(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
変形防止材には、この両側に区画形成された両電解液空間内の電解液どうしを流通させるための電解液流通部が複数形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気電池。
変形防止材によって区画形成された電解液空間のうち、一又は二以上のものには電解液を注入するための注入孔が形成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の空気電池。
変形防止材を、ポリピロピレン、フッ素樹脂、アクリル、塩ビ、塩化ビニリデン、ポリイソブチレン、塩素化ポリエーテル、フラン樹脂、エポキシ、ナイロン等の汎用樹脂又はポリフェニレンサルファド、ポリエーテルエーテルケトン等のスーパーエンプラにより形成している請求項1〜7のいずれか1項に記載の空気電池。
正極材上に積層形成された液密通気膜に、空気を流通させるための複数の流路が互いに平行に形成されており、それらの流路方向と枠体の変形防止材とが交差するように配設されている請求項1〜8のいずれか1項に記載の空気電池。
変形防止材によって区画形成された電解液空間をさらに区画する第二の変形防止材が形成されており、その第二の変形防止材に、この第二の変形防止材により区画した電解液空間内の電解液を互いに流通させるための電解液流通部が形成されている請求項1〜9のいずれか1項に記載の空気電池。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態に係る空気電池を用いた組電池の断面図、
図2(A)は、本発明の第一の実施形態に係る空気電池の一部をなす枠体の平面図、同図(B)は、(A)に示すIIB‐IIB線に沿う断面図である。
【0010】
図1に示すように、本発明の一例に係る組電池Aは、互いに上下に積み重ねた三つの空気電池B1…をケース5内に収容したものであり、それらの空気電池B1…には、矢印で示す荷重が付与されている。
【0011】
ケース5は、空気電池B1…を積み重ねて収容できる高さにした円筒形の本体6と、この本体6の上下開口を閉塞する蓋部材7,8を有するものである。なお、
図1においては、荷重の作用方向を記号Pで記している。
【0012】
本発明の第一の実施形態に係る空気電池B1は、枠体10、接点部材15、正極構成部品20、電解液層25、セパレータ30、負極材35及び集電板40を有して構成されている。
本実施形態において示す枠体10は、耐電解液性のある樹脂製のものであるが、CF,GF等でFRP化したものを採用して、より高い強度を持たせることができる。
【0013】
具体的には、ポリピロピレン、フッ素樹脂、アクリル、塩ビ、塩化ビニリデン、ポリイソブチレン、塩素化ポリエーテル、フラン樹脂、エポキシ、ナイロン等の汎用樹脂又はポリフェニレンサルファド、ポリエーテルエーテルケトン等のスーパーエンプラにより形成している。
「電解液」は、KOHや塩化物を主成分とした水溶液又は非水溶液である。
【0014】
本実施形態において示す枠体10は、上下両面を開口しかつ平面視長方形にした外枠材11と、この外枠材11の長手方向に沿う所定の間隔で、後記する正極材22と負極材35との間に配設される上記電解液層25に配置され、かつ、正極材22又は負極材35若しくはそれら双方に当接して変形を防止するための5本の変形防止材12が配設される。
【0015】
さらに、
図2(A),(B)に示すように、変形防止材12の正極材22との当接面(図示上面)には、電解液の流動を許容する流動許容部Rが形成される。なお、図においては、流動許容部Rを明示するために、正極材22等を取り外した状態で示している。
【0016】
5本の変形防止材12は、互いに所要の間隔にし、かつ、側壁14,14間に一体に架橋形成されており、それらの変形防止材12によって、外枠材11で囲繞された空間を、六つの電解液空間S1〜S6に区画形成している。
「電解液空間」は、注入された電解液を滞留させておくための空間である。
【0017】
本実施形態においては、変形防止材12がセパレータ30を介して負極材35に間接的に当接しているものを示しているが、変形防止材12がセパレータ30を介することなく負極材35に直接当接する形態のものであってもよいことは勿論である。
【0018】
本実施形態において示す流動許容部Rは、微細な凸部を複数形成したものであるが、変形防止材12の端部を微細な凸部を有する流動許容部Rとしてもよい。すなわち、流動許容部Rが正極材22と当接した場合にその当接領域を電解液が流動するように流動許容部Rが形成される。
また、変形防止材12によって区画された両電解液空間S1〜S6を連通する多数の連通溝を形成してもよい。本実施形態では、変形防止材12が直接正極材22に面接触せずに、流動許容部Rの微細な凸部が実質的に点接触している。そのため、正極材22を介しての加重(P)を支持しつつ当該当接領域においても電解液の流動、拡散を行わせている。
【0019】
上記外枠材11の両端壁11a,11aの上端部内面には、接点部材15の高さにほぼ一致する高さの段差とした接点嵌合部13,13が形成されている。
接点部材15は導電性を有する金属製のものであり、下記の液密通気膜21と正極材22のそれぞれに導通接続され、かつ、図示上側において隣接する他の空気電池B1の集電板40に導通接触させるためのものである。
【0020】
本実施形態において示す接点部材15は、接点嵌合部13に嵌合する大きさにした板状体として形成されているとともに、その接点嵌合部13に嵌合したときに、外枠材11の上端面11bと面一となる高さに形成されている。
【0021】
本実施形態において示す正極構成部品20は、液密通気膜21と正極材22とからなる。この正極構成部品20は、正極材22で酸素還元反応を行なうための触媒や導電パスを形成するための例えばカーボン粉で形成された導電層であり、触媒やカーボン粉を層として形成するためのバインダ等を含むものである。
【0022】
液密通気膜21は液密通気性を有するものであり、正極のガス供給(空気)を行なうための多数の微細な孔が形成され、かつ、電解液が外部に漏れ出さないようなフッ素樹脂製のものである。
【0023】
本実施形態において示す液密通気膜21は、接点部材15と側壁14,14で囲繞される輪郭に一致する平面視長方形に形成されている。換言すると、下記の正極材22の外面22aを被覆するように形成されている。
【0024】
正極材22は、触媒を含んだ導電性、かつ、多孔質な材料で形成されており、例えば、カーボン材料とバインダー樹脂とで形成され、多導電多孔体内に二酸化マンガン等の触媒が含まれているものである。
【0025】
セパレータ30は、上記した正極材22と負極材35とを分離するためのものである。
負極材35は、例えばLi,Al,Fe,Zn,Mgの純金属又は合金製のものである。集電板40は導電性を有するとともに、電解液がカートリッジ外部に漏出させない材質のものであり、例えば、ステンレス、銅(合金)の他、金属表面に耐食性のある金属をメッキしたものである。
【0026】
以上の構成からなる空気電池B1によれば、複数の空気電池を積層するときに、圧縮荷重による電解液層25等の構成部品の変形を抑えるとともに、電解液を充填する空間を確保することができる。
【0027】
また、本空気電池B1によれば、変形防止材12と正極材22との界面にも電解液を拡散させることができるので、電解液注入時において電解液が浸透しやすく迅速な起動が可能となる。
さらに、変形防止材12に当接している正極材部分であっても十分な電気化学反応を行なわせることができるため、発電効率を向上させることができる。
【0028】
またさらに、上記変形防止材12の正極材22に当接する面(図示上面)に親水処理を例えば塗布することにより施すようにしてもよい。親水処理は、電解液の注入時に、変形防止材12の上面に電解液が浸透すればよく、親水処理の耐薬品性や耐久性は問わない。
【0029】
この場合であっても、変形防止材12の上面と正極材22との間に電解液を浸透供給させることができ、変形防止材12と接する正極材部分においても十分な電解液を供給し、この部分での反応を十分な反応を行なわせることができるため、発電性能を向上させることができる。
なお、本実施形態においては流動許容部Rを変形防止材12と正極材22との界面に形成したが、変形防止材12とセパレータ30(負極材35)との界面に形成してもよい。以下の各実施形態においては流動許容部Rの図示は割愛する。
【0030】
次に、
図3(A),(B)を参照して本発明の第二の実施形態に係る空気電池について説明する。
図3(A)は、本発明の第二の実施形態に係る空気電池の一部をなす枠体の平面図、
図3(B)は、(A)に示すIIIB−IIIB線に沿う断面図である。なお、上述した各実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
【0031】
本実施形態に係る空気電池B2は、上記した一方の側壁14の外面に注液タンク45を配設するとともに、その側壁14であって、変形防止材12Aで区画された各電解液空間S1〜S4に臨む各位置に注入孔14aをそれぞれ形成した構造のものである。
本実施形態において示す変形防止材12Aは、外部から注入される電解液の注入方向αに対して直交しないように形成される。さらに、変形防止材12Aの上面が正極材22の下面に当接し、かつ、下面が負極材35の上面に当接する高さに形成されている。
【0032】
すなわち、上記電解液の注入の流れの主軸方向αに対し、上面からみた変形防止材12Aの延在方向は直交しない構造である。
換言すれば、変形防止材12Aが規定する仮想面の法線方向は主軸方向αと平行ではなく、より好ましくは垂直である。従って、変形防止材12Aは両面において層流境界層を形成するため、電解液の流れの主軸が変形防止材12Aに直接衝突して渦の発生等により流れを妨げることなく層流が形成され、電解液Wの電解液空間全体への拡散を効果的に行うことができる。
また、電解液の注入後の起動を速やかに行うことができる。さらに、図示しない流動許容部Rが変形防止材12Aの端部に形成されることにより、高い発電効率を実現することができる。
【0033】
次に、
図4(A),(B)を参照して本発明の第三の実施形態に係る空気電池について説明する。
図4(A)は、本実施形態に係る空気電池の一部をなす枠体の平面図、
図4(B)は、(A)に示すIVB‐IVB線に沿う断面図である。なお上述した各実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
【0034】
本実施形態に係る空気電池B3は、上記した一方の側壁14の外面に注液タンク45を配設するとともに、その側壁14であって、変形防止材12で区画形成された各電解液空間S1〜S4に臨む各位置に注入孔14aをそれぞれ形成した構造のものであることは、上記空気電池B3と同様である。なお、
図4においては、枠体10と注液タンク45のみを示している。
【0035】
また、変形防止材12は、その延在方向が外部から注入される電解液Wの注入方向αに対して直交しないように、本実施形態においては、両端壁11a,11a間に電解液Wの注入方向αと平行に延出されて形成している。
これにより、外部から注入された電解液を電解液空間S1〜S4全域に良好に拡散させることができる。すなわち、電解液Wの拡散を効果的に行うことができるとともに、電解液の注入後の起動を速やかに行うことができる。
【0036】
各変形防止材12には、これらの両側に区画形成された例えば両電解液空間S1,S2内の電解液どうしを流通させるための電解液流通部が形成されている。
本実施形態においては、電解液流通部として、各変形防止材12によって区画形成された両電解液空間S1,S2等どうしを連通する略円形の電解液流通孔12aを複数形成している。
【0037】
これにより、両電解液空間S1,S2等内の電解液Wを電解液流通孔12aを通じて互いに流動させることができるため、電解液Wの拡散を効果的に行うことができるとともに、電解液を注入した後の起動を速やかに行うことができる。
なお、電解液流通孔は、互いに同形同大に形成することに限るものではなく、例えば規則的に大きさ等を異ならせた形態にしてもよい。また、孔という形態に限らず、切り欠きや溝という形態に形成してもよい。
【0038】
図5を参照して本発明の第四の実施形態に係る空気電池について説明する。
図5は、本実施形態に係る空気電池の一部をなす枠体の平面図である。なお、上述した各実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
【0039】
本実施形態に係る空気電池B4は、枠体10の側壁14,14間に三本の変形防止材12,12,12を架橋形成することにより、その枠体10内を四つの電解液空間S1〜S4に区画形成したものである。
変形防止材12,12,12のうちの両側の変形防止材12,12には、上記した電解液流通孔12aがそれぞれ複数形成されている。
【0040】
側壁14,14の一方のものであって、最も両側に区画形成された電解液空間S1,S4に臨む位置には上記した注入口14aが形成されていない。すなわち、電解液空間S1,S4には、外部から電解液Wを直接注入できない構造になっている。
本実施形態においては、最も両側に区画形成された電解液空間S1,S4に臨む位置に、空気抜き孔14b,14bが形成されている。
【0041】
この構成においては、電解液空間S2,S3に電解液が注入されると、両側の変形防止材12,12に形成した電解液流通孔12aを通じて、電解液空間S1,S4に電解液を流通拡散させることができる。
【0042】
すなわち、電解液Wの注入時に、内部に電解液Wが流れ込む順番を変形防止材12によってコントロールし、また、電解液空間S1,S4に存在する空気を空気抜き孔14b,14bを通じて速やかに押し出すことができる。また、速やかな電解液Wの注入が可能になり、注入から発電までの時間を短縮できる。
【0043】
図6(A),(B)を参照して本発明の第五の実施形態に係る空気電池について説明する。
図6(A)は、本実施形態に係る空気電池の一部をなす枠体及び液密通気膜を取り外した状態の平面図、
図6(B)は、液密通気膜を取り付けた状態における(A)に示すVIB−VIB線に沿う断面図である。なお、上述した各実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
【0044】
本実施形態に係る空気電池B5は、液密通気膜が上記したものと相違している。液密通気膜21Aは、空気流路をなす凹凸の溝部分23が一定の間隔で形成されているとともに、その溝部分23が電解液の注入方向αと直交するようにしている。
【0045】
この構成によれば、荷重が掛かる液密通気膜21の凹凸と変形防止材12Aとを直交させて形成しているので、正極材22の変形を防止することができる。また、変形による正極材22の破損や複数形成されたガス流路どうしの配流バラツキによる性能安定性の低下を防止することができる。
【0046】
図7(A),(B)を参照して本発明の第六の実施形態に係る空気電池について説明する。
図7(A)は、本実施形態に係る空気電池の一部をなす枠体の平面図、(B)は、(A)に示すVIIB−VIIB線に沿う断面図である。なお、上述した各実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
本実施形態に係る空気電池B6は、枠体の構造が相違している。
本実施形態において示す枠体10Aは、上下両面を開口しかつ平面視長方形にした外枠材11と、この外枠材11の長手方向に沿う所定の間隔で、正極材22と負極材35との間に配設される上記電解液層25に配置され、かつ、正極材22又は負極材35若しくはそれら双方に当接して変形を防止するための3本の変形防止材12Aを配設し、かつ、外枠材11の長手方向のVIIB−VIIB線に一致して、第二の変形防止材12Cが端壁11a,11a間に架橋形成したものである。
第二の変形防止材12Cは、変形防止材12Aと同じ幅(高さ)にして形成されており、その下辺縁12C′には、電解液を第二の変形防止材12Cで二分された電解液空間S1b(S2b〜S4b)から電解液空間S1a(S2a〜S4a)に流通させるための電解液流通溝16が互いに所要の間隔にして複数形成されている。
【0048】
この構成によれば、空気電池どうしを積み重ねたときの荷重を分担させることができるとともに、電解液流通溝16を設けているので、注入時の電解液の拡散を妨げることがない。また、空気電池どうしを積み重ねたときの各空気電池の変形を抑制しつつ、効果的な注入によって起動時間を短縮することもできる。
【0049】
図8を参照して本発明の第七の実施形態に係る空気電池について説明する。
図8は、本実施形態に係る空気電池の断面図である。なお、上述した各実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
本実施形態に係る空気電池B7は、枠体の構造が相違している。
本実施形態において示す枠体10Bは、上下両面を開口した平面視長方形にした外枠材11と、この外枠材11の長手方向に沿う所定の間隔で、正極材22と負極材35との間に配設される電解質層25に配置され、その正極材22又は負極材35若しくはそれら双方に当接して変形を防止するための四本の変形防止材12と変形防止材17を配設した構造のものである。
【0051】
変形防止材17は、四本の変形防止材12の中央に配設されており、これの上端面17aを他の変形防止材12と面一とし、かつ、下端面17bを集電板40の上面に当接させる高さにして形成されている。
【0052】
この構成によれば、放電によって負極材35が消尽減滅しても、変形防止材17が空気電池どうしを積み重ねたときの荷重を負担し続けることができるとともに、空気電池の変形を抑制することできる。
【0053】
以上、本発明について詳細に説明したが、上記各実施形態において説明した各構成は、それら各実施形態にのみ適用することに限らず、一の実施形態において説明した構成を、他の実施形態に準用若しくは適用し、さらには、それを任意に組み合わせることができるものである。
【0054】
なお、本発明は上述した実施形態に限るものではなく、次のような変形実施が可能である。
上記した実施形態においては、変形防止材に電解液流通部を形成した例について説明したが、変形防止材を、これの両側に区画形成された両電解液空間において電解液を流通させられる多孔質材で形成してもよい。
これにより、隣り合う二つの電解液空間等内の電解液を互いに流動させることができるため、電解液の拡散を効果的に行うことができるとともに、電解液を注入した後の起動を速やかに行うことができる。