特許第6025094号(P6025094)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6025094LED駆動装置及びそれを用いた照明器具並びに車両用照明装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025094
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】LED駆動装置及びそれを用いた照明器具並びに車両用照明装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 37/02 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   H05B37/02 J
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-155688(P2012-155688)
(22)【出願日】2012年7月11日
(65)【公開番号】特開2014-17203(P2014-17203A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(72)【発明者】
【氏名】松本 大志
(72)【発明者】
【氏名】相田 隆志
(72)【発明者】
【氏名】稲田 義之
【審査官】 三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/050096(WO,A1)
【文献】 特開2006−216304(JP,A)
【文献】 特開昭60−257765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源から入力される直流電圧をスイッチング素子でスイッチングすることによって電圧変換を行い、発光ダイオードに供給する電流を調整するコンバータ部と、
前記直流電源の電源電圧を検出する電源電圧検出部と、
前記発光ダイオードに流れる負荷電流を検出する電流検出部と、
前記負荷電流の電流指令値を設定する電流指令値設定部と、
前記電流検出部の検出値と前記電流指令値との差に応じたオンデューティのデューティ指令値を設定するデューティ指令値設定部と、
前記デューティ指令値に応じた前記オンデューティで前記スイッチング素子を駆動する駆動部と、
前記電源電圧の変動範囲において前記電源電圧に対する前記オンデューティの変化傾向を規定した電圧−デューティカーブが規定された第1設定部と、
前記電源電圧の変動範囲において前記電源電圧に対する前記オンデューティの最大値、最小値をそれぞれ規定した最大デューティカーブ、最小デューティカーブを設定する第2設定部と
デューティ制限部とを備え、
前記第2設定部は、設定時における前記デューティ指令値に所定のデューティ幅を加算及び減算して最大デューティ及び最小デューティをそれぞれ設定し、前記設定時における前記電源電圧で前記最大デューティ及び前記最小デューティをそれぞれ通るように前記電圧−デューティカーブを当てはめて前記最大デューティカーブ及び前記最小デューティカーブを設定し、
前記デューティ制限部は、前記最大デューティカーブの設定後に、前記デューティ指令値設定部が設定した前記デューティ指令値が、前記電源電圧をもとに前記最大デューティカーブから求めた最大値を上回ると、前記デューティ指令値を前記最大値に制限し、
前記デューティ制限部は、前記最小デューティカーブの設定後に、前記デューティ指令値設定部が設定した前記デューティ指令値が、前記電源電圧をもとに前記最小デューティカーブから求めた最小値を下回ると、前記デューティ指令値を前記最小値に制限する、
ことを特徴とするLED駆動装置。
【請求項2】
前記第2設定部が前記デューティ指令値及び前記電源電圧の検出値をもとに前記最大デューティカーブ及び前記最小デューティカーブを設定する周期を規定するタイマ部を備え、
前記タイマ部は、前記発光ダイオードの点灯経過時間に応じて前記周期を徐々に長くすることを特徴とする請求項1記載のLED駆動装置。
【請求項3】
前記第2設定部が前記デューティ指令値及び前記電源電圧の検出値をもとに前記最大デューティカーブ及び前記最小デューティカーブを設定する周期を規定するタイマ部を備え、
前記タイマ部は、前記発光ダイオードの点灯経過時間に応じて前記周期を段階的に長くすることを特徴とする請求項1記載のLED駆動装置。
【請求項4】
前記第1設定部には、前記コンバータ部の特性に基づいて規定された前記電圧−デューティカーブが予め設定されていることを特徴とする請求項1記載のLED駆動装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のLED駆動装置と、前記LED駆動装置によって駆動される発光ダイオードとを備えることを特徴とする照明器具。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のLED駆動装置と、前記LED駆動装置によって駆動される発光ダイオードとを備えることを特徴とする車両用照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED駆動装置及びそれを用いた照明器具並びに車両用照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、直流電源の電圧を降圧チョッパ型のDC/DC電圧変換回路により所望の電圧値に変換して発光ダイオード(LED:Light Emitted Diode)に供給する照明装置が提案されていた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に開示された照明装置では、出力電流の検出値と指令値との誤差によりオンデューティの指令値を設定し、この指令値にしたがってDC/DC電圧変換回路のスイッチング素子をデューティ制御することで、出力電流を一定に制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−189004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された照明装置では、LEDの光出力をほぼ一定とするために、出力電流をフィードバックしてスイッチング素子のオンデューティを制御している。このような照明装置において、電源電圧が急変した場合、制御回路の応答性が遅いと、デューティ制御が追従できず、出力が大きく変動する可能性があった。
【0006】
図8(a)に、電源電圧Vinに対するスイッチング素子のオンデューティDutyの特性(図中の曲線A)を示す。電源電圧変動による出力変化を抑制するためには、通常、電源電圧Vinが高いほどオンデューティDutyを小さくし、電源電圧Vinが低いほどオンデューティDutyを大きくする。ここで、広範囲の電源電圧Vinに対してオンデューティDutyの最大値Dmax、最小値Dminが一定値に設定されている場合、電源電圧Vinの急変に対してデューティ制御が追従できないと、変動後の電源電圧Vinに対してオンデューティDutyが過大になったり、或いは過小になったりして、出力が大きく変動してしまう。
【0007】
そこで、図8(b)に示すように、電源電圧Vinが高いほどオンデューティDutyの最大値Dmax、最小値Dminの設定を小さくし、電源電圧Vinが低いほどオンデューティDutyの最大値Dmax、最小値Dminの設定を大きくすることが考えられる。この場合、電源電圧Vinが変動したとしても、電源電圧Vinに応じて決定される最大値Dmaxと最小値Dminの間にオンデューティDutyが制限されるから、出力変動を抑制することが期待できる。
【0008】
ところで、発光ダイオードの順方向電圧がばらついたり、出力電流の指令値を異ならせることによって、電源電圧Vinに対するオンデューティDutyの特性が異なる特性となることが考えられる。例えば図8(b)の例では、2種類の発光ダイオードの一方については電源電圧Vinに対するオンデューティDutyの特性がA1となり、2種類の発光ダイオードの他方については電源電圧Vinに対するオンデューティDutyの特性がA2となっている。このように、発光ダイオードの順方向電圧がばらつくことによって電源電圧Vinに対するオンデューティDutyの特性が変化する場合、その変化範囲以上の範囲にオンデューティDutyの最大値Dmaxと最小値Dminを設定する必要がある。すなわち、図8(b)の例では、電源電圧Vinに対するオンデューティDutyの特性A1,A2が、最大値DmaxのカーブBと最小値DminのカーブCの間に収まるように、最大値Dmaxと最小値Dminの範囲が広く設定されている。
【0009】
ここで、電源電圧Vinに対するオンデューティDutyの特性がA1となる場合に、電源電圧Vinの急変によって電源電圧VinがV1からV2に変化したとすると、電圧V1のときのオンデューティDT1は、電圧V2のときの最大値Dmaxと最小値Dminの間に収まっているから、オンデューティDT1が最大値Dmax又は最小値Dminによる制限を受けることはない。したがって、デューティ制御の追従遅れにより、電源電圧VinがV2のときにスイッチング素子がオンデューティDT1で駆動されると、出力電圧が大きく変動するという問題がある。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、その目的は、LEDの順方向電圧のばらつきにより電源電圧に対するオンデューティの特性が異なる場合でも、電源電圧の急変による出力の変化を抑制したLED駆動装置、照明器具及び車両用照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のLED駆動装置は、コンバータ部と、電源電圧検出部と、電流検出部と、電流指令値設定部と、デューティ指令値設定部と、駆動部と、第1設定部と、第2設定部と、デューティ制限部とを備えることを特徴とする。前記コンバータ部は、直流電源から入力される直流電圧をスイッチング素子でスイッチングすることによって電圧変換を行い、発光ダイオードに供給する電流を調整する。前記電源電圧検出部は前記直流電源の電源電圧を検出する。前記電流検出部は前記発光ダイオードに流れる負荷電流を検出する。前記電流指令値設定部は前記負荷電流の電流指令値を設定する。前記デューティ指令値設定部は、前記電流検出部の検出値と前記電流指令値との差に応じたオンデューティのデューティ指令値を設定する。前記駆動部は、前記デューティ指令値に応じた前記オンデューティで前記スイッチング素子を駆動する。前記第1設定部には、前記電源電圧の変動範囲において前記電源電圧に対する前記オンデューティの変化傾向を規定した電圧−デューティカーブが規定されている。前記第2設定部は、前記電源電圧の変動範囲において前記電源電圧に対する前記オンデューティの最大値、最小値をそれぞれ規定した最大デューティカーブ、最小デューティカーブを設定する。前記第2設定部は、設定時における前記デューティ指令値に所定のデューティ幅を加算及び減算して最大デューティ及び最小デューティをそれぞれ設定し、前記設定時における前記電源電圧で前記最大デューティ及び前記最小デューティをそれぞれ通るように前記電圧−デューティカーブを当てはめて前記最大デューティカーブ及び前記最小デューティカーブを設定する。前記デューティ制限部は、前記最大デューティカーブの設定後に、前記デューティ指令値設定部が設定した前記デューティ指令値が、前記電源電圧をもとに前記最大デューティカーブから求めた最大値を上回ると、前記デューティ指令値を前記最大値に制限する。前記デューティ制限部は、前記最小デューティカーブの設定後に、前記デューティ指令値設定部が設定した前記デューティ指令値が、前記電源電圧をもとに前記最小デューティカーブから求めた最小値を下回ると、前記デューティ指令値を前記最小値に制限する。
【0013】
このLED駆動装置において、前記第2設定部が前記デューティ指令値及び前記電源電圧の検出値をもとに前記最大デューティカーブ及び前記最小デューティカーブを設定する周期を規定するタイマ部を備えることも好ましい。前記タイマ部は、前記発光ダイオードの点灯経過時間に応じて前記周期を徐々に長くする。また、前記タイマ部が、前記発光ダイオードの点灯経過時間に応じて前記周期を段階的に長くすることも好ましい。
【0014】
このLED駆動装置において、前記第1設定部には、前記コンバータ部の特性に基づいて規定された前記電圧−デューティカーブが予め設定されていることも好ましい。
【0015】
本発明の照明器具は、上記した何れかのLED駆動装置と、LED駆動装置によって駆動される発光ダイオードとを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の車両用照明装置は、上記した何れかのLED駆動装置と、LED駆動装置によって駆動される発光ダイオードとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のLED駆動装置によれば、電源電圧の急変にデューティ制御が追従できない場合でも、デューティ制限部が、最大デューティカーブ又は最小デューティカーブにしたがってデューティ指令値を制限しているので、出力の変動を抑制することができる。また、発光ダイオードの順方向電圧がばらつくと電圧−デューティカーブも変動するが、第2設定部は、電源電圧とデューティ指令値と電圧−デューティカーブとを用いて、最大デューティカーブ及び最小デューティカーブを設定しているので、デューティ指令値に合わせて最大値と最小値の幅を小さく設定でき、電源電圧の変動に伴う出力の変動をさらに抑制することができる。
【0018】
本発明の照明器具は、上記のLED駆動装置を備えているから、LEDの順方向電圧のばらつきにより電源電圧に対するオンデューティの特性が異なる場合でも、電源電圧の急変による出力の変化を抑制した照明器具を実現できる。
【0019】
本発明の照明器具は、上記のLED駆動装置を備えているから、LEDの順方向電圧のばらつきにより電源電圧に対するオンデューティの特性が異なる場合でも、電源電圧の急変による出力の変化を抑制した照明器具を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態1のLED駆動装置のブロック回路図である。
図2】(a)は第1設定部に設定された電圧−デューティカーブの説明図、(b)は電源電圧の変動時にデューティ指令値を制限する動作の説明図である。
図3】実施形態2のLED駆動装置のブロック回路図である。
図4】同上の点灯開始後の動作を説明する図であり、(a)は発光ダイオードの温度を示す図、(b)は順方向電圧を示す図、(c)はオンデューティを示す図である。
図5】点灯開始からの経過時間と更新周期の関係を示す図である。
図6】実施形態3の照明器具を示す断面図である。
図7】同上の照明器具を用いた車両の外観図である。
図8】従来例の説明図であり、(a)(b)は電源電圧に対するオンデューティの特性を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
(実施形態1)
実施形態1のLED駆動装置を図1及び図2に基づいて説明する。
【0023】
図1はLED駆動装置1のブロック回路図である。LED駆動装置1は、直流電源2から入力される直流電圧の電圧変換を行って、発光ダイオード3に供給し、発光ダイオード3を点灯させる。
【0024】
LED駆動装置1は、コンバータ部11と、電源電圧検出部12と、電流検出部13と、電流指令値設定部14と、デューティ指令値設定部15と、第1設定部16と、第2設定部17と、デューティ制限部18と、駆動部19とを備える。
【0025】
コンバータ部11は、トランスT1とスイッチング素子Q1とダイオードD1とコンデンサC1とを主要な構成として備える。直流電源2の両端間にトランスT1の一次巻線とスイッチング素子Q1(例えばFETからなる)の直列回路が接続されている。トランスT1の二次巻線の両端間にはダイオードD1を介してコンデンサC1が接続されており、コンデンサC1と並列に発光ダイオード3が接続されている。このコンバータ部11は、従来周知のフライバック型のDC−DCコンバータからなり、その動作については説明を省略する。
【0026】
電源電圧検出部12は、コンバータ部11に入力される電源電圧Vinを検出する。
【0027】
電流検出部13は、発光ダイオード3と直列に接続された抵抗器R1の電圧降下を検出することによって、発光ダイオード3に流れる負荷電流I1を検出する。尚、抵抗器R1は、負荷電流I1を検出するために接続された抵抗器であり、抵抗器R1には低抵抗のものが用いられる。
【0028】
電流指令値設定部14は、発光ダイオード3に流れる負荷電流I1の電流指令値を設定する。
【0029】
デューティ指令値設定部15は誤差増幅部15aとデューティ指令値出力部15bとで構成される。誤差増幅部15aは、電流検出部13によって検出された検出値と、電流指令値設定部14によって設定された電流指令値との誤差を増幅した信号を出力する。デューティ指令値出力部15bは、誤差増幅部15aからの入力信号に基づいて、負荷電流I1の検出値と電流指令値との誤差に応じたオンデューティのデューティ指令値DTを作成し、第2設定部17及びデューティ制限部18に出力する。
【0030】
第1設定部16には、電源電圧Vinの変動範囲においてコンバータ部11の出力が略一定となるように電源電圧Vinに対するオンデューティDutyの変化傾向を規定した電圧−デューティカーブが規定されている。この電圧−デューティカーブはコンバータ部11の特性に応じて規定され、予め第1設定部16に設定されている。尚、この電圧−デューティカーブは例えば図2中に破線Aで示すようなカーブとなり、電源電圧Vinに対するオンデューティDutyの変化率を規定したものであって、オンデューティDutyの絶対値を規定するものではない。
【0031】
第2設定部17には、電源電圧Vinの変動範囲において電源電圧Vinに対するオンデューティDutyの最大値Dmax、最小値Dminをそれぞれ規定した最大デューティカーブB、最小デューティカーブCが設定されている(図2(a)参照)。第2設定部17は、電源電圧検出部12が検出した電源電圧Vinと、上述のデューティ指令値DTと、第1設定部16に設定されている電圧−デューティカーブとを用いて、最大デューティカーブB及び最小デューティカーブCを設定する。具体的には、電源電圧Vinの検出値がV1で、デューティ指令値DTがDT1の時、第2設定部17は、デューティ指令値DT1に対して所定のデューティ幅を加算又は減算して、電圧V1のときの最大デューティDT2、最小デューティDT3を設定する。そして、第2設定部17は、電源電圧がV1で、デューティ指令値がDT2の点を通るように、第1設定部16に設定された電圧−デューティカーブAを当てはめることによって、最大デューティカーブBを設定する。同様に、第2設定部17は、電源電圧がV1で、デューティ指令値がDT3の点を通るように、第1設定部16に設定された電圧−デューティカーブAを当てはめることによって最小デューティカーブCを設定する。
【0032】
デューティ制限部18は、例えば電源電圧Vinの電圧変動によってデューティ指令値DTが最大デューティカーブBを上回ると、電源電圧Vinをもとに最大デューティカーブBから求めたオンデューティにデューティ指令値DTを制限する。またデューティ制限部18は、例えば電源電圧Vinの電圧変動によってデューティ指令値DTが最小デューティカーブCを下回ると、電源電圧Vinをもとに最小デューティカーブCから求めたオンデューティにデューティ指令値DTを制限する。
【0033】
駆動部19にはデューティ制限部18を介してデューティ指令値DTが入力され、デューティ指令値DTに応じたオンデューティでスイッチング素子Q1を駆動することによって、負荷電流I1を調整する。
【0034】
ここにおいて、デューティ指令値出力部15bと第2設定部17とデューティ制限部18とは例えばマイクロコンピュータの演算機能によって実現される。
【0035】
次にLED駆動装置1の動作について説明する。直流電源2から入力される電源電圧Vinが所定の範囲内に収まっていれば、負荷電流I1をフィードバックすることで設定されたオンデューティでスイッチング素子Q1が駆動されるので、負荷電流I1が電流指令値にほぼ一致するように定電流制御が行われる。
【0036】
ところで、図2(b)に示すように電源電圧Vinが電圧V1で定電流制御が行われている状態で、電源電圧Vinが電圧V1から電圧V3に急変した場合に、電流フィードバックの追従性が悪いと、デューティ指令値DTは電圧V1のときの値DT1のままになる。ここで、電源電圧Vinが電圧V1から電圧V2に低下するまではデューティ指令値DT1が最小デューティカーブCと最大デューティカーブBの間に収まっているので、デューティ制限部18は、デューティ指令値DT1をそのまま駆動部19に出力する。一方、電源電圧Vinが電圧V2を下回ると、デューティ指令値DT1が最小デューティカーブCより小さくなるので、デューティ制限部18は、変動後の電源電圧Vinをもとに最小デューティカーブCから求めたオンデューティにデューティ指令値DTを制限する。そして、電源電圧Vinが電圧V3まで低下すると、デューティ制限部18は、最小デューティカーブCから電圧V3のときのオンデューティDT4を求め、この値DT4にデューティ指令値DTを制限する。而して、電源電圧Vinが電圧V3のときのオンデューティが最小デューティカーブC上の下限値DT4に制限されるから、電源電圧Vinの急激な低下にフィードバック制御が追従できない場合でも、負荷電流I1の急激な低下を抑制することができる。
【0037】
また電源電圧Vinが電圧V1から電圧V5へと急激に増加した場合も同様であり、電流フィードバックの追従性が悪いと、デューティ指令値DTは電圧V1のときの値DT1のままになる。ここで、電源電圧Vinが電圧V1から電圧V4に上昇するまではデューティ指令値DT1が最大デューティカーブBよりも小さいので、デューティ制限部18はデューティ指令値DT1をそのまま駆動部19に出力する。一方、電源電圧Vinが電圧V4よりも増加すると、デューティ指令値DT1が最大デューティカーブBより大きくなるので、デューティ制限部18は、変動後の電源電圧Vinをもとに最大デューティカーブBから求めたオンデューティにデューティ指令値DTを制限する。そして、電源電圧Vinが電圧V5まで増加すると、デューティ制限部18は、最大デューティカーブBから電圧V5のときのオンデューティDT5を求め、この値DT5にデューティ指令値DTを制限する。而して、電源電圧Vinが電圧V5のときのオンデューティが最大デューティカーブB上の上限値DT5に制限されるから、電源電圧Vinの急激な増加にフィードバック制御が追従できない場合でも、負荷電流I1の急激な増加を抑制することができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態のLED駆動装置1は、コンバータ部11と、電源電圧検出部12と、電流検出部13と、電流指令値設定部14と、デューティ指令値設定部15と、駆動部19と、第1設定部16と、第2設定部17と、デューティ制限部18とを備える。コンバータ部11は、直流電源2から入力される直流電圧をスイッチング素子Q1でスイッチングすることによって電圧変換を行い、発光ダイオード3に供給する電流を調整する。電源電圧検出部12は直流電源2の電源電圧を検出する。電流検出部13は発光ダイオード3に流れる負荷電流I1を検出する。電流指令値設定部14は負荷電流I1の電流指令値を設定する。デューティ指令値設定部15は、電流検出部13の検出値と電流指令値との差に応じてオンデューティのデューティ指令値DTを設定する。駆動部19は、デューティ指令値DTに応じたオンデューティでスイッチング素子Q1を駆動する。第1設定部16には、電源電圧Vinの変動範囲においてコンバータ部11の出力が略一定となるように電源電圧Vinに対するオンデューティの変化傾向を規定した電圧−デューティカーブAが規定されている。第2設定部17は、電源電圧Vinの変動範囲において電源電圧Vinに対するオンデューティの最大値、最小値をそれぞれ規定した最大デューティカーブB、最小デューティカーブCを、電源電圧Vinとデューティ指令値と電圧−デューティカーブAとを用いて設定する。そして、デューティ制限部18は、電源電圧Vinの電圧変動によってデューティ指令値DTが最大デューティカーブBを上回ると、変動後の電源電圧Vinをもとに最大デューティカーブBから求めたオンデューティにデューティ指令値DTを制限する。またデューティ制限部18は、電源電圧Vinの電圧変動によってデューティ指令値が最小デューティカーブCを下回ると、変動後の電源電圧Vinをもとに最小デューティカーブCから求めたオンデューティにデューティ指令値DTを制限する。
【0039】
これにより、電源電圧Vinの急変にデューティ制御が追従できない場合でも、デューティ制限部18が、最大デューティカーブB又は最小デューティカーブCにしたがってデューティ指令値DTを制限しているので、出力の変動を抑制することができる。また、発光ダイオードの順方向電圧がばらつくと電圧−デューティカーブも変動するが、第2設定部17は、電源電圧Vinとデューティ指令値と電圧−デューティカーブとを用いて、最大デューティカーブ及び最小デューティカーブを設定しているので、デューティ指令値に合わせて最大値と最小値の幅を小さく設定できる。したがって、電源電圧の変動時にデューティ指令値を最大値又は最小値に制限することで、出力の変動をさらに抑制することができる。
【0040】
また本実施形態では、第2設定部17が、デューティ指令値設定部15によって設定されたデューティ指令値DTに所定のデューティ幅を加算又は減算して最大デューティ、最小デューティを設定する。そして、第2設定部17は、電源電圧Vinの検出値における最大デューティを通るように電圧−デューティカーブを当てはめて最大デューティカーブBを設定する。また、第2設定部17は、電源電圧Vinの検出値における最小デューティを通るように電圧−デューティカーブを当てはめて最小デューティカーブCを設定する。
【0041】
このように、第2設定部17は、電源電圧Vinの検出値とデューティ指令値と電圧−デューティカーブを用い、電源電圧Vinが検出値のときのデューティ指令値に所定のデューティ幅を加算又は減算して、最大デューティ及び最小デューティを求める。そして、検出された電源電圧Vinでオンデューティが最大デューティとなる点を通るように電圧−デューティカーブを当てはめて最大デューティカーブとし、検出された電源電圧Vinでオンデューティが最小デューティとなる点を通るように電圧−デューティカーブを当てはめて最小デューティカーブとしているので、発光ダイオードの順方向電圧のばらつきによって電圧−デューティカーブが変化する場合でも、最大値と最小値の幅を小さくして、電源電圧の変動による出力変動をさらに抑制できる。
【0042】
また本実施形態では、第1設定部16に、コンバータ部11の特性に基づいて規定された電圧−デューティカーブが予め設定されている。
【0043】
これにより、コンバータ部11の特性に合わせて最大デューティカーブ、最小デューティカーブを設定することができる。
【0044】
(実施形態2)
実施形態2のLED駆動装置を図3図5に基づいて説明する。
【0045】
図3はLED駆動装置1のブロック回路図である。本実施形態のLED駆動装置1は、実施形態1で説明したLED駆動装置1にタイマ部20を追加したものであり、タイマ部20以外は実施形態1と同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0046】
タイマ部20は、第2設定部17がデューティ指令値及び電源電圧の検出値をもとに最大デューティカーブB及び最小デューティカーブCの設定を更新する周期(以下、更新周期と言う。)をカウントする。LED駆動装置1に電源が投入され、発光ダイオード3が点灯を開始すると、タイマ部20は更新周期のカウントを開始し、更新周期のカウントが完了すると第2設定部17に更新命令を出力する。第2設定部17は、タイマ部20から更新命令が入力されると、実施形態1で説明した方法で最大デューティカーブ及び最小デューティカーブの設定を更新する。尚、タイマ部20は更新周期のカウント動作が完了すると、カウント値をリセットしてカウント動作を再開しており、更新周期が経過する毎に第2設定部17に更新命令を出力する。
【0047】
ここで、点灯開始後の動作について説明する。図4(a)は発光ダイオード3の温度の時間変化、図4(b)は発光ダイオード3の順方向電圧Vの時間変化、図4(c)はスイッチング素子Q1のオンデューティDutyの時間変化をそれぞれ示している。
【0048】
点灯開始後の所定期間Taでは発光ダイオード3の温度が徐々に上昇し、温度上昇に伴って順方向電圧Vは徐々に低下していく。また点灯開始後の所定期間Taでは順方向電圧Vの低下に伴って、オンデューティDutyも大きく変化している。一方、所定期間Taが経過した後の期間Tbでは、発光ダイオード3の温度が飽和して、順方向電圧Vもあまり変化しなくなるため、オンデューティDutyの変化も少なくなっている。
【0049】
そこで、タイマ部20は、点灯開始後の所定期間Taでは更新周期を期間Tbでの更新周期に比べて短い時間t1(一定値)に設定し、所定期間Taが経過した後の期間Tbでは更新周期を時間t1よりも長い時間t2(一定値)に設定する。すなわち、本実施形態では、第2設定部17が最大デューティカーブB及び最小デューティカーブCを設定する更新周期を規定するタイマ部20を備え、このタイマ部20は、発光ダイオード3の点灯経過時間に応じて更新周期を段階的に長くしている。
【0050】
これにより、点灯開始からの経過時間が短い期間Taでは、発光ダイオード3の温度変化が大きく、オンデューティDutyの変化も大きいので、タイマ部20が更新期間を短めに設定することで、最大デューティカーブB及び最小デューティカーブCを短時間で更新することができ、電源電圧Vinが急変した場合にも出力の変化を抑制できる。一方、点灯開始からの経過時間が長い期間Tbでは、点灯初期に比べて発光ダイオード3の温度変化が安定し、オンデューティDutyの変化も小さくなるので、タイマ部20が更新期間を長めに設定しても影響は少なく、更新周期を長めに設定することで、第2設定部17を構成するマイクロコンピュータの負荷を軽減でき、処理能力の低いマイクロコンピュータを使用することができる。
【0051】
尚、タイマ部20は、発光ダイオード3の点灯経過時間に応じて更新周期を2段階に切り替えているが、点灯経過時間に応じて多段階(3段階以上)に切り替えても良く、段階的に周期を長くすればよい。
【0052】
また、タイマ部20は、図5に示すように、発光ダイオード3の点灯経過時間に応じて更新周期を徐々に長くしても良く、段階的に長くした場合と同様の効果が得られる。
【0053】
(実施形態3)
本実施形態では、実施形態1又は2で説明したLED駆動装置1を備える照明器具及び車両用照明装置について図面を参照して説明する。
【0054】
図6は、実施形態1又は2で説明したLED駆動装置1を備える照明器具50の断面図である。この照明器具50は、図7に示すように車両の前照灯として使用される車両用照明装置であり、車体60の前側部分に埋め込まれる器具本体51に、光源である発光ダイオード3と、LED駆動装置1を保持させている。
【0055】
器具本体51は前側に開口を有し、この開口を透明なカバー52で覆ってある。器具本体51とカバー52とで囲まれる空間には、発光ダイオード3が収納されている。発光ダイオード3には放熱板53が取り付けられており、発光ダイオード3の発光を前方に反射する反射鏡54が設けられている。器具本体51の下部には、LED駆動装置1をケース内に収納した点灯ブロック21が取り付けられており、点灯ブロック21と発光ダイオード3との間はケーブル55を介して電気的に接続されている。
【0056】
本実施形態の照明器具50(車両用照明装置)は、実施形態1又は2で説明したLED駆動装置1を備えており、発光ダイオード3の順方向電圧にばらつきがある場合でも、電源電圧Vinの電圧変動による出力の変動を低減した照明器具や車両用照明装置を実現できる。
【符号の説明】
【0057】
1 LED駆動装置
2 直流電源
3 発光ダイオード
11 コンバータ部
12 電源電圧検出部
13 電流検出部
14 電流指令値設定部
15 デューティ指令値設定部
15a 誤差増幅部
15b デューティ指令値出力部
16 第1設定部
17 第2設定部
18 デューティ制限部
19 駆動部
Q1 スイッチング素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8