(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
制御信号(PWM)に基づいてスイッチング素子(Q1〜Q6)を駆動するスイッチ回路(11,11A,11B)と、フィードバック制御を行うフィードバック手段(19)と、前記フィードバック制御の制御量(Iref)に基づいて前記制御信号を出力する信号出力手段(14,15)とを備える電力変換装置(10)において、
前記スイッチ回路のスイッチング動作を通常モード(Nmode)と、前記通常モードよりも前記スイッチング動作が少ない間欠モード(Imode)との間で切り替え制御を行うモード切替手段(19c)を有し、
前記モード切替手段は、前記スイッチ回路に入力される入力値である第1検出値(Vd1)と前記スイッチ回路から出力される出力値である第2検出値(Vd2)とのうちで一方または双方の検出値に基づいて、前記通常モードから前記間欠モードに切り替えるタイミングを変化させるとともに、前記第1検出値および前記第2検出値のうちで一方または双方の検出値に基づいて、スロープ信号にかかる単位時間当たりの変化量を変化させることを特徴とする電力変換装置。
制御信号(PWM)に基づいてスイッチング素子(Q1〜Q6)を駆動するスイッチ回路(11,11A,11B)と、フィードバック制御を行うフィードバック手段(19)と、前記フィードバック制御の制御量(Iref)に基づいて前記制御信号を出力する信号出力手段(14,15)とを備える電力変換装置(10)において、
前記スイッチ回路のスイッチング動作を通常モード(Nmode)と、前記通常モードよりも前記スイッチング動作が少ない間欠モード(Imode)との間で切り替え制御を行うモード切替手段(19c)を有し、
前記モード切替手段は、前記スイッチ回路に入力される入力値である第1検出値(Vd1)と前記スイッチ回路から出力される出力値である第2検出値(Vd2)とのうちで一方または双方の検出値に基づいて、前記通常モードから前記間欠モードに切り替えるタイミングを変化させるとともに、前記第1検出値および前記第2検出値に基づいて、前記通常モードから前記間欠モードに切り替えるタイミングを変化させることを特徴とする電力変換装置。
制御信号(PWM)に基づいてスイッチング素子(Q1〜Q6)を駆動するスイッチ回路(11,11A,11B)と、フィードバック制御を行うフィードバック手段(19)と、前記フィードバック制御の制御量(Iref)に基づいて前記制御信号を出力する信号出力手段(14,15)とを備える電力変換装置(10)において、
前記スイッチ回路のスイッチング動作を通常モード(Nmode)と、前記通常モードよりも前記スイッチング動作が少ない間欠モード(Imode)との間で切り替え制御を行うモード切替手段(19c)を有し、
前記モード切替手段は、前記スイッチ回路に入力される入力値である第1検出値(Vd1)と前記スイッチ回路から出力される出力値である第2検出値(Vd2)とのうちで一方または双方の検出値に基づいて、前記通常モードから前記間欠モードに切り替えるタイミングを変化させ、
前記フィードバック手段は、前記通常モードから前記間欠モードに切り替える際、前記フィードバック制御の積分項をゼロに初期化することを特徴とする電力変換装置。
制御信号(PWM)に基づいてスイッチング素子(Q1〜Q6)を駆動するスイッチ回路(11,11A,11B)と、フィードバック制御を行うフィードバック手段(19)と、前記フィードバック制御の制御量(Iref)に基づいて前記制御信号を出力する信号出力手段(14,15)とを備える電力変換装置(10)において、
前記スイッチ回路のスイッチング動作を通常モード(Nmode)と、前記通常モードよりも前記スイッチング動作が少ない間欠モード(Imode)との間で切り替え制御を行うモード切替手段(19c)を有し、
前記モード切替手段は、前記スイッチ回路に入力される入力値である第1検出値(Vd1)と前記スイッチ回路から出力される出力値である第2検出値(Vd2)とのうちで一方または双方の検出値に基づいて、前記通常モードから前記間欠モードに切り替えるタイミングを変化させ、
前記フィードバック手段は、前記間欠モード中に、次回の前記通常モードで前記フィードバック制御する際のゲイン値を前記入力値に基づいて変化させることを特徴とする電力変換装置。
前記モード切替手段は、前記第1検出値および前記第2検出値のうちで一方または双方の検出値に基づいて、スロープ信号にかかる単位時間当たりの変化量を変化させることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の電力変換装置。
前記モード切替手段は、前記第1検出値および前記第2検出値に基づいて、前記通常モードから前記間欠モードに切り替えるタイミングを変化させることを特徴とする請求項1,3,4のいずれか一項に記載の電力変換装置。
前記フィードバック手段は、前記間欠モード中に、次回の前記通常モードで前記フィードバック制御する際のゲイン値を前記入力値に基づいて変化させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電力変換装置。
前記モード切替手段は、前記間欠モードから前記通常モードに切り替わると、所定期間だけ所定デューティ比の前記制御信号を生成する指令である指令信号(Icom)を前記信号出力手段に伝達することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、特に明示しない限り、「接続する」という場合には電気的に接続することを意味する。各図は、本発明を説明するために必要な要素を図示し、実際の全要素を図示しているとは限らない。上下左右等の方向を言う場合には、図面の記載を基準とする。英数字の連続符号は記号「〜」を用いて略記する。例えば、「スイッチング素子Q1〜Q4」は「スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4」を意味する。「スイッチング周期」は、スイッチ回路に含まれる全てのスイッチング素子がオン/オフするのに必要な期間を意味する。
【0014】
〔実施の形態1〕
実施の形態1は
図1〜
図6を参照しながら説明する。
図1に示す電力変換装置10は、スイッチング電源装置(DC/DCコンバータ)の一例である。当該電力変換装置10は、入力電圧Vin(例えば288[V])を所要の出力電圧Vout(例えば14[V])に変換して出力する機能を担う。電力変換装置10の入力端子INには電力源Ebが接続され、出力端子OUTには負荷Zが接続される。電力源Ebは、例えばバッテリ(二次電池等)や燃料電池などが該当する。負荷Zは、例えば電力源Ebとは電源容量が異なるバッテリ、回転電機(電動発電機、発電機,電動機等)、ヘッドランプなどが該当する。出力電圧Voutは任意の値で設定してよい。電力変換装置10内に設定してもよく、外部処理装置(例えばECUやコンピュータ等)から受ける信号やデータ等に基づいて設定してもよい。
【0015】
図示する電力変換装置10は、コンデンサC10、スイッチ回路11A、トランスTr、整流平滑回路12、第1検出部13a、ドライブ回路14、パルス生成部15、スロープ電圧生成部16、信号演算部17、信号比較部18、フィードバック手段19、第2検出部1Aなどを有する。以下では、電力変換装置10の各構成要素について簡単に説明する。なお、電力変換装置10内では検出電流値Idや検出電圧値Vd等のような各種信号は、特に明示しない限り、各構成要素で処理可能な形態(例えば電圧値やデータ等)で取り扱われる。
【0016】
コンデンサC10は、電力源Ebから入力される入力電圧Vinを平滑化する。
【0017】
スイッチ回路11Aは、スイッチング素子Q1〜Q4、ダイオードD1〜D4、トランスTrなどを有する。スイッチング素子Q1〜Q4は、フルブリッジ回路で構成され、ドライブ回路14から入力端子(例えばゲート端子等)に入力されるパルス幅変調信号PWM(制御信号に相当する)に基づいてオン/オフが駆動される。ダイオードD1〜D4は、それぞれ対応するスイッチング素子Q1〜Q4の入力端子(例えばドレイン端子等)と出力端子(例えばソース端子等)との間に並列接続される。これらのダイオードは、フリーホイールダイオードとして機能する。スイッチング素子Q1の出力端子とスイッチング素子Q3の入力端子との接続点は、トランスTrの一次コイルL1の一方側端子に接続される。同様にスイッチング素子Q2の出力端子とスイッチング素子Q4の入力端子との接続点は、トランスTrの一次コイルL1の他方側端子に接続される。
【0018】
トランスTrは、一次コイルL1と、中間タップを備える二次コイルL2とを有する。一次コイルL1の接続は上述した通りである。二次コイルL2の両端は、ダイオードD12a,D12bおよびコイルL12を介して、出力端子OUTの一端側(プラス側)に接続される。二次コイルL2の中間タップは、出力端子OUTの他端側(マイナス側)に接続される。
【0019】
整流平滑回路12は、全波整流を行う整流部や、出力電圧Voutを平滑化する平滑部などを有する。
図1の構成例では、整流部はダイオードD12a,D12bを有し、二次コイルL2から出力される交流電圧を直流電圧に整流する。平滑部はコイルL12とコンデンサC12とを備えるLCフィルタである。ダイオードD12aとコイルL12は直列接続され、出力端子OUTの一端側に接続される。コンデンサC12は、出力端子OUTの両端に接続される。出力端子OUTの一端側(特にコンデンサC12の一端側)には、後述する第2検出部1Aが接続され、出力電圧Voutが検出される。
【0020】
第1検出部13aは、スイッチ回路11Aに入力される検出電流値Id(入力値に相当する)を検出する。第1検出部13bは、スイッチ回路11Aに入力される検出電圧値Vd1(入力値に相当する)を検出する。第2検出部1Aは、スイッチ回路11Aから出力される出力電圧Voutを検出電圧値Vd(出力値に相当する)として検出する。本形態の検出電圧値Vd1は「第1検出値」に相当し、検出電圧値Vd2は「第2検出値」に相当する。一般的に、検出電流値Idや検出電圧値Vd1は波形信号のように変化し、検出電圧値Vd2は負荷Z等の状態に応じて変化する。
【0021】
ドライブ回路14およびパルス生成部15は「信号出力手段」に相当する。パルス生成部15は、後述する信号比較部16から伝達される差分電流値ΔIや、後述する切替判定部19eから伝達される切替信号Ichgに基づいて、パルス波(本形態ではパルス幅変調信号PWM)を生成して出力する。ドライブ回路14は、対応するスイッチング素子Q1〜Q4が駆動するように、パルス生成部15から伝達されるパルス幅変調信号PWMを増幅して出力する。
【0022】
スロープ電圧生成部18aは、対象となる信号(
図1の例では検出電圧値Vd1)を逓増(または逓減)させるためのスロープ信号値Isを生成して出力する。スロープ信号値Isは鋸波のように、時間の経過とともに変化し、所定周期ごとにリセットされる。信号演算部17は、検出電流値Idとスロープ信号値Isとを和算演算し、合成電流値Icとして出力する。信号比較部16(コンパレータ)は、信号演算部17から伝達される合成電流値Icを基準値とし、後述するフィードバック手段19(具体的にはDAC19a)から伝達される指令電流値Idirとの差分値である差分電流値ΔIを演算して出力する。
【0023】
一点鎖線で示すフィードバック手段19は、DAC19a(デジタル・アナログ・コンバータ)、フィードバック演算部19b、モード切替手段19cなどを有する。一点鎖線で示すモード切替手段19cは、切替判定部19eや閾値演算部19fなどを有する。フィードバック手段19の各構成要素について、処理の流れに沿って簡単に説明する。なお、フィードバック手段19はハードウェアで構成してもよく、CPUがプログラムを実行するソフトウェアで構成してもよい。
【0024】
フィードバック演算部19bは、第1検出部13bから伝達される検出電圧値Vd1と第2検出部1Aから伝達される検出電圧値Vd2とのうちで一方または双方の検出値に基づいて演算を行い、フィードバック制御量Ipiを出力する。本形態では、所要の出力電圧Voutとなるように、比例制御(P制御)および積分制御(I制御)の演算を行う。さらに、必要に応じて微分制御(D制御)の演算を加えて行ってもよい。
【0025】
後述する切替判定部19eから伝達される切替信号Ichgによって通常モードNmodeから間欠モードImodeに切り替える際には、上記積分制御にかかる積分項をゼロに初期化するとなおよい。間欠モードImode中において、次回の通常モードNmodeでフィードバック制御する際のゲイン値を検出電圧値Vd1(入力値)に基づいて変化させるとなおよい。検出電圧値Vd1が大きくなるにつれて、ゲイン値が小さくなるように設定する。具体的には、比例ゲイン,積分ゲイン,微分ゲインのうちで一以上を適切に選択し、関数や特性線(
図2や
図3を参照)などに基づいて設定する。
【0026】
DAC19aは、フィードバック演算部19bから伝達される制御電流値Iref(制御量に相当するデータ)を、アナログ信号である指令電流値Idirに変換して出力する。
【0027】
切替判定部19eは、スイッチング素子Q1〜Q4の動作モード(通常モードNmodeまたは間欠モードImode)の切り替えを判別する。具体的には、制御電流値Irefと、後述する閾値Ithとに基づいて、通常モードNmodeと間欠モードImodeとのいずれに切り替えるかを判定する。判定を行うに際し、通常モードNmodeと間欠モードImodeとの切り替えにヒステリシス特性を持たせるとなおよい。例えば、通常モードNmodeから間欠モードImodeの切り替え閾値を「Ith」とした場合、間欠モードImodeから通常モードNmodeの切り替え閾値を「Ith+α」(αは任意の値)とするなどが該当する。判定結果は切替信号Ichgとしてパルス生成部15に出力する。切替信号Ichgは、判定結果とともに指令信号Icomを含めてもよい。指令信号Icomは、所定期間だけ所定デューティ比のパルス幅変調信号PWMを生成する指令である。所定期間と所定デューティ比とは、いずれも任意に設定してよい。
【0028】
閾値演算部19fは、検出電圧値Vd1および検出電圧値Vd2のうちで一方または双方の検出値に基づいて、通常モードNmodeから間欠モードImodeに切り替える際の基準値となる閾値Ithを演算する。
図2には、閾値Ithに含まれる閾値Ith1(縦軸)と、検出電圧値Vd1(横軸)との関係を非直線的(曲線的を含む)に規定する特性線f1の一例を示す。
図3には、閾値Ithに含まれる閾値Ith2(縦軸)と、検出電圧値Vd2(横軸)との関係を直線的に規定する特性線f2の一例を示す。なおトランスTrや負荷Z等の仕様に応じて、特性線f1,f2を任意に規定してもよい。例えば、
図2の特性線f1を直線的に規定したり、
図3の特性線f2を非直線的に規定したりしてもよい。
【0029】
上述したように構成される電力変換装置10において、スイッチング素子Q1〜Q4の動作モードについて
図4を参照しながら説明する。なお、閾値Ith1と閾値Ith2はいずれも閾値演算部19fの演算結果に過ぎないので、閾値Ith1を代表して説明する。また、閾値Ith1と閾値Ith2とに基づく演算値(例えば平均値等としての閾値Ith)を利用する場合についても、閾値Ith1と同様である。
【0030】
図4では、制御電流値Irefの特性線を実線で示し、閾値Ith1の特性線を一点鎖線で示す。各特性線は分かり易くするために単純化した曲線の一例であり、現実には内外の動作環境(フィードバック制御や負荷Z等)に応じて様々に変化する。
【0031】
切替判定部19eは、時刻t11までと時刻t13以降において、制御電流値Irefが閾値Ith1以上であるので(Iref≧Ith1)、通常モードNmodeに切り替える。これに対して、時刻t11から時刻t13までの間、制御電流値Irefが閾値Ith1よりも下回るので(Iref<Ith1)、間欠モードImodeに切り替える。切替信号Ichgに指令信号Icomを含めることにより、時刻t12から時刻t13までの所定期間は、所定デューティ比(例えば1%等)でスイッチング素子Q1〜Q4をスイッチングさせる。
【0032】
スイッチング素子Q1〜Q4にかかる動作モードの切り替えは、制御電流値Irefと閾値Ith(Ith1,Ith2)との大小関係に基づいて行われる。よって、動作モードを切り替えるタイミングが変化する。すなわち、通常モードNmodeから間欠モードImodeに切り替わるタイミングが変化したり、間欠モードImodeから通常モードNmodeに切り替わるタイミングが変化したりする。
【0033】
上述した実施の形態1によれば、以下に示す各効果を得ることができる。
【0034】
(1)電力変換装置10において、スイッチ回路11Aのスイッチング動作を通常モードNmodeと、通常モードNmodeよりもスイッチング動作が少ない間欠モードImodeとの間で切り替え制御を行うモード切替手段19cを有し、モード切替手段19cは、スイッチ回路11Aに入力される入力値である検出電圧値Vd1(第1検出値)とスイッチ回路11Aから出力される出力値である検出電圧値Vd2(第2検出値)とのうちで一方または双方の検出値に基づいて、通常モードNmodeから間欠モードImodeに切り替えるタイミングを変化させる構成とした(
図1,
図4を参照)。この構成によれば、入出力条件が変化してもスイッチング素子Q1〜Q4の動作モード(通常モードNmodeまたは間欠モードImode)を切り替える際の負荷電流Ioutが変動するのを抑制し、全動作領域でのシステム効率を向上させることができる。
【0035】
(3)モード切替手段19cは、検出電圧値Vd1および検出電圧値Vd2に基づいて、通常モードNmodeから間欠モードImodeに切り替えるタイミングを変化させる構成とした(
図1,
図4を参照)。この構成によれば、入出力条件が変化してもスイッチング素子Q1〜Q4の動作モードを切り替える際の負荷電流Ioutが変動するのをより確実に抑制し、全動作領域でのシステム効率をより確実に向上させることができる。
【0036】
(4)モード切替手段19cは、検出電圧値Vd1および検出電圧値Vd2のうちで一方または双方の検出値に基づいて、通常モードNmodeから間欠モードImodeに切り替える際の基準値となる閾値Ith(Ith1,Ith2)を演算する閾値演算部19fと、制御電流値Irefと閾値Ithとに基づいて、通常モードNmodeから間欠モードImodeに切り替えるか否かを判定する切替判定部19eとを有する構成とした(
図1〜
図4を参照)。この構成によれば、閾値演算部19fによって閾値Ithが演算され、切替判定部19eによって動作モードの切り替えを行うか否かを判定する。よって、入出力条件が変化してもスイッチング素子Q1〜Q4の動作モードを切り替える際の負荷電流Ioutが変動するのをより確実に抑制し、全動作領域でのシステム効率をより確実に向上させることができる。
【0037】
(5)モード切替手段19cは、通常モードNmodeと間欠モードImodeとの切り替えにヒステリシス特性を持たせる構成とした(
図1を参照)。この構成によれば、閾値Ithの近傍で通常モードNmodeと間欠モードImodeとの切り替えが頻繁に起きるハンチング現象を未然に防止することができる。
【0038】
(6)フィードバック手段19は、通常モードNmodeから間欠モードImodeに切り替える際、フィードバック制御の積分項をゼロに初期化する構成とした(
図1を参照)。この構成によれば、通常モードNmodeと間欠モードImodeとの切り替えが頻繁に起きるハンチング現象をより確実に防止することができる。
【0039】
(7)フィードバック手段19は、間欠モードImode中に、次回の通常モードNmodeでフィードバック制御する際のゲイン値(比例ゲイン,積分ゲイン,微分ゲイン)を検出電圧値Vd1(入力値)に基づいて変化させる構成とした(
図1を参照)。この構成によれば、間欠モードImodeから通常モードNmodeに移行する際に出力電圧Voutが上昇するのを抑えることができる。
【0040】
(8)モード切替手段19cは、間欠モードImodeから通常モードNmodeに切り替わると、所定期間だけ所定デューティ比のパルス幅変調信号PWMを生成する指令である指令信号Icomを信号出力手段に伝達する構成とした(
図1,
図4を参照)。電力変換装置10はトランスTr(誘導性要素)を有するために、負荷電流Ioutが負値になる場合がある。間欠モードImodeから通常モードNmodeに切り替わる際に出力電圧Voutが大きければ、電位差も大きくなる。この構成によれば、通常モードNmodeに切り替えてから所定期間だけ所定デューティ比のパルス幅変調信号PWMでスイッチング素子Q1〜Q4をスイッチングするので、出力電圧Voutが急激に上昇するのを抑制する。さらに、トランスTrの偏磁を防止し、スイッチング素子Q1〜Q4の損傷を防止することができる。
【0041】
(9)スイッチ回路11Aは、一次コイルL1と二次コイルL2とを有するトランスTrを含み、モード切替手段19cは、一次コイルL1側の検出電圧値Vd1(検出値)を入力値とし、二次コイルL2側の検出電圧値Vd2(検出値)を出力値とする構成とした(
図1を参照)。この構成によれば、入出力条件が変化してもスイッチ回路11Aに含まれるスイッチング素子Q1〜Q4の動作モード(通常モードNmodeまたは間欠モードImode)を切り替える際の負荷電流Ioutが変動するのを抑制し、全動作領域でのシステム効率を向上させることができる。
【0042】
〔実施の形態2〕
実施の形態2は
図5〜
図10を参照しながら説明する。なお電力変換装置10の構成等は実施の形態1と同様であり、図示および説明を簡単にするために実施の形態2では実施の形態1と異なる点について説明する。よって実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
実施の形態2が実施の形態1と相違するのは、スロープ電圧生成部18の構成とモード切替手段19cの構成である。スロープ電圧生成部18は、一定のスロープ信号値Isを出力するスロープ電圧生成部18a(
図1を参照)に代えて、スロープ電圧生成部18bを備える。スロープ電圧生成部18bは、後述する傾斜変更信号Iincに応じてスロープ信号値Isを変化させて出力する。スロープ電圧生成部18bの構成例については後述する(
図6を参照)。
【0044】
モード切替手段19cは、閾値演算部19fに代えて閾値設定部19gを備え、変化量演算部19dをさらに備える。閾値設定部19gは一定値に設定される閾値Ithを出力し、切替判定部19eに伝達する。変化量演算部19dは、検出電圧値Vd1および検出電圧値Vd2のうちで一方または双方の検出値に基づいて、スロープ信号値Is(スロープ信号に相当する)にかかる単位時間当たりの変化量を変化させる傾斜変更信号Iincを出力し、スロープ電圧生成部18bに伝達する。検出電圧値Vd1,Vd2と傾斜変更信号Iincとの関係については後述する(
図7,
図8を参照)。
【0045】
図6に示すスロープ電圧生成部18bは、抵抗器Rs、スイッチング素子Qs、電流源Es、DAC18sなどを有する。抵抗器Rsとスイッチング素子Qsとは直列接続され、入力電圧Vcsの入力端と接地との間に備える。抵抗器Rsとスイッチング素子Qsとの接続点は、スロープ信号値Isの出力端および電流源Esの出力端に接続される。傾斜変更信号Iinc(デジタルデータ)はDAC18sによってアナログ信号に変換され、当該アナログ信号に基づいて電流源Esが所定値の定電流を出力する。上記接続点と電流源Esの出力端とが接続されることで、スロープ信号値Is(パルス信号)のオン時における単位時間当たりの変化量が変化する。
【0046】
図7には、傾斜変更信号Iinc(縦軸)と、検出電圧値Vd1(横軸)との関係を非直線的に規定する特性線f3の一例を示す。
図8には、傾斜変更信号Iinc(縦軸)と、検出電圧値Vd2(横軸)との関係を直線的に規定する特性線f4の一例を示す。図示しないが、傾斜変更信号Iincと検出電圧値Vd1,Vd2の双方との関係を規定してもよい。例えばテーブルやマップで関係を規定してもよく、検出電圧値Vd1,Vd2に基づく演算値(例えば平均値等)と傾斜変更信号Iinc(縦軸)との関係を規定してもよい。
図2に示す特性線f1や
図3に示す特性線f2と同様に、トランスTrや負荷Z等の仕様に応じて特性線3を任意に規定してもよい。
【0047】
上述のように構成されるスロープ電圧生成部18bによって出力されるスロープ信号値Isの一例を
図9に示す。スイッチ回路11Aがフルブリッジ回路で構成されるため、
図9に示すスロープ信号値Isの変化は2つのサイクルがスイッチング周期Cswになる。一点鎖線で示す入力電圧Vcsの変化に対して、各パルスの立ち上がり時(時刻t21,t24,t27,…)を基準とする経過時間Δtに応じた変化量ΔIsだけ増える。よって、スロープ信号値Isは、入力電圧Vcs、傾斜変更信号Iinc(変更値)、抵抗器Rs(抵抗値)、経過時間Δtなどに基づいて、次式で示すように変化する。なお、右辺の2項目が
図9に示す変化量ΔIsに相当する。
図9に例示する傾斜変更信号Iincは正値の場合を示すが、負値の場合ではスロープ部分が右下がりに変化する。
【0049】
上述したように構成される電力変換装置10において、スイッチング素子Q1〜Q4の動作モードについて
図10を参照しながら説明する。
図10では、制御電流値Irefの特性線を実線で示し、閾値Ithの特性線を一点鎖線で示す。制御電流値Irefの特性線は、実施の形態1と分かり易くするために単純化した曲線の一例であり、現実には内外の動作環境(フィードバック制御や負荷Z等)に応じて様々に変化する。閾値Ithは任意の所定値で設定されるが、動作環境に応じて他の所定値に変更してもよい。
【0050】
切替判定部19eは、時刻t31までと時刻t33以降において、制御電流値Irefが閾値Ith以上であるので(Iref≧Ith)、通常モードNmodeに切り替える。これに対して、時刻t31から時刻t33までの間、制御電流値Irefが閾値Ithよりも下回るので(Iref<Ith)、間欠モードImodeに切り替える。切替信号Ichgに指令信号Icomを含めることにより、時刻t32から時刻t33までの所定期間は、所定デューティ比(例えば1%等)でスイッチング素子Q1〜Q4をスイッチングさせる。
【0051】
スイッチング素子Q1〜Q4にかかる動作モードの切り替えは、制御電流値Irefと閾値Ithとの大小関係に基づいて行われる。よって、動作モードを切り替えるタイミングが変化する。すなわち、通常モードNmodeから間欠モードImodeに切り替わるタイミングが変化したり、間欠モードImodeから通常モードNmodeに切り替わるタイミングが変化したりする。
【0052】
上述した実施の形態2によれば、以下に示す各効果を得ることができる。なお、スロープ電圧生成部18aおよびフィードバック手段19を除く電力変換装置10の構成については実施の形態1と同様であるので、実施の形態1と同様の作用効果が得られる。
【0053】
(2)モード切替手段19cは、検出電圧値Vd1および検出電圧値Vd2のうちで一方または双方の検出値に基づいて、スロープ信号値Is(スロープ信号)にかかる変化量ΔIs(単位時間当たりの変化量)を変化させる構成とした(
図5〜
図10を参照)。この構成によれば、パルス信号のオン時に変化する変化量ΔIs(スロープ変化量)を変化させる。よって、入出力条件が変化しても、通常モードNmodeまたは間欠モードImode)を切り替える際の負荷電流Ioutが変動するのを抑制し、全動作領域でのシステム効率を向上させることができる。
【0054】
〔実施の形態3〕
実施の形態3は
図11と
図12を参照しながら説明する。なお電力変換装置10の構成等は実施の形態1,2と一部が同一であり、図示および説明を簡単にするために実施の形態3では実施の形態1,2と異なる点について説明する。よって実施の形態1,2で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
実施の形態3が実施の形態1,2と異なるのは、スイッチ回路11と負荷Zである。スイッチ回路11は、定電圧を出力する実施の形態1とは異なり、出力電圧Voutにかかる電圧値や周波数を経時的に変化させる。負荷Zには、誘導性要素の回転電機20(「MG」と図示する)を適用する。よって実施の形態2に示す電力変換装置10は、インバータの一例である。
【0056】
図11と
図12に示すスイッチ回路11Bは、それぞれ
図1と
図5に示すスイッチ回路11Aに代えて構成される。当該スイッチ回路11Bは、スイッチング素子Q1〜Q6やダイオードD1〜D6などを有する。スイッチング素子Q1〜Q6は、ドライブ回路14から入力端子(例えばゲート端子等)に入力されるパルス幅変調信号PWMに基づいてオン/オフが駆動される。当該スイッチ回路11Bは、スイッチング素子Q1,Q2,Q3を上アームとし、スイッチング素子Q4,Q5,Q6を下アームとするハーフブリッジ回路で構成される。ダイオードD1〜D6は、それぞれ対応するスイッチング素子Q1〜Q6の入力端子(例えばドレイン端子等)と出力端子(例えばソース端子等)との間に並列接続される。これらのダイオードは、フリーホイールダイオードとして機能する。
【0057】
スイッチング素子Q1の出力端子とスイッチング素子Q4の入力端子との接続点は、第1相(例えばU相)の出力端子OUTに接続される。スイッチング素子Q2の出力端子とスイッチング素子Q5の入力端子との接続点は、第2相(例えばV相)の出力端子OUTに接続される。スイッチング素子Q3の出力端子とスイッチング素子Q6の入力端子との接続点は、第3相(例えばW相)の出力端子OUTに接続される。
【0058】
出力電圧Voutは三相交流であるので、第2検出部1Aは交流電圧の電圧値(例えば瞬間値,絶対値,ピーク値,実効値等)を検出電圧値Vdとして検出する。電力変換装置10における他の要素については、実施の形態1,2と同様に機能する。そのため、実施の形態1における
図1〜
図4に示す制御例や、実施の形態2における
図5〜
図10に示す制御例をそれぞれ実現できる。これにより、低入力電圧状態から入力電圧が急激に上昇するような状態が発生しても、回転電機20(具体的には磁性体コア)の偏磁を防止し、スイッチング素子Q1〜Q6の損傷も防止できる。
【0059】
上述した実施の形態3によれば、以下に示す各効果を得ることができる。なお、電力変換装置10の構成についてはスイッチ回路11Bを除いて実施の形態1,2と同様であるので、実施の形態1,2と同様の作用効果を得ることができる。
【0060】
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための形態について実施の形態1〜3に従って説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。言い換えれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。例えば、次に示す各形態を実現してもよい。
【0061】
上述した実施の形態1〜3では、第1検出値(入力値)としてスイッチ回路11(11A,11B)に入力される検出電圧値Vd1を適用する構成とした(
図1,
図5,
図11,
図12を参照)。この形態に代えて、スイッチ回路11から出力される検出電圧値Vd2を適用したり、スイッチ回路11に入力される検出電流値Idを適用したり、
図13に示すようにスイッチ回路11から出力される検出電流値Idを適用したりしてもよい。これらの入力値のうちでいずれか一の入力値を選択して適用したり、二以上の入力値に基づく演算値(例えば平均値等)を適用したりしてもよい。第1検出値(入力値)の対象が相違するに過ぎないので、実施の形態1〜3と同様の作用効果を得ることができる。また、第1検出値(入力値、特に電流値)が急激に変化(特に上昇)するような状態が発生しても、トランスTrや回転電機20等のような誘導性要素の偏磁を防止し、スイッチ回路11に含まれるスイッチング素子の損傷も防止することができる。
【0062】
上述した実施の形態1〜3では、第2検出値(出力値)としてスイッチ回路11(11A,11B)から出力される検出電圧値Vd2を適用する構成とした(
図1,
図5,
図11,
図12を参照)。この形態に代えて、スイッチ回路11(11A,11B)に入力される検出電圧値Vd1を適用したり、スイッチ回路11(11A,11B)に入力される検出電流値Idを適用したり、
図13に示すようにスイッチ回路11(11A,11B)から出力される検出電流値Idを適用したりしてもよい。これらの出力値のうちでいずれか一の出力値を選択して適用したり、二以上の出力値に基づく演算値(例えば平均値等)を適用したりしてもよい。第2検出値(出力値)の対象が相違するに過ぎないので、実施の形態1〜3と同様の作用効果を得ることができる。また、第2検出値(出力値、特に電流値)が急激に変化(特に上昇)するような状態が発生しても、トランスTrや回転電機20等のような誘導性要素の偏磁を防止し、スイッチ回路11に含まれるスイッチング素子の損傷も防止することができる。
【0063】
上述した実施の形態1〜3では、電力変換装置10はDC/DCコンバータ(実施の形態1,2)と、インバータ(実施の形態3)とに適用する構成とした(
図1,
図5,
図11,
図12を参照)。この形態に代えて、複数のスイッチング素子を備え、かつ、トランスTrや回転電機20等のような誘導性要素で偏磁が生じるような用途を有する他の電力変換装置に適用する構成としてもよい。他の電力変換装置で低入力電圧状態から入力電圧が急激に上昇するような状態が発生しても、誘導性要素の偏磁を防止し、スイッチ回路11(11A,11B)に含まれるスイッチング素子の損傷も防止することができる。
【0064】
上述した実施の形態1,2では、一次コイルL1と中間タップを備える二次コイルL2とを有するトランスTrを適用する構成とした(
図1,
図5を参照)。この形態に代えて、一次コイルと、中間タップを備えない二次コイルとを有するトランスを適用する構成としてもよい。整流平滑回路12は、2つのダイオードD12a,D12bに代えて、4つのダイオードを用いてブリッジ回路を構成すればよい。トランスの構成が相違するに過ぎないので、実施の形態1,2と同様の作用効果を得ることができる。
【0065】
誘導性要素として、実施の形態1,2ではトランスTrを適用する構成とし(
図1,
図5を参照)、実施の形態3では回転電機20を適用する構成とした(
図11,
図12を参照)。この形態に代えて、コイルを適用する構成としてもよい。低入力電圧状態から入力電圧が急激に上昇するような状態が発生しても、コイルの偏磁を防止し、スイッチ回路11(11A,11B)に含まれるスイッチング素子の損傷も防止することができる。