(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6024945
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】ネジ部材の締着部構造
(51)【国際特許分類】
F16J 15/06 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
F16J15/06 M
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-124154(P2012-124154)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-249879(P2013-249879A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107320
【弁理士】
【氏名又は名称】高塚 一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤波 和人
【審査官】
谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭49−000359(JP,U)
【文献】
特開2002−250329(JP,A)
【文献】
実開昭57−080712(JP,U)
【文献】
特開平08−042701(JP,A)
【文献】
実開昭61−188015(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジ穴(11)を備え、前記ネジ穴(11)の開口端部に外方に向って拡径する円錐面(12)を有するネジ穴部材(1)と、頭部(21)と前記頭部(21)の一端面側から伸びる軸部(22)とを備え、前記軸部(22)の外周面は、前記頭部(21)側からネジを設けていない外周面(221)と、前記外周面(221)の一端側からネジを設けたネジ部(222)とを有するネジ部材(2)と、前記ネジ穴(11)に前記ネジ部材(2)を締着した際に、前記円錐面(12)、前記外周面(221)及び前記頭部(21)の一端面により囲まれる環状空間(3)内に配置されるゴム状弾性材製ガスケット(4)とよりなるネジ部材の締着部構造において、
前記ガスケット(4)が、内周面側の一つの弧と外周面側の一つの弦から構成される外形を具備する断面であって、前記外周面側の一つの弦に相当する環状面(41)を備え、前記環状面(41)の最小外径(X)が、前記ネジ穴(11)の開口端部の角部(13)の直径(Y)と等しいかそれよりも小さく、前記円錐面(12)の最小径(Z)より大きいことを特徴とするネジ部材の締着部構造。
【請求項2】
前記環状面(41)が、ガスケット(4)の頂部(42)より外径側に存在することを特徴とする請求項1記載のネジ部材の締着部構造。
【請求項3】
前記環状面(41)が、前記円錐面(12)と相似形状の円錐面に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のネジ部材の締着部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ部材の締着部
構造に関するものである。
また、ネジ部に設けたテーパ溝内に使用されるネジ部材の締着部
構造に関する。
【0002】
更に詳しくは、JIS B 2351のネジ部に設けたテーパ溝内に使用して有益なネジ部材の締着部
構造に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、ネジ部に設けたテーパ溝内に使用されるネジ部材の締着部
構造としては、
図5に示す構造のものが提案された。
【0004】
すなわち、従来のネジ部材の締着部
構造は、ネジ穴11を備え、このネジ穴11の開口端部に外方に向って拡径する円錐面12を有するネジ穴部材1と、頭部21とこの頭部21の一端面側から伸びる軸部22とを備え、この軸部22の外周面は、頭部21側からネジを設けていない外周面221と、この外周面221の一端側(図上下端側)からネジを設けたネジ部222とを有するネジ部材2と、ネジ穴11にネジ部材2を締着した際に、円錐面12、外周面221及び頭部21の一端面により囲まれる環状空間3内に配置されるゴム状弾性材製のOリング状ガスケット40とより構成されている。
【0005】
しかし、この種Oリング状ガスケット40は、ネジ穴11にネジ部材2を締着する際に、
図6に示す様に、ネジ穴11の開口端部の角部13に当接し損傷を受ける問題を惹起した。
【0006】
また、この種Oリング状ガスケット40は、ネジ穴11にネジ部材2を締着する際に、
図7に示す様に、ネジ部材2の回転力や、Oリング状ガスケット40と頭部21との摩擦力等の影響で環状空間3内に収まらず、一部が環状空間3の外にはみ出す問題を招来した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−322469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上の点に鑑みて、ネジ穴にネジ部材を締着する際に、ゴム状弾性材製ガスケットが損傷を受けたり、ガスケットの一部が配置されるべき環状空間から外にはみ出す事を効果的に回避出来る、密封性が良好なネジ部材の締着部
構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明にあっては、ネジ穴を備え、前記ネジ穴の開口端部に外方に向って拡径する円錐面を有するネジ穴部材と、頭部と前記頭部の一端面側から伸びる軸部とを備え、前記軸部の外周面は、前記頭部側からネジを設けていない外周面と、前記外周面の一端側からネジを設けたネジ部とを有するネジ部材と、前記ネジ穴に前記ネジ部材を締着した際に、前記円錐面、前記外周面及び前記頭部の一端面により囲まれる環状空間内に配置されるゴム状弾性材製ガスケットとよりなるネジ部材の締着部
構造において、前記ガスケットが
、内周面側の一つの弧と外周面側の一つの弦から構成される外形を具備する断面であって、前記外周面側の一つの弦に相当する環状面を備え、前記環状面の最小外径が、前記ネジ穴の開口端部の角部の直径と等しいかそれよりも小さく、前記円錐面の最小径より大きい構成としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1記載の発明のネジ部材の締着部
構造によれば、ガスケットが、円形断面の外周面側を切欠いた断面が直線状の環状面を備える構成としている為、ネジ穴にネジ部材を締着する際に、ゴム状弾性材製ガスケットが損傷を受けたり、ガスケットの一部が配置されるべき環状空間から外にはみ出す事を効果的に回避出来る
ものであって、環状面の最小外径が、ネジ穴の開口端部の角部の直径と等しいかそれよりも小さく、円錐面の最小径より大きくしている為、ガスケットがより円滑に環状空間内に収まり、ガスケットの損傷をより効果的に阻止出来る。
【0011】
更に、請求項
2記載の発明のネジ部材の締着部
構造によれば、環状面が、ガスケットの頂部より外径側に存在する構成としている為、Oリング形状の本来のガスケット機能を損なう事無く、密封性がより良好なネジ部材の締着部用ガスケットを提供する事が出来る。
更に、請求項
3記載の発明のネジ部材の締着部
構造によれば、環状面が、円錐面と相似形状の円錐面に形成されている為、ガスケットがより円滑に環状空間内に収まると共に、環状面が円錐面とより広い面で接触する事により、ガスケットのねじれをより効果的に回避出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るネジ部材の締着部
構造の縦断面図。
【
図2】
図1のガスケットをネジ部材の締着部に装着し、締着途中の縦断面図。
【
図3】
図2の状態からネジ部材を完全に締着した状態の縦断面図。
【
図4】本発明に係る他のネジ部材の締着部
構造の縦断面図。
【
図5】従来技術に係るOリング状ガスケットを装着し、ネジ部材を完全に締着した状態の縦断面図。
【
図6】従来技術に係るOリング状ガスケットの締着途中の不具合の一例を示す縦断面図。
【
図7】従来技術に係るOリング状ガスケットの締着途中の不具合の他の例を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
図1乃至
図3に基づき本発明に係る実施の形態について説明する。
【0014】
本発明のネジ部材の締着部
構造は、ネジ穴11を備え、このネジ穴11の開口端部に外方に向って拡径する円錐面12を有するネジ穴部材1と、頭部21とこの頭部21の一端面側から伸びる軸部22とを備え、軸部22の外周面は、頭部21側からネジを設けていない外周面221と、この外周面221の一端側からネジを設けたネジ部222とを有するネジ部材2と、ネジ穴11にネジ部材2を締着した際に、円錐面12、外周面221及び頭部21の一端面により囲まれる環状空間3内に配置されるゴム状弾性材製ガスケット4とにより構成されている。
【0015】
そして、このガスケット4は、
内周面側の一つの弧と外周面側の一つの弦から構成される外形を具備する断面であって、前記外周面側の一つの弦に相当する環状面41を備えている。
すなわち環状面41は、円筒形状を成している
【0016】
この様な構成としている為、ネジ穴11にネジ部材2を締着する際に、ゴム状弾性材製ガスケット4が損傷を受けたり、ガスケット4の一部が配置されるべき環状空間3から外にはみ出す事を効果的に回避出来る、密封性が良好なネジ部材2の締着部
構造を提供する事が出来る。
【0017】
これは、ネジ穴11の開口端部の角部13に当接し損傷を受けるガスケット4の外周側が切除されて存在しない事、及び環状面41が円錐面12と広い面で接する為、ガスケット4のねじれをより効果的に回避出来る事に起因している。
【0018】
また、環状面41の外径Xは、ネジ穴11の開口端部の角部13の直径Yと等しいかそれよりも小さく、円錐面12の最小径Zより大きく設計されている。
【0019】
この為、ガスケット4がより円滑に環状空間3内に収まり、ガスケット4の損傷をより効果的に阻止出来ると共に、ガスケット4が環状空間3内で安定した密封機能を発揮出来る。
【0020】
更に、環状面41は、ガスケット4の頂部42より外径側に存在する構成としている。
より具体的には、環状面41を形成するために切欠かれる量は、円形断面のガスケット4の断面積の半分より少ない事を意味する。
【0021】
この様な構成としている為、Oリング形状の本来のガスケット4の機能を損なう事無く、密封性がより良好なネジ部材の締着部
構造を提供する事が出来る。
【0022】
ついで、
図4に基づき本発明に係る他の実施の形態について説明する。
上述した実施の形態と相違する点は、環状面41が、円筒形状では無く、円錐面12と相似形状の円錐面に形成されていることである。
【0023】
そして、この環状面41の最小外径X(図上下端側)は、ネジ穴11の開口端部の角部13の直径Yと等しいかそれよりも小さく、円錐面12の最小径Zより大きくしている為、ガスケット4がより円滑に環状空間3内に収まり、ガスケット4の損傷をより効果的に阻止出来る。
更に、環状面41が円錐面12とより広い面で接触する事により、ガスケット4のねじれをより効果的に回避出来る。
【0024】
本発明で使用されるネジ部材の締着部用ガスケット4の材質は、FKM、シリコーンゴム、EPDM、ニトリルゴム、アクリルゴム、HNBR等の各種のゴム状弾性体を適宜選択して使用出来る。
【0025】
また、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
JIS B 2351のネジ部に設けたテーパ溝内に使用して有益である。
【符号の説明】
【0027】
1 ネジ穴部材
2 ネジ部材
3 環状空間
4 ガスケット
11 ネジ穴
12 円錐面
13 角部
21 頭部
22 軸部
41 環状面
42 頂部
221外周面
222ネジ部