(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の送電アンテナの送電面と前記第2の送電アンテナの送電面が対向するよう配置され、前記第1の送電アンテナの送電面と前記第2の送電アンテナの送電面が対向する領域内に前記第1の受電アンテナの受電面と前記第2の受電アンテナの受電面が配置された請求項1に記載のワイヤレス給電装置。
前記マイクロ波発生器が、複数設けられて前記第1の送電アンテナと前記第2の送電アンテナに対して同じ電力を供給するよう構成された請求項1又は2に記載のワイヤレス給電装置。
前記第1の送電アンテナと前記第2の送電アンテナが同じ構成を有し、前記第1の受電アンテナと前記第2の受電アンテナが同じ構成を有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載のワイヤレス給電装置。
前記第1の受電アンテナと前記第2の受電アンテナからの電力が供給される給電対象が、前記第1の受電アンテナと前記第2の受電アンテナに一体的に構成された請求項1乃至5のいずれか一項に記載のワイヤレス給電装置。
前記第1の受電アンテナと前記第2の受電アンテナがマイクロストリップ基板で構成されており、前記マイクロストリップ基板の両面に設けられた導体パターンにより前記第1の受電アンテナと前記第2の受電アンテナの各受電面が構成され、前記マイクロストリップ基板に設けられたグランド面が前記第1の受電アンテナと前記第2の受電アンテナにより共有されるよう構成された請求項1乃至7のいずれか一項に記載のワイヤレス給電装置。
対向するよう配置された前記第1の送電アンテナの送電面と前記第2の送電アンテナの送電面の対向する領域内において、一体的に構成された前記第1の受電アンテナと前記第2の受電アンテナと同じ構成の受電アンテナ対が複数組配置された請求項1乃至8のいずれか一項に記載のワイヤレス給電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8は、従来のワイヤレス電力伝送方法を含む一般的な構成によるワイヤレス給電装置を示す。
図8において、マイクロ波発生器101からマイクロ波伝送路102(場合によっては、分配器、マイクロ波増幅器を含む)を経由して、送電アンテナ103へ電力が供給されている。送電アンテナ103の送電面104から放射されたマイクロ波105は、受電アンテナ107の受電面106で受信される。受電面106が受信したマイクロ波は電力変換回路部108で電力変換された後、給電対象部109に電力が供給される。ここで、効率よく伝送するため、送電アンテナ103の送電面104と受電アンテナ107の受電面106は対向する向きに配置されている。
【0007】
図9は、
図8に示した構成において、周波数5.8GHzでの伝送距離と伝送効率の関係を示すグラフである。
図9において、横軸が伝送距離[m]を示し、縦軸が伝送効率[%]を示す。
図9のグラフにおいて、送電アンテナ103と受電アンテナ107を円形の平面アンテナとして、送電アンテナ103の直径をTx、受電アンテナ107の直径をRxとして、Tx=1m,Rx=1mの場合を実線で示し、Tx=0.4m,Rx=0.4mの場合を破線で示し、Tx=0.3m,Rx=0.3mの場合を一点鎖線で示し、Tx=0.2m,Rx=0.2mの場合を二点鎖線で示している。
図9のグラフに示すように、TxとRxを1mサイズにすることで、伝送距離が5m程度の範囲内において、効率90%以上のレベルで、距離変動に対しても安定して電力供給が可能である。一方、Tx、Rxのサイズが小さくなると、伝送距離に応じて伝送効率が大きく変化している。つまり、送電距離が長くなるにしたがって、伝送効率が大きく低下していく。
【0008】
上記の問題を解決するために、送電距離が長く受電アンテナ107が送電アンテナ103から遠く離れた場合には、送電する電力を大きくし、近い場合には電力を小さくする方法、つまり、送電距離に応じて送電する電力を制御する方法が考えられる。この方法では送電側にとって、受電側の位置が既知である必要がある。このため、上記のような従来のワイヤレス給電装置では、給電対象の送電位置をカメラやセンサ、情報通信などの手段により認識する位置認識部と、その位置から距離を算出し、算出された距離に応じて送電電力を制御する電力制御部が必要となる。また、このような従来のワイヤレス給電装置におけるマイクロ波発生器としては、電力を制御可能な電力源で構成する必要があり、複雑な装置構成となる。
【0009】
本発明は、小型のアンテナを用いた場合において、伝送距離に応じて伝送効率が変動するという問題を解決するものであり、伝送距離で電力変動するような小型のアンテナを用いても、一定電力が供給可能であり、送電位置により伝送効率の変動が抑制されて安定した電力伝送を行うことができるワイヤレス給電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る一態様のワイヤレス給電装置は、
マイクロ波を形成するマイクロ波発生器と、
前記マイクロ波発生器からのマイクロ波が供給される第1の送電アンテナと、
前記マイクロ波発生器からのマイクロ波が供給される第2の送電アンテナと、
前記第1の送電アンテナの送電面と前記第2の送電アンテナの送電面との間に設けられ、前記第1の送電アンテナの送電面に対向する受電面を有する第1の受電アンテナと、
前記第1の送電アンテナの送電面と前記第2の送電アンテナの送電面との間に設けられ、前記第2の送電アンテナの送電面に対向する受電面を有する第2の受電アンテナと、を備え、
前記第1の受電アンテナと前記第2の受電アンテナが一体的に構成されて給電対象に接続されており、前記第1の受電アンテナの受電面と前記第1の送電アンテナの送電面との向かい合う方向が、前記第2の受電アンテナの受電面と前記第2の送電アンテナの送電面との向かい合う方向が平行であ
り、
前記第1の送電アンテナと前記第2の送電アンテナが直線偏波のマイクロ波を送信するよう構成されており、
前記第1の送電アンテナと前記第1の受電アンテナとの間で送電されるマイクロ波の電界の振動方向が、前記第2の送電アンテナと前記第2の受電アンテナとの間で送電されるマイクロ波の電界の振動方向と異なるように構成されている。
【0011】
上記のように構成された本発明に係る一態様のワイヤレス給電装置は、一体的に構成された第1の受電アンテナと第2の受電アンテナが、第1の送電アンテナと第2の送電アンテナとの間の領域内を移動して、任意の位置に配置されても、第1の送電アンテナと第2の送電アンテナから給電対象に送電される電力の伝送効率が変動することが抑制され、給電対象へ安定して電力を供給することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のワイヤレス給電装置によれば、送電位置により伝送効率が変動するようなアンテナ構成であっても、送電位置の認識や送電電力を制御する必要がなく、一定の電力供給が可能であり、送電位置に応じて伝送効率が変動することが抑制され、安定したワイヤレス電力伝送を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る第1の態様のワイヤレス給電装置は、
マイクロ波を形成するマイクロ波発生器と、
前記マイクロ波発生器からのマイクロ波が供給される第1の送電アンテナと、
前記マイクロ波発生器からのマイクロ波が供給される第2の送電アンテナと、
前記第1の送電アンテナの送電面と前記第2の送電アンテナの送電面との間に設けられ、前記第1の送電アンテナの送電面に対向する受電面を有する第1の受電アンテナと、
前記第1の送電アンテナの送電面と前記第2の送電アンテナの送電面との間に設けられ、前記第2の送電アンテナの送電面に対向する受電面を有する第2の受電アンテナと、を備え、
前記第1の受電アンテナと前記第2の受電アンテナが一体的に構成されて給電対象に接続されており、前記第1の受電アンテナの受電面と前記第1の送電アンテナの送電面との向かい合う方向が、前記第2の受電アンテナの受電面と前記第2の送電アンテナの送電面との向かい合う方向が平行であ
り、
前記第1の送電アンテナと前記第2の送電アンテナが直線偏波のマイクロ波を送信するよう構成されており、
前記第1の送電アンテナと前記第1の受電アンテナとの間で送電されるマイクロ波の電界の振動方向が、前記第2の送電アンテナと前記第2の受電アンテナとの間で送電されるマイクロ波の電界の振動方向と異なるように構成されている。
このように構成された本発明に係る第1の態様のワイヤレス給電装置においては、伝送距離で電力変動するような小型のアンテナを用いても、一定電力が供給可能であり、送電位置により伝送効率が変動することが抑制され、安定した電力伝送を行うことができる。
【0015】
本発明に係る第2の態様のワイヤレス給電装置は、前記の第1の態様において、前記第1の送電アンテナの送電面と前記第2の送電アンテナの送電面が対向するよう配置され、前記第1の送電アンテナの送電面と前記第2の送電アンテナの送電面が対向する領域内に前記第1の受電アンテナの受電面と前記第2の受電アンテナの受電面が配置されてもよい。
【0016】
本発明に係る第3の態様のワイヤレス給電装置は、前記の第1又は第2の態様における前記マイクロ波発生器が、複数設けられて前記第1の送電アンテナと前記第2の送電アンテナに対して同じ電力を供給するよう構成してもよい。
【0017】
本発明に係る第4の態様のワイヤレス給電装置は、前記の第1又は第2の態様において、前記マイクロ波発生器から供給された電力を分配するマイクロ波分配器を有し、
前記マイクロ波分配器から前記第1の送電アンテナと前記第2の送電アンテナに対して同じ電力を供給するよう構成してもよい。
【0018】
本発明に係る第5の態様のワイヤレス給電装置は、前記の第1から第4の態様において、前記第1の送電アンテナと前記第2の送電アンテナが同じ構成を有し、前記第1の受電アンテナと前記第2の受電アンテナが同じ構成を有してもよい。
【0019】
本発明に係る第6の態様のワイヤレス給電装置は、前記の第1から第5の態様において、前記第1の受電アンテナと前記第2の受電アンテナからの電力が供給される給電対象が、前記第1の受電アンテナと前記第2の受電アンテナに一体的に構成されてもよい。
【0021】
本発明に係る
第7の態様のワイヤレス給電装置は、前記の第1から第6の態様において、
前記第1の送電アンテナから送信されるマイクロ波と、前記第2の送電アンテナから送信されるマイクロ波とにおいて、それぞれの電界の振動方向が直交するように構成してもよい。
【0022】
本発明に係る
第8の態様のワイヤレス給電装置は、前記の
第1乃至第7の態様において、前記第1の受電アンテナと前記第2の受電アンテナがマイクロストリップ基板で構成されており、前記マイクロストリップ基板の両面に設けられた導体パターンにより前記第1の受電アンテナと前記第2の受電アンテナの各受電面が構成され、前記マイクロストリップ基板に設けられたグランド面が前記第1の受電アンテナと前記第2の受電アンテナにより共有される構成としてもよい。
【0023】
本発明に係る
第9の態様のワイヤレス給電装置は、前記の
第1乃至第8の態様において、対向するよう配置された前記第1の送電アンテナの送電面と前記第2の送電アンテナの送電面の対向する領域内において、一体的に構成された前記第1の受電アンテナと前記第2の受電アンテナと同じ構成の受電アンテナが複数組配置された構成としてもよい。
【0024】
以下、本発明のワイヤレス給電装置に係る実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る実施の形態1のワイヤレス給電装置の基本構成を示す図である。電磁波(マイクロ波)を形成する第1のマイクロ波発生器201は、第1のマイクロ波伝送路202を経由して、第1の送電アンテナ203へマイクロ波を送信して一定の電力を供給する。第1のマイクロ波伝送路202としては、場合によっては、分配器及びマイクロ波増幅器が含まれる。第1の送電アンテナ203の送電面204からは、第1のマイクロ波205が放射され、第1の受電アンテナ207の受電面206により受信される。第1の受電アンテナ207の受電面206で受信した第1のマイクロ波205は、第1の電力変換回路部208で電力変換された後、給電対象部209に電力供給される。
【0026】
同様に、電磁波(マイクロ波)を形成する第2のマイクロ波発生器301は、第2のマイクロ波伝送路302を経由して、第2の送電アンテナ303へマイクロ波を送信して一定の電力を供給する。第2のマイクロ波伝送路302としては、場合によっては、分配器及びマイクロ波増幅器が含まれる。第2の送電アンテナ303の送電面304からは、第2のマイクロ波305が放射され、第2の受電アンテナ307の受電面306により受信される。第2の受電アンテナ307の受電面306で受信した第2のマイクロ波305は、第2の電力変換回路部308で電力変換した後、給電対象部209に電力供給される。
【0027】
実施の形態1のワイヤレス給電装置においては、
図1に示すように、第1の送電アンテナ203と第2の送電アンテナ303との間を結ぶ直線300上に給電対象部209が配置されている。即ち、第1の送電アンテナ203の送電面204と第2の送電アンテナ303の送電面304が対向するよう配置され、第1の送電アンテナ203の送電面204と第2の送電アンテナ303の送電面304が対向する領域内に第1の受電アンテナ207の受電面206と第2の受電アンテナ307の受電面306が配置されている。
【0028】
給電対象部209を含む給電対象200としては、第1の受電アンテナ207と第1の電力変換回路部208と第2の受電アンテナ307と第2の電力変換回路部308を有している。第1の受電アンテナ207の受電面206と第1の送電アンテナ203の送電面204は、対向して配置されており、伝送効率が最も高い位置に設けられている。同様に、第2の受電アンテナ307の受電面306と第2の送電アンテナ303の送電面304も、対向して配置されており、伝送効率が最も高い位置に設けられている。
【0029】
したがって、実施の形態1のワイヤレス給電装置においては、第1の受電アンテナ207の平板形状の受電面206と、第1の送電アンテナ203の平板形状の送電面204は、平行状態に配置されており、それぞれの中心点からの垂直線が略同一直線となるよう構成されている。また同様に、第2の受電アンテナ307の平板形状の受電面306と、第2の送電アンテナ303の平板形状の送電面304は、平行状態に配置されており、それぞれの中心点からの垂直線が略同一直線となるよう構成されている。なお、実施の形態1の構成においては、第1の送電アンテナ203と第2の送電アンテナ303のそれぞれの送電面204,304、及び第1の受電アンテナ207と第2の受電アンテナ307のそれぞれの受電面206,306において、それぞれの中心点からの垂直線が略同一線となるよう構成されている。
【0030】
なお、
図2は、実施の形態1のワイヤレス給電装置において、他の構成例を示す図である。
図2に示す構成においては、第1の送電アンテナ203と第2の送電アンテナ303への電力供給が、1つのマイクロ波発生器401において形成された電磁波(マイクロ波)が供給される構成である。
図2のワイヤレス給電装置においては、マイクロ波発生器401からのマイクロ波電力が、マイクロ波分配器402で2分割されて、第1の送電アンテナ203と第2の送電アンテナ303へ電力供給されている。
【0031】
上記のような
図1及び
図2に示す構成によれば、第1の送電アンテナ203と第1の受電アンテナ207との間の距離310と、第2の送電アンテナ303と第2の受電アンテナ307との間の距離311の変動により、第1のマイクロ波205と第2のマイクロ波305の伝送効率が変動するような小さなアンテナサイズであっても、給電対象200が第1の送電アンテナ203と第2の送電アンテナ303との間(309)に挟まれた直線上の位置に設けられて入れば、給電対象200の受電アンテナ(207,307)の位置が変化しても略一定の伝送効率でマイクロ波による給電が可能である。例えば、第1の送電アンテナ203と第1の受電アンテナ207との間の距離310が離れるに従って、第1のマイクロ波205の伝送効率は低下していく。しかし、反対に、第2の送電アンテナ303と第2の受電アンテナ307との間の距離311は近づくため、第2のマイクロ波305の伝送効率は上昇する。この結果、第1の送電アンテナ203と第2の送電アンテナ303からの送電が互いに補完する状態となり、全体としての伝送効率を略一定に保つことが可能となる。
【0032】
実施の形態1のワイヤレス給電装置においては、第1の送電アンテナ203と第2の送電アンテナ303に対して同電力が供給されているとし、第1の送電アンテナ203と第2の送電アンテナ303が同一の構成であり、それぞれの送電面204と送電面304の送電方向の向きのみが異なる構成であり、第1の受電アンテナ207と第2の受電アンテナ307が同一構成であり、それぞれの受電面206と受電面306の受電方向の向きのみが異なる構成とすれば、第1の送電アンテナ203と第2の送電アンテナ303から等しい距離(中間位置)に給電対象200が設置された状態での伝送効率に平均化され、受電アンテナが移動しても給電対象200に対して安定した給電が可能である。
【0033】
上記のように、実施の形態1のワイヤレス給電装置においては、受電アンテナが移動しても給電対象200に対して安定して電力が供給されることを、従来例と比較して
図3、
図4及び
図5を用いて以下に説明する。
【0034】
図3は、前述の
図8に示した従来のワイヤレス給電装置における構成の場合を一例として示しており、一つの送電アンテナ103を用いて給電対象100に対してマイクロ波電力伝送を行った場合の位置関係を示す概略説明図である。
図3に示す構成においては、給電対象100の設置範囲501が、2mの長さの直線上の範囲である。
図3は、給電対象100が任意の位置に配置された場合において、一つの送電アンテナ103を用いてマイクロ波電力伝送を行った場合の位置関係を示している。
図3においては、簡略化のため、送電アンテナ103、受電アンテナ107としては平面アンテナとし、送電アンテナ103の送電面104、受電アンテナ107の受電面106は同一形状のものである。送電アンテナ103と給電対象100との間の距離をD[m]とし、この距離Dが最小0.5mから最大2.5mの範囲で変動する。送電アンテナ103へは一つのマイクロ波発生器101から一定の電力が供給される構成である。
【0035】
図5は、給電対象100の位置(D)である伝送距離[m]と、送電アンテナ103から給電対象100への伝送効率[%]との関係を示すグラフである。
図5は、送電アンテナ103及び受電アンテナ107のサイズを直径0.3mの円形平面アンテナとした場合において、周波数5.8GHzにおける伝送距離と伝送効率との関係を実線を用いて示している。
【0036】
一方、
図4は、
図2に示した実施の形態1のワイヤレス給電装置の構成を用いた場合の位置関係を示す概略説明図である。
図4において、第1の送電アンテナ203と第1の受電アンテナ207との間の距離がD[m]であり、この距離Dが最小0.5mから最大2.5mの範囲で変動する。
図4に示した構成において、
図3に示した構成と異なる点は、給電対象200からみて第1の送電アンテナ203の反対側に、第1の送電アンテナ203と同じ構成である第2の送電アンテナ303が設けられており、給電対象200が第1の送電アンテナ203から放射されたマイクロ波を受電する第1の受電アンテナ207と、第2の送電アンテナ303から放射されたマイクロ波を受電する第2の受電アンテナ307と有している点である。給電対象200における第1の受電アンテナ207と第2の受電アンテナ307は、全く同じ構成であり、受電する向きが180度異なるものである。
【0037】
上記のように、
図4に示した構成においては、第1の送電アンテナ203と第2の送電アンテナ303を同一の構成としており、一定電力を供給するマイクロ波発生器401から発生したマイクロ波電力が、マイクロ波分配器402により均等に2分配されて、第1の送電アンテナ203と第2の送電アンテナ303に供給されている。
図4に示した構成においては、給電対象200は距離Dを隔てた第1の送電アンテナ203からのマイクロ波と、距離(3[m]−D[m])を隔てた第2の送電アンテナ303からのマイクロ波の両方を受電しており、その合計の電力が給電対象200に供給される構成である。
【0038】
図4に示す構成において、全ての送電アンテナ203,303及び受電アンテナ207,307のサイズを直径0.3mの円形平面アンテナとした場合の周波数5.8GHzにおける給電対象200の位置(D)と伝送効率との関係を計算した結果を、
図5において点線を用いて示す。
【0039】
図5における点線で示すグラフから明らかなように、実施の形態1の構成により、伝送距離の変化による伝送効率の変動が平均化(平滑化)されることが分かる。つまり、
図3に示した一つの送電アンテナ103と一つの受電アンテナ107を用いた従来の構成では、送電アンテナ103と受電アンテナ107との間の距離Dが0.5mと近い場合には、送電効率が85%であるのに対して、その距離Dが2.5mと離れた場合には、送電効率が20%と大幅に低くなり、給電対象100の受電アンテナ107の位置により伝送効率が大きく変動することが理解できる。
【0040】
一方、
図4に示す実施の形態1の構成では、第1の送電アンテナ203と第1の受電アンテナ207との間の距離Dが0.5mの最も近い場合には、第1の送電アンテナ203から伝送効率85%で受電した電力と、第2の送電アンテナ303から伝送効率20%で受電した電力の合算となる。したがって、全体としての伝送効率は、マイクロ波分配器402により2分配されていることを考慮すると、(0.5×0.85+0.5×0.2)×100=52.5[%]となる。反対に、第1の送電アンテナ203と第1の受電アンテナ207との間の距離Dが2.5mと最も離れた場合には、全ての送電アンテナ203,303及び受電アンテナ207,307が全く同じ構成であることから、前記の距離Dが最も近い場合とは逆となり、第1の送電アンテナ203からの伝送効率は20%であり、第2の送電アンテナ303からの伝送効率は85%となる。結果として、全体としての効率は52.5[%]となり、距離D=0.5[m]の最も近い場合と同じ伝送効率となる。
【0041】
上記の考え方により、距離D=0.5mから2.5mの範囲で伝送効率を計算した結果、実施の形態1の構成では伝送効率は49%から54%の範囲内に収まることが分かる。つまり、従来のワイヤレス給電装置においては伝送効率が給電対象100の位置により20%から85%までのバラツキがあったが、実施の形態1のワイヤレス給電装置においては、伝送効率のバラツキが49%から54%の範囲内に平均化しており、給電対象200の受電アンテナの位置により制約されることがなく、安定した電力供給が可能となる。
【0042】
したがって、実施の形態1のワイヤレス給電装置では、二つの送電アンテナ203,303を結ぶ直線上の中間点、即ち、それぞれの送電アンテナ203,303からの距離が等しくなる中間位置にそれぞれの受電アンテナ207,307(受電アンテナ)が配置されたとき、所望の電力を供給できる送電電力、及びアンテナサイズを設定することにより、2つの送電アンテナの間の直線上におけるどの位置に給電対象200の受電アンテナが配置されても、安定して所望の電力を給電できる構成となる。
【0043】
なお、実施の形態1の構成においては、第1の送電アンテナ203と第2の送電アンテナ303からのマイクロ波が干渉して、送電効率の低下が考えられる。また、実施の形態1の構成においては、第1の送電アンテナ203から放射されたマイクロ波が第2の送電アンテナ303まで到達して受電される、あるいはその逆に、第2の送電アンテナ303から放射されたマイクロ波が第1の送電アンテナ203まで到達して受電される危険性が考えられる。
【0044】
上記の問題点に関しては、それぞれの送電アンテナ及び受電アンテナの偏波を規定することにより、それぞれの2組のマイクロ波の干渉を防止することができる。ここで、偏波とは、放射されたマイクロ波の電界の振動方向であり、一般的に電界はマイクロ波の進行方向と垂直な平面内で振動している。
図6は、送電アンテナ203,303の送電面204,304及び受電アンテナ207,307の受電面206,306を正面から見た図を示している。即ち、
図6は、マイクロ波の進行方向に直交する送電面204,304及び受電面206,306を示している。第1の送電アンテナ203の送電面204から第1の偏波方向(電界方向)601のマイクロ波が放射され、第1の受電アンテナ207の受電面206において第1の偏波方向601のマイクロ波が受電される。また、第2の送電アンテナ303の送電面304から第2の偏波方向(電界方向)602のマイクロ波が放射され、第2の受電アンテナ307の受電面306において第2の偏波方向602のマイクロ波が受電される。実施の形態1のワイヤレス給電装置においては、それぞれのマイクロ波の第1の偏波方向601及び第2の偏波方向602が、固定の直線偏波であり、90度回転している。実施の形態1の構成においては、送電面204の電界方向(電界の振動方向)と受電面206の電界方向(電界の振動方向)を、第1の偏波方向601として垂直方向に固定し、送電面304の電界方向と受電面306の電界方向を、第2の偏波方向602として水平方向に固定することにより、それぞれの偏波方向が90度回転した関係性を構成することが可能である。
【0045】
なお、
図6に示した第1の偏波方向601を垂直方向、第2の偏波方向602を水平方向として説明したが、第1の偏波方向601と第2の偏波方向602の角度が90度回転していればよく、
図6の構成に限定されるものではない。
【0046】
また、偏波を90度回転する方法としては、アンテナ全体を90度回転した配置とする構成や、それぞれのアンテナの設計により偏波をずらす方法などがあるが、本発明としてはこれらの方法に限られるものではない。本発明においては、第1の送電アンテナ203から放射されたマイクロ波と第2の送電アンテナ303から放射されたマイクロ波の電界の振動方向が90度異なるため、それぞれマイクロ波の干渉を防ぐことができ、安定性が高いワイヤレス給電が可能となる。また、第1の送電アンテナ203から放射されたマイクロ波が第2の送電アンテナ303によって受電されるリスクや、その逆に第2の送電アンテナ303から放射されたマイクロ波が第1の送電アンテナ203によって受電されるリスクを低減することができる。
【0047】
なお、本発明においては、第1の送電アンテナ203から放射されたマイクロ波が第2の送電アンテナ303に受電されず、あるいは第2の送電アンテナ303から放射されたマイクロ波が第1の送電アンテナ203受電されない偏波方向を有していればよく、偏波方向の角度が90度に限定されるものではない。
【0048】
なお、
図7は本発明に係る実施の形態1のワイヤレス給電装置における受電アンテナ部705を有する給電対象700の別の構成例を示す図である。
図7において、(a)は受電アンテナ部705の斜視図であり、(b)は受電アンテナ部705の構成例を示す図である。
図7の(b)に示すように、給電対象700において、受電アンテナ部705は、電力変換回路部706を介して給電対象部707に接続されている。受電アンテナ部705は、その受電面が両側に設けられており、反対方向、つまり、180度回転した両方向からのマイクロ波を受電できる構成である。
図7に示した構成例では、受電アンテナ部705がマイクロストリップ基板で構成されたマイクロストリップアンテナであり、基板の両面に導体パターンである第1のアンテナパターン703と第2のアンテナパターン704が形成されている。マイクロストリップアンテナは片側の受電面(アンテナ面)と誘電体基板702とによりグランド面(GND面)701を挟んで構成されており、両側の受電アンテナに関するGND面701を共有とすることで2面の受電面を一枚の基板上に構成することができる。また、電力変換回路部706としては、二つの受電面からの電力を区別する必要がないため、共通の回路により電力変換が可能である。上記のように構成された受電アンテナ部705によれば、給電対象部707に対して、複数のアンテナ基板と複数の受電回路を用いる必要がなく、小型の受電アンテナを構築することができる。
【0049】
なお、実施の形態1においては、送電、受電として各2つのアンテナ組を設け、1軸の直線上にそれぞれのアンテナ組を配置した構成例で説明したが、本発明においては軸数を増やしてアンテナ組数を増やすことも可能である。即ち、本発明の構成においては、第1の送電アンテナ(203)と第1の受電アンテナ(207)、及び第2の送電アンテナ(303)と第2の受電アンテナ(307)の2組のアンテナ組を1軸の直線上に配置すると共に、同じ構成の送電アンテナと受電アンテナの組を平行で異なる軸の直線上に配置する構成を含むものである。
【0050】
また、実施の形態1における送電アンテナとしては、指向性の高いアンテナとして、マイクロストリップアンテナ、マイクロストリップアンテナを多数配置したアレイアンテナ、ホーンアンテナなどが考えられるが、本発明としてはこれらのアンテナに限定されるものではない。マイクロ波発生器としては高周波信号発生器、高周波増幅器、マグネトロンなどがあるが、本発明としてはこれらのマイクロ波発生器に限られるものではない。
【0051】
実施の形態1においては、給電対象が第1の受電アンテナ207と第2の受電アンテナ307の受電アンテナ対が一体的に構成された例で説明したが、本発明においては、受電アンテナ対から電力が供給されるように、給電対象は受電アンテナ対と電気的に接続されていればよく、受電アンテナ対が第1の送電アンテナ203(送電面204)と第2の送電アンテナ303(送電面304)が対向する領域内に配置されていればよい。