特許第6025162号(P6025162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6025162-表面実装機の吸着ヘッド 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025162
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】表面実装機の吸着ヘッド
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   H05K13/04 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-285816(P2011-285816)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-135149(P2013-135149A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年10月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500548884
【氏名又は名称】ハンファテクウィン株式会社
【氏名又は名称原語表記】HANWHA TECHWIN CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100082164
【弁理士】
【氏名又は名称】小堀 益
(74)【代理人】
【識別番号】100105577
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 隆人
(72)【発明者】
【氏名】北田 進
【審査官】 遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−327774(JP,A)
【文献】 特開平11−330792(JP,A)
【文献】 特開2010−098022(JP,A)
【文献】 特開2008−103453(JP,A)
【文献】 特開2005−032860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトが吸着ヘッド本体に昇降可能かつ軸周りに回転可能に装着され、前記シャフトの下端に電子部品を吸着する吸着ノズルが装着される表面実装機の吸着ヘッドにおいて、
前記シャフトは、上部シャフトと、この上部シャフトの下端部分に対して着脱可能に装着された下部シャフトとからなり、
前記吸着ヘッド本体に設けられた吸排気口及び前記吸着ノズルに通じるエア通路が、前記下部シャフトにのみ形成されており、
前記下部シャフトは、前記吸着ヘッド本体に装着されたシャフトハウジングに対してメカニカルシールされながら上下方向に摺動可能に装着されており、前記上部シャフトから外された下部シャフトが、そのまま前記シャフトハウジングから下方に引き抜き可能であり、
前記エア通路の一端は、前記シャフトハウジングに設けたエア供給口に配管を介することなく直接通じるとともに前記エア供給口を介して前記吸排気口に通じ、前記エア通路の他端は前記吸着ノズルに通じていることを特徴とする表面実装機の吸着ヘッド。
【請求項2】
前記下部シャフトの上端部分にジョイントピンが設けられ、前記上部シャフトの下端部分にジョイント溝が設けられ、前記ジョイントピンを前記ジョイント溝に嵌め込むことにより、前記下部シャフトが前記上部シャフトに対して着脱可能に装着される、請求項に記載の表面実装機の吸着ヘッド。
【請求項3】
前記ジョイントピンを前記ジョイント溝に嵌め込むための動作が、前記シャフトの軸方向及び軸周りの動作のみである、請求項に記載の表面実装機の吸着ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップ等の電子部品をプリント基板上に実装する表面実装機において、電子部品を吸着する吸着ヘッドに関する。なお、本明細書では、電子部品のことを単に部品ともいう。
【背景技術】
【0002】
表面実装機は、吸着ノズルを有する吸着ヘッドにより、電子部品を部品供給部から吸着してプリント基板上に移送し、プリント基板上の所定位置に実装するように構成されている。
【0003】
また、表面実装機の吸着ヘッドは、一般的に、吸着ヘッド本体にシャフトが昇降可能かつ軸周りに回転可能に装着され、このシャフトの先端に電子部品を吸着する吸着ノズルが装着された構成を有する(例えば特許文献1)。そして、シャフトの内部には吸着ノズルに通じるエア通路が形成され、吸着ノズルが部品を吸着するときには前記エア通路を介して負圧が供給され、部品を実装するときには微正圧が供給される。
【0004】
このような吸着ヘッドにおいては、シャフト内部のエア通路に塵などが溜まりやすく、定期的あるいは随時にクリーニングする必要がある。また、シャフトの特に下部部分は、シャフトの昇降及び回転の精度を確保するため、吸着ヘッド本体に対して高精度で摺動するように装着されているので、使用により摩耗が進み、使用限度を超えたら交換する必要がある。更に、シャフトの特に下部部分は、プリント基板上の部品との衝突などによる外力を受けて変形することがあり、その場合も交換が必要となる。
【0005】
上述したシャフト内部のエア通路のクリーニングやシャフトの交換などのメンテナンスを行うには、シャフトを吸着ヘッド本体から取り外す必要がある。エア通路はシャフトの下部部分に形成されており、また摩耗や変形しやすいのもシャフトの下部部分であるが、従来のシャフトは上下一体の一本構造であるため、シャフト全体を吸着ヘッド本体から取り外す必要があった。シャフトには、スプラインナットなどの付属品が取り付けられていることが多く、シャフト全体を吸着ヘッド本体から取り出すには、多くの工数と時間を要していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−157635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、吸着ヘッド本体にシャフトが昇降可能かつ軸周りに回転可能に装着された表面実装機の吸着ヘッドにおいて、シャフトのメンテナンス性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シャフトが吸着ヘッド本体に昇降可能かつ軸周りに回転可能に装着され、前記シャフトの下端に電子部品を吸着する吸着ノズルが装着される表面実装機の吸着ヘッドにおいて、前記シャフトは、上部シャフトと、この上部シャフトの下端部分に対して着脱可能に装着された下部シャフトとからなり、前記吸着ヘッド本体に設けられた吸排気口及び前記吸着ノズルに通じるエア通路が、前記下部シャフトにのみ形成されており、前記下部シャフトは、前記吸着ヘッド本体に装着されたシャフトハウジングに対してメカニカルシールされながら上下方向に摺動可能に装着されており、前記上部シャフトから外された下部シャフトが、そのまま前記シャフトハウジングから下方に引き抜き可能であり、前記エア通路の一端は、前記シャフトハウジングに設けたエア供給口に配管を介することなく直接通じるとともに前記エア供給口を介して前記吸排気口に通じ、前記エア通路の他端は前記吸着ノズルに通じていることを特徴とする。
【0010】
また、下部シャフトを上部シャフトに対して着脱可能とする具体的な構成としては、下部シャフトの上端部分にジョイントピンを設け、上部シャフトの下端部分にジョイント溝を設け、前記ジョイントピンを前記ジョイント溝に嵌め込むことにより、下部シャフトを上部シャフトに対して着脱可能に装着することができる。
【0011】
そして、前記ジョイントピンを前記ジョイント溝に嵌め込むための動作は、シャフトの軸方向及び軸周りの動作のみとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シャフトを上部シャフトと、この上部シャフトの下端部分に対して着脱可能に装着された下部シャフトとから構成し、エア通路を下部シャフトにのみ形成したことにより、エア通路のクリーニングを行うには下部シャフトのみを取り外せば済むので、メンテナンス性が向上する。
【0013】
また、摩耗や変形が起こりやすいのは下部シャフトであるから、摩耗や変形が起きたときには下部シャフトのみを交換すれば済み、メンテナンス性が向上するとともに、コスト低減にも寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例による吸着ヘッドの要部を示す断面図である。
図2図1の吸着ヘッドにおけるシャフト構造体を示す斜視図である。
図3図2に示すシャフト構造体の内部構造を示す、一部透視による斜視図である。
図4図3において上部シャフトと下部シャフトを分離した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づき説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施例による吸着ヘッドの要部を示す断面図である。
【0017】
表面実装機の吸着ヘッドの吸着ヘッド本体10に、上部シャフト21と下部シャフト22とからなるシャフト20が、シャフト20の軸方向に沿って昇降可能かつシャフト20の軸周りに回転可能に装着されている。そして、下部シャフト22の先端(下端)に、電子部品を吸着する吸着ノズル30が装着されている。
【0018】
下部シャフト22の内部にはエア通路22aが形成されている。エア通路22aは、その一端が、後述するハウジング23に設けたエア供給口23cを介して吸着ヘッド本体10に設けられた吸排気口11に通じ、他端が吸着ノズル30に通じている。また、吸排気口11には、自動制御される吸排気系が接続される。これにより、吸着ノズル30が部品を吸着するときには吸排気口11からエア供給口23c及びエア通路22aを介して吸着ノズル30に負圧が供給され、部品を実装するときには微正圧が供給される。
【0019】
図2は、先に説明したシャフト20を主体とするシャフト構造体を示す斜視図、図3は、そのシャフト構造体の内部構造を示す、一部透視による斜視図、図4は、図3において上部シャフト21と下部シャフト22を分離した状態を示す斜視図である。図1及び図2〜4を参照してシャフト構造体の構成を説明する。
【0020】
上部シャフト21と下部シャフト22とからなるシャフト20は、シャフトハウジング23を貫通して装着される。具体的には、上部シャフト21に一対のベアリング21aが固定されており、この一対のベアリング21aをシャフトハウジング23に形成したガイド溝23aに嵌め込んでいる。これにより、シャフト20は、ガイド溝23aの範囲内でシャフトハウジング23に対して摺動可能(昇降可能)となっている。一方、シャフト20は、シャフトハウジング23に対して軸線周りには回転できない。すなわち、シャフト20は、シャフトハウジング23が軸線周りに回転したときに、シャフトハウジング23と一体となって軸線周りに回転する。
【0021】
シャフトハウジング23は、吸着ヘッド本体10に対して、上下方向には移動不可(昇降不可)であるが、シャフト20の軸線周りには回転可能となるように上下2箇所のベアリング24を介して装着されている。シャフトハウジング23をシャフト20の軸線周りに回転させるために、シャフトハウジング23の外周にギア25が設けられている。ギア25は、トーションばねを使用したバックラッシュレスギアであり、シャフト20(下部シャフト22)に固定した固定ギア25aと、この固定ギア25aに重ねられる揺動ギア25bとの間に、トーションばね25cを組み込んだものである。このギア25に、駆動モータに連結された駆動ギアを噛み合わせ駆動ギアを回転させることで、シャフトハウジング23は、吸着ヘッド本体10に対してシャフト20の軸線周りに回転する。これにより、シャフト20もシャフトハウジング23と一体となって軸線周りに回転する。
【0022】
また、シャフトハウジング23には、下部シャフト22に設けたエア通路22aにエアを供給するエア供給口23cが設けられている。エア供給口23cは、吸着ヘッド本体10に設けられた吸排気口11に通じており、エア供給口23cから供給されるエアは、図4に符号22a−1で示したエア通路の入口を通じてエア通路22aに供給される。
【0023】
なお、シャフトハウジング23が吸着ヘッド本体10に対して軸線周りに回転するときの回転摺動面23bは、メカニカルシールされている。また、シャフト20がシャフトハウジング23に対して昇降するときの昇降摺動面20aもメカニカルシールされている。
【0024】
シャフト20の上部シャフト21の上部外周を囲むようにコイルスプリング26が配置されている。コイルスプリング26は、上部シャフト21の外周に設けられたスプリングベース21bに支持されており、図2に示すシャフト構造体が図1に示すように吸着ヘッド本体10に装着された状態において、シャフト20にこれを上方に摺動させる方向の力を作用させる。したがって、シャフト20は常時はその上限位置に付勢されている。シャフト20を下降させるときは、上部シャフト21の上端に固定されたシャフトヘッド21cの上方に位置する押圧部材27を押し下げる。これにより、シャフト20がコイルスプリング26の弾性力に抗して下降する。
【0025】
次に、上部シャフト21と下部シャフト22との接続構造について説明する。本発明において、下部シャフト22は上部シャフト21に対して着脱可能に装着される。その具体的な接続構造として、本実施例では図4に明確に現れているように、下部シャフト22の上端部分に円柱状の挿入部22bを形成し、この挿入部22bの外周面に180度間隔で2箇所にジョイントピン22cを突出して設けている。一方、上部シャフト21の下端部分には、挿入部22bを挿入可能な中空状の受部21dを設け、この受部21dにジョイントピン22cを嵌め込み可能なジョイント溝21eを設けている。ジョイント溝21eの基端は、ジョイントピン22cを嵌め込めるように開放している。
【0026】
以上の構成において、図3の拡大図に示すように、上部シャフト21の受部21dに下部シャフト22の挿入部22bを挿入し、ジョイントピン22cがジョイント溝21eの基端に嵌り込む位置まで下部シャフト22をA方向に押し込み、次いでB方向に回転させ、更にC方向に引っ張る。これにより、ジョイントピン22cがジョイント溝21eに確実に嵌り込み、上部シャフト21に下部シャフト22が装着される。そして、上記と逆の手順により、上部シャフト21から下部シャフト22を取り外すことができる。
【0027】
本実施例では、下部シャフト22の挿入部22bの下側にコイルスプリング28を装着している。このコイルスプリング28は、下部シャフト22を上部シャフト21に上述の手順で装着して接続した状態において、下部シャフト22を上部シャフト21に対して下方に引っ張る力を作用させる。このコイルスプリング28の作用により、下部シャフト22を上部シャフト21に装着した状態では、図3の拡大図に示すように、ジョイントピン22cがジョイント溝21eの壁に突き当たる位置に付勢される。したがって、上部シャフト21に対する下部シャフト22の軸方向(長手方向)の位置が固定され、シャフト20全体としての長さを一定に保つことができる。
【0028】
また、本実施例においては、上述のとおり、シャフト20の軸方向であるA方向及びC方向、並びに軸周りのB方向の動作のみにより、上部シャフト21に下部シャフト22を着脱することができる。したがって、図2に示すシャフト構造体を図1に示すように吸着ヘッド本体10に装着した状態において、上部シャフト21に対して下部シャフト22を容易に着脱することができ、上部シャフト21から外された下部シャフト22は、そのまま吸着ヘッド本体10から下方に引き抜くことが可能である。このため、シャフト20のうち特にメンテナンスを行う必要がある下部シャフト22のメンテナンスを極めて容易に行うことができ、下部シャフト22の交換も同様に極めて容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0029】
10 吸着ヘッド本体
11 吸排気口
20 シャフト
20a 昇降摺動面
21 上部シャフト
21a ベアリング
21b スプリングベース
21c シャフトヘッド
21d 受部
21e ジョイント溝
22 下部シャフト
22a エア通路
22a−1 エア通路の入口
22b 挿入部
22c ジョイントピン
23 シャフトハウジング
23a ガイド溝
23b 回転摺動面
23c エア供給口
24 ベアリング
25 ギア
25a 固定ギア
25b 揺動ギア
25c トーションばね
26 コイルスプリング
27 押圧部材
28 コイルスプリング
30 吸着ノズル
図1
図2
図3
図4