(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにユーザが粘着テープを貼り付けて使用するときに、表面に汚れやゴミが付着する場合があり、これを防止するために、テープ基材層の表面に剥離層を設けることが考えられる。ここで、このような粘着テープは、例えば、所定の軸心まわりに巻回したロールとして生成される場合が考えられる。上述のように剥離層を設ける場合、粘着テープは剥離層、テープ基材層、及び粘着層、をこの順序で含むことから、上記ロールにおいては、粘着層は、ロールの径方向に剥離層と接して粘着した状態となる。そして、ロールから粘着テープが繰り出されるときには、上記粘着層が剥離層から順次引き剥がされて剥離されることから、その剥離性を向上させるための配慮も必要となる。
【0005】
上記従来技術においては、上述した、ロールからの繰り出し時における剥離性、及び貼り付けて使用されるときの防汚性を維持できる、最適な特性の粘着テープを実現することまでは配慮されていなかった。
【0006】
本発明の目的は、ロールからの繰り出し時における剥離性を向上しつつ、貼り付けて使用されるときの防汚性を維持できる、最適な特性の粘着テープを実現できる、粘着テープ及び粘着テープロー
ルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願第1発明は、厚さ方向寸法を備えた粘着テープであって、
ポリプロピレンにより構成されたテープ基材層と、前記テープ基材層の前記厚さ方向の一方側に設けられ、
溶解度パラメータの値が9より大きく14以下であるアクリル系粘着剤により構成された粘着層と、前記粘着層の前記厚さ方向の一方側に設けられ、当該粘着層に対し剥離可能に粘着する剥離材と、前記テープ基材層の前記厚さ方向の他方側に設けられ、
溶解度パラメータの値が7以上9以下であるポリプロピレンにより構成された、剥離層と、を有することを特徴とする。
【0008】
本願第1発明の粘着テープは、厚さ方向の他方側(例えば上側)から一方側(例えば下側)に向かって、剥離層、テープ基材層、粘着層、及び剥離材をこの順序で含む積層構造となっている。ユーザは、所望の長さのこの粘着テープを、剥離材を剥がし適宜の被着体に対し貼り付けることで、例えばラベルや梱包用の封止材として使用することができる。このとき、テープ基材層の上記一方側に剥離層が設けられていることにより、上記のようにラベルや封止材として使用されるときに表面に汚れやゴミが付着しにくくなり、防汚性を保つことができる。
【0009】
また、本願第1発明の粘着テープは、例えば、所定の軸心まわりに巻回したロール(1次ロール)として生成される場合がある。上述のように粘着テープには、剥離層、テープ基材層、粘着層、及び剥離材がこの順序で含まれる。しかし最終的には上記のように剥離材が剥がされて使用されることから、ユーザにより使用される直前においては、さらに剥離材が剥がされた状態でロール化(2次ロール)されている場合もあり得る。この場合、このロール(2次ロール)においては、上記粘着層は、ロールの径方向に剥離層と接して粘着した状態となる。上記剥離層はこの粘着層との粘着を再剥離しやすくすることも目的として設けられており、ロールから粘着テープが繰り出されるときには、上記粘着層が剥離層から順次引き剥がされて剥離される。
【0010】
そして本願第1発明では、このときの剥離性を向上する(より軽い負荷で粘着層を引き剥がせるようにする)ために、剥離層が、比較的溶解度パラメータの値が低い
ポリプロピレンによって構成されている。これにより、上記ロールからの粘着テープ繰り出し時における剥離層からの剥離性を向上することができる
。
【0011】
また、本願第1発明においては、前記剥離層を構成する
ポリプロピレンの溶解度パラメータの値が、7以上9以下であ
る。
【0012】
これにより、ロールから粘着テープが繰り出されるときの、粘着層からの剥離層の剥離性を確実に向上し、より軽い負荷で粘着層を引き剥がすことができる。
【0013】
また、本願第1発明においては、前記粘着層を構成す
る粘着剤の溶解度パラメータの値が、9より大きく14以下であ
る。
【0014】
上記のように、粘着テープがロールとして生成された場合に、粘着層と剥離層とがロールの径方向に接する状態となる場合がある。前述した繰り出し時の良好な引き剥がしの観点からは、これら粘着層と剥離層との密着性を減少させる必要があり、そのためには、粘着層の溶解度パラメータの値と剥離層の溶解度パラメータの値との差が比較的高いことが好ましい。上記のように、剥離層は、
ポリプロピレンによって構成されており、比較的溶解度パラメータの値が低い。そこで、本願
第1発明では、溶解度パラメータの値が比較的高い(9より大きく14以下である)粘着層を採用する。これにより、ロールとして生成されたときの、互いに径方向に接する粘着層と剥離層との密着性を減少させることができる。
【0015】
また、本願第1発明においては、前記粘着層を構成する前記所定の粘着剤は、アクリル系粘着剤であ
る。
【0016】
溶解度パラメータの値が高いアクリル系粘着剤を用いることにより、溶解度パラメータの値が低く設定されている剥離層に対する密着性を確実に減少させることができる。
【0017】
第2発明は、上記第1発明の粘着テープを、所定の軸心まわりに巻回して構成したことを特徴とする
。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ロールからの繰り出し時における剥離性を向上しつつ、貼り付けて使用されるときの防汚性を維持できる、最適な特性の粘着テープを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各図内に「前方」「後方」「左方」「右方」「上方」「下方」の注記がある場合は、明細書中内の説明における、前方(前)、後方(後)、左方(左)、右方(右)、上方(上)、下方(下)とは、その注記された方向を指す。
【0021】
<粘着テープ印刷装置の概略構成>
まず、
図1〜
図6を参照しつつ、本実施形態に係わる粘着テープ印刷装置の概略構成について説明する。
【0022】
図1〜
図6において、粘着テープ印刷装置1は、装置外郭を構成する筐体2と、第1開閉カバー3と、第2開閉カバー4と、第1収納部5と、第2収納部7と、第3収納部6とを有している。第1開閉カバー3は、筐体2の上部後方側に備えられている。第2開閉カバー4は、筐体2の上部前方側に備えられている。第1収納部5は、筐体2の後方側に備えられている。第2収納部7及び第3収納部6は、筐体2の前方側に備えられている。
【0023】
このとき、筐体2における(閉じ状態での)第1開閉カバー3の下方にある第1所定位置8には、粘着テープカートリッジTK(テープカートリッジ)が着脱可能に装着される。粘着テープカートリッジTKは、第1ロールR1(粘着テープロールの一例、1次ロールの一例に相当。詳細は後述)を後方側に備えると共に、第2ロールR2(剥離材ロール。詳細は後述)を前方側に備えている。
【0024】
第1収納部5には、粘着テープカートリッジTKの装着によって、第1ロールR1が上方から受け入れられ、略水平方向の軸心O1が略水平方向(詳細には左右方向)となる状態で収納される。第1ロールR1は、所望の幅方向寸法を備えた被印字粘着テープ150(粘着テープの一例に相当)を軸心O1まわりに巻回している。なお、
図2中では、第1ロールR1の被印字粘着テープ150が未消費である状態を実線で表し、第1ロールR1の被印字粘着テープ150がある程度消費された状態を想像線で表している。
【0025】
このとき、
図6に示すように、粘着テープカートリッジTKの後方側には、第1ロールR1を形成するための第1巻芯部材30が備えられている。そして、第1ロールR1は、この第1巻芯部材30が左・右一対の第1ブラケット部22,22で支持されることによって、第1収納部5に収納された状態(粘着テープカートリッジTKが装着された状態)において当該第1収納部5内で回転自在(
図2及び
図3中のA方向に回転自在)に支持される。
【0026】
被印字粘着テープ150は、
図3に示すように、厚さ方向一方側(この例では
図3中の下方側)から他方側(この例では
図3中の上方側)へ向かって、剥離材151、粘着剤層152(粘着層に相当)、基材層153(テープ基材層に相当)、及び、剥離剤層154(剥離層に相当)が、この順序で積層されている。すなわち、この例では、剥離剤層154が最上層、剥離材151が最下層に位置している。剥離剤層154は、後述する印字ヘッド10によって所望の印字が形成される層であるとともに、その印字形成後の被印字粘着テープ150″(詳細は後述)がユーザによってラベルや封止材として使用されるときに表面への汚れやゴミの付着を防止して防汚性を保持するための層である。粘着剤層152は、基材層153を適宜の被着体(図示省略)に貼り付けるための層である。剥離材151は、粘着剤層152を覆う層である。
【0027】
このとき、第1開閉カバー3が、筐体2の後方側端部に設けられた所定の回動軸心Kまわりに回動することで、第1収納部5の上方を開閉可能である。詳細には、第1開閉カバー3は、筐体2の後方側を覆う閉じ位置(
図1、
図2、
図3、
図5の状態)から当該筐体2の後方側を露出させる開き位置(
図4、
図6の状態)までの間で回動可能となっている。
【0028】
また、第1収納部5と第2収納部7とを連通する筐体2内部の略中間上方側には、印字ヘッド10及び搬送ローラ11が互いに上下方向に対向して配置されている。
【0029】
搬送ローラ11は、第1収納部5に収納された第1ロールR1から繰り出される被印字粘着テープ150を、テープ幅方向が略水平方向(詳細には左右方向)となるテープ姿勢(言い換えれば、テープ横断面を略水平方向(詳細には左右方向)としたテープ姿勢)で搬送する。また、この搬送ローラ11は、ギア機構を介して、搬送用モータM1によって駆動される。搬送用モータM1は、上記のように後方側と前方側とに振り分け配置された第1収納部5と第2収納部7及び第3収納部6との中間(第1収納部5よりも前方側でかつ第2収納部7及び第3収納部6よりも後方側)に、出力軸(図示省略)の軸心方向が略水平方向(詳細には左右方向)となるように配設されている。なお、搬送ローラ11は、この例では搬送用モータM1の略上方に配設されている。
【0030】
印字ヘッド10は、搬送される被印字粘着テープ150を搬送ローラ11と協働して挟持するように、第1開閉カバー3のうち搬送ローラ11の略上方に対向する部位に配設されている。そして、印字ヘッド10は、搬送される被印字粘着テープ150の上記剥離剤層154に対し、後述するリボンカートリッジRKのインクリボンIBを用いて所望の印字を形成し、印字済み粘着テープ150′とする。
【0031】
すなわち、筐体2における(閉じ状態での)第1開閉カバー3の下方でかつ粘着テープカートリッジTKの上方となる第2所定位置9には、リボンカートリッジRKが着脱可能に装着される。リボンカートリッジRKは、リボン供給ロールR4(インクリボンロールに相当)を後方側に回転自在(
図2中D方向に回転自在)に備えると共に、リボン巻き取りロールR5を前方側に回転自在(
図2中E方向に回転自在)に備えている。リボン供給ロールR4は、印字ヘッド10による印字形成を行うためのインクリボンIBを繰り出す。リボン巻き取りロールR5は、印字形成後の使用済みのインクリボンIBを巻き取る。リボンカートリッジRKが第2所定位置9に装着されることにより、印字ヘッド10及び搬送ローラ11よりも後方側にリボン供給ロールR4が配置されると共に、印字ヘッド10及び搬送ローラ11よりも前方側にリボン巻き取りロールR5が配置される。なお、
図2中では、リボン供給ロールR4のインクリボンIBが未消費であってリボン巻き取りロールR5に使用済みのインクリボンIBがまだ巻回されていない状態を実線で表し、リボン供給ロールR4のインクリボンIBがある程度消費されてリボン巻き取りロールR5に使用済みのインクリボンIBがある程度巻回された状態を想像線で表している。
【0032】
そして、リボン供給ロールR4から繰り出されるインクリボンIBは、印字ヘッド10の下方に接触する。このとき、インクリボンIBは、
図2に示すように、リボン基材層164と、所定の受熱により溶融してリボン基材層164から分離するアンダー層163と、転写対象に対し付着するトップ層161と、トップ層161とアンダー層163との厚さ方向中間に位置するインク層162と、を備えた(この例では4層の)積層構造となっている。そして、印字ヘッド10からの加熱による受熱により上記アンダー層163が溶融することで、上記リボン基材層164から、アンダー層163、インク層162、及びトップ層161からなる転写層IKが分離する。そして、当該転写層IKのトップ層161側が転写対象である被印字粘着テープ150の剥離剤層154に対し付着する(後述する
図7参照)。これにより、
インクリボンIBのインクが、搬送される被印字粘着テープ150の剥離剤層154に印字形成が実行されて上記印字済み粘着テープ150′が生成された後、使用済みのインクリボンIBがリボン巻き取りロールR5に巻き取られる。なお、リボンカートリッジRKは、
図4に示すように、第2開閉カバー4が閉じ状態のままで第1開閉カバー3を開き状態とすることで、第2所定位置9に対し着脱可能となっている。
【0033】
第3収納部6には、第3ロールR3(印字済み粘着テープロールの一例、2次ロールの一例に相当)が上方から受け入れられ、略水平方向の軸心O3が略水平方向(詳細には左右方向)となる状態で収納される。第3ロールR3は、印字済み粘着テープ150′から剥離材151が引き剥がされたテープ(剥離剤層154、基材層153、及び粘着剤層152からなるテープ本体と転写層IKとが含まれるテープ。
図3参照。以下適宜、単に「印字済み粘着テープ150″」と称する)を、軸心O3まわりに巻回する。なお、
図2中では、第3ロールR3に印字済み粘着テープ150″がまだ巻回されていない状態を実線で表し、第3ロールR3に印字済み粘着テープ150″がある適度巻回された状態を想像線で表している。このとき、
図6に示すように、第2開閉カバー4側の筐体2内には、第3ロールR3を形成するための第3巻芯部材40が備えられている。そして、第3ロールR3は、この第3巻芯部材40が支持ブラケットRBで支持されることによって、第3収納部6内で回転自在(
図2及び
図3中B方向に回転自在)に支持される。すなわち、第3ロールR3は、ギア機構を介し巻き取り用モータM3に接続され、当該巻き取り用モータM3によって巻き取り駆動される。この巻き取り用モータM3は、第2収納部7と第3収納部6との略中間下方に配設されている。
【0034】
またこのとき、第2開閉カバー4が、筐体2の前方側端部に設けられた所定の第1回動軸心K1まわりに回動することで、第3収納部6の上方を開閉可能である。詳細には、第2開閉カバー4は、筐体2の第3収納部6を覆う閉じ位置(
図1、
図2、
図3、
図4の状態)から第3収納部6を露出させる開き位置(
図5、
図6の状態)までの間で回動可能となっている。なお、第3ロールR3は、
図5に示すように、第1開閉カバー3が閉じ状態のままで第2開閉カバー4を開き状態とすることで、第3収納部6に対し着脱可能となっている。
【0035】
支持ブラケットRBは、第3ロールR3の軸心O3方向に沿った両側に当該第3ロールR3を挟むように対向して設けられた2つのブラケットを備えており、第3ロールR3(第3巻芯部材40)を、筐体2の前方側端部に設けられた所定の第2回動軸心K2まわりに回転可能に支持する。すなわち、支持ブラケットRBは、第2回動軸心K2まわりに、第2開閉カバー4の閉じ方向側に位置し第3ロールR3を着脱不能となる使用位置(
図1、
図2、
図3、
図4に示す位置)から、第2開閉カバー4の開き方向側に位置し第3ロールR3を着脱可能となる取り出し位置(
図5、
図6に示す位置)までの間で、回動可能に構成されている。なお、この例では、第2回動軸心K2は、上記第1回動軸心K1と同一位置(すなわち共通の軸心)となっている。
【0036】
第2収納部7には、粘着テープカートリッジTKの装着によって、第2ロールR2が上方から受け入れられ、略水平方向の軸心O2(略水平方向の軸線、又は、略水平方向の第2軸線に相当)が略水平方向(詳細には左右方向)となる状態で収納される。第2ロールR2は、テープ印字済み粘着テープ150″と分離する形で印字済み粘着テープ150′から引き剥がされた剥離材151を、軸心O2まわりに巻回する。なお、
図2中では、第2ロールR2に剥離材151がまだ巻回されていない状態を実線で表し、第2ロールR2に剥離材151がある程度巻回された状態を想像線で表している。このとき、
図6に示すように、粘着テープカートリッジTKの前方側には、第2ロールR2を形成するための第2巻芯部材50が備えられている。そして、第2ロールR2は、この第2巻芯部材50が左・右一対の第2ブラケット部24,24で支持されることによって、第2収納部7に収納された状態(粘着テープカートリッジTKが装着された状態)において当該第2収納部7内で回転自在(
図2及び
図3中のC方向に回転自在)に支持される。すなわち、第2ロールR2は、ギア機構を介し巻き取り用モータM2に接続され、当該巻き取り用モータM2によって巻き取り駆動される。この巻き取り用モータM2は、上記搬送用モータM1の下方に配設されている。
【0037】
また、第2開閉カバー4が閉じ状態であるときの当該第2開閉カバー4の第3ロールR3よりも後方側の部位には、カッター機構14が配置されている。カッター機構14は、後述する引き剥がし部13において剥離材151が引き剥がされた後の印字済み粘着テープ150″を切断するための機構である。
【0038】
<装置動作の概略>
次に、粘着テープ印刷装置1の動作の概略について説明する。
【0039】
すなわち、第1所定位置8に粘着テープカートリッジTKが装着されると、第1収納部5に第1ロールR1が収納され、第2収納部7に第2ロールR2が収納される。そして、搬送ローラ11が駆動されると、第1ロールR1の回転により繰り出される被印字粘着テープ150が、前方側へ搬送される。そして、その搬送される被印字粘着テープ150の剥離剤層154に対し、印字ヘッド10の加熱によるインクリボンIBの転写層IKの転写によって所望の印字が形成され、印字済み粘着テープ150′となる。その後、印字済み粘着テープ150′は、さらに前方側へ搬送され、上記引き剥がし部13まで搬送されると、当該引き剥がし部13において剥離材151が引き剥がされる。引き剥がされた剥離材151は、下方側へ搬送されて第2収納部7へ導入され、第2収納部7内において巻回されて第2ロールR2が形成される。
【0040】
一方、剥離材151が引き剥がされた印字済み粘着テープ150″は、さらに前方側へ搬送されて第3収納部6へ導入され、第3収納部6内において巻回されて第3ロールR3が形成される。その際、第3ロールR3よりも後方側、すなわち搬送経路に沿った上流側に設けられたカッター機構14が、印字形成されかつ剥離材151が引き剥がされた印字済み粘着テープ150″を切断する。これにより、ユーザの所望のタイミングで第3ロールR3に巻回されていく印字済み粘着テープ150″を切断し、切断後は第3ロールR3を第3収納部6から取り出すことができる。
【0041】
<実施形態の特徴>
以上の基本構成において、本実施形態の特徴は、第1ロールR1及び第3ロールR3におけるテープ繰り出し時の剥離性の向上、インクリボンIBの被印字粘着テープ150への転写性の向上、及び印字済み粘着テープ150″の防汚性の向上を図れる被印字粘着テープ150及びインクリボンIBの層構造にある。以下、その詳細を順を追って説明する。
【0042】
<印字済み粘着テープの積層構造の概略>
図7(a)に、本実施形態の上記印字済み粘着テープ150″の積層構造を概念的に示す。
【0043】
図7(a)に示すように、印字済み粘着テープ150″は、上述したように、剥離剤層154、基材層153、及び粘着剤層152と、インクリボンIBからの転写により形成された転写層IKと、を有する。
【0044】
基材層153を形成する基材の種類としては、例えば、以下の材料を使用することができる。
1.ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・メタクリル酸共重合体(EMMA)、ポリブテン(PB)、ポリブタジエン(BDR)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ナイロン(NY)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、発泡ポリスチレン(FS/EPS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVA)、普通セロハン(PT)、防湿セロハン(MST)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ビニロン(VL)、ポリウレタン(PU)、トリアセチルセルソース(TAC)、
2.金属箔<アルミニウム箔(AI)、銅箔>、真空蒸着(通常アルミニウムの)フィルム(VM)、
3.上質紙、無塵紙、グラシン紙、クレーコート紙、樹脂コート紙、ラミネート紙(ポリエチレンラミネート紙、ポリプロピレンラミネート紙等)などの紙
ユポ(合成)紙、クラフト紙
4.不織布
5.ガラスクロス
【0045】
剥離剤層154は、基材層153の上記厚さ方向他方側(図中上側)に設けられ、オレフィン樹脂系剥離剤(若しくは長鎖アルキル基を有するアクリル樹脂系剥離剤)により構成されている。剥離剤層154の溶解度パラメータの値(以下適宜、「SP値」という)は、例えば7以上9以下の、比較的低い値となっている。
【0046】
なお、剥離剤層154を形成する上記オレフィン樹脂系剥離剤としては、結晶性オレフィン系樹脂が使用される。この結晶性オレフィン系樹脂としては、例えば下記のものが挙げられる。
【0047】
1.エチレン系樹脂(分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)
2.ポリプロピレン系樹脂(プロピレン単独ポリマー(プロピレン単独重合体)、プロピレン−α−オレフィンコポリマー(プロピレン−α−オレフィン共重合体)、なお、立体規則性α−オレフィン系樹脂という表記でもよい。また、上記結晶性オレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。)
【0048】
また、剥離剤層154を形成する上記長鎖アルキル系剥離剤としては、例えば下記のものが挙げられる。
1.長鎖アルキル基含有化合物
長鎖アルキルイソシアネートを反応させて得られたもの→側鎖に炭素数8〜30の長鎖アルキル基を有するもの。なお、上記炭素数が8未満となると剥離性能確保が難しい。また、炭素数が30を超えると入手性や取り扱いが困難である。このような剥離性ポリマーには、アルキルイソシアネートを原料成分としたウレタン系ポリマーなどの反応生成物、アクリル系重合体などがある。また、反応生成物は、ポリビニルアルコール系重合体やポリエチレンイミンなどに炭素数8〜30の長鎖アルキル基を有するアルキルイソシアネートを反応させて生成できる。例えば、ポリビニルアルコール系重合体+長鎖アルキルイソシアネート→ポリビニルカーバメート、または、ポリエチレンイミン+長鎖アルキルイソシアネート→アルキル尿素誘導体、等の反応が挙げられる。
【0049】
粘着剤層152は、基材層153の上記厚さ方向一方側(図中下側)に設けられ、例えばアクリル系粘着剤等の、所定の粘着剤により構成されている。粘着剤層152のSP値は、例えば9より大きく14以下の、比較的高い値となっている。
【0050】
転写層IKは、上述したように、アンダー層163、インク層162、及びトップ層161を備えている。
【0051】
アンダー層163(本実施形態での第1層に相当)は、転写層IKの上記厚さ方向他方側(図中上側)の表面に形成され、上述したように、所定の受熱により溶融してインクリボンIBのリボン基材層164から分離する。アンダー層163のSP値は、例えば7以上9以下の、比較的低い値となっている。
【0052】
トップ層161(本実施形態での第2層に相当)は、転写層IKの上記厚さ方向一方側(図中下側)の表面に形成され、転写対象に対し付着する。トップ層161のSP値は、例えば7以上9以下の、比較的低い値となっている。
【0053】
インク層162(第1インク層に相当)は、所定の顔料により構成されている。インク層162のSP値は、例えば9より大きく11以下の、比較的高い値となっている。
【0054】
<防汚性の向上>
上記印字済み粘着テープ150″は、上述したように、剥離剤層154、基材層153、及び粘着剤層152に対して、インクリボンIBからの転写で転写層IKが形成されることにより、構成されている。そして、ユーザは、前述のようにして第3ロールR3に巻回された印字済み粘着テープ150″を適宜のタイミングで第2収納部7から取り出した後、当該第3ロールR3から所望の長さ分の印字済み粘着テープ150″を繰り出して適宜の被着体に対し貼り付けることで、例えばラベルや梱包用の封止材として使用することができる。このとき、印字済み粘着テープ150″は、剥離剤層154、基材層153、及び粘着剤層152、をこの順序で含む積層構造となっている(
図3等も参照)。印字済み粘着テープ150″において基材層153の上記厚さ方向一方側(すなわち被着体への貼り付け側と反対側)に剥離剤層154を設けることにより、上記のようにラベルや封止材として使用されるときに表面に汚れやゴミが付着しにくくなり、防汚性を保つことができる。
【0055】
<剥離性の向上>
ここで、上述のように印字済み粘着テープ150″では剥離剤層154、基材層153、及び粘着剤層152をこの順序で含むことから、上記第3ロールR3においては、
図7(a)に示されるように、転写層IKが転写されている部分以外では、粘着剤層152は、第3ロールR3の径方向に剥離剤層154と接して粘着した状態となる(
図3も参照)。上記剥離剤層154はこの粘着剤層152との粘着を再剥離しやすくすることも目的として設けられている。すなわち、上記のようにして第3ロールR3から印字済み粘着テープ150″が繰り出されるときには、上記粘着剤層152が剥離剤層154から順次引き剥がされて剥離される。そして本実施形態では、このときの剥離性を向上する(より軽い負荷で粘着剤層152を引き剥がせるようにする)ために、剥離剤層154が、SP値が比較的低い(例えば7以上9以下の)、オレフィン樹脂系剥離剤(若しくは長鎖アルキル基を有するアクリル樹脂系剥離剤)によって構成されている(
図8参照)。これにより、上記第3ロールR3からの印字済み粘着テープ150″繰り出し時における剥離剤層154からの剥離性を向上することができる。
【0056】
<転写性の向上等>
一方、転写層IKは、
図7(a)に示されるように、上記厚さ方向他方側(図中の上側)から上記厚さ方向一方側(図中の下側)に向かって、アンダー層163、インク層162、トップ層161、をこの順序で含む積層構造となっている(
図2も参照)。すなわち、インクリボンIBからの転写時には、転写層IKの上記厚さ方向一方側の表面に位置する上記トップ層161が上記剥離剤層154の上記厚さ方向他方側に隣接して形成される。転写性を良好にするためには、これら隣接する剥離剤層154とトップ層161との密着性を増大させる必要があり、そのためには、剥離剤層154のSP値とトップ層161のSP値との差が比較的低いことが好ましい(
図8参照)。
【0057】
ここで、前述のように、剥離剤層154は、オレフィン樹脂系剥離剤(若しくは長鎖アルキル基を有するアクリル樹脂系剥離剤)によって構成されており、比較的SP値が低い。そこで、本実施形態では、上記トップ層161についても、通常のテープ印字に用いられるインクリボンIBのようにSP値が11程度のものを使用せず、SP値が7以上9以下の比較的低い値のものを採用している(
図7(a)及び
図8参照)。これにより、トップ層161と剥離剤層154との密着性を増大させ、インクリボンIBから転写層IKが転写するときの転写性を向上することができる。
【0058】
また、上記のように第3ロールR3として巻回された場合には、既に述べたように、転写層IKが転写されている部分以外では、粘着剤層152と剥離剤層154とが第3ロールR3の径方向に接する状態となる(
図3及び
図7(a)参照)。上記密着性の観点からは、これら粘着剤層152と剥離剤層154との密着性を減少させる必要があり、そのためには、粘着剤層152のSP値と剥離剤層154のSP値との差が比較的高いことが好ましい。上記のように剥離剤層154のSP値は比較的低いことから、本実施形態では、SP値が比較的高い粘着剤層152が採用される(
図7(a)参照)。
【0059】
一方このとき、上記第3ロールR3として巻回された場合には、転写層IKが転写されている部分では、転写層IKの上記厚さ方向他方側(
図7(a)中の上側)表面に位置するアンダー層163と粘着剤層152とが第3ロールR3の径方向に接する状態となる(
図3及び
図7(a)参照)。上記密着性の観点からは、これらアンダー層163と粘着剤層152との密着性を減少させる必要があり、そのためには、アンダー層163のSP値と粘着剤層152のSP値との差が比較的高いことが好ましい(
図8参照)。上記の理由により本実施形態ではSP値が比較的高い粘着剤層152が用いられることから、アンダー層163のSP値は比較的低いことが好ましい。そこで、本実施形態では、アンダー層163についても、上記トップ層161と同様、SP値が7以上9以下の比較的低い値のものを採用している(
図7(a)及び
図8参照)。これにより、アンダー層163と粘着剤層152との密着性を減少させることができるので、インクリボンIBから剥離剤層154に転写して形成された転写層IKが再び粘着剤層152側へと引き剥がされるのを防止することができる。
【0060】
<実施形態の効果>
以上、説明したように、本実施形態によれば、第3ロールR3からの繰り出し時における剥離性を向上しつつ、ユーザが貼り付けて使用されるときの防汚性を維持できる、最適な特性の印字済み粘着テープ150″(印字付きの粘着テープの例、粘着テープの別の例に相当)を実現することができる。また、本実施形態によれば、インクリボンIBからの転写性も向上することができ、これによっても最適な特性の印字済み粘着テープ150″を実現することができる。
【0061】
また、本実施形態では特に、剥離剤層154を構成するオレフィン樹脂系剥離剤(若しくは長鎖アルキル基を有するアクリル樹脂系剥離剤)のSP値が、7以上9以下である。これにより、前述のようにして第3ロールR3から印字済み粘着テープ150″が繰り出されるときの粘着剤層152の剥離剤層154からの剥離性を確実に向上し、より軽い負荷で粘着剤層152を引き剥がすことができる。
【0062】
また、本実施形態では特に、粘着剤層152を構成する粘着剤のSP値が、9より大きく14以下である。これにより、上記のようにSP値の値が低く設定されている剥離剤層154に対する粘着剤層152の密着性を、確実に減少させることができる。
【0063】
また、本実施形態では特に、粘着剤層152を構成する粘着剤が、アクリル系粘着剤である。このようにSP値が高いアクリル系粘着剤を用いることにより、上記のようにSP値が低く設定されている剥離剤層154に対する密着性を確実に減少させることができる。
【0064】
また、本実施形態では特に、インクリボンIBから被印字粘着テープ150に転写される転写層IKが、3層構造となっている。すなわち、上記厚さ方向他方側から上記厚さ方向一方側に向かって、アンダー層163、インク層162、トップ層161である。このように、インク層162がアンダー層163とトップ層161との間で挟まれた構造であることにより、インク層162は、前述した転写層IKと剥離剤層154や粘着剤層152との密着性の設定(密着性の高低)には無関係となる。したがって、上述した剥離性、転写性等の最適な特性を阻害することなく、インク層162の顔料をユーザにとって所望の発色が得られるような種類に適宜に変更することができ、利便性を向上することができる。
【0065】
また、アンダー層163は、SP値が7以上9以下の比較的低い値であるのに対し、インク層162のSP値はそれより大きな値(9より大きく11以下)であり、これらアンダー層163と第1インク層162との間の密着力は比較的小さくなる。これにより、前述のようにして第3ロールR3からの繰り出しにつれて粘着剤層152が引き剥がされていくときに、仮に転写層IKも粘着剤層152と一緒に引き剥がされそうになった場合であっても、粘着剤層152に接するアンダー層163のみが粘着層に付随して引き剥がされ、第1インク層162はその引き剥がされるアンダー層163から分離して剥離剤層154側に残る。これにより、仮に上記のような引き剥がしが発生したとしても、少なくとも転写層IKによる発色の喪失については回避することができる。この結果、印字済み粘着テープ150″における、印字による表示機能を確実に維持することができる。
【0066】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例について順を追って説明する。
【0067】
(1)インク層のSP値を低くした場合
すなわち、
図7(b)に示されるように、本変形例では、転写層IK′において、アンダー層163とトップ層161との間に、上記実施形態のインク層162に代えて、所定の顔料により構成されSP値が7以上9以下と比較的低いインク層162′(第2インク層に相当)が設けられる。
【0068】
本変形例においては、上記実施形態と同様、インク層162′がアンダー層163とトップ層161との間で挟まれた構造であることにより、インク層162′は、前述した転写層IKと剥離剤層154や粘着剤層152との密着性の設定(密着性の高低)には無関係となる。したがって、上述した剥離性、転写性等の最適な特性を阻害することなく、インク層162′の顔料をユーザにとって所望の発色が得られるような種類に適宜に変更することができ、利便性を向上することができる。
【0069】
また、アンダー層163、インク層162′、トップ層161は、いずれも、SP値が7以上9以下のほぼ同等の値となっており、これらアンダー層163、第2インク層162′、及びトップ層161、相互間の密着力がそれぞれ比較的大きくなる。これにより、前述のようにして第3ロールR3からの繰り出しにつれて粘着剤層152が引き剥がされていくときに、それらアンダー層163、第2インク層162′、及びトップ層161が一体となって、粘着剤層152に付随し引き剥がされることなく剥離剤層154側に残る。これにより、印字済み粘着テープ150″における、印字による表示機能を確実に維持することができる。
【0070】
(2)トップ層を省略した場合
すなわち、
図7(c)に示されるように、本変形例では、転写層IK″において、上記
図7(b)の転写層IK′のトップ層161が省略され、インク層162″(第3インク層及び第2層に相当)が上記トップ層161の機能を兼ねている。したがって、インク層162″は、例えばSP値が7以上9以下の比較的低い値のものが採用される。このインク層162″は、所定の顔料により構成され、転写対象に対し付着可能である。
【0071】
本変形例においては、インクリボンIBから被印字粘着テープ150に転写される転写層IK″が、上記第1層としてのアンダー層163と、上記第2層としてのインク層162″との、2層構造となる。これにより、3層構造とする場合に比べ、コスト低減を図ることができる。
【0072】
(3)アンダー層を省略した場合
すなわち、
図7(d)に示されるように、本変形例では、転写層IK″′において、上記
図7(b)の転写層IK″′のアンダー層163が省略され、インク層162″′(第4インク層及び第1層に相当)が上記アンダー層163の機能を兼ねている。したがって、インク層162″′は、例えばSP値が7以上9以下の比較的低い値のものが採用される。
【0073】
本変形例においては、インクリボンIBから被印字粘着テープ150に転写される転写層IK″′が、上記第1層としてのインク層162″′と、上記第2層としてのトップ層161との、2層構造となっている。これにより、3層構造とする場合に比べ、コスト低減を図ることができる。
【0074】
(4)その他
なお、上記第3ロールR3において、印字を行うことなく、粘着剤層152、基材層153、剥離剤層154のみ(これら3層が粘着テープの別の例に相当する)を巻回しても良い。この場合も、剥離剤層154により、第3ロールR3からの繰り出し時に上記と同様の剥離性の向上効果及び防汚性保持の効果を得ることができる。
【0075】
また、第1ロールR1(粘着テープロールの別の例に相当)において、剥離材151のない状態のテープ(粘着テープの別の例に相当)を巻回しても良い。またこの場合、剥離剤層154に使用される剥離剤としては、上記オレフィン樹脂系剥離剤若しくは長鎖アルキル基を有するアクリル樹脂系剥離剤のみならず、シリコーン系剥離剤を使用することも考えられる。その場合には、剥離剤層154の上記SP値は、7以上9以下となる。これらの場合も、前述と同様、第1ロールR1からの上記テープの繰り出し時において、剥離剤層154により剥離性の向上効果を得ることができ、また第1ロールR1から上記テープを繰り出した後にユーザが使用する際の、防汚性保持の効果を得ることができる。
【0076】
また、以上においては、本発明を、被印字粘着テープ150に対し印字を行う粘着テープ印刷装置1に適用した場合を例にとって説明したが、これに限られず、粘着テープに対し印字以外の処理を行うテープ処理装置に適用することも可能である。
【0077】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用してもよい。
【0078】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。