【実施例】
【0044】
次に、本発明について実施例に基づいて詳細に説明する。これらの実施例は例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0045】
<実施例:逆オパール構造の白金電極の製造>
下記1.および2.を経て、本発明に係る逆オパール構造の白金電極を製造した。
【0046】
[1.オパール構造のポリスチレン(PS)テンプレートの製造]
基板としては、1,2−エタンジチオールを溶解させたエタノール溶液(10mM)に12時間以上浸漬させて表面処理した、MPL(Microporous layer)を含むガス拡散層(GDL)(35BC、SGL)を準備した。参照として、前記MPLは、カーボンブラックおよび5重量%のポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)を含んでなり、表面処理によってガス拡散層の表面に導入されたアルカンチオールは、ポリスチレン粒子表面のカルボキシル基およびMPLに含まれたカーボンブラック表面の末端チオール基と相互作用することにより、一種のバインダーまたはカップリング剤としての役目をする。
【0047】
一方、0.5wt%の非イオン界面活性剤(IGEPAL Co−30)0.36gおよびMilli−Q water80mLを混合した後、これを、カルボキシル基で官能化されたポリスチレン(Carboxylated PS)ラテックス粒子(平均粒径:520nm)が分散した10重量%の水性懸濁液0.5gに添加して、テンプレート製造のためのポリスチレンコロイド懸濁液を準備した。
【0048】
次に、
図3(a)に示すように、前記基板を前記ポリスチレン懸濁液に浸した後、濡らしておいた。そして、30分間超音波処理した後、65℃のオーブンで一定の相対湿度で2日以上乾燥させてガス拡散層上にオパール構造のポリスチレンテンプレートを形成した。
【0049】
[2.逆オパール構造の白金(Pt)電極の製造]
10mMのKClに溶解された10mMのH
2PtCl
4溶液を含むメッキ槽で、白金板およびAg/AgClをそれぞれ対向電極および基準電極として備えた3極セルを用いて、定電流−パルス電着(Galvanostatic−pulsed electrodeposition)を行ってポリスチレンテンプレートの表面および内部に白金を蒸着した。蒸着の際に、ポリスチレンテンプレートの下に位置したガス拡散層は作動電極として作用した。
【0050】
蒸着完了の後、白金が蒸着された基板を12時間トルエンに浸漬させてポリスチレン粒子を除去した。その後、基板を溶液から取り出して水洗した後、電極内の空間に残った水および汚染物質を除去するために大気雰囲気および130℃で4時間加熱した。その後、選択的な段階として、残っている有機溶媒を除去し且つ白金酸化を最小化するために、水素雰囲気および180℃で2時間熱処理した。
【0051】
図4はパルス電着時のデューティサイクル(duty cycle)、パルス印加/中断時間(on/off time)および電流密度(current density)の変化による逆オパール構造の微細構造が変化することを示す電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)イメージである。
【0052】
より優れた形状を有する電極の表面を得るために、電流密度(current density)、デューティサイクルおよび電荷密度(charge density)を変化させた。一方、総電荷密度(total charge density)は、理論上の白金ローディング(loading)が0.2mgcm
−2に該当する4Ccm
−2に固定した。ところが、誘導結合プラズマ(ICP)質量分析計を用いて測定した結果、ガス拡散層に蒸着された白金の含量は0.12mgcm
−2であった。そして、それぞれの逆オパール構造電極の厚さは約1〜2μmであった(
図5(b)参照)。よって、1Ccm
−2の総電荷が蒸着された。これは0.03mgcm
−2の白金蒸着体および約0.5μmの厚さに該当する。ポリスチレン球状粒子はガス拡散層上に5〜20個の層として蒸着され、これに対応する厚さは約3〜12μmであった。逆オパール構造の白金球(sphere)の場合、厚さは約3〜4個の層(1.5〜2μm)であった。厚さは、制限された白金の量、保存された逆オパール構造および円滑な陽子輸送を考慮して決定された。高分子電解質燃料電池において従来の電極の通常の厚さが約5〜10μm程度であることを考慮すると、逆オパール構造の白金電極は、より短い拡散経路と反応物およびイオンの増加した伝導度を持つため、既存の電極に比べて優れる。これは、陽子輸送のためのイオノマーの使用が不要であることを意味する。
【0053】
また、白金壁の厚さは約10〜15μmであった。これは走査電子顕微鏡(SEM)イメージと表面の比率を大略的に計算することにより得られた。
【0054】
一方、オパール構造のテンプレートの場合、骨格壁(skeletal wall)は、元来のポリスチレン球状粒子が接する地点における孔(hole)を介して相互接続されたマクロ気孔(macro pore)を含む。実際に、コロイド結晶テンプレート方法によって電着から得られる逆オパール材料の構造は、一般に、所望の材料でテンプレートの格子間(interstitial)空間を満たして形成される。ところが、このような現象は、本実施例で製造された逆オパール構造の白金電極からは観察されなかった。その代わり、白金はシェル(shell)を作りながらポリスチレン球状粒子を取り囲んだ(
図1(b)および
図3(d)参照)。
【0055】
逆オパール構造の電極上に白金成分が存在するかを確認するために、X線回折分析(XRD)を行った結果、
図6に示した該当XRDスペクトルにおいて40.06°、46.54°、および67.86°で現れる3つの主要ピークはそれぞれ白金の(111)面、(200)面および(220)面に該当する。約27°で現れる特性ピークはガス拡散層のMPLに含まれた炭素によって発生したものである。逆オパール構造を持つ電極基盤の膜/電極接合体上に形成された白金粒子のサイズは、Scherrer式およびX線回折データを用いて約8〜11nmと計算された。
【0056】
また、逆オパール構造の電極における白金の酸化状態を確認するために、X線光電子スペクトル(XPS)を得て分析した結果、逆オパール構造の電極における白金の酸化状態は既存のPt/C電極とは非常に異なることを確認することができた。すなわち、
図7に示した該当スペクトルは既存のPt/C電極から由来し、白金の4fコアレベルピークは主にPt(0)から由来するが(
図7(a)参照)、逆オパール構造を持つ白金電極の場合、主要ピークはPt(II)から由来することを示す(
図7(b)参照)。また、IO電極における白金酸化状態の分布は既存の電極におけるPt/Cとは異なる(
図8参照)。ところが、白金表面の酸化状態は熱処理条件に敏感であり、セル作動中に容易に変わるため、このような結果はセルの性能とは関連性が大きくない。
【0057】
<実験例:本発明の実施例で製造された逆オパール構造の電極を含む膜/電極接合体(MEA)に対する性能試験>
次のように、前記実施例で製造された逆オパール構造の電極を用いて膜/電極接合体(MEA)を製造した後、これを含む単セルを製造した。
【0058】
すなわち、前記実施例において特定の条件(ピーク電流密度:50mAcm
−2、on/off time:50/100ms、総電荷:4Ccm
−2)でパルス電着を行って製造された逆オパール構造の電極をカソードとして使用し、40重量%のPt/Cはアノード触媒として使用した。この際、Pt/C触媒は、イソプロピルアルコール、脱イオン水およびパーフルオロスルホン酸イオノマーの混合物に分散させた後、0.12〜0.20mgPt・cm
−2の含量でイオン伝導膜(Nafion 212、DuPont)のアノード側に噴霧によって塗布された。その後、ガス拡散層(35BC carbon paper、SGL)をアノード側に配置した。このように製造された膜/電極接合体を、蛇行性ガス流路(serpentine gas flow channel)を備えた面積5cm
2の黒鉛板を備えた単セルユニット内に挿入した後、組み立てた(
図5(a)参照)。
【0059】
上述のように組み立てられた単セルの活性化(activation)および分極(polarization)試験は、燃料電池テストシステム(CNL Energy)を用いてcurrent−sweep−hold法で行った。具体的に、current−sweep rateは10mAcm
−2S
−1であった。電流密度が0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3および4Acm
2に到達するとき、電流を10分間維持した。そして、活性化途中でセル電圧が0.35Vに到達すると、電流は0に再設定(reset)した。
【0060】
分極曲線はcurrent−sweep法および高分子電解質燃料電池(PEMFC)テストシステムを用いて得られた。活性化および分極試験は、完全加湿されたH
2/O
2(または空気)を用いて行われた。アノード化学量論(anode stoichiometry)、O
2に対するカソード化学量論(cathode stoichiometry)および空気化学量論(air stoichiometry)はそれぞれ2、9.5および2であり、総出口圧力(totla outlet pressure)は150kPaであった。セル温度は、活性化試験中には80℃に維持し、分極試験中には室温に維持した。カソードデッドエンドモード(cathodic dead−end mode)を行う場合には、O
2の流量は最小化され、セルの出口は閉鎖された。
【0061】
図9は本発明に係る逆オパール構造を持つ白金電極基盤の膜/電極接合体および従来の膜/電極接合体に対する分極(polarization)曲線および出力密度(power density)曲線である。
図9(a)および
図9(b)は、それぞれカソードデッドエンドモードによって70℃で完全加湿されたH
2/O
2を用いて白金ローディングが約0.12mgPt・cm
−2である場合、および室温で周辺湿度のH
2/O
2を用いて白金ローディングが約0.12mgPt・cm
−2である場合の結果であり、
図9(c)および
図9(d)は、米国エネルギー省基準(US Department of Energy’s reference)による標準燃料電池試験条件によって80℃で完全加湿されたH
2/Airを用いるとき、それぞれ白金ローティングが0.12mgPt・cm
−2および0.12mgPt・cm
−2である場合の結果を示す。
【0062】
図9より、高分子電解質燃料電池(PEMFC)における逆オパール構造電極基盤の膜/電極接合体(MEA)は逆オパール構造特有の形態学的利点、相互接続された気孔構造、および開放された電極表面からの向上した有効拡散率によって類似した白金ローディングを有する既存の膜/電極接合体より高い性能を示すことが分かる。
【0063】
例えば、既存の膜/電極接合体の場合、0.6Vでの電流密度は235mAcm
−2であったが、上記と類似した白金ローディングを有する本発明に係る逆オパール構造電極基盤の膜/電極接合体に対して同一の条件で測定された電流密度は440mAcm
2であって、約185%だけ著しく増加した数値を示した(
図9(a)参照)。また、H
2/airで標準条件の下に測定が行われた場合にも、本発明に係る逆オパール構造電極基盤の性能がさらに良かった(
図9(c)および
図9(d)参照)。
【0064】
特に、白金ローディングがより高くてさらに厚い電極が使用されるときには差異がさらに顕著になるが(
図9(d)参照)。これは、さらに厚い電極において反応物および生成物の伝達に起因する濃度損失(concentration loss)が増加するものの、その増加幅は既存の膜/電極接合体を使用する場合がさらに大きいためである。
【0065】
具体的に、さらに厚い電極の場合には、反応物が反応の起こる触媒層に到達するためにさらに遠い距離を拡散していなければならない。同様に、さらに厚い電極は、生成物が燃料電池から除去されるためにはより遠い距離を拡散していかなければならない必要がある。
【0066】
一方、
図9(a)〜
図9(d)のそれぞれにおける挿入図では、両側の膜/電極接合体間の電力密度差が0.7V以下の電圧では顕著になるが、0.7V以上の電圧では顕著にならない。これは0.7V以上の電位が電荷伝達制御領域(charge transfer−controlled region)にあるためである。
【0067】
したがって、低電流領域(low−current region)における高分子電解質燃料電池の性能は両側の単位セルでほぼ同一であるが、高電流領域では、逆オパール構造電極を含む単位セルの場合、反応物の枯渇が逆オパール構造の形態的利点(例えば、相対的に大きい表面積による物質の容易な接近可能、非常に開放され且つ低い屈曲度を持つ構造、および相互接続されたマクロ気孔)によって減少するため、逆オパール構造の電極を含む単位セルが一層さらに高い出力密度を示す。
【0068】
また、白金触媒の電気化学的表面積(electrochemical surface area、ECSA)は、定電圧/定電流器(potentiostat/galvanostat)(IM−6、Zahner)を用いて循環電圧電流法(CyclicVoltammetry、CV)で測定した。
【0069】
電気化学的特性の測定は、前記実施例で製造された逆オパール構造の白金電極、白金板および飽和甘汞電極(saturated calomel electrode)をそれぞれ作動電極、対向電極および基準電極として備えた標準的な3−コンパートメント電気化学セル(standard three−compartment electrochemical cell)で定電圧器(PGSTAT128N、Autolab)を用いて実施した。全ての電位は標準水素電極(NHE)の電位を基準とし、全ての測定は常温で実施した。
【0070】
本発明に係る逆オパール構造の白金電極基盤の膜/電極接合体および従来の膜/電極接合体において、白金触媒の電気化学的表面積(electrochemical surface area、ECSA)は、定電圧/定電流器(IM−6、Zahner)を用いて循環電圧電流法(Cyclic Voltammetry、CV)で測定した。その結果、逆オパール構造を持つ白金電極基盤の膜/電極接合体の電気化学的表面積は24.13m
2g
−1であり、幾何学的表面積(Geometrical Surface Area、GSA)は40.04m
2g
−1であると測定された。これにより、白金活用度(ECSA/GSA)は約60.27%であることが分かる。一方、既存の膜/電極接合体の電気化学的表面積は57.01m
2g
−1であり、幾何学的表面積は93m
2g
−1であり、白金活用度は約61%であると測定された。
【0071】
上記結果によれば、既存の膜/電極接合体のGSAおよびECSAが逆オパール構造電極基盤の膜/電極接合体より高く測定されたが、さらに高いECSAが実際燃料電池運転条件で常にさらに優れた性能を示さない。しかも、GSA、ECSAおよび白金活用度(ECSA/GSA)の概念は触媒容量(catalytic capacity)に関連した水素吸着/脱着反応を説明するだけであり、膜/電極接合体における気体拡散、イオン伝導経路、陽子伝導度、水および物質伝達などの全体的な工程媒介変数を含まない。また、白金活用度には速度パラメータ(kinetic parameter)が含まれない。すなわち、これは、逆オパール電極基盤の膜/電極接合体が既存の膜/電極接合体とほぼ同一の白金活用度を持つ場合でもさらに向上した性能を示すことができることを示唆する。
【0072】
燃料電池の損失は活性化損失、抵抗損失および濃度損失(または、物質伝達損失)の3つの範疇に分けることができる。この中でも、物質伝達損失は、全体電流密度の範囲にわたって発生するが、特に高制限電流領域(high limiting currentregion)、すなわち低電位領域で顕著になる。よって、高電流密度領域における分極は物質伝達損失を示す。
【0073】
逆オパール構造の電極は、相互接続され且つ表面に開放されている気孔空間からなって、既存の電極に比べて増加した有効空隙率および減少した拡散層の厚さを持つため、物質伝達が顕著に向上し、ひいてはこのような向上した物質伝達は優れた水管理につながることができる。このように一層優れた水管理能力を持つと、水が足りない場合に逆拡散(backdiffusion)、すなわち生成された水が分離膜を介して水濃度勾配によってカソードからアノードに拡散する現象を促進してセル性能の低下を防止することができる。
【0074】
上述したような効果は
図9(b)から確認することができる。
図9(b)によれば、常温および周辺湿度の下で既存の膜/電極接合体に対して0.6V(高電流密度領域)で測定された電流密度は666で367mAcm
−2と急激に減少(45%減少)したが、逆オパール構造電極基盤の膜/電極接合体の場合には790で495mAcm
−2と37%減少に止まった。すなわち、逆オパール構造電極基盤の膜/電極接合体は、非常に開放され且つ低い屈曲度を持つ構造と短い拡散経路によりさらに優れた水輸送能力を保有するため、低い湿度条件でもセル性能の低下が大きくないことが分かる。
【0075】
付け加えると、反応物と生成物は、メソ単位の気孔よりは主にマクロサイズの2次気孔(macro−sized secondary pore)を介して伝送され、単セルにおける膜/電極接合体の物質伝達はこのような2次加工によって支配される。よって、整列されたマクロ気孔構造を持つ逆オパール構造電極は実際燃料電池装置でさらに優れた性能とより効率的な水管理を実現することができる。
【0076】
上述のように、逆オパール構造電極基盤の膜/電極接合体は、既存の膜/電極接合体よりさらに優れた性能を示し、特に、向上した物質伝達およびより優れた水管理に起因して周辺湿度条件および高電流領域でそのような性能の優秀性が著しい。
【0077】
また、既存の膜/電極接合体の開回路電圧(Open Circuit Voltage、OCV)は周辺湿度および常温で0.935Vであるが、本発明に係る逆オパール電極基盤の膜/電極接合体の開回路電圧は0.982Vである。このような差異は、白金の表面と酸素間の反応または逆オパール構造電極における不純物酸化に関連した混合カソード電位(mixed cathode potential)が既存の膜/電極接合体より低いことを示唆する。
【0078】
したがって、高分子電解質燃料電池において膜/電極接合体の電極として本発明に係る逆オパール構造の電極を直接適用可能であることが分かる。そして、より重要な点は、逆オパール構造の電極は非常に低い白金ローティングを要求し、その性能は周囲湿度および加熱が類似した作動条件の下で一般な直接メタノール燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell、DMFC)より一層さらに優れるという点である。また、他の燃料電池システムとは異なり、逆オパール電極を備えた燃料電池は、複雑なサブシステムまたはBOP(Balance of Plant)が全て不要であるため、マイクロ燃料電池への適用が有望である。