(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記1対の主巻線となる2つの主巻線から生じる磁束の方向が前記中心側に向かって同方向となるように、前記1対の主巻線を直列又は並列に接続したことを特徴とする請求項2または3に記載の三相電磁機器。
【背景技術】
【0002】
三相交流電源に対応した三相形のリアクタンスを可変できる従来の技術としては、本出願人が先に提案した三相形電磁機器(特許文献1)や三相電磁機器(特許文献2)がある。
【0003】
図11は、本出願人が先に提案した三相形電磁機器(特許文献1)の一例を説明するための接続図である。この三相形電磁機器は、6つの直線磁心43aa〜43cbを、隣接する直線磁心との角度が60゜となるように配置し、さらに6つの直線磁心の一端を6つの鉄心窓部が形成されるように連結磁心43dで連結している。
【0004】
6つの直線磁心43aa〜43cbには3対の主巻線41aa〜41cbを巻装し、それぞれの対の主巻線から生じる磁束が同一方向になるように直列又は並列に接続している。そして、直線磁心を連結した6個の連結磁心43dには、それぞれに制御巻線42a〜42fを巻装し、制御巻線に直流制御電流Icを流すことで、主磁束と制御磁束の共通磁路の磁気抵抗を制御し、主巻線のリアクタンスを連続的に可変している。
【0005】
また、
図12は、本出願人が先に提案した三相電磁機器(特許文献2)の一例を説明するための接続図である。この三相電磁機器は、18個の直線磁心53aa〜53dLを放射状に配置し、さらに、18個の直線磁心の中心側(内側)端部及び周辺側(外側)端部を18個の鉄心窓部が形成されるように連結磁心53eおよび53fで連結している。
【0006】
そして、18個の直線磁心に、6個の交流主巻線51aa〜51cbを2脚置きに卷装するとともに、他の12脚のそれぞれに直流制御巻線52a〜52Lを巻装し、制御巻線に直流制御電流Icを流すことで、主磁束と制御磁束の共通磁路の磁気抵抗を制御し、主巻線のリアクタンスを連続的に可変にしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の三相形電磁機器については、主磁束と制御磁束の共通磁路の磁気抵抗を制御し、主巻線のリアクタンスを連続的に可変することが可能であるものの、一つの鉄心窓部に3個の主巻線乃至制御巻線が巻装されることから、巻線の占積率が低下してしまう。また、制御巻線を連結磁心へ巻装する必要があるため、磁心構成した後に手動による巻装を行う必要がある。
【0009】
さらに、リアクタンスを可変させるための主磁束と制御磁束の共通磁路は主に制御巻線が巻装される窓周辺部の磁路であり、磁気抵抗の調整範囲が狭いためリアクタンスの可変範囲も広くない。
【0010】
特許文献2の三相電磁機器は、特許文献1の三相形電磁機器の課題を踏まえて提案されたもので、制御巻線の連結磁心への巻装が不要な構成としたものであり、主巻線のリアクタンスを連続的に可変することが可能である。
【0011】
しかし、上記三相電磁機器は、直線磁心が18個必要であり、容量にあわせて鉄心窓部を大きくする場合には、周辺側(外側)と中心側(内側)の連結磁心の径が大きくなるため、磁心全体が大きくなり、重量も重くなる傾向がある。さらに、主巻線6個に対して制御巻線が12個必要であることから、機器組立工数が増加し、巻線重量も増加してしまうことになる。
【0012】
また、特許文献2の三相電磁機器は特許文献1の三相形電磁機器と同様に、リアクタンスを可変するための主磁束と制御磁束の共通磁路は主に制御巻線が巻装される窓周辺部の磁路であり、磁気抵抗の調整範囲が狭いことからリアクタンスの可変範囲も広くない。
【0013】
加えて、特許文献1の三相形電磁機器および特許文献2の三相電磁機器は、主巻線と制御巻線を分離して巻回することが必須であるため、スペースの低減や組み立てが容易な汎用技術の重ね巻きを適用することが困難であるという問題があった。
【0014】
本発明は、これらの実情に鑑みてなされたものであり、鉄心の突き合わせ面にギャップを必要とせず、タップを用いることなくリアクタンスを広範囲に可変できる三相電磁機器であって、磁気回路構造および巻線の巻装構造が簡単で、巻線の個数が少なく、組み立てが簡単で、かつ、巻線の占積率が大きく低損失な三相電磁機器を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、特許文献2に示す18個の直線磁心に巻き回す12個の制御巻線の巻線数量を低減するにあたって、従来は交流巻線の電流歪みが増大する原因となる直流磁束の重畳による偏磁を防止するため困難と言われていた、同一直線磁心への交流巻線と制御巻線との巻き回しに着目し、制御巻線に適切な巻き回し方向を設定することで、同一相の交流端子間に偏磁が生じないことを見出したことによるものである。さらに、交流巻線と制御巻線とを同一直線磁心に巻き回すことで、制御磁束が磁路全体に還流し、リアクタンスを広範囲に可変することができることを見出したことによるものである。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、中心側が連結され放射状に対称的に配列した6つの直線磁心を有し、各直線磁心の周辺端部を連結磁心により連結した6脚磁心を備えた三相電磁機器であって、各前記直線磁心に主巻線及び制御巻線を巻回し、2つの主巻線を1対として3対の主巻線とし、各対の主巻線を三相交流電源の各相に対応させて直列又は並列に接続し、前記制御巻線を前記3対の主巻線による主磁束によって生じる誘起電圧を打消すように直列又は並列に接続するとともに前記制御巻線の開放端子側に制御回路を接続し、該制御回路から前記制御巻線に直流制御電流を供給することにより直流制御磁束を発生させ、前記主磁束と前記直流制御磁束の共通磁路の磁気抵抗を制御し主巻線のリアクタンスを連続的に可変させることを特徴としている。
【0017】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記1対の主巻線を巻回した直線磁心は、同一軸上に位置する2つの直線磁心であることを特徴としている。
第3の技術手段は、第1の技術手段において、前記一対の主巻線を巻回した直線磁心は、隣接する2つの直線磁心であることを特徴としている。
【0018】
第4の技術手段は、第2または第3の技術手段において、前記1対の主巻線となる2つの主巻線から生じる磁束の方向が前記中心側に向かって同方向となるように、前記1対の主巻線を直列又は並列に接続したことを特徴としている。
【0019】
第5の技術手段は、第1〜4のいずれか1の技術手段において、各相の主巻線及び制御巻線を巻回した直線磁心に二次巻線を追加配置したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、鉄心の突き合わせ面にギャップを必要とせず、タップを用いることなくリアクタンスを広範囲に可変できる三相電磁機器であって、磁気回路構造および巻線の巻装構造が簡単で、巻線の個数が少なく、組み立てが簡単で、かつ、巻線の占積率が大きく低損失な三相電磁機器を実現することができる。
【0021】
また、本発明を電力系統に使用することにより、近年の電力需要の増大や負荷の多様化による電力系統の電圧の変動等に対応可能で、フレキシブルな電力設備の提供が図られ、電力系統の電圧安定化や力率及び潮流のより適切な制御に寄与できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の三相電磁機器に係る好適な実施の形態について説明する。以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。
【0024】
図1は、本発明による三相電磁機器の磁心及び巻線の基本構成例を示す図、
図2は、本発明の三相電磁機器を等価的に回路表示した回路構成を示す図、
図3は、
図1で示した三相電磁機器の磁心の構成及び巻線の接続を説明するための図である。
【0025】
本三相電磁機器を構成する磁心は、
図3の如く、6つの直線磁心3aa、3ab、3ba、3bb、3ca及び3cbの夫々の一端部(中心側)を集合させて接合し、隣接する直線磁心がなす角度が60゜となるように配置して6つの脚部を形成している。さらに、6つの脚部を形成する直線磁心の他方の端部(周辺端部)を6つの鉄心窓部が形成されるように、環状ヨークとなる連結磁心3dで連結した6脚磁心を構成している。なお、直線磁心3aa、3ab、3ba、3bb、3ca及び3cbの夫々の接合部及び連結磁心3dとの接合部は、磁心を構成する各々の積層鋼板を平行になるように突き合わせて構成することができる。
【0026】
6つの直線磁心には、各々交流主巻線(以下、「主巻線」と言う。)及び直流制御巻線(以下、「制御巻線」と言う。)を巻装する。具体的には、第1の直線磁心3aaには主巻線1aa及び制御巻線2aを、第1の直線磁心3aaと同一軸上に配置された第2の直線磁心3abには主巻線1ab及び制御巻線2dを巻回する。ここで、主巻線1aa及び1abは一対の主巻線として、三相交流電源の1相に対応するものであり、両主巻線から生じる磁束φa1及びφa2が中心方向に向かって対向するように、すなわち中心側に向かって同じ方向になるように直列又は並列に接続する。
【0027】
同様に、第3の直線磁心3baには主巻線1ba及び制御巻線2cを、第3の直線磁心3baと同一軸上に配置された第4の直線磁心3bbには主巻線1bb及び制御巻線2fを巻回し、主巻線1ba及び1bbは、両主巻線から生じる磁束φb1及びφb2が中心方向に向かって対向するように直列又は並列に接続する。
【0028】
さらに、第5の直線磁心3caには主巻線1ca及び制御巻線2eを、第5の直線磁心3caと同一軸上に配置された第6の直線磁心3cbには主巻線1cb及び制御巻線2bを巻回し、主巻線1ca及び1cbは、両主巻線から生じる磁束φc1及びφc2が中心方向に向かって対向するように直列又は並列に接続する。
【0029】
直線磁心3aa、3ab、3ba、3bb、3ca及び3cbに巻回した6つの制御巻線2a、2d、2c、2f、2e及び2bは、主巻線1aa及び1ab、主巻線1ba及び1bb、並びに主巻線1ca及び1cbによる磁束で制御巻線2a、2d、2c、2f、2e及び2bに誘起する電圧が互いに打消されるように直列又は並列に接続され、その開放端子側に制御回路4を接続する。
【0030】
図3の例では、制御巻線2a、2c及び2eは、制御直流電流Icと同方向に流れる電流が誘起されると、直線磁心の中心側に向かう磁束を発生するように、また、制御巻線2b、2d及び2fは、制御直流電流Icと同方向に流れる電流が誘起されると、直線磁心の周辺端部に向かう磁束を発生するように、直列接続されている。
【0031】
例えば、第1の直線磁心3aaの主巻線1aaに流れる電流によって生じる磁束φa1の変化によって同じ直線磁心3aaに巻回した制御巻線2aに誘起される電圧と、第2の直線磁心3abの主巻線1abに流れる電流によって生じる磁束φa2の変化によって制御巻線2dに誘起される電圧とが互いに打ち消されるように、制御巻線2aと2dとが直列接続されている。同様に、制御巻線2bと2e、及び制御巻線2cと2fとに誘起される電圧がそれぞれ互いに打ち消されるように直列接続されている。そして、主巻線には平衡三相交流電流が流れるので、制御巻線の誘起電圧は互いに打ち消される。
【0032】
それ故、
図3に示すように、制御巻線を全て直列に接続することも可能であるし、制御巻線2aと2d、2bと2e、2cと2fとをそれぞれ直列接続し、これらの直列接続したものを並列に直並列に接続することもできる。
【0033】
図3において、直線磁心に巻装して接続した主巻線の開放端子に三相交流電源を接続し、それぞれの主巻線に図示矢印方向の電流ILu、ILv、ILwが流れているとする。なお、電流矢印方向を正サイクルとした場合、負サイクルでは逆方向の電流が流れる。
上記構成の三相電磁機器は、制御巻線に直流制御電流を流さない場合には、主巻線1aa及び1ab、主巻線1ba及び1bb、主巻線1ca及び1cbより発生する各相各々の交流磁束は、直線磁心を連結した連結磁心を介して還流することになる。
【0034】
以下、主巻線1aaを巻装した第1の直線磁心3aaと主巻線1abを巻装した第2の直線磁心3abに着目して説明する。
電流ILuが流れると、磁路には主巻線1aaにより主磁束φa1、並びに主巻線1abにより主磁束φa2がそれぞれ発生する。発生した主磁束は、制御巻線に直流制御電流を流さない場合には、他の直線磁路部及び連結磁心3dを通過し、主巻線には巻数と磁心の磁気抵抗に応じたリアクタンスが生ずる。ここで、直線磁心及び連結磁心は、制御磁束φdcと主磁束φa1、φa2との共通磁路となる。
【0035】
以上のことは、主巻線1baを巻装した第3の直線磁心3baと主巻線1bbを巻装した第4の直線磁心3bbとに着目した場合、及び、主巻線1caを巻装した第5の直線磁心3caと主巻線1cbを巻装した第6の直線磁心3cbとに着目した場合も同様である。
【0036】
主巻線電流ILuを流した状態で制御巻線に直流制御電流Icを流すと、制御巻線2a、2b、2c、2d、2e及び2fにおいて、制御巻線の巻数と制御電流Icの積で表される起磁力が発生することで、制御巻線磁束φdcと主磁束φa1及びφa2が同方向となる共通磁路部分の磁束密度が大となって透磁率が変化し、主磁束が制御されリアクタンスが低下する。
【0037】
このことは、他の直線磁心についても同様に成り立つことから、直流制御電流Icを調整することによって、リアクタンスを可変できる三相電磁機器として動作することができる。
【0038】
以上のように本発明の磁気回路構成は、透磁率を変化させ、主磁束を制御しリアクタンスを可変するための主磁束と制御磁束の共通磁路が、各直線磁心及び連結磁心となっており、後述するように当該磁路の磁気抵抗を広範囲に変化させることにより、従来の構造に比し、リアクタンスを広範囲に可変することができる。
【0039】
図4は、本発明による三相電磁機器の磁心組立例を示したもので、積鉄心構造で構成した直線磁心3に、主巻線1及び制御巻線2を填め込んだ後、外側の連結磁心3を組立てて構成したものであり、組立てが簡単で巻線の占積率を向上させ、電磁機器の軽量化を図ることができる。ここで、主巻線1及び制御巻線2は重ね巻きをした一体構造のものを用いることができる。
【0040】
図5は、本発明による三相電磁機器の磁心構成例を示したもので、
図5(A)は、前述の如く直線磁心を連結する連結磁心形状が円形状を成すものであり、電動機などで使用される打ち抜き鉄心から簡単に構成することができる。
図5(B)は、直線磁心を連結した中央部の穴形状を省略したもので、上記と同様に電動機などで使用される打ち抜き鉄心から簡単に構成することができる。
【0041】
図5(C)及び
図5(D)は直線磁心を連結する連結磁心形状が直線状を成すものであり、打ち抜き鉄心のほか積鉄心で簡単に構成することができる。なお、連結磁心は、6つの連結磁心が同等の構成であれば、様々な形状で構成することが可能である。
図5(E)及び
図5(F)は磁心中央部における直線磁心同士の接続部を連結磁心とし、巻線を巻回する窓形状を台形にしたものであり、積鉄心で簡単に構成することができるほか巻線の占積率を向上させ、電磁機器の軽量化を図ることができる。
【0042】
図6は、本発明による三相電磁機器の巻線構成例を示したもので、
図6(A)は主巻線と制御巻線を分離巻きとして構成した例、
図6(B)は主巻線と制御巻線を重ね巻きとして構成した例である。本発明による三相電磁機器は、巻装構成を
図6(B)の如く重ね巻きとすることが可能であり、
図11、
図12に示す従来の巻装構成で必須となっていた分離巻装する場合と比較して、巻装構成の大幅な簡略化が可能となる。
【0043】
図7は、三相電磁機器において、制御電流を流した場合の制御磁束及び磁路の磁束密度例を示したもので、
図7(A)は本発明の制御巻線配置とした場合の例、
図7(B)は
図11に示す従来の制御巻線配置とした場合の例である。
図7において、磁束密度が大きくなる部分については、濃く塗りつぶしてある。
【0044】
従来の制御巻線配置では、制御巻線を外側の連結磁心に巻装しているため、制御磁束は連結磁心のみを還流し、磁束密度が大となる領域は連結磁心のみに限られている。これに対して、本発明の制御巻線配置にすることで、磁心部全体に制御磁束が還流し、磁束密度が大となる領域が直線磁心及び連結磁心の全てとなることから、従来の構造に比し、リアクタンスを広範囲に可変することができる。
【0045】
図8は、本発明による三相電磁機器に三相交流電圧を印加し、直流制御電流Icを増加させた場合の制御特性例を示したものである。
図8(A)は、主巻線電流の制御特性例を示したものであり、直流制御電流Icを増加させることにより、リアクタンスが変化し、主巻線電流を線形に可変できることが分かる。
図8(B)は、主巻線電流の電流歪み特性例を示したものであり、直流制御電流Icによらず良好な主巻線電流歪みであることが分かる。また、上記の制御特性は三相各相の不平衡が無く、測定誤差の範囲で一致している。
【0046】
以上のように、本発明によると、直流制御電流を調整することにより三相各相のリアクタンスを高速且つ連続的に可変することができる。
【0047】
図9は、本発明による変圧機能を有する三相電磁機器の例を示す図である。
図1で示した磁心巻線構成において、電磁機器を構成する主巻線部を一次巻線とし、一次巻線5aaを巻回した直線磁心に二次巻線6aa、一次巻線5abを巻回した直線磁心に二次巻線6ab、一次巻線5baを巻回した直線磁心に二次巻線6ba、一次巻線5bbを巻回した直線磁心に二次巻線6bb、一次巻線5caを巻回した直線磁心に二次巻線6ca、一次巻線5cbを巻回した直線磁心に二次巻線6cbを巻回し、これらの二次巻線を一次巻線と同様に接続して構成することにより、変圧機能を有する三相電磁機器を実現することができる。
【0048】
図9において、一次巻線に三相交流電源を接続し二次巻線には三相負荷を接続し、それぞれの二次巻線に図示矢印方向の電流ILu2、ILv2、ILw2が流れていたとする。
以下、一次巻線5aaを巻回した第1の直線磁心と一次巻線5abを巻回した第2の直線磁心について説明する。
【0049】
制御電流を流さない場合には、一次巻線5aa及び5abには、上記二次電流で発生した磁束を打消すように一次電流ILu1が流れ、一次巻線5aa及び5abと二次巻線6aa及び6abの巻数比に応じて変圧され、また、一次巻線5ba及び5bbと二次巻線6ba及び6bb、一次巻線5ca及び5cbと二次巻線6ca及び6cbに着目した場合も同様であることから全体として変圧器として機能する。
【0050】
制御巻線に直流制御電流Icを流すと、制御巻線の巻数と制御電流Icの積で表される起磁力が発生することで透磁率が変化し、主磁束が制御される。このため、一次巻線には制御電流の制御に伴う主磁束の減少に応じて、一次巻線の端子間電圧を維持するために必要な主磁束を発生させるための励磁電流が増加する。
【0051】
即ち、変圧器としての変圧機能に加えて、制御電流を調整することで主巻線のリアクタンスを連続的に可変して一次側に流入する遅れ無効分電流の調整が可能となる。このことは、同様に他の直線磁心についても成り立つことから、変圧器としての変圧機能に加えて、リアクタンスを可変できる三相電磁機器として機能することができる。
【0052】
(適用例)
図10は、本発明の三相電磁機器の無効電力補償装置への適用例を示す等価回路である。
図10において、本発明による三相電磁機器を三相結線し、電力用コンデンサ7を並列に接続したものを送電線路に並列に挿入し、電磁機器の制御により、系統に生じる遅相から進相の無効電力を連続的に補償するようにしたものである。
【0053】
以上詳述したように、本発明によれば、タップを設けることなく、制御巻線を連結磁心へ巻装する必要がないため、組立が簡単で、鉄心の突き合わせ面にギャップを必要とせずに、広範囲にリアクタンスを可変する三相電磁機器を実現することができる。また、近年の電力需要の増大や負荷の多様化により、系統電圧の変動等負荷の多様化に対応できるフレキシブルな電力設備の提供が図られ、電力系統の電圧安定化や力率及び潮流のより適切な制御に寄与できる。
【0054】
なお、上記実施形態では、1対の主巻線、例えば1aa、1abを巻回した直線磁心が、同一軸上に位置する2つの直線磁心3aa、3abである場合について説明したが、この他、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0055】
例えば、1対の主巻線が隣接する2つの直線磁心に巻回されていてもよく、この場合、1対の主巻線の各主巻線から生じる磁束の方向は、中心側に向かって同方向となるように直列または並列に接続させておけばよい。そして、1対の主巻線と同じ直線磁心に巻回された2つの制御巻線は、一対の主巻線を流れる電流の変化によって生じる主磁束の変化による誘起電圧を打消すように接続しておけばよい。