(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両のエンジンによって駆動されるオルタネータと、当該オルタネータによって発電された電力を蓄えるバッテリとを備え、当該バッテリから供給される電力により前記車両空間内を冷却する冷却システムにおける前記オルタネータの作動制御装置であって、
前記エンジンの運転パラメータを検出するエンジンパラメータ検出手段と、
前記オルタネータの動作に関する状態パラメータを検出するオルタネータパラメータ検出手段と、
前記運転パラメータと燃料消費率との関係を規定するエンジン燃費マップ、前記オルタネータの作動の優先程度を指標とした作動優先度を前記燃料消費率の範囲毎に順に対応付けて規定された作動優先度情報、及び前記オルタネータの作動の必要性を指標とした作動必要度を前記オルタネータの動作に関する状態パラメータの範囲毎に順に対応付けて規定された作動必要度情報を予め格納した記憶手段と、
前記オルタネータパラメータ検出手段による検出値及び前記記憶手段に格納されている作動必要度情報に基づいて、前記オルタネータの作動必要度を算出する作動必要度算出手段と、
前記エンジンパラメータ検出手段による検出値及び前記記憶手段に格納されているエンジン燃費マップに基づいて燃料消費率を算出し、当該算出した燃料消費率及び前記記憶手段に格納されている作動優先度情報に基づいて現在の運転状態における作動優先度を算出する作動優先度算出手段と、
前記作動必要度算出手段により算出された作動必要度が、前記作動優先度算出手段により算出された作動優先度以上である場合に前記オルタネータを作動させるオルタネータ制御手段と、
を備えたことを特徴とするオルタネータの作動制御装置。
前記作動優先度情報は、車両減速時、且つ前記エンジンが無負荷状態である場合に最も高く、惰性走行時、且つ前記エンジンが無負荷状態である場合がその次に高く設定されると共に、前記エンジンが有負荷状態である場合には前記燃料消費率が大きくなるに従い優先度が低くなるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のオルタネータの作動制御装置。
前記作動優先度算出手段は、前記駆動輪と前記エンジンとが動力的に接続されていない場合に、前記燃料消費率とは別に作動優先度を設定できることを特徴とする請求項1から3のうち何れか一項に記載のオルタネータの作動制御装置。
前記作動必要度情報は、前記オルタネータによって発電された電力を蓄える前記バッテリの充電率に基づいて段階的に設定されていることを特徴とする請求項1から4のうち何れか一項に記載のオルタネータの作動制御装置。
車両のエンジンによって駆動されるオルタネータと、当該オルタネータによって発電された電力を蓄えるバッテリとを備え、当該バッテリから供給される電力により前記車両空間内を冷却する冷却システムにおける前記オルタネータの作動制御方法であって、
前記エンジンの運転パラメータを検出する運転パラメータ検出工程と、
前記オルタネータの動作に関する状態パラメータを検出するオルタネータパラメータ検出工程と、
前記オルタネータパラメータ検出工程により検出された状態パラメータの検出値、及び前記オルタネータの作動の必要性を指標とした作動必要度を前記オルタネータの動作に関する状態パラメータの範囲毎に順に対応付けて予め規定された作動必要度情報に基づいて、前記オルタネータの作動必要度を算出する作動必要度算出工程と、
前記運転パラメータ検出工程により検出された運転パラメータの検出値、及び前記エンジンの燃料消費率と運転パラメータとの関係を予め規定したエンジン燃費マップに基づいて燃料消費率を算出し、当該算出された燃料消費率及び前記オルタネータの作動の優先程度を指標とした作動優先度を燃料消費率の範囲毎に順に対応付けて予め規定された作動優先度情報に基づいて、現在の運転状態における作動優先度を算出する作動優先度算出工程と、
前記作動必要度算出工程にて算出された作動必要度が、前記作動優先度算出工程にて算出した作動優先度以上である場合に前記オルタネータを作動させるオルタネータ作動工程と、を備えたことを特徴とするオルタネータの作動制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1では、基本的にエンジンが無負荷運転時にオルタネータの動作を集中させており、無負荷運転時だけではオルタネータの動作が足りない場合には、有負荷運転時にもオルタネータを作動させるとしている。しかしながら、有負荷運転時においてもエンジンの運転状態によって、オルタネータの動作が燃料消費率に与える影響は様々である。すなわち特許文献1では、有負荷運転時にオルタネータを作動させる場合に、オルタネータの作動条件の最適化が十分なされておらず、燃料消費率を更に改善する余地が残っている。
【0008】
また、上記特許文献2では、電動ファンの出力を低下させる代わりにコンプレッサの出力を増加させて冷房能力を一定に保ちつつ、燃費を向上させるとしている。しかしながら、電動ファンやコンプレッサの燃費は出力サイズによって異なるため、電動ファンの出力低下による燃料減少分とコンプレッサの出力増加による燃料増加分とを相殺して、燃費向上の効果を必ずしも期待することはできない。
また、燃費消費率が予め設定された所定値よりも大きい(即ち燃費が悪い)場合には、エアコンを作動させる必要が無い場合であっても、エンジンの出力を増加させるために、コンプレッサの出力を増加させる、即ちエアコンを作動させる。したがって、例えば、過冷却となる等、エアコンの温度制御性に悪影響を及ぼす。
【0009】
そこで、本発明は上述した問題点に鑑みなされたものであり、エンジンの運転状態に応じて冷却システムのオルタネータの作動制御を行うことにより、良好な燃料消費率を得ると共に効率的なタイミングでオルタネータを作動させることができるオルタネータの作動制御装置及び作動制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るオルタネータの作動制御装置は上記課題を解決するために、車両のエンジンによって駆動されるオルタネータと、当該オルタネータによって発電された電力を蓄えるバッテリとを備え、当該バッテリから供給される電力により前記車両空間内を冷却する冷却システムにおける前記オルタネータの作動制御装置であって、
前記エンジンの運転パラメータを検出するエンジンパラメータ検出手段と、
前記オルタネータの動作に関する状態パラメータを検出するオルタネータパラメータ検出手段と、
前記運転パラメータと燃料消費率との関係を規定するエンジン燃費マップ、前記オルタネータの作動の優先程度を指標とした作動優先度を前記燃料消費率
の範囲毎に順に対応付けて規定された作動優先度情報、及び前記オルタネータの作動の必要性を指標とした作動必要度を前記オルタネータの動作に関する状態パラメータ
の範囲毎に順に対応付けて規定された作動必要度情報を予め格納した記憶手段と、
前記オルタネータパラメータ検出手段による検出値及び前記記憶手段に格納されている作動必要度情報に基づいて、前記オルタネータの作動必要度を算出する作動必要度算出手段と、
前記エンジンパラメータ検出手段による検出値及び前記記憶手段に格納されているエンジン燃費マップに基づいて燃料消費率を算出し、当該算出した燃料消費率及び前記記憶手段に格納されている作動優先度情報に基づいて現在の運転状態における作動優先度を算出する作動優先度算出手段と、
前記作動必要度算出手段により算出された作動必要度が、前記作動優先度算出手段により算出された作動優先度以上である場合に前記オルタネータを作動させるオルタネータ制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、作動優先度情報によってオルタネータを作動させた際に燃料消費率にとって有利となる運転領域を優先付けすることにより、オルタネータの作動に伴う燃料消費率の悪化を抑制しつつ、適切なタイミングでオルタネータを作動させることができる。特にフットブレーキ、若しくは補助ブレーキを使用し、ドライバーが意図的に車両を減速させている状態(以下車両減速時という)、若しくはドライバーがアクセルペダル、若しくはそれに類する機能(オートクルーズ等)を操作せずに車両が惰性で走行している状態(以下惰性走行時という)、且つエンジンにおいて燃料が無噴射である状態(以下無負荷という)だけでなく、エンジンにおいて燃料が噴射されている状態(以下有負荷という)においてオルタネータを作動させた場合であっても、オルタネータの作動必要度に応じて適切なタイミングでオルタネータを作動させることができるので、燃料消費率を改善しつつ、効率的なオルタネータの作動を達成できる。
さらに、オルタネータは作動時に発電し、その電力をバッテリに蓄える。このため、作動必要度が作動優先度以上である場合にオルタネータを作動させることで、オルタネータを作動させた際に生じる負荷の燃料消費率への悪影響を抑制しつつ、オルタネータで発電した電力を効率的に冷却システムで利用することができる。その結果、車両の燃料消費率をより一層改善することができる。
尚、本明細書中では、車両空間内とは、車両の室内、車両に搭載されている荷台内等を含むものとする。
【0012】
前記作動優先度情報は、車両減速時、且つ前記エンジンが無負荷状態である場合に最も高く設定されると共に、惰性走行時、且つ前記エンジンが無負荷状態である場合がその次に高く設定され、更に前記エンジンが有負荷状態である場合には前記燃料消費率が大きくなるに従い優先度が低くなるように設定されていてもよい。
【0013】
本願発明者の研究開発によれば、オルタネータの作動による燃料消費率への悪影響は、有負荷運転時に比べて車両減速時、且つエンジンの無負荷運転時が最も少なく、更に惰性走行時、且つエンジンの無負荷運転時がその次に少なくなることを見出した。また、有負荷運転時においてもエンジンの出力が大きくなるに従い、オルタネータの作動による燃料消費率への悪影響が少ないことを見出した。これらの知見に基づき、この態様では、作動優先度を車両減速時、且つエンジンが無負荷の状態において最も高く、惰性走行時、且つエンジンが無負荷の状態をその次に高く設定する一方で、有負荷時には良好な燃料消費率が得られる高負荷側になるに従って優先度が高くなるように設定する。これにより、エンジンが無負荷運転時におけるオルタネータの作動だけでは必要とされる冷却システムの作動を賄いきれない場合であっても、有負荷運転時において良好な燃料消費率が得られるタイミングでオルタネータを作動させることができる。
【0014】
前記運転パラメータは、エンジン回転数及び燃料噴射量であってもよい。
【0015】
オルタネータを作動させた場合にエンジンが所定負荷を受ける場合における燃料消費率は様々な運転パラメータに影響を受ける。本願発明者の研究開発によれば、エンジン回転数及び燃料噴射量を運転パラメータとして選定することで、上記作動制御装置による燃料消費率の改善を良好に達成できることが見出された。
【0016】
前記作動優先度算出手段は、前記駆動輪と前記エンジンとが動力的に接続されていない場合については、燃料消費率とは別に作動優先度を設定してもよい。
【0017】
この態様によれば、駆動輪とエンジンとが動力的に接続されていない場合、例えば変速機のギア段がニュートラル状態にある場合やクラッチによってエンジンの動力が遮断されている場合においてエンジンを空吹かしした際に、不必要にオルタネータが作動して、無駄に燃料を消費してしまう事態を効果的に回避することができる。
【0018】
前記作動必要度情報は、前記オルタネータによって発電された電力を蓄える前記バッテリの充電率に基づいて段階的に設定されていてもよい。
【0019】
オルタネータで発電された電力はバッテリに蓄電される。一般的にバッテリは適切な充電率の範囲が予め規定されており、この範囲を外れて充電されると電池寿命が短縮するなどの不具合の原因となる。この態様では、バッテリの充電率を監視することにより、バッテリの充電率が適切な範囲になるように考慮しながら、燃料消費率への悪影響が少なくなるように効率的にオルタネータを作動させることができる。
【0020】
前記作動制御装置は、前記エンジンを制御するエンジンコントロールユニットと、前記オルタネータを制御するオルタネータコントロールユニットとから構成され、
前記オルタネータコントロールユニットは、前記作動必要度算出手段及び前記オルタネータ制御手段を有し、
前記エンジンコントロールユニットは、前記作動優先度算出手段を有しており、
前記作動必要度算出手段により算出された作動必要度は前記エンジンコントロールユニットへ出力され、
前記作動優先度算出手段が、前記エンジンコントロールユニットに入力した前記作動必要度は前記作動優先度以上であると判定した場合に、前記作動優先度算出手段は前記オルタネータの作動を許可する許可信号を生成し、当該許可信号は前記オルタネータコントロールユニットへ出力され、
前記オルタネータ制御手段が、前記オルタネータコントロールユニットに入力した前記許可信号に基づいて前記オルタネータを作動させてもよい。
【0021】
この態様によれば、エンジンコントロールユニットとオルタネータコントロールユニットが別々に設けられているため、例えば、トラックに冷凍機を搭載する場合や、車両にクーラーを搭載する場合等に有効である。具体的には、エンジンコントロールユニットを車両本体側に設け、オルタネータコントロールユニットを冷凍機やクーラー等の冷却コントロールユニットに組み込むことにより、本発明に係る制御を実行することができる。
【0022】
本発明に係るオルタネータの作動制御方法は上記課題を解決するために、車両のエンジンによって駆動されるオルタネータと、当該オルタネータによって発電された電力を蓄えるバッテリとを備え、当該バッテリから供給される電力により前記車両空間内を冷却する冷却システムにおける前記オルタネータの作動制御方法であって、
前記エンジンの運転パラメータを検出する運転パラメータ検出工程と、
前記オルタネータの動作に関する状態パラメータを検出するオルタネータパラメータ検出工程と、
前記オルタネータパラメータ検出工程により検出された状態パラメータの検出値、及び前記オルタネータの作動の必要性を指標とした作動必要度を前記オルタネータの動作に関する状態パラメータ
の範囲毎に順に対応付けて予め規定された作動必要度情報に基づいて、前記オルタネータの作動必要度を算出する作動必要度算出工程と、
前記運転パラメータ検出工程により検出された運転パラメータの検出値、及び前記エンジンの燃料消費率と運転パラメータとの関係を予め規定したエンジン燃費マップに基づいて燃料消費率を算出し、当該算出された燃料消費率及び前記オルタネータの作動の優先程度を指標とした作動優先度を燃料消費率
の範囲毎に順に対応付けて予め規定された作動優先度情報に基づいて、現在の運転状態における作動優先度を算出する作動優先度算出工程と、
前記作動必要度算出工程にて算出された作動必要度が、前記作動優先度算出工程にて算出した作動優先度以上である場合に前記オルタネータを作動させるオルタネータ作動工程と、を備えたことを特徴とする。
【0023】
本方法は上述の車両の制御システムにより好適に実施することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、作動優先度情報によってオルタネータを作動させた際に、燃料消費率にとって有利となる運転領域を優先付けすることにより、オルタネータの作動に伴う燃料消費率の悪化を抑制しつつ、適切なタイミングでオルタネータを作動させることができる。特に車両減速時、若しくは惰性走行時におけるエンジンの無負荷運転時だけでなく、有負荷運転時においてオルタネータを作動させた場合であっても、オルタネータの作動必要度に応じて適切なタイミングでオルタネータを作動させることができるので、燃料消費率を改善しつつ、効率的なオルタネータの作動を達成できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0027】
<冷却システム及び作動制御装置の構成>
図1は、本実施形態に係る冷却システム及び作動制御装置を示すブロック図である。
図1に示すように、車両1は、車両本体1Aに搭載されたエンジン2と、車両後部に搭載された冷凍庫1B内を冷凍可能な冷却システム3と、を備えている。
【0028】
エンジン2として、本実施形態では6気筒レシプロエンジン2を用いたが、これに限定されるものではない。また、エンジン2には、エンジン回転数を検出するための回転数センサ4が設けられている。回転数センサ4により計測された回転数は、後述するエンジンコントロールユニット(以下、エンジンECU10という)に出力される。
【0029】
冷却システム3は、オルタネータ5と、バッテリ6と、コンプレッサ7と、作動制御装置8とを備えている。
オルタネータ5は、エンジン2の出力軸にベルト9(ファンベルト)を介して連結されている。オルタネータ5はエンジン2の出力の一部を用いて駆動されることにより発電を行う。オルタネータ5で発電された電力はバッテリ6に蓄えられる。
【0030】
バッテリ6には、充電率(以下、SOCという)を検出するためのSOCセンサ19が設けられている。SOCセンサ19により検出されたSOCは、後述するオルタネータコントロールユニット(以下、オルタネータECU20という)に出力される。
【0031】
バッテリ6に蓄えられた電力によってコンプレッサ7が駆動される。コンプレッサ7は、図示しないコンデンサ等に接続されている。
オルタネータ5、バッテリ6及びコンプレッサ7は、冷却システム3専用に設けられている。
【0032】
また、作動制御装置8は、エンジンECU10と、オルタネータECU20とから構成されている。エンジンECU10及びオルタネータECU20について、以下で詳細に説明する。まず、エンジンECU10について説明し、次に、オルタネータECU20について説明する。
【0033】
エンジンECU10は、エンジンパラメータ検出手段11と、エンジン用記憶手段12と、作動優先度算出手段13とを備えている。
【0034】
エンジンパラメータ検出手段11は、エンジン2の運転パラメータであるエンジン回転数を回転数センサ4の検出信号に基づいて検出する。
【0035】
エンジン用記憶手段12には、エンジンECU10における制御に必要なエンジン燃費マップ、及びオルタネータ5の作動の優先程度を指標とした作動優先度を燃料消費率と対応付けて規定された作動優先度情報が予め格納されており、適宜アクセスすることにより読み出し可能に構成されている。尚、作動優先度及び作動優先度情報についての詳細な説明は後述する。
【0036】
作動優先度算出手段13は、エンジンパラメータ検出手段11の検出値、及びエンジン用記憶手段12に格納されているエンジン燃費マップに基づいて燃料消費率を算出する。
続いて、算出された燃料消費率、及びエンジン用記憶手段12に格納されている作動優先度情報に基づいて現在の運転状態における作動優先度を算出する。
【0037】
また、作動優先度算出手段13は、オルタネータECU20から出力されてエンジンECU10に入力された作動必要度(詳細は後述する)が、現在の運転状態における作動優先度以上か否かを判定する。即ち、オルタネータ5を作動させるか否かを判定する。
そして、作動必要度が、作動優先度以上の場合(オルタネータ5を作動させると判定した場合)に、許可信号を生成する。作動優先度算出手段13により生成された許可信号はオルタネータECU20に出力される。
【0038】
車両1には、ドライバーの加速意思を検出するためのアクセル開度センサが、ドライバーにより踏み込まれるアクセルペダルに設けられている。アクセル開度センサにより計測されたアクセル開度は、エンジンECU10に出力される。
【0039】
また、ドライバーの減速意思を検出するためのフットブレーキスイッチ及び補助ブレーキスイッチが、それぞれドライバーが踏み込むフットブレーキペダル(不図示)、ドライバーが操作する補助ブレーキレバー(不図示)に設けられている。フットブレーキが作動しているか否かを示すフットブレーキ信号、補助ブレーキが作動しているか否かを示す補助ブレーキ信号は、エンジンECU10に出力される。
【0040】
さらに、エンジン2からの出力動力を駆動輪側に伝達するための動力伝達経路上には変速機(不図示)及びクラッチ(不図示)が設けられている。そして、変速機からはニュートラル状態であるか否かを示すニュートラル信号、及びクラッチからは連結状態にあるか否かを示すクラッチ信号が、それぞれエンジンECU10に出力される。
【0041】
次に、オルタネータECU20について説明する。
オルタネータECU20は、オルタネータパラメータ検出手段21と、オルタネータ用記憶手段22と、作動必要度算出手段23と、オルタネータ制御手段24とを備えている。
【0042】
オルタネータパラメータ検出手段21は、オルタネータ5によって発電された電力が蓄えられるバッテリ6のSOCを、SOCセンサ19の検出信号に基づいて検出する。
【0043】
オルタネータ用記憶手段22には、オルタネータ5の作動の必要性を指標とした作動必要度をバッテリ6のSOCと対応付けて規定された作動必要度情報が予め格納されており、適宜アクセスすることにより読み出し可能に構成されている。尚、作動必要度及び作動必要度情報についての詳細な説明は後述する。
【0044】
作動必要度算出手段23は、オルタネータパラメータ検出手段21による検出値、及びオルタネータ用記憶手段22に格納されている作動必要度情報に基づいて、現在のバッテリ6のSOC状態におけるオルタネータ5の作動必要度を算出する。
続いて、算出された作動必要度に応じてオルタネータ5の作動が必要か否かを判定する。
オルタネータ5の作動が必要である判定した場合に、算出された作動必要度はエンジンECU10に出力される。
【0045】
そして、エンジンECU10に入力された作動必要度は、上述したように、作動優先度算出手段13により、当該作動必要度が作動優先度以上か否か判定される。判定後、作動必要度が作動優先度以上の場合に生成される許可信号がオルタネータECU20に出力される。
オルタネータ制御手段24は、オルタネータECU20に入力された許可信号に基づいて、オルタネータ5の作動制御を実施する。
【0046】
図2は、ある一定のエンジン回転数におけるエンジン2の出力トルクと燃料噴射量との関係を示すグラフ図である。また、
図3は、エンジン2の燃料噴射量と燃料消費率との関係を示すグラフ図である。
図2及び
図3では、オルタネータ5を作動させた状態を実線で示し、オルタネータ5を作動させていない状態を破線で示している。
【0047】
まず、
図2に示すように、燃料噴射量が増加するに従い、エンジン2の出力トルクも増加する。この傾向はオルタネータ5を作動させるか否かに関わらず共通しているが、オルタネータ5を作動させた場合の方がエンジン2の出力トルクが小さくなる。これは、エンジン2の出力トルクの一部がオルタネータ5の作動により消費されることを反映した結果である。
【0048】
次に、
図3に示すように、燃料噴射量(実質的にエンジン2の負荷に相当)が増加するに従い、燃料消費率が減少し、高燃料噴射量側では燃料消費率が所定値に漸近するように振る舞っている。ここで、オルタネータ5が作動している場合と作動していない場合における燃料消費率を比較すると、低燃料噴射量側ではその差が大きいのに対し、高燃料噴射量側では小さくなっている。これはエンジン2が高負荷側になるに従って、オルタネータ5を作動させることによる燃料消費率への悪影響が相対的に小さくなることを示している。
例えば、車両1の走行中にオルタネータ5が3kWの出力を必要としているときに、エンジン2が10kWで運転されている場合と100kWで運転されている場合には、オルタネータ5による損失の割合は100kWの場合の方が小さい。
【0049】
このように本願発明者の研究開発により、エンジン2が有負荷運転時においては高負荷側にあるときにオルタネータ5を作動させることで、燃料消費率の悪化を抑制することができる。本実施形態に係る制御システムでは、
図2及び
図3に示した特性に鑑み、エンジン2の燃料消費率の範囲毎にオルタネータ5の作動優先度が規定されている。
【0050】
図4は、エンジン2の燃料消費率と作動優先度との関係を規定する作動優先度情報31の一例であり、予めエンジン用記憶手段12に記憶されている。
図4に示すように、燃料消費率が「車両1減速時、且つエンジン2が無負荷」、「惰性走行時、且つエンジン2が無負荷」、「a―b」、「b−c」、「c−d」・・・「h−i」と所定範囲毎に区分されており、順に作動優先度がランク付けられている。
このランク付けは、
図2及び
図3で示したように、「車両1減速時、且つエンジン2が無負荷」を最上位、「惰性走行時、且つエンジン2が無負荷」がその次の順位としつつ、更にエンジン2が有負荷運転における燃料消費率が良好な順に設定されている。尚、本実施形態では、燃料消費率によるオルタネータ5の作動を細かく調整可能となるように、作動優先度のランク分けの数を10としたが、この数に限定されるものではなく、設計等により適宜決定することができる。燃料消費率をより細かく調整する場合には、ランク分けの数を多くする。一方、燃料消費率を細かく調整しなくても良い場合には、ランク分けの数を少なくする。
このようにオルタネータ5の作動優先度を設けることによって、燃料消費率の良好な状態において優先的にオルタネータ5を作動させることができるので、燃料消費率の悪化を抑制しつつ、効率的なタイミングでオルタネータ5を作動させることができる。
【0051】
また、本実施形態に係る作動制御装置8では、オルタネータ5の作動の必要性を考慮するために作動必要度が規定されている。
図5は、バッテリ6のSOCと作動必要度との関係を規定する作動必要度情報32の一例であり、予めオルタネータ用記憶手段22に記憶されている。
図5に示すように、オルタネータ5で発電された電力が蓄積されるバッテリ6のSOCを基準に、オルタネータ5の作動必要度を規定している。例えば、バッテリ6のSOCが少ない場合は、オルタネータ5を作動させてSOCを回復する必要性が高いとして、作動必要度が高くなるように設定されている。一方、バッテリ6のSOCが高い場合は、バッテリ6への過充電によってバッテリ6の寿命が短縮しないように、オルタネータ5の作動の必要性が低いとして、作動必要度が低くなるように設定されている。尚、本実施形態では、作動必要度のランク分けの数(作動必要度ゼロは除く)を、作動優先度のランク分けの数と同じ10に設定したが、これに限定されるものではなく、設計等により適宜決定することができる。SOCをより細かく調整する場合には、ランク分けの数を多くする。一方、SOCの温度を細かく調整しなくても良い場合には、ランク分けの数を少なくする。
【0052】
図6は、予め試験的に求めたエンジン回転数と燃料消費率との関係を示すエンジン燃費マップ33の一例である。ここでは、エンジン2の運転パラメータとしてエンジン回転数と燃料噴射量を採用している。
オルタネータ5を作動させた場合にエンジン2が所定負荷を受ける場合における燃料消費率は様々な運転パラメータに影響を受ける。本願発明者の研究開発によれば、エンジン回転数及び燃料噴射量を運転パラメータとして選定することで、上記制御システムによる燃料消費率の改善を良好に達成できることが見出された。
【0053】
図6に示すように、オルタネータ5を作動させた場合に消費されるエンジン2の出力が一定であるという前提で、エンジン2の燃料消費率の分布を示している。
図6では燃料消費率が等しいラインを等高線状に示している。ここでは特に、
図4で示した作動優先度情報31に基づいて燃料消費率の範囲毎に規定された作動優先度が併せて示されている。
【0054】
具体的に説明すると、例えば
図6において燃料消費率への悪影響が最も少ない作動優先度が「1」の領域(すなわち車両1減速時、且つエンジン2が無負荷状態)の頻度が少なく、オルタネータ5が十分作動できない場合には、その次に燃料消費率への悪影響が少ない燃料消費率が良好な作動優先度が「2」の領域(すなわち惰性(エンジンブレーキは作動しているが、アクセルペダルが踏まれていない場合であり、ニュートラル状態やクラッチによってエンジン2の動力が遮断されている場合は除く)走行時時、且つエンジン2が無負荷状態)を使用する。
さらに、作動優先度が「2」の領域を使用してもオルタネータ5が十分作動できない場合には、次に燃料消費率が良好な作動優先度が「3」の領域を使用する。このように燃料消費率が良好な運転領域において優先的にオルタネータ5を作動させることにより、燃料消費率の悪化を抑制しつつ、オルタネータ5を効率よく作動できる。
【0055】
尚、補足して説明すると、作動優先度が「1」若しくは「2」である無負荷領域では燃料が噴射されないので厳密には燃料消費率を定義することができない。また、アイドリング状態はエンジン2が自律の運転をしている状態であり、燃料を噴射しているので無負荷領域には該当しない。無負荷領域の例としては、例えばフットブレーキや補助ブレーキ(エンジンブレーキは除く)が作動している場合や惰性走行時のように、エンジン2の動力が発生していないものの回転している場合である。このとき、エンジン2の燃料はカットされ、無負荷状態となる。
【0056】
<作動制御装置による制御フロー>
次に、作動制御装置8による制御フローについて説明する。
【0057】
図7は、本実施形態に係る作動制御装置8の動作を示すフローチャートである。
まず、エンジンECU10は、エンジン用記憶手段12にアクセスすることにより、予め記憶されたエンジン燃費マップ33を読み込む(ステップS1)。
エンジン燃費マップ33は、
図6に示すように、運転パラメータであるエンジン回転数と燃料噴射量に対する燃料消費率を規定するエンジン特性を示すマップである。尚、エンジン燃費マップ33は予め試験的に作成してもよいし、シミュレーション的に作成してもよいし、論理的に作成されてもよい。
【0058】
次に、エンジンECU10は、再びエンジン用記憶手段12にアクセスすることにより、作動優先度情報31を取得し、作動優先度に対する燃料消費率の閾値を読み込む(ステップS2)。
具体的には、
図4に示すように各作動優先度に対応する燃料消費率の範囲を規定する上限閾値及び下限閾値を読み込む。これにより、
図6に示したように、エンジン燃費マップ33において各閾値に対する等高線が特定され、当該等高線同士によって区画される領域毎に作動優先度が設定される。
【0059】
次に、エンジンECU10は、エンジンパラメータ検出手段11において回転数センサ4からエンジン回転数を検出する。また、アクセル開度、フットブレーキ信号、補助ブレーキ信号、クラッチ信号、ニュートラル信号も取得する(ステップS3)。
続いて、エンジンECU10は、アクセル開度及び回転数センサ4から取得したエンジン回転数に基づいて燃料噴射量を算出する。
【0060】
次に、オルタネータECU20は、オルタネータパラメータ検出手段21においてSOCセンサ19からSOCを検出する(ステップS4)。
【0061】
次に、作動必要度算出手段23は、オルタネータ用記憶手段22にアクセスすることによって、作動必要度情報32を取得すると共に、オルタネータパラメータ検出手段21によってSOCセンサ19から取得したSOCに基づいて、オルタネータ5の作動必要度を算出する(ステップS5)。
SOCとオルタネータ5の作動必要度との関係は、
図5に示したように規定されており、取得したSOCに基づいて、対応する作動必要度が算出される。
【0062】
次に、作動必要度算出手段23は、ステップS5で算出された作動必要度が、ゼロであるか否かを判断することによって、オルタネータ5の作動が必要か否かを判定する(ステップS6)。
そして、作動必要度がゼロである場合(ステップS6:YES)、即ちバッテリ6のSOCが十分に高く充電する必要が無い場合、オルタネータECU20はオルタネータ5の作動が不要と判定し(ステップS11)、処理を終了する(エンド)。
一方、作動必要度がゼロでない場合(ステップS6:NO)、即ちバッテリ6のSOCが少なからず不足しており充電する必要がある場合、オルタネータ5の作動が必要と判定し、ステップS5で算出された作動必要度がエンジンECU10へ出力される。
【0063】
次に、作動優先度算出手段13は、ステップS1及びステップS2により作動優先度が区画されたエンジン燃費マップ33、及びステップS3で取得したエンジン回転数及び各種信号に基づいて燃料消費率を算出する(ステップS7)。
続いて、ステップS7で算出した燃料消費率、及びオルタネータ5の作動優先度と燃料消費率との関係を予め規定した作動優先度情報31に基づいて、現在の運転状態における作動優先度を算出する(ステップS8)。
【0064】
次に、作動優先度算出手段13は、ステップS5で算出された(作動必要度算出手段23から出力されてエンジンECU10に入力した)作動必要度が、ステップS8で算出された作動優先度以上であるか否かを判定する(ステップS9)。
作動必要度が作動優先度以上の場合(ステップS9:YES)、作動優先度算出手段13は、許可信号を生成する。作動優先度算出手段13により生成された許可信号はオルタネータECU20に出力される。
続いて、オルタネータ制御手段24は、作動優先度算出手段13から出力されてオルタネータECU20に入力された許可信号に基づいて、オルタネータ5を作動させる(ステップS10)。
一方、作動必要度が、作動優先度未満の場合には(ステップS9:NO)オルタネータ5を作動しないと判定し(ステップS11)、処理を終了する(エンド)。
【0065】
尚、ステップS8における作動優先度の算出では、エンジン2のエンジン回転数、燃料噴射量だけではなく、フットブレーキ信号、補助ブレーキ信号も考慮される。これにより、車両1減速時、且つエンジン2が無負荷状態にあるか否か、若しくは惰性走行時、且つエンジン2が無負荷状態にあるか否かを判定する。
車両1減速時、且つエンジン2が無負荷状態にある場合は、上述したように作動優先度が最も高い「1」に設定されており、惰性走行時、且つエンジン2が無負荷状態にある場合は作動優先度がその次に高い「2」に設定される。
また、エンジン2が有負荷運転時における最も高い作動優先度は「3」であり、以降エンジン2の燃料消費率に応じてステップS1及びステップS2にて取得した情報を元に優先度が特定される。そのため、オルタネータ5を作動させたとしても燃料消費率への悪影響を最小限に抑えることができる。
【0066】
更に、ステップS8では、クラッチ信号、及びニュートラル信号も考慮される。これにより、駆動輪とエンジン2とが動力的に接続されていない場合、例えば変速機のギア段がニュートラル状態にある場合やクラッチによってエンジン2の動力が遮断されている場合においてエンジン2を空吹かしした際に、不必要にオルタネータ5が作動することを効果的に回避することができる。
【0067】
<効果>
上述した冷却システム3の作動制御装置8によれば、作動必要度が車両1やエンジン2の運転状態を考慮して特定される作動優先度以上の場合にオルタネータ5を作動させることにより、燃料消費率にとって有利となる車両1やエンジン2の運転状態を考慮したタイミングで、オルタネータ5を作動させることができる。これにより、車両1減速時、若しくは惰性走行時にあってエンジン2が無負荷運転時だけでなく、エンジン2が有負荷運転時においてオルタネータ5を作動させた場合であっても、オルタネータ5の作動必要度に応じて適切なタイミングでオルタネータ5を作動させることができるので、良好な燃料消費率を達成することができる。
【0068】
特に、作動優先度は車両1減速時、且つエンジン2が無負荷状態である場合に最も高く、惰性走行時、且つエンジン2が無負荷状態である場合がその次に高く設定されると共に、エンジン2が有負荷状態である場合には該負荷が大きくなるに従い優先度が高くなるように設定されている。
図2及び
図3を参照して説明したように、有負荷運転時ではエンジン2の負荷が大きくなるに従い、オルタネータ5の作動による相対的な燃料消費率への悪影響が少ない。そのため、有負荷状態である場合には負荷が大きくなるに従って優先度が高くなるように設定することによって、エンジン2が無負荷運転時におけるオルタネータ5作動だけでは必要とされる冷却システム3の作動を賄いきれない場合であっても、有負荷運転時において良好な燃料消費率が得られるタイミングでオルタネータ5を作動させることができる。
【0069】
また、エンジンECU10とオルタネータECU20が別々に設けられているため、例えば、トラックに冷凍機を搭載する場合や、車両1にクーラーを搭載する場合等に有効である。具体的には、エンジンECU10を車両本体側に設け、オルタネータECU20を冷凍機やクーラー等の冷却コントロールユニットに組み込むことにより、本発明に係る制御を実行することができる。
【0070】
尚、本実施形態では、オルタネータ5の動作に関する状態パラメータとして、バッテリ6のSOCを検出した場合について説明したが、冷凍庫1B内の温度、コンプレッサ7から供給される冷媒の圧力を検出してもよい。
【0071】
また、本実施形態では、オルタネータ5が1台のみである場合を例に説明したが、オルタネータ5が複数存在する場合には、それぞれのオルタネータ5について上述の制御を個別に実施するとよい。
【0072】
そして、本実施形態では、冷却システム3として、冷凍庫1B内を冷凍する場合について説明したが、バスやトラック等の車両1の室内や荷台内を冷却するエアコン等にも適用可能であることは言うまでも無い。