(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
前記移動規制部に対する前記ロック部の当接面は、前記検知部材の移動方向とほぼ直交する方向に切り立って配置されている。これにより、移動規制部がロック部の当接面に乗り上がるのが回避され、移動規制部がロック部の当接面と当接する位置で検知部材のそれ以上の移動が確実に規制される。
【0011】
<実施例1>
本発明の実施例1を
図1〜
図11によって説明する。実施例1のコネクタは、互いに嵌合可能な第1、第2ハウジング10、40と、第1ハウジング10に対して初期位置と検知位置との間を移動可能に組み付けられる検知部材70とを備えている。なお、以下の説明において、前後方向については、第1、第2ハウジング10、40が嵌合開始時に互いに向き合う面(嵌合面)側を前方とし、上下方向については、
図1を基準とする。
【0012】
第2ハウジング40は合成樹脂製であって、
図1に示すように、ブロック状の端子収容部41と、端子収容部41の前端外周から前方に突出する筒状のフード部42とを有している。端子収容部41には、複数の第2キャビティ43が前後方向に延出して設けられ、各第2キャビティ43には、撓み可能な第2ランス44が前方に突出して設けられている。そして、各第2キャビティ43には後方から第2端子金具60が挿入され、正規挿入された第2端子金具60が第2ランス44に弾性的に係止されて第2キャビティ43内に抜け止めされる。また、端子収容部41には前方から第2リテーナ45が装着され、第2リテーナ45の第2抜止片46が第2ランス44の撓み空間47に進入することにより、第2ランス44の撓み動作が規制され、第2端子金具60が実質的に二重係止された状態になる。
【0013】
図1に示すように、第2端子金具60は導電性の金属板を曲げ加工等して一体に成形され、筒状の第2本体部61と、第2本体部61の後方に位置して電線W2の端末部に圧着により接続される第2バレル部62と、第2本体部61の前方に突出するタブ63とを有している。第2端子金具60が第2キャビティ43内に正規挿入されると、第2本体部61が第2ランス44に引っ掛け係止され、且つ、タブ63がフード部42内に突出して配置される。
【0014】
フード部42の上面には、同上面の幅方向中央部に、ロック部48が突出して設けられている。ロック部48は、幅方向に延出するリブ状の形態とされ、
図1に示すように、その前面が上下方向(検知部材70の移動方向と直交する方向で、且つ後述するロックアーム24の撓み方向に沿う方向であって、以下、高さ方向という)にほぼ沿って切り立つ当接面49とされ、その後面が上端へ向けてやや後傾する係止面51とされている。
【0015】
第1ハウジング10は合成樹脂製であって、
図5及び
図7に示すように、ブロック状のハウジング本体11と、ハウジング本体11の外周を取り囲む筒状の嵌合筒部12と、ハウジング本体11と嵌合筒部12とをつなぐ径方向に沿った連結部13とを有している。ハウジング本体11と嵌合筒部12との間で且つ連結部13の前方には、第2ハウジング40のフード部42が嵌合可能な嵌合空間14が開放して設けられている。
【0016】
ハウジング本体11には、上記した第2キャビティ43及び第2ランス44のそれぞれと同様の形態をなす第1キャビティ15及び第1ランス16が設けられている。第1ハウジング10の各第1キャビティ15には、後方から第1端子金具65が挿入され、正規挿入された第1端子金具65が第1ランス16によって弾性的に抜け止め係止される。また、
図1に示すように、ハウジング本体11には前方から第1リテーナ17が装着され、上述した第2リテーナ45と同様、第1リテーナ17の第1抜止片18によって第1端子金具65が実質的に二重係止された状態になる。
【0017】
第1端子金具65は導電性の金属板を曲げ加工等して一体に成形され、
図1に示すように、筒状の第1本体部66と、第1本体部66の後方に位置して電線W1の端末部に圧着により接続される第1バレル部67とを有している。第1、第2ハウジング10、40の正規嵌合時には、第1端子金具65の第1本体部66内に第2端子金具60のタブ63が挿入されて電気的に接続される。
【0018】
図1に示すように、ハウジング本体11の外周面には、連結部13の前方に、シールリング19が嵌着される。シールリング19は、ハウジング本体11の外周面に形成された段差部20と、ハウジング本体11に装着された第1リテーナ17との間に、前後方向への移動を規制された状態に保持される。そして、第1、第2ハウジング10、40の正規嵌合時には、ハウジング本体11とフード部42との間に、シールリング19が弾性的に挟み込まれ、これによって第1、第2ハウジング10、40間が液密にシールされるようになっている。
【0019】
図6〜
図8に示すように、嵌合筒部12の上部には、幅方向に一対の側壁21が起立して設けられ、両側壁21の前端部には、幅方向に沿った覆い壁22が架け渡して設けられている。覆い壁22の後方で且つ両側壁21間は、上方に開放された空間部23とされている。
【0020】
また、
図6に示すように、第1ハウジング10の空間部23内には、ロックアーム24が露出して設けられている。ロックアーム24は、前後方向に延出するアーム本体25と、アーム本体25の両側縁から幅方向外側に張り出して両側壁21の内面につながる一対の翼状の支点部26とを有し、両支点部26を支点としてアーム本体25が上下方向にシーソ状に揺動するように、撓み変形可能とされている。
【0021】
図5に示すように、アーム本体25には、前端部に被ロック部27が設けられ、被ロック部27の後方に、前後方向に延出してこのアーム本体25の後端に開口するロック孔28が貫通して設けられている。被ロック部27の前面は、下端へ向けて大きく後傾する被案内面29を有し、被ロック部27の後面は、ロック孔28内に臨み、上端へ向けてやや前傾する被係止面30とされている。
【0022】
また、
図6に示すように、アーム本体25には、ロック孔28と連通する形態で、検知部材70がスライドするスライド空間31が後方に開放して設けられている。そして、アーム本体25には、スライド空間31の両側面から内側に張り出しつつ前後方向に延出する一対のガイド部32が設けられている。両ガイド部32は、ロック孔28を区画する板片状をなし、その上下両面に、検知部材70が摺動可能とされている。さらに、アーム本体25のスライド空間31の両側面には、
図6、
図7及び
図8に示すように、両ガイド部32の上面に突出する形態で、一対の係止部33が内側に突出して設けられている。
【0023】
続いて検知部材70について説明すると、検知部材70は合成樹脂製であって、アーム本体25のスライド空間31に装着可能なように比較的小さいサイズで構成されている。具体的には、検知部材70は、
図9、
図10及び
図11に示すように、前後方向に延出する板片状の検知本体71と、検知本体71の下面の幅方向中央部にて下方へ突出しつつ前後方向に延出するリブ状の移動規制部72と、移動規制部72の下端部にて幅方向両側に張り出しつつ前後方向に延出するリブ状の被ガイド部73とを有している。
【0024】
検知本体71の後端部の上面には、操作部74が突出して設けられている。
図3及び
図5に示すように、検知部材70が初期位置にある場合に、操作部74がアーム本体25の後端部の上面を覆うように配置され、この操作部74が下方に押圧されることで、ロックアーム24を係止解除方向に撓み変形させることが可能とされている。
【0025】
図10及び
図11に示すように、検知本体71の前端部の下面には、その幅方向中央部に、規制部75が突出して設けられている。
図5に示すように、検知部材70が初期位置にある場合には、規制部75がアーム本体25の被ロック部27の後面に当接することで、検知部材70が初期位置から検知位置へ移動するのが規制される。また、
図1に示すように、検知部材70が検知位置にある場合には、規制部75がアーム本体25の被ロック部27の前面に当接することで、検知部材70が検知位置から初期位置へ戻り移動するのが規制される。
【0026】
図9に示すように、検知本体71の両側縁には、一対の被係止部76が突出して設けられている。
図3に示すように、検知部材70が初期位置にある場合に、両被係止部76がアーム本体25の両係止部33の前面に当接することで、検知部材70が後方へ抜け出るのが規制される。また、検知部材70には、被ガイド部73を成形するための金型が通過することに伴って貫通する一対の型抜き孔77が設けられている。両型抜き孔77は、検知本体71の前後方向ほぼ中央部にて前後方向に並んで延出するスリット状の形態とされている。
【0027】
図10に示すように、移動規制部72の前面は、両被ガイド部73の前面よりも前方に位置し、高さ方向にほぼ垂直に切り立つように細長く延出する被当接面78として構成されている。検知部材70が検知位置にある場合に、移動規制部72の被当接面78が第2ハウジング40のロック部48の当接面49に当て止めされることで、検知部材70がそれ以上前方に移動するのが規制される。また、検知部材70を正面視すると、移動規制部72の被当接面78とガイド部32の前面とが幅方向に並んで配置され、高さ方向に関して、移動規制部72の被当接面78とガイド部32の前面とが互いに重なり合って配置される。そして、移動規制部72の被当接面78の上端部は、高さ方向で規制部75と重なり合う位置関係にあり、正面視で規制部75の後方に隠れて見えなくなる。
【0028】
実施例1のコネクタの構造は上述の通りであり、続いて、第1、第2ハウジング10、40の嵌合方法及び検知部材70の移動方法について説明する。
第1、第2ハウジング10、40の嵌合に先立ち、第1ハウジング10のロックアーム24におけるアーム本体25のスライド空間31に、後方から検知部材70が挿入されて初期位置に至らしめられる。初期位置では、
図3に示すように、検知部材70の両被係止部76がアーム本体25の両係止部33の前面に当接可能に配置されるとともに、
図5に示すように、検知部材70の規制部75がアーム本体25のロック孔28内に進入して被ロック部27の後面(被係止面30)に当接可能に配置されることにより、検知部材70がその前後移動を規制された状態に保持される。
【0029】
続いて、第1、第2ハウジング10、40が嵌合される。嵌合過程では、第2ハウジング40のロック部48に、第1ハウジング10のロックアーム24における被ロック部27の被案内面29が摺動し、これによってアーム本体25の前端部が上方へ持ち上がるように、ロックアーム24が両支点部26を中心として撓み変形させられる。第1、第2ハウジング10、40が正規嵌合されると、ロックアーム24が弾性的に復帰して、ロック部48の係止面51に、被ロック部27の被係止面30が対面し、もって第1、第2ハウジング10、40が嵌合状態に保持される。同時に、第1、第2端子金具65、60が正規状態に導通接続される。
【0030】
また、第1、第2ハウジング10、40が正規嵌合されるに伴い、第1ハウジング10のロック孔28内に第2ハウジング40のロック部48が進入し、検知部材70の規制部75がロック部48に押圧されてロック孔28から上方に抜け出る。これにより、検知部材70の検知位置への移動が許容される。一方、第1、第2ハウジング10、40が正規嵌合されるまでの間は、検知部材70の規制部75がロック孔28内に進入した状態が維持されるため、検知部材70の検知位置への移動が規制される。したがって、検知部材70の検知位置への移動が許容されるかどうかによって、第1、第2ハウジング10、40が正規嵌合されたか否かを知ることができる。
【0031】
第1、第2ハウジング10、40が正規嵌合されたら、続いて、検知部材70の操作部74が前方に押し込まれ、検知部材70が検知位置に移動させられる。検知位置への移動過程では、ロックアーム24の両ガイド部32の下面に検知部材70の両被ガイド部73が摺動するとともに、ロックアーム24の両ガイド部32の上面に検知部材70のアーム本体25が摺動することにより、検知部材70の移動が案内される。とくに、検知本体71の規制部75がロック部48に押圧された状態では、検知本体71の前端部が撓み変形させられるが、この場合に、両被ガイド部73が両ガイド部32と当接することにより、検知本体71の撓み動作の円滑性が担保される。
【0032】
図1に示すように、検知部材70が検知位置に至ると、検知本体71の弾性復帰とともに、ロックアーム24の被ロック部27の前面に、検知部材70の規制部75が当接することにより、検知部材70が初期位置へ戻る方向に移動するのが規制される。また、検知部材70の検知本体71の前端部が覆い壁22の下方にもぐり込むように配置される。したがって、アーム本体25の前端部が上方へ持ち上げられようとしても、検知本体71の前端部が覆い壁22に当接するため、ロックアーム24が不用意にロック部48との係止状態を解除するのが防止される。
【0033】
また、検知位置では、第2ハウジング40のロック部48の当接面49に、検知部材70の移動規制部72の被当接面78が当接することにより、検知部材70が検知位置よりも前方(初期位置から離れる方向)に移動するのが規制される。この場合、ロック部48の当接面49と移動規制部72の被当接面78とは、検知部材70の移動方向とほぼ直交する高さ方向に沿って面当たり状に当接するため、検知位置に至った検知部材70がロック部48に的確に当て止めされてそれ以上の前進が確実に規制される。さらに、
図2に示すように、ロックアーム24のアーム本体25の両係止部33に、検知部材70の操作部74にて幅方向外側に張り出す部分79がセミロック状態で当接することにより、検知部材70が検知位置より前方に移動するのが補完的に抑制される。
【0034】
以上説明したように、実施例1によれば、検知部材70が検知位置にある場合に、移動規制部72が第2ハウジング40のロック部48と当接することにより、検知部材70がそれ以上前方へ移動するのが規制される。この場合に、移動規制部72の当接する相手側が第2ハウジング40側に設けられているため、第1ハウジング10の構成を簡素化することができる。とくに、移動規制部72の当接相手が第2ハウジング40のロック部48で構成されるため、第2ハウジング40に移動規制部72の当接相手としての専用構造を設ける必要もなく、コネクタ全体として構成の簡素化を図ることができる。
【0035】
また、移動規制部72と被ガイド部73とが高さ方向で互いに重なり合うように配置されるため、検知部材70の高さ寸法を抑えることができ、ひいてはコネクタ全体の高さ寸法を抑えることができる。
【0036】
さらに、ロック部48の当接面49が高さ方向に切り立って配置されるため、検知部材70が検知位置に至ったときに、移動規制部72がロック部48の当接面49を摺動してこのロック部48に乗り上げられるのが回避され、移動規制部72がロック部48の当接面49と当接する位置で確実に移動規制された状態になる。この場合に、ロック部48の当接面49が高さ方向に切り立って配置されるものであっても、ロックアーム24の前面には被案内面29が設けられているため、ロックアーム24の撓み動作に支障をきたすことはない。
【0037】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)検知部材に圧縮コイルバネ等のバネ部材が組み込まれ、検知部材が検知位置に移動する際にバネ部材のバネ力に付勢されるものであってもよい。
(2)検知部材が組み込まれる第1ハウジングは、雄端子金具(実施例1の第2端子金具に相当)が挿入される雄型のコネクタハウジングであってもよい。