特許第6025006号(P6025006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6025006
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】エアバイパスバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20161107BHJP
   F16K 31/40 20060101ALI20161107BHJP
   F16K 1/36 20060101ALN20161107BHJP
   F02B 37/16 20060101ALN20161107BHJP
【FI】
   F16K31/06 305L
   F16K31/40 A
   !F16K1/36 Z
   !F02B37/16 B
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-227719(P2015-227719)
(22)【出願日】2015年11月20日
【審査請求日】2016年7月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100192614
【弁理士】
【氏名又は名称】梅本 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100158355
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 明子
(72)【発明者】
【氏名】江上 祐司
(72)【発明者】
【氏名】八十田 徳志
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−006347(JP,A)
【文献】 特開平04−050581(JP,A)
【文献】 特開2006−258283(JP,A)
【文献】 特開2001−333995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06−31/165
F16K 31/36−31/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にコイルが収容されたコイルケーシングと、
前記コイル内に挿入されている可動鉄心を有して前記コイルケーシングに覆われているパイロット弁部と、
底部に孔を備えるピストンを有して前記コイルケーシング内にはめ込まれているピストン部と、
から形成されたエアバイパスバルブであって、
前記ピストン部は、
前記ピストンと、
前記ピストン内に収容されている第1のバネと、
前記ピストンの外周を覆う穴部を有するピストンケーシングと、
を有しており、
前記パイロット弁部は、
中空円筒状のボビンに銅線が巻かれた前記コイルと、
前記コイルの内径部の一端側に挿入された固定鉄心と、
前記コイルの内径部の他端側に挿入されて両端部に凹部を有する前記可動鉄心と、
前記コイルの内径部と前記可動鉄心との隙間に挿入されているヨークと、
前記可動鉄心の一端側の凹部に収容された第2のバネと、
前記可動鉄心の他端側の凹部に収容された鋼球と、
前記可動鉄心の他端側に向かい合うように配置されている弁座と、
貫通穴を有し前記弁座および前記鋼球を内部に収容するシートホルダと、
を有しており、
前記ピストンケーシングの穴部の縁には突起が設けられて、かつ前記ピストンと前記ピストンケーシングとの間にはシール部材が設けられており、前記シール部材は前記シートホルダにより固定されていることを特徴とするエアバイパスバルブ。
【請求項2】
内部にコイルが収容されたコイルケーシングと、
前記コイル内に挿入されている可動鉄心を有して前記コイルケーシングに覆われているパイロット弁部と、
底部に孔を備えるピストンを有して前記コイルケーシング内にはめ込まれているピストン部と、
から形成されたエアバイパスバルブであって、
前記ピストン部は、
前記ピストンと、
前記ピストン内に収容されている第1のバネと、
前記ピストンの外周を覆う穴部を有するピストンケーシングと、
を有しており、
前記パイロット弁部は、
中空円筒状のボビンに銅線が巻かれた前記コイルと、
前記コイルの内径部の一端側に挿入された固定鉄心と、
前記コイルの内径部の他端側に挿入されて両端部に凹部を有する前記可動鉄心と、
前記コイルの内径部と前記可動鉄心との隙間に挿入されているヨークと、
前記可動鉄心の一端側の凹部に収容された第2のバネと、
前記可動鉄心の他端側の凹部に収容された鋼球と、
前記可動鉄心の他端側に向かい合うように配置されている弁座と、
貫通穴を有し前記弁座および前記鋼球を内部に収容するシートホルダと、
を有しており、
前記ピストンケーシングの穴部の縁には突起が設けられて、かつ
前記ピストンの前記孔の周辺が突起状に形成されていることを特徴とするエアバイパスバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアバイパスバルブ、詳細には自動車の内燃機関用ターボチャージャ(過給装置)に設置されて排気ガスを逃がす弁体(バルブ)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の内燃機関用の過給装置に設けられているエアバイパスバルブとしては特許文献1および2に開示されているように過給装置の吸気側の通路14(特許文献1に記載されている符号を示す。以下、同じ)と排気側の通路12との間のバイパス通路8内に配置されている。また、この種のエアバイパスバルブ1は、電磁弁4と、ニューマチック式に操作可能な弁閉鎖体10を有するバイパス弁2と、制御圧室24とを有している。そして、エアバイパスバルブ1は、電磁弁4への通電によってバイパス弁2の開放過程中に過給装置の排気側の通路12と吸気側の通路14との間に制御圧室24を介して流体の接続が形成できることが特許文献1および2に説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO2011/157457号パンフレット
【特許文献2】国際公開第WO2011/157521号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、その弁閉鎖体10(以下、ピストンという)の長さが所定長さ以上の場合には、ピストンが繰り返して摺動することでピストンの軸方向における軸ずれ(芯ずれ)が発生する場合がある。その結果、ピストンが特許文献1および2に示す過給装置の排気側の通路12を完全に閉塞できず、パッキンなどのシール部材によるシール不良が発生する問題があった。
【0005】
そのようなピストンの軸方向における芯ずれを防止するには、そのピストンの長さに応じてピストンの周囲をガイドする部品を設けることができる。具体的には、そのピストンをガイドする部品(以下、ピストンケーシングという)を、そのピストンの周囲全体に渡って、かつそのピストンの長さに応じた長さ分だけ設ける。
【0006】
しかし、ピストンがストロークする際にそのピストンとピストンケーシングとの間の摩擦によって、(ピストンがストロークする時の)摺動抵抗が発生し、ピストンの摺動性能が低下するという問題が発生していた。
【0007】
そこで、本発明は上記の課題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明はピストンがストロークする際のピストンの摺動性能の低下を防止し、同時にピストンがストロークする際にピストンが芯ずれすることを防止するエアバイパスバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明のエアバイパスバルブは、内部にコイルが収容されたコイルケーシングと、コイル内に挿入されている可動鉄心を有してコイルケーシングに覆われているパイロット弁部と、孔を備えるピストンを有してコイルケーシング内にはめ込まれているピストン部と、から主に構成するバルブとした。その上で、ピストン部は、ピストンと、ピストン内に収容されている第1のバネと、ピストンの外周を覆い、穴部を有するピストンケーシングと、を有している。
【0009】
また、パイロット弁部は、中空円筒状のボビンに銅線が巻かれたコイルと、コイルの内径部の一端側に挿入された固定鉄心と、コイルの内径部の他端側に挿入されて両端部に凹部を有する可動鉄心と、コイルの内径部と可動鉄心との隙間に挿入されているヨークと、可動鉄心の一端側の凹部に収容された第2のバネと、可動鉄心の他端側の凹部に収容された鋼球と、可動鉄心の他端側に向かい合うように配置されている弁座と、貫通穴を有し、弁座および鋼球を内部に収容するシートホルダと、を有している。そして、前述のピストンケーシングの穴部の縁には突起を設ける。
【0010】
前述のシートホルダとピストンケーシングとの隙間は、シール部材を用いてシーリングされている。このシール部材が樹脂製である場合、その線膨張係数は通常ピストンケーシングよりも大きい。そのため、エアバイパスバルブの周辺温度が例えば220℃のような比較的に高温の雰囲気になると、ピストンケーシングは膨張し、シール部材はそれ以上に膨らもうとする。この時、シール部材はピストンケーシングの形状にしたがう(ならう)ことでシール性能を保持する。しかし、高温の雰囲気下においてシール部材の外径はピストンケーシングの形状に合わせてクリープ変形が進む。
【0011】
そのため、エアバイパスバルブの周辺温度が高温から常温に戻った時、ピストンケーシングとシール部材の互いの線膨張係数の違いにより、シール部材の収縮量とピストンケーシングの収縮量の間に差が発生する。その結果、ピストンケーシングとシール部材とのはめ合い部分には、当初存在しなかった隙間が発生する。その隙間によりピストンケーシングとシール部材との間からガスの漏れが発生し、ひいてはバルブボディに対するエアバイパスバルブのシール性能が低下する場合がある。
【0012】
そこで、本発明のエアバイパスバルブは、ピストンとピストンケーシングとの間にシール部材を設けて、シートホルダによりそのシール部材を固定する。
【0014】
また、エアバイパスバルブが過給装置に設置される環境下では、エアバイパスバルブ内外を出入りするガス中に油分が含まれる場合が多い。そのため、ガス中に含まれる油分がピストンに付着すると、その油分がピストンの底部を伝わる。その結果、ピストンの底部に設けられた孔が油分によって目詰りし、ピストンの動作不良を起こす場合がある。そこで、本発明のエアバイパスバルブは、ピストン底部に設ける孔の周辺を突起状に形成する(ふくらみを設ける)こともできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエアバイパスバルブは、前述したようにピストンケーシングの底部の穴の縁に複数の突起を設けて、かつピストンとピストンケーシングとの間にシール部材を設けて、シートホルダによりシール部材を固定する構造とした。この構造により、ピストンがストロークする際にそれらの突起はその長さ分だけピストンをガイドする役割を果たす。そのため、ピストンがストロークする際にピストンの摺動性能の低下を防止する。同時に、それらの突起がピストンの周囲をガイドする役割を果たすので、ピストンがストロークする際にピストンが芯ずれすることを防止する。その結果、ピストンが下死点まで下降する際のピストンと過給装置の一部品であるバルブボディとのシール(密閉)機能も維持できる。
【0016】
た、この構造により、エアバイパスバルブ周辺の温度が比較的に高温になってもシートホルダとシール部材との嵌め合い部分のシール機能が維持できる。そのため、シール部材やピストンケーシングが互いに熱膨張や熱収縮を起してもシール部材の外側からガスが出入りすることを防ぐことができる。
【0018】
さらに、本発明のエアバイパスバルブは、ピストンの底部に設けた孔の周辺を外側に向けて突起状に形成する構造により、その孔からピストン室内へ向けて油や異物(コンタミ)が浸入することを防ぐ。その結果、油や異物によってピストンの孔が詰まることはなく、その孔を出入りするガスの流通が確保できるのでピストンがストロークする応答性能を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態に係るエアバイパスバルブ10の概略構造を示す縦断面図である。
図2図1に示すA部分の拡大詳細図である。
図3図1に示すエアバイパスバルブ10のピストン16側から見た場合の斜視図である。
図4図1および図3に示すピストン16を上方から見た全体斜視図である。
図5図4に示すピストン16とは異なる別形態のピストン16Aの下方から見た全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係るエアバイパスバルブについて、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るエアバイパスバルブ10の概略構造を示す縦断面図である。図1に示すように、エアバイパスバルブ10は、内部にコイル25を収容したコイルケーシング12と、その円筒状のコイル25内に挿入されている可動鉄心(プランジャ)27を備えたパイロット弁部13と、孔35を有する有底状のピストン16を備えて前述のコイルケーシング12内にはめ込まれているピストン部14を主たる部品として構成される。
【0021】
まず、パイロット弁部13の構成について説明する。パイロット弁部13は、コイルケーシング12に覆われており、コイル25を中心にして形成されている。コイル25は、両端につばを有する中空円筒状のボビン24に銅線が巻かれた部品である。このコイル25の内径部、すなわちボビン24の内径部の一端側には固定鉄心23の一部が挿入されている。そして、ボビン24の内径部の他端側には可動鉄心27の一部が挿入されている。固定鉄心23は、つばを有し、断面がほぼU字形状である。また、可動鉄心27は両端に凹部を備えた形状である。そして、ボビン24の内径部と可動鉄心27との隙間にはヨーク26が挿入されている。
【0022】
可動鉄心27の一端側にある凹部には第2のバネ28が収容されており、第2のバネ28は固定鉄心23の端部で押さえ付けられている。また、可動鉄心27の他端側(第2のバネ28が収容されている凹部とは反対側)にも、前述したように別の凹部36が設けられている。その別の凹部36と対向する位置には貫通穴38を有する弁座30が配置されている。そして、可動鉄心27の他端側に設けられた凹部36と弁座30の貫通穴38とにより鋼球31をその両側から挟みこんでいる。
【0023】
弁座30には、後述するシートホルダ29に形成された貫通穴37に接続する貫通穴38が前述したように設けられている。鋼球31は、パイロット弁部13のシール部材として機能する。このため、鋼球31は可動鉄心27の一端側に形成された凹部36に挿入後、可動鉄心27に圧入またはカシメで一体化されて、鋼球31が抜け落ちない構造となっている。弁座30のシール形状は断面が円錐形または半球状に形成されていて、鋼球31の球面と弁座30の内周面との接触部分が線状になる。そのため、鋼球31と弁座30との接触部分はシール性能が良く、異物の侵入に対しても効果がある。
【0024】
また、弁座30、鋼球31および可動鉄心27の一部は、凹部を備えたシートホルダ29に収容されている。このシートホルダ29には、その凹部から分岐する形で第1のドレンポート18が設けられており、その第1のドレンポート18はさらに第2のドレンポート22に接続し、最終的にはエアバイパスバルブ10外へつながっている。なお、鋼球31の直径に対する弁座30に形成された貫通穴38の穴径の比は、0.5〜0.75の範囲に設定することが好ましい。
【0025】
次に、ピストン部14の構成について説明する。ピストン部14は、孔35を有する有底状のピストン16を中心に形成されている。そのピストン16の外周を覆うピストンケーシング15と前述のシートホルダ29とが結合し、一体化した状態でコイルケーシング12の内周面にはめ込まれている。また、ピストン16の内部であるピストン室39内には、第1のバネ19が収容されている。これにより、シートホルダ29の貫通穴37と、ピストン室39と、ピストン16の孔35とが互いに空間的につながっている。
【0026】
図2は、図1に示すA部分の拡大詳細図である。ピストンケーシング15とピストン16とシートホルダ29との嵌め合い部分は、図2に示すように断面形状がL字状のシール部材52が設置されている。シール部材52の軸方向の内側はピストン16の外周面に接触しており、シール部材52の上下面の一部をシートホルダ29およびピストンケーシング15により挟み込んでいる。この構成により、エアバイパスバルブ10の周囲温度が変化してもシール部材52とピストンケーシング15との熱収縮性の違いによってシール部材52の外部からガスの出入りを防ぐことができる。
【0027】
図3は、図1に示すエアバイパスバルブ10のピストン16側から見た場合の斜視図である。ピストン16は、図3に示すようにピストンケーシング15の内側にはめ込まれており、図3に示す両端矢印の方向にピストンケーシング15に沿って自在に摺動できる。ピストン16は、このピストンケーシング15の穴部の縁に形成された突起21によりガイドされている。
【0028】
この突起21は、図3に示すようにピストンケーシング15の穴部の縁の円周方向に複数個、少なくとも3個以上設ける。この構造により、ピストン16の摺動不良や芯ズレを防止して、バルブとしての応答性能を維持できる。なお、突起21の内側はピストン16側と接触する内径側の摺動抵抗を低減するためにR形状に形成することもできる。
【0029】
また、図1および図3に示すように、ピストン16の孔35は軸方向の片側周辺(特に外側)を突起状に形成する(膨らみをもたせる)。そのことでピストン16の外側から伝わる油分が孔35内に浸入しがたい構造となり、孔35における目詰まりを防ぐことができる。
【0030】
また、図1および図3に示すピストン16を上方(先端部側)から見た全体斜視図を図4に示す。ピストン16の先端部(図4の紙面上で上部)の縁には、図4に示すようにピストン16の径方向に切欠き16dを複数箇所に設けることもできる。この構造により、エアバイパスバルブ10のピストン16がストロークエンドした時(図1に示すピストン16が最も上方位置まで移動した状態)においても、切欠き16dを介してピストン室39の内外でガスが出入りできるので、バルブとしての応答性能の遅れを防止できる。
【0031】
図4に示すようにピストン16の径方向に切欠き16dを所定の距離(間隔)を空けて2箇所設けることで、2箇所の切欠き16d、16dの間に爪部16cを形成することもできる。この爪部16cをピストン16の先端部の縁に形成することにより、ピストン16をワンタッチ(一工程)でピストンケーシング15内に嵌め込むことができるので、エアバイパスバルブ10の組立工程が簡易になる。
【0032】
さらに、図4に示すピストン16とは別形態のピストン16Aを下方側から見た斜視図を図5に示す。ピストン16Aが図4に示すピストン16と異なる点は、図5に示すようにピストン16Aの底部の縁に段差16bを設けた点である。この段差16bをピストン16Aに設けることにより、エアバイパスバルブ10の外部から異物が進入することを防止する役割がある。
【0033】
すなわち、図4に示すピストン16では図1に示すようにバルブボディ11と接触した時にピストン16の底面とバルブボディ11内の通路とが互いに接触する。接触する形態が面同士の場合、その面に異物を挟み込むリスクが高くなり、もし異物がその接触面に挟み込まれると、ピストン16とバルブボディ11との間のシール性能が低減する。
【0034】
そこで、図5に示すピストン16Aではその底部の縁形状を段差形状にすることで、ピストン16Aとバルブケース11とが接触する場合には、その接触形態が線接触になる。その結果、それらの接触部分で異物を挟み込むリスクが低減し、上記のシール性能を維持できる。
【0035】
本実施の形態に係るエアバイパスバルブ10は基本的には以上のように構成される。次に、エアバイパスバルブ10の動作について説明する。外部電源からエアバイパスバルブ10のパイロット弁部13に通電されると、可動鉄心(プランジャ)27はコイル25に発生する電磁力によって図1の紙面上で上方へ移動する。可動鉄心27が上方へ移動すると、可動鉄心27の凹部36にはめ込まれて一体となった鋼球31が弁座30から離れる。その結果、ピストン室39とシートホルダ29の貫通穴37と第1のドレンポート18が互いに接続される。
【0036】
ピストン室39内の圧力はバルブボディ11の吸気通路33内の圧力よりも高く、ピストン室39内のガスは第1のドレンポート18および第2のドレンポート22を経由してバルブボディ11の吸気通路33へ排出される。このとき、ピストン室39内へはピストン16の孔35を通過してバルブボディ11の排気通路34のガスが流入する。
【0037】
本発明のエアバイパスバルブ10はピストン16の孔35の断面積よりも、可動鉄心27のストロークと弁座30の貫通穴38によって定まるパイロット弁部13が開口している面積の方が広くなる設計となっている。そのため、バルブボディ11の排気通路34側からピストン室39内にその孔35を通って流入するガスの量よりも、ピストン室39内からバルブボディ11の吸気通路33側へ流出するガスの量の方が多くなる。
【0038】
したがって、ピストン室39内の圧力は低下し、ピストン室39内とバルブボディ11の排気通路34内の圧力差によってピストン16の上方への力が発生する。このため、ピストン16はバルブボディ11より離れることで、バルブボディ11の排気通路34と吸気通路33とが空間的に接続される。
【0039】
これに対して、パイロット弁部13が非通電の場合には、パイロット弁部13の電磁力は無くなり(消失し)、第2のばね28の弾性力によって可動鉄心27は図1で示すように下方側に移動し、可動鉄心27と一体化された鋼球31が弁座30と接触する。これによって、ピストン室39と第1のドレンポート18は遮断される。
【0040】
その結果、バルブボディ11の排気通路34内のガスが、ピストン16の孔35を通ってピストン室39内に流入し、排気通路34の圧力とピストン室39内の圧力は同じになる。その結果、第1のばね19の弾性力によりピストン16は図1で示すように下方に移動し、ピストン16の底面はバルブケース11と接触する。
【0041】
なお、図5に示すピストン16Aの下面や弁座30とシートホルダ29の凹面との間には、異物の侵入を防止するためにフィルタを装着することもできる。そのフィルタを図5に示すピストン16Aに装着する際には、超音波溶着により固定することができる。
【0042】
また、そのフィルタを弁座30と一体化する場合には、カシメやインサート成形により固定できる。もしくは、そのフィルタを弁座30と分離して、超音波溶着を用いてシートホルダ29の底面にそのフィルタを固定することもできる。
【符号の説明】
【0043】
10 エアバイパスバルブ
11 バルブボディ
12 コイルケーシング
13 パイロット弁部
14 ピストン部
15 ピストンケーシング
16、16A ピストン
16b ピストン16Aの段差
16d ピストン16、16Aの切欠き
18 第1のドレンポート
19 第1のバネ
21 突起
22 第2のドレンポート
23 固定鉄心
24 ボビン
25 コイル
26 ヨーク
27 可動鉄心(プランジャ)
28 第2のバネ
29 シートホルダ
30 弁座
31 鋼球
33 バルブボディ11の吸気通路
34 バルブボディ11の排気通路
35 ピストン16、16Aの孔
36 可動鉄心27の凹部
37 シートホルダ29の貫通穴
38 弁座30の貫通穴
39 ピストン室
52 シール部材

【要約】      (修正有)
【課題】ピストンがストロークする際のピストンの摺動性能の低下を防止し、同時にピストンがストロークする際にピストンが芯ずれすることを防止するエアバイパスバルブを提供する。
【解決手段】内部にコイル25が収容されたコイルケーシング12と、コイル25内に挿入されている可動鉄心27を有してコイルケーシング12に覆われているパイロット弁部13と、孔35を備えるピストン16を有してコイルケーシング12内にはめ込まれているピストン部14と、から形成されたエアバイパスバルブ10において、ピストン部14を構成しているピストンケーシング15の穴部の縁に突起を設けるエアバイパスバルブ10とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5