(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6024911
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】脱臭装置の運転方法およびそれを実施する脱臭装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/86 20060101AFI20161107BHJP
F23C 13/08 20060101ALI20161107BHJP
F23G 7/06 20060101ALI20161107BHJP
F23G 7/07 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
B01D53/86 110
F23C13/08ZAB
F23G7/06 D
F23G7/07 R
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-49958(P2013-49958)
(22)【出願日】2013年3月13日
(65)【公開番号】特開2014-172033(P2014-172033A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2014年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 邦明
【審査官】
松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−112028(JP,A)
【文献】
特開2010−247018(JP,A)
【文献】
特開平10−267248(JP,A)
【文献】
米国特許第04983364(US,A)
【文献】
特開2009−125606(JP,A)
【文献】
特開2011−092910(JP,A)
【文献】
米国特許第05914091(US,A)
【文献】
特開2012−77977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34−53/96
F23G 7/07
F23C 13/00−13/08
A61L 9/00− 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤を用いる処理工程で発生する揮発性有機化合物を大気とともに給気ブロアで吸い込んで排ガスとして、熱交換器の給熱側通路を通して加熱器へ送り、その排ガスを加熱器で加熱して触媒に送り、その排ガス中の揮発性有機化合物を触媒で燃焼・分解させて排ガス中の揮発性有機化合物濃度を低下させ、その排ガスを前記熱交換器の放熱側通路を通して排出する脱臭装置を運転するに際し、
前記給気ブロアの風量を、濃度センサにより測定した前記熱交換器の給熱側通路の上流側での排ガス中の揮発性有機化合物濃度に基づき、前記加熱器の上流側の排ガス中の揮発性有機化合物濃度が爆発下限界未満に維持される最少量に制御し、
前記加熱器での加熱量を、その加熱器の下流側での排ガス温度が、触媒反応により揮発性有機化合物が分解して触媒の下流側での揮発性有機化合物濃度が所定濃度以下となる温度範囲に維持される最少量に制御することを特徴とする脱臭装置の運転方法。
【請求項2】
前記加熱器での加熱量を最少量にしても、前記加熱器の下流側での排ガス温度が、触媒反応により揮発性有機化合物が分解して触媒の下流側での揮発性有機化合物濃度が所定濃度以下となる温度範囲の上限を超えた場合に、前記加熱器での加熱を停止した状態で前記給気ブロアの運転を継続し、その後、前記加熱器の下流側での排ガス温度が、触媒反応により揮発性有機化合物が分解して触媒の下流側での揮発性有機化合物濃度が所定濃度以下となる温度範囲の下限を下回った場合に、前記加熱器での加熱を再開することを特徴とする、請求項1記載の脱臭装置の運転方法。
【請求項3】
前記加熱器での加熱量を最少量にしても、前記加熱器の下流側での排ガス温度が、触媒反応により揮発性有機化合物が分解して触媒の下流側での揮発性有機化合物濃度が所定濃度以下となる温度範囲の上限を超えた場合に、前記加熱器での加熱を停止した状態で前記給気ブロアの運転を継続し、その後、前記触媒の下流側での揮発性有機化合物濃度が所定濃度以下であってその所定濃度に近い所定範囲内に入った場合に、前記加熱器での加熱を再開することを特徴とする、請求項1記載の脱臭装置の運転方法。
【請求項4】
有機溶剤を用いる処理工程で発生する揮発性有機化合物を大気とともに給気ブロアで吸い込んで排ガスとして、熱交換器の給熱側通路を通して加熱器へ送り、その排ガスを加熱器で加熱して触媒に送り、その排ガス中の揮発性有機化合物を触媒で燃焼・分解させて排ガス中の揮発性有機化合物濃度を低下させ、その排ガスを前記熱交換器の放熱側通路を通して排出する脱臭装置において、
前記給気ブロアの風量を、濃度センサにより測定した前記熱交換器の給熱側通路の上流側での排ガス中の揮発性有機化合物濃度に基づき、前記加熱器の上流側の排ガス中の揮発性有機化合物濃度が爆発下限界未満に維持される最少量に制御する給気ブロア制御部と、
前記加熱器での加熱量を、その加熱器の下流側での排ガス温度が、触媒反応により揮発性有機化合物が分解して触媒の下流側での揮発性有機化合物濃度が所定濃度以下となる温度範囲に維持される最少量に制御する加熱器制御部と、
を具えることを特徴とする脱臭装置。
【請求項5】
前記加熱器での加熱量を最少にしても、加熱器の下流側での排ガス温度が、触媒反応により揮発性有機化合物が分解して触媒の下流側での揮発性有機化合物濃度が所定濃度以下となる温度範囲の上限を超えた場合に、前記加熱器制御部が加熱器での加熱を停止した状態で、前記給気ブロア制御部が給気ブロアの運転を継続し、
前記加熱器の下流側での排ガス温度が、触媒反応により揮発性有機化合物が分解して触媒の下流側での揮発性有機化合物濃度が所定濃度以下となる温度範囲の下限を下回った場合に、前記加熱器制御部が加熱器での加熱を再開することを特徴とする、請求項4記載の脱臭装置。
【請求項6】
前記加熱器での加熱量を最少にしても、加熱器の下流側での排ガス温度が、触媒反応により揮発性有機化合物が分解して触媒の下流側での揮発性有機化合物濃度が所定濃度以下となる温度範囲の上限を超えた場合に、前記加熱器制御部が加熱器での加熱を停止した状態で、前記給気ブロア制御部が給気ブロアの運転を継続し、
前記触媒の下流側での揮発性有機化合物濃度が所定濃度以下であってその所定濃度に近い所定範囲内に入った場合に、前記加熱器制御部が加熱器での加熱を再開することを特徴とする、請求項4記載の脱臭装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物(VOC)を反応除去する脱臭装置の運転方法およびそれを実施する脱臭装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、浮遊粒子状物質(SPM)や光化学オキシダントに関係する大気汚染の状況は未だ深刻である。SPMおよび光化学オキシダントの原因には様々なものがあるが、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds:VOC)もその一つである。VOCは、揮発性を有し、大気中で気体状となる、有機溶剤を含む有機化合物の総称であり、トルエン、キシレン、酢酸エチル等多種多様な物質がこれに含まれる。このため行政では、VOCの排出について「労働環境への拡散防止」および「大気汚染防止」の施策の一環として、大規模施設の製造工程から発生するVOCの処理および排出濃度規制を設けている。そしてVOCをやむを得ず発生させる設備では、適切な濃度処理が求められている。それゆえ企業では、排出濃度を規制値以下に抑えると同時に、処理費用を最小限化させることが必須の事項である。
【0003】
一般に、薄金属帯のコーティング工程等には、そこからの排ガスに有機溶剤から発生する揮発性有機化合物(VOC)が含まれていることから、大気汚染防止法に定められているVOC規制値を遵守するために、排ガス中のVOCを除去する脱臭装置が設けられており、この脱臭装置には、VOC除去の有効な手段の一つとして、触媒を用いた方法が採用されている。この方法では、VOCを含んだ排ガスは、加熱器で加熱された後、触媒によって効率良くCO
2とH
2Oとに燃焼・分解されて、無害化された上で大気中に放散される。この触媒燃焼方式の脱臭装置は他の方式に比べて、処理温度が低く、比較的経済的であり、窒素酸化物(NOx)の発生も殆どないという特徴を有している。なお、この排ガスの加熱のための燃料には通常、LPG、灯油等の、硫黄分を含まず白金(Pt)触媒やジルコニア(Zr)触媒の反応を阻害しないものが選定される。
【0004】
しかしながら、排ガスの加熱に利用される燃料をさらに減じる施策が求められており、それには加熱器に送る排ガスの風量を減らすことが有効であるが、安易な風量減少は、爆発の危険性を有するという問題があった。従来実施している最も簡便な方法は、最大のVOC濃度を単位時間当たりの有機溶剤使用量から計算し、さらに安全を見込んでVOC濃度がVOCの爆発下限界の1/4程度になるように、給気ファンで加熱器に送る排ガスの風量を決定することが主であった。このため多量の排ガスを送る必要があり、給気ファンが電力を無駄に消費していた。また、その多量の排ガスを、所定の触媒反応による分解作用をもたらす温度域まで昇温させるために、多くの燃料を加熱器で燃焼させる必要があり、燃料も無駄に消費していた。
【0005】
ところで、その他の従来技術として、特許文献1記載の給気ファン制御装置や、特許文献2記載の脱臭装置への給気ファンの制御方法や、特許文献3,4記載の排ガス処理装置も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−272620号公報
【特許文献2】特開2012−077977号公報
【特許文献3】特開2008−302347号公報
【特許文献4】特開2008−302348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の給気ファン制御装置では、加熱器の2次側に温度計を具備しているのみで、VOC濃度は有機溶剤塗布設備の有機溶剤使用量の推定値から計算しているだけなので、正確な給気ファン風量の調節に関しては未だ改良の余地がある。また、特許文献2記載の脱臭装置への給気ファンの制御方法では、VOCセンサを設置し、その検出した濃度を揮発性有機溶剤の爆発下限界未満とすべく、給気ファンの回転数制御を行う機能のみを有しており、これだけでは、安全は確保できたとしても必ずしも加熱器が効率の良い省燃料運転になっているとは言えない。さらに、特許文献3,4記載の排ガス処理装置でも、VOCセンサと加熱器2次側の温度計を同時に設置することをしていても、給気ファン風量と加熱器の燃焼量との制御を同時に行っておらず、必ずしも加熱器が効率の良い省燃料運転になっているとは言えない。
【0008】
それゆえ本発明は、排ガス中の揮発性有機化合物(VOC)の濃度を低下させる脱臭装置において、前記従来技術の課題を有利に解決し、VOCの爆発を防止しつつ給気ブロアの省電力を達成するとともに、加熱器の省エネルギーおよび排ガスの環境規制を達成する脱臭装置の運転方法および、その運転方法を実施する脱臭装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明の脱臭装置の運転方法は、有機溶剤を用いる処理工程で発生する揮発性有機化合物を大気とともに給気ブロアで吸い込んで排ガスとして
、熱交換器の給熱側通路を通して加熱器へ送り、その排ガスを加熱器で加熱して触媒に送り、その排ガス中の揮発性有機化合物を触媒で燃焼・分解させて排ガス中の揮発性有機化合物濃度を低下させ
、その排ガスを前記熱交換器の放熱側通路を通して排出する脱臭装置を運転するに際し、
前記給気ブロアの風量を、
濃度センサにより測定した前記熱交換器の給熱側通路の上流側での排ガス中の揮発性有機化合物濃度に基づき、前記加熱器の上流側の排ガス中の揮発性有機化合物濃度が爆発下限界未満に維持される最少量に制御し、
前記加熱器での加熱量を、その加熱器の下流側での排ガス温度が、触媒反応により揮発性有機化合物が分解して触媒の下流側での揮発性有機化合物濃度が所定濃度以下となる温度範囲に維持される最少量に制御することを特徴としている。
【0010】
なお、本発明の運転方法においては、加熱器での燃焼等による加熱量を最少量にしても、加熱器の下流側での排ガス温度が、触媒反応により揮発性有機化合物が分解して触媒の下流側での揮発性有機化合物濃度が所定濃度以下となる温度範囲の上限を超えた場合に、加熱器での燃焼等による加熱を停止した状態で給気ブロアの運転を継続し、その後、加熱器の下流側での排ガス温度が、触媒反応により揮発性有機化合物が分解して触媒の下流側での揮発性有機化合物濃度が所定濃度以下となる温度範囲の下限を下回った場合に、加熱器での燃焼等による加熱を再開することとすると望ましい。
【0011】
また、本発明の運転方法においては、加熱器での燃焼等による加熱量を最少量にしても、加熱器の下流側での排ガス温度が、触媒反応により揮発性有機化合物が分解して触媒の下流側での揮発性有機化合物濃度が所定濃度以下となる温度範囲の上限を超えた場合に、加熱器での燃焼等による加熱を停止した状態で給気ブロアの運転を継続し、その後、触媒の下流側での揮発性有機化合物濃度が所定濃度以下であってその所定濃度
に近い所定範囲内に入った場合に、加熱器での燃焼等による加熱を再開することとしても望ましい。
【0012】
また、前記目的を達成するため、本発明の脱臭装置は、有機溶剤を用いる処理工程で発生する揮発性有機化合物を大気とともに給気ブロアで吸い込んで排ガスとして
、熱交換器の給熱側通路を通して加熱器へ送り、その排ガスを加熱器で加熱して触媒に送り、その排ガス中の揮発性有機化合物を触媒で燃焼・分解させて排ガス中の揮発性有機化合物濃度を低下させ
、その排ガスを前記熱交換器の放熱側通路を通して排出する脱臭装置において、
前記給気ブロアの風量を、
濃度センサにより測定した前記熱交換器の給熱側通路の上流側での排ガス中の揮発性有機化合物濃度に基づき、前記加熱器の上流側の排ガス中の揮発性有機化合物濃度が爆発下限界未満に維持される最少量に制御する給気ブロア制御部と、
前記加熱器での加熱量を、その加熱器の下流側での排ガス温度が、触媒反応により揮発性有機化合物が分解して触媒の下流側での揮発性有機化合物濃度が所定濃度以下となる温度範囲に維持される最少量に制御する加熱器制御部と、
を具えることを特徴としている。
【0013】
なお、本発明の脱臭装置においては、加熱器での燃焼等による加熱量を最少にしても、加熱器の下流側での排ガス温度が、触媒反応により揮発性有機化合物が分解して触媒の下流側での揮発性有機化合物濃度が所定濃度以下となる温度範囲の上限を超えた場合に、前記加熱器制御部が加熱器での燃焼等による加熱を停止した状態で、前記給気ブロア制御部が給気ブロアの運転を継続し、加熱器の下流側での排ガス温度が、触媒反応により揮発性有機化合物が分解して触媒の下流側での揮発性有機化合物濃度が所定濃度以下となる温度範囲の下限を下回った場合に、前記加熱器制御部が加熱器での燃焼等による加熱を再開することとすると望ましい。
【0014】
また、本発明の脱臭装置においては、加熱器での燃焼等による加熱量を最少にしても、加熱器の下流側での排ガス温度が、触媒反応により揮発性有機化合物が分解して触媒の下流側での揮発性有機化合物濃度が所定濃度以下となる温度範囲の上限を超えた場合に、前記加熱器制御部が加熱器での燃焼等による加熱を停止した状態で、前記給気ブロア制御部が給気ブロアの運転を継続し、触媒の下流側での揮発性有機化合物濃度が所定濃度以下であってその所定濃度
に近い所定範囲内に入った場合に、加熱器での燃焼等による加熱を再開することとしても望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の脱臭装置の運転方法によれば、有機溶剤を用いる処理工程で発生する揮発性有機化合物を大気とともに給気ブロアで吸い込んで排ガスとして
、熱交換器の給熱側通路を通して加熱器へ送り、その排ガスを加熱器で加熱して触媒に送り、その排ガス中の揮発性有機化合物を触媒で燃焼・分解させて排ガス中の揮発性有機化合物濃度を低下させ
、その排ガスを前記熱交換器の放熱側通路を通して排出する脱臭装置を運転するに際し、給気ブロアの風量を、
濃度センサにより測定した前記熱交換器の給熱側通路の上流側での排ガス中の揮発性有機化合物濃度に基づき、加熱器の上流側の排ガス中の揮発性有機化合物濃度が爆発下限界未満に維持される最少量に制御することで、揮発性有機化合物(VOC)の爆発を防止しつつ、給気ブロアの消費電力を低減させ、かつ加熱器での加熱量を、その加熱器の下流側での排ガス温度が、触媒反応により揮発性有機化合物が分解して触媒の下流側での揮発性有機化合物濃度が所定濃度以下となる温度範囲に維持される最少量に制御することで、加熱器の消費エネルギーを低減させつつ、排ガス中の揮発性有機化合物濃度を所定濃度以下に維持することができるので、揮発性有機化合物の爆発を防止しつつ給気ブロアの省電力を達成するとともに、加熱器の省エネルギーおよび排ガスの環境規制を達成することができる。
【0016】
また、本発明の脱臭装置によれば、有機溶剤を用いる処理工程で発生する揮発性有機化合物を大気とともに給気ブロアで吸い込んで排ガスとして
、熱交換器の給熱側通路を通して加熱器へ送り、その排ガスを加熱器で加熱して触媒に送り、その排ガス中の揮発性有機化合物を触媒で燃焼・分解させて排ガス中の揮発性有機化合物濃度を低下させ
、その排ガスを前記熱交換器の放熱側通路を通して排出する脱臭装置において、給気ブロア制御部が、給気ブロアの風量を、
濃度センサにより測定した前記熱交換器の給熱側通路の上流側での排ガス中の揮発性有機化合物濃度に基づき、加熱器の上流側の排ガス中の揮発性有機化合物濃度が爆発下限界未満に維持される最少量に制御し、また加熱器制御部が、加熱器での加熱量を、その加熱器の下流側での排ガス温度が、触媒反応により揮発性有機化合物が分解して触媒の下流側での揮発性有機化合物濃度が所定濃度以下となる温度範囲に維持される最少量に制御するので、上述した本発明の脱臭装置の運転方法を実施し得て、揮発性有機化合物の爆発を防止しつつ給気ブロアの省電力を達成するとともに、加熱器の省エネルギーおよび排ガスの環境規制を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の脱臭装置の運転方法の一実施形態の実施に用いられる、本発明の脱臭装置の一実施形態の構成を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づく実施例によって詳細に説明する。ここに、
図1は、本発明の脱臭装置の運転方法の一実施形態の実施に用いられる、本発明の脱臭装置の一実施形態の構成を示す略線図であり、図中符号1はその実施形態の脱臭装置を示す。
【0019】
この実施形態の脱臭装置1は、薄金属帯に対するコーティングを行うコーターオーブン(コーター焼付炉)から排出される、コーティング材中の有機溶剤から発生する揮発性有機化合物(VOC)を含む排ガスに関し、大気汚染防止法に定められているVOC規制値を遵守すべく、その排ガス中のVOCを除去するためのものであり、このためこの脱臭装置1は、給気ブロアとしての給気ファン2と、熱交換器3と、加熱器4と、反応器5とを具え、図中太線矢印で示すように、コーターオーブンで発生する揮発性有機化合物を大気とともに、給気ファン2で吸い込んで排ガスとして熱交換器3に送り、その排ガスを熱交換器3内の仕切り壁3aの一方の側に画成された給熱側通路に通して、熱交換器3内の仕切り壁3aの反対側に画成された放熱側通路に通される、後述する触媒5aでVOCを除去された高温の排ガスとの間の熱交換により予熱する。
【0020】
次いでこの脱臭装置1は、その予熱された排ガスをガス配管6で加熱器4に送って、加熱器4内の主バーナー4aでの加熱用燃料の燃焼によりその排ガスを加熱し、その加熱された排ガスを反応器5に送って、その排ガス中のVOCを、反応器5内の、白金やパラジウム等の触媒5aの作用下で燃焼させ、以下の式のように加熱分解させる。
【0021】
そしてこの脱臭装置1は、上記加熱分解によりVOC濃度が低下した高温の排ガスを上記熱交換器3に送り、この熱交換器3内で上記のように給気ファン2からの排ガスと熱交換させて冷却した後、大気中に放出する。このようにこの脱臭装置1では、排ガス中のVOCが燃焼により加熱分解するため、排ガスの2次処理(廃水・廃油処理)が不要となる。
【0022】
ここで、上記給気ファン2はモータ2aを有し、このモータ2aの作動を制御するために、この脱臭装置1はさらに、通常のコンピュータを有する電圧および周波数可変のインバータ(VVVF)7と、給気ファン2と熱交換器3の給熱側通路との間の配管に設けられた、通常のVOC濃度センサである第1のVOC濃度センサ8とを具えており、インバータ
7はあらかじめ与えられたプログラムに基づき、給気ファン2が熱交換器3に送り出す排ガスの風量を、第1のVOC濃度センサ8が測定した給気ファン2と熱交換器3の給熱側通路との間の通路内すなわち加熱器4および熱交換器3の上流側での排ガス中のVOC濃度が爆発下限界未満、例えば爆発下限界のVOC濃度の0.8〜0.9倍に維持される限度において最少量にするようにモータ2aの作動を制御することで、加熱器4内でのVOCの爆発を防止しつつ、給気ファン2のモータ2aの消費電力を低減させる。従ってインバータ
7は、給気ブロア制御部として機能する。
【0023】
なお、この実施形態では、第1のVOC濃度センサ8が、給気ファン2と熱交換器3の給熱側通路との間の通路内すなわち熱交換器3の上流側での排ガス中のVOC濃度を測定しているので、熱交換器3での予熱により反応が生じて濃度が変化する前のVOC濃度を測定し得て、より高精度にモータ2aの作動を制御することができる。
【0024】
またここで、上記加熱器4は主バーナー4aの他にパイロットバーナー4bを有し、主バーナー4aにはそこに加熱用燃料(例えば灯油)を供給するための主燃料配管9が接続され、この主燃料配管9には、開閉弁10に加えて流量制御弁11が介挿されており、パイロットバーナー4bにはそこにパイロット用燃料(例えばLPG)を供給するためのパイロット燃料配管12が接続され、加熱器4にはそこに燃焼用エアを供給するためのエア配管13が接続されている。なお、パイロットバーナー4bは、主バーナー4aの点火時のみ使用される。
【0025】
そして上記開閉弁10および流量制御弁11の作動を制御するために、この脱臭装置1はさらに、通常のコンピュータを有する制御装置14と、反応器5内の触媒5aの上流側に設けられた、例えば熱電対を有する温度計15と、熱交換器3内に画成された上記放熱側通路の下流側に接続された排ガス放出用通路に設けられた、これも通常のVOC濃度センサである第2のVOC濃度センサ16とを具えており、制御装置14はあらかじめ与えられたプログラムに基づき、温度計15が測定する加熱器4の下流側での排ガス温度が、触媒反応によりVOCが分解して触媒5aの下流側でのVOC濃度が所定濃度、例えば大気汚染防止法でのVOC排出抑制基準値である600ppmC(カーボン濃度換算)以下となる温度範囲、例えば300〜350℃に維持される限度において、加熱器4の主バーナー4aでの加熱用燃料の燃焼による排ガスの加熱量が最少量になるように、主バーナー4aへの加熱用燃料の供給量を増減させるよう流量制御弁11の作動を制御する。従って制御装置14は、加熱器制御部として機能する。
【0026】
かかるこの実施形態の脱臭装置1の運転方法および脱臭装置1によれば、インバータ7が、給気ファン2の風量を、加熱器4の上流側の排ガス中のVOC濃度が爆発下限界未満に維持される最少量に制御し、また制御装置14が、加熱器4での加熱量を、その加熱器4の下流側での排ガス温度が、触媒反応によりVOCが分解して触媒5aの下流側でのVOC濃度が所定濃度としての大気汚染防止法でのVOC排出抑制基準値以下となる温度範囲に維持される最少量に制御するので、VOCの爆発を防止しつつ給気ファン2の省電力を達成するとともに、加熱器4の省エネルギーおよび排ガスの環境規制を達成することができる。
【0027】
さらに、この実施形態の脱臭装置1においては、加熱器4での加熱用燃料の燃焼による加熱量を最少にしても、温度計15が測定する加熱器4の下流側での排ガス温度が、触媒反応によりVOCが分解して触媒5aの下流側でのVOC濃度が上記所定濃度以下となる温度範囲の上限を超えた場合に、制御装置14が加熱器4での燃焼による加熱を停止した状態で、インバータ
7が給気ファン2の運転を継続し、その後、温度計15が測定する加熱器4の下流側での排ガス温度が、触媒反応によりVOCが分解して触媒の下流側でのVOC濃度が上記所定濃度以下となる温度範囲の下限を下回った場合に、制御装置14が加熱器4での燃焼による加熱を再開する。
【0028】
従って、この実施形態の脱臭装置1によれば、VOCの爆発を防止しつつ給気ファン2の省電力を達成するとともに、加熱器4のさらなる省エネルギーを達成することができる。
【0029】
また、この実施形態の脱臭装置1においては、加熱器4での加熱用燃料の燃焼による加熱量を最少にしても、温度計15が測定する加熱器4の下流側での排ガス温度が、触媒反応によりVOCが分解して触媒5aの下流側でのVOC濃度が上記所定濃度以下となる温度範囲の上限を超えた場合に、制御装置14が加熱器4での燃焼による加熱を停止した状態で、インバータ
7が給気ファン2の運転を継続し、その後、触媒5aの下流側でのVOC濃度が上記所定濃度以下であってその所定濃度
に近い所定範囲内、例えば
所定濃度の0.8〜0.9倍に入った場合にも、加熱器4での燃焼等による加熱を再開する。
【0030】
従って、この実施形態の脱臭装置1によれば、VOCの爆発を防止しつつ給気ファン2の省電力を達成するとともに、排ガスの環境規制を確実に達成することができる。
【0031】
(実施例)
次に、この実施形態の脱臭装置1の運転方法の一実施例について説明する。この実施例では、給気ファン2の風量を最大400m
3/minとし、VOC濃度の第1のVOC濃度センサ8での処理前値が最大15000ppmCであるのに対し第2のVOC濃度センサ16での処理後値を平均90ppmC(<600ppmC)とし、加熱器4での加熱用燃料としての灯油の使用量を150×10
4kcal/hrとし、コーターオーブンで使用する有機溶剤量Gを最大274kg/hrとし、排気風量係数C(溶剤の各々の成分の爆発下限界の加重平均で計算される値)を最大320m
3N/kgとして、給気ファン2でのコーターオーブンからの排気風量QをQ(m
3N/min)=G(kg/hr)×C(m
3N/kg)/60×(0.8〜0.9)とし、加熱器4での排ガス温度制御範囲を350〜380℃とした。
【0032】
この運転の結果、VOCの爆発を防止しつつ給気ファン2の省電力を達成するとともに、灯油使用量を従来よりも21%減少させることでき、しかも排ガスのVOC濃度を処理後平均90ppmCとしてVOC排出基準値以下を遵守することができた。
【0033】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限られるものでなく、所要に応じて特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更し得るものであり、例えば、加熱器4での排ガスの加熱は、燃料の燃焼の代りに電気ヒータ等で行ってもよい。また、第1のVOC濃度センサ8は、加熱器4の上流側であれば、ガス配管6内等で排ガス中のVOC濃度を測定するようにしてもよい。そして、熱交換器3を設けずに、排ガスを給気ファン2から直接加熱器4に供給するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
かくして本発明の脱臭装置の運転方法によれば、有機溶剤を用いる処理工程で発生する揮発性有機化合物を大気とともに給気ブロアで吸い込んで排ガスとして
、熱交換器の給熱側通路を通して加熱器へ送り、その排ガスを加熱器で加熱して触媒に送り、その排ガス中の揮発性有機化合物を触媒で燃焼・分解させて排ガス中の揮発性有機化合物濃度を低下させ
、その排ガスを前記熱交換器の放熱側通路を通して排出する脱臭装置を運転するに際し、給気ブロアの風量を、
濃度センサにより測定した前記熱交換器の給熱側通路の上流側での排ガス中の揮発性有機化合物濃度に基づき、加熱器の上流側の排ガス中の揮発性有機化合物濃度が爆発下限界未満に維持される最少量に制御することで、揮発性有機化合物(VOC)の爆発を防止しつつ、給気ブロアの消費電力を低減させ、かつ加熱器での加熱量を、その加熱器の下流側での排ガス温度が、触媒反応により揮発性有機化合物が分解して触媒の下流側での揮発性有機化合物濃度が所定濃度以下となる温度範囲に維持される最少量に制御することで、加熱器の消費エネルギーを低減させつつ、排ガス中の揮発性有機化合物濃度を所定濃度以下に維持することができるので、揮発性有機化合物の爆発を防止しつつ給気ブロアの省電力を達成するとともに、加熱器の省エネルギーおよび排ガスの環境規制を達成することができる。
【0035】
また、本発明の脱臭装置によれば、有機溶剤を用いる処理工程で発生する揮発性有機化合物を大気とともに給気ブロアで吸い込んで排ガスとして
、熱交換器の給熱側通路を通して加熱器へ送り、その排ガスを加熱器で加熱して触媒に送り、その排ガス中の揮発性有機化合物を触媒で燃焼・分解させて排ガス中の揮発性有機化合物濃度を低下させ
、その排ガスを前記熱交換器の放熱側通路を通して排出する脱臭装置において、給気ブロア制御部が、給気ブロアの風量を、
濃度センサにより測定した前記熱交換器の給熱側通路の上流側での排ガス中の揮発性有機化合物濃度に基づき、加熱器の上流側の排ガス中の揮発性有機化合物濃度が爆発下限界未満に維持される最少量に制御し、また加熱器制御部が、加熱器での加熱量を、その加熱器の下流側での排ガス温度が、触媒反応により揮発性有機化合物が分解して触媒の下流側での揮発性有機化合物濃度が所定濃度以下となる温度範囲に維持される最少量に制御するので、上述した本発明の脱臭装置の運転方法を実施し得て、揮発性有機化合物の爆発を防止しつつ給気ブロアの省電力を達成するとともに、加熱器の省エネルギーおよび排ガスの環境規制を達成することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 脱臭装置
2 給気ファン(給気ブロア)
2a モータ
3 熱交換器
3a 仕切り壁
4 加熱器
5 反応器
5a 触媒
6 ガス配管
7 インバータ(給気ブロア制御部)
8 第1のVOC
濃度センサ
9 主燃料配管
10 開閉弁
11 流量制御弁
12 パイロット燃料配管
13 エア配管
14 制御装置(加熱器制御部)
15 温度計
16 第2のVOC
濃度センサ