【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1特徴構成は溶剤回収設備に係り、その特徴は、
処理炉に換気用空気を供給する給気路に、前記処理炉に送る換気用空気を一次予熱する一次予熱器と、この一次予熱器で一次予熱した換気用空気をさらに二次予熱する二次予熱器とを配置し、
前記給気路からの換気用空気の供給に伴い前記処理炉から溶剤蒸気とともに排出される高温の排出空気を導く排気路に、前記処理炉からの排出空気に含まれる溶剤蒸気を冷却により凝縮させて排出空気から分離回収する冷却回収部と、この冷却回収部を通過した排出空気を加熱する再熱器と、この再熱器で加熱した排出空気に残存する溶剤蒸気を吸着剤に吸着させて排出空気から分離回収する吸着回収部とを配置し、
前記冷却回収部には、前記処理炉からの排出空気を予冷する予冷器と、この予冷器で予冷した排出空気をさらに一次冷却する一次冷却器と、この一次冷却器で一次冷却した排出空気を冷熱源機から供給される低温熱媒と熱交換させてさらに二次冷却する二次冷却器とを設け、
前記予冷器と前記二次予熱器との間で第1熱媒を循環させる温熱回収用の第1循環路を設けて、
前記予冷器では、前記処理炉からの排出空気を前記二次予熱器での換気用空気との熱交換で温度低下した第1熱媒と熱交換させて予冷し、
かつ、前記二次予熱器では、一次予熱後の換気用空気を前記予冷器での排出空気との熱交換で温度上昇した第1熱媒と熱交換させて二次予熱し、
前記一次予熱器と前記再熱器と前記一次冷却器とにわたってその順で第2熱媒を循環させる冷熱回収用の第2循環路を設けて、
前記一次予熱器では、前記処理炉に送る換気用空気を前記一次冷却器での排出空気との熱交換で温度上昇した第2熱媒と熱交換させて一次予熱し、
かつ、前記再熱器では、二次冷却後の排出空気を前記一次予熱器での換気用空気との熱交換で温度低下した第2熱媒と熱交換させて加熱し、
かつ、前記一次冷却器では、予冷後の排出空気を前記再熱器での排出空気との熱交換で温度低下した第2熱媒と熱交換させて一次冷却する溶剤回収設備であって、
前記冷却回収部において前記予冷器と前記一次冷却器との間に、予冷後の排出空気を加湿する加湿器を配置してある点にある。
【0011】
ところで、
図2に示すグラフにおいてA点は、溶剤蒸気濃度di(NMP溶剤)が1000ppmで絶対湿度xが2g/kg′の空気を二次冷却器で12℃まで冷却した場合の状態点、B点は、溶剤蒸気濃度di(NMP溶剤)が同じく1000ppmで絶対湿度xが8g/kg′の空気を二次冷却器で20℃まで冷却した場合の状態点であり、これらA点,B点ともに溶剤蒸気濃度do(即ち、二次冷却器の空気出口における溶剤蒸気濃度)は200ppmに低下しており、800ppm分の溶剤蒸気が二次冷却器での冷却により凝縮している。
【0012】
なお、温度tが12℃の空気の場合、飽和状態における絶対湿度xは8.72g/kg′であり、A点の絶対湿度x=2g/kg′より高く、また、温度tが20℃の空気の場合、飽和状態における絶対湿度xは14.69g/kg′であり、B点の絶対湿度x=8g/kg′より高く、A点,B点の空気はともに二次冷却器での冷却において水分凝縮がなかったものである。
【0013】
このことから判るように、空気の絶対湿度xが高い方が二次冷却器の空気出口における空気温度t(即ち、二次冷却器での冷却温度)が高くても冷却凝縮による溶剤蒸気の分離回収効率が高くなる。
【0014】
このことに着目して上記構成では(
図1参照)、冷却回収部9における予冷器P1と一次冷却器C1との間に加湿器16を配置してあり、この加湿器16により予冷後の排出空気EAを加湿して後続冷却器、特に二次冷却器C2の空気入口における排出空気EAの絶対湿度xを適度に高めることで、このような加湿器16の装備が無い先述の従来設備(
図4参照)に比べ、二次冷却器C2の空気出口における排出空気EAの温度t(即ち、二次冷却器C2での冷却温度)を高くして、その分、二次冷却器C2での必要二次冷却量を低減しながらも、冷却凝縮による溶剤蒸気の分離回収効率を高く確保することができる。
【0015】
したがって、上記構成によれば、従来設備に比べ、二次冷却器C2に供給する低温熱媒Cwを冷却生成する冷凍機などの冷熱源機25をさらに効果的に小容量化することができて、一層高い省エネルギ効果を得ることができる。
【0016】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
冷却水を外気と熱交換させて冷却する冷却塔を設けるとともに、
前記冷却回収部において前記一次冷却器と前記二次冷却器との間に、一次冷却後の排出空気を前記冷却塔から供給される冷却水と熱交換させて二次予冷するフリークーリング用の二次予冷器を配置してある点にある。
【0017】
この構成によれば(
図1参照)、冷却塔28において外気OAとの熱交換で冷却した冷却水Wcを冷却用熱媒とするフリークーリング用の二次予冷器P2により外気OAを冷却源とする形態で一次冷却後の排出空気EAを二次冷却に先立ち二次予冷することで、二次冷却器C2での必要二次冷却量を一層低減することができて、二次冷却器C2に供給する低温熱媒Cwを冷却生成する冷熱源機25の一層の小容量化が可能になり、省エネルギ効果をさらに高めることができる。
【0018】
本発明の第3特徴構成は、第1又は第2特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記吸着回収部で残存溶剤蒸気を分離した浄化後の排出空気を前記換気用空気として前記給気路を通じ前記一次予熱器及び前記二次予熱器により予熱した状態で前記処理炉に循環供給する構成にしてある点にある。
【0019】
この構成によれば(
図1参照)、例えば外気OAのみを換気用空気SAとして給気路4を通じ一次予熱器Y1及び二次予熱器Y2により予熱した状態で処理炉1に供給するのに比べ、吸着回収部10から送出される浄化後の排出空気EA′が保有する温熱を利用する形態で、処理炉1を所要の温熱環境に保つ加熱負荷を軽減することができ、この点で設備の省エネルギ効果を高めることができる。
【0020】
そして特に、前述の如く第1特徴構成により二次冷却器C2の空気出口における排出空気EAの温度tを高くすることができて、その分、吸着回収部10から送出される浄化後の排出空気EA′の温度も高くし得ることで、処理炉1を所要の温熱環境に保つ加熱負荷を一層効果的に軽減することができ、これにより、省エネルギ効果を一層高めることができる。
【0021】
本発明の第4特徴構成は、第1〜第3特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記第2循環路において前記一次予熱器と前記再熱器との間に、前記一次予熱器から送出される第2熱媒の一部を前記再熱器に対し迂回させて前記一次冷却器に送るバイパス路を設けるとともに、
このバイパス路を通過させる第2熱媒の流量を調整するバイパス流量調整弁を設けてある点にある。
【0022】
この構成によれば(
図1参照)、一次予熱器Y1から送出される第2熱媒N2のうち、バイパス路34を通過させることで再熱器11に対し迂回させて一次予熱器Y1と一次冷却器C1との間でのみ循環させる状態にする第2熱媒N2の流量と、バイパス路34を通過させずに一次予熱器Y1と再熱器11と一次冷却器C1との三者間で循環させる状態にする第2熱媒N2の流量との流量比をバイパス流量調整弁35により調整することができる。
【0023】
そして、例えば前述の如く二次冷却器C2の空気出口における排出空気EAの温度tを高くするなどの種々の運転条件の変化に応じてバイパス流量調整弁35により上記流量比を調整することで、一次予熱器Y1、再熱器11、一次冷却器C1夫々の空気出口における空気の温度を運転条件に応じた最適な温度に調整することができ、これにより、所期の省エネルギ効果の向上を一層効果的かつ確実に達成することができる。
【0024】
本発明の第5特徴構成は、第1〜第4特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記加湿器は、純水を加湿用水として一次冷却後の排出空気を加湿する純水使用加湿器にしてある点にある。
【0025】
前述の加湿器16(
図1参照)において使用する加湿用水として上水などの一般水を用いた場合、その一般水に含まれる不純物質(特に化学的不純物質)が冷却回収部9で回収する溶剤蒸気の凝縮液L中に混入したり、あるいはまた、吸着回収部10で残存溶剤蒸気を分離した浄化後の排出空気EAを換気用空気SAとして処理炉1に還気する場合では、その不純物質が処理炉1に持ち込まれるなどの不都合を招く虞がある。
【0026】
これに対し、上記構成によれば、前述の加湿器16における加湿用水として純水Wpを用いるから、上記の如き不都合を効果的に回避することができ、この点で一層優れた溶剤回収設備にすることができる。