(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025038
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】合成樹脂製丸形壜体
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20161107BHJP
B65D 1/46 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
B65D1/02 221
B65D1/46
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-241008(P2012-241008)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-91523(P2014-91523A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(72)【発明者】
【氏名】松尾 宣典
【審査官】
高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−062800(JP,A)
【文献】
特開2002−114215(JP,A)
【文献】
特開2011−126553(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01419970(EP,A1)
【文献】
米国特許第05255808(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D1/00−1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2軸延伸ブロー成形され、底部(5)に連設する胴部(4)の上端に、テーパー筒状の肩部(3)を介して立設された口筒部(2)を有し、前記胴部(4)を横方向に陥没させて減容変形可能とする有底筒状の合成樹脂製丸形壜体であって、
前記肩部(3)と前記胴部(4)との間及び前記胴部(4)と前記底部(5)との間に、最大外径寸法を有して円形状に形成された上部側最大径部(6A)及び下部側最大径部(6B)がそれぞれ設けられ、前記上部側最大径部(6A)と前記下部側最大径部(6B)との間の胴部(4)が横断面略楕円状に形成され、前記横断面略楕円状の胴部(4)は、短径(b)を介して対向する前面(4A)及び後面(4B)と、長径(a)を介して対向する両側面(4C)とを有し、
前記肩(3)の領域内で且つ前面(4A)及び前記後面(4B)に、中央凸部(8a)を前記口筒部(2)に向けると共に、その位置から前記両側面(4C)まで湾曲状に延びる両端(8b)を有して構成される円弧状の円弧リブ(8)が配置され、
前記下部側最大径部(6B)を介して隣接する胴部(4)と底部(5)との間の領域に、前記前面(4A)又は後面(4B)から前記両側面(4C)側に向かってそれぞれ傾斜状に延びる一対の斜行リブ(9)が配置されていることを特徴とする合成樹脂製丸形壜体。
【請求項2】
2軸延伸ブロー成形され、底部(5)に連設する胴部(4)の上端に、テーパー筒状の肩部(3)を介して口筒部(2)が立設された有底筒状の合成樹脂製丸形壜体であって、
前記肩部(3)と前記胴部(4)との間及び前記胴部(4)と前記底部(5)との間に、最大外径寸法を有して円形状に形成された上部側最大径部(6A)及び下部側最大径部(6B)をそれぞれ設けると共に、前記上部側最大径部(6A)と前記下部側最大径部(6B)との間の胴部(4)を横断面略楕円状に形成されており、
複数の周溝リブ(7)が胴部(4)に周設されると共に、一部の周溝リブ(7A)が壜体の両側面(4C)に設けた分断部分(7B)においてそれぞれ分断され、且つ前記周溝リブ(7A)の分断部分(7B)の長さ寸法(L4)が両側面(4C)において逆傾斜姿勢で対向する斜行リブ(9)同士の上端(9a)間の距離(L5)以上に形成されていることを特徴とする合成樹脂製丸形壜体。
【請求項3】
肩部(3)の領域に円弧リブ(8)が形成されると共に、胴部(4)と底部(5)とに亘る領域に一対の斜行リブ(9)が形成されている請求項2記載の合成樹脂製丸形壜体。
【請求項4】
円弧リブ(8)及び一対の斜行リブ(9)が、壜体の前面(4A)及び後面(4B)の双方に形成されている請求項3の合成樹脂製丸形壜体。
【請求項5】
円弧リブ(8)は、その両端(8b)を上部側最大径部(6A)側に向け、中央凸部(8a)を口筒部(2)側に向く状態で形成されている請求項3又は4記載の合成樹脂製丸形壜体。
【請求項6】
一対の斜行リブ(9)は、上端(9a)同士間の距離(L1)が下端(9b)同士間の距離(L2)よりも広くなるように形成されている請求項1、3、4又は5に記載の合成樹脂製丸形壜体。
【請求項7】
円弧リブ(8)の両端(8b)間の距離(L3)と、一対の斜行リブ(9)の上端(9a)同士間の距離(L1)とが略等しく形成されている請求項1、3、4、5又は6に記載の合成樹脂製丸形壜体。
【請求項8】
複数の周溝リブ(7)が胴部(4)に周設されている請求項1記載の合成樹脂製丸形壜体。
【請求項9】
一部の周溝リブ(7A)が、壜体の両側面(4C)に設けた分断部分(7B)においてそれぞれ分断されている請求項8記載の合成樹脂製丸形壜体。
【請求項10】
周溝リブ(7A)の分断部分(7B)の長さ寸法(L4)が、両側面(4C)において逆傾斜姿勢で対向する斜行リブ(9)同士の上端(9a)間の距離(L5)以上に形成されている請求項9記載の合成樹脂製丸形壜体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄肉に形成された合成樹脂製の丸形壜体、特には押し潰した際や減圧吸収時に容易に押し潰れて減容変形することのできる合成樹脂製丸形壜体に関する。
【背景技術】
【0002】
減容変形可能で、且つブロー成形若しくは2軸延伸ブロー成形手段により成形される合成樹脂製壜体に関する先行技術としては、例えば以下の特許文献1が存在する。
【0003】
特許文献1に記載の壜体は、壜体の軸対称位置に、縦方向全周に亘って傾斜段状の反転ライン5を連設し、反転ライン5から片側半分を通常の肉厚の半殻部6とすると共に、反転ライン5から他側半分を半殻部6よりもやや小径で、かつ薄肉の弾性反転変形可能な反転部7とすることにより、反転部7全体を半殻部6内に陥没変形可能な構成としたというものである。
【0004】
特許文献1に記載の壜体においては、壜体胴部の横断面形状が略楕円状であるため、壜体を容易に偏平させて減容化させることは可能であり、これによりその占有スペースを大幅に減少させ、もって内容液が充填されるまでの過程における保管、輸送等のコストを低減化することができると共に、取扱いを容易に効率良く行うことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−104355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記壜体では、合成樹脂製のプリフォーム等をブロー成形する際、長径側の樹脂の延伸率が短径側の樹脂の延伸率に比較して高いため、長径側の胴部の壁面が過延伸し易く、極度に肉薄な厚み寸法で形成されてしまう傾向がある。
【0007】
そして、壜体の薄肉化が必要以上に進展した状態では、例えば内容液が充填されるまでの過程や搬送の過程等において、局部的に薄肉化した長径側の胴部部分が充填装置の一部や他の壜体に当接すると、当接した部分に陥没変形が発生しやすくなると共に、復元力低下により陥没変形した部分が元の形状に戻り難くなるため、壜体全体の外観が損なわれ易くなると云う問題がある。
【0008】
他方、延伸率を均一にするために壜体胴部全体の断面形状を真円に近づけた場合には扁平する方向が未確定であるため、壜体を容易に押し潰して減容化させることが困難になる。
【0009】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、合成樹脂製の壜体を容易に押し潰すことができると共に、ブロー成形時の過延伸による極度な薄肉化を防止して胴部に発生しやすい局部的な陥没変形を抑制することにより壜体の美的な外観を維持できるようにした合成樹脂製丸形壜体を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の
第1の主たる構成は、
2軸延伸ブロー成形され、底部に連設する胴部の上端に、テーパー筒状の肩部を介して
立設された口筒部を有し、胴部を横方向に陥没させて減容変形可能とする有底筒状の合成樹脂製丸形壜体であって、肩部と胴部との間及び胴部と底部との間に、最大外径寸法を有して円形状に形成された上部側最大径部及び
下部側最大径部
がそれぞれ設
けられ、上部側最大径部と
下部側最大径部との間の胴部
が横断面略楕円状に形成
され、横断面略楕円状の胴部は、短径を介して対向する前面及び後面と、長径を介して対向する両側面とを有し、肩の領域内で且つ前面及び後面に、中央凸部を口筒部に向けると共に、その位置から両側面まで湾曲状に延びる両端を有して構成される円弧状の円弧リブが配置され、下部側最大径部を介して隣接する胴部と底部との間の領域に、前面又は後面から両側面側に向かってそれぞれ傾斜状に延びる一対の斜行リブが配置されていることを特徴とするとするものである。
また本発明の第2の主たる構成は、2軸延伸ブロー成形され、底部に連設する胴部の上端に、テーパー筒状の肩部を介して口筒部が立設された有底筒状の合成樹脂製丸形壜体であって、肩部と胴部との間及び胴部と底部との間に、最大外径寸法を有して円形状に形成された上部側最大径部及び下部側最大径部をそれぞれ設けると共に、上部側最大径部と下部側最大径部との間の胴部を横断面略楕円状に形成されており、複数の周溝リブが胴部に周設されると共に、一部の周溝リブが壜体の両側面に設けた分断部分においてそれぞれ分断され、且つ周溝リブの分断部分の長さ寸法が両側面において逆傾斜姿勢で対向する斜行リブ同士の上端間の距離以上に形成されていることを特徴とするというものである。
【0011】
上記構成の合成樹脂製丸形壜体は、上部側最大径部と下部側最大径部との間の胴部の形状は平断面略楕円状であるため、従来同様の押し潰し易さを確保すると共に、押し潰される方向(扁平方向ともいう)を規定し得る。
また胴部両側の位置に最大の外径寸法からなる上部側最大径部と下部側最大径部を形成すると共に、これらを真円に近い円形状で形成する構成とすることにより、ブロー成形された上部側最大径部及び下部側最大径部の延伸量の均一化を達成する。
【0012】
本発明の合成樹脂製丸形壜体の他の構成は、上記した合成樹脂製丸形壜体の
第2の主たる構成に、肩部の領域に円弧リブ
が形成されると共に、胴部と底部とに亘る領域に一対の斜行リブ
が形成されている、ことを加えたものである。
【0013】
上記構成では、胴部に力が作用したときに、上部側の円弧リブ及び下部側の斜行リブを基点とする胴部の陥没変形を達成する。
【0014】
また本発明の合成樹脂製丸形壜体の他の構成は、
第1の主たる構成を除く上記いずれかの構成に、円弧リブ及び一対の斜行リブ
が、壜体の前面及び後面の双方に形成
されている、ことを加えたものである。
【0015】
上記構成では、壜体の前面及び後面の双方における減容変形の容易化を達成し得る。
【0016】
また本発明の合成樹脂製丸形壜体の他の構成は、
第1の主たる構成を除く上記いずれかの構成に、円弧リブは、その両端を上部側最大径部側に向け、中央凸部を口筒部側に向く状態で形成
されている、ことを加えたものである。
【0017】
上記構成では、円弧リブ近傍で且つ底部側に位置する胴部部分の陥没変形時の基点として機能する。
【0018】
また本発明の合成樹脂製丸形壜体の他の構成は、
第1の主たる構成を除く上記いずれかの構成に、一対の斜行リブ
が、上端同士間の距離が下端同士間の距離よりも広くなるように形成
されている、ことを加えたものである。
【0019】
上記構成では、一対の斜行リブの近傍で且つ口筒部側に位置する胴部部分の陥没変形時の基点として機能する。
【0020】
また本発明の合成樹脂製丸形壜体の他の構成は、
第1の主たる構成を除く上記いずれかの構成に、円弧リブの両端間の距離と、一対の斜行リブの上端同士間の距離と
が略等しく形成されている、ことを加えたものである。
【0021】
上記構成では、円弧リブと一対の斜行リブとが陥没変形時の基点として機能し
、円弧リブと一対の斜行リブとの間に設けられた胴部の陥没変形を助長する。
【0022】
また本発明の合成樹脂製丸形壜体の他の構成は、上記
第1の主たる構成に、複数の周溝リブ
が胴部に周設
されている、ことを加えたものである。
【0023】
上記構成では、陥没変形時以外の通常の使用状態における胴部部分の補強を達成し得る。
【0024】
また本発明の合成樹脂製丸形壜体の他の構成は、上
記構成に、
一部の周溝リブ
が、壜体の両側面に設けた分断部分においてそれぞれ分断されている、ことを加えたものである。
【0025】
上記構成では、胴部に力が加わったときに、一対の斜行リブを基点とする胴部の減容変形が最下部の周溝リブによって阻止されることを防止する。
【0026】
また本発明の合成樹脂製丸形壜体の他の構成は、上
記構成に、周溝リブの分断部分の長さ寸法
が、両側面において逆傾斜姿勢で対向する斜行リブ同士の上端間の距離以上に形成
されている、ことを加えたものである。
【0027】
上記構成では、胴部に力が加わったときに、一対の斜行リブを基点とする胴部の減容変形動作の阻止防止を確実に達成する。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる構成においては、合成樹脂製壜体の胴部が横断面略楕円状であるため、押し潰した際や減圧状態に至った際に容易に、短径方向に偏平して減容化することができる。
【0029】
また上部側最大径部と下部側最大径部との間の胴部の形状を略楕円状に形成しても、楕円状胴部の長径寸法は上部側最大径部及び下部側最大径部の径寸法よりも短いため、過延伸となることがなく、従来のように長径側の胴部の壁面が極度に薄肉化することを防止することができる。
【0030】
しかも胴部が他の部材や隣接する他の壜体に当接する場合には、通常は上部側最大径部又は下部側最大径部が当接するため、胴部部分の陥没変形を防止できる。また仮に上部側最大径部又は下部側最大径部が当接するような場合があっても、必要最小限以上の肉厚で形成されているため、当接した部分の陥没変形を防止でき、あるいは例え陥没変形しても弾性的な復元力により元の形状に戻り易いため、壜体の外観が損なわれることを効果的に防止することが可能となる。
【0031】
また請求項
3の、肩部の領域に円弧リブ
が形成されると共に、胴部と底部とに亘る領域に一対の斜行リブ
が形成されている構成では、上部側の円弧リブと下部側の斜行リブとが陥没変形動作の基点として機能するため、胴部を容易に減容化させることができる。
【0032】
また請求項
4の、円弧リブ及び一対の斜行リブ
が、壜体の前面及び後面の双方に形成
されている構成では、壜体を前面及び後面から均等に減容化させることができる。
【0033】
また請求項
5の、円弧リブは、その両端を上部側最大径部側に向け、中央凸部を口筒部側に向く状態で形成
されている構成では、胴部が円弧の内周側に位置するようになるところ、円弧リブが陥没変形の基点として機能が発揮することにより、特に胴部の上部側をより確実に減容変形させることができるようになる。
【0034】
また請求項
6の、一対の斜行リブ
が、上端同士間の距離が下端同士間の距離よりも広くなるように形成
されている構成では、胴部が逆ハの字状に開いた一対の斜行リブ間に位置するようになるところ、一対の斜行リブの陥没変形の基点として機能が発揮することにより、特に胴部の底部側をより確実に減容変形させることができるようになる。
【0035】
また請求項
7の、円弧リブの両端間の距離と、一対の斜行リブの上端同士間の距離と
が略等しく形成
されている構成では、胴部が円弧リブと一対の斜行リブとの間に位置するようになるので、円弧リブ及び一対の斜行リブが陥没変形の基点として
の機能をそれぞれ発揮することにより、胴部全体をより確実に減容変形させることができる。
【0036】
また請求項
8の、複数の周溝リブ
が胴部に周設
されている構成では、胴部に面剛性と座屈強度を高くする手段が付与されるため、特に減容変形時以外の通常の使用状態における胴部部分の形状保形性を維持することが可能となる。
【0037】
また請求項
9の、
一部の周溝リブ
が、壜体の両側面に設けた分断部分においてそれぞれ分断
されている構成では、一対の斜行リブの機能が十分に発揮されるようになるため、胴部を確実に減容させることができる。
【0038】
また請求項
10の、周溝リブの分断部分の長さ寸法
が、両側面において逆傾斜姿勢で対向する斜行リブ同士の上端間の距離以上に形成
されている構成では、一対の斜行リブの機能が周溝リブの影響を受けて低下することを確実に防止することができるため、胴部をより確実且つ安定的に減容変形させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の実施例として合成樹脂製丸形壜体の前面を示す正面図である。
【
図6】
図1の合成樹脂製丸形壜体を前後両方向からの力を受けて減容化した状態の一例を示す側面側半断面図である。
【
図7】
図1の合成樹脂製丸形壜体の胴部剛性の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施例として合成樹脂製丸形壜体の前面を示す正面図、
図2は
図1の合成樹脂製丸形壜体の側面図、
図3は
図1の合成樹脂製丸形壜体の平面図、
図4は
図1の合成樹脂製丸形壜体の底面図、
図5は
図1のV−V線における横断面図である。
【0041】
なお、本実施例に示す合成樹脂製丸形壜体(以下、適宜「壜体」という)1は、前面4Aと後面4Bとは同様の構成であり、一方の側面4Cと他方の側面4Cも同様の構成である。したがって、前面4Aについての説明は後面Bについても適応されるものであり、一方の側面4Cについての説明は他方の側面4Cについても適応されるものである。
【0042】
図1に示す壜体1は、PET樹脂製の2軸延伸ブロー成形品で、口筒部2、テーパー筒状の肩部3、略楕円筒状の胴部4及び底部5を有して構成されている。また肩部3と胴部4との間には最大の外径寸法からなる上部側最大径部6Aが設けられ、胴部4と底部5との間にも同様の下部側最大径部6Bが設けられている。上部側最大径部6Aと下部側最大径部6Bとは真円に近い円形状である。
本実施例に示す壜体1は、例えば全高さ寸法204mm、上部側最大径部6A及び上部側最大径部6Aの最大外径寸法94.2mmであり、重量17gで通称容量1000mlである。
【0043】
壜体体1の肩部3の領域には、凹溝から構成された円弧リブ8が形成されている。円弧リブ8は、前面4A側の位置で中央凸部8aを口筒部2に向けると共に、その位置から両側方の両側面4Cまで湾曲状に延びる両端8b,8bを上部側最大径部6Aに向けた円弧状(または弓状ともいう。)である。
【0044】
下部側最大径部6Bを介して隣接する胴部4と底部5との間の領域には、凹溝から構成された一対の斜行リブ9が設けられている。
図1に示すように、一対の斜行リブ9は、胴部4側の上端9a同士間の距離L1が、底部5側の下端9b同士間の距離L2よりも広く形成されている(L1>L2)。なお、これらの関係は壜体1の後面Bにおいても同様である。
そして、斜行リブ9の下端9bは壜体1の前面4A(及び後面4B側)に設けられ、上端9aは両側方の両側面4Cに設けられており、一対の斜行リブ9は前面4A側(又は後面4B側)から両側面4C側に向かって傾斜状に延びる構成である。
【0045】
図5に示すように、胴部4は長径aと短径bとからなる横断面略楕円状である(a>b)。なお、長径aは両側面4C間の径寸法であり、短径bは前面4Aと後面4Bとの間の径寸法である。
また
図1及び
図2に示すように、胴部4には面剛性と座屈強度を高くする手段の一つとして複数の周溝リブ7(本実施例では5ケ)が高さ方向に一定の間隔を有して周設されており、胴部4について高い形状保形性を付与している。
【0046】
図2に示すように、本実施例では複数の周溝リブ7にうち最下部の周溝リブ7Aが、両側面4Cの分断部分7Bにおいて前後2つに分断されている。分断部分7Bの長さ寸法L4は、側面4Cに逆傾斜姿勢で対向する状態で形成された斜行リブ9,9の上端9a,9a同士間の距離L5とほぼ同じ寸法で形成されている。ただし、一対の斜行リブ9の機能を確保するには、分断部分7Bの長さ寸法L4は上端9a,9a同士間の距離L5以上であればよい(L4≧L5)。
なお、斜行リブ9の上端9a,9a同士間の距離L5、側面4Cにおいて対向する円弧リブの両端8b,8b同士間の距離L6と同じ寸法に設定されており、胴部4の上部及び下部においてバランス良く同じように減容変形できるようになっている。
【0047】
底部5の中央には、壜体1の内部方向に陥没形成された陥没凹部10が設けられ、低部5の外周側にはリング状の接地部12が形成されている。また接地部12には、細長状に延びて接地部12を径方向に横切る複数の放射リブ11が形成されており、接地部12を補強し壜体1の自立性を高めている。
【0048】
このような壜体1は、例えば合成樹脂製のプリフォームを、割り金型を使用した2軸延伸ブロー成形法により成形することができるが、上部側最大径部6A及び下部側最大径部6Bは過延伸の起きにくい横断面真円に近い円形状に成形されている。このため、上部側最大径部6A及び下部側最大径部6Bは必要最小限以上の肉厚を有することが可能となるため、この部分に局部的な肉薄部が形成されることを効果的に防止することが可能である。
【0049】
また成形後の壜体1の外面(前面4A,後面4B及び両側面4C)においては、最も外径方向に突き出ている部分は、上部側最大径部6A及び下部側最大径部6Bであり、胴部4を構成する前面4Aの長径a及び後面4Bの短径bの寸法は、共に上部側最大径部6A及び下部側最大径部6Bの径寸法未満に設定されている。このため、長径a側の胴部4である両側面4Cについても過延伸による肉薄部が形成されることがない。
【0050】
ところで、内容液の充填作業や搬送作業等においては、隣接する壜体1同士の接触や壜体1が充填装置の一部に当接するようなことが起きる場合があるが、このような場合、通常は局部的な肉薄部が形成されていない上部側最大径部6A又は下部側最大径部6Bが最初に当接することになる。このため、当接した部分の陥没変形を防止できる。あるいは例え上部側最大径部6A又は下部側最大径部6Bが陥没変形してもこれらは弾性的な復元力により元の形状に戻り易いため、壜体1全体の外観が損なわれることを効果的に防止することが可能である。
【0051】
図6は、
図1の合成樹脂製丸形壜体を前後両方向からの力を受けて減容化した状態の一例を示す側面側半断面図である。
【0052】
壜体1は、使用後に壜体1の胴部4に力を加えることにより容易に押し潰すことができる。この際、壜体1を押し潰す方向は、略楕円状の胴部4の短径bに沿う方向(
図6の白抜き矢印方向)とすることがこと好適である。すなわち、壜体1を両側から把持した状態、例えば胴部4の前面4Aに親指を当接させ、後面4Bに他の4本の指を当接させて片手で把持した状態から、親指と他の4本の指との間の距離を縮小させる方向に力を加えて胴部4を押し込むことにより、あるいは一方の手を胴部4の前面4Aに当接させ、他方の手を後面4Bに当接させて両手で把持した状態から、両手を互いに接近させる方向に力を加えて胴部4を押し込むことにより、壜体1を容易に扁平状態に押し潰すことができる。
【0053】
この際、胴部4は前面4A及び後面4Bの双方に設けられた円弧リブ8及び斜行リブ9を基点にして内方に向かって陥没変形するので、容易に壜体1を減容化させることが可能である。また円弧リブ8及び斜行リブ9を目印とすることが可能であり、この円弧リブ8及び斜行リブ9が形成された胴部4に対して略垂直方向から力を加えることにより、空となった使用後の壜体1を確実且つ安定的に押し潰して廃棄することができる。
【0054】
通常の使用状態においては、胴部4に周設された周溝リブ7が優先的に機能し、高い面剛性と座屈強度を有して胴部4について高い形状保形性を発揮するが、使用後の押し潰し作業においては、円弧リブ8及び斜行リブ9が優先的に機能して陥没変形の基点としての作用を発揮する。特に、斜行リブ9の近傍に設けられた最下部の周溝リブ7Aには、
図2に示すように両側面4Cにおいて周方向に対向する上端9a,9aに対し、高さ方向に分断部分7Bを対向させた構成となっている。この分断部分7Bは、最下部の周溝リブ7Aの機能を抑制し、斜行リブ9の機能、すなわち陥没変形時の基点としての機能を優先的に発揮させる。よって、胴部4に複数の周溝リブ7を有する壜体1であっても、押し潰し作業に支障をきたすことなく、確実に押し潰すことができる。
【0055】
ところで、お茶等の内容液を壜体1に充填する場合には、所謂、高温充填と呼ばれる方法により、90℃前後の温度で内容液を壜体1に充填し、キャップをして密封後に冷却するため、壜体1内がかなりの減圧状態となり、壜体1全体が減容変形することになる。
【0056】
この際、本発明の壜体1の胴部4の横断面は略楕円状であるため、短径bに沿う前面4Aと後面4Bとの間が優先的に収縮して減容することになる。すなわち、本発明では、胴部4を横断面略楕円状としておくことにより、減圧時に壜体1が減容変形する方向を予め規定することが可能である。このため、減容変形する方向が不規則となりやすい通常の円形の丸型壜体に比較し、より使い勝手が良く且つ安定的に減容変形する壜体1とすることができる。
【0057】
次に、壜体1について加圧試験を行ったのでその結果について説明する。
図7は
図1の合成樹脂製丸形壜体の胴部剛性の測定結果を示すグラフである。
加圧試験機を用いて、壜体1の前面4Aの中央部分(
図1の加圧位置I)及び側面4Cの中央部分(
図2の加圧位置II)に対してそれぞれ両面圧縮を加えた場合の加圧力と変位量との関係を示している。
【0058】
図7のグラフより、IIの前面側両面圧縮の方が、Iの側面側両面圧縮の方に比べて、全般亘って同じ変位量を得るのに小さな加圧力で済むことが分かる。すなわち、本発明の壜体1では、胴部4を減容変形させる場合には、側面4Cの両面を加圧するよりも、前面4Aの両面を加圧した方が潰れ易いことが確認できた。
【0059】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
上記実施例では、底部5側のリブとして一対の斜行リブ9を示して説明したが、一対の斜行リブ9の代わりに口筒部2側同様の円弧リブとすることが可能である。
同様に、口筒部2側についても円弧リブ8の代わりに一対の斜行リブとすることが可能である。
【0060】
また上記実施例では分断部分7Bを最下部の周溝リブ7Aに配置した場合を示して説明したが、分断部分7Bはいずれの周溝リブ7に配置しても構わない。ただし、上記のように斜行リブ9の機能、すなわち陥没変形時の基点としての機能を有効に発揮させる上では最下部の周溝リブ7Aに配置する構成が好ましい。
さらに分断部分7Bを配置した周溝リブ7の個数は1つに限られるものではなく、2つ、3つ、あるいは全ての周溝リブ7に配置する構成でも構わない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の合成樹脂製丸型壜体は、局部的に肉薄形成された部分が陥没変形することによる外観の損傷を防止すると共に、容易に減容変形させることのできる合成樹脂製の丸型壜体の技術分野における用途展開をさらに広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 ; 壜体(合成樹脂製丸型壜体)
2 ; 口筒部
3 ; 肩部
4 ; 胴部
4A ; 前面
4B ; 後面
4C ; 側面
5 ; 底部
6A ; 上部側最大径部
6B ; 下部側最大径部
7 ; 周溝リブ
7A ; 最下部の周溝リブ
7B ; 分断部分
8 ; 円弧リブ
8a ; 中央凸部
8b ; 両端
9 ; 斜行リブ
9a ; 上端
9b ; 下端
10 ; 陥没凹部
11 ; 放射リブ
12 ; 接地部
a ; 長径
b ; 短径