特許第6025237号(P6025237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6025237発電プラント性能を予測する方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025237
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】発電プラント性能を予測する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G05B 13/04 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   G05B13/04
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-213598(P2011-213598)
(22)【出願日】2011年9月29日
(65)【公開番号】特開2012-79304(P2012-79304A)
(43)【公開日】2012年4月19日
【審査請求日】2014年9月26日
(31)【優先権主張番号】12/895,293
(32)【優先日】2010年9月30日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ラジェシュ・ヴェンカット・サッブ
(72)【発明者】
【氏名】リンカーン・マモル・フジタ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイツォン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ノエミー・ディオン・オウレット
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ジェイ・ミッチェル
(72)【発明者】
【氏名】ピエロ・パトロン・ボニソーネ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・フランク・ホスキン
【審査官】 青山 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−150233(JP,A)
【文献】 特開2005−293169(JP,A)
【文献】 特開平06−281302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 13/00 − 13/04
G05B 23/00 − 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電プラントに対する対象パラメータを予測するための方法であって、
発電プラント・データ・セット(122)および環境データ・セット(148)をプロセッサ(102)に対する入力として受け取るステップであって、前記環境データ・セット(148)は、観測される環境データまたは予想される環境データの少なくとも一方を含む、ステップと、
前記プロセッサ(102)上で、前記発電プラント・データ・セット(122)および前記環境データ・セット(148)を、1または複数のハイブリッド予測モデル(150)を用いて処理するステップであって、前記ハイブリッド予測モデル(150)は、静的な物理ベースモデル(152)と、前記静的な物理モデル(152)からの出力とプラント運転データ(126)を入力として受け取る動的な補正器モデル(154)を含む、ステップと、
前記プロセッサ(102)の出力として、前記対象パラメータの少なくとも1つの予測(144)を、前記1または複数のハイブリッド予測モデル(150)を用いて生成するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記発電プラント・データ・セット(122)および前記環境データ・セット(148)を、後続の処理の前に浄化するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの予測(144)を少なくとも1人のユーザに伝達するステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1人のユーザは、発電プラント運転員(53)、発電プラント管理者(55)、または電力取引業者(84)のうちの1または複数を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記発電プラント・データ・セット(122)は、前記発電プラントに対する運転データ(126)を含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記環境データ・セット(148)は、前記発電プラントに対する周囲温度、相対湿度、または大気圧のうちの1または複数を含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記対象パラメータは、前記発電プラントまたは前記発電プラントの部品の性能、可用性、または劣化の指標を含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記対象パラメータは、全体プラント性能の表示を含む、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する主題は、発電プラント性能の予測モデリングに関し、より具体的には、発電プラント性能、可用性、および劣化を頑強に予測する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
最新の発電プラントには通常、その運転の種々の側面を管理するのに役立つ高度な制御が備わっている。しかし制御が高度になるにつれて、運転要員が制御応答を予想することが難しくなる場合がある。その結果、このような運転員がその発電機器の将来の容量、能力、および/または排出量を予測することが難しくなる場合がある。
【0003】
モデル(たとえば物理ベースのモデル)が、新しい発電機器の性能を予測する上で有用なツールであり得るが、このようなモデルで用いる基本的な仮定は、時間とともに現実から外れる場合があり、その結果、モデルは時間とともに次第に有用ではなくなる。すなわち、プラントおよび機器が古くなると、また新しい制御メカニズムが適用されると、一つの機器の性能が、新しかったときの機能状態から外れる場合がある。その結果、理想性能に基づく物理ベースのモデルでは、ますます不正確になるかまたは信頼性が低下する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような経年劣化および付随して生じる予測モデルの不正確さを補償するために、発電プラントは定期的に機器の性能を再基準線化して、付随する物理ベースのモデルを新しい基準線に合わせて調整または較正することができる場合がある。しかしこのような調整は、時間がかかる場合があり、また整然とした実験作業(その間、機器はオフラインであり得る)を必要とする場合があり、その結果、収益が失われることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態においては、発電プラントに対する対象パラメータを予測するための方法が提供される。一実施形態においては、発電プラントは1または複数のガス・タービンを備えることができる。本方法は、発電プラント・データ・セットと環境データ・セットとをプロセッサに対する入力として受け取る行為を含む。環境データ・セットは、観測される環境データまたは予想される環境データの少なくとも一方を含む。観測環境データには、測定天気データを含めることができる。予想環境データには、天気予報データを含めることができる。プロセッサ上で、発電プラント・データ・セットと環境データ・セットとが、1または複数のハイブリッド予測モデルを用いて処理される。プロセッサの出力として、対象パラメータの少なくとも1つの予測が、1または複数のハイブリッド予測モデルを用いて生成される。
【0006】
別の実施形態においては、ハイブリッド予測モデルを開発するための方法が提供される。本方法は、発電プラント・データ・セットと物理ベースの性能データ・セットとを受け取る行為を含む。1または複数のルーチンとして、実行されるとデータ・セグメンテーション、データ消去、またはメディアン・フィルタリングのうちの1または複数を行なって、発電プラント・データ・セットまたは物理ベースの性能データ・セットの一方または両方をきれいにするルーチンを、プロセッサ上で実行する。1または複数のルーチンとして、実行されると少なくとも静的な部品および動的な部品を含む少なくとも1つのハイブリッド予測モデルを訓練するルーチンを、プロセッサ上で実行する。
【0007】
別の実施形態においては、プロセッサ実行の予測モデルが提供される。プロセッサ実行の予測モデルには、静的な物理ベース・モデルが含まれている。物理ベース・モデルは、プロセッサ上で実行されると、基準線出力を生成するものである。プロセッサ実行の予測モデルには、動的なデータ・ベース・モデルも含まれている。データ・ベース・モデルは、プロセッサ上で実行されると、基準線出力を入力として受け取って、補正出力を生成するものである。
【0008】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および優位性は、以下の詳細な説明を添付図面を参照して読むことでより良好に理解される。なお図面の全体に渡って同様の文字は同様の部品を表わす。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態により用いても良い代表的な化石燃料発電プラントのフロー図である。
図2】配電システム内でどのように情報が交換されるかを示すブロック図である。
図3】本開示の一実施形態により本発明の種々の態様を実施するための典型的なプロセッサ・ベースのシステムの図である。
図4】ある開示した実施形態により発電プラント性能、可用性、または劣化に対する少なくとも1つの予測を生成するためのシステムの図である。
図5】少なくとも1つの予測出力を生成するために用いるハイブリッド予測モデルのブロック図である。
図6】少なくとも1つのハイブリッド予測モデルの性能ベースの再訓練および再調整の方法に対するフロー・チャートである。
図7】ハイブリッド予測モデルに基づいて少なくとも1つの予測出力を生成して伝達する方法に対するフロー・チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、予測モデリング・アプローチであって、1または複数の発電プラントに適用して将来の発電能力および/または排出物発生をプラントのライフサイクルの全体に渡って予測することを、定期的にプラントの性能を再基準線化することを必要とせずに行ない得る予測モデリング・アプローチに関する。特に、本アプローチによって、1または複数の発電プラントの性能能力、可用性、および/または劣化の頑強で正確な予測を行なうことが可能になる。予測変数の例としては、ピーク負荷、ベース負荷、ターン・ダウン負荷、蒸気タービン負荷、および/または排出量値を挙げても良いが、これらに限定されない。予測値は、電力取引、パワー管理、および/または排出制御に関する市場基盤の背景において用いても良い。加えて、本アプローチは、全体プラント管理および/または他の状況としてプラントもしくはプラント群の評価および/もしくは管理を漸次的にではなく全体的に行なう状況に関する背景において用いても良い。
【0011】
一実施形態においては、データ駆動型ニューラル・ネットワークであるハイブリッド・モデルを用いる。このように実施する1つにおいては、モデルが正確に動作するのに機器特有の知識は必要ではない。したがって、このように実施する場合、ハイブリッド・モデルを、任意の供給源によって与えられる発電機器とともに用いても良い。本明細書で説明するハイブリッド・モデルは、人間の介入を伴うことなく正確な予測を安定してもたらすために、自己学習および自己保守である。
【0012】
開示内容の詳細を参照して、一般的に、発電プラントの性能は、部分的に以下のものに依存している。機器能力(たとえば、定格、寿命、および保守)、環境特性(たとえば、周囲温度、湿度、および圧力)、燃料特性(たとえば、温度、およびエネルギー含量)、ならびに他の因子。電力事業者が、電力の生産過剰または生産不足を伴うことなく電力消費者のエネルギー需要に応えるために、将来の発電プラント性能、可用性、および/または劣化を正確に予測できることが望ましい。後述するように、発電プラントまたは発電プラント群の性能を予測するためのある実施においては、これらの関連する因子の一部または全部を考慮するとともに、モデリング技術を用いて、1または複数の発電プラントを評価および/または管理する際に用いても良い正確で頑強な予測を開発している。このような開示されたモデルの1つにおいては、自己調整および自己監視システムを形成するハイブリッド・アプローチを用いており、そのため、機器ダウンタイムおよび人間とのやり取りの必要性が最小限に抑えられている。
【0013】
特に、このようなハイブリッド・アプローチの1つは、有用な予測モデルをもたらすために、人工ニューラル・ネットワーク(ANN)モデルを用いることに基づいている。このようなデータ駆動型のモデルは、明確な数学的アルゴリズム(たとえば、学習アルゴリズム)を用いて訓練可能であっても良い。すなわち、このようなモデルの開発を、測定(すなわち、観測)されたプロセス・データまたは他の経験的なプロセス・データに基づいてプロセス入力をプロセス出力上に正確にマッピングするようにモデルを訓練することによって実施しても良い。この訓練では通常、訓練アルゴリズムに付随する複数の入出力データ・ベクトル・レコードの多様なセットを用いる。訓練されたモデルは次に、基本的なプロセスの入出力挙動を正確に表わしても良い。
【0014】
このようなアルゴリズムに従って訓練される予測モデル(たとえばANNモデル)を用いて、システム(たとえば発電プラント)の特定の態様をモデリングおよび/または予測しても良い。したがって、発電プラント(本開示が向けられている)において、将来の性能(すなわち、出力能力)、将来の可用性、および将来の劣化を予測する予測モデリング技術を用いることができる。たとえば、特定のタイプの発電プラント(たとえば化石燃料発電プラント、風力発電プラント、原子力発電プラント、および/もしくは太陽発電プラント、またはこのようなプラントの群)の性能を、このようにモデルリングして相応に管理しても良い。
【0015】
一例として、このようなタイプのプラントの1つは、化石燃料発電プラントである。化石燃料発電プラントでは、燃料(たとえば、ガス、石炭、またはオイル)の燃焼から出た熱エネルギーを回転エネルギーに変換し、回転エネルギーをさらに電気エネルギーに変換する。図を参照して、図1は、1または複数のボイラーおよびタービンまたはエンジンを備えて発電する代表的な化石燃料発電プラント10のフロー図である。本明細書で述べるように、発電プラント10および発電プラント内で具体化される個々の部品の性能をモデリングして、発電プラント10(または示した発電プラントを含むより大きい発電プラント10群)の管理を促進する場合があり、ならびに/または発電プラント、その構成部品、および/もしくは示した発電プラントを含む発電プラント群に関する性能関連の変数の予測を可能にする場合がある。
【0016】
化石燃料発電プラント10は、個々の発電システムであっても良いし、より大きい発電ステーションの一部または発電プラントもしくはステーションのネットワークの一部となることもできる。たとえば、化石燃料発電プラント10は、都市または地域所有の電力会社に属する特定の発電ステーションにおける複数のシステムのうちの1つであっても良い。その特定の発電ステーション自体も、ネットワークとして、やはり都市または地域所有の電力会社に属し、都市または地域の電力需要を支えるネットワークにおける複数のうちの単に1つであっても良い。
【0017】
図示した実施形態においては、典型的な化石燃料発電プラント10は蒸気タービン28の形態の原動機を用いている。代替的な化石燃料発電プラント・デザインでは、原動機はガス・タービンまたは内燃機関であっても良い。化石燃料発電プラント10はボイラー20を備える。ボイラー20は燃料源12から燃料14を受け取る。燃料14は、固体、液体、または気体の状態であっても良い。たとえば、燃料14は、とりわけ、天然ガス、石炭、石炭ガス、または石油(オイル)であっても良い。特に、燃料のタイプおよび付随する特性、たとえば燃料温度および燃料低位発熱量(LHV))(エネルギー含量としても知られている)は、ある実施形態により正確な発電プラント予測にとって重要である場合がある。
【0018】
ボイラー20は、炉の壁に沿って高圧鋼管の網が設けられたものであっても良い。ボイラー20の壁に沿って設けられた管によって、給水16が運ばれる。後述するように、給水16は、可燃燃料14に由来する熱エネルギーを回転する蒸気タービン28の回転エネルギーに移す手段である。給水16は、腐食を最小限に抑えるために高度に精製および脱塩されている水である。給水16は、供水源18(多くの場合に、給水用のタンクまたは貯蔵容器)から送られるものであり、ボイラー20に達する前に給水ヒーターによって予熱しても良い。
【0019】
燃料14は、ボイラー20内に供給されて燃焼され、多くの場合にボイラーの中央に火球を形成する。この炎は次に、ボイラー20の壁に沿って設けられた管網を通って移動する給水16を加熱する。煙道ガス22が、燃料14の燃焼から発生して、排気管24を通って空気中に排出される。煙道ガス22には、二酸化炭素、水蒸気、および他の物質たとえば窒素、窒素酸化物(NOx)、およびイオウ酸化物が含まれていても良い。ある実施においては、煙道ガス22を処理して、これらの成分の一部または全部を取り除くかまたは減らしても良い。
【0020】
燃料14の燃焼によって給水16が過熱蒸気26に転化される。過熱蒸気26はボイラー20を離れて蒸気タービン28に流れ込む。蒸気タービン28は、複数組の角度付きブレード列をロータ30に取り付けたものからなる。ブレードが、移動する過熱蒸気26と接触すると、ブレードおよびロータ30が回転して、風車と同様の動作となる。過熱蒸気26は、蒸気タービン28に入ってその中を移動するときに冷えて膨張し、その結果、過熱蒸気26の圧力が低下する。過熱蒸気26は、蒸気タービン28を通った後に、蒸気32として排出され、一部の構成においては凝縮器34内に入る。凝縮器34は、多数の長い管の中を循環する冷却水を含む熱交換器であっても良い。蒸気32は、冷却管上を流れることによって凝縮される。凝縮器34は、蒸気32を冷却し、戻り給水36に転化し直して、供水源18を補給する。
【0021】
蒸気タービン28は、回転ロータ30を介して発電機38に接続されている。発電機38は、一部の構成においては、回転ロータ30、静止ステータ、および何マイルもの巻き銅導体からなっていて電力40を発生させても良い。次に、形成された電力40は、伝送線によって電力網42に運ばれる。最後に、変圧器およびより多くの伝送線からなる電力網42によって、最終的に電力40が消費者に運ばれる。
【0022】
代替的な化石燃料発電プラント構成として、原動機が蒸気タービンではなくガス・タービンである場合には、可燃燃料14から出た燃焼ガスが、個々のタービンの回転可能な部品を動かすための推進力であっても良い。このような構成では、ガス・タービン内の燃焼ガスは、ロータ30の回転に対して、蒸気タービン28内の過熱蒸気26と同様の機能を果たすことができる。
【0023】
当業者であれば分かるように、発電プラントの性能、可用性、および劣化は、一つには、発電プラント10内に見られる異なる機器の種々の特性に影響される。これらの機器特性としては、個々の部品の能力、寿命、使用法、および保守を挙げても良い。したがって、種々の部品が古くなるか、そうでなくても時間とともに使い古されると、それらの個々の性能特性は変化し、通常は劣化する場合がある。さらに加えて、本開示モデルを用いて生成される予測は、プラント10に存在する具体的な運転特性に影響される場合がある。たとえば、ガス・タービン・ベース負荷に対する予測を生成する場合、重要な因子として以下のものを挙げても良い。入口案内翼(IGV)角度(ガスがタービンに入る角度)、入口圧力降下(タービンに入るときにガスが受ける圧力降下)、および排気圧力降下(タービンから離れるときのガスの圧力降下)。他の外部因子(たとえば周囲温度、周囲湿度、および大気圧)も、正確な発電プラント予測に関係していても良い。
【0024】
図に戻って、発電プラントで生産した電力40を、指定箇所まで届ける供給として販売しても良い。図2は、電力40を分配するために用いる配電システム50内の異なる実体のやり取りを示すブロック図である。発電会社52は、発電システム54を用いて電力を発生させる。発電システム54にはたとえば以下のものが含まれる。化石燃料発電プラント10、原子力発電プラント56、地熱発電プラント58、バイオマス発電プラント60、太陽熱発電プラント62、太陽発電ステーション64、風力エネルギー発電ステーション66、水力発電ステーション68、および他の電力源70である。発電会社52は、単一の発電プラント、発電ステーション、または同じかもしくは異なるタイプの複数の発電プラントもしくはステーションを監督する単一の実体からなることができる。監督実体は、私営の電力会社、電気協同組合、または公営の電力会社、たとえば都市または地域所有の電力会社であっても良い。発電システム54には、管理者55および運転員53を含めることができる職員(たとえば、現場作業員)がいても良い。管理者55は、発電の監督および他の職員(たとえば発電システム運転員53)の管理を含めることができる仕事を行なっても良い。発電システム管理者55は、発電プラント管理者としても知られている場合がある。発電システムの運転員53は、発電用機器(ボイラー、タービン、発電機、および反応器など)の運転または制御などの仕事を、制御盤または半自動式機器を用いて行なっても良い。発電システム運転員53は、発電プラント運転員としても知られている場合がある。
【0025】
発電会社52から電力が1または複数の電力網42に供給される。前述したように、電力網42には、全国電力網74、地域電力網76、および/または局所電力網78内で組織された変圧器および伝送線が含まれている。ほとんどの場合、電力網所有者80が電力網42の全部または一部を所有している。電力網所有者80は、電力40を発電会社52から電力消費者82へ送電することに責任がある。電力消費者82(産業界から家庭までのすべてのものを含む)は、電力40を電力網42から取り出して、それを用いる。
【0026】
電力取引業者84も配電システム50に関与している場合がある。電力取引業者84は、電力供給業者86および/またはバランス供給者88の役割を担っていても良い。また、両方の役割が、同じかまたは異なる会社内に存在していても良い。電力取引業者84は、消費者と供給合意を結んで、電力の販売92が常に電力の購入94とバランス状態にあって消費をカバーすることを確実にする必要がある場合がある。一部の状況では、発電会社52は、電力取引業者84にその電力を販売すること94を、入札および/または競売プロセス96を通して行なう。電力96の入札および/または競売に対して組織化された市場があり、電力取引所90と言われる。電力取引所90内では、取引きを促進する仲介業者がいる。
【0027】
特に、どの一つの会社も配電システム50内において複数の役割を担っている。たとえば、1つの電力会社は、発電会社52として機能する(たとえば、化石燃料発電プラントを運転する)、電力網所有者80として機能する(たとえば、局所電力網を所有する)、および/または電力消費者82に対する電力供給業者86として機能する場合がある。したがって、これらの当事者のうち1または複数が、個々のおよび集合的な発電システム54の性能能力、可用性、および劣化を予測できることが重要な場合がある。
【0028】
前述したことを念頭において、図3に、発電システムの性能のモデリングおよび予測で用いる典型的なプロセッサ・ベースのシステム100を示す。一実施形態においては、典型的なプロセッサ・ベースのシステム100は、汎用コンピュータであって、種々のソフトウェア(本開示の態様を実施するアルゴリズムを含む)を実行するように構成されている。あるいは、他の実施形態においては、プロセッサ・ベースのシステム100は、とりわけ、メインフレーム・コンピュータ、分散コンピューティング・システム、またはアプリケーション特有のコンピュータまたはワークステーションであって、システムの一部として提供される専用のソフトウェアおよび/またはハードウェアを用いて本開示の態様を実施するように具体的にデザインおよび構成されたものを含んでいても良い。さらに、プロセッサ・ベースのシステム100は、本開示の機能性の実施を容易にするために単一のプロセッサまたは複数のプロセッサを備えていても良い。
【0029】
一般的に、典型的なプロセッサ・ベースのシステム100は、マイクロプロセッサ102(たとえば中央演算処理装置(CPU))を備えている。これは、システム100の種々のルーチンおよび処理機能を実行するものである。たとえば、マイクロプロセッサ102は、種々のオペレーティング・システム命令とともにソフトウェア・ルーチンおよび/またはアルゴリズムを実行しても良い。これらは、メモリ104(たとえばパーソナル・コンピュータのランダム・アクセス・メモリ(RAM))または1もしくは複数の大容量記憶装置106(たとえば内部もしくは外部のハード・ドライブ、CD−ROM、DVD、または他の磁気もしくは光学記憶装置)に記憶されるかまたはこれらによって提供される。加えて、マイクロプロセッサ102は、種々のルーチン、アルゴリズム、および/またはソフトウェア・プログラムに対する入力として与えられるデータ、たとえば本開示のコンピュータ・ベースの実施において与えられるデータを処理する。
【0030】
このようなデータは、メモリ104または大容量記憶装置106に記憶しても良いし、それらから提供されても良い。あるいは、このようなデータを、マイクロプロセッサ102に1または複数の入力装置108を介して提供しても良い。このような入力装置108としては、手動の入力装置、たとえばキーボード、マウス、などを挙げても良い。加えて入力装置108には、マイクロプロセッサ102に遠隔のプロセッサ・ベースのシステムまたは別の電子装置からデータを与えるネットワークまたは他の電子通信インターフェースなどの装置が含まれていても良い。このようなネットワーク通信インターフェースは、当然のことながら、双方向性であっても良く、こうして、マイクロプロセッサ102から遠隔のプロセッサ・ベースのシステムまたは他の電子装置へネットワークを介してデータ送信することも容易になっていても良い。
【0031】
マイクロプロセッサ102から生じた結果(たとえば1または複数の記憶されたルーチンまたはアルゴリズムに従ってデータを処理することによって得られた結果)を、運転員に、1または複数の出力装置(たとえばディスプレイ110および/またはプリンタ112)を介して与えても良い。表示またはプリントされた出力に基づいて、運転員は、付加的もしくは代替的な処理の要求、または付加的もしくは代替的なデータの提供を、たとえば入力装置108を介して行なっても良い。プロセッサ・ベースのシステム100の種々の部品間での通信は通常、個々のチップセットと1または複数のバスまたは相互接続(システム100の部品を電気的に接続する)とを介して行なっても良い。特に、ある実施形態においては、典型的なプロセッサ・ベースのシステム100は、本明細書で述べたような1または複数のアルゴリズムに従って発電プラント・データを処理し、1または複数の数学的モデルを実行して発電プラント性能、可用性、および/または劣化に対する予測を生成するように構成されている。これについては、図4〜7に関して後に詳述する。
【0032】
図4に、発電プラント性能、可用性、または劣化に対する予測を生成するためのシステム120の例を例示する。いくつかの実施形態においては、システム120は、実際のプラント・データ122を1または複数の数学的モデル(すなわち、アルゴリズム)と組み合わせて用いて、発電プラント124の実際の将来の性能、可用性、または劣化をシミュレートしても良い。したがって、種々の現在の運転データ126および履歴データ128を、発電プラント124から収集して、入力から直接に1もしくは複数の数学的モデル(たとえばコンピュータ・モデル130)へ入力しても良いし、またはデータをプラント・データベース122に記憶して、将来このようなモデルとともに使用することに備えても良い。
【0033】
種々の実施形態においては、システム120を、発電プラント124の構成および運転に応じて広範囲の現在の運転データ126および履歴データ128を用いることに適合させても良い。たとえば、発電プラント・ガス・タービン・ベース負荷のモデリングを容易にするために、現在の運転データには、IGV角度、入口圧力降下、排気圧力降下、燃料温度、および/または燃料LHVを含めても良い。この例では、履歴データ128には、一部または全部の上記因子とともに過去の測定されたベース負荷が含まれていても良い。
【0034】
データ126および128を、発電プラントから運転員が直接入力しても良いし、またはプラント・データベース122から取得しても良い。一実施形態においては、コンピュータ・モデル130は、1または複数の潜在的な運転変更の発電プラントへの影響をシミュレートすることができる。言い換えれば、コンピュータ・モデル130によって、発電プラント運転員53、発電プラント管理者55、電力取引業者84、または他のユーザ(発電プラントの場所にいてもいなくても)が、機器の設定変更の発電プラント性能に対する影響をシミュレートすることが、発電プラント124における設定を何ら実際に変えることなく可能になる。ユーザが、発電プラント性能に付随する1または複数の対象パラメータを有していても良い。
【0035】
種々の実施形態においては、コンピュータ・モデル130を、物理ベースの性能データ132を受け取るように適合させても良い。物理ベースの性能データ132としては、発電プラントからの実際の運転情報の代わりにまたはそれに加えて、発電プラントの少なくとも1つの物理ベース・モデルを用いて生成されるデータを挙げても良い。
【0036】
種々の実施形態においては、コンピュータ・モデル130は、前述した機能性を実現するために、分離した別個のハイブリッド・モデルの配列134を備えていても良い。たとえば、ハイブリッド・モデルの配列134には、モデリングされる発電プラントで用いる機器に基づいた複数のガス・タービンまたは蒸気タービンに対するベース負荷モデルおよびピーク負荷モデルが含まれていても良い。各モデルは、コンピュータ・モデル130によって生成および更新される数学的アルゴリズムとして存在する。
【0037】
ある実施形態においては、コンピュータ・モデル130は、各ハイブリッド・モデル150の形成、保守、および正確さを可能にするために、複数のモジュールを備えていても良い。たとえば、コンピュータ・モデル130は、データ・コンディショニング・モジュール136、訓練モジュール138、再訓練モジュール142、およびハイブリッド予測モジュール140を備えていても良い。これらの各モジュールについては、後により詳細に説明する。
【0038】
また環境データ148を、予測結果144の生成においてコンピュータ・モデル130が用いても良い。環境データ148には、モデリングされる個々の機器またはプラントの場所に対して観測される(すなわち、現在の)および/または予想される(すなわち、将来の)環境データが含まれていても良い。理解されるように、このような予想または予測される環境データが有用であり得る実施は、将来を考慮したモデルまたは予測が望ましく、その結果、予想されるすなわち将来の発電能力に対する見識が得られる実施である。環境データ148としては、限定することなく、モデリングされる個々の機器またはプラントの場所における周囲温度、相対湿度、および/または大気圧を挙げても良い。予測結果144は、プラント運転員、エネルギー供給業者、電力取引業者などが用いるべきコンピュータ・モデル130からの出力であっても良い。さらに、予測結果144とともにハイブリッド・モデルの配列134および環境データ148を、データベース146に記憶して、現在のコンピュータ・モデル130を更新するために用いても良い。
【0039】
ある実施形態では、プラント・データ122および/または物理ベースの性能データ132に基づくモデリングおよび予測において、異常値および著しいノイズが浄化されたデータを用いる。データ・コンディショニング・モジュール136は、十分に均一なデータ・セットを訓練モジュール138が利用できるように、データ・セグメンテーションおよび除去アルゴリズムを含んでいても良い。たとえば、データ・コンディショニング136は、各入力変数を平滑化してデータ中の異常値の多くを取り除くメディアン・フィルタリングを含んでいても良い。
【0040】
訓練モジュール138は、後述するように予測用に利用できるモデルを形成するために、ハイブリッド予測モジュール140に情報を提供する。さらに、ある実施形態においては、訓練モジュール138は、プラント・データ122か、または物理ベースの性能データ132とプラント・データ122との組み合わせを用いても良い。1つのアプローチにおいては、物理ベースの性能データ132とプラント・データ122とを組み合わせて、拡張されたモデル訓練および検証データ・セットを形成しても良い。物理ベースの性能データ132は、適切な物理ベースのモデルの組に対して実験計画法(DOE)を実行することを通して生成しても良い。このDOEアプローチによって生成される入出力値のマトリックス上で、ハイブリッド予測モジュール140を訓練および検証しても良い。
【0041】
さらに、ある実施形態においては、ドメイン知識およびデータ駆動型方法の両方を用いて、ハイブリッド予測モジュール140へ入力するための変数を選択する。たとえば、相関試験を訓練モジュール138間で行なって、入力変数(X’)と目標(Y’)との間の高い相関を確認しても良い。その後に、非常に相関性がある変数および目標を用いることによって、より正確な予測性能が得られる場合がある。
【0042】
いったん十分に訓練されれば、ハイブリッド予測モジュール140によってハイブリッド・モデル150が生成される場合がある。図5は、本発明の実施形態による典型的なハイブリッド予測モジュール140のブロック図である。図5を参照して、ハイブリッド予測モジュール140では、物理ベースのANNモデル152(たとえば熱力学的なモデル)とともにプラント・データ・ベースのANNモデル154を用いる。理解されるように、ニューラル・ネットワーク以外のモデルを用いても良い。ある実施形態においては、ハイブリッド予測モジュール140を用いてモデルを生成して予測する前に、物理ベースのANNモデル152を1回訓練する。他の実施形態においては、物理ベースのANNモデル152の2回以上の訓練をたとえば反復プロセスで行なうことを、ハイブリッド予測訓練プロセスで用いる前に行なっても良い。1つの実施においては、物理ベースのANNモデル152を、時間とともに更新することはせず、したがって「静的な」モデルと言われる。
【0043】
一例としては、プログラムを用いて物理ベースの性能データを生成して静的モデル152を訓練し、ガス・タービン・ベース負荷予測を図っても良い。入力パラメータを決定および使用して、DOE試験マトリックスを形成しても良い。DOE試験マトリックスを実行し、出力は静的モデル訓練データ・セットになる。他のパラメータを、同じ機器またはシステムに対して決定して、さらなる静的モデル訓練データ・セットを形成しても良い。また異なるプログラムを用いて、異なるプラント機器またはシステムに対する静的モデル訓練データを生成しても良い。さらに加えて、物理ベースの性能データが利用できなかった場合には、プラント運転データの大きなセットを用いて静的モデル152を訓練することができる。この状況では、理想的には、訓練データ・セットが広範囲の入力パラメータをカバーして、運転領域の正確な表現が得られる。
【0044】
静的モデル152によって生成された予測は、予測されているパラメータに対する「基準線」を表わす。使用する訓練データに応じて、静的モデル152に基づく予測は実際の性能とは異なっている場合がある。基準線からのずれは、機器が劣化するにつれ、時間とともに増加する場合がある。そのため、基準線予測に補正を施す必要があり、したがってプラント・データ・ベースのANNモデル(「補正器」モデル154とも言われる)が必要とされる。
【0045】
補正器モデル154は、最近のプラント運転データを用いて訓練しても良い。補正器モデル154に対する入力156には、静的モデル152に対する全ての入力158または下位集合の入力が含まれていても良い。加えて、補正器モデル154は、静的モデル152の出力159を入力として受け取る。その結果、施される補正は静的予測の関数となる。
【0046】
補正器モデル154は、プラントから収集される実際の最新データに基づいて性能予測を調整する。そのため、時間とともに補正器モデル154によって、ハイブリッド予測モジュール140が形成するハイブリッド・モデル150が実際の性能を詳細に反映することができる。一方で基準線(静的モデル152)は変わらない。したがって、補正器モデル154を静的モデル152とともに用いることによって、静的モデル152を定期的に再基準線化して再調整する必要が軽減または除去され、その結果、プラント機器に対するダウンタイムが最小になる。
【0047】
結果として、ハイブリッド・モデリング・アプローチは、純粋な物理ベースまたは純粋なデータ・ベースのニューラル・ネットワーク・アプローチよりも良好に機能する場合がある。静的モデル152を用いることによって最初は、従来のどんな訓練も行なうことなく予測基準線を設定することができる。また、静的モデル152を、全運転範囲に渡って性能基準線を形成する運転条件の予想範囲に渡って訓練しても良く、その結果、必要な外挿法が最小限になり、プラント運転データ希薄問題が相殺される。
【0048】
図5に戻って、一対の物理ベースのANN152およびデータ・ベースのANNモデル154を、各性能予測に対するハイブリッド・モデル150の形成において用いても良い。たとえば、単一対のモデル(すなわち、単一のハイブリッド・モデル150)を用いて以下の予測を行なっても良い。ガス・タービン負荷(mW)、ガス・タービン燃料消費量、ガス・タービン排出量(NOx、CO)、および/または蒸気タービン負荷(mW)。
【0049】
しかし、複数対のANNモデル(すなわち、複数のハイブリッド・モデル150)を互いに関連させて用いて、たとえば1つの予測に対するモデルを形成しても良いし、または複雑なシステムをより効果的にモデリングしても良い(たとえば全体プラント性能)。実際には、いくつかの実施形態において、複数のハイブリッド・モデルを用いてパラメータまたは全体的(すなわち、全体論的)な評価基準をモデリングすることが最良である場合がある。たとえば、異なるハイブリッド・モデルの方が、ガス・タービンのベース負荷および部分負荷運転モードをより良好に表わすということを決定しても良い。この場合、ガス・タービン・ベース負荷および部分負荷予測は、ハイブリッド予測モジュール140を用いて形成される2つの別個のハイブリッド・モデル150を用いて行なうことができるが、別個のハイブリッド・モデル150の組み合わせ結果を合わせて、ガス・タービン運転モードに関する所望の予測が得られる場合がある。さらに、より複雑な考え方(たとえば、全体としてのプラントの性能または概念的にまとめて考えても良いサブシステム群の性能)が対象となる場合がある限りでは、このような複雑な結果を、群(すなわち、2つ以上のハイブリッド・モデル150)を用いてモデリングしても良い。たとえば、このようなモデル群を加重配列、未加重配列、階層的配列、および/または条件付き配列で組み合わせて、当該の複雑なパラメータ(たとえば全体プラント性能、全体発電機性能、全体タービン性能など)を好適にモデリングしても良い。
【0050】
補正器モデル154は、モデルの再訓練およびその後の再調整を通して保守される。図4からの再訓練モジュール142は、この機能をコンピュータ・モデル130内で行なう。再訓練142は、性能に基づいて作動させても良いし(たとえば、性能が許容閾値を下回ったときの監視精度および作動訓練)、または時間間隔に基づいて作動させても良い(たとえば、毎日、毎週、毎月、毎年などに1回)。再訓練作動が性能ベースである場合、統計的検定を用いて、モデルの予測精度がいつ低下している場合があるかを診断しても良い。低下したモデルは、再調整して、より正確な予測が得られるようにしても良い。このプロセスによって、ハイブリッド・モデル150のセルフ・モニタリングおよび自己更新が達成される。
【0051】
図6のフローチャート160を参照して、ハイブリッド・モデル150を再訓練するための方法142がより良好に理解される場合がある。なお、フローチャート160に示した典型的なステップのうち1または複数を、プロセッサ・ベースのシステム100によって、このような機能を行なうようにデザインされたソフトウェア・アプリケーションのルーチンまたはアルゴリズムの実行を通して、行なっても良い。あるいは、アプリケーション特有のハードウェア、ファームウェア、または回路構成を用いて、同じ機能性を実現しても良い。
【0052】
方法160は、プラント・データ122の新しいウィンドウを受け取ること(ブロック162)によって始まっても良い。プラント・データ122には、運転入力(X’)とともに出力(Y)が含まれる。プロセッサ102は、既存の訓練されたハイブリッド・モデル150およびプラント・データ122を用いて、予測出力(Y’)166を計算する(ブロック164)。予測誤差(Ei)170は、実際の出力(Y)と予測出力(Y’)166との間の差によって計算される(ブロック168)。
【0053】
ハイブリッド・モデル試験データに対する予測誤差(基本予測誤差(Eo)174とも言われる)の計算(ブロック172)には、全長が(D0+w0)の初期データ・セットを用いることが含まれる。最初のD0データ点は、初期ハイブリッド・モデルを訓練して検証するために用いられ、データの最後のw0点は、ベース予測誤差174を試験して取得するために留保される。
【0054】
次に、プロセッサ102は、予測誤差(Ei)170およびベース予測誤差(Eo)174に対して統計的検定を行なう(ブロック176)。どんな仮説検定も統計的検定として機能しても良い。たとえば、ウィルコクソンの順位和検定(WRST)が、その優位性から提案される。統計的な試験結果(ブロック178)が、予測誤差EoおよびEiは統計的に著しく異なってはいないことを示した場合には184、プロセスは、新しいプラント・データ122を受け取るところ(ブロック162)から再び始まる。他方で、EoとEiとの間に統計的に著しい差があった場合には186、ハイブリッド・モデルを、プラント・データ122(運転および出力データを含む)を用いて再訓練する(ブロック180)。しかし、プラント・データ・セット122内のデータ点の数が圧倒的に大きい場合、最も古いデータ点の特定の部分をデータ・セットから取り除いても良い。モデル再訓練のために用いるデータ量は重要な因子である。良好なモデル表現を得るためには十分なデータが必要である。しかし機器の現在の状態を正確には反映していない古いデータの使用を回避することは不可欠である。ハイブリッド予測モデルを再訓練した後、ネットワーク・パラメータおよびベース予測誤差E0を両方とも再調整して(ブロック182)、プラント・データ122の後続のウィンドウズ(商標)に対して用いる。前述したことから分かり得るように、ハイブリッド・モデル150は、実施されると、その予測性能において連続的にモニタされる。注目すべきことは、再訓練方法160を、予測すべき異なるパラメータ(たとえば、ベース負荷、NOx、CO)に対して存在する各ハイブリッド・モデル150に対して別個に行なっても良いことである。
【0055】
図7のフローチャート190を参照して、ハイブリッド・モデル150を用いて発電プラント性能、可用性、または劣化に対する予測144を生成する方法は、より良好に理解される場合がある。なお、フローチャート190に示した典型的なステップのうち1または複数を、プロセッサ・ベースのシステム100によって、このような機能を行なうように適合されたソフトウェア・アプリケーションのルーチンまたはアルゴリズムの実行を通して、行なっても良い。あるいは、アプリケーション特有のハードウェア、ファームウェア、または回路構成を用いて、同じ機能性を実現しても良い。
【0056】
予測190を生成する方法は、プロセッサ102がプラント・データ122および環境データ148の両方を受け取ること(ブロック192)から始まる。前述したように、環境データ148には、当該の場所に対して得られた気象データ、たとえば周囲温度、相対湿度、および/または大気圧が含まれていても良い。プロセッサ102は、ハイブリッド・モデル150に対するデータ・セット196を用意する(ブロック194)。プロセッサ102は、ハイブリッド・モデル150を用いて予測結果144を計算する(ブロック198)。そしてプロセッサ102は、予測結果144をシステム・ユーザに、ディスプレイ110またはプリンタ112を介して伝達する(ブロック200)。
【0057】
ある実施形態においては、図7の方法を用いて、ネットワーク環境上で相互接続された複数の発電プラントの能力、可用性、および劣化を予測しても良い。予測出力94を用いて、個々の発電プラント、ネットワーク内の発電プラントの下位集合、および/または発電プラントのネットワーク全体の性能を、動的に観測および分析しても良い。
【0058】
本開示の技術的効果には、ハイブリッド・モデルを生成および/または利用して、1または複数の発電プラントに付随する1または複数の性能的側面を予測することが含まれる。発電プラントの運転または管理は、開示したハイブリッド・モデルの1または複数の出力に基づいても良い。ハイブリッド・モデルは、1または複数のニューラル・ネットワークを構成していても良い。さらに、ハイブリッド・モデルは静的モデルを構成しても良く、たとえば物理的原理および因子ならびに補正器または動的モデルに基づいても良く、たとえば測定または観測されるプラント・データに基づいても良い。このような実施形態においては、静的モデルの出力は、補正器モデルに対する入力であっても良い。
【0059】
この書面の説明では、実施例を用いて、本発明を、ベスト・モードも含めて開示するとともに、どんな当業者も本発明を実施できるように、たとえば任意の装置またはシステムを作りおよび用いること、ならびに取り入れた任意の方法を実行することができるようにしている。理解され得るように、実施例または実施形態が、本開示の説明を容易にするために与えられる限りにおいて、このような実施例および実施形態を、たとえ明白には述べられていなくても、組み合わせることを、たとえ互いに組み合わせた状態で明白に説明がされていなくても、行なっても良い。本発明の特許可能な範囲は、請求項によって定められるとともに、当業者に想起される他の実施例を含んでいても良い。このような他の実施例は、請求項の文字通りの言葉使いと違わない構造要素を有するか、または請求項の文字通りの言葉使いとの差が非実質的である均等な構造要素を含む場合には、請求項の範囲内であることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7