【実施例1】
【0023】
本発明に係る箸置き形成方法は、
図1〜5に示す箸置き機能を有する箸(以下箸ともいう)1を用いて実施される。該箸1は、
図1〜3に示すように、軸線Lが上下方向である箸本体2の下側の部分3に食い先5が設けられると共に、該箸本体2の上側の部分6に、上下方向に延長する嵌合凹部7が設けられ、該嵌合凹部7に、下方に向けてスライドし得るスライド部材9が嵌合可能となされており、該嵌合凹部7側に第1磁性体10が設けられると共に該スライド部材9側に第2磁性体11が設けられている。該箸置き形成方法は、かかる構成の箸1において、
図4(A)に示すように該スライド部材9が前記嵌合凹部7に嵌合された状態で
図4(B)(C)に示すように、該スライド部材9の上側部12を前記嵌合凹部7の底部13の上側部15に向けて押して、該スライド部材9の下側部16を該底部13から浮き上がらせ、この浮き上がり状態における前記第1磁性体10及び前記第2磁性体11相互の磁気吸引力により、該スライド部材9を下方に向けてスライドさせ、該スライド部材9の下端部分17を前記嵌合凹部7の下端部18の縁部分19に乗り上げ状態とし、該スライド部材9の該乗り上げ状態を、
図4(C)に示すように、前記第1磁性体10及び該第2磁性体11相互の磁気吸引力を以て保持させるものである。該乗り上げ状態にある該スライド部材9は、
図4、
図5に示すように箸置き20を形成する。以下、前記箸置き機能を有する箸1及び、前記箸置き形成方法を具体的に説明する。
【0024】
前記箸1は、本実施例においては
図1〜3に示すように、軸線Lが上下方向である箸本体(例えば、木製やプラスチック製等)2の下側の部分3に食い先5が設けられると共に、該箸本体2の上側の部分6に、上下方向に延長する嵌合凹部7が設けられ、該嵌合凹部7にスライド部材(例えば、木製やプラスチック製等)9が嵌合可能となされ、該嵌合状態で、
図3に示すように、該嵌合凹部7の底部13の上側部15と、該スライド部材9の、該底部13に面する該内方部21の上側部分22との間に押し込み用間隙23が形成される如くなされている。該スライド部材9を該嵌合凹部7に嵌合させた状態においては、例えば
図1に示す通常の箸と外観が略同様の箸が得られ、又、箸としての使用感も通常の箸と略同様である。
【0025】
次に、前記嵌合凹部7側に設けられている前記第1磁性体10と、前記スライド部材9側に設けられている前記第2磁性体11とについて、その構成とその配置状態を
図6、
図7に基づいてより詳しく説明する。なお
図6(A)と
図6(B)の夫々における(a)〜(d)は、前記箸1の断面箇所を示す。又、
図7(A)は
図6(A)(B)の(a)における拡大横断面図、
図7(B)は
図6(A)(B)の(b)における拡大横断面図、
図7(C)は
図6(A)(B)の(c)における拡大横断面図、
図7(D)は
図6(A)(B)の(d)における拡大横断面図である。
【0026】
図6(B)に示すように、前記嵌合凹部7の前記底部13の上端側25に上の第1磁性体10aが設けられると共に、該底部13の下端側26に下の第1磁性体10bが設けられており、前記スライド部材9の前記内方部21の上端側27には、前記上の第1磁性体10aと相互に磁気吸引し得る上の第2磁性体11aが設けられている。そして
図6(B)に示すように、該内方部21の下端側29には、前記下の第1磁性体10bと相互に磁気吸引し得る下の第2磁性体11bが設けられている。本実施例においては、前記の上下の第1磁性体10a,10b、上下の第2磁性体11a,11bとして磁石30を用いることとしている。前記上の第1磁性体10aと前記下の第1磁性体10bは、本実施例においては
図6(B)、
図7(B)(C)に示すように、前記底部13に埋入状態にあり、該底部13の表面をなす底面31(本実施例においては平滑面として形成されている)及び、これと対向する外面32に露出状態にはない。そのために本実施例においては、例えば
図7(B)(C)に示すように、これらの磁性体を設ける部位において、該外面32から該底面31に向けて、該底面31を破らないように円形盲孔34を設け、該円形盲孔34に、その孔長さよりも短い長さを有する円形状の前記磁石30を収容してなる。そして同図に示すように、該磁石30の外端面36を底とする円形孔部35に円柱状の埋木38を嵌着してなる。該磁石30は、その内方側の磁極33が前記底面31に近接状態にあるので、前記円形孔部35の底部分35aを介して磁気吸引力を及ぼすことができる。なお本実施例においては、前記スライド部材9に設けられている前記上下の第2磁性体11a,11bを構成する前記磁石30は、前記内方部21で磁極39が露出している。該磁極39は、前記磁極33と異極である。
【0027】
そして
図4(A)に示すように、前記スライド部材9が前記嵌合凹部7に嵌合された状態で、前記上の第2磁性体11aが前記上の第1磁性体10aの稍上方に離間して設けられ、該上の第1磁性体10aが該上の第2磁性体11aを磁気吸引する如くなされている。そして、この磁気吸引作用によって、
図4(A)、
図6(B)に示すように、前記スライド部材9の下端部40が前記嵌合凹部7の下端部18に当接状態となり、該スライド部材9の該当接した嵌合状態が、主として、前記下の第1磁性体10b及び前記下の第2磁性体11b相互の磁気吸引力を以て保持される如くなされている。
【0028】
又、前記スライド部材9が前記嵌合凹部7に嵌合された状態で、前記押し込み用間隙23が存する部分で、
図4(B)(C)に矢印で示すように、該スライド部材9の上側部12を前記嵌合凹部7の前記底部13の上側部15に向けて押すと、該スライド部材9の下側部16を前記底部13から浮き上がらせることができ、この浮き上がり状態における前記上の第1磁性体10a及び前記上の第2磁性体11a相互の磁気吸引力により、前記スライド部材9を下方に向けてスライドさせ、該スライド部材9の下端部分17を前記嵌合凹部7の下端部18の縁部分19に乗り上げ状態となし得る。該スライド部材9の該乗り上げ状態は、磁極33,39(
図7(B))が対向状態にある前記上の第1磁性体10a及び前記上の第2磁性体11a相互の磁気吸引力を以て保持させることができる。
【0029】
該乗り上げ状態にある該スライド部材9は箸置き20を形成するので、
図5に示すように、該乗り上げ状態にある前記スライド部材9を下向きにして該スライド部材9の、前記内方部21と対向する外方部42をテーブル面等の設置面43に載置すると、
図5(A)に示すように、前記箸本体2の前記食い先5を含む該箸本体の下側の部分3を該設置面43から浮き上がった状態となし得る。
【0030】
該箸置き20が不要の場合、例えば箸1を用いて食事をする際は、前記乗り上げ状態にある前記スライド部材9の前記下端部40を、
図4(C)に矢印で示すように上方に向けて押すと、該スライド部材9が、該上方に向けてスライドして、
図4(A)に示すように、前記嵌合凹部7に嵌合状態となる。この状態は、前記下の第1磁性体10b及び前記下の第2磁性体11b相互の磁気吸引力を以て保持される。
【0031】
前記箸本体2は、本実施例においては
図1、
図7に示すように、その上側の部分6は、横断面が正方形状に形成されており、該上側の部分6の、該箸本体2の周方向で見た所要幅部分(本実施例においては、平滑な一側面部)45(
図2(A))に、上下方向に延長する前記嵌合凹部7が設けられ、該嵌合凹部7に前記スライド部材9が嵌合可能となされている。
【0032】
該スライド部材9は、
図2〜3に示すように、上下方向に長い軸状に形成されており、その横断面は長方形状を呈し、前記内方部(本実施例においては平滑面として構成されている)21を該嵌合凹部7の底部13の前記底面31に向けて嵌合可能となされている。
【0033】
本実施例においては、該スライド部材9の上端部46は平面視で半丸状に形成されると共に、その下端部分は、
図2、
図7(D)に示すように、下端拡張部50とされている。該下端拡張部50は本実施例においては、前記内方部21と対向する前記外方部(本実施例においては、全体が面一の平滑面として形成されている)42側が、該スライド部材9の延長方向と直交し(即ち、前記軸線Lと直交する)且つ前記一側面部45と平行する、左右方向に向けて張り出す張り出し片部49,49を具え、該張り出し片部49,49の下端面51,51を含む前記スライド部材9の前記下端部40は、本実施例においては
図1〜2に示すように、前記軸線Lと直交する係合端面52とされている。該スライド部材9の上下方向の長さは例えば98mmに設定されると共にその左右方向の幅は例えば2.9mmに設定され、その内外方向で見た厚さは例えば5mmに設定されている。又前記下端拡張部50の左右幅は例えば6mmに設定され、その内外方向での厚さは例えば1.4mmに設定されている。
【0034】
前記箸本体2は本実施例においては
図1〜2に示すように、その下側の部分3は先細に形成され、該下側の部分3に前記食い先5を有し、その上側の部分6の前記平滑な一側面部45の上端側の部分53は、上方に向けて且つ前記軸線Lに向けて傾斜する傾斜面55として形成されている。そして前記嵌合凹部7は、前記平滑な一側面部45の長手中央線に沿って設けられており、前記スライド部材9を略密接状態に嵌め入れることができる。該嵌合凹部7の上端56は、
図2に示すように、前記傾斜面55の上端57の稍下方に控えて位置しており、該上端56は半円弧状面として形成されると共にその下端部分59には、前記下端拡張部50の前記左右の張り出し片部49,49を嵌め入れるための左右の凹部60,60が設けられている。
【0035】
そして前記嵌合凹部7の前記底面31の上側部分61は、
図3(B)に示すように、前記傾斜面55と略平行する間隙形成用傾斜面62として構成されている。
【0036】
かかる構成を有する前記スライド部材9を前記嵌合凹部7に嵌合させた状態においては、
図1に示すように、該スライド部材9の前記外方部42の内の、前記傾斜面55に存する部分を除いた部分63は、前記平滑な一側面部45と面一状態にあるが、該外方部42の内の、前記傾斜面55に存する部分64は、該傾斜面55から外方に離れて位置している。これによって、
図3(B)に示すように、前記上側部12の外方側の部分65は、前記傾斜面55から突出した状態にある。該突出した該外方側の部分65は押しボタン状に機能する。そして、該スライド部材9が該嵌合凹部7に嵌合された状態で、該嵌合凹部7の前記底面31の上側部分61、即ち前記間隙形成用傾斜面62と、前記スライド部材9の前記平滑な内方部21の上側部分22との間には、前記箸本体2の上端(前記傾斜面55の上端57)66に向かうにつれて溝幅が徐々に大となる前記押し込み用間隙23が設けられている。
【0037】
そして、このようにスライド部材9が嵌合凹部7に嵌合された状態で見て、
図3に示すように、前記底部13の上端側15(
図3においては、前記間隙形成用傾斜面62の基端67の近傍部位69)に、上の第1磁性体10aが設けられると共に、前記底部13の下端側26には下の第1磁性体10bが設けられている。又
図3に示すように、前記スライド部材9の前記内方部21の上端側27には、前記上の第1磁性体10aと相互に磁気吸着し得る上の第2磁性体11aが、該上の第1磁性体10aの稍上方に離間して設けられている。そして、前記スライド部材9の前記内方部21の下端側29には、前記下の第1磁性体10bと相互に磁気吸引し得る前記下の第2磁性体11bが向き合う状態で設けられている。
【0038】
本実施例においては、前記嵌合凹部7の前記底部13に設けられている前記上の第1磁性体10aと前記下の第1磁性体10bと、前記スライド部材9の前記内方部21に設けられている前記上の第2磁性体11aと前記下の第2磁性体11bは、
図3、
図7に示すように、何れも、直径が例えば1.3mmで長さが例えば1.5mmである円柱状のネオジウム磁石を以て構成されている。
【0039】
然して、前記スライド部材9が前記嵌合凹部7に嵌合された状態においては、
図3、4(A)に示すように、前記上の第1磁性体10aが前記上の第2磁性体11aを磁気吸引する磁気吸引作用によって、該スライド部材9が前記嵌合凹部7内において下方向に付勢されて、
図3(B)、
図4(A)に示すように、該スライド部材9の下端部40が前記嵌合凹部7の下端部18に当接状態にある。該スライド部材9の該嵌合状態は、
図3、
図7(C)に示すように、磁極33,39が向き合う状態となる前記下の第1磁性体10b及び前記下の第2磁性体11b相互の磁気吸引力が作用して安定的に保持される。そして、この嵌合状態で、
図3に示すように、該スライド部材9の上端部46と前記嵌合凹部7の上端部56との間に若干の間隙73が形成される。
【0040】
然して
図4(B)(C)に示すように、前記スライド部材9が前記嵌合凹部7に嵌合された状態で、前記押し込み用間隙23(
図4(A))が存する部分で、該スライド部材9の上側部12を前記間隙形成用傾斜面62に向けて押すと、押しボタン状の前記外方側の部分65(
図4(A))が前記嵌合凹部7に沈んでいく。本実施例においては前記のように、該間隙形成用傾斜面62を前記箸本体2に設けた前記傾斜面55と略平行させているため、該外方側の部分65を該嵌合凹部7に沈んだ状態(完全に沈んだ状態とは限らない)として前記上側部分22を前記間隙形成用傾斜面62に当接させることによって、前記スライド部材9の前記下端部40が前記嵌合凹部7の前記下端部18を外れた状態とでき、該スライド部材9の下側部16を前記底部13から浮き上がらせることができる。その際、前記間隙73が設けられているため、前記上側部12を押し込む際に該上側部12の上端部46が前記嵌合凹部7の上端部56に擦れるのを防止でき、該押し込みを支障なく行うことができる。
図4(B)は、前記スライド部材9の上側部12を前記底部13の上側部15に向けて押すことによって前記スライド部材9の下端部40が前記嵌合凹部7の下端部18から外れる直前の状態を示している。該上側部12を更に押すと、両下端部40,18の当接状態が解除され、該解除と同時に該スライド部材9が下方に向けてスライドする。
【0041】
このように押す操作は、前記押し込み用間隙23が設けられているために無理なく行うことができ、この操作を、箸1を片方の手で持った状態で、その手の指によるワンタッチ操作でスマートに行うことができる。該スライド部材9の前記下端部40が前記嵌合凹部7の前記下端部18から外れると同時に、前記上の第1磁性体10a及び前記上の第2磁性体11a相互の磁気吸引力により、該スライド部材9を下方に向けて自動的に所要にスライドさせて該スライド部材9の前記下端部分17を、
図4(C)に示すように、前記嵌合凹部7の下端部18の縁部分19に乗り上げ状態となし得る。この乗り上げ状態においては、
図4(C)に示すように、前記上の第1磁性体10a及び前記上の第2磁性体11aの磁極33,39は接触していないが、向き合った状態で相互に磁気吸引された状態にある。従って、該スライド部材9の該乗り上げ状態を、該上の第1磁性体10a及び該上の第2磁性体11a相互の磁気吸引力を以て安定的に保持させることができる。該スライド部材9の、乗り上げ状態にある前記下端部分17の上下方向の長さは、前記上の第1磁性体10aと前記上の第2磁性体11aとの間の離間量D(
図4(A))によって決まるものである。
【0042】
前記下端部分17がこのように乗り上げ状態にある該スライド部材9は箸置き20を形成するので、該乗り上げ状態の該スライド部材9を下向きにして該スライド部材9の前記外方部(平滑面)42をテーブル面等の設置面43に載置すると、
図5に示すように、前記箸本体2の前記食い先5を該設置面43から浮き上がった状態となし得る。このように該スライド部材9が箸置き20として機能する場合、
図5(C)に示すように前記左右の張り出し片部49,49が前記設置面43に接する。従って、該スライド部材9の、前記下端拡張部50を除いた部分の外方部42の左右幅が比較的小さくても、該張り出し片部49,49の左右幅は比較的大きいので、前記箸置き20は、より安定状態で前記設置面43に載置されることとなる。これにより、箸1をより安定状態で設置面43に載置できる。
【0043】
該箸置き20が不要の際は、例えば、箸1を用いて食事をする際は、前記乗り上げ状態にある前記スライド部材9の前記下端部40を、
図4(C)に矢印で示すように上方に向けて押すと、該スライド部材9が上方に向けてスライドし、前記下端部分17が前記下端部18の縁部分19を外れて、
図4(A)に示すように、該スライド部材9が前記嵌合凹部7に嵌合状態となる。この嵌合状態は、前記下の第1磁性体10b及び下の第2磁性体11b相互の磁気吸引力によって安定的に保持されることとなる。
【実施例3】
【0048】
本発明は、前記実施例で示したものに限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。その一例を挙げれば次のようである。
【0049】
(1)
図11〜14は、前記スライド部材9が前記嵌合凹部7に嵌合された状態で該スライド部材9の上側部12を該嵌合凹部7の底部13の上側部15に向けて押すことにより該スライド部材9を下方に向けてスライドさせ得るように、該嵌合凹部7の底部13の上側部15と該スライド部材9の前記内方部21の上側部22との間に押し込み用間隙23を設ける場合における、該押し込み用間隙23の他の構成を示すものである。
【0050】
図11においては、該押し込み用間隙23を、前記嵌合凹部7の前記底部13の上側部15に設けた間隙形成用傾斜面62を以て構成するのとは逆に、前記スライド部材9の前記内方部21の上側部分75を、その内方端76からその外方端77に向けて外方側に傾斜する間隙形成用傾斜面62として構成した場合を示している。この場合も、前記スライド部材9の上側部12を前記嵌合凹部7の底部13の上側部15に向けて押すと、
図11(B)に示すように、前記スライド部材9の前記下端部40が前記嵌合凹部7の下端部18から外れるように、該スライド部材9の下側部分16を該底部13から浮き上がらせることができる。該浮き上がり状態における前記上の第1磁性体10a及び前記上の第2磁性体11a相互の磁気吸引力により、該スライド部材9を下方に向けてスライドさせて該スライド部材9の下端部分17を前記嵌合凹部7の下端部18の縁部分19に乗り上げ状態となし得る。
【0051】
図12は、前記底部13の前記底面31の上側部分61と前記スライド部材9の前記内方部21の上側部分22の双方を間隙形成用傾斜面62,62として構成した場合を示している。又
図13は、前記押し込み用間隙23を構成するに際し、前記嵌合凹部7の前記底面31の上側部分61に窪み部79を設けた場合を示しており、又
図14は、前記押し込み用間隙23を構成するに際し、前記スライド部材9の内方部21の上側部分22を欠切部80として構成した場合を示している。これらの場合も前記と同様にして、該スライド部材9の上側部12を前記嵌合凹部7の底部13の上側部15に向けて押すことにより、
図13(B)、
図14(B)に示すように、前記上の第1磁性体10a及び前記上の第2磁性体11a相互の磁気吸引力により、該スライド部材9を下方に向けて所要にスライドさせることができる。
【0052】
前記嵌合凹部7の前記底部13に設ける前記間隙形成用傾斜面62や、前記スライド部材9の内方部21に設ける前記間隙形成用傾斜面62の傾斜角度、又、前記窪み部79や前記欠切部80の長さや幅及び深さは、前記スライド部材9を前記のように所要にスライドさせ得る限り所要に設定できる。これらの構成は、以下に述べる各実施例においても同様である。
【0053】
(2)
図15は、前記スライド部材9を前記嵌合凹部7に嵌合させた状態における該スライド部材9の保持力をより高めるために、前記下の第1磁性体10bと前記下の第2磁性体11bに加えて、相互に磁気吸引される中間の第1磁性体10cと中間の第2磁性体11cを具える如く構成した場合を示すものである。例えば、中間の第1磁性体10cを前記嵌合凹部7の前記底部13の上下方向長さの略中央部位に設けると共に、該中間の第2磁性体11cを前記スライド部材9の前記内方部21の上下方向長さの中央部位に設ける構成を採用できる。
【0054】
又
図16は、前記スライド部材9のスライドをより円滑に行わせるために、上下方向で見て互いに離間状態にある前記上の第1磁性体10aと前記上の第2磁性体11aの組に加えて、その稍下方に位置させて、上下方向で見て互いに離間状態ある中間の第1磁性体10cと中間の第2磁性体11cの組を設けた場合を示している。該スライド部材9が前記嵌合凹部7に嵌合された状態で、該中間の第2磁性体11cが該中間の第1磁性体10cの稍上方に離間して設けられている。この場合、上の第1磁性体10aと中間の第2磁性体11cが互いに磁気吸引しないように、磁性体10a,11aの組と、磁性体10c,11cの組との間の間隔を所要に設定するものとする。このように構成する場合は、前記上の第1磁性体10a及び前記上の第2磁性体11a相互の磁気吸引力と、中間の第1磁性体10c及び中間の第2磁性体11c相互の磁気吸引力とによって、前記スライド部材9をより円滑に下方に向けて所要にスライドさせることができる。そして、このように二組の磁性体を設ける場合は、前記下の第1磁性体10bと前記下の第2磁性体11bが設けられていない場合であっても、前記スライド部材9を前記嵌合凹部7に嵌合させた状態を、より安定的に保持できることとなる。
【0055】
又
図17に示すように、上下方向で見て上側と下側の夫々に二組の磁石を設けることとしてもよい。同図においては、実施例1における場合において、
図16に示す場合と同様の要領で、前記上の第1磁性体10aと前記上の第2磁性体11aとの組の稍下側に位置させて、中間の第1磁性体10cと中間の第2磁性体11cの組が配設されると共に、前記下の第1磁性体10bと前記下の第2磁性体11bとの組の稍上側に位置させて、中間の第1磁性体10dと中間の第2磁性体11dの組が配設されている。このように中間の第1磁性体10cと中間の第2磁性体11cとの組を設けるため、前記上の第1磁性体10a及び前記上の第2磁性体11a相互の磁気吸引力と、中間の第1磁性体10c及び中間の第2磁性体11c相互の磁気吸引力とによって、前記スライド部材9をより円滑に下方に向けて所要にスライドさせることができる。又、中間の第1磁性体10dと中間の第2磁性体11dとの組を設けるため、前記スライド部材9を前記嵌合凹部7に嵌合させた状態における該スライド部材9の保持力をより高めることができる。
【0056】
(3) 実施例1においては前記箸本体2の前記一側面45の上端側の部分53を傾斜面55として形成しているが、
図18(A)においては、該一側面45に該傾斜面55を設けていない。本実施例においては、前記嵌合凹部7に前記スライド部材9が嵌合された状態において、該スライド部材9の平滑な外方部42と前記一側面部45とが面一状態にある。
【0057】
この場合においても該スライド部材9の上側部12を前記嵌合凹部7の底部13の上側部15に向けて容易に押すことができるように、該スライド部材9の上側部12の外方部42に押圧突部81を設けている。然して該押圧突部81を前記底部13の上側部15に向けて押せば、前記と同様にして、該スライド部材9を下方に向けて所要にスライドさせて箸置き20を形成できる。該押圧突部81は、箸のデザイン性を考慮して、半球状や楕円形状等の所要形態に構成できる。
図18(B)は、該箸置き20によって箸1を設置面43に載置した状態を示しており、前記押圧突部81が設置面43に載っている。
【0058】
(4)
図19は、前記嵌合凹部7の底部13に設ける上の第1磁性体10a及び下の第1磁性体10bを磁石30を以て構成した場合において、その磁極33を前記底面31に露出状態とした場合を示している。
【0059】
又
図20は、前記第1磁性体10としての磁石30を前記底面31で若干突出させた場合を示すものである。この場合は、前記スライド部材9の内方部21に、該突出部82を逃がすための、上下方向に延長する溝83を設ける。
図20においては、第1磁性体10の磁極33と第2磁性体11の磁極39が離れているが、両磁極33,39は接触してもよい。
【0060】
又
図21は、前記スライド部材9に設けられる磁石30としての第2磁性体11を、前記内方部21で若干突出させた場合を示すものであり、この場合は、前記嵌合凹部7の前記底面31に、該突出部85を逃がすための、上下方向に延長する溝84を設ける。
図21においては、第1磁性体10の磁極33と第2磁性体11の磁極39が離れているが、両磁極33,39は接触してもよい。
【0061】
(5)
図22は、前記箸本体2の上側の部分6の横断面形態を円形状に形成した場合を示すものであり、該箸本体2の周方向で見た所要幅部分としての一側面部45に、上下方向に延長する嵌合凹部7が設けられ該嵌合凹部7にスライド部材9が嵌合されている。
図22(B)は、
図22(A)におけるa−a断面図であり、
図22(C)は、
図22(A)におけるb−b断面図である。又
図23は、前記箸本体2の上側の部分6の横断面形態を半丸状に形成し、
図24は前記箸本体2の上側の部分6の横断面形態を五角形状に形成した場合を示すものであり、何れの場合も、平坦面を呈する一側面部45に設けられている嵌合凹部7にスライド部材9が嵌合されている。その他、該上側の部分6の形態は、箸の使用感やデザイン性を考慮して、且つ嵌合凹部7を設けることができるように、各種形態のものとして構成され得る。
【0062】
(6) 前記スライド部材9の形態は、該スライド部材9が箸置き20を形成できる限り各種に構成でき、実施例1で示したような前記下端拡張部50も、必ずしも必要ではない。又、前記内方部21や前記外方部42は例えば
図7に示すような平滑面として形成される必要はない。その一例として挙げる
図25に示す箸1にあっては、前記下面部21が半円弧状突面に形成されており、前記嵌合凹部7の底面31は、これに合わせて半円弧状凹面として形成されている。又前記外方部42は、両側部分が四分割円弧状を呈する台形状面として形成されている。
【0063】
(7) 前記第1磁性体10と前記第2磁性体11は、前記のようにネオジウム磁石等の磁石を用いて構成することができる他、該第1磁性体10及び該第2磁性体11の何れか一方を磁石とし、他方を、これと磁気吸引し得る鉄片、ニッケル片等の、磁石を除く磁性金属片としてもよい。
【0064】
(8) 前記スライド部材9を前記のように所要にスライドさせることができる限り、又、前記スライド部材9を前記嵌合凹部7に嵌合された状態で保持できる限り、前記第1磁性体10と前記第2磁性体11の配置状態や、磁性体の種類やその形状や大きさは自由に設定できる。