【文献】
Ericsson, ST-Ericsson,On remaining details for uplink power control with carrier aggregation, 3GPP TSG-RAN WG1#60 R1-100846,2010年 2月22日,<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_60/Docs/R1-100846.zip>
【文献】
Nokia Corporation, Nokia Siemens Networks,RACH and carrier aggregation, 3GPP TSG-RAN WG2♯68 R2-096844,2009年11月 9日,<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_68/Docs/R2-096844.zip>
【文献】
E-mail rapporteur (NTT DOCOMO, INC.),CA support for multi-TA, 3GPP TSG-RAN WG2♯69 R2-101567,2010年 2月22日,<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_69/Docs/R2-101567.zip>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1のタイミングアドバンスグループに属する第1のコンポーネントキャリアにおける上り共有チャネル(PUSCH)送信のための電力をサブフレーム毎に決定し、第2のタイミングアドバンスグループに属する第2のコンポーネントキャリアにおけるランダムアクセスチャネル(PRACH)送信のための電力を決定し、前記第1のタイミングアドバンスグループと前記第2のタイミングアドバンスグループは異なる、決定部と、
総送信電力が端末装置に設定された最大送信電力値PMAXを超える場合は、前記第1のコンポーネントキャリア上の第1のサブフレームにおける前記PUSCH送信と、前記第2のコンポーネントキャリア上の第2のサブフレームにおける前記PRACH送信とが重なる部分において調整後の総送信電力がPMAXを超えないように、前記PUSCH送信のための電力を調整し、前記第1のコンポーネントキャリア上の前記第1のサブフレームと前記第2のコンポーネントキャリア上の前記第2のサブフレームとは、時間軸において前記重なる部分だけ重なっている、調整部と、
前記第1のコンポーネントキャリアのPUSCH上で、前記調整後のPUSCH送信のための電力でトランスポートブロックを送信し、前記第2のコンポーネントキャリアのPRACH上で、前記決定されたPRACH送信のための電力でランダムアクセスプリアンブルを送信する送信部と、
を具備する通信装置。
前記ランダムアクセスプリアンブルの送信が要求されず、前記第1のコンポーネントキャリアにおいて、上り制御チャネル(PUCCH)が前記PUSCHと同時に送信される場合は、
前記決定部は、前記PRACH送信のための電力をゼロに設定し、さらに、前記第1のコンポーネントキャリアにおけるPUCCH送信のための電力を決定し、
前記調整部は、調整後の総送信電力がPMAXを超えないように前記PUSCH送信のための電力を調整する、
請求項1に記載の通信装置。
前記第1のコンポーネントキャリアに複数のPUSCHが設定される場合は、前記調整部は、前記複数のPUSCHの各々の電力を削減することにより、前記PUSCH送信のための電力を調整する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の通信装置。
第1のタイミングアドバンスグループに属する第1のコンポーネントキャリアにおける上り共有チャネル(PUSCH)送信のための電力をサブフレーム毎に決定し、第2のタイミングアドバンスグループに属する第2のコンポーネントキャリアにおけるランダムアクセスチャネル(PRACH)送信のための電力を決定し、前記第1のタイミングアドバンスグループと前記第2のタイミングアドバンスグループは異なり、
総送信電力が端末装置に設定された最大送信電力値PMAXを超える場合は、前記第1のコンポーネントキャリア上の第1のサブフレームにおける前記PUSCH送信と、前記第2のコンポーネントキャリア上の第2のサブフレームにおける前記PRACH送信とが重なる部分において調整後の総送信電力がPMAXを超えないように、前記PUSCH送信のための電力を調整し、前記第1のコンポーネントキャリア上の前記第1のサブフレームと前記第2のコンポーネントキャリア上の前記第2のサブフレームとは、時間軸において前記重なる部分だけ重なっており、
前記第1のコンポーネントキャリアのPUSCH上で、前記調整後のPUSCH送信のための電力でトランスポートブロックを送信し、前記第2のコンポーネントキャリアのPRACH上で、前記決定されたPRACH送信のための電力でランダムアクセスプリアンブルを送信する、
電力制御方法。
前記ランダムアクセスプリアンブルの送信が要求されず、前記第1のコンポーネントキャリアにおいて、上り制御チャネル(PUCCH)が前記PUSCHと同時に送信される場合は、
前記PRACH送信のための電力をゼロに設定し、さらに、前記第1のコンポーネントキャリアにおけるPUCCH送信のための電力を決定し、
調整後の総送信電力がPMAXを超えないように前記PUSCH送信のための電力を調整する、
請求項9に記載の電力制御方法。
前記第1のコンポーネントキャリアに複数のPUSCHが設定される場合は、前記複数のPUSCHの各々の電力を削減することにより、前記PUSCH送信のための電力を調整する、
請求項9から14のいずれか一項に記載の電力制御方法。
第1のタイミングアドバンスグループに属する第1のコンポーネントキャリアにおける上り共有チャネル(PUSCH)送信のための電力をサブフレーム毎に決定し、第2のタイミングアドバンスグループに属する第2のコンポーネントキャリアにおけるランダムアクセスチャネル(PRACH)送信のための電力を決定し、前記第1のタイミングアドバンスグループと前記第2のタイミングアドバンスグループは異なる、処理と、
総送信電力が端末装置に設定された最大送信電力値PMAXを超える場合は、前記第1のコンポーネントキャリア上の第1のサブフレームにおける前記PUSCH送信と、前記第1のコンポーネントキャリア上の第1のサブフレームにおける前記PRACH送信とが重なる部分において調整後の総送信電力がPMAXを超えないように、前記PUSCH送信のための電力を調整し、前記第1のコンポーネントキャリア上の前記第1のサブフレームと前記第2のコンポーネントキャリア上の前記第2のサブフレームとは、時間軸において前記重なる部分だけ重なっている、処理と、
前記第1のコンポーネントキャリアのPUSCH上で、前記調整後のPUSCH送信のための電力でトランスポートブロックを送信し、前記第2のコンポーネントキャリアのPRACH上で、前記決定されたPRACH送信のための電力でランダムアクセスプリアンブルを送信する処理と、
を制御する集積回路。
【背景技術】
【0002】
ロングタームエボリューション(LTE)
WCDMA無線アクセス技術をベースとする第3世代の移動通信システム(3G)は、世界中で広範な規模で配備されつつある。この技術を機能強化あるいは発展・進化させるうえでの最初のステップとして、高速下りリンクパケットアクセス(HSDPA)と、エンハンスト上りリンク(高速上りリンクパケットアクセス(HSUPA)とも称する)とが導入され、これにより、極めて競争力の高い無線アクセス技術が提供されている。
【0003】
ユーザからのますます増大する需要に対応し、新しい無線アクセス技術に対する競争力を確保する目的で、3GPPは、ロングタームエボリューション(LTE)と称される新しい移動通信システムを導入した。LTEは、今後10年間にわたり、データおよびメディアの高速伝送ならびに大容量の音声サポートに要求されるキャリアを提供するように設計されている。高いビットレートを提供する能力は、LTEにおける重要な方策である。
【0004】
LTE(ロングタームエボリューション)に関する作業項目(WI)の仕様は、E−UTRA(Evolved UMTS Terrestrial Radio Access(UTRA):進化したUMTS地上無線アクセス)およびE−UTRAN(Evolved UMTS terrestrial Radio Access Network:進化したUMTS地上無線アクセスネットワーク)と称され、最終的にリリース8(LTE)として公開される(LTEリリース8)。LTEシステムは、パケットベースの効率的な無線アクセスおよび無線アクセスネットワークであり、IPベースの機能を低待ち時間および低コストにおいて完全に提供する。詳細なシステム要件は、文献に記載されている。LTEにおいては、与えられたスペクトルを使用してフレキシブルなシステム配備を達成する目的で、複数の送信帯域幅(例えば、1.4MHz、3.0MHz、5.0MHz、10.0MHz、15.0MHz、および20.0MHz)が指定されている。下りリンクには、OFDM(直交周波数分割多重)をベースとする無線アクセスが採用されている。その理由として、そのような無線アクセスは、シンボルレートが低いため本質的にマルチパス干渉(MPI)を受けにくいこと、サイクリックプレフィックス(CP)を使用していること、さまざまな送信帯域幅の構成に対応可能であること、が挙げられる。上りリンクには、SC−FDMA(シングルキャリア周波数分割多元接続)をベースとする無線アクセスが採用されている。なぜなら、ユーザ機器(UE)の送信出力が限られていることを考えれば、ピークデータレートを向上させるよりも広いカバレッジエリアを提供することが優先されるためである。LTEリリース8では、数多くの主要なパケット無線アクセス技術(例えば、MIMO(多入力多出力)チャネル伝送技術)が採用されており、効率の高い制御シグナリング構造が達成されている。
【0005】
LTEのアーキテクチャ
図1は、LTEの全体的なアーキテクチャを示しており、
図2は、E−UTRANのアーキテクチャをさらに詳しく示している。E−UTRANは、基地局装置から構成されており、基地局装置は、ユーザ機器(UE)に向かうE−UTRAのユーザプレーン(PDCP/RLC/MAC/PHY)および制御プレーン(RRC)のプロトコルを終端させる。基地局装置(eNodeB/eNB)は、物理層(PHY)、メディアアクセス制御(MAC)層、無線リンク制御(RLC)層、およびパケットデータ制御プロトコル(PDCP)層(ユーザプレーンのヘッダ圧縮および暗号化の機能を含んでいる)をホストする。基地局装置は、制御プレーンに対応する無線リソース制御(RRC)機能も提供する。基地局装置は、無線リソース管理、アドミッション制御、スケジューリング、交渉された上りリンクQoS(サービス品質)の実施、セル情報のブロードキャスト、ユーザプレーンデータおよび制御プレーンデータの暗号化/復号化、下りリンク/上りリンクのユーザプレーンパケットヘッダの圧縮/復元など、多くの機能を実行する。基地局装置は、X2インタフェースによって互いに接続されている。
【0006】
さらに、基地局装置は、S1インタフェースによってEPC(Evolved Packet Core:進化したパケットコア)に接続されている。より具体的には、S1−MMEによってMME(Mobility Management Entity:移動管理エンティティ)に接続されており、S1−Uによってサービングゲートウェイ(SGW:Serving Gateway)に接続されている。S1インタフェースは、MME/サービングゲートウェイと基地局装置との間の多対多関係をサポートする。サービングゲートウェイは、ユーザデータパケットのルーティングおよび転送を行う。一方で、サービングゲートウェイは、基地局装置間のハンドオーバー時にユーザプレーンのモビリティアンカー(mobility anchor)としての役割と、LTEとそれ以外の3GPP技術との間のモビリティのためのアンカーとしての役割と、を果たす(S4インタフェースを終端させ、2G/3Gシステムとパケットデータネットワークゲートウェイ(PDN GW)との間でトラフィックを中継する)。サービングゲートウェイは、アイドル状態のユーザ機器に対しては、そのユーザ機器への下りリンクデータが到着したとき下りリンク(DL)データ経路を終端させ、ページングをトリガーする。サービングゲートウェイは、ユーザ機器のコンテキスト(例えば、IPベアラサービスのパラメータ、ネットワーク内部ルーティング情報)を管理および格納する。さらに、サービングゲートウェイは、合法傍受(lawful interception)の場合にユーザトラフィックの複製を実行する。
【0007】
MMEは、LTEのアクセスネットワークの主要な制御ノードである。MMEは、アイドルモードのユーザ機器の追跡およびページング手順(再送信を含む)の役割を担う。MMEは、ベアラの有効化/無効化プロセスに関与し、さらには、最初のアタッチ時と、コアネットワーク(CN)ノードの再配置を伴うLTE内ハンドオーバー時とに、ユーザ機器のサービングゲートウェイを選択する役割も担う。MMEは、(HSSと対話することによって)ユーザを認証する役割を担う。非アクセス層(NAS:Non-Access Stratum)シグナリングはMMEにおいて終端され、MMEは、一時的なIDを生成してユーザ機器に割り当てる役割も担う。MMEは、サービスプロバイダの公衆陸上移動網(PLMN:Public Land Mobile Network)に入るためのユーザ機器の認証を確認し、ユーザ機器のローミング制限を実施する。MMEは、NASシグナリングの暗号化/完全性保護においてネットワーク内の終端点であり、セキュリティキーの管理を行う。シグナリングの合法傍受も、MMEによってサポートされる。さらに、MMEは、LTEのアクセスネットワークと2G/3Gのアクセスネットワークとの間のモビリティのための制御プレーン機能を提供し、SGSNからのS3インタフェースを終端させる。さらに、MMEは、ローミングするユーザ機器のためのホームHSSに向かうS6aインタフェースを終端させる。
【0008】
LTEにおける上りリンクアクセス方式
上りリンク送信においては、カバレッジを最大にするため、ユーザ端末による電力効率の高い送信が必要である。E−UTRAの上りリンク送信方式としては、シングルキャリア伝送と、FDMA(周波数分割多元接続)および動的な帯域幅割当てとを組み合わせた方式が選択されている。シングルキャリア伝送が選択された主たる理由は、マルチキャリア信号(OFDMA:直交周波数分割多元接続)と比較して、ピーク対平均電力比(PARR)が低いためである。また、これに対応して電力増幅器の効率が改善され、カバレッジの向上が見込まれるためである(与えられる端末ピーク電力に対してデータレートが高い)。基地局装置は、各時間間隔において、ユーザデータを送信するための固有の時間/周波数リソースをユーザに割り当て、これによってセル内の直交性が確保される。上りリンクにおける直交多元接続によって、セル内干渉が排除されることでスペクトル効率が高まる。マルチパス伝搬に起因する干渉については、送信信号にサイクリックプレフィックスを挿入することにより基地局(eNodeB)において対処する。
【0009】
データ送信に使用される基本的な物理リソースは、1つの時間間隔(例えば、0.5msのサブフレーム)にわたるサイズBW
grantの周波数リソースから構成される(符号化された情報ビットはこのリソースにマッピングされる)。なお、サブフレーム(送信時間間隔(TTI)とも称する)は、ユーザデータを送信するための最小の時間間隔である。しかしながら、サブフレームを連結することにより、1TTIよりも長い時間にわたる周波数リソースBW
grantをユーザに割り当てることも可能である。
【0010】
周波数リソースは、
図3および
図4に示したように、局在型スペクトル(localized spectrum)、または分散型スペクトル(distributed spectrum)のいずれかとすることができる。
図3に示したように、局在型のシングルキャリアは、送信信号が、利用可能な全スペクトルの一部分を占める連続的なスペクトルを有することを特徴とする。送信信号のシンボルレートが異なる(対応してデータレートが異なる)ことは、局在型のシングルキャリア信号の帯域幅が異なることを意味する。
【0011】
これに対して、
図4に示したように分散型のシングルキャリアは、送信信号が、システム帯域幅の全体にわたり分散する不連続な(「くし状の」)スペクトルを有することを特徴とする。ただし、分散型のシングルキャリア信号はシステム帯域幅の全体にわたり分散しているが、占有するスペクトルの合計量は、本質的には、局在型のシングルキャリアのスペクトル量と同じである。さらには、シンボルレートを上げる/下げるには、「くしの歯」のそれぞれの「帯域幅」をそのままにして「くしの歯」の数を増やす/減らす。
【0012】
図4のスペクトルは、一見すると、くしの歯のそれぞれが「サブキャリア」に対応するマルチキャリア信号のような印象を与える。しかしながら、分散型のシングルキャリア信号の時間領域の信号生成では、対応するピーク対平均電力比の低いために、生成される信号は、まさにシングルキャリア信号であることが明らかである。分散型のシングルキャリア信号とマルチキャリア信号(例えばOFDM:直交周波数分割多重)との間の重要な違いとして、シングルキャリア信号では、「サブキャリア」または「くしの歯」のそれぞれが1個の変調シンボルを伝えるのではない。そうではなく、「くしの歯」のそれぞれは、すべての変調シンボルに関する情報を伝える。これにより、くしの歯の間に依存性が生じ、結果としてピーク対平均電力比(PAPR)特性を低くする。さらに、「くしの歯」の間のこの依存性の結果として、送信帯域幅全体にわたりチャネルが周波数非選択性でない限りは、等化の必要性が生じる。これに対して、OFDMの場合、サブキャリアの帯域幅全体にわたりチャネルが周波数非選択性である限りは、等化は必要ない。
【0013】
分散型送信では、局在型送信よりも大きな周波数ダイバーシチゲインを提供することができる。一方で、局在型送信では、チャネルに応じたスケジューリングをより容易に行うことができる。なお、多くの場合、スケジューリングの決定では、高いデータレートを達成するため1つのユーザ機器に帯域幅全体を与えるように決定することができる。
【0014】
LTEにおける上りリンクのスケジューリング方式
上りリンクの方式として、スケジューリング制御式の(すなわち基地局装置によって制御される)アクセスと、コンテンション(競合)ベースのアクセスと、の両方を使用することができる。
【0015】
スケジューリング制御式アクセスの場合、上りリンクデータ送信用として、特定の時間長の特定の周波数リソース(すなわち時間/周波数リソース)が、ユーザ機器に割り当てられる。しかしながら、コンテンションベースのアクセス用に、いくらかの時間/周波数リソースを割り当てることができる。コンテンションベースの時間/周波数リソースの範囲内では、ユーザ機器は、最初にスケジューリングされることなく送信することができる。ユーザ機器がコンテンションベースのアクセスを行う1つのシナリオは、例えばランダムアクセスである。すなわち、ユーザ機器があるセルへ、または上りリンクリソースを要求するため、最初のアクセスを行うときである。
【0016】
スケジューリング制御式アクセスの場合、基地局装置のスケジューラが、上りリンクデータ送信のための固有の周波数/時間リソースをユーザに割り当てる。より具体的には、スケジューラは以下を決定する。
− 送信を許可する(1つまたは複数の)ユーザ機器
− 物理チャネルリソース(周波数)
− 移動端末が送信に使用するべきトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ(TBS)および変調・符号化方式(MCS))
【0017】
割当て情報は、いわゆる第1層/第2層制御チャネルで送られるスケジューリンググラントを通じてユーザ機器にシグナリングされる。以下では、説明を簡潔にするため、この下りリンクチャネルを「上りリンクグラントチャネル」と称する。
【0018】
スケジューリンググラントメッセージ(本明細書ではリソース割当てとも称する)は、情報として、周波数帯域のうちユーザ機器による使用を許可する部分と、グラントの有効期間と、これから行う上りリンク送信にユーザ機器が使用しなければならないトランスポートフォーマットとを、少なくとも含んでいる。最も短い有効期間は、1サブフレームである。グラントメッセージには、選択される方式に応じて追加の情報も含めることができる。上りリンク共有チャネルUL−SCHで送信する権利を許可するグラントとしては、「各ユーザ機器に対する」グラントのみが使用される(すなわち、「各ユーザ機器における各無線ベアラに対する」グラントは存在しない)。したがってユーザ機器は、割り当てられたリソースを何らかの規則に従って無線ベアラの間で配分する必要があり、この規則については次節で詳しく説明する。
【0019】
トランスポートフォーマットは、HSUPAの場合とは異なり、ユーザ機器側では選択しない。基地局(eNodeB)が、いくつかの情報(例えば、報告されたスケジューリング情報およびQoS情報)に基づいてトランスポートフォーマットを決定し、ユーザ機器は、選択されたトランスポートフォーマットに従わなければならない。HSUPAでは、基地局装置が最大限の上りリンクリソースを割り当てて、ユーザ機器は、それに応じてデータ送信用の実際のトランスポートフォーマットを選択する。
【0020】
上りリンクのデータ送信では、スケジューリンググラントを通じてユーザ機器に割り当てられる時間/周波数リソースを必ず使用しなければならない。ユーザ機器が有効なグラントを持たない場合、上りリンクデータを送信することは許可されない。各ユーザ機器に専用チャネルが必ず割り当てられるHSUPAの場合とは異なり、データ送信用には、複数のユーザによって共有される1つの上りリンクデータチャネル(UL−SCH)のみが存在する。
【0021】
リソースを要求するため、ユーザ機器はリソース要求メッセージを基地局装置に送信する。このリソース要求メッセージには、例えば、バッファ状態、ユーザ機器の電力状態、サービス品質(QoS)に関連する情報を含めることができる。これらの情報(以下ではスケジューリング情報と称する)により、基地局装置は適切なリソース割当てを行うことができる。本文書全体を通じて、無線ベアラグループごとにバッファ状態が報告されるものと想定する。当然ながら、バッファ状態報告についての別の設定も可能である。無線リソースのスケジューリングは、サービス品質を決定するうえで、共有チャネルアクセスネットワークにおいて最も重要な機能であるため、効率的なQoS管理を可能にする目的で、LTEにおける上りリンクスケジューリング方式が満たしているべき要件がいくつかある(非特許文献1を参照)(http://www.3gpp.org/において入手可能であり、参照によって本明細書に組み込まれている)。
− 優先順位の低いサービスのリソース不足を避けるべきである。
− 個々の無線ベアラ/サービスにおいてQoSが明確に区別されるべきである。
− どの無線ベアラ/サービスのデータが送信されるのかを基地局装置のスケジューラが識別できるように、上りリンク報告において、きめ細かいバッファ報告(例えば、無線ベアラごとの報告、または無線ベアラグループごとの報告)を可能にするべきである。
− 異なるユーザのサービスの間でQoSを明確に区別できるようにするべきである。
− 無線ベアラごとに最小限のビットレートを提供できるようにするべきである。
【0022】
上に挙げた条件から理解できるように、LTEのスケジューリング方式の1つの重要な側面は、事業者が、自身の総セル容量を、異なるQoSクラスの個々の無線ベアラの間で分配することを制御できるメカニズムを提供することである。無線ベアラのQoSクラスは、前述したようにサービングゲートウェイから基地局装置にシグナリングされる対応するSAEベアラのQoSプロファイルによって識別される。事業者は、自身の総セル容量のうちの特定の量を、特定のQoSクラスの無線ベアラに関連付けられる総トラフィックに割り当てることができる。
【0023】
クラスに基づくこの方法を採用する主たる目的は、パケットの処理を、パケットが属するQoSクラスに応じて区別できるようにすることである。例えば、セル内の負荷が増加しているとき、事業者が、優先順位の低いQoSクラスに属するトラフィックを抑制することによって対処できるようにするべきである。この段階では、優先順位の高いトラフィックに割り当てられた総リソースは、トラフィックを処理するのに十分であるため、優先順位の高いトラフィックを依然として低負荷状態で処理することができる。このことは、上りリンク方向および下りリンク方向の両方で可能とするべきである。
【0024】
この方法を採用する1つの恩恵として、事業者は、帯域幅の分配を決めるポリシーを完全に制御することができる。例えば、事業者の1つのポリシーとして、負荷が極めて高いときでも、優先順位が最低のQoSクラスに属するトラフィックのリソース不足を避けるようにすることができる。優先順位の低いトラフィックのリソース不足を避けることは、LTEにおける上りリンクスケジューリング方式に求められる主たる要件の1つである。現在のUMTSリリース6(HSUPA)のスケジューリングメカニズムでは、絶対的な優先順位方式の結果として、優先順位の低いアプリケーションのリソース不足が生じることがある。E−TFC(Enhanced Transport Format Combination:拡張トランスポートフォーマット組合せ)の選択は、論理チャネルの絶対的な優先順位のみに従って行われる(すなわち優先順位の高いデータの送信が最大限に行われる)。このことは、優先順位の低いデータが、優先順位の高いデータによってリソース不足となりうることを意味する。リソース不足を避けるためには、基地局装置のスケジューラは、ユーザ機器がどの無線ベアラのデータを送信するかを制御する手段を備えていなければならない。このことは、主として、下りリンクにおいて第1層/第2層制御チャネルで送信されるスケジューリンググラントの設計および使用に影響を与える。以下では、LTEにおける上りリンク伝送速度の制御手順について詳しく説明する。
【0025】
上りリンク伝送速度制御/論理チャネル優先順位付け手順
UMTS LTE(ロングタームエボリューション)の上りリンク送信において望まれることは、リソース不足が回避されること、複数のベアラ間でのリソース割当ての高い柔軟性が可能であること、である。その一方で、ユーザ機器のベアラごとではなくユーザ機器ごとにリソース割当てが維持されることである。
【0026】
ユーザ機器は、複数の無線ベアラ間での上りリンクリソースの共有を管理する上りリンク伝送速度制御機能を有する。以下では、この上りリンク伝送速度制御機能を論理チャネル優先順位付け手順とも称する。論理チャネル優先順位付け(LCP)手順は、新しい送信が行われるとき、すなわち、トランスポートブロックを生成する必要があるときに適用される。容量を割り当てるための提案されている1つの方式では、各ベアラが、それぞれの最小限のデータレートに相当する組合せを受け取るまで、優先順位の順序で各ベアラにリソースを割り当て、さらなる容量があれば、それを例えば優先順位の順序でベアラに割り当てる。
【0027】
論理チャネル優先順位付け手順についての後からの説明から明らかになるように、ユーザ機器に備わる論理チャネル優先順位付け手順は、IPの世界で周知であるトークンバケットモデルに基づいて実施される。このモデルの基本的な機能は以下のとおりである。ある量のデータを送信する権利を表すトークンが、周期的に特定の速度でバケットに追加される。ユーザ機器にリソースが割り当てられると、バケットの中のトークンの数によって表される量までデータを送信することが許可される。ユーザ機器は、データを送信するとき、送信されるデータ量に相当する数のトークンを削除する。バケットが満杯である場合、それ以上のトークンは破棄される。トークンの追加に関して、このプロセスの反復周期はTTIごとであるものと想定できるが、トークンが1秒ごとに追加されるように、この周期を長くすることも容易である。基本的には、1msごとにトークンをバケットに追加する代わりに、1秒ごとに1000個のトークンを追加することもできる。
【0028】
以下では、LTEリリース8において使用される論理チャネル優先順位付け手順について説明する(さらに詳しくは、非特許文献2を参照)(http://www.3gpp.orgにおいて入手可能であり、参照によって本文書に組み込まれている)。
【0029】
RRCは、上りリンクデータのスケジューリングを、各論理チャネルのためのシグナリングによって制御する。このシグナリングにおいて、priorityは、値が大きいほど、低い優先順位レベルを示す。prioritisedBitRateは、優先ビットレート(PBR:Prioritized Bit Rate)を設定する。bucketSizeDurationは、バケットサイズ期間(BSD:Bucket Size Duration)を設定する。優先ビットレートの背後にある発想は、リソース不足の発生を回避する目的で、(保証ビットレートのない(非GBR)低優先順位のベアラを含めて)ベアラのそれぞれについて最小限のビットレートをサポートすることである。各ベアラは、少なくとも、優先ビットレート(PBR)を達成するための十分なリソースを取得する必要がある。
【0030】
ユーザ機器は、論理チャネルjごとに変数B
jを維持する。B
jは、関連する論理チャネルが確立されるときに0に初期化され、TTIごとに積PBR×TTI時間長だけインクリメントされる(PBRは論理チャネルjの優先ビットレート)。しかしながら、B
jの値はバケットサイズを超えることはできず、B
jの値が論理チャネルjのバケットサイズより大きい場合、B
jの値はバケットサイズに設定される。論理チャネルのバケットサイズは、PBR×BSDに等しく、PBRおよびBSDは上位層によって設定される。
【0031】
ユーザ機器は、新しい送信を行うとき、以下の論理チャネル優先順位付け手順を実行する。この上りリンク伝送速度制御機能によって、ユーザ機器は、自身の(1つまたは複数の)無線ベアラに以下の順序でリソースを割り当てる。
1. すべての論理チャネルについて、それらの設定されているPBRまで、優先順位の高い順(降順)に(B
jによって表されるバケット中のトークンの数に従って)リソースを割り当てる。
2. リソースが残っている場合、すべての論理チャネルについて、各論理チャネルのデータまたは上りリンクグラントのいずれかがなくなる(どちらか先に起こる方)まで、(B
jの値には無関係に)優先順位の厳密に高い順にリソースを割り当てる。同じ優先順位に設定されている論理チャネルは、等しくリソースを割り当てるべきである。
【0032】
PBRすべてが0に設定されている場合、最初のステップをスキップし、論理チャネルを優先順位の厳密な順序でリソースを割り当てる。すなわちユーザ機器は、高い優先順位のデータの送信を最大限に行う。
【0033】
さらに、ユーザ機器は、上のスケジューリング手順時に以下の規則にも従うものとする。
− RLC SDU(または部分的に送信されるSDUまたは再送信されるRLC PDU)全体が、残っているリソースに収まる場合、ユーザ機器は、そのRLC SDU(または部分的に送信されるSDUまたは再送信されるRLC PDU)を分割しないべきである。
− ユーザ機器は、論理チャネルからのRLC SDUを分割する場合、グラントができる限り使用されるようにセグメントのサイズを最大にする。
− ユーザ機器は、データの送信を最大限に行うべきである。
【0034】
LTEリリース8においては、論理チャネル優先順位付け(LCP)手順では優先ビットレート(PBR)のみが使用されるが、今後のリリースにおいてさらなる改良・強化が導入されることもあり得る。例えば、PBRと同様に、保証ビットレートのある(GBR)ベアラごとの最大ビットレート(MBR)や、保証ビットレートのない(非GBR)ベアラすべてに対する合計最大ビットレート(AMBR)が、ユーザ機器に導入されるかもしれない。MBRとは、ベアラあたりのトラフィックのビットレートを表し、AMBRは、ベアラのグループあたりのトラフィックのビットレートを表す。AMBRは、ユーザ機器のSAEベアラのうち、保証ビットレートのないすべてのSAEベアラに適用される。保証ビットレートのあるSAEベアラは、AMBRの範囲外である。保証ビットレートのない複数のSAEベアラが同一のAMBRを共有することができる。すなわち、これらのSAEベアラのそれぞれは、例えば自身以外のSAEベアラがトラフィックを伝えていないとき、AMBR全体を利用することが可能である。AMBRは、AMBRを共有する非GBR SAEベアラによる提供を期待できる合計ビットレートを制限する。
【0035】
ユニキャストデータ送信におけるHARQプロトコルの動作
信頼できないチャネルを介してのパケット伝送システムにおける誤り検出・訂正のための一般的な手法は、ハイブリッド自動再送要求(HARQ:Hybrid Automatic Repeat reQuest)と称される。ハイブリッドARQは、順方向誤り訂正(FEC)とARQとの組合せである。
【0036】
FEC符号化されたパケットが送信され、受信側がそのパケットを正しく復号化できない場合(誤りは通常ではCRC(巡回冗長検査)によってチェックされる)、受信側はそのパケットの再送信を要求する。
【0037】
LTEにおいては、信頼性を提供するため2つの再送信レベル、すなわち、MAC層におけるHARQと、RLC層における外部ARQ(outer ARQ)とが存在する。外部ARQは、HARQによって訂正されずに残った誤りを処理するために必要であり、HARQは、1ビットの誤りフィードバックメカニズム(すなわち、ACK/NACK)を使用することによって単純な形に維持されている。N個のプロセスによるストップアンドウェイトHARQ(stop-and-wait HARQ)が採用され、このHARQでは、下りリンクにおける非同期の再送信と、上りリンクにおける同期再送信とが行われる。同期HARQとは、HARQブロックの再送信が所定の周期間隔において行われることを意味する。したがって、再送信スケジュールを受信側に示すための明示的なシグナリングが要求されない。非同期HARQでは、エアインタフェースの条件に基づいて再送信をスケジューリングする柔軟性が提供される。この場合、正しい合成およびプロトコル動作が可能であるように、HARQプロセスの何らかの識別情報をシグナリングする必要がある。3GPP LTEリリース8においては、8個のプロセスによるHARQ動作が使用される。下りリンクデータ送信におけるHARQプロトコルの動作は、HSDPAに類似する、または同じである。
【0038】
上りリンクのHARQプロトコル動作においては、再送信をスケジューリングする方法として2種類のオプションがある。再送信は、NACKによってスケジューリングされる(同期式非適応型再送信)、または、PDCCHによって明示的にスケジューリングされる(同期式適応型再送信)。同期式非適応型再送信の場合、再送信では前の上りリンク送信と同じパラメータを使用し、すなわち、再送信は同じ物理チャネルリソース上でシグナリングされ、同じ変調方式を使用する。同期式適応型再送信はPDCCHを介して明示的にスケジューリングされるため、基地局装置が再送信の特定のパラメータを変更することが可能である。上りリンクにおける断片化(fragmentation)を回避する目的で、再送信を例えば異なる周波数リソース上にスケジューリングすることができ、または、基地局装置は、変調方式を変更する、あるいは、再送信に使用される冗長バージョンをユーザ機器に示すことができる。なお、HARQのフィードバック(ACK/NACK)とPDCCHシグナリングは同じタイミングで行われることに留意されたい。したがって、ユーザ機器は、同期式非適応型再送信がトリガーされているか(NACKのみが受信されたか)、または基地局装置が同期式適応型再送信を要求しているか(すなわちPDCCHがシグナリングされたか)を、一度だけ確認するのみでよい。
【0039】
第1層/第2層制御シグナリング
スケジューリング対象のユーザに、ユーザの組合せステータス、トランスポートフォーマット、およびその他のデータ関連情報(例:HARQ)を知らせるためには、第1層/第2層制御シグナリングを下りリンク上でデータと一緒に送信する必要がある。この制御シグナリングは、一般にはサブフレーム内で下りリンクデータと一緒に多重化する必要がある(ユーザ組合せがサブフレーム単位で変化しうるものと想定する)。なお、ユーザ組合せはTTI(送信時間間隔)ベースで実行されることもあり、その場合、TTI長はサブフレームの倍数であることに留意されたい。TTI長は、サービスエリアにおいてすべてのユーザに対して一定とする、ユーザごとに異なる、あるいはユーザごとに動的とすることもできる。第1層/第2層制御シグナリングは、一般的にはTTIあたり1回送信するのみでよい。第1層/第2層制御シグナリングは、物理下りリンク制御チャネル(PDCCH)上で送信される。なお、上りリンクデータ送信のための組合せ(上りリンクグラント)も、PDCCH上で送信されることに留意されたい。
【0040】
第1層/第2層制御シグナリングにおいて送られるPDCCH情報は、一般的には、共有制御情報(SCI:Shared Control Information)と専用制御情報(DCI:Dedicated Control Information)に分類することができる。
【0041】
共有制御情報(SCI)
共有制御情報(SCI)は、いわゆるカテゴリ1の情報を伝える。第1層/第2層制御シグナリングの共有制御情報部分は、リソース割当て(指示)に関連する情報を含んでいる。共有制御情報は、一般には以下の情報を含んでいる。
− ユーザ識別情報。割り当てる対象のユーザを示す。
− リソースブロック組合せ情報。ユーザに割り当てられるリソース(リソースブロック:RB)を示す。なお、ユーザに割り当てられるリソースブロックの数は動的とすることができる。
− 割当ての持続時間(オプション)。複数のサブフレーム(またはTTI)にわたる組合せが可能である場合。
【0042】
これらに加えて、共有制御情報は、他のチャネルの設定および専用制御情報(DCI)の設定に応じて、上りリンク送信に対するACK/NACK、上りリンクスケジューリング情報、DCIに関する情報(例:リソース、MCS)などの情報を含んでいることができる。
【0043】
専用制御情報(DCI)
専用制御情報(DCI)は、いわゆるカテゴリ2およびカテゴリ3の情報を伝える。第1層/第2層制御シグナリングの専用制御情報部分は、カテゴリ1によって示されるスケジューリング対象のユーザに送信されるデータの送信フォーマットに関連する(カテゴリ2)情報を含んでいる。さらに、(ハイブリッド)ARQを適用する場合、専用制御情報部分はHARQ(カテゴリ3)情報を伝える。専用制御情報は、カテゴリ1によるスケジューリング対象ユーザによって復号化されるのみでよい。専用制御情報は、一般には以下に関する情報を含んでいる。
− カテゴリ2:変調方式、トランスポートブロック(ペイロード)サイズ(または符号化率)、MIMO関連情報など。トランスポートブロック(もしくはペイロードサイズ)または符号化率のいずれかをシグナリングできる。いずれの場合も、これらのパラメータは、変調方式情報およびリソース情報(割り当てられたリソースブロックの数)を使用することによって相互に計算することができる。
− カテゴリ3:HARQ関連情報(例えば、ハイブリッドARQプロセス番号、冗長バージョン、再送信シーケンス番号)
【0044】
下りリンクデータ送信の第1層/第2層制御シグナリング情報
下りリンクパケットデータ送信とともに、第1層/第2層制御シグナリングが個別の物理チャネル(PDCCH)上で送信される。この第1層/第2層制御シグナリングは、一般には以下に関する情報を含んでいる。
− データが送信される(1つまたは複数の)物理チャネルリソース(例えば、OFDMの場合のサブキャリアまたはサブキャリアブロック、CDMAの場合の符号)。ユーザ機器(受信側)は、データが送信されるリソースをこの情報によって識別することができる。
− 送信に使用されるトランスポートフォーマット。例えば、データのトランスポートブロックサイズ(ペイロードサイズ、情報ビットサイズ)、MCS(変調・符号化方式)レベル、スペクトル効率、符号化率などが挙げられる。ユーザ機器(受信側)は、復調、デ・レートマッチング(de-rate-matching)、および復号化のプロセスを開始する目的で、情報ビットサイズ、変調方式、および符号化率を、この情報によって(通常はリソース割当て情報と組み合わせて)識別することができる。場合によっては、変調方式を明示的にシグナリングすることができる。
− HARQ情報:
− プロセス番号:ユーザ機器は、データがマッピングされているHARQプロセスを識別することができる。
− シーケンス番号または新規データインジケータ:ユーザ機器は、送信が新しいパケットであるか再送信されたパケットであるかを識別することができる。
− 冗長バージョンもしくはコンステレーションバージョンまたはその両方:それぞれ、使用されているハイブリッドARQ冗長バージョン(デ・レートマッチングに必要である)、および使用されている変調コンステレーションバージョン(復調に必要である)を、ユーザ機器に知らせる。
− ユーザ機器識別情報(ユーザ機器ID):第1層/第2層制御シグナリングの対象であるユーザ機器を知らせる。一般的な実施形態においては、この情報は、制御情報が別のユーザ機器に読まれることを防止する目的で、第1層/第2層制御シグナリングのCRCをマスクするために使用される。
【0045】
上りリンクデータ送信のための第1層/第2層制御シグナリング情報
上りリンクパケットデータ送信を可能にする目的で、送信の詳細をユーザ機器に知らせるため、第1層/第2層制御シグナリングが下りリンク(PDCCH)上で送信される。この第1層/第2層制御シグナリングは、一般には以下の情報を含んでいる。
− ユーザ機器がデータ送信に使用するべき(1つまたは複数の)物理チャネルリソース(例えば、OFDMの場合のサブキャリアまたはサブキャリアブロック、CDMAの場合の符号)。
− ユーザ機器が送信に使用するべきトランスポートフォーマット。例えば、データのトランスポートブロックサイズ(ペイロードサイズ、情報ビットサイズ)、MCS(変調・符号化方式)レベル、スペクトル効率、符号化率などが挙げられる。ユーザ機器(送信側)は、変調、レートマッチング、および符号化のプロセスを開始する目的で、情報ビットサイズ、変調方式、および符号化率を、この情報によって(通常はリソース割当て情報と組み合わせて)選択することができる。場合によっては、変調方式を明示的にシグナリングすることができる。
− ハイブリッドARQ情報:
− プロセス番号:データの取得先のハイブリッドARQプロセスをユーザ機器に知らせる。
− シーケンス番号または新規データインジケータ:新しいパケットを送信するのか、あるいはパケットを再送信するのかをユーザ機器に知らせる。
− 冗長バージョンもしくはコンステレーションバージョンまたはその両方:それぞれ、使用するハイブリッドARQ冗長バージョン(レートマッチングに必要である)、および、使用する変調コンステレーションバージョン(変調に必要である)を、ユーザ機器に知らせる。
− ユーザ機器識別情報(ユーザ機器ID):データを送信するべきユーザ機器を知らせる。一般的な実施形態においては、この情報は、制御情報が別のユーザ機器に読まれることを防止する目的で、第1層/第2層制御シグナリングのCRCをマスクするために使用される。
【0046】
上述したさまざまな情報を送信する実際の方法には、いくつか異なるバリエーションが存在する。さらには、第1層/第2層制御情報は、さらなる情報を含んでいることもでき、あるいは、いくつかの情報を省くことができる。例えば以下のとおりである。
− 同期HARQプロトコルの場合、HARQプロセス番号が必要ないことがある。
− チェイス合成(Chase Combining)を使用する(冗長バージョンあるいはコンステレーションバージョンがつねに同じである)場合、または冗長バージョンあるいはコンステレーションバージョンのシーケンスが事前に定義されている場合には、冗長バージョンもしくはコンステレーションバージョンまたはその両方が必要ないことがある。
− 電力制御情報を制御シグナリングにさらに含めることができる。
− MIMOに関連する制御情報(例えばプリコーディング情報)を制御シグナリングにさらに含めることができる。
− 複数の符号語によるMIMO送信の場合には、複数の符号語のためのトランスポートフォーマットもしくはHARQ情報またはその両方を含めることができる。
【0047】
LTEにおいてPDCCH上でシグナリングされる上りリンクリソース割当て(PUSCH)では、第1層/第2層制御情報にHARQプロセス番号が含まれず、なぜなら、LTEの上りリンクには同期HARQプロトコルが採用されているためである。上りリンク送信に使用されるHARQプロセスは、タイミングによって認識される。さらには、冗長バージョン(RV)情報は、トランスポートフォーマット情報と一緒に符号化される、すなわち、RV情報はトランスポートフォーマット(TF)フィールドに埋め込まれることに留意されたい。TFフィールドまたはMCSフィールドのサイズは、例えば、32個のエントリに対応する5ビットである。TF/MCSテーブルの3個のエントリは、RV1、RV2、またはRV3を示すために予約されている。MCSテーブルの残りのエントリは、RV0を暗黙的に示すMCSレベル(TBS)をシグナリングするために使用される。PDCCHのCRCフィールドのサイズは16ビットである。
【0048】
LTEにおいてPDCCH上でシグナリングされる下りリンク組合せ(PDSCH)では、冗長バージョン(RV)は、2ビットのフィールドにおいて個別にシグナリングされる。さらに、変調次数情報が、トランスポートフォーマット情報と一緒に符号化される。上りリンクの場合と同様に、5ビットのMCSフィールドがPDCCH上でシグナリングされる。エントリのうち3個は、明示的な変調次数をシグナリングするために予約されており、トランスポートフォーマット(トランスポートブロック)情報は提供されない。残りの29個のエントリにおいては、変調次数およびトランスポートブロックサイズ情報がシグナリングされる。
【0049】
上りリンク電力制御
移動通信システムにおける上りリンク送信電力制御は、重要な目的を果たす。上りリンク送信電力制御は、要求されるQoS(サービス品質)が達成されるようにビットあたり十分な送信エネルギを確保する必要性と、システムの他のユーザとの干渉を最小にし、かつ移動端末のバッテリの寿命を最大にする必要性との間で、バランスをとる。この目的を達成する中で、電力制御(PC:Power Control)の役割は、要求されるSINR(信号対干渉雑音比)を提供すると同時に、隣接するセルに引き起こされる干渉を制御するうえで極めて重要となる。上りリンクにおける古典的な電力制御方式の発想では、すべてのユーザが同じSINRで受信する(完全な補償(full compensation)として知られている)。3GPPは、これに代えて、LTEにおいて部分電力制御(FPC:Fractional Power Control)の使用を採用した。この新しい機能では、経路損失の大きいユーザは、より低いSINR要件で動作し、したがって多くの場合、隣接セルに引き起こされる干渉が小さい。
【0050】
LTEにおいては、物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)、物理上りリンク制御チャネル(PUCCH)、およびサウンディング参照信号(SRS)に対しては、きめ細かい電力制御式が指定されている(非特許文献3の5.1節を参照)(http://www.3gpp.orgにおいて入手可能である)。これらの上りリンク信号のそれぞれの電力制御式は、同じ基本原理に従う。電力制御式は、2つの主項、すなわち基地局装置によってシグナリングされる静的パラメータまたは半静的パラメータから導かれる、開ループの基本動作点と、サブフレームごとに更新される動的オフセット(補正)と、の合計と考えることができる。
【0051】
リソースブロックあたりの送信電力のための開ループの基本動作点は、セル間干渉やセル負荷など複数の要因に依存する。開ループの基本動作点は、さらに2つの成分として、半静的な基本レベルP
0(これはさらにセル内のすべてのユーザ機器(UE)の共通電力レベル(測定単位:dBm)とユーザ機器に固有なオフセットとからなる)と、開ループの経路損失補償成分とに、分解することができる。リソースブロックあたりの電力の動的オフセットの部分は、さらに2つの成分として、変調・符号化方式(MCS)に依存する成分と、明示的な送信器電力制御(TPC:Transmitter Power Control)コマンドとに、分解することができる。
【0052】
MCSに依存する成分(LTE仕様ではΔ
TFと称し、TFはトランスポートフォーマットの略)は、リソースブロックあたりの送信電力を、送信される情報のデータレートに従って適合させることができる。
【0053】
動的オフセットのもう1つの成分は、ユーザ機器に固有なTPCコマンドである。このコマンドは、以下の2種類のモードで動作することができる。
− 累積的TPCコマンド(PUSCH、PUCCH、およびSRSに対して利用できる)
− 絶対的TPCコマンド(PUSCHのみに対して利用できる)
【0054】
PUSCHに対して、これら2つのモードの間の切替えは、ユーザ機器ごとにRRCシグナリングによって半静的に設定される(すなわち、モードを動的に変更することはできない)。累積的TPCコマンドの場合、各TPCコマンドは、前のレベルを基準としたときの電力ステップをシグナリングする。
【0055】
次の式(1)は、PUSCHのためのユーザ機器の送信電力(単位:dBm)を示している。
【数1】
この式の各項は以下のとおりである。
− P
MAXは、ユーザ機器が利用できる最大送信電力であり、ユーザ機器のクラスとネットワークによる設定とによって決まる。
− Mは、割り当てられている物理リソースブロック(PRB)の数である。
− PLは、ユーザ機器の経路損失であり、RSRP(基準信号受信電力:Reference Signal Received Power)の測定値と、シグナリングされたRS(基準シンボル:Reference Symbol)の基地局装置での送信電力とに基づいて、ユーザ機器側で導かれる。
− Δ
MCSは、基地局装置によって設定される、MCSに依存する電力オフセットである。
− P
0_PUSCHは、ユーザ機器に固有なパラメータ(一部がブロードキャストされ、一部がRRCを使用してシグナリングされる)である。
− αは、セルに固有なパラメータ(BCHでブロードキャストされる)である。
− Δ
iは、基地局装置からユーザ機器にシグナリングされる閉ループ電力制御コマンドである。
− 関数f()は、閉ループコマンドが累積的か絶対的かを示す。関数f()は、上位層を通じてユーザ機器にシグナリングされる。
【0056】
LTEのさらなる発展(LTE−A)
世界無線通信会議2007(WRC−07)において、IMT−Advancedの周波数スペクトルが決定された。IMT−Advancedのための全体的な周波数スペクトルは決定されたが、実際に利用可能な周波数帯域幅は、地域または国によって異なる。しかしながら、利用可能な周波数スペクトルのアウトラインの決定に続いて、3GPP(第3世代パートナーシッププロジェクト)において無線インタフェースの標準化が開始された。3GPP TSG RAN #39会合において、「Further Advancements for E−UTRA (LTE−Advanced)」に関する検討項目の記述が承認された。この検討項目は、E−UTRAを進化・発展させるうえで(例えば、IMT−Advancedの要求条件を満たすために)考慮すべき技術要素をカバーしている。現在、LTE−Advanced(略してLTE−A)のための2つの主要な技術要素が検討されており、以下ではこれらについて説明する。
【0057】
LTE−Aにおける、より広い帯域幅のサポート
より広い送信帯域幅(例えば、最大100MHz)およびスペクトルアグリゲーションをサポートする目的で、LTE−Aでは、キャリアアグリゲーション(2つ以上のコンポーネントキャリアがアグリゲートされる)が考慮されている。
【0058】
端末は、以下のように自身の能力に応じて1つまたは複数のコンポーネントキャリアを同時に受信または送信することができる。
− キャリアアグリゲーションのための受信能力もしくは送信能力またはその両方を備えたLTE−A端末は、複数のコンポーネントキャリアを同時に受信する、もしくは送信する、またはその両方を行うことができる。コンポーネントキャリアあたり1個のトランスポートブロック(空間多重化が行われないとき)および1つのHARQエンティティが存在する。
− LTEリリース8の端末は、コンポーネントキャリアの構造がリリース8の仕様に従う場合、1つのみのコンポーネントキャリア上で受信および送信を行うことができる。
【0059】
少なくとも、アグリゲートされるコンポーネントキャリアの数が上りリンクと下りリンクとで同じであるとき、すべてのコンポーネントキャリアを、LTEリリース8互換として構成することが可能である。ただし、LTE−Aのコンポーネントキャリアを非後方互換として構成することが除外されるものではない。
【0060】
現在、LTE−Aでは、連続するコンポーネントキャリアおよび不連続なコンポーネントキャリアの両方においてキャリアアグリゲーションがサポートされる。各コンポーネントキャリアは、LTEリリース8の計算方式(numerology)を使用して、周波数領域における最大110個のリソースブロック(RB)に制限される。同じ基地局装置から送信される異なる数のコンポーネントキャリアをアグリゲートするようにユーザ機器を設定することが可能である。なお、同じ基地局装置から送信されるコンポーネントキャリアは、必ずしも同じカバレッジを提供する必要はない。
【0061】
さらには、上りリンクと下りリンクとで帯域幅が異なるようにユーザ機器を設定することができる。
− 設定することのできる下りリンクコンポーネントキャリアの数は、ユーザ機器の下りリンクのアグリゲーション能力に依存する。
− 設定することのできる上りリンクコンポーネントキャリアの数は、ユーザ機器の上りリンクのアグリゲーション能力に依存する。
− 下りリンクコンポーネントキャリアよりも上りリンクコンポーネントキャリアが多くなるようにユーザ機器を設定することはできない。
− 一般的なTDD配備では、コンポーネントキャリアの数および各コンポーネントキャリアの帯域幅は、上りリンクと下りリンクとで同じである。
【0062】
連続的にアグリゲートされるコンポーネントキャリアの中心周波数の間隔は、300kHzの倍数である。これは、LTEリリース8の100kHzの周波数ラスターとの互換性を保つと同時に、15kHz間隔のサブキャリアの直交性を維持するためである。アグリゲーションのシナリオによっては、連続するコンポーネントキャリアの間に少数の使用されないサブキャリアを挿入することによって、n×300kHzの間隔あけを容易にすることができる。
【0063】
複数のキャリアをアグリゲートすることの影響は、MAC層に及ぶのみである。MAC層には、上りリンクおよび下りリンクにおいて、アグリゲートされるコンポーネントキャリアごとに1つのHARQエンティティが要求される。コンポーネントキャリアあたりのトランスポートブロックは最大1個である(上りリンクにおけるシングルユーザ−多入力多出力(SU−MIMO)を使用しない場合)。トランスポートブロックおよびそのHARQ再送信(発生時)は、同じコンポーネントキャリアにマッピングする必要がある。
図5および
図6は、それぞれ、下りリンクおよび上りリンクにおける、キャリアアグリゲーションが設定された第2層構造を示している。
【0064】
キャリアアグリゲーションが設定されているとき、ユーザ機器はネットワークとの1つのRRC接続のみを有する。RRC接続の確立/再確立時、1つのセルが、LTEリリース8と同様に、セキュリティ入力(1つのECGI、1つのPCI、および1つのARFCN)と、非アクセス階層(NAS)モビリティ情報(例:トラッキングエリア識別子(TAI))とを提供する。RRC接続の確立/再確立の後、そのセルに対応するコンポーネントキャリアは、下りリンクにおいては下りリンクプライマリコンポーネントキャリア(DL PCC)と称される。接続モードでは、ユーザ機器あたりつねに1つのDL PCCおよび1つのUL PCCが設定される。設定された一連のコンポーネントキャリアの中で、PCC以外のコンポーネントキャリアをセカンダリコンポーネントキャリア(SCC)と称される。
【0065】
DL PCCおよびUL PCCの特徴は以下のとおりである。
− UL PCCは、第1層(L1)上りリンク制御情報を送信するのに使用される。
− DL PCCを非アクティブ化することはできない。
− DL PCCにおいて無線リンク障害(RLF)が発生するとDL PCCの再確立がトリガーされるが、DL SCCに無線リンク障害が発生しても再確立はトリガーされない。
− DL PCCセルは、ハンドオーバーに伴って変更され得る。
− NAS情報はDL PCCセルから取得される。
【0066】
コンポーネントキャリアの再設定、追加、および削除は、RRCシグナリングによって行うことができる。LTE内ハンドオーバー時、RRCによって、ターゲットセルで使用するためのコンポーネントキャリアを追加、削除、または再設定することもできる。新しいコンポーネントキャリアを追加するときには、コンポーネントキャリアでの送信/受信に必要であるコンポーネントキャリアのシステム情報を送るための専用RRCシグナリングが使用される(LTEリリース8におけるハンドオーバー時と同様)。
【0067】
キャリアアグリゲーションが設定されているとき、同時に複数のコンポーネントキャリアについてユーザ機器をスケジューリングすることができるが、一度に行うことのできるランダムアクセス手順は最大で1つである。クロスキャリアスケジューリング(cross-carrier scheduling)では、コンポーネントキャリアのPDCCHによって別のコンポーネントキャリアのリソースをスケジューリングすることができる。この目的のため、専用制御情報フォーマットのそれぞれにコンポーネントキャリア識別フィールド(「CIF」と称する)が導入されている。クロスキャリアスケジューリングが行われていないときには、上りリンクのコンポーネントキャリアと下りリンクのコンポーネントキャリアとをリンクすることによって、グラントが適用される上りリンクコンポーネントキャリアを識別することができる。上りリンクコンポーネントキャリアへの下りリンクコンポーネントキャリアのリンクは、1対1である必要はない。言い換えれば、同じ上りリンクコンポーネントキャリアに複数の下りリンクコンポーネントキャリアをリンクすることができる。一方で、1つの下りリンクコンポーネントキャリアは、1つの上りリンクコンポーネントキャリアのみにリンクすることができる。
【0068】
コンポーネントキャリアの(非)アクティブ化とDRX動作
キャリアアグリゲーションにおいては、ユーザ機器に1つのみのコンポーネントキャリアが設定されている場合、LTEリリース8のDRX動作が適用される。それ以外の場合には、設定されてアクティブになっているすべてのコンポーネントキャリアに同じDRX動作が適用される(すなわち、PDCCHの監視のアクティブ時間が同じである)。アクティブ時間中には、どのコンポーネントキャリアも、設定されてアクティブになっている任意の別のコンポーネントキャリアのPDSCHをスケジューリングすることができる。
【0069】
キャリアアグリゲーションが設定されているときにユーザ機器のバッテリ消費量が大幅に増大しないように、下りリンクSCCに対するコンポーネントキャリアアクティブ化/非アクティブ化メカニズムが導入されている。下りリンクSCCがアクティブでないときには、ユーザ機器は対応するPDCCHまたはPDSCHを受信する必要はなく、CQI測定を行う必要もない。逆に、下りリンクSCCがアクティブであるときには、ユーザ機器はPDSCHおよびPDCCH(存在時)を受信する必要があり、CQI測定を実行できるものとみなされる。しかしながら、上りリンクにおいては、ユーザ機器は、設定されている任意の上りリンクコンポーネントキャリアのPUSCHで送信できることがつねに要求される(対応するPDCCHでスケジューリングされるとき)。すなわち、上りリンクコンポーネントキャリアの明示的なアクティブ化は行われない。
【0070】
SCCのアクティブ化/非アクティブ化メカニズムのその他の詳細は以下のとおりである。
− DL SCCの明示的なアクティブ化は、MACシグナリングによって行われる。
− DL SCCの明示的な非アクティブ化は、MACシグナリングによって行われる。
− DL SCCの暗黙的な非アクティブ化も可能である。
− DL SCCは、個々にアクティブ化/非アクティブ化することができ、1つのアクティブ化/非アクティブ化コマンドが、設定されているDL SCCのサブセットをアクティブ化/非アクティブ化することもできる。
− 設定されているコンポーネントキャリアのセットに追加されるSCCは、最初は「非アクティブ化」されている。
【0071】
タイミングアドバンス
すでに上述したように、3GPP LTEの上りリンク送信方式としては、上りリンクで送信する複数の異なるユーザ機器の間で時間および周波数における直交多元接続が達成されるように、シングルキャリア周波数分割多元接続(SC−FDMA)が選択されている。
【0072】
上りリンクの直交性は、セル内の複数の異なるユーザ機器からの送信が基地局装置の受信器において時間的に整列する(time-aligned)ようにすることで、維持される。これによって、連続するサブフレームにおいて送信するように割り当てられているユーザ機器の間と、隣接するサブキャリア上で送信するユーザ機器の間と、の両方について、セル内干渉の発生が回避される。上りリンク送信の時間的整列(time alignment)は、
図7に例示的に示したように、ユーザ機器の送信器において、下りリンクの受信タイミングを基準とするタイミングアドバンスを適用することによって達成される。タイミングアドバンスの主たる役割は、ユーザ機器ごとに異なる伝搬遅延を打ち消すことである。
【0073】
初期タイミングアドバンスの手順
ユーザ機器が、基地局装置から受信される下りリンク送信に同期しているとき、初期タイミングアドバンス(initial timing advance)は、以下に説明するランダムアクセス手順によって設定される。ユーザ機器はランダムアクセスプリアンブルを送信し、基地局装置は、このプリアンブルに基づいて上りリンクのタイミングを推定することができる。基地局装置は、ランダムアクセス応答(RAR)メッセージの中に含まれる11ビットの初期タイミングアドバンスコマンドによって応答する。これにより基地局装置は、0から最大0.67msの範囲内で0.52μsの粒度でタイミングアドバンスを設定することができる。
【0074】
3GPP LTE(リリース8/9)における上りリンクのタイミングの制御およびタイミングアドバンスに関するさらなる情報は、非特許文献4の20.2章に記載されており、この文書は参照によって本文書に組み込まれている。
【0075】
タイミングアドバンスの更新
各ユーザ機器においてタイミングアドバンスが最初に設定された後は、基地局装置における上りリンク信号の到着時刻の変化を打ち消すため、タイミングアドバンスがときどき更新される。基地局装置は、タイミングアドバンス更新コマンドを導くとき、そのために有用な何らかの上りリンク信号を測定することができる。基地局装置における上りリンクタイミングの測定の詳細については規定されておらず、基地局装置の実装に委ねられている。
【0076】
タイミングアドバンス更新コマンドは、基地局装置のMAC(メディアアクセス制御)層で生成されてMAC制御要素としてユーザ機器に送信される。このMAC制御要素は、物理下りリンク共有チャネル(PDSCH)上にデータと一緒に多重化することができる。更新コマンドの粒度は、ランダムアクセスチャネル(RACH)プリアンブルに対する応答の中の初期タイミングアドバンスコマンドと同様に、0.52μsである。更新コマンドのレンジは±16μsであり、拡張されたサイクリックプレフィックスの長さに等しい間隔で上りリンクタイミングを変化させることができる。更新コマンドは、一般には約2秒毎より高い頻度で送られることはない。実際に、たとえ500km/hで移動しているユーザ機器でも、ラウンドトリップ経路長の変化は278m/s以下であり、対応するラウンドトリップタイムの変化は0.93μs/sであるため、早い更新は必要ない。
【0077】
基地局装置は、ユーザ機器が自身の送信バッファにデータが到着したときに迅速に送信する能力が維持される範囲内で、セル内の全ユーザ機器に定期的な更新コマンドを送る。したがって、基地局装置は、各ユーザ機器のタイマーを設定し、ユーザ機器は、タイミングアドバンス更新を受信するたびにこのタイマーをリスタートさせる。タイマーが切れるまでに、ユーザ機器が新しいタイミングアドバンス更新を受信しなかった場合、ユーザ機器の上りリンク同期が失われたものと考えなければならない(非特許文献2も参照)(http://www.3gpp.org/において入手可能であり、参照によって本明細書に組み込まれている)。
【0078】
このような場合、別のユーザ機器からの上りリンク送信との干渉が発生する危険性を回避する目的で、そのユーザ機器は、いかなる種類の上りリンク送信も新たに行うことが許可されず、上りリンクのタイミングを回復するため初期タイミングアライメント(整列)手順を再び行う必要がある。
【0079】
ランダムアクセス手順
LTEにおいて移動端末の上りリンク送信は、上りリンク送信が時間同期している場合にのみスケジューリングすることができる。したがって、ランダムアクセス(RACH)手順は、同期していない移動端末(UE)が上りリンク無線アクセスの直交送信を使用するための重要な役割を果たす。
【0080】
LTEにおけるランダムアクセスは、本質的には、上りリンクの同期をまだ獲得していないユーザ機器、または上りリンクの同期を失ったユーザ機器において上りリンクの時間同期を達成するために使用される。ユーザ機器が上りリンクの同期を達成すると、基地局装置はユーザ機器のための上りリンク送信リソースをスケジューリングすることができる。したがって、ランダムアクセスに関連するシナリオは以下のとおりである。
− RRC_CONNECTED状態にあるが上りリンク同期していないユーザ機器が、上りリンクの新しいデータまたは制御情報を送信しようとする場合
− RRC_CONNECTED状態にあるが上りリンク同期していないユーザ機器が、下りリンクデータを受信する必要があり、したがって対応するHARQフィードバック(すなわちACK/NACK)を上りリンクで送信することが要求される場合。このシナリオは、下りリンクデータ到着とも称される。
− RRC_CONNECTED状態にあるユーザ機器が、現在のサービングセルから新しいターゲットセルにハンドオーバーする場合。ターゲットセルにおいて上りリンク同期を達成する目的で、ランダムアクセス手順が実行される。
− RRC_IDLE状態からRRC_CONNECTED状態に移行する場合(例えば最初にアクセスするとき、またはトラッキングエリア更新時)
− 無線リンク障害から回復する(すなわちRRC接続を再確立する)。
【0081】
さらにもう1つのケースとして、ユーザ機器が、たとえ時間同期していてもランダムアクセス手順を実行することがある。このシナリオにおいては、ユーザ機器は、スケジューリング要求を送るための別の上りリンクリソースが割り当てられていない(すなわち専用スケジューリング要求(D−SR)チャネルが設定されていない)場合に、スケジューリング要求(すなわち上りリンクバッファ状態報告)を自身の基地局装置に送る目的で、ランダムアクセス手順を使用する。
【0082】
LTEでは、2種類のランダムアクセス手順が用意されており、コンテンションベース(すなわち本質的に衝突の危険が存在する)、またはコンテンションフリー(非競合ベース)のいずれかでアクセスすることができる。なお、コンテンションベースのランダムアクセスは、上に挙げた6つのシナリオすべてにおいて適用できるのに対して、非コンテンションベースのランダムアクセス手順は、下りリンクデータ到着とハンドオーバーのシナリオにおいてのみ適用できることに留意されたい。
【0083】
以下では、コンテンションベースのランダムアクセス手順について、
図8を参照しながらさらに詳しく説明する。ランダムアクセス手順の詳細な説明は、非特許文献2にも記載されている。
【0084】
図8は、LTEのコンテンションベースのRACH手順を示している。この手順は、4つの「ステップ」からなる。最初に、ユーザ機器が、ランダムアクセスプリアンブルを物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)で基地局装置に送信する(801)。プリアンブルは、コンテンションベースのアクセス用に基地局装置によって予約されている利用可能なランダムアクセスプリアンブルのセットから、ユーザ機器が選択する。LTEにおいては、コンテンションフリーのランダムアクセスおよびコンテンションベースのランダムアクセスに使用でき、セルあたり64個のプリアンブルが存在する。コンテンションベースのプリアンブルのセットは、さらに2つのグループに分けることができる。したがって、プリアンブルを選択することで、最初のスケジューリング制御式送信(非特許文献2においてはメッセージ3(msg3)と称される)(ステップ803を参照)を送信するための必要な送信リソース量に関する情報を示す1ビット分の情報を伝えることができる。セル内でブロードキャストされるシステム情報には、2つのサブグループのそれぞれに属するシグネチャ(プリアンブル)の情報と、各サブグループの意味が含まれる。ユーザ機器は、メッセージ3を送信するのに必要な送信リソースのサイズに対応するサブグループから1つのプリアンブルをランダムに選択する。
【0085】
基地局装置は、RACHプリアンブルを検出した後、プリアンブルが検出された時間−周波数スロットを識別する(ランダムアクセス)RA−RNTIを使用してPDCCH上でアドレッシングされたランダムアクセス応答(RAR)メッセージを、PDSCH(物理下りリンク共有チャネル)で送る(802)。複数のユーザ機器が同じPRACHリソースで同じRACHプリアンブルを送信した場合(衝突とも称する)、これらのユーザ機器は同じランダムアクセス応答を受信する。
【0086】
ランダムアクセス応答(RAR)メッセージは、検出されたRACHプリアンブルと、以降の上りリンク送信を同期させるためのタイミングアライメント(整列)コマンド(TAコマンド)と、最初のスケジューリング制御式送信(ステップ803を参照)を送信するための最初の上りリンクリソース割当て(グラント)と、T−CRNTI(一時的なセル無線ネットワーク一時識別子)の割当てとを伝える。このT−CRNTIは、RACH手順が終了するまで、RACHプリアンブルが検出された(1つまたは複数の)移動端末をアドレッシングする目的で基地局によって使用される。なぜなら、基地局装置はこの時点では移動端末の「真の」識別情報をまだ認識していないためである。
【0087】
さらに、ランダムアクセス応答(RAR)メッセージは、いわゆるバックオフインジケータを含んでいることもできる。バックオフインジケータは、ランダムアクセスを再試行する前に一時的にバックオフ(待機)するようにユーザ機器に命令する目的で、基地局装置が設定することができる。ユーザ機器は、与えられた時間窓(基地局装置によって設定される)の中で、ランダムアクセス応答が受信されないかPDCCHを監視する。ユーザ機器は、設定された時間窓の中でランダムアクセス応答が受信されない場合、バックオフ期間が指定されていればそれを考慮して、次のPRACH機会(PRACH opportunity)においてプリアンブルを再送信する。
【0088】
ユーザ機器は、基地局装置から受信されたランダムアクセス応答(RAR)メッセージに応えて、スケジューリング制御下の最初の上りリンク送信を、ランダムアクセス応答の中のグラントによって割り当てられたリソースで送信する(803)。このスケジューリング制御式上りリンク送信は、実際のランダムアクセス手順メッセージ(例えば、RRC接続要求、トラッキングエリア更新、またはバッファ状態報告)を伝える。さらに、この上りリンク送信は、RRC_CONNECTEDモードにあるユーザ機器のC−RNTI、または48ビットの一意のユーザ機器識別情報(ユーザ機器がRRC_IDLEモードにある場合)のいずれかを含んでいる。プリアンブルの衝突が起きた場合、すなわち、複数のユーザ機器が同じPRACHリソースで同じプリアンブルを送った場合、衝突しているユーザ機器は、ランダムアクセス応答の中で同じT−CRNTIを受信し、それぞれのスケジューリング制御式送信を送信するとき(803)、やはり同じ上りリンクリソースで衝突する。この結果として干渉が生じ、衝突しているユーザ機器からの送信を基地局装置において復号化できないことがあり、ユーザ機器は、スケジューリング制御式送信の最大再送回数に達した後、ランダムアクセス手順を再び開始する。1基のユーザ機器からのスケジューリング制御式送信が基地局装置によって正常に復号化された場合も、他のユーザ機器のコンテションは解決されないままである。
【0089】
このタイプのコンテンションを解決するため、基地局装置は、C−RNTIまたは一時的C−RNTIにアドレッシングされたコンテンション解決メッセージを送る(804)。そして、スケジューリング制御下の送信に含まれていた48ビットのユーザ機器識別情報をそのまま送り返す。この場合、HARQがサポートされる。衝突が起きている場合、ステップ804で送られたメッセージが正常に復号化されたならば、自身の識別情報(C−RNTIまたは一意のユーザ機器ID)を検出したユーザ機器のみがHARQフィードバック(ARQ)を送信する。それ以外のユーザ機器は、ステップ1において衝突が発生したことを認識し、現在のRACH手順をただちに終了して新たなRACH手順を開始することができる。
【0090】
図9は、3GPP LTEリリース8/9のコンテンションフリーのランダムアクセス手順を示している。コンテンションベースのランダムアクセス手順と比較すると、コンテンションフリーのランダムアクセス手順は簡略化されている。基地局装置は、衝突する(すなわち複数のユーザ機器が同じプリアンブルを送信する)危険がないように、ランダムアクセスに使用するためのプリアンブルをユーザ機器に提供する(901)。したがって、ユーザ機器は、基地局装置によってシグナリングされたプリアンブルを、上りリンクにおいてPRACHリソースで送る(902)。コンテンションフリーのランダムアクセスでは、複数のユーザ機器が同じプリアンブルを送るケースが回避されるため、コンテンションの解決が不要であり、結果として、
図8に示したコンテンションベース手順のステップ804を省くことができる。コンテンションフリーのランダムアクセス手順は、本質的には、ランダムアクセス応答が正常に受信された時点で終了する。
【0091】
タイミングアドバンスと上りリンクのコンポーネントキャリアアグリゲーション
3GPP規格の現在の仕様においては、ユーザ機器は、1つのタイミングアドバンス値を維持し、アグリゲートされているすべてのコンポーネントキャリアでの上りリンク送信に、この値を適用する。しかし、異なる帯域のコンポーネントキャリアがアグリゲートされているとき、コンポーネントキャリアごとに干渉特性およびカバレッジ特性が異なることがある。
【0092】
さらには、例えば
図11に示した周波数選択性中継器(FSR:Frequency Selective Repeater)や、例えば
図12に示したリモートラジオヘッド(RRH:Remote Radio Head)などの技術が配備されている場合、アグリゲートされているコンポーネントキャリアごとに干渉および伝搬の状況が異なる。これにより、1つのユーザ機器の中に複数のタイミングアドバンスを導入する必要が生じる。
【0093】
このように、単一のユーザ機器において2つ以上のタイミングアドバンスを導入する必要が生じる。1つのオプションとして、アグリゲートされているコンポーネントキャリアごとに個別のタイミングアドバンスを維持することができる。別のオプションとして、同じ場所に属し、したがっていずれも類似する伝搬遅延を受けるコンポーネントキャリアを、タイミングアドバンスグループ(TAグループ)にグループ化する。グループごとに個別のタイミングアドバンスを維持する。
【0094】
この問題に関しては、すでに3GPP内で検討されたが、アグリゲートされている上りリンクコンポーネントキャリアすべてに対して1つのタイミングアドバンスで十分であるものと考えられている。なぜなら、3GPP LTE−Aリリース10までの現在の仕様では、同じ周波数帯域のキャリアのアグリゲーションのみがサポートされているためである。
【0095】
したがって、同じ送信時間間隔(TTI)の中で複数の異なるタイプの上りリンク送信を複数のコンポーネントキャリア上で行うときの優先順位付けを考慮する必要がある。例えば、ユーザ機器(UE)が電力制限状態にあるとき、利用可能な電力をどの上りリンク送信に使用するべきかを決定するための規則が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0097】
本発明の1つの目的は、移動端末の電力が制限されているとき、すなわち、上りリンクリソース割当てに従って送信時間間隔の中で複数のトランスポートブロックを送信するために要求される送信電力が、送信時間間隔の中での上りリンク送信用に利用可能な送信電力を超える場合に、送信時間間隔の中で複数のトランスポートブロックを上りリンク送信するために利用可能な送信電力を、移動端末がどのように分配するかの基本方針を提案することである。
【0098】
本発明の別の目的は、電力が制限されている状況において、すなわち、物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)および物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)/物理上りリンク制御チャネル(PUCCH)を介して送信するのに要求される送信電力が、与えられた送信時間間隔の中での上りリンク送信用に利用可能な送信電力を超える状況において、送信時間間隔の中で上りリンク送信するために利用可能な送信電力を、移動端末がどのように分配するかの基本方針および分配方法を提案することである。
【0099】
本発明のさらなる目的は、上りリンクのキャリアアグリゲーションを使用するシステムにおいて、時間的に整列させる上りリンクコンポーネントキャリアに対するRACH手順によって発生する遅延を減少させる基本方針および方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0100】
上記の目的の少なくとも1つは、独立請求項の主題によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0101】
本発明の主たる一態様は、第1のタイミングアドバンスグループに属する第1のコンポーネントキャリアにおける上り共有チャネル(PUSCH)送信のための電力をサブフレーム毎に決定し、第2のタイミングアドバンスグループに属する第2のコンポーネントキャリアにおけるランダムアクセスチャネル(PRACH)送信のための電力を決定し、前記第1のタイミングアドバンスグループと前記第2のタイミングアドバンスグループは異なる、決定部と、総送信電力が端末装置に設定された最大送信電力値P
MAXを超える場合は、前記第1のコンポーネントキャリア上の第1のサブフレームにおける前記PUSCH送信と、前記第2のコンポーネントキャリア上の第2のサブフレームにおける前記PRACH送信とが重なる部分において調整後の総送信電力がP
MAXを超えないように、前記PUSCH送信のための電力を調整し、前記第1のコンポーネントキャリア上の前記第1のサブフレームと前記第2のコンポーネントキャリア上の前記第2のサブフレームとは、時間軸において前記重なる部分だけ重なっている、調整部と、前記第1のコンポーネントキャリアのPUSCH上で、前記調整後のPUSCH送信のための電力でトランスポートブロックを送信し、前記第2のコンポーネントキャリアのPRACH上で、前記決定されたPRACH送信のための電力でランダムアクセスプリアンブルを送信する送信部と、を具備する通信装置である。
【0102】
本発明の第1の態様は、電力制御において、複数の上りリンクリソース割当てに対応する個々のトランスポートブロックに電力を割り当てるときの優先順位付けである。この態様は、特に、移動端末の電力が制限されている状況に適用することができる。本発明のこの態様によると、上りリンクにおいてそれぞれのコンポーネントキャリア上で送信される個々のトランスポートブロックに電力を割り当てるときの電力スケーリングを、上りリンクコンポーネントキャリアの上りリンクリソース割当てを処理する順序(優先順位の順序)を使用して決定する。電力が制限された状況においては、移動端末は、トランスポートブロックの送信に消費される合計送信電力が、トランスポートブロックの送信用に移動端末が利用可能な最大送信電力より小さいかまたは等しくなるように、トランスポートブロックのそれぞれを送信するための送信電力を、優先順位の順序によって与えられる、それぞれのトランスポートブロックの優先順位に従って減らす。
【0103】
例示的な一実施例によると、送信電力スケーリングにおいて、それぞれのトランスポートブロック(またはトランスポートブロックが送信されるそれぞれのコンポーネントキャリア)のリソース割当ての優先順位(優先順位の順序/処理の順序によって与えられる)を考慮して、送信電力を低減し、このとき、優先順位の高いトランスポートブロックの送信は、送信電力の低減による影響が最小であるようにする。優先順位の順序による、リソース割当て/コンポーネントキャリアの優先順位が低い(高い)ほど、対応する上りリンクリソース割当てによって要求されるトランスポートブロックの送信電力に対して、大きい(小さい)電力低減が適用されることが有利である。理想的には、可能な場合、優先順位の高いトランスポートブロックの送信電力を低減せず、最初に、優先順位の低いトランスポートブロックを送信するための送信電力を制限することによって、トランスポートブロック送信用に移動端末が利用可能な最大送信電力を超えない範囲まで送信電力が低減されるように試みるべきである。
【0104】
本発明の第2の態様は、複数の異なる物理チャネルを介して同時に上りリンク送信する(すなわち同じ送信時間間隔の中に複数の上りリンク送信が存在する)場合に電力を割り当てるときの優先順位付けである。上りリンク送信を行うことのできる物理チャネルの例は、物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)、物理上りリンク制御チャネル(PUCCH)、および物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)である。複数の異なる物理チャネルを介して上りリンク送信するときの電力割当てを優先順位付けすることによって、個々の送信電力を割り当てることができる。この電力割当ては、それぞれの上りリンク送信が送られるコンポーネントキャリアとは無関係に行うことができる。
【0105】
この第2の態様によると、物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)と物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)とを介して同時に上りリンク送信する場合に、異なる送信電力レベルを使用することができる。あるいは、本発明のこの第2の態様を使用することで、物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)と物理上りリンク制御チャネル(PUCCH)とを介して同時に上りリンク送信する場合に、送信電力を個々にスケーリングすることができる。物理チャネルの優先順位付けに基づいて、上りリンク送信の送信電力をスケーリングすることで、例えば、優先順位付けされた物理チャネルを介してのそれぞれの上りリンク送信のSINRを改善することができる。例えば、移動端末の電力が制限された状況にある場合、上りリンク送信用の送信電力を、物理チャネルの優先順位付けに基づいて低減することによって、移動端末は与えられた電力制約を満たすことができる。
【0106】
本発明の第2の態様に基づく本発明の例示的な実施形態においては、物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)送信もしくは物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)送信またはその両方のための送信電力を、対応するチャネルの優先順位付けに従って低減する。この場合、物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)送信用の送信電力を、物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)送信用の送信電力よりも優先させる、またはこの逆とする。物理チャネル送信の優先順位が低い(高い)ほど、その物理チャネルを介して送信するための送信電力に対して、大きい(小さい)電力低減が適用されることが有利である。理想的には、電力制限状況において送信電力の制約を満たす目的で、最初に、低い優先順位の物理チャネル送信のための送信電力を制限することを試み、それでも送信電力の制約が満たされない場合、より高い優先順位の物理チャネル送信のための送信電力を制限することができる。
【0107】
本発明の第3の態様は、ランダムアクセス(RACH)手順を実行するために使用される送信電力を、複数の上りリンクコンポーネントキャリアを時間的に整列させるために要求されるRACH手順の回数に基づいて調整することである。移動端末は、時間的に整列させる上りリンクコンポーネントキャリアの数に応じて、1回または複数回のRACH手順を実行して上りリンクコンポーネントキャリアを時間的に整列させる。RACH手順には処理リソースが必要であり、これにより、移動端末が並列に実行できる上りリンク送信が制約される。したがって、できる限り少ないRACH手順を実行することが望ましい。要求されるRACH手順の回数に基づいて送信電力を調整することによって、要求されるRACH手順のそれぞれの成功確率を高めることができる。RACH手順の成功確率が高いことにより、上りリンクコンポーネントキャリアを時間的に整列させるためのRACH手順によって発生する遅延が減少する。
【0108】
例示的な一実施形態によると、ユーザ機器は、要求されない(すなわち余剰の、または実行されない)1回または複数回のRACH手順の送信電力を利用することで送信電力を調整し、複数の上りリンクコンポーネントキャリアを時間的に整列させるために要求されるRACH手順のみを実行することができ、これによって、要求されるRACH手順のそれぞれの成功確率が高まる。
【0109】
本発明の第1の態様、第2の態様、および第3の態様は、互いに容易に組み合わせることができ、トランスポートブロックの生成においてリソースを割り当てるとき(論理チャネルの優先順位付け)と、物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)上で上りリンク送信をするときとで、同じ優先順位(処理)の順序を使用してもよい。また、生成されたトランスポートブロックを送信するときと、物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)上で上りリンク送信をするときとで、同じ電力スケーリングを使用してもよい。
【0110】
本発明の第1の態様および第2の態様に基づく本発明の例示的な一実施例によると、上りリンク送信用に移動端末によって利用される送信電力を調整する方法であって、移動端末に、少なくとも第1の上りリンクコンポーネントキャリアおよび第2の上りリンクコンポーネントキャリアが設定されている、方法、が提供される。移動端末は、第1の上りリンクコンポーネントキャリア上で物理上りリンク共有チャネルを介してトランスポートブロックを送信するために要求される送信電力P
PUSCH(i)を求める。さらに、移動端末は、第2の上りリンクコンポーネントキャリア上で物理ランダムアクセスチャネルを介してランダムアクセスプリアンブルを送信するために要求される送信電力P
PRACH(i)を求める。さらに、移動端末は、物理上りリンク共有チャネル送信用に求めた送信電力、もしくは、物理ランダムアクセスチャネル送信用に求めた送信電力、またはその両方を、物理上りリンク共有チャネル送信用の送信電力と、物理ランダムアクセスチャネル送信用の送信電力との間の優先順位付けに従って低減する。また移動端末は、第1の上りリンクコンポーネントキャリア上でトランスポートブロックを、第2の上りリンクコンポーネントキャリア上でランダムアクセスプリアンブルを、それぞれの送信電力を使用して送信時間間隔iの中で送信する。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
本発明の別の例示的な実施形態においては、移動端末は、求めた送信電力の合計が、送信時間間隔iの中での上りリンクコンポーネントキャリア上での送信用に移動端末が利用可能な最大送信電力P
MAXより小さいかまたは等しいように、求めた送信電力を低減する。
【0115】
【0116】
さらに詳細な別の実施例においては、各上りリンクコンポーネントキャリアにセルインデックスが割り当てられており、移動端末は、各ランダムアクセスプリアンブルを送信するために求めた送信電力w
c・P
PRACHc(i)を、上りリンクコンポーネントキャリアのセルインデックスによって与えられる優先順位の順序に基づいて低減する。
【0117】
さらには、本発明の別の例示的な実施例においては、移動端末には、プライマリコンポーネントキャリアとしての1つの上りリンクコンポーネントキャリアと、セカンダリコンポーネントキャリアとしてのそれ以外の上りリンクコンポーネントキャリアとが設定されている。この場合、移動端末は、プライマリコンポーネントキャリアがそれ以外のセカンダリコンポーネントキャリアよりも優先されるように、各ランダムアクセスプリアンブルを送信するために求めた送信電力w
c・P
PRACHc(i)を低減する。
【0118】
本発明の別の実施例によると、移動端末は、各ランダムアクセスプリアンブルを送信するための送信電力w
c・P
PRACHc(i)を、各ランダムアクセスプリアンブルのフラグに基づいて低減する。このフラグは、送信される各ランダムアクセスプリアンブルについて、対応する上りリンクコンポーネントキャリアのそれぞれのランダムアクセスプリアンブルの送信要求が以前に端末によって受信されたか否かを示す。
【0119】
本発明の別の実施形態においては、移動端末は、第2のコンポーネントキャリアおよび第4のコンポーネントキャリアのそれぞれにおいてランダムアクセスチャネルを介してランダムアクセスプリアンブルを送信するための送信電力を、時間的に整列させる上りリンクコンポーネントキャリアと、すでに時間的に整列している上りリンクコンポーネントキャリアとが、同じタイミングアドバンスグループに属している場合、第1のオフセットP
0_PRACHを利用することによって求め、時間的に整列させる上りリンクコンポーネントキャリアと、すでに時間的に整列している上りリンクコンポーネントキャリアとが、2つ以上のタイミングアドバンスグループに属している場合、第2の異なるオフセットP
0_PRACHmultipleを利用することによって求める。
【0120】
本発明のさらに詳細な実施例においては、第1のオフセットP
0_PRACHおよび第2のオフセットP
0_PRACHmultipleは、基地局によって移動端末にシグナリングされる。
【0121】
さらなる例示的な実施形態においては、移動端末は、時間的に整列させる上りリンクコンポーネントキャリア上で物理ランダムアクセスチャネルを介してランダムアクセスプリアンブルを送信するための送信電力を、対応する上りリンクコンポーネントキャリアについて以前に求めた電力ランピングステップ(power ramping step)N
cを再利用することによって、または異なる上りリンクコンポーネントキャリアについて以前に求めた異なる電力ランピングステップN
−cを再利用することによって、求める。移動端末は、電力ランピングステップN
cもしくはN
−cまたはその両方を使用して、ランダムアクセスプリアンブルの連続的な送信の送信電力を高める。
【0122】
【0123】
本発明の別の実施形態においては、移動端末は、移動端末によって基地局から受信された、基地局に依存する、上りリンクコンポーネントキャリアcのプリスケーリングオフセット(pre-scaling offset)Δoffset
c、を追加して、それぞれの上りリンクコンポーネントキャリア上でランダムアクセスプリアンブルを送信するための送信電力を調整する。
【0124】
【0125】
本発明の第2の態様および第3の態様に基づく本発明の別の例示的な実施例によると、1回または複数回のRACH手順において移動端末によって使用される送信電力を調整する方法であって、移動端末に複数の上りリンクコンポーネントキャリア上でのRACHアクセスが許可されている、方法、が提供される。移動端末は、時間的に整列させる上りリンクコンポーネントキャリアについて、それら上りリンクコンポーネントキャリアを時間的に整列させるために要求されるRACH手順の回数を求める。さらに、移動端末は、上りリンクコンポーネントキャリアを時間的に整列させるために要求される求めた回数のRACH手順を実行し、この場合、1回または複数回のRACH手順すべてのための送信電力は、要求されるRACH手順の求めた回数に従って求められる。
【0126】
さらに高度な実施例においては、移動端末は、1回または複数回のRACH手順すべてのための送信電力を、要求される1回のRACH手順を求める場合には、第1のオフセットP
0_PRACHを利用して求め、要求される2回以上のRACH手順を求める場合には、第2の異なるオフセットP
0_PRACHmultipleを利用して求め、第2のオフセットP
0_PRACHmultipleは第1のオフセットP
0_PRACHよりも大きい値を有する。
【0127】
別の代替実施形態によると、移動端末には、プライマリコンポーネントキャリアとしての1つの上りリンクコンポーネントキャリアと、セカンダリコンポーネントキャリアとしてのそれ以外の上りリンクコンポーネントキャリアとが設定されている。移動端末は、RACH手順のための送信電力を、RACH手順がプライマリコンポーネントキャリア上で実行される場合、第1のオフセットP
0_PRACHを利用して求め、1回または複数回のRACH手順がセカンダリコンポーネントキャリア上で実行される場合、第2の異なるオフセットP
0_PRACHmultipleを利用して求め、第2のオフセットP
0_PRACHmultipleは第1のオフセットP
0_PRACHよりも大きい値を有する。
【0128】
さらなる実施例においては、移動端末は、要求されるRACH手順の回数を、時間的に整列させる上りリンクコンポーネントキャリアが属している異なるタイミングアドバンスグループの数、に基づいて求める。
【0129】
本発明の別の実施例によると、要求される1回または複数回のRACH手順のそれぞれが、時間的に整列させる上りリンクコンポーネントキャリアのうち異なるタイミングアドバンスグループに属している上りリンクコンポーネントキャリア上で実行される。
【0130】
さらなる実施形態においては、要求されるRACH手順の識別された回数は、時間的に整列させる複数の上りリンクコンポーネントキャリアの異なるタイミングアドバンスグループの数に等しい。
【0131】
さらには、別の実施例においては、時間的に整列させる上りリンクコンポーネントキャリアは、移動端末においてアクティブにされている上りリンクコンポーネントキャリアである。
【0132】
さらに詳細な実施例においては、上りリンクコンポーネントキャリアを時間的に整列させるとき、タイミングアドバンスグループごとにタイミングアドバンス値を設定する。
【0133】
本発明の別の例示的な実施形態によると、要求されるRACH手順の回数は、時間的に整列させる上りリンクコンポーネントキャリアが属しているタイミングアドバンスグループの数から、移動端末がすでに時間的に整列させたタイミングアドバンスグループを除外した数、に一致する。
【0134】
さらには、当然ながら、上述した複数の異なる基準および規則は、互いに任意に組み合わせて、上りリンク送信用に移動端末によって使用される送信電力を調整することができることに留意されたい。
【0135】
本発明の第1の態様および第2の態様に基づく本発明の別の例示的な実施例によると、上りリンク送信のための送信電力を制御する移動端末であって、少なくとも第1の上りリンクコンポーネントキャリアおよび第2の上りリンクコンポーネントキャリアが設定されている、移動端末、が提供される。
【0136】
移動端末は、第1の上りリンクコンポーネントキャリア上で物理上りリンク共有チャネルを介してトランスポートブロックを送信するために要求される送信電力P
PUSCH(i)、を求め、第2の上りリンクコンポーネントキャリア上で物理ランダムアクセスチャネルを介してランダムアクセスプリアンブルを送信するために要求される送信電力P
PRACH(i)、を求める処理ユニット、を備えている。さらに、移動端末は、物理上りリンク共有チャネル送信用に求めた送信電力、もしくは、物理ランダムアクセスチャネル送信用に求めた送信電力、またはその両方を、物理上りリンク共有チャネル送信用の送信電力と、物理ランダムアクセスチャネル送信用の送信電力との間の優先順位付けに従って低減する電力制御ユニット、を含んでいる。さらに、移動端末は、第1の上りリンクコンポーネントキャリア上でトランスポートブロックを、第2の上りリンクコンポーネントキャリア上でランダムアクセスプリアンブルを、それぞれの送信電力を使用して送信時間間隔iの中で送信する送信器、を有する。
【0137】
【0138】
本発明の第2の態様および第3の態様に基づく本発明の別の実施形態は、1回または複数回のRACH手順において自身が使用する送信電力を調整する移動端末であって、複数の上りリンクコンポーネントキャリア上でのアクセスが許可されている、移動端末、が提供される。この移動端末は、時間的に整列させる上りリンクコンポーネントキャリアについて、それら上りリンクコンポーネントキャリアを時間的に整列させるために要求されるRACH手順の回数を求める手段、を含んでいる。さらに、移動端末は、上りリンクコンポーネントキャリアを時間的に整列させるために要求される求めた回数のRACH手順を実行する手段であって、1回または複数回のRACH手順すべてのための送信電力が、要求されるRACH手順の求めた回数に従って求められる、手段、を備えている。
【0139】
本発明の別の実施形態によると、上りリンクコンポーネントキャリア上で物理ランダムアクセスチャネルを介してランダムアクセスプリアンブルを送信するための送信電力を調整する方法、を実行する移動端末と一緒に使用される基地局、が提供される。この基地局は、オフセットP
0_PRACHmultipleを移動端末にシグナリングするように構成されている電力制御ユニットであって、時間的に整列させる上りリンクコンポーネントキャリアと、すでに時間的に整列している上りリンクコンポーネントキャリアとが、2つ以上のタイミングアドバンスグループに属している場合に、ランダムアクセスプリアンブルを送信するための送信電力を求める目的で、移動端末によってオフセットP
0_PRACHmultipleが利用される、電力制御ユニット、を含んでいる。さらに、基地局は、オフセットP
0_PRACHmultipleを利用して移動端末によって求められた送信電力によるランダムアクセスプリアンブルを上りリンクコンポーネントキャリア上で受信する受信ユニット、を備えている。
【0140】
例示的な詳細な実施例においては、基地局は、別のオフセットP
0_PRACHを移動端末にシグナリングするようにさらに構成されている電力制御ユニットであって、時間的に整列させる上りリンクコンポーネントキャリアと、すでに時間的に整列している上りリンクコンポーネントキャリアとが、同じタイミングアドバンスグループに属している場合に、ランダムアクセスプリアンブルの送信電力を求める目的で、移動端末によってこの別のオフセットP
0_PRACHが利用される、電力制御ユニット、をさらに含んでいる。基地局は、この別のオフセットP
0_PRACHを利用して移動端末によって求められた送信電力によるランダムアクセスプリアンブルを上りリンクコンポーネントキャリア上で受信するように構成されている受信ユニット、をさらに備えている。
【0141】
本発明のさらなる例示的な実施形態においては、上りリンクコンポーネントキャリア上で物理ランダムアクセスチャネルを介してランダムアクセスプリアンブルを送信するための送信電力を調整する方法、を実行する移動端末と一緒に使用される基地局、が提供される。この基地局は、基地局に依存する、上りリンクコンポーネントキャリアcのプリスケーリングオフセットΔoffset
c、を移動端末にシグナリングする電力制御ユニットであって、移動端末が、上りリンクコンポーネントキャリア上でランダムアクセスプリアンブルを送信するための送信電力を求める目的でプリスケーリングオフセットΔoffset
cを追加する、電力制御ユニット、を含んでいる。さらに、基地局は、移動端末が上りリンクコンポーネントキャリアcのプリスケーリングオフセットΔoffset
cを追加して求めた送信電力によるランダムアクセスプリアンブルを上りリンクコンポーネントキャリア上で受信する受信ユニット、を備えている。
【0142】
本発明の第1の態様および第2の態様に基づく本発明の別の例示的な実施形態は、命令を格納しているコンピュータ可読媒体であって、命令が移動端末のプロセッサによって実行されたとき、それに起因して、移動端末が、第1の上りリンクコンポーネントキャリア上で物理上りリンク共有チャネルを介してトランスポートブロックを送信するために要求される送信電力P
PUSCH(i)を求めるステップと、第2の上りリンクコンポーネントキャリア上で物理ランダムアクセスチャネルを介してランダムアクセスプリアンブルを送信するために要求される送信電力P
PRACH(i)を求めるステップと、によって、上りリンク送信用に自身が利用する送信電力を調整し、移動端末に、少なくとも第1の上りリンクコンポーネントキャリアおよび第2の上りリンクコンポーネントキャリアが設定されている、コンピュータ可読媒体、に関する。さらに、命令に起因して、移動端末は、物理上りリンク共有チャネル送信用に求めた送信電力、もしくは、物理ランダムアクセスチャネル送信用に求めた送信電力、またはその両方を、物理上りリンク共有チャネル送信用の送信電力と、物理ランダムアクセスチャネル送信用の送信電力との間の優先順位付けに従って低減し、第1の上りリンクコンポーネントキャリア上でトランスポートブロックを、第2の上りリンクコンポーネントキャリア上でランダムアクセスプリアンブルを、それぞれの送信電力を使用して送信時間間隔iの中で送信する。
【0143】
本発明の第2の態様および第3の態様に基づく本発明の別の実施形態においては、コンピュータ可読媒体における命令がプロセッサによって実行されたとき、それに起因して、移動端末が、時間的に整列させる上りリンクコンポーネントキャリアについて、それら上りリンクコンポーネントキャリアを時間的に整列させるために要求されるRACH手順の回数を求めるステップ、によって、1回または複数回のRACH手順に使用される送信電力を調整し、移動端末に、複数の上りリンクコンポーネントキャリア上でのアクセスが許可されている。さらに、命令が実行されることに起因して、移動端末は、上りリンクコンポーネントキャリアを時間的に整列させるために要求される求めた回数のRACH手順を実行し、この場合、1回または複数回のRACH手順すべてのための送信電力は、要求されるRACH手順の求めた回数に従って求められる。
【0144】
本発明のさらなる実施形態による別のコンピュータ可読媒体は、命令を格納しており、上りリンクコンポーネントキャリア上で物理ランダムアクセスチャネルを介してランダムアクセスプリアンブルを送信するための送信電力を調整する方法、を実行する移動端末と一緒に使用される基地局、のプロセッサによって命令が実行されたとき、それに起因して、基地局が、オフセットP
0_PRACHmultipleを移動端末にシグナリングし、オフセットP
0_PRACHmultipleは、時間的に整列させる上りリンクコンポーネントキャリアと、すでに時間的に整列している上りリンクコンポーネントキャリアとが、2つ以上のタイミングアドバンスグループに属している場合に、ランダムアクセスプリアンブルの送信電力を求める目的で、移動端末によって利用される。さらに、基地局は、オフセットP
0_PRACHmultipleを利用して移動端末によって求められた送信電力によるランダムアクセスプリアンブルを上りリンクコンポーネントキャリア上で受信する。
【0145】
本発明の別の実施形態によるさらなるコンピュータ可読媒体は、命令を格納しており、上りリンクコンポーネントキャリア上で物理ランダムアクセスチャネルを介してランダムアクセスプリアンブルを送信するための送信電力を調整する方法、を実行する移動端末と一緒に使用される基地局、のプロセッサによって命令が実行されたとき、それに起因して、基地局が、基地局に依存する、上りリンクコンポーネントキャリアcのプリスケーリングオフセットΔoffset
c、を移動端末にシグナリングし、プリスケーリングオフセットΔoffset
cは、移動端末が、上りリンクコンポーネントキャリア上でランダムアクセスプリアンブルを送信するための送信電力を求める目的で追加する。
【0146】
さらに、命令が実行されることに起因して、基地局は、移動端末が、基地局に依存する上りリンクコンポーネントキャリアcのプリスケーリングオフセットΔoffset
cを追加して求めた送信電力によるランダムアクセスプリアンブルを、上りリンクコンポーネントキャリア上で受信する。
【0147】
以下では、本発明について、添付の図面を参照しながらさらに詳しく説明する。図面において類似または対応する細部には、同じ参照数字を付してある。
【発明を実施するための形態】
【0149】
以下では、本発明のさまざまな実施形態について説明する。これら実施形態のほとんどは、上の背景技術の節で説明したLTE−A移動通信システムに従った直交シングルキャリア上りリンク無線アクセス方式に関連して概説してあるが、これは例示を目的としているにすぎない。本発明は、例えば前述したLTE−A通信システムなどの移動通信システムと組み合わせて有利に使用できるが、本発明は、この特定の例示的な通信ネットワークにおける使用に限定されないことに留意されたい。
【0150】
上の背景技術の説明は、本明細書に記載されている主としてLTE−Aに関連する特定の例示的な実施形態を深く理解することを目的としており、移動通信ネットワークにおけるプロセスおよび機能について、説明されている特定の実施形態に本発明を制限するものではないことを理解されたい。しかしながら、本明細書に提案する改良は、背景技術に説明したアーキテクチャ/システムにおいて容易に適用することができる。また、本発明のいくつかの実施形態においては、これらのアーキテクチャ/システムの標準的な手順および改良された手順を利用することもできる。
【0151】
本発明は、移動端末(3GPPにおいてはユーザ機器)に1送信時間間隔(例:1つまたは複数のサブフレーム)の中の複数の上りリンクリソースが割り当てられるシナリオにおいて、上りリンク送信を対象とする、基地局(3GPPにおいては基地局装置(eNodeBまたはNodeB))による効率的かつ厳密なQoS制御を提供することを目的とする。さらに、本発明は、移動端末の電力が制限されている場合にも、TTIの中での上りリンク送信用に移動端末が利用可能な送信電力を効率的に利用する方法を提供する。
【0152】
本発明の基礎をなす発想は、上りリンクリソース割当て(すなわち対応するトランスポートブロック)の優先順位の順序を導入することである。移動端末は、上りリンクで送信するトランスポートブロックを生成するとき、もしくは、TTI内での上りリンク送信用に移動端末が利用可能な送信電力を、TTIの中で送信されるそれぞれのトランスポートブロックに分配するとき、またはその両方において、優先順位の順序を考慮する。優先順位の順序は、処理順序と称されることもある。なぜなら、(以下の説明からさらに明らかになるように)上りリンクリソース割当て(すなわち対応するトランスポートブロック)に対して定義される優先順位の順序は、上りリンクリソース割当て(すなわち対応するトランスポートブロック)が処理される順序を意味するためである。
【0153】
本発明の一態様は、電力制御において、複数の上りリンクリソース割当てに対応する個々のトランスポートブロックに電力を割り当てるときの優先順位付けである。この態様は、特に、移動端末の電力が制限されている状況に適用することができ、利用可能な送信電力が複数の異なるトランスポートブロックに効率的に分配されるようにする。本発明のこの態様によると、上りリンクにおいてそれぞれのコンポーネントキャリア上で送信される個々のトランスポートブロックに電力を割り当てるときの電力スケーリングを、上りリンクコンポーネントキャリアの上りリンクリソース割当てを処理する順序(優先順位の順序)を使用して決定する。本発明のこの態様によると、コンポーネントキャリア単位で(すなわちトランスポートブロック単位、またはリソース割当て単位で)電力スケーリングが適用される。
【0154】
電力が制限された状況においては、移動端末は、トランスポートブロックのそれぞれを送信するための送信電力を、優先順位の順序によって与えられる、それぞれのトランスポートブロックの優先順位に従って減らす。なお、トランスポートブロックの送信に消費される合計送信電力は、与えられたTTI内での上りリンクにおけるトランスポートブロックの送信用に移動端末が利用可能な最大送信電力より小さいかまたは等しくなるようにしたものである。
【0155】
例示的な実施例によると、送信電力のスケーリングにおいて、それぞれのトランスポートブロック(またはトランスポートブロックが送信されるそれぞれのコンポーネントキャリア)のリソース割当ての優先順位(優先順位の順序によって与えられる)を考慮して、送信電力を低減する。このとき、優先順位の高いトランスポートブロックの送信は、送信電力の低減による影響が最小であるようにする。優先順位の順序に比例して、リソース割当て/コンポーネントキャリアの優先順位が低い(高い)ほど、対応する上りリンクリソース割当てによって要求されるトランスポートブロックの送信電力に対して、大きい(小さい)電力低減が適用されることが有利である。
【0156】
前述したように、電力スケーリングは、可能な場合には優先度の高いトランスポートブロックの送信が低減されないように設定されることが理想的である。最初に、優先順位の低いトランスポートブロックを送信するための送信電力を制限することによって、与えられたTTI内での上りリンクにおけるトランスポートブロックの送信用に移動端末が利用可能な最大送信電力を超えない範囲まで、送信電力が低減されるように試みるべきである。
【0157】
さらに、より高度な実施例では、移動端末における電力制御メカニズムにおいて、物理上りリンク制御チャネル(例えばLTE−AにおけるPUCCH)でシグナリングされる制御情報は電力スケーリングの対象とならない。同じTTIの中で制御情報(例えばLTE−AにおけるPUCCH)と同時に送信される、物理上りリンク共有チャネル上の送信(すなわちトランスポートブロック)のみが、電力スケーリングの対象となるようにする。言い換えれば、電力制御メカニズムは、TTI内での上りリンク送信用に移動端末が利用可能な送信電力から、物理上りリンク制御チャネルで制御情報をシグナリングするのに要求される送信電力を減じた残りの電力が、物理上りリンク共有チャネルのトランスポートブロックのそれぞれに、トランスポートブロックの優先順位の順序を考慮して分配されるように、設計されている。
【0158】
本発明の第2の態様は、複数の異なる物理チャネルを介して同時に上りリンク送信する(すなわち同じ送信時間間隔の中に複数の上りリンク送信が存在する)場合に電力を割り当てるときの優先順位付けである。上りリンク送信を行うことのできる物理チャネルの例は、物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)、物理上りリンク制御チャネル(PUCCH)、および物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)である。複数の異なる物理チャネルを介して上りリンク送信するときの電力割当てを優先順位付けすることによって、個々の送信電力を割り当てることができる。この電力割当ては、それぞれの上りリンク送信が送られるコンポーネントキャリアとは無関係とすることができる。
【0159】
この第2の態様によると、物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)と物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)とを介して同時に上りリンク送信する場合に、異なる送信電力レベルを使用することができる。あるいは、本発明のこの第2の態様では、物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)と物理上りリンク制御チャネル(PUCCH)とを介して同時に上りリンク送信する場合に、送信電力を個々にスケーリングすることができる。物理チャネルの優先順位付けに基づいて、上りリンク送信のための送信電力をスケーリングすることで、例えば、優先順位付けされた物理チャネルを介してのそれぞれの上りリンク送信のSINRを改善することができる。例えば、移動端末の電力が制限された状況にある場合、上りリンク送信のための送信電力を、物理チャネルの優先順位付けに基づいて低減することによって、移動端末は与えられた電力制約を満たすことができる。
【0160】
本発明の第2の態様に基づく本発明の例示的な実施形態においては、物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)送信もしくは物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)送信またはその両方のための送信電力を、対応するチャネルの優先順位付けに従って低減する。この場合、物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)送信の送信電力を、物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)送信の送信電力よりも優先させる、またはこの逆とする。
【0161】
物理チャネル送信の優先順位が低い(高い)ほど、その物理チャネルを介して送信するための送信電力に対して、大きい(小さい)電力低減が適用されることが有利である。
【0162】
理想的には、電力制限状況において送信電力の制約を満たす目的で、最初に、優先順位の低い物理チャネル送信の送信電力を制限することを試みる。それでも送信電力の制約が満たされない場合、より高い優先順位の物理チャネル送信の送信電力も制限することができる。
【0163】
本発明の代替実施形態においては、複数の異なる物理チャネルを介して同時に上りリンク送信する場合に電力を割り当てるときの優先順位付けと、本発明の第1の態様、すなわち電力制御において、複数の上りリンクリソース割当てに対応する個々のトランスポートブロックに電力を割り当てるときの優先順位付けとを、有利に組み合わせることができる。
【0164】
ユーザ機器に、2つ以上のタイミングアドバンスグループに属する複数の上りリンクコンポーネントキャリアが設定されているとき、ユーザ機器は、それぞれの上りリンクコンポーネントキャリアを時間的に整列させるため2回以上のRACH手順を同じ送信時間間隔の中で実行することが要求されることがある。言い換えれば、ユーザ機器は、同じTTIの中で2つ以上のランダムアクセスプリアンブルをPRACHチャネルを介して送信することが要求されうる。したがって、本発明のより高度なさらなる実施形態においては、複数回のPRACH手順が同時に実行される場合、個々のRACH手順のRACHプリアンブル送信用の電力を割り当てるときに優先順位付けを実行する。
【0165】
本発明のさらなる代替実施形態においては、優先順位の順序(ユーザ機器が複数回のRACH手順のRACHプリアンブルの送信電力を求めるときに従う順序)は、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアに割り当てられるインデックスにリンクされている。各コンポーネントキャリアに個々のセルインデックスまたはキャリアインデックス(CI)を割り当てることができる。また、上りリンクリソースが割り当てられるコンポーネントキャリアのセルインデックスまたはキャリアインデックスに従って、優先順位の順序を定義することができる。
【0166】
さらに高度な例示的な実施例においては、基地局装置は、コンポーネントキャリアの優先順位が高い/低いほど、そのコンポーネントキャリアのセルインデックスまたはコンポーネントキャリアインデックスが大きい/小さいように、セルインデックスまたはキャリアインデックスを割り当てることができる。この場合、ユーザ機器は、複数回のRACH手順のRACHプリアンブルを送信するための送信電力を、インデックスの大きい順に求めるべきである。
【0167】
本発明のさらなる代替実施形態においては、複数回のRACH手順のRACHプリアンブルの送信電力を求めるための優先順位の順序は、コンポーネントキャリアのタイプに依存する。上述したように、ユーザ機器あたり1つのプライマリ上りリンクコンポーネントキャリア(PCC)と、(必要な場合に)複数のセカンダリ上りリンクコンポーネントキャリア(SCC)と、が設定されている。この実施形態によると、ユーザ機器は、必ず、プライマリコンポーネントキャリア(PCC)に対するRACH手順の一部であるRACHプリアンブルを送信するための送信電力を割り当てた後に、TTIの中でPCC以外のコンポーネントキャリアに対して実行されるRACH手順のRACHプリアンブルのための送信電力を割り当てる。(1つまたは複数の)SCC上で実行されるRACH手順のRACHプリアンブルのための送信電力割当てに関しては、いくつかのオプションが存在する。例えば、(1つまたは複数の)SCC上でRACH手順を実行するための送信電力の割当ては、ユーザ機器の実装に委ねることができる。これに代えて、(1つまたは複数の)SCC上でRACH手順を実行するための送信電力の割当ては、割り当てられているセルインデックスまたはキャリアインデックスの順序で処理することができる。
【0168】
本発明の第3の態様は、ランダムアクセス(RACH)手順において使用される送信電力を、複数の上りリンクコンポーネントキャリアを時間的に整列させるために要求されるRACH手順の回数に基づいて調整することである。移動端末は、時間的に整列させる上りリンクコンポーネントキャリアの数に応じて、1回または複数回のRACH手順を実行して上りリンクコンポーネントキャリアを時間的に整列させる。RACH手順には処理リソースが必要であり、移動端末が並列に実行できる上りリンク送信は、RACH手順によって制約される。したがって、できる限り少ないRACH手順を実行することが望ましい。(1つまたは複数の)RACHプリアンブルの送信電力を、要求されるRACH手順の回数に基づいて調整することによって、要求されるRACH手順のそれぞれの成功確率を高めることができる。RACH手順の成功確率が高いことにより、上りリンクコンポーネントキャリアを時間的に整列させるためのRACH手順によって発生する遅延が減少する。
【0169】
本発明の例示的な一実施形態によると、ユーザ機器は、要求されない(すなわち余剰であるため実行されない)1回または複数回のRACH手順の送信電力を「利用」することで、複数の上りリンクコンポーネントキャリアを時間的に整列させるための要求されるRACH手順のみを実行するように送信電力を調整することができ、これによって、要求されるRACH手順のそれぞれの成功確率が高まる。
【0170】
本発明の代替実施形態においては、ユーザ機器は、複数の上りリンクコンポーネントキャリアを時間的に整列させるために複数回のRACH手順が要求されるとき、RACHプリアンブルを送信するために使用される送信電力を増やす。例えば、ユーザ機器は、実行するRACH手順が1回のみである場合、第1のオフセットP
0_PRACHを使用し、実行するRACH手順が複数回である場合、別の第2のオフセットP
0_PRACHmultipleを使用する。第2のオフセットP
0_PRACHmultipleは第1のオフセットP
0_PRACHより大きい値を有することが有利であり、これにより、複数回のRACH手順を実行するときの成功確率を高めることができる。
【0171】
本発明のさらなる代替実施形態においては、ユーザ機器は、RACH手順においてRACHプリアンブルに使用される送信電力を、RACH手順のそれぞれが実行されるコンポーネントキャリアのタイプに応じて、個々に増やすことができる。いま、例示を目的として、ユーザ機器あたり1つのプライマリコンポーネントキャリア(PCC)と、オプションとして1つまたは複数のセカンダリコンポーネントキャリア(SCC)と、が設定されているものと想定する。したがって、ユーザ機器は、RACH手順をプライマリコンポーネントキャリア上で実行する場合、RACH手順のプリアンブルのための送信電力を、第1のオフセットP
0_PRACHを利用して求める。RACH手順をセカンダリコンポーネントキャリア上で実行する場合、ユーザ機器は第2のオフセットP
0_PRACHmultipleを利用する。前述したように、第2のオフセットP
0_PRACHmultipleは第1のオフセットP
0_PRACHより大きい値を有することができる。
【0172】
本発明の第3の態様の例示的な実施例においては、時間的に整列させる複数の上りリンクコンポーネントキャリアに要求されるRACH手順の回数を求める(または制限する)ための方法はいくつか存在する。例えば、要求されるRACH手順の回数を求める方法は、ユーザ機器の実装に委ねることができる。別のオプションまたは代替形態として、ユーザ機器は、要求されるRACH手順の回数を、複数の上りリンクコンポーネントキャリアが属しているタイミングアドバンスグループの数に基づいて求める。上述したように、基地局装置は、伝搬遅延が類似するコンポーネントキャリアを同じタイミングアドバンスグループにグループ化することができる。1つのタイミングアドバンスグループの中では、すべてのコンポーネントキャリアの伝搬遅延が等しいため、タイミングアドバンスグループごとに1つのタイミングアドバンスを設定するのみでよい。すなわち、タイミングアドバンスグループのコンポーネントキャリアすべてを時間的に整列させるのに要求されるRACH手順は、タイミングアドバンスグループあたり1回のみである。したがって、タイミングアドバンスグループに関する情報を取得するユーザ機器は、タイミングアドバンスグループあたり1回のみのRACH手順を実行するものとして、要求されるRACH手順の回数を求める。
【0173】
時間的に整列させる少なくとも1つの上りリンクコンポーネントキャリアが属しているタイミングアドバンスグループごとにRACH手順が要求される状況を考えると、要求されるRACH手順の回数は、時間的に整列させる複数の上りリンクコンポーネントキャリアの異なるタイミングアドバンスグループの数に等しい。
【0174】
ユーザ機器は、それぞれのタイミングアドバンスグループの、時間的に整列させるべき上りリンクコンポーネントキャリアの1つに対して1回のRACH手順を実行する。その後、基地局装置から取得されるタイミングアドバンス値を使用することで、1つのタイミングアドバンスグループに属している、時間的に整列させるべき1つまたは複数の上りリンクコンポーネントキャリアのそれぞれのタイミングアドバンスを設定することができる。
【0175】
いま、例示を目的として、ユーザ機器に設定されている上りリンクコンポーネントキャリアがすでに時間的に整列している(例えば過去の時点でRACH手順が実行された)状況を考えると、タイミングアドバンス値がすでに設定されているタイミングアドバンスグループ(すなわち、すでに時間的に整列している上りリンクコンポーネントキャリアの1つを含んでいるタイミングアドバンスグループ)については、タイミングアドバンス値を取得するためのさらなるRACH手順を実行する必要がない。したがって、要求されるRACH手順の回数は、タイミングアドバンス値が設定されていないタイミングアドバンスグループの数に一致する。言い換えれば、要求されるRACH手順の回数は、すでに時間的に整列された上りリンクコンポーネントキャリアを含んでいないタイミングアドバンスグループの数に等しい。タイミングアドバンスがすでに設定されているタイミングアドバンスグループに属する、時間的に整列させるべきコンポーネントキャリアについては、ユーザ機器は、そのような1つまたは複数の上りリンクコンポーネントキャリアのそれぞれのタイミングアドバンスを、単純に、それぞれのコンポーネントキャリアが属しているそれぞれのタイミングアドバンスグループに設定されているタイミングアドバンスに従って設定する。
【0176】
すでに上述したように、本発明の一態様は、生成されたトランスポートブロックを、割り当てられたリソースを用いて上りリンクコンポーネントキャリア上で送信できるように、送信電力を分配することである。この場合、特に、移動端末の電力が制限されている状況は、本発明の適用対象である。上りリンクのキャリアアグリゲーションを使用する通信システム(例えばLTE−A)において本発明を実施するとき、コンポーネントキャリアごとの電力制御を想定した場合、本発明の別の実施形態によると、移動端末の電力が制限された状況において、上りリンクコンポーネントキャリア上で物理上りリンク共有チャネルを介して送信するための電力を割り当てるときに優先順位付けを行うことを提案する。このように、移動端末が利用可能な送信電力を優先順位付けすることによって、データ/上りリンクコンポーネントキャリアの異なるQoSに対応することができる。
【0177】
電力制限とは、1TTIの中で上りリンクリソース割当てに従って上りリンクコンポーネントキャリア上でトランスポートブロックを送信するために要求される、移動端末の合計送信電力が、上りリンク送信用に移動端末が利用可能な最大送信電力P
MAXを超えている状況を意味する。上りリンク送信用に移動端末が利用可能な最大送信電力P
MAXは、移動端末の最大電力性能と、ネットワークによって許可される(すなわち基地局装置によって設定される)最大送信電力とに依存する。
【0178】
図10は、利用可能な最大送信電力P
MAXを、TTIの中で送信されるトランスポートブロックに分配する場合の、本発明の例示的な実施形態による流れ図を示している。この例示的な実施形態および以降の例においては、通信システムはLTE−Aをベースとしており、上りリンクのキャリアアグリゲーションを使用し、コンポーネントキャリアごとの電力制御を想定する。さらには、PUCCH(すなわち制御情報)の送信電力がPUSCH送信(すなわち上りリンクリソース割当てに従って生成されるトランスポートブロック)よりも優先される。すなわち、電力制限状況下ではPUSCHの送信電力が最初にスケールダウンされるものと想定する。
【0179】
移動端末は、最初に、1TTIを対象とする複数の上りリンクリソース割当てを、自身の受信器ユニットを使用して受信し(1001)、移動端末の処理ユニットが、これらリソース割当ての優先順位の順序を決定する(1002)。上りリンクリソース割当ての優先順位の順序は、本明細書に記載されているさまざまな例示的なオプションの1つに従って決定することができる。
【0180】
さらに、移動端末のトランスポートブロック生成ユニットが、上りリンクリソース割当てに従ってトランスポートブロックを生成する(1003)。このトランスポートブロック生成は、同様に、本明細書に記載されているさまざまな例示的なオプションの1つに従って実施することができる。さらに、別の代替実施例においては、LTEリリース8における、各上りリンクリソース割当て(すなわち上りリンクコンポーネントキャリア)において公知の論理チャネル優先順位付けを実行することによって、各コンポーネントキャリアのトランスポートブロックを、対応する上りリンクリソース割当てに従って生成することができる。
【0181】
さらに、移動端末の処理ユニットは、生成されたトランスポートブロックのそれぞれについて、電力制御機能に従って、それぞれの上りリンクリソース割当てによって明示的または暗黙的に要求される送信電力を求める(すなわち、要求される送信電力は電力制御式によって与えられる)(1004)。例えば、移動端末は、対応する上りリンクリソース割当てに従って上りリンクコンポーネントキャリア上で各トランスポートブロックを送信するのに要求される送信電力を、背景技術に記載されている式(1)を使用して求めることができる。本例においては、移動端末は、与えられたTTIの中でトランスポートブロックを送信するための電力が制限されるものと想定する。移動端末は、例えば、上りリンク送信用に移動端末が利用可能な最大送信電力P
MAXから、同じTTIの中でのPUCCH上での制御シグナリングに要求される送信電力P
PUCCHを差し引いた値と、トランスポートブロックに要求される送信電力の合計とを比較する。そして移動端末は、上りリンク送信用に移動端末が利用可能な最大送信電力P
MAXから、同じTTIの中でのPUCCH上での制御シグナリングに要求される送信電力P
PUCCHを差し引いた値よりも、トランスポートブロックに要求される送信電力の合計が上回っているものと判定されたとき、自身が電力制御状況にあるものと判断することができる。
【0182】
上りリンク送信用に移動端末が利用可能な最大送信電力P
MAXから、同じTTIの中でのPUCCH上での制御シグナリングに要求される送信電力P
PUCCHを差し引いた値を超えないようにするためには、移動端末は、すべてのトランスポートブロックまたは一部のトランスポートブロックを送信するための上りリンク送信電力を低減する必要がある。この電力低減(電力スケーリングとも称される)の実施方法については、いくつかのオプションが存在する。次いで、
図10に示した例示的な流れ図においては、移動端末は、それぞれのトランスポートブロックの各送信について電力低減率を決定する(1005)。これは、各トランスポートブロックを送信するための低減後の送信電力の合計が、上りリンク送信用に移動端末が利用可能な最大送信電力P
MAXから、同じTTIの中でのPUCCH上での制御シグナリングに要求される送信電力P
PUCCHを差し引いた値に等しいかそれより小さくなるように決定する。ここで、各トランスポートブロックを送信するための低減後の送信電力は、ステップ1004で求めたそれぞれの要求される送信電力に、求めたそれぞれの電力低減率を適用(1006)したときに得られる、各トランスポートブロックの送信用の送信電力である。移動端末の送信電力制御ユニットは、ステップ1004で求めたそれぞれの要求される送信電力に、求めたそれぞれの電力低減率を適用する(1006)。また、移動端末の送信電力制御ユニットは、トランスポートブロックを、与えられたTTIの中で、割り当てられた上りリンクリソースを介して、低減された送信電力を使用してコンポーネントキャリア上で送信する(1007)。
【0183】
電力低減または電力スケーリングは、移動端末によって提供される送信電力制御機能の一部として実施することができる。電力制御機能は、移動端末の物理層の機能と考えることができる。物理層は、論理チャネルとトランスポートブロックとの間のマッピング(すなわち論理チャネルとコンポーネントキャリアとの間のマッピング)についてまったく認識していないものと想定することができる。なぜなら、複数のコンポーネントキャリアにおける論理チャネルデータの多重化は、移動端末のMAC層が実行するためである。しかしながら、トランスポートブロックの(すなわちPUSCHの)送信電力を、上りリンクコンポーネントキャリアの優先順位(すなわちリソースを割り当てる上りリンクリソース割当ての優先順位)に基づいてスケーリングするとき、キャリアアグリゲーションの設定において遅延要件の高いトラフィックを適切にサポートできることが望ましい。
【0184】
より詳細には、PUSCHで送信されるトランスポートブロックの中の高QoSデータは、より多くの再送信が許容される低QoSデータと比較して、低減率が小さいことが望ましい。したがって、本発明の例示的な一実施形態によると、PUSCH上のトランスポートブロックの送信電力をスケーリングするとき(ステップ1005およびステップ1006を参照)、上りリンクリソース割当ての処理順序を考慮することが有利である。この処理順序は、これらのリソース割当てがリソースを割り当てるコンポーネントキャリアの優先順位の順序と等しいものと考えることができる。上りリンクリソース割当ての処理順序と電力スケーリングのいずれも、論理チャネルが受ける送信品質に影響を及ぼす。そのため、移動端末のMAC層においてトランスポートブロックを生成する(例えばステップ1003を参照)ときの上りリンクリソース割当ての優先順位付けと、移動端末の物理層における電力スケーリング機能(ステップ1005およびステップ1006を参照)との間に、何らかの相互関係が存在することが望ましい。
【0185】
この相互関係は、例えば、物理層に提供される電力スケーリング機能によってPUSCH送信の電力スケーリングを行うときと、MAC層においてトランスポートブロックの生成時に上りリンクリソース割当ての処理順序を決定するときとで、上りリンクリソース割当ての同じ優先順位の順序を使用することによって、達成することができる。例示的な一実施例においては、移動端末は、PUSCH上のトランスポートブロックに要求される送信電力(ステップ1004を参照)を、上りリンクリソース割当ての処理順序とは逆の順序でスケールダウンする。移動端末の電力制御ユニットは、基本的には、優先順位が最低である上りリンクリソース割当てに対応するトランスポートブロックの送信に要求される送信電力を、最初にスケールダウンする。次いで、移動端末の電力制御ユニットは、優先順位が2番目に低い上りリンクリソース割当てに対応するトランスポートブロックの送信に要求される送信電力をスケールダウンし、以下同様である。必要な場合、1つまたは複数のトランスポートブロックの送信電力を0までスケールダウンすることができる(すなわち対応するコンポーネントキャリアにおいて移動端末はDTXを実行する)。
【0186】
さらなる例示的な一実施例においては、1つのトランスポートブロックの送信に要求される送信電力を0までスケールダウンした後、次のトランスポートブロックの電力スケーリングを行う。したがって、電力制御ユニットは、最初に、優先順位が最低である上りリンクリソース割当てに対応するトランスポートブロックの送信に要求される送信電力を、(必要であれば)0までスケールダウンする。もし送信電力をさらに低減する必要がある場合、移動端末の電力制御ユニットは、優先順位が2番目に低い上りリンクリソース割当てに対応するトランスポートブロックの送信に要求される送信電力を、(必要であれば)0までスケールダウンし、以下同様である。
【0187】
送信電力の電力低減/電力スケーリングは、LTE−Aシステムにおいては例えば以下のように実施することができる。例示的な一実施例においては、各コンポーネントキャリアcの重み係数w
c(それぞれのコンポーネントキャリア上でのトランスポートブロックのPUSCH送信に適用される)が、基地局装置からユーザ機器にシグナリングされる。ユーザ機器の電力制御ユニットは、自身の電力が制限されているとき、リソースが割り当てられたコンポーネントキャリア上でのPUSCH送信すべての送信電力の加重和をスケーリングする。このスケーリングは、上りリンク送信用に移動端末が利用可能な最大送信電力P
MAXを超えないように、スケーリング係数sを計算することによって実施することができる。スケーリング係数sは、次の式(2)から求めることができる。
【数2】
この式において、sはスケーリング係数、w
cはコンポーネントキャリアcの重み係数を表す。P
PUCCH(i)は、TTI
iの中でのPUCCH上の制御シグナリングに要求される送信電力を表し、P
PUSCHc(i)は、TTI
iの中でコンポーネントキャリアcのPUSCH上で送信されるトランスポートブロックの送信電力を表す(ステップ104および式(1)を参照)。明らかに、スケーリング係数sは、次式によって求めることができる。
【数3】
コンポーネントキャリアの重み係数w
cは、例えば、特定のコンポーネントキャリア上で送信されるデータのQoSと考えることができる。
【0188】
さらに高度な一実施例においては、上りリンクのプライマリコンポーネントキャリア(PCC)のPUSCH上で送信されるトランスポートブロックがスケーリングされないようにすることができる。これは例えば、上りリンクのプライマリコンポーネントキャリア(PCC)の重み係数w
cを基地局装置が1/sに定義することによって達成することができる。これに代えて、上りリンクのプライマリコンポーネントキャリア(PCC)以外のコンポーネントキャリアのみを対象とするスケーリング係数sを、以下の関係を使用して求めることができる。
【数4】
したがって、
【数5】
この式において、P
PUSCH_PCC(i)は、上りリンクのプライマリコンポーネントキャリア(PCC)上で送信されるトランスポートブロックの送信に要求される送信電力である(ステップ1004および式(1)を参照)。一方、P
PUSCH_SCCc(i)は、PCC以外の上りリンクセカンダリコンポーネントキャリア(SCC)上で送信されるトランスポートブロックの送信に要求される送信電力である(ステップ1004および式(1)を参照)。
【0189】
本発明のさらなる例示的な一実施形態においては、ユーザ機器は、トランスポートブロックを生成するとき、重み係数w
cの大きい順に上りリンクリソース割当てを処理することができる。したがって、優先順位の順序を重み係数w
cによって与えることができる。移動端末は、最も高い重み係数w
cが割り当てられている上りリンクコンポーネントキャリアの上りリンクリソース割当てを最初に処理する。最も高い重み係数w
cは、本質的には、優先順位が最高の上りリンクコンポーネントキャリア(すなわちこの実施形態においては上りリンクリソース割当て)に対応する。
【0190】
複数の上りリンクコンポーネントキャリアに同じ重み係数w
cが適用されている場合、処理の順序はユーザ機器の実装に委ねることができる。これに代えて、同じ重み係数w
cの場合、(上述したように)上りリンクリソース割当てが下りリンクで送信されたタイミングに基づいて、あるいは、対応するコンポーネントキャリアのキャリアインデックス(CI)に基づいて、処理の順序を決定することもできる。
【0191】
本発明の別の例示的な実施形態においては、移動端末の電力制御ユニットによる電力スケーリングは、それぞれのトランスポートブロックが送信されるコンポーネントキャリアのタイプに依存する。優先度が最高のトラフィックを伝える上りリンクプライマリコンポーネントキャリア(PCC)上でのトランスポートブロックのPUSCH送信への電力割当ては、上りリンクセカンダリコンポーネントキャリア上での他のPUSCH送信よりも優先される。PCC以外の上りリンクコンポーネントキャリア(すなわち上りリンクセカンダリコンポーネントキャリア)に対する電力割当て(すなわち電力低減/電力スケーリング)は、ユーザ機器の実装に委ねることができる。例えば、PCC以外の上りリンクセカンダリコンポーネントキャリア(SCC)に関して、ユーザ機器は、QoS要件の高いデータを、自身が選択するコンポーネントキャリア上に多重化することができる。このコンポーネントキャリアの電力割当てを、それ以外の上りリンクセカンダリコンポーネントキャリア(SCC)よりも優先させることができる。
【0192】
キャリアアグリゲーションを使用する通信システムにおいては、移動端末は、1つのコンポーネントキャリア上でランダムアクセスを実行する一方で、スケジューリングされたデータ(トランスポートブロック)を別のコンポーネントキャリア上で送信することができる。したがって、LTE−Aなどの3GPPベースのシステムの場合、ユーザ機器は、1つのコンポーネントキャリア上でRACH(ランダムアクセスチャネル)アクセスを実行する一方で、別のコンポーネントキャリア上でPUSCH/PUCCHを同時に送信することが可能である。したがって、ユーザ機器は、RACHプリアンブルを送信し(すなわち物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)上での送信)、さらに、同じTTIの中で、PUSCHもしくはPUCCHまたはその両方においてデータを送信することができる。PRACHとPUCCH/PUSCHとを同時に送信することが起こりうるケースとして、ユーザ機器が1つの上りコンポーネントキャリアでは同期していないが、別の上りリンクコンポーネントキャリアでは依然として上りリンク同期している状況が挙げられる。「同期していないコンポーネントキャリア」において上りリンク同期を回復する目的で、ユーザ機器は、(例えばPDCCHによって命令された)RACHアクセスを行う。さらには、ユーザ機器のための専用のスケジューリング要求チャネルがPUCCH上に確立されていない場合にも、ユーザ機器は、自身のバッファに新しいデータが到着した場合に、上りリンクリソースを要求する目的でRACHアクセスを実行することができる。
【0193】
これらの場合、本発明の別の実施形態によると、RACHアクセス(すなわちPRACH上でのRACHプリアンブルの送信)の送信電力は、アクセスネットワークによる電力制御の対象とならない。しかしながら、この実施形態においては、電力制限状況下にある移動端末によって電力スケーリングが適用されるとき、PRACH送信のための送信電力も考慮される。したがって、PRACH送信およびPUCCH/PUSCH送信が同時に行われる場合、TTIの中のPRACH、PUCCH、およびPUSCHの送信電力は、次の関係を満たすべきである。
【数6】
この式において、P
PRACH(i)は、TTI
iの中でPRACH上で送信するための送信電力である。電力制限のため電力スケーリングが必要である場合、1つの例示的なシナリオにおいては、満たすべき関係は以下である。
【数7】
【0194】
さらに詳細な例示的な実施例においては、プリアンブルの最初の送信電力設定(すなわちP
PRACH(i)の設定)は、ユーザ機器の開ループ推定(経路損失の完全な補償)に基づくことができる。これによって、RACHプリアンブルの受信電力を経路損失とは無関係にすることができる。さらに基地局装置は、例えば、所望の受信SINR、RACHプリアンブルに割り当てられる時間−周波数スロットにおける上りリンク干渉/ノイズの測定レベル、および(場合によっては)プリアンブルのフォーマットに応じて、PRACHの追加の電力オフセットを設定することができる。さらには、基地局装置は、再送信される各プリアンブルの送信電力P
PRACH(i)が一定のステップで増大するように(すなわちPRACH送信の試みが成功しなかった場合)、プリアンブルの電力ランピングをオプションとして設定することができる。
【0197】
第3のオプションでは、PRACHおよびPUCCH/PUSCHの同時送信が許可されない。したがってこの場合、ユーザ機器は、PUCCH/PUSCH送信またはPRACH送信のいずれかをドロップする。PRACHとPUCCH/PUSCHとでタイミングオフセットが異なるため、電力増幅器(PA)を両方に利用することはかなり困難である。
【0198】
言い換えれば、同じ送信時間間隔の中で複数の異なる物理チャネル上で送信するときユーザ機器がどのように電力制御を実行するかは、PUSCH送信の送信電力とPRACH送信(すなわちRACHプリアンブルの送信)の送信電力との間の優先順位付けによって決まる。
【0199】
本発明の実施形態によると、ユーザ機器は、PRACHを介しての上りリンク送信とPUSCHを介しての上りリンク送信とを同時に行うとき、異なる送信電力レベルを使用する。異なる電力レベルを使用することによって、ユーザ機器は、与えられる電力制約を満たすことができ、これについて
図16の流れを参照しながら以下に例示的に説明する。
【0200】
ユーザ機器は、上りリンク送信に自身が利用する送信電力を調整するため、最初に、PRACH送信およびPUSCH送信の優先順位を決定する(ステップ1601を参照)。さらにユーザ機器は、PUSCH送信のための送信電力を求め(ステップ1602を参照)、同じ送信時間間隔の中で実行されるPRACH送信のための送信電力を求める(ステップ1603を参照)。特に、これらの電力レベルは、それぞれの送信が実行される上りリンクコンポーネントキャリアに基づいて求めることができる。当然ながら、同じサブフレームの中で行われるPRACH送信およびPUSCH送信は、(キャリアアグリゲーションをサポートするユーザ機器によって)異なる上りリンクコンポーネントキャリア上で実行される。このユーザ機器は、LTE−Aのユーザ機器とすることができる。
【0201】
次いで、ユーザ機器は、PUSCH送信のために求めた送信電力、もしくは、PRACH送信のために求めた送信電力、またはその両方の電力低減率を決定する(ステップ1604を参照)。この電力低減は、PUSCH送信の送信電力とPRACH送信の送信電力との間の優先順位付けに従って実行される。ユーザ機器の利用可能な最大送信電力に従って送信電力を低減することによって、電力制限状況において、ユーザ機器に与えられた電力制約が満たされるようにすることができる。したがって、ユーザ機器は、求めたPRACH送信電力およびPUSCH送信電力に、求めた電力低減率を適用し(ステップ1605を参照)、PRACH送信およびPUSCH送信を、それぞれの上りリンクコンポーネントキャリア上で、低減した送信電力において送信する(ステップ1606を参照)。
【0202】
キャリアアグリゲーションをサポートするユーザ機器は、RACHアクセスを実行する一方で、別のコンポーネントキャリア上でPUSCH/PUCCHを同時に送信することができる。言い換えれば、ユーザ機器は、RACHプリアンブル(すなわちPRACH送信)と、PUSCHもしくはPUCCHまたはその両方とを、同じTTIの中で送信する状況に遭遇することがある。PRACHとPUCCH/PUSCHとを同時に送信することが起こりうるのは、例えば、ユーザ機器が1つの上りコンポーネントキャリアでは上りリンク同期していないが、別の上りリンクコンポーネントキャリアでは依然として上りリンク同期している状況である。上りリンク同期を回復するため、ユーザ機器は、RACHアクセス(例えば、同期していないコンポーネントキャリアを対象としてPDCCHによって命令されるコンテンションフリーのRACHアクセス)を実行する。さらには、ユーザ機器のための専用のスケジューリング要求チャネルがPUCCH上に確立されていない場合にも、ユーザ機器は、例えば自身のバッファに新しいデータが到着した場合に、上りリンクリソースを要求する目的でRACHアクセスを実行することができる。
【0203】
LTEにおいては、本明細書の背景技術に記載されている上りリンク電力制御の対象となるのは、物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)、物理上りリンク制御チャネル(PUCCH)、およびサウンディング基準信号(SRS)であり、物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)には適用されないという印象がある。しかしながら、電力制限に起因して電力スケーリングを使用する必要があるとき、PRACH送信も考慮する必要がある。
【0204】
従来、電力制限の場合に考慮されるのは、PUCCHと、上りリンク制御情報(UCI)が多重化されたPUSCHと、PUSCHであり、この場合、PUCCHはPUSCHよりも優先順位が高い。UCIが多重化されたPUSCH送信は、UCIが多重化されていないPUSCH送信よりも優先順位が高く、したがって優先される。優先順位の順序は以下である。
PUCCH>PUSCH(UCIあり)>PUSCH(UCIなし)
【0205】
さらに、RACHプリアンブルを送信するための最初の電力設定は、ユーザ機器の開ループ推定(経路損失の完全な補償)に基づくことができる。これによって、基地局装置におけるRACHプリアンブルの受信電力を経路損失とは無関係にすることができる。
【0206】
本発明のさらに詳細な実施形態によると、基地局装置は、RACH送信を対象とする追加の電力オフセットとして、従来の開ループ電力制御メカニズムから求められる電力に加える形で適用される電力オフセットを設定する。RACH送信のこの電力オフセットは、例えば、所望の受信SINR、RACHプリアンブルに割り当てられる時間−周波数スロットにおける上りリンク干渉/ノイズの測定レベル、およびプリアンブルのフォーマットに基づいて求めることができる。
【0207】
本発明の別の詳細な実施形態によると、基地局装置は、再送信される各プリアンブルの送信電力が一定のステップで増大するように(すなわちPRACH送信の試みが成功しなかった場合)、プリアンブルの電力ランピングを再設定することができる。
【0208】
言い換えれば、PRACH送信およびPUCCH/PUSCH送信が同時に行われる場合に電力スケーリングを実行するための、本発明のこの態様の実施方法は、いくつか存在する。
【0209】
本発明の一実施例によると、PRACHの送信電力が、PUCCHの送信電力と同様に、PUSCHの送信電力よりも優先される。優先順位の順序は以下である。
PUCCH>PRACH>PUSCH(UCIあり)>PUSCH(UCIなし)
【0210】
本発明のさらなる実施例では、UCIが多重化されたPUSCHをPRACH送信よりも優先させることが有利である。UCIが多重化されたPUSCHには、タイムクリティカルな重要情報が含まれる。したがって、優先順位の順序は以下のようにすることができる。
PUCCH>PUSCH(UCIあり)>PRACH>PUSCH(UCIなし)
【0211】
本発明のさらに別の実施例においては、PUCCH/PUSCH送信がPRACHよりも優先される。この場合、ユーザ機器は、最初にPRACH送信の送信電力をスケールダウンし、次いで、(必要であれば)PUSCH送信の送信電力をスケールダウンする。優先順位の順序は以下のように指定される。
PUCCH>PUSCH(UCIあり)>PUSCH(UCIなし)>PRACH
【0212】
本発明の上述した実施例は、ユーザ機器のさまざまな設定構成において適用することができる。例えば、ユーザ機器に、2つ以上のタイミングアドバンス(TA)グループに属する複数の上りリンクコンポーネントキャリアが設定されており、ユーザ機器は1つのみの電力増幅器(PA)を有する。あるいは、ユーザ機器に、2つ以上のタイミングアドバンス(TA)グループに属する複数の上りリンクコンポーネントキャリアが設定されており、上りリンクコンポーネントキャリアのタイミングアドバンスグループごとに個別の電力増幅器(PA)が提供される。
【0213】
ユーザ機器の例示的な設定構成として、2つ以上のタイミングアドバンスグループに属する複数の上りリンクコンポーネントキャリアが設定されており、電力増幅器(PA)が1基のみである場合、ユーザ機器は、PRACHとPUCCH/PUSCHとが同時に送信されないようにしなければならない。このようなユーザ機器の実施例では、PUCCH/PUSCH送信またはPRACH送信のいずれかをドロップする必要がある。その理由として、PRACHとPUCCH/PUSCHとでタイミングオフセットが異なるためであり、HSUPAのHS−DPCCHおよびDPCCH/DPDCHの場合に類似して、電力増幅器(PA)を両方に利用することはかなり困難である。
【0214】
本発明のさらなる実施形態は、1TTIの中の複数のRACH送信を優先順位付けすることに関する。
【0215】
本発明の実施例においては、ユーザ機器は、いくつかのRACH送信のうちどれを優先させるかを、PRACHプリアンブルを送信する対応する上りリンクコンポーネントキャリアのセルインデックスに従った順序に基づいて決定する。この実施例においては、最も小さいセルインデックスを有する上りリンクコンポーネントキャリア上のPRACH送信に、最も高い優先順位を割り当てることができる。
【0216】
本発明の別の実施例においては、ユーザ機器は、自身が開始するRACH手順と、PDCCH命令によって基地局装置によって命令されるRACH手順(コンテンションフリーのRACHアクセスとも称される)とを区別する。この実施例においては、ユーザ機器が開始するRACH手順よりも、基地局装置によって命令されるRACH手順に高い優先順位が割り当てられる。
【0217】
さらには、上述した優先順位方式の両方の実施例を組み合わせることができる。この場合、ユーザ機器は、最初に、PDCCH命令による手順か自身が開始する手順かに基づいてRACH手順を順位付けした後、両方のグループのRACH手順を、対応するコンポーネントキャリアのセルインデックスに従って順位付けする。
【0218】
前述したように、本発明の別の詳細な実施形態においては、再送信される各プリアンブルの送信電力が一定のステップで増大するように(すなわちPRACH送信の試みが成功しなかった場合)、ユーザ機器によって実行されるRACHプリアンブルの電力ランピング手順を再設定する。
【0219】
ユーザ機器において、2つ以上のタイミングアドバンスグループに属する複数の上りリンクコンポーネントキャリアがアグリゲートされている場合、複数回のRACH手順が必要になる。一例としてハンドオーバーの場合、ユーザ機器は、ハンドオーバー先の基地局装置においてアクティブなキャリアのキャリアアグリゲーションを適用する必要がある。この場合、ハンドオーバー手順の一部として、アクティブなコンポーネントキャリアが含まれるタイミングアドバンスグループすべてを時間的に整列させる。これを連続的に行う場合、さらなる遅延が発生するが、RACH手順を同時に行う場合にも遅延が増す。なぜなら、異なる上りリンクセカンダリセル上でのRACH手順は、基地局装置がRACHプリアンブルのリソースを効率的に管理でき、1TTI中のPRACH送信が多すぎることがないように、ほとんどの場合わずかに互いに離されるためである。
【0220】
複数の(連続する)RACH送信が発生しうる別の状況は、時間的に整列していない複数の異なるタイミングアドバンスグループに属するいくつかの上りリンクコンポーネントキャリア上でデータ送信するように、ユーザ機器がスケジューリングされるときである(この状況は、長い期間にわたり非アクティブであったために起こることがある)。
【0221】
さらに、別の例示的な状況において、ユーザ機器は、コンポーネントキャリアがアクティブになるとき、それらをただちに時間的に整列するように要求されることがある。この場合、2つ以上のタイミングアドバンスグループに属するいくつかのコンポーネントキャリアを対象とするアクティブ化コマンドをユーザ機器が受信し、その時点でこれらのタイミングアドバンスグループが時間的に整列していないとき、ユーザ機器は、これらのタイミングアドバンスグループすべてに対してRACH手順を同時に実行する必要がある。
【0222】
したがって、本発明の例示的な実施形態によると、ユーザ機器は、RACH手順を連続して実行することによって発生する追加の遅延が減少するように、複数回のRACH手順を同時に実行する必要が生じることがある。このようにする目的は、1回のRACH手順の遅延時間に近づけることであり、したがって追加のRACH手順に起因する遅延が最小になる。
【0223】
例示的な実施例によると、ユーザ機器は、再送信の確率が最小になるように、RACHプリアンブル送信を実行するための送信電力を増大させる。PRACH電力[dBm]は、ユーザ機器によって次のように求められる。
【数8】
P
PRACHの最適な電力設定を見つける目的で、ユーザ機器には、以下に説明するいくつかのオプションがある。
【0224】
本発明の一実施例においては、PRACH手順の対象となる複数の上りリンクコンポーネントキャリアがユーザ機器においてアグリゲートされているとき、P
0_PRACHを増大させる。この場合、基地局装置が複数の異なるオフセット値(例えば、第1のオフセット値P
0_PRACHおよび第2のオフセット値P
0_PRACHmultiple)をユーザ機器にシグナリングするならば有利である。2つのオフセット値は、ユーザ機器ごとに設定することができる。第1のオフセット値P
0_PRACHは、ユーザ機器においてアグリゲートされている、PRACH手順の対象となるコンポーネントキャリアが1つのみであるときに使用することができる。このコンポーネントキャリアは、プライマリセルである。
【0225】
1回目のPRACH送信が成功する確率を高めて、PRACHの再送信によって生じる遅延を低減する目的で、第2のオフセットP
0_PRACHmultipleは、第1のオフセットP
0_PRACHよりも高い電力を有する。ユーザ機器において複数のコンポーネントキャリアがアグリゲートされており、複数回のRACH手順が実行される場合に、第2のオフセットP
0_PRACHmultipleを適用することができる。
【0226】
この場合、ユーザ機器は、PRACH電力[dBm]を以下のように求める。
【数9】
オフセットP
0_PRACHmultipleをシグナリングする別の実施例においては、ユーザ機器は、事前定義される、より高い値を選択する(すなわち、非特許文献5(http://www.3gpp.org/において入手可能であり、参照によって本明細書に組み込まれている)の6.2.2節に規定されているpreambleInitialReceivedTargetedPowerがとりうる値のうち、次に高い値(the next higher value))。これは、次に高い値(the next higher value)であってもよいし、またはn番目に高い値を選択する場合は事前定義されたnであってもよい。
【0227】
別の例示的な実施形態においては、上の式におけるNの値は、初期値N=1から開始するよりも、その時点の電力および経路損失の状況に対してすでに適しているように調整される。あるコンポーネントキャリア上で以前にRACH手順がすでに実行されている場合、ユーザ機器は、そのコンポーネントキャリア上での現在のRACH手順において1回目のプリアンブル送信を行う際に、初期値1を使用する代わりに、前回のRACHプリアンブル送信において成功することが判明している前回のNの値を再び使用する。そのコンポーネントキャリア上で以前にRACH手順が行われていない場合、ユーザ機器は最初に初期値1を使用することができる。この実施例は、RACH手順の対象のコンポーネントキャリアが1つのみであるときにも使用することができる。
【0228】
本発明のさらなる例示的な実施形態においては、上りリンクコンポーネントキャリア上のPRACH手順がその上りリンクコンポーネントキャリア上での最初のPRACH手順であるが、ユーザ機器が別の上りリンクコンポーネントキャリア上で以前にPRACH手順をすでに実行している状況において、Nの値を選択する。この場合、ユーザ機器は、別のコンポーネントキャリア上で最後に成功したときのNの値を使用することができ、最初のRACH手順を行うコンポーネントキャリアにおける最初のPRACH電力を求める目的で、その値を適用する。
【0229】
あるいは、ユーザ機器は最初のPRACHアクセスを必ずプライマリコンポーネントキャリア(すなわちプライマリセル、PCell)上で実行するため、別のコンポーネントキャリア上で新たにPRACHアクセスを行うときのNの初期値として、プライマリコンポーネントキャリア(PCell)上でPRACH送信が前回成功したときのNの値をつねに参照するように、ユーザ機器を設定することができる。
【0230】
上述したようにNを利用することの利点として、追加のパラメータを規定する必要がなく、ユーザ機器は、単純な規則を適用することで、PRACH手順を実行するための良好な送信電力設定が求められる。さらには、各コンポーネントキャリアについて、同じコンポーネントキャリアの電力レベルとして前回成功したPRACH送信のNの値を使用するようにユーザ機器が実施されているとき、上に提示した、または以下に提示する異なる実施例と組み合わせることによって、各RACH手順を個々に調整することができる。
【0231】
本発明のさらなる実施形態による別の実施例では、PRACH送信電力[dBm]を求める元の式に次のように追加される初期パラメータΔoffsetを導入することによって、最初のPRACH送信の電力レベルを調整する。
【数10】
この場合、値Δoffset
cは、RACH手順の対象となるアグリゲートされている各コンポーネントキャリアcごとに、基地局装置によって個々に設定することができる。したがって基地局装置は、ユーザ機器によって実行される最初のRACHの電力を、各タイミングアドバンスグループごとに個別に制御することができる。あるいは、プライマリコンポーネントキャリア(PCell)上でのRACH手順に使用する第1のオフセットΔoffset
PCellと、セカンダリセル(SCell)上でのRACH手順に使用する第2のオフセットΔoffset
SCellとを提供するならば有利であり得る。さらには、以前に成功することが判明したΔoffsetの値を使用する、PRACH手順の対象となるコンポーネントキャリアのグループを形成することも可能である。
【0232】
なお、特に明記していない限り、上述したすべての実施例は、組み合わせて使用することもできることに留意されたい。
【0233】
上述したように、現在の仕様では、例えば、上りリンクキャリアが時間的に整列していないときに上りリンクで送信するべきデータがユーザ機器に到着したとき、あるいはハンドオーバーを行うとき、基地局装置の命令(すなわちユーザ機器にRACH手順を開始させる命令を含んだPDCCHを基地局装置が送る)によって、RACH手順が開始される。
【0234】
本発明の別の実施形態によると、1つのユーザ機器において、アグリゲートされたコンポーネントキャリア上での複数回のRACH手順が起こり得るとき、RACH手順を開始するための新規のトリガーによって、RACH手順の全体的な遅延を低減することができる。このトリガーは、その時点において時間的に整列していないタイミングアドバンスグループに属するコンポーネントキャリアに対するアクティブ化コマンドとして実施される。ユーザ機器は、このアクティブ化コマンドを含んだMAC CEを受信すると、上りリンクでアック(ACK)メッセージを送り、所定の数のサブフレーム(例:2つのサブフレーム)だけ待機した後、RACH手順を開始する。基地局装置は、この時点でACKを受信しており、ユーザ機器がRACH手順を開始することを認識している。結果として、基地局装置によって送信されるコンポーネントキャリアアクティブ化コマンドは、RACH手順を開始させるトリガーとしての役割を果たすことができる。これによって、RACH手順の全体的な遅延が減少し、RACH手順を命令する目的で基地局装置からユーザ機器に送られる追加のPDCCH送信の時間が節約される。結果として、RACH手順をより早く開始することができ、遅延が減少する。
【0235】
本発明のさらなる例示的な実施形態においては、ユーザ機器に上りリンクデータが到着したときに、その時点で整列していないすべてのタイミングアドバンスグループに対するRACH手順の実行をトリガーするように、ユーザ機器が構成される。このように、その時点で整列していないすべてのタイミングアドバンスグループに対するRACH手順を実行するトリガーによって、基地局装置は、ユーザ機器におけるアクティブな上りリンクキャリアすべてを迅速にスケジューリングすることができる。
【0236】
本発明の代替実施形態においては、セカンダリコンポーネントキャリア(すなわちプライマリコンポーネントキャリア(PCell)以外のコンポーネントキャリア)上でのRACH手順は、必ずPDCCH命令に応えて実行するようにユーザ機器が構成されることを提案する。言い換えれば、ユーザ機器は、セカンダリコンポーネントキャリア(SCell)上のRACH手順を自身の判断で実行することが許可されない。この利点として、基地局装置は、ユーザ機器がRACH手順を開始する正確なタイミングと、対象のコンポーネントキャリアとを認識できるため、基地局装置は、ユーザ機器におけるセカンダリコンポーネントキャリア(SCell)上のRACH手順を完全に制御する。
【0237】
すでに上述したように、本発明の別の態様は、ランダムアクセス(RACH)手順のための送信電力を、複数の上りリンクコンポーネントキャリアを時間的に整列させるために要求されるRACH手順の回数に基づいて調整することである。
【0238】
タイミングアドバンスグループは、類似する伝搬遅延を受ける上りリンクコンポーネントキャリアをグループ化するために導入されたものである。結果として、基地局装置は、同じグループに属するすべての上りリンクコンポーネントキャリアのタイミングアドバンスを制御することが可能である。これを目的として、基地局装置は、最初に時間的に整列させる目的で単一のRACHメカニズムを利用することができる。すなわち、初期タイミングアドバンス手順(Initial Timing Advance Procedure)を実行し、その後にタイミングアドバンス(TA)更新コマンドをMAC制御要素(MAC CE)を介して送る。
【0239】
TA更新コマンドを含んだMAC制御要素と、それぞれのタイミングアドバンス(TA)グループとの間の対応付けの実施に関しては、いくつかのオプションが存在する。例えば、TA更新コマンドを含んだMAC制御要素とTAグループとの間の対応付けは、ユーザ機器の実装に委ねることができる。これに代えて、MAC制御要素の中にインジケータを提供することができ、ユーザ機器は、TA更新コマンドが含まれている受信したMAC制御要素から、それぞれのTAグループをインジケータによって識別することができる。さらに別の代替形態においては、基地局装置は、それぞれのTAグループに属する少なくとも1つの下りリンクコンポーネントキャリア上で、TAコマンドを含んだMAC制御要素を送信することが要求される。
【0240】
しかしながら、たとえTAグループが実施されている場合でも、ユーザ機器には、ランダムアクセス(RACH)手順の定義の結果としての制約が課される。すでに上述したように、RACH手順には処理リソースが要求され、これにより、移動端末が並列に実行できる上りリンク送信が制限される。特に、並列に実行できる上りリンク送信が制限されるのは、
図13に例示的に示したように、PRACH上りリンク送信(例:
図8のステップ801および
図9のステップ902におけるランダムアクセスプリアンブルの送信)とPUSCH送信とで時間的整列が異なるためである。
【0241】
さらに詳細には、PRACH送信と、PUSCH送信またはPUCCH送信とは、異なる上りリンクタイミングアドバンスを使用する(PRACH送信は、つねに下りリンクの受信タイミングに対して整列され、タイミングアドバンス(TA)が0であるのに対して、PUSCH送信およびPUCCH送信は、時間的に整列している上りリンクコンポーネントキャリア上でのみ許可され、タイミングアドバンス(TA)は0より大きい)。さらには、PRACH送信では、異なる時間長のガードタイムが適用される。したがって、PUSCH/PUCCH送信とPRACH送信とが同じ電力増幅器を介して同時に送信される場合、全体的な送信電力を調整することが困難であり、送信電力の変動が起こりうる。
図13は、PRACH送信とPUCCH/PUSCH送信とに異なるタイミングが適用される例示的な状況を示している。
【0242】
電力変動の原因となる不整合を回避するためには、タイミングアドバンスの異なる上りリンクコンポーネントキャリア上での上りリンク送信を同じ電力増幅器を介して同時に行うことを避けるべきである。この制約を満たすユーザ機器の例示的な実施例では、1つの電力増幅器を介するすべての上りリンク送信が、同じタイミングアドバンス(TA)グループに属するようにしている。したがって同じタイミングアドバンス値(時間的に同期した上りリンク送信を意味する)を使用する上りリンクコンポーネントキャリア上で、行われるようにしなければならない。さらに、ユーザ機器のこの例示的な実施例では、異なるタイミングアドバンスを有する上りリンクコンポーネントキャリア上での上りリンク送信においてその同じ電力増幅器を使用することは、差し控えなければならない。
【0243】
結果として、ユーザ機器において各タイミングアドバンス(TA)グループごとに、個別の「専用の」電力増幅器が割り当てられる。
【0244】
すなわち、本発明の実施形態によると、1つまたは複数の上りリンクコンポーネントキャリアを時間的に整列させるのに、要求される回数のRACH手順のみが実行され、1回または複数回のRACH手順すべてを実行するための送信電力は、要求されるRACH手順の回数に従って求められる。
【0245】
図17は、本発明のこの実施形態に対応する流れ図を示している。
図17に示したように、ユーザ機器には、時間的に整列させるべき上りリンクコンポーネントキャリアが設定されている。ユーザ機器は、RACH手順を実行する前に、上述したRACH制約を満たす有利な方法において、提供されている数の電力増幅器を利用するうえで要求されるRACH手順の回数を求める(ステップ1701)。いま、要求されるRACH手順の回数が、時間的に整列させる上りリンクコンポーネントキャリアの数よりも小さいものと想定すると、ユーザ機器においてエネルギが節約され、処理リソースの使用が制限される。
【0246】
要求されるRACH手順の回数を求めた後、ユーザ機器は、RACH手順のRACHプリアンブルのための送信電力を求める(ステップ1702)。その後、ユーザ機器は、要求されるRACH手順を、求めた送信電力において実行して、上りリンクコンポーネントキャリアを時間的に整列させる(ステップ1703)。
【0247】
例示的な実施例においては、ユーザ機器は、ステップ1701の結果として節約されるエネルギを利用することで、要求されるRACH手順において送信されるRACHプリアンブルの送信電力を求める。より詳細には、利用可能な送信電力の合計量を、より少ない回数の要求されるRACH手順によって除する場合(要求されるRACH手順の回数が、時間的に整列させる上りリンクコンポーネントキャリアの数よりも小さいものと想定する)、ユーザ機器は、各RACH手順を、より大きな送信電力を用いて実行することができる。
【0248】
別の例示的な実施例によると、ユーザ機器は、要求されるすべてのRACH手順の送信電力を、オフセットP
0_PRACHとオフセットP
0_PRACHmultipleとを切り替えることで求める。RACH手順を実行するための送信電力を求めるとき、1つのRACH手順が要求される場合には第1のオフセットP
0_PRACHを利用し、複数のRACH手順が要求される場合には、より高い値の第2のオフセットP
0_PRACHmultipleを利用する。これにより、ユーザ機器は、各RACH手順を実行するときの成功確率を高めて、RACH手順によって生じる遅延を低減することができる。
【0249】
さらに別の例示的な実施例によると、ユーザ機器は、要求されるすべてのRACH手順の送信電力を、同様にオフセットP
0_PRACHとオフセットP
0_PRACHmultipleとを切り替えることで求める。しかしながらこの例示的な実施例においては、ユーザ機器は、プライマリコンポーネントキャリア(PCell)上でRACH手順を実行するための送信電力を求めるときには第1のオフセットP
0_PRACHを利用し、セカンダリコンポーネントキャリア(SCell)上でRACH手順を実行する場合には、より高い値の第2のオフセットP
0_PRACHmultipleを利用する。2つ以上のセカンダリセル(SCell)が存在しうるため、セカンダリセル上でRACH手順を実行するための送信電力を増大させることで成功確率が高まり、したがってRACH手順によって生じる遅延が減少する。
【0250】
図18に示した本発明のさらに詳細な実施形態においては、ユーザ機器は、要求されるRACH手順の回数を、上りリンクコンポーネントキャリアが属しているタイミングアドバンスグループの数と、すでに時間的に整列している上りリンクコンポーネントキャリアを有するタイミングアドバンスグループとに基づいて求める。
【0251】
最初に、ユーザ機器は、1つまたは複数の上りリンクコンポーネントキャリアを時間的に整列させるため、上りリンクコンポーネントキャリアが属しているタイミングアドバンスグループの数を求める(ステップ1801)。これにより、ユーザ機器は、各タイミングアドバンスグループあたり最大で1回のRACH手順が実行されるようにすることができる。時間的に整列している上りリンクコンポーネントキャリアが存在しない場合、実行されるRACH手順の回数は、上りリンクコンポーネントキャリアが属しているタイミングアドバンスグループの数に等しい。
【0252】
第2のステップとして、ユーザ機器は、すでに時間的に整列している上りリンクコンポーネントキャリアが含まれるタイミングアドバンスグループを除外する(ステップ1802)。より詳細には、ユーザ機器は、上りリンクコンポーネントキャリアが属しているタイミングアドバンスグループのリスト(例:X
req個のTAグループ)から、すでに時間的に整列している上りリンクコンポーネントキャリアが属しているタイミングアドバンスグループ(例:X
align個のTAグループ)を除外する。本発明のこの実施形態の実施例においては、ユーザ機器は、同じタイミングアドバンスグループの異なる上りリンクコンポーネントキャリアを時間的に整列させる場合、すでに時間的に整列している上りリンクコンポーネントキャリアのタイミングアドバンス値をそのまま使用するように構成されている。
【0253】
第3のステップとして、ユーザ機器は、要求されるRACH手順の回数を、時間的に整列させる上りリンクコンポーネントキャリアが属しているタイミングアドバンスグループの数から、すでに時間的に整列している上りリンクコンポーネントキャリアが属しているタイミングアドバンスグループの数を減じた値m=X
req−X
alignとして求める(ステップ1803)。すでに時間的に整列している上りリンクコンポーネントキャリアが属しているタイミングアドバンスグループを除外することによって、要求されるRACH手順の回数が得られる。さらには、上りリンクコンポーネントキャリアの少なくとも1つが属しており、ユーザ機器によって時間的に整列されていないタイミングアドバンスグループのリストが得られる。言い換えれば、要求されるRACH手順の回数は、上りリンクコンポーネントキャリアの事前に設定される(または関連付けられる)タイミングアドバンスが存在しないものと想定したとき、上りリンクコンポーネントキャリアを時間的に整列させるために実行される最小のRACH手順に一致する。
【0254】
その後、ユーザ機器は、要求されるm回のRACH手順を実行するための送信電力を求める(ステップ1804)。このステップは
図17のステップ1702に対応しており、
図17に関連して提案されているものと同じ実施例によって達成することができる。
【0255】
次いで、ユーザ機器は、要求されるm回のRACH手順を、求めた送信電力において実行し、上りリンクコンポーネントキャリアを時間的に整列させる(ステップ1805)。
【0256】
上記の制約を考慮すると、本発明のユーザ機器の有利な一実施例においては、ランダムアクセスのプリアンブル送信がタイミングアドバンスグループあたり1回のみに制限され、同じタイミングアドバンスグループに属している上りリンクコンポーネントキャリアに対しては1回のみのPRACHプリアンブル送信が許可される。同じタイミングアドバンスグループに属している1つまたは複数の上りリンクコンポーネントキャリアのうち、ユーザ機器がどのコンポーネントキャリアに対してRACH手順を実行するかは、基地局装置によって設定することができる。別の代替実施例では、ユーザ機器がどのコンポーネントキャリアに対してRACH手順を実行するかは、ユーザ機器が選択することができる。この場合、ユーザ機器は、1つのタイミングアドバンスグループに属している上りリンクコンポーネントキャリアのうち、PRACHプリアンブルを送信する対象の1つのコンポーネントキャリアを選択する。
【0257】
図14は、ユーザ機器が、アグリゲートされている5つの上りリンクコンポーネントキャリアを有し、そのうちの4つの上りリンクコンポーネントキャリアがアクティブである例示的な構成を示している。すべての上りリンクコンポーネントキャリアは同じタイミングアドバンスグループに属しており、すなわち類似する伝搬遅延を受ける。この例示的な構成においては、第1の上りリンクコンポーネントキャリア(プライマリコンポーネントキャリア/PCellに対応させることができる)上でRACH手順が実行される。この例示的な構成は、3GPP規格のリリース10に記載されているキャリアアグリゲーションに準拠する。
【0258】
図15は、ユーザ機器において、異なる地理的場所(例:基地局装置およびリモートラジオヘッド)および異なる周波数帯域の上りリンクコンポーネントキャリアがアグリゲートされている例示的な構成を示している。基地局装置は上りリンクコンポーネントキャリア1,2,3を提供しており、これら上りリンクコンポーネントキャリア1,2,3はタイミングアドバンスグループ1にグループ化されている。上りリンクコンポーネントキャリア1,2,3は、類似する伝搬遅延を受ける。リモートラジオヘッドは、異なる地理的位置において異なる周波数帯域の上りリンクコンポーネントキャリア4,5を提供する。これらのコンポーネントキャリアは、第1の3つのコンポーネントキャリアと比較して異なる伝搬遅延を受ける。この伝搬遅延差に対処するため、上りリンクコンポーネントキャリア4,5には異なるタイミングアドバンスが割り当てられ、タイミングアドバンスグループ2にグループ化されている。
【0259】
タイミングアドバンスグループ1,2のそれぞれには、上述したように、許可されるRACH手順に関する制約を満たすため、異なる電力増幅器が関連付けられている。
【0260】
プライマリコンポーネントキャリア/PCellを有するタイミングアドバンスグループ1においては、RACH手順はプライマリコンポーネントキャリア/PCell上で許可され、他方のタイミングアドバンスグループ2においては、任意の上りリンクコンポーネントキャリア上でRACHプリアンブルを送信することができる。したがって、本発明の例示的な実施例においては、ユーザ機器は、タイミングアドバンスグループの上りリンクコンポーネントキャリアのうち、RACH手順を実行する1つの上りリンクコンポーネントキャリアを選択する。この実施形態の代替実施例においては、上りリンクコンポーネントキャリアのうちユーザ機器がRACH手順を実行するコンポーネントキャリアを基地局装置が設定できるように、基地局装置を構成する。
図15における例示的な構成においては、ユーザ機器は上りリンクコンポーネントキャリア4を使用してRACH手順を実行する。
【0261】
上の例においては、帯域幅のアグリゲーションを想定しており、移動端末は、同じTTIの中の複数の異なるコンポーネントキャリアを対象とする複数の上りリンクリソース割当てを受信する。上りリンクリソース割当ての優先順位(すなわち優先順位の順序)を導入する発想は、空間多重化の場合にも同様に適用することができる。空間多重化とはMIMO技術またはMIMO送信モードを意味し、複数の受信アンテナおよび送信アンテナを使用することで、複数のトランスポートブロックを同じ周波数上で同時に送信することができる。異なるトランスポートブロックの分離は、受信器側もしくは送信器側またはその両方における信号処理によって行われる。本質的には、トランスポートブロックは、異なるMIMOチャネル(すなわちMIMOレイヤ)上で、ただし同じコンポーネントキャリア上で送信される。
【0262】
空間多重化を使用するとき(LTE−Aの上りリンクにおいて考慮される)、上りリンクリソース割当ては、コンポーネントキャリアにおけるMIMOレイヤを対象とする上りリンクリソースを割り当てる。したがって、1つのコンポーネントキャリアにおける個々のMIMOレイヤのための複数の上りリンクリソース割当てが存在する。コンポーネントキャリアの優先順位の順序を導入するときと同様に、MIMOシナリオの場合にも、トランスポートブロックを生成するとき、MIMOレイヤの上りリンクリソース割当ての優先順位または優先順位の順序を使用する。MIMOレイヤの優先順位の順序は、(例えば無線ベアラの確立時に)事前に設定する、または前述したように、物理層シグナリング、MACシグナリング、またはRRCシグナリングによって伝えることができる。
【0263】
したがって、コンポーネントキャリアが1つであるシステム(例えばLTEリリース8)を想定すると、このコンポーネントキャリアの個々のMIMOレイヤのための上りリンクリソース割当てを累積させて仮想トランスポートブロックを形成する。この仮想トランスポートブロックに対して、前述したように連結式論理チャネル手順(joint logical channel procedure)を実行することができる。次いで、仮想トランスポートブロックの内容を、割当ての優先順位の順序に従って個々のトランスポートブロックに分割する必要がある。トランスポートブロックが移動端末のそれぞれのアンテナを介して送信される。
【0264】
同様に、連結式論理チャネル手順の並列化(parallelization)も可能である。この場合、コンポーネントキャリアのトランスポートブロック(すなわち上りリンクリソース割当て)の代わりに、MIMOレイヤのトランスポートブロック(すなわち上りリンクリソース割当て)を対象として処理する。
【0265】
さらには、本明細書に説明した本発明の発想は、帯域アグリゲーション(すなわち複数のコンポーネントキャリアが設定される)および空間多重化を提供するシステムにおいても使用することができる。この場合、上りリンクリソース割当ては、与えられたMIMOレイヤおよびコンポーネントキャリア上でトランスポートブロックを送信するための上りリンクリソースを割り当てる。さらに、このシステム設計の場合、連結式論理チャネル手順を、上述した方法と同様に使用することができる。
【0266】
この場合、上りリンクリソース割当ての「連結式」優先順位の順序として、MIMOレイヤおよびコンポーネントキャリアを1つの単位とする順序、あるいは第2のケースとして、個別の優先順位の順序、すなわち、MIMOレイヤの優先順位の順序(コンポーネントキャリアとは独立している)と、コンポーネントキャリアの優先順位の順序(MIMOレイヤとは独立している)とが存在しうることに留意されたい。さらに第3のケースとして、空間多重化を使用することが可能であり、ただしMIMOレイヤは等しい優先順位であり(したがってMIMOレイヤの優先順位の順序は存在しない)、コンポーネントキャリアの優先順位の順序は存在するものと想定する。
【0267】
第1のケース(MIMOレイヤおよびコンポーネントキャリアに基づく「連結式」優先順位付けが存在する)では、(連結式)論理チャネル優先順位付け手順を利用して、個々のコンポーネントキャリアおよびMIMOレイヤのトランスポートブロックを生成することができる。
【0268】
第2のケースおよび第3のケースでは、本発明の実施形態によると、最初に、MIMOレイヤの上りリンクリソース割当てが、(例えばMIMOレイヤの優先順位(存在時)に従って)コンポーネントキャリアごとに累積される。次いで、得られたコンポーネントキャリアの仮想トランスポートブロックが、コンポーネントキャリアの優先順位の順序に従って累積され、コンポーネントキャリアごとの累積から得られた仮想トランスポートブロックに対して(連結式)論理チャネル優先順位付けが実行される。
【0269】
コンポーネントキャリアごとの累積から得られた仮想トランスポートブロックに、論理チャネルのデータを入れた後、この仮想トランスポートブロックを、コンポーネントキャリアあたりの仮想トランスポートブロックに再び分割する。次いで、それらコンポーネントキャリアあたりの仮想トランスポートブロックを、各コンポーネントキャリアにおけるそれぞれのMIMOレイヤの個々のトランスポートブロックにさらに分割する。
【0270】
本発明のさらなる実施形態においては、第3のケース(MIMOレイヤの優先順位の順序は存在しない)において、コンポーネントキャリアあたり1つの上りリンクリソース割当て(すべてのMIMOレイヤをカバーする)を送ることができる。従ってこの場合、上の手順においてMIMOレイヤの上りリンクリソース割当てを累積するステップを省くことができる。しかしながら、分割して得られるコンポーネントキャリアあたりの仮想トランスポートブロックは、各コンポーネントキャリアにおけるMIMOレイヤのトランスポートブロックにさらに分割する必要がある(例えば、コンポーネントキャリアあたりの仮想トランスポートブロックを均等に分割して各MIMOレイヤに割り当てて送信する)。
【0271】
本発明のいくつかの実施形態においては、本発明の発想は、改良された3GPP LTEシステム(エアインタフェースにおいて1つのコンポーネントキャリアが設定される)に関連して説明してある。本発明の発想は、3GPPにおいて現在検討されている3GPP LTE−A(LTE−A)システムにも等しく適用することができる。
【0272】
本発明の別の実施形態は、上述したさまざまな実施形態をハードウェアおよびソフトウェアを使用して実施することに関する。本発明のさまざまな実施形態は、コンピューティングデバイス(プロセッサ)を使用して実施または実行できることが認識される。コンピューティングデバイスまたはプロセッサは、例えば、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはその他のプログラマブルロジックデバイスとすることができる。本発明のさまざまな実施形態は、これらのデバイスの組合せによって実行あるいは具体化することもできる。
【0273】
さらに、本発明のさまざまな実施形態は、ソフトウェアモジュールによって実施することもでき、これらのソフトウェアモジュールは、プロセッサによって実行される、あるいはハードウェアにおいて直接実行される。さらに、ソフトウェアモジュールとハードウェア実装とを組み合わせることも可能である。ソフトウェアモジュールは、任意の種類のコンピュータ可読記憶媒体、例えば、RAM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、レジスタ、ハードディスク、CD−ROM、DVDなどに格納することができる。
【0274】
さらには、本発明のさまざまな実施形態の個々の特徴は、個別に、または任意の組合せとして、別の発明の主題とすることができることに留意されたい。
【0275】
具体的な実施形態において示した本発明には、広義に記載されている本発明の概念または範囲から逸脱することなく膨大なバリエーションもしくは変更形態を創案できることが、当業者には理解されるであろう。したがって、本発明の実施形態は、あらゆる点において例示を目的としており、本発明を制限するものではない。