特許第6025057号(P6025057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025057
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】パワー素子の温度検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/24 20060101AFI20161107BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20161107BHJP
【FI】
   G01K7/24 Z
   H02M7/48 E
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-131064(P2013-131064)
(22)【出願日】2013年6月21日
(65)【公開番号】特開2015-4623(P2015-4623A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119644
【弁理士】
【氏名又は名称】綾田 正道
(72)【発明者】
【氏名】横山 哲也
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−30593(JP,A)
【文献】 特開2011−10468(JP,A)
【文献】 特開2010−261913(JP,A)
【文献】 特開2005−147895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 7/00− 7/42
H02M 7/42− 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相インバータの各相のパワー素子付近に温度検出手段を配して該温度検出手段の電圧をもとに前記パワー素子の温度を計測するパワー素子の温度検出装置であって、
インバータとグランドを共有し、アナログ−デジタル変換部を内蔵する中央演算装置と、
電源と前記温度検出手段との間を接続する上流側の抵抗と、
前記温度検出手段と各相の前記グランドとの間をそれぞれ接続する下流側の抵抗と、
を備え、
前記温度検出手段の下流側の抵抗は、前記パワー素子がオンオフしたときに前記温度検出手段の下流側の電位が前記アナログ−デジタル変換部のグランドレベル以上となる抵抗値を持つように設定し、
前記中央演算装置は、前記温度検出手段の両端の電位と上流側の抵抗の両端の電位とを前記アナログ−デジタル変換部を通して測定し、該上流側の抵抗の両端間電圧を上流側の抵抗の抵抗値で除算して電流値を求め、該電流値で前記温度検出手段の電圧を除算して前記温度検出手段の抵抗値を得るようにした、
ことを特徴とするパワー素子の温度検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパワー素子の温度検出装置において、
前記電源をマイナス側駆動電源として、該マイナス側駆動電源から前記上流側の抵抗と前記温度検出手段に電流を流すようにした、
ことを特徴とするパワー素子の温度検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパワー素子の温度検出装置において、
前記電源と前記各相との間にそれぞれインダクタを介在させ、前記各相にそれぞれコンデンサを並列に配した、
ことを特徴とするパワー素子の温度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3相インバータの各相のパワー素子付近に配したサーミスタを用いてパワー素子の温度を検出するパワー素子の温度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車などで用いられているインバータを構成するパワー素子には大電流が供給されることから、動作時における発熱量は多い。この場合、発熱に起因してパワー素子の性能が低下するのを防ぐために、パワー素子の温度を検出する必要がある。
このパワー素子の温度検出には、サーミスタが用いられることが多い。
【0003】
一方、サーミスタは、この電圧特性が温度に対してリニアではなく、ある温度領域においては、単位温度当たりの電圧差が小さくなるため、そのままでは中央演算装置(CPU)側では精度よく温度を測定できない。
そこで、サーミスタのノンリニアな電圧−温度特性に対応できるように、検出装置を工夫したものが提案されている。
【0004】
このような従来のパワー素子の温度検出装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。
この従来のパワー素子の温度検出装置は、水冷式冷却装置に搭載された絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)の温度を監視するのに、この付近に配した温度検出用ダイオード(サーミスタ)を用いる。このIGBTの温度の監視に際しては、まずサーミスタによる温度範囲を分割する。そして、冷却装置の冷却水温度を検出する冷却水温度でIGBTの温度を推定し、この冷却水温度センサによるIGBTの温度推定値に基づいて、分割されたサーミスタの温度検出範囲を切り替えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−261913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のパワー素子の温度検出装置には、以下に説明するような問題がある。
まず、上記従来のパワー素子の温度検出装置にあっては、温度検出が上記のように2段構えで行われるため、複雑な回路とならざるを得ないという問題があった。
また、上記従来のパワー素子の温度検出装置にあっては、サーミスタの電圧が、パルス幅変調(PWM)信号に変換されて、光通信で12V系となるフォトカプラの2次側に送られ、ここに接続されたCPUが温度検出値を読み込むようにされている。このため、デューティを用いた温度情報の伝達となり、検出精度がよくないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、簡単な構成で、インバータの各相のパワー素子の温度を精度よく検出することができるようにしたパワー素子の温度検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため本発明によるパワー素子の温度検出装置は、
3相インバータの各相のパワー素子付近に温度検出手段を配して温度検出手段の電圧をもとにパワー素子の温度を計測するパワー素子の温度検出装置であって、
インバータとグランドを共有し、アナログ−デジタル変換部を内蔵する中央演算装置と、
電源と温度検出手段との間を接続する上流側の抵抗と、
温度検出手段と各相のグランドとの間をそれぞれ接続する下流側の抵抗と、
を備え、
温度検出手段の下流側の抵抗を、パワー素子がオンオフしたときに温度検出手段の下流側の電位がアナログ−デジタル変換部のグランドレベル以上となる抵抗値を持つように設定し、
中央演算装置が、温度検出手段の両端の電位と上流側の抵抗の両端の電位とをアナログ−デジタル変換部を通して測定し、この上流側の抵抗の両端間電圧を上流側の抵抗の抵抗値で除算して電流値を求め、この電流値で温度検出手段の電圧を除算して温度検出手段の抵抗値を得るようにした、
ことを特徴とする。
【0009】
好ましくは、電源をマイナス側駆動電源として、このマイナス側駆動電源から抵抗と温度検出手段に電流を流すようにした、
ことを特徴とする。
【0010】
また、好ましくは、電源と各相との間にそれぞれインダクタを介在させ、
各相にそれぞれコンデンサを並列に配した、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のパワー素子の温度検出装置にあっては、測定点の電位が変動しても温度検出手段の下流側電位がアナログ−デジタル変換部のグランドの電位より下回らないようにしたので、簡単な構成でパワー素子の温度を精度よく検出することができる
【0012】
また、電源をマイナス側駆動電源として、このマイナス側駆動電源から抵抗と温度検出手段に電流を流すようにしたので、マイナス側駆動電源の電圧はもともとアナログ−デジタル変換部を通して監視していることから、測定点を増やさなくて済むようになる。
【0013】
また、マイナス側駆動電源と各相との間にそれぞれインダクタを介在させ、各相ではコンデンサを並列にそれぞれ配したので、各相の電流を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は本発明の実施例1に係るパワー素子の温度検出装置の全体構成を示す図、(b)はその構成部品であるサーミスタの温度−電圧特性を示す図である。
図2】実施例1のパワー素子の温度検出装置を適用するインバータの回路を示す図である
図3】実施例1のパワー素子の温度検出装置の回路を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
まず、実施例1のパワー素子の温度検出装置の特徴および考え方について説明する。
従来技術では中央演算装置(CPU)を自動車の12V系となるフォトカプラの2次側(出力側)に接続してデューティ信号にて温度検出値を読み込んでいたのに代えて、実施例1のパワー素子の温度検出装置にあっては、図1(a)に示すように、CPU2をフォトカプラ3の1次側(入力側)3aに設けてサーミスタ1の電圧をCPU2で直接読み込み、デジタル伝送によるデータ通信にてフォトカプラ3の2次側(出力側)3bの12V系CPU4へ情報伝達するようにしている。
これにより、サーミスタ1の電圧をたとえば10bitのAD変換が可能となり、検出精度が向上することになる。
なお、フォトカプラ3の1次側3aと2次側3bとは、電気的に絶縁されており、光を介在させてデータ伝送を行っているだけなので、1次側〜2次側間でノイズが入り込まないようになっている。
【0017】
ここで、サーミスタ1の温度―電圧特性は、図1(b) (横軸が温度、縦軸が電圧を示す)に示しているように、高温側、低温側はノンリニアな特性が顕著になる。これは、パワー素子の性能劣化をもたらす高温の温度付近を検出するには、好ましくない。
【0018】
そこで、本実施例では、第1相のサーミスタ1やこの電源からCPU2に内蔵されているアナログーデジタル(AD)変換部2aへ入力される電圧は、5V以下となるように分圧されてからCPU2に入力されるようにする。このため、AD変換部は、AD変換部-0、AD変換部-1、AD変換部-2、等の、各入力信号に応じた複数のAD変換部からなり、これらは同時サンプルホールド機能を有している。
【0019】
すなわち、サーミスタ電源電圧はU、V、Wの各相共通で一つのAD変換部に、また各相のサーミスタのプラス側電圧およびマイナス側電圧は、それぞれのAD変換部に入力されてAD変換されるようにしてある。
なお、図1では、サーミスタ電源電圧用と1相分用のAD変換部だけを描いてあり、残りの2相分のAD変換部は図示を省略してある。
【0020】
また、上記同時サンプルホールド機能を得るため、図1には図示していないが、CPU2には、パワーモジュールの各パワー素子を駆動するためのPWM駆動信号かパワー素子であるIGBTのコレクタ−エミッタ間の電圧が入力され、これらの信号に同期させてサンプルホールドするようにしてある。
【0021】
一方、各相のサーミスタの基準グランド(GND)では、パワー素子のスイッチングに起因して過大なサージ電圧が発生し、しかも、このサージ電圧によりサーミスタ1の通電電流が変動するので、サーミスタ1をCPU2に単に接続しただけでは精度よくサーミスタの電圧を測定することはできない。
そこで、正確にサーミスタの電圧を検出するには、サージ電圧について予め知った上で、サーミスタ端子電圧の測定がサージ電圧の影響を受けないようにしておく対策が必要となる。
【0022】
ここで、インバータに大電流を流す場合に生じる上記問題について、詳しく説明する。
パワー素子からGNDラインの電流が流れ込んだり、GNDラインから電流が流れ出たりするときには、サーミスタの下流側(すなわち、パワー素子のGND側)の電位が変動してしまう。
【0023】
この理由を以下に説明する。
サーミスタの下流側は、それぞれの相のパワー素子のGND側に接続され、これらのGND同士は、マイナス側のバスバーで接続されている。
たとえば、U相に大電流が流れると、GNDラインのバスバーを通して大電流が流れる。このとき、U相とV相のGND間のバスバーが有する寄生インピーダンスIM1に起因して、U相のGNDとV相のGNDとの間に数Vの電圧が発生する。
バスバーの中央(V相のGND)がAD変換部のGNDに接続されているため、AD変換部からみたときにサーミスタの下流側の電位が変動してしまうことになる。
【0024】
たとえば、400VのGNDラインを流れる電流は、数100Aであり、したがってパワー素子がオンオフするとき数Vの電圧変動が発生する。電圧が上昇する方向に変動すると、サーミスタの上流側電圧がその分高くなり、サーミスタの抵抗値がその分増えたとして計測される。
一方、電圧が下降方向に変動すると、サーミスタの上流側電圧が数Vだけ下がり、サーミスタの抵抗値が減ったとして計測されてしまう。
このように、サーミスタの抵抗値を精度よく算出することは難しい。
実施例1のパワー素子の温度検出装置では、上記問題を解決するように構成してある。
【0025】
まず、インバータ5は、図2に示すように、それぞれIGBTと帰還ダイオードとが並列配置された上アームおよび下アームからなる双方向チョッパ回路でU相、V相、W相の各パワーモジュールが構成される。
なお、同図中、IGBTと帰還ダイオードDとには、U相、V相、W相のいずれに所属するかに合わせて添字で、それぞれ-U、-V、-Wを付け、またこれらの後に上アーム側のものであればPを、下アーム側のものであればNをそれぞれ追加して示してある。
各相の上アームと下アームとの間は、それぞれ図示しないモータの各相に対応する巻線に接続される。これらの構成や作用は周知であるので、ここでは詳しい説明は省略する。
上記各IGBTは、図外のゲート駆動回路でそれぞれ駆動されるようにされている。
【0026】
図3は、上記インバータ5に接続された本実施例のパワー素子の温度検出装置の回路図を表している。
同図中、一点鎖線で囲んだ箇所は、同図中左側から右側に向けて、それぞれU相、V相、W相のパワーモジュールの内部を表している。ただし、各パワーモジュールにおいて、帰還ダイオードは省略して描いてある。
また、パワーモジュールの内部には、各相の上下アームのIGBTの近くになるサーミスタUS、VS、WSがそれぞれ配置されている。
【0027】
各相のパワーモジュールには、上側アームのIGBTのエミッタ側端子UP-D、VP-D、WP-Dと、上側アームのIGBTのゲート端子UP-G、VP-G、WP-Gと、上側アームのコレクタ、下側アームのIGBTのエミッタ、およびモータ各相の巻線に接続された端子UP-S、VP-S、WP-Sと、サーミスタ1の上流側端子UNT1、VNT1、WNT1と、サーミスタ1の下流側端子UNT2、VNT2、WNT2と、下側アームのIGBTのゲート側端子UN-G、VN-G、WN-Gと、下側アームのIGBTのコレクタ側端子UN-S、VN-S、WN-Sと、がそれぞれ設けられている。
【0028】
エミッタ側端子UP-D、VP-D、WP-Dは図示しない電源に接続され、ゲート端子UP-G、VP-G、WP-G、UN-G、VN-G、WN-Gはそれぞれのゲート駆動回路に接続され、端子UP-S、VP-S、WP-Sはモータのそれぞれ対応する相の巻線に接続され、サーミスタ1のプラス側端子UNT1、VNT1、WNT1およびマイナス側端子UNT2、VNT2、WNT2は各相のサーミスタ電圧検出回路にそれぞれ接続され、コレクタ側端子UN-S、VN-S、WN-SはGNDに接続される。
【0029】
なお、コレクタ側端子UN-S、VN-S、WN-SとGNDとの間には、主としてマイナス側バスバーによる寄生インピーダンスIMが存在する。
同様に、電源と各IGBTのエミッタ側端子UP-D、VP―D、WP-Dとは、プラス側のバスバーで接続されており、このバスバーにも寄生インピーダンスが存在している。
【0030】
次に、サーミスタ電圧検出回路について説明するが、各相とも同じ構成であるので、ここではU相についてのみ説明する。
なお、U相の各部品に対応するV相、W相の部品は、U相での参照番号の頭に付けたUの代わりに、それぞれV、Wを付けて図3に記してある。
【0031】
サーミスタ1のプラス側端子UNT1には、マイナス側駆動電源(N駆動電源)から上流側抵抗UR1およびインダクタULを介して電流を流すようにこれらは直列接続される。なお、N駆動電源は、この電圧安定化のために、もともとAD変換してその電圧が監視されている。
インダクタULと上流側抵抗UR1との間は、分圧抵抗UR2、UR3で分圧されてN駆動電源電圧端子UN−AD1を介して、AD変換部2のAD変換部-0に接続されるとともに、この分圧点とU相のパワーモジュールの下アームのIGBT−UNのコレクタ側との間には、コンデンサLCが、U相のパワーモジュールに並列になるように設けられる。
【0032】
サーミスタ1の上流側端子UNT1は、さらに分圧抵抗UR4、UR5で分圧されてU相サーミスタ+電圧出力端子UN-AD2を介してAD変換部2のAD変換部-1に接続される。
サーミスタ1のマイナス側端子UNT2は、分配抵抗UR6、UR7で分配されてU相サーミスタ−電圧出力端子UN-AD3を介してAD変換部2のAD変換部-2に接続される。
サーミスタ1のマイナス側端子UNT2は、さらに下流側抵抗UR8を介して、パワーモジュールの下アームのIGBT−UNのエミッタや分圧抵抗UR7のマイナス側とともに、GNDに接続される。
以上はU相のサーミスタ電圧検出回路について説明したが、V相やW相のサーミスタ電圧検出回路もU相と同様に構成され、CPU2のAD変換部2にそれぞれ接続される。
【0033】
なお、上記分圧抵抗は、AD変換部2aに入力するため、各分圧電圧が5V以下になるように設定してある。
また、発生するサージ電圧の最高値を予め計測しておき、パワー素子がオンオフしてサージ電圧がGNDラインに発生しても、サーミスタ1(US、VS、WS)の端子電圧の測定値が影響を受けないように、下流側抵抗UR8、VR8、WR8の抵抗値を、パワー素子がオンオフしたときにサーミスタ1の下流側の電位がAD変換部2aのGNDレベルを下回らない値に設定しておく。
これにより、パワー素子のオンオフによりマイナス側バスバー等にサージ電圧が発生しても、サーミスタUS、VS、WSの端子電圧の測定値がサージ上記電圧の影響を受けないようにすることが可能となる。
【0034】
以上に説明したように、実施例1のパワー素子の温度検出装置は、サーミスタ1(US、VS、WS)の下流側の抵抗UR8、VR8、WRF8を、パワー素子IGBT―UP、IGBT-UN、IGBT-VP、IGBT-VN、IGBT-WP、IGBT-WNがオンオフしたときにサーミスタUS、VS、WSの下流側の電位がアナログ−デジタル変換部2aのグランドレベル以上の抵抗値を持つように設定したので、パワー素子IGBTのオンオフによりサージ電圧がマイナス側バスバー等に発生しても、サーミスタUS、VS、WSの端子電圧の測定値はサージ電圧の影響を受けることがない。
そして、CPU2が、サーミスタUS、VS、WSの端子電圧と上流側の抵抗UR1、VR1、WR1の両端の電位とをアナログ−デジタル変換部2aを通して測定し、この上流側の抵抗UR1、VR1、WR1の電圧をこれらの抵抗の抵抗値で除算して電流値を求め、この電流値でサーミスタUS、VS、WSの電圧を除算してサーミスタUS、VS、WSの抵抗値を得るようにしたので、CPU2はサーミスタUS、VS、WSの各電位を、フォトカプラ3を通すことなく直接読み込むことができ、たとえば10bitのAD変換など、より精度の高いAD変換ができるようになる。
しかも、これら間のデータ通信は、従来技術のようにデューティ信号で伝達することもないので、より高い精度でサーミスタUS、VS、WSの電位を検出することができる。
さらに、CPU2をフォトカプラ3の一次側に設けているので、1次側〜2次側間でノイズが入り込むのを防ぎ、測定精度を向上させることができる。
【0035】
また、上流側の抵抗UR1、VR1、WR1とサーミスタUS、VS、WSに電流を流す電源をマイナス側駆動電源としたので、U相、V相、W相に応じて測定点を増やす必要がない。
【0036】
また、上流側の抵抗UR1、VR1、WR1とサーミスタUS、VS、WSに電流を流す電源と各相との間にそれぞれインダクタUL、VL、WLを介在させ、また各相にそれぞれコンデンサUC、VC、WCを並列に配したので、各相における電流を安定化させることができる。
【0037】
以上、本発明を上記実施例に基づき説明してきたが、本発明は上記実施例に限られず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更等があった場合でも、本発明に含まれる。
たとえば、上記実施例にあっては、サーミスタの温度特性を使用して温度検出を行っているが、他の温度検出手段によっても同様の目的を達成できる。一例として、サーミスタに代えてダイオードを使用し、その順方向電圧の変化を検出することによっても温度を検出することが可能である。また、別の例としては、サーミスタに代えて熱電対を使用して温度検出を行うことも可能である。
【0038】
また、上記実施例では、3相インバータの構成にて3相の各相すべてにおいて温度検出を行っているが、温度検出が必要な相のみの温度を検出するようにしてもよい。
【0039】
また、上記実施例にあっては、CPU内部のAD変換部により温度検出を行っているが、CPU外付けのAD変換器を用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 サーミスタ
2 中央演算装置
2a アナログ−デジタル変換部
3 フォトカプラ
3a 1次側
3b 2次側
4 12V系中央演算装置
5 インバータ
IGBT-UP、IGBT-UN、IGBT-VP、IGBT-VN、IGBT-WP、IGBT-WN 絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT:パワー素子)
UR1、VR1、WR1 上流側の抵抗
UR8、VR8、WR8 下流側の抵抗
US、VS、WS サーミスタ
UL、VL、WL インダクタ
UC、VC、WC コンデンサ
図1
図2
図3