特許第6025024号(P6025024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NOK株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6025024-ボールジョイント用ダストカバー 図000002
  • 特許6025024-ボールジョイント用ダストカバー 図000003
  • 特許6025024-ボールジョイント用ダストカバー 図000004
  • 特許6025024-ボールジョイント用ダストカバー 図000005
  • 特許6025024-ボールジョイント用ダストカバー 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025024
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】ボールジョイント用ダストカバー
(51)【国際特許分類】
   F16C 11/06 20060101AFI20161107BHJP
   F16J 3/04 20060101ALI20161107BHJP
   F16J 15/52 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   F16C11/06 Q
   F16J3/04 B
   F16J15/52 B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-162226(P2012-162226)
(22)【出願日】2012年7月23日
(65)【公開番号】特開2013-177957(P2013-177957A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2015年6月15日
(31)【優先権主張番号】特願2012-20433(P2012-20433)
(32)【優先日】2012年2月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107320
【弁理士】
【氏名又は名称】高塚 一郎
(72)【発明者】
【氏名】石森 潤一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 徳朗
(72)【発明者】
【氏名】金川 幸司
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−088378(JP,A)
【文献】 特開2007−247824(JP,A)
【文献】 特開2008−232249(JP,A)
【文献】 特開2008−240865(JP,A)
【文献】 特開2009−030793(JP,A)
【文献】 実開昭60−103766(JP,U)
【文献】 実開平02−127816(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/06
F16J 3/04,15/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールスタッド(1)の一端に形成された球頭部(2)がソケット(3)内に保持され、前記ボールスタッド(1)の他端の軸(4)はナックル(5)に締め付け固定され、一端大径開口部(8)が前記ソケット(3)の外周面に固定保持され、補強環(9)が埋設された他端小径開口部(7)が前記軸(4)に保持された弾性材製ボールジョイント用ダストカバー(6)において、
前記補強環(9)が、筒状部(91)と、前記筒状部(91)の前記ナックル(5)側端部から前記軸(4)に向かって伸びているフランジ部(92)とより成り、前記フランジ部(92)の前記ナックル(5)側の側面(921)及び前記フランジ部(92)の前記軸(4)の周面に対峙する内周面(922)が露出する形で前記小径開口部(7)に一体化され、前記フランジ部(92)の径方向内方端部(923)が、前記軸(4)側に突出すると共に、前記軸(4)外周面に設けた段部(41)に係合し、前記径方向内方端部(923)の前記軸(4)外周面と接する前記内周面(922)に複数個の突起(924)、(924)を等配に設けたことを特徴とするボールジョイント用ダストカバー。
【請求項2】
前記補強環(9)が、金属材製であることを特徴とする請求項1記載のボールジョイント用ダストカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールジョイント用ダストカバーに関する。
また、本発明は、自動車懸架装置、操舵装置等に使用されるボールジョイント用ダストカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボールジョイント継ぎ手部の防塵、防水を目的としてダストカバーが装着されているボールジョイントとしては図5に記載のボールジョイント用ダストカバーが知られている。(特許文献1)
【0003】
この種ボールジョイント用ダストカバーのシール構造は、ボールスタッド100の一端に形成された球頭部200がソケット300内に保持されている。
そして、ボールスタッド100の他端の軸400は、ナックル500に締め付け固定されている。
一方、ゴム状弾性材製ダストカバー600の断面略コ字形状の一端大径開口部800が、ソケット300の外周面に形成された環状の溝部310内に、円環状押さえリング700により固定保持され、他端小径開口部150が軸400に保持された構成となっている。
この押さえリング700は、断面略矩形状のサークリップが使用されている。
【0004】
この種、従来のダストカバー600は、図5に示す様にボールスタッド100が傾斜した状態で揺動すると、ダストカバー600の膜部が伸びる側(図上右側)において、小径開口部150を引き伸ばす力が作用する為、小径開口部150のリップ部とナックル500との接触が外れる、いわゆる小径開口部150の口開き現象が発生する。
この結果、小径開口部150におけるシール性能が低下し、外部から土砂や塵芥がダストカバー600内に浸入する問題を惹起した。
【0005】
また、一般的なダストカバーは、図4に示す様に釣鐘形状を有している事が多いいが、ソケットの縮小化等の理由により、ボールスタッドとソケットとの径差が少なくなると、ダストカバーの形状を釣鐘形状から円筒形状に近付く設定とせざるを得ない場合が発生した。
【0006】
この様に、ダストカバーの形状が、円筒形状に近付くにつれ、ダストカバーの膜部に加わる歪みが大きくなる傾向が有る。
この結果、ダストカバーの耐久性が低下し、ダストカバーのセット時にダストカバーの膜部の円周上の一部が内径側に変形する問題を招来すると共に、ダストカバーの小径開口部がボールスタッドから脱落する問題を惹起した。
従って、ボールスタッドとソケットとの径差が少なくなったとしても、ダストカバーの形状は、釣鐘形状を維持する事が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62−137408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、ボールスタッドとソケットとの径差が少なくなったとしても、ダストカバーの形状を釣鐘形状に維持する事を可能とし、ダストカバーの小径開口部がボールスタッドから脱落する問題を解消出来ると共に、耐久性が良好なボールジョイント用ダストカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のボールジョイント用ダストカバーは、ボールスタッドの一端に形成された球頭部がソケット内に保持され、前記ボールスタッドの他端の軸はナックルに締め付け固定され、一端大径開口部が前記ソケットの外周面に固定保持され、補強環が埋設された他端小径開口部が前記軸に保持された弾性材製ボールジョイント用ダストカバーにおいて、前記補強環が、筒状部と、前記筒状部の前記ナックル側端部から前記軸に向かって伸びているフランジ部とより成り、前記フランジ部の前記ナックル側の側面及び前記フランジ部の前記軸の周面に対峙する内周面が露出する形で前記小径開口部に一体化され、前記フランジ部の径方向内方端部が、前記軸側に突出すると共に、前記軸外周面に設けた段部に係合し、前記径方向内方端部の前記軸外周面と接する前記内周面に複数個の突起を等配に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1記載の発明のボールジョイント用ダストカバーによれば、ボールスタッドとソケットとの径差が少なくなったとしても、ダストカバーの形状を釣鐘形状に維持する事を可能とし、ダストカバーの小径開口部がボールスタッドから脱落する問題を解消出来ると共に、耐久性が良好であり、また、ダストカバーの小径開口部がボールスタッドから脱落する問題をより確実に解消出来ると共に、成形時において、フランジ部の径方向内方端部により補強環の位置決めが可能な為、金型に環受ピンを設ける必要が無くなり、金型の加工工数を削減出来、更に、径方向内方端部の軸外周面と接する内周面に複数個の突起を等配に設ける態様としている為、ボールスタッドと補強環との間の摺動抵抗を減らす事が出来る結果、ダストカバー膜部の座屈(ねじれ)の発生を抑える事が出来る。
【0011】
更に、請求項2記載の発明のボールジョイント用ダストカバーによれば、補強環をより薄く出来る為、ボールスタッドとソケットとの径差が少なくなったとしても、ダストカバーの形状を釣鐘形状に維持する事がより可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る、ボールジョイント用ダストカバーの縦断面図。
図2図1のボールジョイント用ダストカバーの小径開口部の部分拡大図。
図3図2に示した補強環の平面図。
図4参考形態に係るボールジョイント用ダストカバーを図2と同様に示した図。
図5】従来技術に係る、ボールジョイント用ダストカバーの縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
図1図3に示される様に、本発明に係るボールジョイント用ダストカバーは、ボールスタッド1の一端に形成された球頭部2がソケット3内に保持され、このボールスタッド1の他端の軸4は、ナックル5に締め付け固定され、一端大径開口部8がソケット3の外周面に固定保持され、補強環9が埋設された他端小径開口部7が軸4に保持される構成となっている。
【0014】
そして、この補強環9は、筒状部91と、この筒状部91のナックル5側端部から軸4に向かって伸びているフランジ部92とより構成されている。
更に、このフランジ部92のナックル5側の側面921及びフランジ部92の軸4の周面に対峙する内周面922が、露出する形で小径開口部7に一体化されている。
また、フランジ部92の径方向内方端部923は、軸4側に突出すると共に、軸4外周面に設けた環状の段部41に係合している。
【0015】
この為、小径開口部7が、ダストカバー6の膜部により、球頭部2側(図上下方)に引張られたとしても、径方向内方端部923が段部41と協働して球頭部2側への変位を阻止する。
更に、補強環9のフランジ部92が、軸4に向かって伸びる構成としている為、小径開口部7をより小型化出来る為、ボールスタッド1とソケット3との径差が少なくなったとしても、ダストカバー6の形状を釣鐘形状に維持する事が可能である。
また、補強環9の径方向内方端部923の軸4外周面と接する内周面922に、複数個の円弧状の突起924、924を等配に設ける態様としている。この為、ボールスタッド1と補強環9との間の摺動抵抗を減らす事が出来る結果、ダストカバー6膜部の座屈(ねじれ)の発生を抑える事が出来る。
本態様では、円弧状の12本の突起924、924を等配に設ける態様としたが、突起924の数は3本以上存在すれば良く、また、円弧状の突起だけでなく、三角形や四角形の突起であっても良く、軸4外周面との接し方が、線若しくは点接触に近い形となって、摺動抵抗を減らす事が出来る形状であれば、各種形状が適用可能である。
また、突起924、924間に存在する谷部925の内径は、シールリップ72を補強環9のフランジ部92に一体成形する際に、金型がフランジ部92の全面に接して、弾性材が谷部925を介して側面921側に漏出する事のない大きさに設計される。
具体的には、谷部925が、段部41内に収まる形状とする事が望ましい。
【0016】
そして、ダストカバー6の形状を釣鐘形状に維持できる為、ダストカバー6の膜部に加わる歪みが大きくなる傾向を解消出来る結果、ダストカバー6の耐久性を向上させ、ダストカバーのセット時にダストカバーの膜部の円周上の一部が内径側に変形する問題を回避出来る。
【0017】
また、フランジ部92のナックル5側の側面921及びフランジ部92の軸4の周面に対峙する内周面922が、露出する形で小径開口部7に一体化されている為、小径開口部7をより小型化出来る。
【0018】
また、ダストカバー6内には、グリースが封入されている。
【0019】
補強環9は、SPCC等の鋼板から打ち抜き加工により製作される。
この為、樹脂材等を使用した場合に比べ、補強環9をより薄く出来る為、ボールスタッド1とソケット3との径差が少なくなったとしても、ダストカバー6の形状を釣鐘形状に維持する事がより可能となる。
【0020】
また、ダストカバー6の材質は、クロロプレン等のゴム状弾性材や、ポリエステル系エラストマー、熱可塑性ポリウレタン等の熱可塑性エラストマーから、適宜用途に合わせ選択して使用される。
【0021】
ついで、参考形態に係るボールジョイント用ダストカバーの他の態様を図4に基づき説明する。
先に説明した実施態様と相違する点は、フランジ部92の内方端部923を、軸4側に突出させる代わりに、筒状部91の球頭部2側端部を支持する環受ピン用のピン溝61を設けたことである。
【0022】
この様な構成とする事により、軸4外周面に段部41が設けられない場合においても、ダストカバー6の形状を釣鐘形状に維持する事が可能である。
【0023】
また、ダストカバー6内には、グリースが封入されている。
【0024】
一方、ゴム状弾性材製ダストカバー6の断面略コ字形状の一端大径開口部8は、ソケット3の外周面に形成された環状の溝部31内に、円環状押さえリング11により固定保持される構成となっている。
この押さえリング11は、断面略矩形状のサークリップが使用されている。
【0025】
また、小径開口部7には、ナックル5と弾性接触しているダストリップ71を設けると共に、軸4外周面と弾性接触しているシールリップ72が形成されている。
このため、外部からダストカバー6内へのダストの侵入を、より効果的に阻止出来ると共に、ダストカバー6内からのグリースの流出を防いでいる。
【0026】
また、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
自動車の懸架装置及び操舵装置等に使用されるボールジョイントに使用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 ボールスタット
2 球頭部
3 ソケット
4 軸
5 ナックル
6 ダストカバー
7 小径開口部
8 大径開口部
9 補強環
11 押えリング
31 溝部
41 段部
71 ダストリップ
72 シールリップ
91 筒状部
92 フランジ部
921側面
922内周面
923内方端部
924突起
925谷部
図1
図2
図3
図4
図5