【実施例】
【0037】
本発明を以下の実施例および比較例からなる試験例によりさらに詳しく説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
以下の説明において、特に断りのない限り「部」は「重量部」を意味する。
試験例において単糖類および少糖類を用いた実施例はすべて参考例である。
【0038】
(試験例1)
水ガラス100部(Na
2O濃度:14.9重量%、SiO
2濃度:31.78重量%、モル比Na
2O/SiO
2:2.2、冨士化学株式会社製、製品名:1号水ガラス50°、以下同様)に、ショ糖(HIRANO社製、上白糖、以下同様)25部を添加・溶解させて水溶液を得た。
水ガラス100部にショ糖10部、5部、2.5部、1.6部および1.3部をそれぞれ添加したこと以外は上記と同様にして水溶液を得た。
得られたショ糖を含む水ガラスの水溶液難燃性能を、水ガラスおよびショ糖水溶液(水100部に対してショ糖17部を添加・溶解した水溶液)と比較評価した。
【0039】
難燃(耐火)性能の評価を、消防法施行規則第4条の3第3〜7項に規定された防炎物品の防炎性能試験基準(JIS規格A1322に相当)の45°メッケルバーナー法に基づいて実施した。
具体的には、試験体(約300mm×200mm)を水平面から45°傾け、炎長65mmのメッケルバーナーで試験体の下部から2分間、試験体が着火せず貫通しない場合には連続して最長12〜14分間まで接炎(加熱)し、その際の炭化長、炭化面積、貫通時間および加熱中の試験体上面の温度変化を調べた。
【0040】
介護用マットや住宅用断熱材に使用される硬質ウレタンフォーム(厚さ10mm、密度0.05g/cm
3)からなる試験体の表面に、ふすま・障子のり用の刷毛(毛足30mm×幅73mm)を用いて、各水溶液を塗布・乾燥した。
予め試験体の重量を計量しておき、その塗布・乾燥後の重量とから重量増加率(WPG:%)および難燃成分の付着量(g/cm
2)を求めた。
得られた結果を表1および2にまとめて示す。
【0041】
未貫通の試験体について、接炎状態で背面(接炎面と反対の表面)の温度を12分間継続してモニターした。
得られた結果を
図1に示す。
【0042】
(試験例2)
ショ糖の代わりにトレハロース(林原社製、トレハ)を用いたこと以外は、試験例1と同様にして、水溶液を調製し、それらを硬質ウレタンフォームに塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
得られた結果を表1および2にまとめて示す。
未貫通の試験体について、接炎状態で背面(接炎面と反対の表面)の温度を12分間継続してモニターした。
得られた結果を
図2に示す。
【0043】
(試験例3)
ショ糖の代わりにグルコース(ブドウ糖、和光純薬社製)を用いたこと以外は、試験例1と同様にして、水溶液を調製し、それらを硬質ウレタンフォームに塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
得られた結果を表1および2にまとめて示す。
未貫通の試験体について、接炎状態で背面(接炎面と反対の表面)の温度を12分間継続してモニターした。
得られた結果を
図2に示す。
【0044】
(試験例4)
ショ糖の代わりにフルクトース(果糖、和光純薬社製)を用いたこと以外は、試験例1と同様にして、水溶液を調製し、それらを硬質ウレタンフォームに塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
得られた結果を表1および2にまとめて示す。
【0045】
(試験例5)
ショ糖の代わりにデンプン(幸田商店製、馬鈴薯片栗粉、以下同様)を用い、添加量を6部、3部および1部としたこと以外は、試験例1と同様にして、水溶液を調製し、それらを硬質ウレタンフォームに塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
得られた結果を表1および2にまとめて示す。
未貫通の試験体について、接炎状態で背面(接炎面と反対の表面)の温度を12分間継続してモニターした。
得られた結果を
図3に示す。
【0046】
(試験例6)
ショ糖の代わりにグルコマンナン(清水化学社製、レオレックスLM)を用い、添加量を6部、3部および1部としたこと以外は、試験例1と同様にして、水溶液を調製し、それらを硬質ウレタンフォームに塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
得られた結果を表1および2にまとめて示す。
【0047】
(試験例7)
ショ糖の代わりにヒドロキシプロピルメチルセルロース(水溶性セルロース、信越化学製、メトローズ60SH)を用い、添加量を6部、3部および1部としたこと以外は、試験例1と同様にして、水溶液を調製し、それらを硬質ウレタンフォームに塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
得られた結果を表1および2にまとめて示す。
【0048】
(試験例8)
ショ糖の代わりにセロビオース(松谷化学製、セロビオース90)を用いたこと以外は、試験例1と同様にして、水溶液を調製し、それらを硬質ウレタンフォームに塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
得られた結果を表1および2にまとめて示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
(試験例9)
ショ糖の代わりにデンプン5部を用い、硬質ウレタンフォームの代わりにポリプロピレン板(厚さ1mm)を用いたこと以外は、試験例1と同様にして、水溶液を調製し、それをポリプロピレン板に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
表3に示すように、一部の試験において、基材・難燃剤間に塗布するプライマーとして、ポリプロピレン(PP)用接着剤(コニシ株式会社製、製品名:ボンドウルトラ多用途SU、以下同様)を塗布量30重量部で塗布した。
得られた結果を表3および4にまとめて示す。
【0052】
(試験例10)
ポリプロピレン板の代わりにポリエチレン板(厚さ1mm)を用いたこと以外は、試験例9と同様にして、水溶液を調製し、それをポリエチレン板に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
表3に示すように、一部の試験において、基材・難燃剤間に塗布するプライマーとして、ポリプロピレン(PP)用接着剤を塗布量30重量部で塗布した。
得られた結果を表3および4にまとめて示す。
【0053】
(試験例11)
ポリプロピレン板の代わりに硬質ウレタンフォーム(厚さ10mm)を用いたこと以外は、試験例9と同様にして、水溶液を調製し、それを硬質ウレタンフォームに塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
得られた結果を表3および4にまとめて示す。
【0054】
(試験例12)
ポリプロピレン板の代わりに軟質ウレタンフォーム(厚さ10mm)を用いたこと以外は、試験例9と同様にして、水溶液を調製し、それを軟質ウレタンフォームに塗布または含浸・乾燥して難燃性能を評価した。
得られた結果を表3および4にまとめて示す。
【0055】
(試験例13)
ポリプロピレン板の代わりにポリプロピレン不織布(日本製紙クレシア製、キムテックス、厚さ0.7mm)を用いたこと以外は、試験例9と同様にして、水溶液を調製し、それをポリプロピレン不織布に塗布または含浸・乾燥して難燃性能を評価した。
得られた結果を表3および4にまとめて示す。
【0056】
また、難燃性能の評価を、FMVSS302(米国自動車安全基準の燃焼性試験)に基づいて実施した。
具体的には、上記と同様にして作成した試験体(305mm×305mm)をU字枠に挟んで水平にし、試験体の真下18.8mmの位置にバーナー口を設置し、15秒間接炎(炎長19mm)し、炎が試験体の点火端から38mmおよび325mmの線を通過する間の時間を測定した。また、試験体の点火端から287mmの位置まで燃焼が継続しない場合には、消炎までの時間と試験体の点火端から長さを測定した。これらの測定から、燃焼時間(秒)および燃焼速度(mm/秒)を求めた。
未処理のポリプロピレン不織布は燃焼時間88秒および燃焼速度69mm/秒であったが、デンプンを含む水ガラスを塗布・乾燥した試験体は着火せず、燃焼時間0秒および燃焼速度0mm/秒であった。
また、水ガラスおよびデンプン水溶液をそれぞれ塗布・乾燥した試験体は、それぞれ燃焼時間81秒および77秒、燃焼速度43mm/秒および燃焼速度50mm/秒であった。
【0057】
(試験例14)
ポリプロピレン板の代わりにポリウレタンフィルム(厚さ0.3mm)を用いたこと以外は、試験例9と同様にして、水溶液を調製し、それをポリウレタンフィルム不織布に塗布または含浸・乾燥して難燃性能を評価した。
得られた結果を表3および4にまとめて示す。
【0058】
(試験例15)
ポリプロピレン板の代わりに発泡ポリスチレンフォーム板(厚さ10mm)を用いたこと以外は、試験例9と同様にして、水溶液を調製し、それを発泡ポリスチレンフォーム板に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
得られた結果を表3および4にまとめて示す。
【0059】
(試験例16)
デンプンの代わりにα−シクロデキストリン(C
36H
60O
30、分子量973、純正化学製)を用いたこと以外は、試験例9と同様にして、水溶液を調製し、それをポリプロピレン板に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
表3に示すように、一部の試験において、基材・難燃剤間に塗布するプライマーとして、ポリプロピレン(PP)用接着剤を塗布量30重量部で塗布した。
得られた結果を表3および4にまとめて示す。
【0060】
(試験例17)
デンプン5部を含有する水ガラスを、付着量0.025g/cm
2になるようにポリプロピレン板(厚さ1mm)に塗布したこと以外は、試験例9と同様にして、難燃性能を評価した。
表3に示すように、基材・難燃剤間に塗布するプライマーとして、ポリプロピレン(PP)用接着剤を塗布量30重量部で塗布した。
得られた結果を表3および4にまとめて示す。
【0061】
(試験例18)
デンプン5部を含有する水ガラスを、付着量0.025g/cm
2になるようにポリプロピレン板(厚さ0.75mm)に塗布したこと以外は、試験例9と同様にして、難燃性能を評価した。
表3に示すように、基材・難燃剤間に塗布するプライマーとして、ポリプロピレン(PP)用接着剤を塗布量30重量部で塗布した。
得られた結果を表3および4にまとめて示す。
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
(試験例19)
水ガラス(Na
2O濃度:17.73重量%、SiO
2濃度:35.58重量%、モル比Na
2O/SiO
2:2.13、冨士化学株式会社製、品種:1号59°)60部および水40部を含む水ガラス水溶液を用いたこと以外は、試験例1と同様にして、ショ糖を添加・溶解させて水溶液を調製し、それを硬質ウレタンフォームに塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
得られた結果を表5および6にまとめて示す。
【0065】
(試験例20)
ショ糖の代わりにデンプン5部を用いたこと以外は、試験例19と同様にして、水溶液を調製し、それをポリプロピレン板(厚さ1mm)に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
得られた結果を表5および6にまとめて示す。
【0066】
(試験例21)
水ガラス(Na
2O濃度:11.72重量%、SiO
2濃度:28.65重量%、モル比Na
2O/SiO
2:2.52、冨士化学株式会社製、品種:2号)75部および水25部を含む水ガラス水溶液を用いたこと以外は、試験例1と同様にして、ショ糖を添加・溶解させて水溶液を調製し、それを硬質ウレタンフォームに塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
得られた結果を表5および6にまとめて示す。
【0067】
(試験例22)
ショ糖の代わりにデンプン5部を用いたこと以外は、試験例21と同様にして、水溶液を調製し、それをポリプロピレン板(厚さ1mm)に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
得られた結果を表5および6にまとめて示す。
【0068】
(試験例23)
水ガラス(Na
2O濃度:9.33重量%、SiO
2濃度:28.86重量%、モル比Na
2O/SiO
2:3.19、冨士化学株式会社製、品種:3号)80部および水20部を含む水ガラス水溶液を用いたこと以外は、試験例1と同様にして、ショ糖を添加・溶解させて水溶液を調製し、それを硬質ウレタンフォームに塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
得られた結果を表5および6にまとめて示す。
【0069】
(試験例24)
ショ糖の代わりにデンプン5部を用いたこと以外は、試験例23と同様にして、水溶液を調製し、それをポリプロピレン板(厚さ1mm)に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
得られた結果を表5および6にまとめて示す。
【0070】
(試験例25)
水ガラス(Na
2O濃度:9.9重量%、SiO
2濃度:30.21重量%、モル比Na
2O/SiO
2:3.15、冨士化学株式会社製、品種:3号)80部、水20部およびデンプン5部を含む水溶液を用いたこと、ならびに硬質ウレタンフォームの代わりにポリプロピレン板(厚さ1mm)を用いたこと以外は、試験例1と同様にして、難燃性能を評価した。
得られた結果を表5および6にまとめて示す。
【0071】
(試験例26)
水ガラス(Na
2O濃度:7.5重量%、SiO
2濃度:24.5重量%、モル比Na
2O/SiO
2:3.37、冨士化学株式会社製、品種:特3号)100部およびデンプン5部を含む水溶液を用いたこと、ならびに硬質ウレタンフォームの代わりにポリプロピレン板(厚さ1mm)を用いたこと以外は、試験例1と同様にして、難燃性能を評価した。
得られた結果を表5および6にまとめて示す。
【0072】
(試験例27)
水ガラス(Na
2O濃度:5.8重量%、SiO
2濃度:22.5重量%、モル比Na
2O/SiO
2:4、冨士化学株式会社製、品種:特3号)100部およびデンプン5部を含む水溶液を用いたこと、ならびに硬質ウレタンフォームの代わりにポリプロピレン板(厚さ1mm)を用いたこと以外は、試験例1と同様にして、難燃性能を評価した。
得られた結果を表5および6にまとめて示す。
【0073】
【表5】
【0074】
【表6】
【0075】
(試験例28)
試験例19で用いた水ガラス(Na
2O濃度:17.73重量%、SiO
2濃度:35.58重量%、モル比Na
2O/SiO
2:2.13、冨士化学株式会社製、品種:1号59°)200kgを、次の条件でスプレードライ法により蒸発乾固(粒体化)した。
装置:日本化学機械製造株式会社製
ノズル径:0.84mm
スワール:SC
噴霧圧力:120kgf/cm
2(12MPa)
噴霧量:約100L/h
熱風量:40Nm
3/min.
熱風温度:160℃
排風温度:79.6〜84.1℃(コーン部)
75.1〜80.7℃(サイクロン部)
【0076】
次の物性値を有するきれいな球形の粒子が得られた(パウダー回収量103kg)。
水分量:7%(300℃×1時間の乾燥減量値)
粒度:10〜30μm(電子顕微鏡写真より計測)
平均粒径:14.3μm
嵩比重:0.93(さわり比重)
0.72(みかけ比重)
このように、本発明のケイ素化合物の水溶液を公知の方法により蒸発乾固(粒体化)することができた。
【0077】
得られた粉末12部およびデンプン3部を、加熱溶融した低密度ポリエチレン樹脂(住友化学社製、以下同様)100部に配合して、溶融混練により配合物を均一に分散させた。次いで、押出成型機(Hitz日立造船製)を用いて、得られた混練物を厚さ1mmの板状に成形し、ポリエチレン板の試験体を得て、試験例1と同様にして難燃性能を評価した。
得られた結果を表7および8にまとめて示す。
【0078】
(試験例29)
低密度ポリエチレン樹脂の代わりにポリプロピレン樹脂(住友化学社製、以下同様)を用いたこと以外は、試験例28と同様にして、ポリプロピレン板の試験体の難燃性能を評価した。
得られた結果を表7および8にまとめて示す。
【0079】
(試験例30)
水ガラスの粉末18部およびデンプン5部を用いたこと以外は、試験例28と同様にして、ポリエチレン板の試験体の難燃性能を評価した。
得られた結果を表7および8にまとめて示す。
【0080】
(試験例31)
低密度ポリエチレン樹脂の代わりにポリプロピレン樹脂を用いたこと以外は、試験例30と同様にして、ポリプロピレン板の試験体の難燃性能を評価した。
得られた結果を表7および8にまとめて示す。
【0081】
【表7】
【0082】
【表8】