、35℃窒素雰囲気下で5日間キュアした後、酸素吸収性能評価に供した。結果を表1に示す。
【0027】
(実施例2)
ジラウロイルパーオキサイドの添加量を0.8phrとした以外は実施例1と同様にして酸素吸収性積層フィルムを作製し、酸素吸収性能評価に供した。結果を表1に示す。
【0028】
(実施例3)
ジラウロイルパーオキサイドの添加量を0.3phrとした以外は実施例1と同様にして酸素吸収性積層フィルムを作製し、酸素吸収性能評価に供した。結果を表1に示す。
【0029】
(実施例4)
ジラウロイルパーオキサイドの代わりにt−ブチルパーオキシピバレートを用いた以外は実施例1と同様にして酸素吸収性積層フィルムを作製し、酸素吸収性能評価に供した。
結果を表1に示す。
【0030】
(実施例5)
ジラウロイルパーオキサイドの代わりにジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネートを用いた以外は実施例1と同様にして酸素吸収性積層フィルムを作製し、酸素吸収性能評価に供した。結果を表1に示す。
【0031】
(比較例1)
ジラウロイルパーオキサイドを添加しなかった以外は実施例1と同様にして酸素吸収性積層フィルムを作製し、酸素吸収性能評価に供した。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
有機過酸化物種 A:ジラウロイルパーオキサイド
B:t−ブチルパーオキシピバレート
C:ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート