特許第6024903号(P6024903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6024903入力装置、入力制御方法、プログラム及び電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6024903
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】入力装置、入力制御方法、プログラム及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   G06F3/041 580
   G06F3/041 512
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-550695(P2012-550695)
(86)(22)【出願日】2011年12月13日
(86)【国際出願番号】JP2011006942
(87)【国際公開番号】WO2012090405
(87)【国際公開日】20120705
【審査請求日】2014年11月6日
(31)【優先権主張番号】特願2010-293161(P2010-293161)
(32)【優先日】2010年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(72)【発明者】
【氏名】山口 嘉之
【審査官】 塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−117371(JP,A)
【文献】 特開2008−134836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
離間して配設された複数のX電極とY電極をペアにして選択する選択手段と、
前記ペアの電気特性の変化からタッチ操作またはホバー操作を検出する検出手段と、
前記X電極とY電極の少なくとも一方の一部をホバー操作検出用のホバー電極とし、その他の電極の少なくとも一部をタッチ操作検出用のタッチ電極として設定する設定手段とを備え、
前記設定手段は、前記タッチ電極によってタッチ操作が検出された場合に、前記ホバー電極をタッチ操作検出用のタッチ電極として再設定することを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記X電極とY電極の一方は、前記タッチ操作またはホバー操作の操作面に近い方に位置する電極であることを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記検出手段の検出感度を切り替える切替手段を備え、
該切替手段は、前記選択手段によって前記X電極とY電極の一方の一部の電極が選択されている場合に前記検出手段の検出感度を高感度に設定し、前記X電極とY電極の一方の残りの電極が選択されている場合に前記検出手段の検出感度を低感度に設定することを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項4】
前記ペアの電気特性は静電容量であり、
前記検出手段は、前記静電容量の変化を示す信号値と閾値とを比較して前記静電容量の変化を検出するものであり、
前記切替手段は、前記検出手段の閾値を変更することによって該検出手段の検出感度を切り替えることを特徴とする請求項に記載の入力装置。
【請求項5】
前記ペアの電気特性は静電容量であり、
前記検出手段は、前記静電容量の一端に駆動信号を加えた際に該静電容量の他端に現れる該駆動信号の大きさまたはその大きさを示す信号値と閾値とを比較して前記静電容量の変化を検出するものであり、
前記切替手段は、前記静電容量の一端に加える駆動信号の大きさまたはその大きさを示す信号値を変更することによって該検出手段の検出感度を切り替えることを特徴とする請求項に記載の入力装置。
【請求項6】
離間して配設された複数のX電極とY電極をペアにして選択する選択工程と、
前記ペアの電気特性の変化からタッチ操作またはホバー操作を検出する検出工程と、
前記X電極とY電極の少なくとも一方の一部をホバー操作検出用のホバー電極とし、その他の電極の少なくとも一部をタッチ操作検出用のタッチ電極として設定する設定工程とを含み、
前記設定工程は、前記タッチ電極によってタッチ操作が検出された場合に、前記ホバー電極をタッチ操作検出用のタッチ電極として再設定することを特徴とする入力制御方法。
【請求項7】
入力装置のコンピュータを、
離間して配設された複数のX電極とY電極をペアにして選択する選択手段と、
前記ペアの電気特性の変化からタッチ操作またはホバー操作を検出する検出手段と
前記X電極とY電極の少なくとも一方の一部をホバー操作検出用のホバー電極とし、その他の電極の少なくとも一部をタッチ操作検出用のタッチ電極として設定し、前記タッチ電極によってタッチ操作が検出された場合に、前記ホバー電極をタッチ操作検出用のタッチ電極として再設定する設定手段と
して機能させるためのプログラム。
【請求項8】
請求項1に記載の入力装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置、入力制御方法、プログラム及び電子機器に関し、詳細には、タッチパネルと呼ばれる入力装置、入力制御方法、プログラム及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルとはパネルへのタッチを検出してコンピュータに所要のコマンドを与えるための入力装置のことをいう。抵抗膜方式や静電容量方式、あるいは超音波表面弾性波方式や電磁誘導方式など様々なタイプがあるが、今日の主流は抵抗膜方式や静電容量方式(正確には投影型静電容量方式:Projected Capacitive Type)である。いずれも価格に大差なく、しかもマルチタッチ(複数のタッチ点検出)にも対応可能だからである。
【0003】
抵抗膜方式はメカニカルスイッチと同じ原理でタッチを検出する。すなわち、パネルに加えられた力を利用してパネル内の電極同士をオンにする。このため、少ないとはいえ、ある程度の“押圧力”を必要とする。一方、静電容量方式は、パネル内の静電容量の変化からタッチを検出する。これは、人体は容量100pF程度のコンデンサとみなすことができるからであり、人体の一部(通常は指先;以下、指先で代表する)をパネルに接触させるだけで静電容量が変化するからである。このように、抵抗膜方式は所要の“押圧力”を必要とするのに対して静電容量方式は、そのような押圧力を必要としない点で相違する。したがって、静電容量方式のタッチパネルは、指先をパネルに軽く触れるだけでタッチ操作を行うことができるという利点を有するから、たとえば、携帯電話機や携帯情報端末等のタッチパネルの主流を占めるものとして今後の発展が期待されている。
【0004】
ところで、静電容量方式のタッチパネルは、上記のタッチ操作(指先をパネルに軽く触れること)のみならず、指先の接近操作(いわゆるホバー操作)も検出可能である。パネルの静電容量は、指先をパネルに近づけるだけでも変化するからである。ホバー操作は、たとえば、タッチパネルの感度を高めることによって検出可能であるが、単に感度を高めただけでは誤検出を否めず、しかも、タッチ操作とホバー操作を区別できないという不便もある。
【0005】
<特許文献1(以下、第1従来技術)>
この第1従来技術には、静電容量の変化の大小に応じてタッチ操作とホバー操作を区別する技術が開示されている。しかしながら、この技術は、タッチ検出とホバー検出とを区別するための調整機能を有していない。したがって、各々の検出の区別を精度よく充分に行うことができない。
【0006】
<特許文献2(以下、第2従来技術)>
この第2従来技術には、パネル面における信号パターンの違い、具体的には、非接触状態の指先表面は自然な丸みを帯びているために小さな面積の信号パターンとなり、一方、接触状態の指先表面はわずかにつぶれて平坦面が広がるために大きめの信号パターンになるというパターン差に基づいてタッチ操作とホバー操作と区別する技術が開示されている。しかしながら、この技術は、タッチ検出とホバー検出とを区別するための調整機能を有している(質量中心などを調べる方法)とはいえるものの、その調整は推定が入るものであって、タッチ検出とホバー検出とを区別する精度が充分とはいえない。
【0007】
<特許文献3(以下、第3従来技術)>
この第3従来技術には、物体(指先)とパネル面との距離が近づくにつれて検出分解能と検出感度を段階的に変更し、各段階ごとに、遠方ホバー操作、近接ホバー操作およびタッチ操作を順次に走査しながら検出する技術が記載されている。つまり、同文献の図3に示されているように、パネル面から距離Lp〜Lq(但し、Lp>Lq)の検知空間Iにおいては、最低検知分解能と最高検出感度を適用して遠方ホバー操作を走査検出し、次の距離0〜Lqの検知空間IIにおいては、中間検知分解能と中間検出感度を適用して近接ホバー操作を走査検出し、最後の距離0(つまり、パネル面上)においては、最高検知分解能と最低検出感度を適用してタッチ操作を走査検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−330618号公報
【特許文献2】特表2009−543246号公報
【特許文献3】特開2008−117371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記第1従来技術は、タッチ検出とホバー検出とを区別するための調整機能そのものを有していないため、精度に言及するまでもなく、タッチ検出とホバー検出の区別を行うことができない。
また、前記第2従来技術は、タッチ検出とホバー検出とを区別するための調整機能に推定が入つているため、タッチ検出とホバー検出とを区別する際の精度が充分とはいえない。
さらに、前記第3従来技術は、タッチ検出とホバー検出とを区別するための調整機能として時系列的な検出走査を行っているが、少なくとも複数回の走査が必要であり、単回の走査と比較して走査に要する時間が必要となるものであった。そのため精度が十分とはいえなかった。
したがって、前記第1〜第3従来技術は、いずれも精度が十分でないという問題点がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、タッチパネル面に接触した状態の検知だけではなく、タッチパネル面に近接した状態(タッチパネル面に触れる前の状態の検知についても、十分な精度で行うことができる入力装置、入力制御方法、プログラム及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の入力装置は、離間して配設された複数のX電極とY電極をペアにして選択する選択手段と、前記ペアの電気特性の変化からタッチ操作またはホバー操作を検出する検出手段と、前記X電極とY電極の少なくとも一方の一部をホバー操作検出用のホバー電極とし、その他の電極の少なくとも一部をタッチ操作検出用のタッチ電極として設定する設定手段とを備え、前記設定手段は、前記タッチ電極によってタッチ操作が検出された場合に、前記ホバー電極をタッチ操作検出用のタッチ電極として再設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、タッチパネル面に接触した状態だけではなく、タッチパネル面に近接した状態の検知についても十分な精度で行うことができ、検出精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】投影型静電容量方式のタッチパネルを搭載した電子機器の外観図である。
図2】携帯電話機1の構成図である。
図3】タッチパネル7の概念構成図である。
図4】タッチ部9の断面図である。
図5】タッチとホバーの感応判定の原理説明図である。
図6】電極の走査順と二つの閾値の適用順を示すタイミング図である。
図7】タッチパネル7の制御動作フローを示す図である。
図8】ホバー電極とタッチ電極のパターン分けを示す図である。
図9】タッチ操作判定時の閾値適用図である。
図10】感度変更の他の例を示す図である。
図11】ホバー電極とタッチ電極割り当ての他の例を示す図である。
図12】タッチパネルの他の構造を示す図である。
図13】ホバー電極割り当ての他の態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、投影型静電容量方式のタッチパネルを搭載した電子機器の外観図である。図において、電子機器は、たとえば、携帯電話機1を示しており、この携帯電話機1は、手持ちに適した厚みと大きさを有する縦長箱型形状の本体部100と、その本体部100の上部一短辺端にヒンジ機構101を介して連結された、本体部100と略同型状かつ薄厚の蓋部102とを備えた、いわゆる「折り畳み式」の筐体103を有している。
【0015】
本体部100の一方面(蓋部102との対向面)には、多数の操作ボタンからなる操作ボタン群104や送話孔105が設けられ、また、蓋部102の一方面(本体部100との対向面)には、前面にタッチパネル7が貼り付けられた表示部6や、この表示部6の周囲を覆う額縁部106及び受話孔107が設けられている。
【0016】
なお、図示の携帯電話機1は「折り畳み式」であるが、これに限定されない。非折り畳み式やスライド式などであってもよい。要は、投影型静電容量方式のタッチパネル7を搭載した携帯電話機であればよい。また、その機器種別も携帯電話機に限らない。投影型静電容量方式のタッチパネル7を搭載した電子機器であればよく、たとえば、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末、携帯ゲーム機、電子辞書、電子ブック表示端末など如何なるものであってもよい。さらに、それらの電子機器の可搬性(携帯型と据え付け型の違い)も問わない。
【0017】
図2は、携帯電話機1の構成図である。この携帯電話機1は、通信部2、送受話部3、操作部4、制御部5、表示部6、タッチパネル7、電源部8及びタッチパネル7のドライバ部71などを備えている。なお、図示のタッチパネル7のドライバ部71はタッチパネル7に外付けされる別体型のものを示しているが、これに限定されない。タッチパネル7の内部に組み込まれた一体型のものであってもよい。
【0018】
通信部2は、制御部5からの制御により、アンテナ2aを介して最寄りの基地局(図示略)との間で無線によるアナログもしくはデジタルデータの送受信を行い、このデータには、電話の着呼や発呼の情報および音声通話の情報が含まれるほか、必要であれば、インターネット上のコンテンツを利用(ダウンロード)する際などのコンテンツ情報や電子メールの送受信情報などが含まれる。
【0019】
送受話部3は、不図示のマイクやスピーカを含み、この送受話部3は、制御部5からの制御により、マイクからの音声信号をデジタルデータに変換して制御部5に出力したり、制御部5から出力されたデジタルの音声信号をアナログ信号に変換してスピーカから出力したりする。
【0020】
操作部4は、制御部5に対して所要のユーザ入力を行うための各種操作ボタン(電源スイッチやテンキーおよび機能キーなど:図1の操作ボタン群104参照)を備え、電源部8は、この携帯電話機1の動作に必要な電源を供給するためのバッテリ(一次電池または充電可能な二次電池)を含む。
【0021】
表示部6は、液晶ディスプレイ等の平面表示デバイスである。この表示部6の表示面には、投影型静電容量方式のタッチパネル7が貼り付けられている。なお、図では表示部6とタッチパネル7を面方向に若干ずらして描いているが、これは説明上の便宜である。実際には、表示部6の表示面全体を覆うようにして、この表示面とほぼ同じ平面サイズのタッチパネル7が配置されている。また、表示部6とタッチパネル7は必ずしも別々の部品である必要はない。たとえば、表示部6の表示層(液晶層等)の上層側にタッチパネル7が組み込まれた一体型のものであってもよい。タッチパネル7の詳細構成とその動作については後述する。
【0022】
制御部5は、マイクロコンピュータまたは単にコンピュータ(以下、CPU)5a、書き換え可能不揮発性半導体メモリ(以下、PROM)5bおよび高速半導体メモリ(以下、RAM)5cならびに不図示の周辺回路を含むプログラム制御方式の制御要素であり、この制御部5は、携帯電話機1の全体動作を統括制御するために、あらかじめPROM5bに格納されている制御プログラムをRAM5cにロードしてCPU5aで実行する。
【0023】
制御プログラムは、グラフィカルユーザインターフェース対応の、いわゆるオペレーティングシステム(OS)と称される基本プログラムを含むとともに、所要のドライバプログラム、詳細には、特定のハードウェアの動作に必要な専用プログラムであって、たとえば、タッチパネル7のドライバプログラムを含み、さらに、それらの基本プログラムやドライバプログラムなどとともに、特定の機能(図示の例では携帯電話機能)を実現するための専用アプリケーションプログラム(応用プログラム)を含む。
【0024】
タッチパネル7のドライバ部71は、アナログ回路部72と、ドライバ部71の動作基準信号を発生する基準信号発生部(OSC)73と、この基準信号に従って、メモリ部74にあらかじめ格納されている所定の制御プログラム(ファームウェア)を実行しながら、アナログ回路部72に搭載された各部(信号源19、走査駆動部18、X電極選択部16、Y電極選択部17、閾値切替部21及び感応判定部20など)の動作を制御したり、入出力部76を介して携帯電話機1の制御部5との間でデータのやりとりをしたりするマイクロコンピュータまたは単にコンピュータ(CPU)75とを備える。
【0025】
図3は、タッチパネル7の概念構成図である。この図において、タッチパネル7は、表示部6の表示面とほぼ同じ平面サイズ(縦横の大きさ)のタッチ部9を備える。タッチ部9は、微小間隔で一様に配列された縦方向と横方向の各々複数本ずつの電極を備える、いわゆる相互静電容量(Mutual Capacitance)方式の構造を有している。なお、この図では、一定幅の長尺電極としているが、これに限定されない。たとえば、正方形や菱形またはその他の形を連ねた形状の電極であってもよい。
【0026】
ここで、タッチ部9の縦方向(図面の上下方向)をY軸方向、横方向(図面の左右方向)をX軸方向ということにし、縦方向に配列された各電極にY1〜Y8の符号を付すとともに、横方向に配列された各電極にX1〜X8の符号を付すことにする。
【0027】
なお、図示の電極本数(X、Y各々8本)は説明上の一例に過ぎない。タッチ部9の平面サイズにもよるが、実際には数百乃至数千本にも及ぶ。また、電極Y1〜Y8、X1〜X8を含むタッチ部9は透光性を有する素材で作られており、タッチ部9の裏面側に位置する表示部6の表示面に表示された任意の表示情報を、このタッチ部9を透して視認できるようになっている。
【0028】
図4は、タッチ部9の断面図である。この図において、タッチ部9は、表示部6の表示面に接して配置されたガラスや透明フィルム等の基部用透明板10と、その基部用透明板10の上に順次に積層配置されたX電極層11およびY電極層12と、そのY電極層12の上面に配置されたガラス(好ましくは強化ガラス)やアクリル等の保護用透明板13とを備える。なお、保護用透明板13にガラスや強化ガラスを使用した場合には、万一の破損事故に備え、ガラス破片の飛散防止用の保護膜(たとえば、保護用透明フィルム)をガラス表面に貼り付けておくことが望ましい。
【0029】
X電極層11は、透明な誘電体膜(たとえば、PET)14に微小間隔な多数の電極X1〜X8を形成したものであり、同様に、Y電極層12も透明な誘電体膜15に微小間隔な多数の電極Y1〜Y8を形成したものである。電極X1〜X8、Y1〜Y8は透明な導電素材、たとえば、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウム錫)などを蒸着または塗布もしくは印刷して形成されている。
【0030】
二つの電極層(X電極層11とY電極層12)は電極の配列方向を除き、いずれも同じ構造を有している。但し、図示のとおり、X電極層11とY電極層12は基部用透明板10の上に順次に積層配置されたものであって、図示の例では、X電極層11の上にY電極層12が位置しているから、Y電極層12の方が上層、つまり、タッチ部9の表面(タッチ面9a)に近い位置にある点で相違する。なお、この上下関係は逆であってもかまわない。すなわち、X電極層11が上層に位置していてもかまわないが、ここでは、図示の上下関係にある(X電極層11の上層にY電極層12が位置する)ものとして説明を続ける。
【0031】
再び図3に戻り、電極X1〜X8の一端側にはX電極選択部16が接続され、同様に、電極Y1〜Y8の一端側にはY電極選択部17が接続されている。これらのX電極選択部16およびY電極選択部17は、走査駆動部18からの走査信号に応答して電極X1〜X8と電極Y1〜Y8とを線順次に選択する。線順次の方法は、行(Y)単位や列(X)単位のいずれであってもよい、たとえば、行(Y)単位に各列(X)を選択してもよく、あるいは列(X)単位に各行(Y)を選択してもよいが、ここでは後者の方法を採用することにする。すなわち、X電極選択部16およびY電極選択部17は、走査駆動部18からの走査信号に応答して、まず、第1列目のX電極(X1)を選択しながら、その選択中に第1行目から第8行目までのY電極(Y1〜Y8)を順次選択し、次いで、第2列目のX電極(X2)を選択しながら、その選択中に第1行目から第8行目までのY電極(Y1〜Y8)を順次選択し、・・・・、最後に、第8列目のX電極(X8)を選択しながら、その選択中に第1行目から第8行目までのY電極(Y1〜Y8)を順次選択する、という動作を延々と繰り返すことにより、線順次に電極X1〜X8と電極Y1〜Y8とを選択する。なお、ここでは、順次選択方式で説明したが、これに限らない。たとえば、一つ飛ばしや複数本飛ばしなどの間引き的な選択方式であってもよい。
【0032】
X電極選択部16とY電極選択部17の枠内に描かれている8接点のロータリスイッチ16a、17aは、それらX電極選択部16とY電極選択部17の選択動作を模式化して示したものである。X電極選択部16は、ロータリスイッチ16aの接点を介して信号源19からの駆動信号(所定周波数且つ所定信号レベルの交流信号)を選択電極(X1〜X1のいずれか)に供給する。また、Y電極選択部17は、選択電極(Y1〜Y1のいずれか)と、その時点でX電極選択部16によって選択されているX電極との間の静電容量を通過した駆動信号(信号源19から供給されたもの)をロータリスイッチ17aの接点を介して取り出し、感応判定部20に出力する。
【0033】
感応判定部20は、Y電極選択部17を介して取り出した駆動信号から雑音(信号源19で作られた駆動信号以外の信号等)を取り除き、雑音除去後の信号を直流化した後、この直流信号と所定の判定閾値とを比較してタッチ部9へのタッチ操作またはホバー操作の有無を判定し、その判定結果を所定のイベント信号(タッチイベントまたはホバーイベント)として制御部5に出力する。
【0034】
本実施形態における閾値は二つであり、その一つはホバー操作判定用の高感度検出閾値SLH、他の一つはタッチ操作判定用の低感度検出閾値SLLである。閾値切替部21は、走査駆動部18からの走査信号に応答して、これら二つの閾値SLH、SLLを適宜に切り替えながら感応判定部20に出力し、感応判定部20は、閾値切替部21から出力された閾値を用いてタッチとホバーの感応判定を行う。
【0035】
タッチとホバーの感応判定原理を説明する。
図5は、タッチとホバーの感応判定の原理説明図である。まず、タッチとホバーのいずれの操作も行われていない場合を説明する。(a)において、信号源19で作られた駆動信号22はコンデンサCの一端に加えられる。コンデンサCはX電極選択部16とY電極選択部17で選択された一対のXY電極の間に生じている静電容量を表しており、駆動信号22は交流信号であるから、駆動信号22の一部がコンデンサCを通過し、コンデンサCを通過した駆動信号22、つまり、コンデンサCの他端に現れた駆動信号22を直流化することにより、そのコンデンサCの通過量に対応した値を持つ直流電圧Eaが得られる。
【0036】
次に、タッチ操作が行われた場合は、(b)に示すように、コンデンサCに人体の容量Ca(Ca≒100pF)が作用し、この容量Caを介して駆動信号22の漏洩を生じる。これは、人体は容量Caの接地体とみなされるからである。この漏洩により、コンデンサCを通過する駆動信号22が減少し、結局、コンデンサCを通過した駆動信号2の直流電圧Ebが、前記の(a)の直流電圧Eaよりも小さくなる。したがって、タッチ操作の有無を区別するには、上記の二つの直流電圧Ea、Ebを判別できる適当な閾値を用いればよい。
【0037】
一方、ホバー操作は、非タッチであるが、指先等の人体の一部がタッチ部9のタッチ面9aに接近した状態であるから、この状態にあってもコンデンサCに対して人体の容量が作用する。但し、この状態(ホバー操作状態)における人体容量は、タッチ操作時の容量Caよりも少なくなるので、ホバー操作判定用の閾値は前記タッチ操作判定用の閾値よりも高感度側に振る必要がある。
【0038】
本実施形態における二種類の閾値SLH、SLLは、このような考え方の下に決定されたものであり、高感度検出閾値SLHはホバー操作判定用、低感度検出閾値SLLはタッチ操作判定用である。なお、これらの「高感度」や「低感度」の言葉に特段の意味はない。(c)に示すように、ホバー操作時の直流電圧値E1を若干上回る大きさの閾値をSLHとするとともに、タッチ操作時の直流電圧値E2を若干上回る大きさの閾値をSLLとすればよく、SLLから見た場合のSLHは高感度側に位置し、その逆にSLHから見た場合のSLLは低感度側に位置していることを意味しているに過ぎない。
【0039】
図6は、電極の走査順と二つの閾値の適用順を示すタイミング図である。この図において、最上段は電極Y1〜Y8、X1〜X8の走査順を示しており、この図では、列(X)単位に各行(Y)を走査する線順次の走査例を示している。すなわち、まず、第1列目のX電極(X1)を選択しながら、その選択中に第1行目から第8行目までのY電極(Y1〜Y8)を順次選択し、次いで、第2列目のX電極(X2)を選択しながら、その選択中に第1行目から第8行目までのY電極(Y1〜Y8)を順次選択し、・・・・(この間、省略)・・・・、次いで、第7列目のX電極(X7)を選択しながら、その選択中に第1行目から第8行目までのY電極(Y1〜Y8)を順次選択し、最後に、第8列目のX電極(X8)を選択しながら、その選択中に第1行目から第8行目までのY電極(Y1〜Y8)を順次選択する、という動作を延々と繰り返す線順次の走査例を示している。
【0040】
閾値の適用パターンは二つある。第一は高感度検出閾値SLHと低感度検出閾値SLLを交互に適用するパターンであり、第二は低感度検出閾値SLLのみを適用するパターンである。中段は前者の第一のパターン、最下段は後者の第二のパターンを示している。第一のパターンでは、電極Y1〜Y8の走査単位に高感度検出閾値SLHと低感度検出閾値SLLを交互に適用する。ここでは、奇数番目のY電極(Y1、Y3、Y5、Y7)を走査する際に高感度検出閾値SLHを適用し、偶数番目のY電極(Y2、Y4、Y6、Y8)を走査する際に低感度検出閾値SLLを適用するが、この逆(奇数番目のY電極→低感度検出閾値SLL、偶数番目のY電極→高感度検出閾値SLH)であってもかまわない。第二のパターンでは、すべてのY電極(Y1〜Y8)に低感度検出閾値SLLを適用する。
【0041】
図7は、タッチパネル7の制御動作フローを示す図である。この動作フローの主要部は、タッチパネル7のドライバ部71のCPU75で実行されるファームウェアと、制御部5のCPU5aで実行される制御プログラム(基本プログラムの一部やタッチパネル7のドライバプログラム等)とによってソフトウェア的に実現される。この動作フローでは、まず、パネル表面(タッチ部9のタッチ面9a)に近い電極(図4の構造例では上層側のY電極)を高感度のホバー電極と低感度のタッチ電極にグループ分けする(ステップS1)。このグループ分けは、できるだけホバー電極とタッチ電極の分布が一様になるように行うことが望ましい。
【0042】
先の第一のパターン(図6参照)は、このグループ分けの実際例を示しているが、とりわけ「電極Y1〜Y8の走査単位に高感度検出閾値SLHと低感度検出閾値SLLを交互に適用する」という具合に隣り合うY電極の各々をホバー電極とタッチ電極に割り当てているので、この第一のパターンは、ホバー電極とタッチ電極の分布が一様になる最も好ましい例である。
【0043】
図8は、ホバー電極とタッチ電極のパターン分けを示す図である。この図では、パネル表面(タッチ部9のタッチ面9a)に近いY電極のうちの奇数番目のY電極(Y1、Y3、Y5、Y7)をホバー電極とし、残りの偶数番目のY電極(Y2、Y4、Y6、Y8)をタッチ電極としている。すなわち、図示のパターン分けの例は、ホバー電極とタッチ電極が最も一様に分布するベストモード(図6の第一のパターンに対応したもの)を示しているが、これに限定されない。Y電極のn(n=2,3,・・・・)個ごとにホバー電極とタッチ電極にグループ分けしてもよい。
【0044】
グループ分けを完了すると、次に、「ホバー電極感応」を判定する(ステップS2)。ホバー電極感応とは、感応判定部20において、高感度検出閾値SLHに対応した大きさの検知信号(選択中のXY電極の静電容量を介して取り出された駆動信号を直流化した後の直流電圧)が検出された状態のことをいう。
【0045】
ホバー電極感応が判定されない場合は、その判定処理をループするが、ホバー電極感応が判定された場合は、タッチ部9のタッチ面9aに指先等の人体の一部が接近したと判断し、続けて「タッチ電極感応」を判定する(ステップS3)。
【0046】
タッチ電極感応とは、感応判定部20において、低感度検出閾値SLLに対応した大きさの検知信号(選択中のXY電極の静電容量を介して取り出された駆動信号を直流化した後の直流電圧)が検出された状態のことをいう。
【0047】
このとき、タッチ電極感応が判定されなかった場合は、ホバー操作ありを確定し、高感度検出閾値SLHに対応した大きさの検知信号が検出されたときのXY電極の座標をホバー座標として検出(ステップS4)するとともに、その座標情報を含む所定のイベント信号(以下、ホバーイベント)を発生(ステップS5)した後、再び、ステップS2に戻る。
【0048】
一方、ステップS3でタッチ電極感応が判定された場合は、ホバー操作直後にタッチ操作が行われたものと判断し、この場合は、まず、Y電極のすべてに低感度検出閾値SLLを適用してタッチ電極にし(ステップS6)、次いで、低感度検出閾値SLLに対応した大きさの検知信号が検出されたときのXY電極の座標をタッチ座標として検出(ステップS7)するとともに、その座標情報を含む所定のイベント信号(以下、タッチイベント)を発生(ステップS8)した後、再び、タッチ電極感応を判定し(ステップS9)、タッチ電極感応ありの場合は、ステップS7〜ステップS9を繰り返す一方、タッチ電極感応なしの場合は、再び、ステップS1に戻る。
【0049】
図9は、タッチ操作判定時の閾値適用図である。この図に示すように、ステップS3でタッチ電極感応が判定された場合は、すべてのY電極(Y1〜Y8)に低感度検出閾値SLLを適用する。この対策はもっぱらタッチ座標の検出分解能を高めるために行われる。すなわち、すべてのY電極をタッチ検出用電極として用いることにより、タッチ座標の検出分解能(検出精度ともいう)をY1〜Y8の間隔程度まで高めるために行われるのであって、タッチ操作の検出応答性を向上したり、ホバー操作とタッチ操作を区別して検出したりするための必須事項ではない。
【0050】
ホバーイベントとタッチイベントは、制御部5のCPU5aで実行される基本プログラムや応用プログラムにおいて任意の処理を実行するための契機(きっかけ)として適宜に利用される。たとえば、ホバーイベントの発生をきっかけにしてカーソル(画面上に表示される入力位置を示すための下線や矢印などの記号のことを。キャレットやインサーションポインタなどともいう。)の位置を制御してもよく、あるいは、タッチイベントの発生をきっかけにしてキーボードのリターンキー操作やマウスのクリック操作に相当する確定処理を実行してもよい。
【0051】
本実施形態のタッチパネル7は、以上の動作を行うものであるが、その動作のうちの要点について説明する。タッチパネル7は、パネル表面に近い電極(電極Y1〜Y8)をそれぞれ高感度のホバー電極と低感度のタッチ電極にグループ分けし、グループ分けした状態でホバー操作とタッチ操作を各々個別に判定している。つまり、ステップS2の判定結果がYESで且つステップS3の判定結果がNOの場合は「ホバー操作あり」を判定する一方、ステップS2の判定結果がYESで且つステップS3の判定結果がYESの場合は「タッチ操作あり」を判定している。このため、本実施形態では、ホバー操作とタッチ操作を区別して検出することができるという第一の効果が得られるほか、さらに、ホバー操作直後のタッチ操作の判定を速やかに行うことができ、タッチ操作判定の応答性悪化を招かないという第二の効果も得られる。
【0052】
この第二の効果についてさらに説明を加えれば、たとえば、冒頭で説明した第3従来技術では、タッチ検出とホバー検出とを区別するための調整機能を有しているものの、区別するため際の検出走査を時系列的に行っているため、複数回の走査が必要であり、単回の走査と比較して走査に要する時間が長くなるばかりか、走査時間が少ない場合には十分な精度が得られないという問題点があったが、本実施形態では、ホバー操作直後にタッチ操作が行われた場合であっても、ステップS2のYES判定→ステップS3のYES判定となって直ちにタッチ操作を判定することができるから、第3従来技術における複数回の走査に比べて、速やかに検出結果を得ることができる。加えて、本実施形態では、タッチ検出とホバー検出とを区別するための調整機能を、タッチ検出用とホバー検出用に空間的に分けて設けることができるので、各々の検出機構を適切に配置することによって、同時並行してタッチ検知とホバー検知とを行うことができ、したがって、タッチパネル面に接触した状態だけではなく、タッチパネル面に近接した状態の検知についても十分な精度で行うことができ、検出精度の向上を図ることができる。
【0053】
なお、以上の説明では、ホバー電極とタッチ電極の感度変更を閾値(SLH、SLL)の切り替えで行っているが、これに限定されない。要は、ホバー電極の感度をタッチ電極の感度よりも相対的に高くできればよく、たとえば、次のようにしてもよい。
【0054】
図10は、感度変更の他の例を示す図である。この図において、先の実施形態(図3の構成)との相違は、二つの閾値(SLH、SLL)を切り替えるための閾値切替部21の代わりに信号レベル切替部23を設けた点にある。この信号レベル切替部23は、信号源19で作られる駆動信号を、高レベル信号発生源24からの高レベル信号26と、低レベル信号発生源25からの低レベル信号27との一方に切り替えるためのものであり、切り替えのタイミングは、先に説明した二つの閾値(SLH、SLL)と同様である。すなわち、ホバー電極としての奇数番目のY電極(Y1、Y3、Y5、Y7)を走査する際には高レベル信号26を適用し、タッチ電極としての偶数番目のY電極(Y2、Y4、Y6、Y8)を走査する際には低レベル信号27を適用するというタイミングである。
【0055】
先の実施形態と同様に、奇数番目のY電極はホバー電極であり、偶数番目のY電極はタッチ電極であるから、そして、そのホバー電極(奇数番目のY電極)は高レベル信号26で駆動され、そのタッチ電極(偶数番目のY電極)は低レベル信号27で駆動されるから、前記の閾値切り替え方式と同様にホバー電極の感度をタッチ電極の感度よりも相対的に高くすることができる。したがって、この変形例においても、ホバー操作とタッチ操作を区別して検出することができるという第一の効果が得られるほか、さらに、ホバー操作直後のタッチ操作の判定を速やかに行うことができ、タッチ操作判定の応答性悪化を招かないという第二の効果も得られる。
【0056】
なお、以上の説明では、タッチ面9aに近い側の電極(Y電極)のうち一部の電極(Y1、Y3、Y5、Y7)をホバー操作検出用の「ホバー電極」とし、残りの電極(Y2、Y4、Y6、Y8)をタッチ操作検出用の「タッチ電極」としているが、この態様に限定されず、たとえば、以下のようにしてもよい。
【0057】
図11は、ホバー電極とタッチ電極割り当ての他の例を示す図である。この図は、先の図4に示したタッチ部9の断面図に対応するものである。図4との相違は、Y電極層12に形成されていた一部のY電極(Y1、Y3、Y5、Y7)を保護用透明板13の上に移動させるとともに、移動させたY電極(Y1、Y3、Y5、Y7)をフィルム28(たとえば、ガラス飛散防止フィルム)で保護した点にある。
【0058】
このようにすると、一部のY電極(Y1、Y3、Y5、Y7)が、他のY電極(Y2、Y4、Y6、Y8)よりもタッチ面(フィルム28の表面)に近づくから、閾値や駆動信号の切替えを必要とせずに、一部のY電極(Y1、Y3、Y5、Y7)を高感度のホバー電極として使用するとともに、他のY電極(Y2、Y4、Y6、Y8)を低感度のタッチ電極として使用することができる。
【0059】
但し、このようにした場合は、図7のステップS6の処理(全ての電極を低感度のタッチ電極にする)を実行することができない。一部のY電極(Y1、Y3、Y5、Y7)はホバー操作検出用の専用電極として機能するからである。
【0060】
したがって、図11に示す他の例においては、図7のステップS3でタッチ検出が判定された場合に、「全ての電極を低感度のタッチ電極にする」ことができないので、タッチ座標の検出分解能を高めることができないという不利があるものの、少なくとも、「タッチ操作の検出応答性の悪化を招くことなく、ホバー操作とタッチ操作を区別して検出できる」という効果を得られる点で前記の実施形態と同一の技術思想に属している。
【0061】
また、タッチパネル7の構造は、以上の例示に限らない。たとえば、以下のような構造であってもよい。
図12は、タッチパネルの他の構造を示す図である。この図の(a)に示すように、PET等からなる第一誘電体層29の上に等間隔にX電極(X1〜X8)を配列形成したX電極層30と、同様にPET等からなる第二誘電体層31の上に等間隔にY電極(Y1〜Y8)を配列形成したY電極層32とを接着剤33で貼り合わせるとともに、さらに、Y電極層32と保護用の強化ガラス等の透明カバー体34とを接着剤35で貼り合わせた構造のタッチ部36を有するタッチパネル7を用いてもよい。
【0062】
または、X電極とY電極とを同一層に形成した構造のタッチパネルであってもよい。(b)はこのタイプの平面図であり、一部を代表して示すX電極37とY電極38は、それぞれ同一層に互い違いに配列された電極部37a、38aと、同一方向(X方向、Y方向)に並ぶ電極部間を接続する接続部37b、38bとからなり、一方の接続部が他方の接続部をまたぐ(図では接続部37bが接続部38bをまたいでいる)ようにしている。(c)は、このタイプの断面図であり、ガラス等の透明基板39の上にX電極37とY電極38とを配列形成し、その上に、接着剤40を用いて保護用の強化ガラス等の透明カバー体41を貼り合わせた構造を有している。
【0063】
また、本実施形態の大きなポイントは、X電極とY電極の一方の一部をホバー操作検出用のホバー電極とし、残りをタッチ操作検出用のタッチ電極とする点にあるが、ホバー操作検出用のホバー電極は、X電極とY電極の“少なくとも”一方の一部に設定すればよい。前記の実施形態ではX電極とY電極の一方である「Y電極」の一部をホバー操作検出用のホバー電極としているが、これは実施可能な態様の一つを示しているに過ぎない。「X電極」の一部をホバー操作検出用のホバー電極としてもよいし、あるいは、以下のようにしてもよい。
【0064】
図13は、ホバー電極割り当ての他の態様を示す図である。(a)は、X電極の一部(この図ではX1、X3、X5、X7)とY電極の一部(この図ではY1、Y3、Y5、Y7)をホバー操作検出用のホバー電極に割り当てた例であり、また、(b)は、X電極のすべて(X1〜X8)とY電極の一部(この図ではY1、Y3、Y5、Y7)をホバー操作検出用のホバー電極に割り当てた例である。
【0065】
これら二つの態様例(a)、(b)を対比すると、ホバー操作の検出分解能に違いがある。つまり、(a)は一部のX電極と一部のY電極をホバー電極としているのに対して、(b)は全てのX電極と一部のY電極をホバー電極としているので、ホバー電極の密集度が「(a)<(b)」となり、したがって、(b)の検出分解能が高くなるというメリットが得られる。
【0066】
一方、(a)はホバー電極の密集度が低く、したがって、検出分解能が低いというデメリットがあるが、他方で密集度の低さは、ホバー電極として駆動すべき電極数が少ないことを意味し、「駆動電極数→少→駆動電力→少」となり、結局、省電力のメリットを指摘することができる。このメリット(省電力)は、前述の実施形態においても同様である。実施形態ではX電極とY電極の一方の一部をホバー電極としているからであり、ホバー電極の密集度が(a)同様もしくはそれ以上に低いからである。実施形態の態様、または、図13(a)、(b)の態様のいずれを採用するかは、もっぱら電力消費と分解能のいずれを重視するかで適宜に選択すればよい。
【0067】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
離間して配設された複数のX電極とY電極をペアにして選択する選択手段と、
前記ペアの電気特性の変化からタッチ操作またはホバー操作を検出する検出手段と、
前記X電極とY電極の少なくとも一方の一部をホバー操作検出用のホバー電極とし、その他の電極の少なくとも一部をタッチ操作検出用のタッチ電極として設定する設定手段と
を備えたことを特徴とする入力装置。
付記1によれば、タッチ検出とホバー検出とを区別するための調整機能を、タッチ検出用とホバー検出用に空間的に分けて設けることができるので、各々の検出機構を適切に配置することによって、同時並行してタッチ検知とホバー検知とを行うことができる。したがって、タッチパネル面に接触した状態だけではなく、タッチパネル面に近接した状態の検知についても十分な精度で行うことができ、検出精度の向上を図ることができる。
【0068】
(付記2)
前記設定手段は、前記タッチ電極によってタッチ操作が検出された場合に、前記ホバー電極をタッチ操作検出用のタッチ電極として再設定することを特徴とする付記1に記載の入力装置。
付記2によれば、前記X電極とY電極の一方の全てをタッチ電極とするので、タッチ操作の検出分解能を高めることができる。
【0069】
(付記3)
前記X電極とY電極の一方は、前記タッチ操作またはホバー操作の操作面に近い方に位置する電極であることを特徴とする付記1に記載の入力装置。
付記3によれば、ホバー電極やタッチ電極をタッチ面に近い位置に設けるので、操作検出の感度を良好にすることができる。
【0070】
(付記4)
前記検出手段の検出感度を切り替える切替手段を備え、該切替手段は、
前記選択手段によって前記X電極とY電極の一方の一部の電極が選択されている場合に前記検出手段の検出感度を高感度に設定し、前記X電極とY電極の一方の残りの電極が選択されている場合に前記検出手段の検出感度を低感度に設定することを特徴とする付記1に記載の入力装置。
付記4によれば、ホバー電極とタッチ電極の割り当てを自由に行うことができる。
【0071】
(付記5)
前記ペアの電気特性は静電容量であり、
前記検出手段は、前記静電容量の変化を示す信号値と閾値とを比較して前記静電容量の変化を検出するものであり、
前記切替手段は、前記検出手段の閾値を変更することによって該検出手段の検出感度を切り替えることを特徴とする付記1に記載の入力装置。
付記5によれば、ホバー操作の検出に適合した所定の閾値(高感度検出閾値)とタッチ操作の検出に適合した他の所定の閾値(低感度検出閾値)とを設定するだけで、付記1の効果、すなわち、タッチ操作の検出応答性の悪化を招くことなく、ホバー操作とタッチ操作を区別して検出できるという効果が得られる。
【0072】
(付記6)
前記ペアの電気特性は静電容量であり、
前記検出手段は、前記静電容量の一端に駆動信号を加えた際に該静電容量の他端に現れる該駆動信号の大きさまたはその大きさを示す信号値と閾値とを比較して前記静電容量の変化を検出するものであり、
前記切替手段は、前記静電容量の一端に加える駆動信号の大きさまたはその大きさを示す信号値を変更することによって該検出手段の検出感度を切り替えることを特徴とする付記1に記載の入力装置。
付記6によれば、ホバー操作の検出に適合した大きさの駆動信号(高レベル信号)とタッチ操作の検出に適合した大きさの駆動信号(低レベル信号)とを設定するだけで、付記1の効果、すなわち、タッチパネル面に接触した状態だけではなく、タッチパネル面に近接した状態の検知についても十分な精度で行うことができ、検出精度の向上を図ることができるという効果が得られる。
【0073】
(付記7)
離間して配設された複数のX電極とY電極をペアにして選択する選択工程と、
前記ペアの電気特性の変化からタッチ操作またはホバー操作を検出する検出工程と、
前記X電極とY電極の少なくとも一方の一部をホバー操作検出用のホバー電極とし、その他の電極の少なくとも一部をタッチ操作検出用のタッチ電極として設定する設定工程と
を含むことを特徴とする入力制御方法。
付記7によれば、付記1と同様に、タッチパネル面に接触した状態だけではなく、タッチパネル面に近接した状態の検知についても十分な精度で行うことができ、検出精度の向上を図ることができる。
【0074】
(付記8)
入力装置のコンピュータを、
離間して配設された複数のX電極とY電極をペアにして選択する選択手段と、
前記ペアの電気特性の変化からタッチ操作またはホバー操作を検出する検出手段と
前記X電極とY電極の少なくとも一方の一部をホバー操作検出用のホバー電極とし、その他の電極の少なくとも一部をタッチ操作検出用のタッチ電極として設定する設定手段と
として機能させるためのプログラム。
付記8によれば、付記1の機能をソフトウェア(プログラム)の形で提供することができる。
【0075】
(付記9)
付記1に記載の入力装置を備えたことを特徴とする電子機器。
付記9によれば、静電容量方式のタッチパネルを備えた、たとえば、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、携帯情報端末、携帯ゲーム機、電子辞書、電子ブック表示端末など多種多様な電子機器において、付記1と同様に、タッチパネル面に接触した状態だけではなく、タッチパネル面に近接した状態の検知についても十分な精度で行うことができ、検出精度の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0076】
SLH 高感度検出閾値(閾値)
SLL 低感度検出閾値(閾値)
X1〜X8 X電極
Y1〜Y8 Y電極
7 タッチパネル(入力装置)
9a タッチ面(操作面)
16 X電極選択部(選択手段)
17 Y電極選択部(選択手段)
20 感応判定部(検出手段)
21 閾値切替部(設定手段)
22 駆動信号
23 信号レベル切替部(設定手段)
26 高レベル信号(駆動信号)
27 低レベル信号(駆動信号)
75 CPU(コンピュータ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13