(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
反応性エポキシカルボキシレート化合物(A)及び反応性ポリカルボン酸化合物(B)以外の反応性化合物(C)を含む請求項3に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物において、必須成分であるエポキシ樹脂(a)は2個のグリシジルフェニルエーテが、オクタヒドロメタノインデン構造(トリシクロデシル構造とも言う)をリンカーとして結合したセグメントを繰り返し構造とするエポキシ樹脂(X)と2個のフェノールが、オクタヒドロメタノインデン構造をリンカーとして結合したセグメントを繰り返し構造とするフェノール樹脂(Y)を反応させて得られる。フェノール樹脂(Y)はジシクロペンタジエンとフェノールとを反応させることで得られるフェノール樹脂であり、この樹脂をエポキシ化したエポキシ樹脂としては一般に販売されている製品では、日本化薬(株)製XD−1000シリーズ、大日本インキ化学工業(株)製HP−7200シリーズ等が挙げられる。エポキシ樹脂(a)は、幅広い分子量分布を有するエポキシ樹脂であって、これら製品群と比較しても高い靭性を有する。
【0020】
本発明におけるエポキシ樹脂(a)は2個のフェニレン基またはグリシドキシフェニレン基がジオキシプロパノール基をリンカーとして結合した部分を有する。このような結合は一般に高分子量グレードのビスフェノールA型エポキシ樹脂(あるいはフェノキシ樹脂)を合成する際にできる結合であり、該合成法としてはフュージョン法(Advanced法、二段法とも言う。新エポキシ樹脂 垣内弘編著 24−25、30−31ページ参照)が知られている。エポキシ樹脂(a)はこのフュージョン法を利用して得られる化合物である。
【0021】
エポキシ樹脂(a)の原料であるエポキシ樹脂(X)は、前記構造を有する限り特に限定はないが、通常、フェノール樹脂(Y)とエピハロヒドリンとをアルカリ金属水酸化物の存在下で反応させることにより分子量分布幅の狭いエポキシ樹脂(Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)で2.0程度以下、)を得る。なお、エポキシ樹脂(X)は、前記市販エポキシ樹脂を使用することもできる。エポキシ樹脂(X)は通常下記式(1)で表される。
【化3】
(式中nは繰り返し数を表し、通常1〜10である。)
【0022】
エポキシ樹脂(X)を得る反応において、エピハロヒドリンとしてはエピクロルヒドリン、α-メチルエピクロルヒドリン、γ-メチルエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等が使用でき、本発明においては工業的に入手が容易なエピクロルヒドリンが好ましい。エピハロヒドリンの使用量は前述に記載のフェノール樹脂(Y)の水酸基1モルに対し通常3.0〜20.0モル、好ましくは3.5〜10.0モルである。
【0023】
上記反応において使用できるアルカリ金属水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、固形物を利用してもよく、その水溶液を使用してもよい。水溶液を使用する場合は該アルカリ金属水酸物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に減圧下、または常圧下連続的に水及びエピハロヒドリンを留出させ、更に分液して水を除去し、エピハロヒドリンを反応系内に連続的に戻す方法でもよい。アルカリ金属水酸化物の使用量はフェノール樹脂(Y)の水酸基1モルに対して通常0.9〜2.5モルであり、好ましくは0.95〜2.0モルである。
【0024】
反応を促進するためにテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加することは好ましい。4級アンモニウム塩の使用量としてはフェノール樹脂(Y)の水酸基1モルに対し通常0.1〜15gであり、好ましくは0.2〜10gである。
【0025】
この際、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが反応進行上好ましい。
【0026】
アルコール類を使用する場合、その使用量はエピハロヒドリンの使用量に対し通常2〜50重量%、好ましくは4〜20重量%である。また非プロトン性極性溶媒を用いる場合はエピハロヒドリンの使用量に対し通常5〜100重量%、好ましくは10〜80重量%である。
【0027】
反応温度は通常30〜90℃であり、好ましくは35〜80℃である。反応時間は通常0.5〜10時間であり、好ましくは1〜8時間である。これらのエポキシ化反応の反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下でエピハロヒドリンや溶媒等を除去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、回収したエポキシ樹脂をトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて反応を行い、閉環を確実なものにすることも出来る。この場合アルカリ金属水酸化物の使用量はエポキシ化に使用したフェノール樹脂(Y)の水酸基1モルに対して通常0.01〜0.3モル、好ましくは0.05〜0.2モルである。反応温度は通常50〜120℃、反応時間は通常0.5〜2時間である。
【0028】
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に加熱減圧下溶剤を留去することによりエポキシ樹脂(X)が得られる。
【0029】
次いで、エポキシ樹脂(X)とフェノール樹脂(Y)を反応させエポキシ樹脂(a)を得ることができる。この手法では、エポキシ樹脂(X)のグリシドキシ基とフェノール樹脂(Y)の水酸基のモル比率がジオキシプロパノール基の導入率を決めるファクターとなる。フェノール樹脂(Y)は、通常下記式(2)で表される。
【化4】
(式中nは繰り返し数を表し、通常1〜10である。)
【0030】
エポキシ樹脂(X)とフェノール樹脂(Y)との反応は必要により、触媒を使用する。使用できる触媒としては具体的にはテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩;トリフェニルエチホスホニウムクロライド、トリフェニルホスホニウムブロマイド等の4級ホスホニウム塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属塩;2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、トリエタノールアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類;、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類;オクチル酸スズなどの金属化合物;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。これら触媒を使用する場合の使用量はその触媒の種類にもよるが一般には総樹脂量に対して10ppm〜30000ppm、好ましくは100ppm〜5000ppmである。本反応においては触媒を添加しなくても反応は進行するので好ましい反応温度、反応溶剤量にあわせて適宜使用することが望ましい。
【0031】
このフュージョン法において、溶剤は使用しても使用しなくてもかまわない。溶剤を使用する場合は本反応に影響を与えない溶剤であればいずれの溶剤でも使用でき、例えば以下に示すような溶剤を用いることができる。
極性溶剤、エーテル類:ジメチルスルホキシド、N,N’−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、プロピレングリコールモノメチルエーテル等、
エステル系の有機溶剤:酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、γ−ブチロラクトン、等、
ケトン系有機溶剤:メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケ
トン、シクロヘキサノン等
芳香族系有機溶剤:トルエン、キシレン等
溶剤の使用量は総樹脂重量に対し、0〜300重量%、好ましくは0〜100重%である。
【0032】
反応温度、時間は、樹脂濃度、触媒量の影響をうけ、反応時間は通常1〜200時間、好ましくは1〜100時間である。生産性の問題から反応時間が短いことが好ましく、また反応温度は0〜250℃、好ましくは30〜200℃である。したがって樹脂濃度、触媒量の調整は好ましい時間、温度で反応できるように適宜調整される。
【0033】
エポキシ樹脂(a)は、ジオキシプロパノール基を有するため、その水酸基当量が小さくなる。具体的には水酸基当量が5000以下となる。この水酸基当量は、該エポキシ樹脂のエポキシ当量に対し、フェノールを当モル付加させて得られるフェノール変性エポキシ樹脂の水酸基当量(JIS K 0070に準拠して測定)と該エポキシ樹脂のエポキシ当量より算出できる。
【0034】
またエポキシ樹脂(a)は幅広い分子量分布を有することを特徴とする。通常、分子量分布の幅の指標として、ゲルパーミエ―ションクロマトグラフィーを用い、Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)の値を採用するが、通常のエポキシ樹脂(X)のMw/Mnは2.0未満であるのに対し、エポキシ樹脂(a)は通常2.0以上となる。好ましい範囲としては、2<Mw/Mn<20、好ましくは2.5<Mw/Mn<15である。Mw/Mnが20を超える場合、樹脂がゲル状に近い状態となり、溶融粘度が高いだけでなく溶剤への溶解性も低く、取扱いが不便である。Mw/Mnの調整は、エポキシ樹脂(X)とフェノール樹脂(Y)の反応比率およびそれらの分子量によって適宜行うことができる。例えばエポキシ樹脂(X)に対するフェノール樹脂(Y)の量を多くすればするほど分子量が大きくなり、また使用するエポキシ樹脂(X)、フェノール樹脂(Y)の平均分子量が大きければ、そのぶん分子量分布の広がりも大きくなり、Mw/Mnも大きくすることができる。
なお、エポキシ樹脂(a)は、エポキシ樹脂(X)のオキシグリシジル基が、フェノール樹脂(Y)のフェノール性水酸基と網目状に反応するため、3次元的な構造有する樹脂となる。
【0035】
エポキシ樹脂(a)の軟化点は取扱いの面から50℃以上の軟化点を有するものが好ましい。好ましい範囲としては50〜150℃、さらに好ましくは75〜140℃である。軟化点が150℃以上になった場合、溶融粘度が高いだけでなく溶剤への溶解性も低く、取扱いが不便である。またその溶融粘度は200℃において10Pa・s以下が好ましい。これ以上になると製造容器からの取り出しが困難であるだけでなく、一概には言えないが、溶剤で希釈してエポキシ樹脂ワニスとし、プリプレグのようなものを作成する場合、ガラスクロスに、ワニスを含浸させた後、溶剤を留去することでプリプレグとなるが、この際、溶剤の抜けが悪くなるなど、成形材料に悪影響を及ぼす場合がある。軟化点の調整は、エポキシ樹脂(X)とフェノール樹脂(Y)の反応比率およびそれらの分子量によって適宜行うことができる。例えばエポキシ樹脂(X)に対するフェノール樹脂(Y)の量を多くすればするほど軟化点が高くなる。
エポキシ樹脂(a)を得る反応において、エポキシ樹脂(X)とフェノール樹脂(Y)の比率は、エポキシ樹脂(X)のエポキシ基1モルに対し、フェノール樹脂(Y)は、その水酸基が、通常0.05〜0.5モル、好ましくは0.076〜0.356モルとなる量を使用する。
【0036】
次に、カルボキシレート化合物に反応性を付与させ、本発明の反応性エポキシカルボキシレート化合物(A)を得ることを目的とした、カルボキシレート化工程について説明する。
【0037】
この反応は、エポキシ樹脂(a)に、重合可能なエチレン性不飽和基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つカルボン酸化合物(b)を反応させることで、反応性カルボキシレート化合物(A)を得る。
【0038】
ここで示されるカルボン酸化合物(b)は、活性エネルギー線への反応性を付与させるために反応せしめるものである。具体的には、例えば(メタ)アクリル酸類やクロトン酸、α−シアノ桂皮酸、桂皮酸、或いは飽和または不飽和二塩基酸と不飽和基含有モノグリシジル化合物との反応物が挙げられる。上記においてアクリル酸類としては、例えば(メタ)アクリル酸、β−スチリルアクリル酸、β−フルフリルアクリル酸、(メタ)アクリル酸二量体、飽和または不飽和二塩基酸無水物と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート誘導体と当モル反応物である半エステル類、飽和または不飽和二塩基酸とモノグリシジル(メタ)アクリレート誘導体類との当モル反応物である半エステル類等の一分子中にカルボキシル基をひとつ含むモノカルボン酸化合物、さらに一分子中に複数の水酸基を有する(メタ)アクリレート誘導体と当モル反応物である半エステル類、飽和または不飽和二塩基酸と複数のエポキシ基を有するグリシジル(メタ)アクリレート誘導体類との当モル反応物である半エステル類等の一分子中にカルボキシル基を複数有するポリカルボン酸化合物等が挙げられる。
【0039】
これらのうち、エポキシ樹脂(a)とカルボン酸化合物(b)の反応の安定性を考慮すると、(b)はモノカルボン酸であることが好ましく、モノカルボン酸とポリカルボン酸を併用する場合でも、モノカルボン酸のモル量/ポリカルボン酸のモル量で表される値が15以上であることが好ましい。
【0040】
最も好ましくは、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としたときの感度の点で(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとの反応生成物または桂皮酸が挙げられる。
【0041】
この反応におけるエポキシ樹脂(a)とカルボン酸化合物(b)の仕込み割合としては、用途に応じて適宜変更されるべきものである。即ち、全てのエポキシ基をカルボキシレート化した場合は、未反応のエポキシ基が残存しないために、反応性カルボキシレート化合物としての保存安定性は高い。この場合は、導入した二重結合による反応性のみを利用することになる。
【0042】
一方、カルボン酸化合物の仕込み量を減量し未反応の残存エポキシ基を残すことで、導入した不飽和結合による反応性と、残存するエポキシ基による反応、例えば光カチオン触媒による重合反応や熱重合反応を複合的に利用することも可能である。しかし、この場合は反応性カルボキシレート化合物の保存、及び製造条件の検討には注意を払うべきである。
【0043】
エポキシ基を残存させない反応性エポキシカルボキシレート化合物(A)を製造する場合、カルボン酸化合物(b)が、エポキシ樹脂(a)1当量に対し90〜120当量%であることが好ましい。この範囲であれば比較的安定な条件での製造が可能である。これよりもカルボン酸化合物の仕込み量が多い場合には、過剰のカルボン酸化合物(b)が残存してしまうために好ましくない。
【0044】
また、エポキシ基を残留させる場合には、カルボン酸化合物(b)が、エポキシ樹脂(a)1当量に対し20〜90当量%であることが好ましい。これの範囲を逸脱する場合には、複合硬化の効果が薄くなる。もちろんこの場合は、反応中のゲル化や、カルボキシレート化合物(A)の経時安定性に対して十分な注意が必要である。
【0045】
カルボキシレート化反応は、無溶剤で反応させる、若しくは溶剤で希釈して反応させることも出来る。ここで用いることが出来る溶剤としては、カルボキシレート化反応に対してイナート溶剤であれば特に限定はない。
【0046】
好ましい溶剤の使用量は、得られる樹脂の粘度や使途により適宜調整されるべきものであるが、好ましくは固形分に対して90〜30重量部、より好ましくは80〜50重量部になるように使用される。
【0047】
具体的に例示すれば、例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族系炭化水素溶剤、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素溶剤、及びそれらの混合物である石油エーテル、ホワイトガソリン、ソルベントナフサ等、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤等が挙げられる。
【0048】
エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のアルキルアセテート類、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のモノ、若しくはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテート類、グルタル酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル等のポリカルボン酸アルキルエステル類等が挙げられる。
【0049】
エーテル系溶剤としては、ジエチルエーテル、エチルブチルエーテル等のアルキルエーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類等が挙げられる。
【0050】
ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられる。
【0051】
このほかにも、後述するその他反応性化合物(C)等の単独または混合有機溶媒中で行うことができる。この場合、硬化性組成物として使用した場合には、直接に組成物として利用することが出来るので好ましい。
【0052】
反応時には、反応を促進させるために触媒を使用することが好ましく、該触媒の使用量は、反応物、即ちエポキシ樹脂(a)、カルボン酸化合物(b)、及び場合により溶剤その他を加えた反応物の総量に対して0.1〜10重量部である。その際の反応温度は60〜150℃であり、また反応時間は、好ましくは5〜60時間である。使用しうる触媒の具体例としては、例えばトリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン、メチルトリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等既知一般の塩基性触媒等が挙げられる。
【0053】
また、熱重合禁止剤として、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2−メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、ジフェニルピクリルヒドラジン、ジフェニルアミン、3,5−ジ−tert−ブチル−4ヒドロキシトルエン等を使用するのが好ましい。
【0054】
本反応は、適宜サンプリングしながら、サンプルの酸価が5mgKOH/g以下、好ましくは3mgKOH/g以下となった時点を終点とする。
【0055】
こうして得られた反応性エポキシカルボキシレート化合物(A)の好ましい分子量範囲としては、GPCにおけるポリスチレン換算重量平均分子量が1,000から50,000の範囲であり、より好ましくは2,000から30,000である。
【0056】
この分子量よりも小さい場合には硬化物の強靭性が充分に発揮されず、またこれよりも大きすぎる場合には、粘度が高くなり塗工等が困難となる。
【0057】
次に、酸付加工程について詳述する。酸付加工程は、前工程において得られた反応性カルボキシレート化合物に必要に応じてカルボキシル基を導入し、反応性ポリカルボン酸化合物(B)を得ることを目的として行われる。即ち、カルボキシレート化反応により生じた水酸基に多塩基酸無水物(c)を付加反応させることで、エステル結合を介してカルボキシル基を導入する。
【0058】
多塩基酸無水物(c)の具体例としては、例えば、分子中に酸無水物構造を有する化合物であればすべて用いることができるが、アルカリ水溶液現像性、耐熱性、加水分解耐性等に優れた無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸、3−メチル−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸または、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0059】
多塩基酸無水物(c)を付加させる反応は、前記カルボキシレート化反応液に多塩基酸無水物(c)を加えることにより行うことができる。添加量は用途に応じて適宜変更されるべきものである。
【0060】
多塩基酸無水物(c)の添加量は例えば、本発明のポリカルボン酸化合物(B)をアルカリ現像型のレジストとして用いようとする場合は、多塩基酸無水物(c)を最終的に得られる反応性ポリカルボン酸化合物(B)の固形分酸価(JISK5601−2−1:1999に準拠)が40〜120mg・KOH/g、より好ましくは60〜110mg・KOH/g、となる計算値を仕込むことが好ましい。このときの固形分酸価がこの範囲である場合、本発明の感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液現像性が良好な現像性を示す。即ち、良好なパターニング性と過現像に対する管理幅も広く、また過剰の酸無水物が残留することもない。
【0061】
反応時には、反応を促進させるために触媒を使用することが好ましく、該触媒の使用量は、反応物、即ちエポキシ化合物(a)、カルボン酸化合物(b)から得られたカルボキシレート化合物、及び多塩基酸無水物(c)、場合により溶剤その他を加えた反応物の総量に対して0.1〜10重量部である。その際の反応温度は60〜150℃であり、また反応時間は、好ましくは5〜60時間である。使用しうる触媒の具体例としては、例えばトリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン、メチルトリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0062】
本酸付加反応は、無溶剤で反応するか、若しくは溶剤で希釈して反応させることも出来る。ここで用いることが出来る溶剤としては、酸付加反応に対してイナート溶剤であれば特に限定はない。また、前工程であるカルボキシレート化反応で溶剤を用いて製造した場合には、その両反応にイナートであることを条件に、溶剤を除くことなく直接次工程である酸付加反応に供することもできる。用い得る溶剤はカルボキシレート化反応で用い得るものと同一のものでよい。
【0063】
好ましい溶剤の使用量は、得られる樹脂の粘度や使途により適宜調整されるべきものであるが、好ましくは固形分に対して90〜30重量部、より好ましくは80〜50重量部になるように用いられる。
【0064】
このほかにも、前記反応性化合物(C)等の単独または混合有機溶媒中で行うことができる。この場合、硬化性組成物として使用した場合には、直接に組成物として利用することが出来るので好ましい。
【0065】
また、熱重合禁止剤等は、前記カルボキシレート化反応における例示と同様のものを使用することが好ましい。
【0066】
本反応は、適宜サンプリングしながら、反応物の酸価が、設定した酸価のプラスマイナス10%の範囲になった点をもって終点とする。
【0067】
本発明において使用しうる反応性化合物(C)の具体例としては、ラジカル反応型のアクリレート類、カチオン反応型のその他エポキシ化合物類、その双方に感応するビニル化合物類等のいわゆる反応性オリゴマー類が挙げられる。
【0068】
使用しうるアクリレート類としては、単官能(メタ)アクリレート類、多官能(メタ)アクリレート、その他エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。
【0069】
単官能(メタ)アクリレート類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートモノメチルエーテル、フェニルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0070】
多官能(メタ)アクリレート類としては、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アジピン酸エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールエチレンオキサイドジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールエチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールとε−カプロラクトンの反応物のポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリエチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、およびそのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0071】
使用できるビニル化合物類としてはビニルエーテル類、スチレン類、その他ビニル化合物が挙げられる。ビニルエーテル類としては、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。スチレン類としては、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。その他ビニル化合物としてはトリアリルイソイシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0072】
さらに、いわゆる反応性オリゴマー類としては、活性エネルギー線に官能可能な官能基とウレタン結合を同一分子内に併せ持つウレタンアクリレート、同様に活性エネルギー線に官能可能な官能基とエステル結合を同一分子内に併せ持つポリエステルアクリレート、その他エポキシ樹脂から誘導され、活性エネルギー線に官能可能な官能基を同一分子内に併せ持つエポキシアクリレート、これらの結合が複合的に用いられている反応性オリゴマー等が挙げられる。
【0073】
また、カチオン反応型単量体としては、一般的にエポキシ基を有する化合物であれば特に限定はない。例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリジジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリジジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4,−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ユニオン・カーバイド社製「サイラキュアUVR−6110」等)、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキシド(ユニオン・カーバイド社製「ELR−4206」等)、リモネンジオキシド(ダイセル化学工業社製「セロキサイド3000」等)、アリルシクロヘキセンジオキシド、3,4,−エポキシ−4−メチルシクロヘキシル−2−プロピレンオキシド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート(ユニオン・カーバイド社製「サイラキュアUVR−6128」等)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)エーテル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)ジエチルシロキサン等が挙げられる。
【0074】
これらのうち、反応性化合物(C)としては、ラジカル硬化型であるアクリレート類が最も好ましい。カチオン型の場合、カルボン酸とエポキシが反応してしまうため2液混合型にする必要が生じる。
【0075】
本発明の反応性エポキシカルボキシレート化合物(A)、又は反応性ポリカルボン酸化合物(B)と、そのほかの反応性化合物(C)とを混合せしめて本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得ることができる。このとき、用途に応じて適宜その他の成分を加えてもよい。
【0076】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、組成物中に反応性エポキシカルボキシレート化合物(A)及び/又は反応性ポリカルボン酸化合物(B)97〜5重量部、好ましくは87〜10重量部、その他反応性化合物(C)3〜95重量部、さらに好ましくは3〜90重量部を含む。必要に応じてその他の成分を0〜80重量部含んでいてよい。
【0077】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物における、カルボキシレート化合物(A)もしくは反応性ポリカルボン酸化合物(B)は、その用途に応じて適宜使い分けられるものである。例えば、同じソルダーレジスト用途でも現像せず、印刷法によりパターンを成形する場合や溶剤等により未反応部位を流去させる、所謂溶剤現像型の場合には反応性エポキシカルボキシレート化合物(A)を用い、アルカリ水により現像させる場合には反応性ポリカルボン酸化合物(B)を用いる。一般的にアルカリ水現像型の方が微細なパターンを作りやすいという観点から、この用途には反応性ポリカルボン酸化合物(B)を用いる場合が多い。もちろん(A)と(B)を併用してもなんら問題はない。
【0078】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は活性エネルギー線によって容易に硬化する。ここで活性エネルギー線の具体例としては、紫外線、可視光線、赤外線、X線、ガンマー線、レーザー光線等の電磁波、アルファー線、ベータ線、電子線等の粒子線等が挙げられる。本発明の好適な用途を考慮すれば、これらのうち、紫外線、レーザー光線、可視光線、または電子線が好ましい。
【0079】
本発明において用いられる着色顔料とは、本発明の活性エネルギー線樹脂組成物を着色材料とするために用いられるものである。本発明で用いられるエポキシ樹脂(a)の水酸基とエポキシ基のバランスが特定の範囲にあるがゆえに、特に優れた顔料の分散性、即ち分散性が発揮される。
【0080】
この機構については定かではないが、分散が良好に進行するために結果として顔料濃度を濃くすることが出来る、また現像を必要とされる組成物においては、分散がより好適な状態にあるために、良好なパターニング特性が発揮され、また現像溶解部における現像残渣も少ないため、好適である。
【0081】
着色顔料としては、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系等の有機顔料、カーボンブラック等、酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。これらのうちカーボンブラックが分散性が高くもっとも好ましい。
【0082】
本発明において成形用材料とは、未硬化の組成物を型にいれ、もしくは型を押し付け、物体を成形したのち、活性エネルギー線により硬化反応を起こさせ成形させるもの、もしくは未硬化の組成物にレーザー等の焦点光等を照射し、硬化反応を起こさせ成形させる用途に用いられる材料を指す。
【0083】
具体的な用途としては、平面状に成形したシート、素子を保護するための封止材、未硬化の組成物に微細加工された「型」を押し当て微細な成形を行う、所謂ナノインプリント材料、さらには特に熱的な要求の厳しい発光ダイオード、光電変換素子等の周辺封止材料等が好適な用途として挙げられる。
【0084】
本発明において皮膜形成用材料とは、基材表面を被覆することを目的として利用されるものである。具体的な用途としては、グラビアインキ、フレキソインキ、シルクスクリーンインキ、オフセットインキ等のインキ材料、ハードコート、トップコート、オーバープリントニス、クリヤコート等の塗工材料、ラミネート用、光ディスク用他各種接着剤、粘着剤等の接着材料、ソルダーレジスト、エッチングレジスト、マイクロマシン用レジスト等のレジスト材料等がこれに該当する。さらには、皮膜形成用材料を一時的に剥離性基材に塗工しフィルム化した後、本来目的とする基材に貼合し皮膜を形成させる、いわゆるドライフィルムも皮膜形成用材料に該当する。
【0085】
本発明には前記の感光性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して得られる硬化物もふくまれ、また、該硬化物の層を有する多層材料も含まれる。
【0086】
これらのうち、反応性ポリカルボン酸化合物(B)のカルボキシル基の導入によって、基材への密着性が高まるため、プラスチック基材、若しくは金属基材を被覆するための用途として用いることが好ましい。
【0087】
さらには、未反応の反応性ポリカルボン酸化合物(B)が、アルカリ水溶液に可溶性となる特徴を生かして、アルカリ水現像型レジスト材料組成物として用いることも好ましい。
【0088】
本発明においてレジスト材料組成物とは、基材上に該組成物の皮膜層を形成させ、その後、紫外線等の活性エネルギー線を部分的に照射し、照射部、未照射部の物性的な差異を利用して描画しようとする活性エネルギー線感応型の組成物を指す。具体的には、照射部、または未照射部を何らかの方法、例えば溶剤等やアルカリ溶液等で溶解させる等して除去し、描画を行うことを目的として用いられる組成物である。
【0089】
本発明のレジスト用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、パターニングが可能な種々の材料に適応でき、例えば特に、ソルダーレジスト材料、ビルドアップ工法用の層間絶縁材に有用であり、さらには光導波路としてプリント配線板、光電子基板や光基板のような電気・電子・光基材等にも利用される。
【0090】
特に好適な用途としては、強靭な硬化物を得ることができる特性を生かして、ソルダーレジスト等の永久レジスト用途、顔料分散性が良好であるとの特性を生かして、印刷インキ、カラーフィルタ等のカラーレジスト、特にブラックマトリックス用レジストの用途が好ましい。
【0091】
本発明の感光性樹脂組成物を使用してのパターニングは、例えば次のようにして行うことができる。基板上にスクリーン印刷法、スプレー法、ロールコート法、静電塗装法、カーテンコート法、スピンコート法などの方法で0.1〜200μmの膜厚で本発明の組成物を塗布し、塗膜を通常50〜110℃、好ましくは60〜100℃の温度で乾燥させることにより、塗膜が形成できる。その後、露光パターンを形成したフォトマスクを通じて塗膜に直接または間接に紫外線などの高エネルギー線を通常10〜2000mJ/cm2程度の強さで照射し、後述する現像液を用いて、例えばスプレー、振動浸漬、パドル、ブラッシング等により所望のパターンを得ることができる。
【0092】
上記現像に使用されるアルカリ水溶液としては水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等の無機アルカリ水溶液やテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリ水溶液が使用できる。この水溶液には、さらに有機溶剤、緩衝剤、錯化剤、染料または顔料を含ませることができる。
【0093】
この他、活性エネルギー線による硬化反応前の機械的強度が求められるドライフィルム用途として特に好適に用いられる。即ち、本発明で用いられるエポキシ樹脂(a)の水酸基、エポキシ基のバランスが特定の範囲にあるがゆえに、本発明の反応性カルボキシレート化合物が比較的高い分子量であるにも関わらず、良好な現像性を発揮させることが出来る。
【0094】
皮膜形成させる方法としては特に制限はないが、グラビア等の凹版印刷方式、フレキソ等の凸版印刷方式、シルクスクリーン等の孔版印刷方式、オフセット等の平版印刷方式、ロールコーター、ナイフコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スピンコーター等の各種塗工方式が任意に採用できる。
【0095】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物とは、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射し硬化させたものを指す。
【0096】
本発明の樹脂組成物でオーバーコートされた物品とは、本発明において示される活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を基材上に皮膜形成・硬化させ得られる、少なくとも二層以上の層をもってなる材料を示す。
【0097】
この他、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を各種用途に適合させる目的で、組成物中に70重量部を上限にその他の成分を加えることもできる。その他の成分としては光重合開始剤、その他の添加剤、着色材料、また塗工適性付与等を目的に粘度調整のため添加される揮発性溶剤等が挙げられる。下記に使用しうるその他の成分を例示する。
【0098】
ラジカル型光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシンクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン等のアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類等の公知一般のラジカル型光反応開始剤が挙げられる。
【0099】
また、カチオン系光重合開始剤としては、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩、ルイス酸のホスホニウム塩、その他のハロゲン化物、トリアジン系開始剤、ボレート系開始剤、及びその他の光酸発生剤等が挙げられる。
【0100】
ルイス酸のジアゾニウム塩としては、p−メトキシフェニルジアゾニウムフロロホスホネート、N,N−ジエチルアミノフェニルジアゾニウムヘキサフロロホスホネート(三新化学工業社製サンエイドSI−60L/SI−80L/SI−100L等)等が挙げられ、ルイス酸のヨードニウム塩としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフロロホスホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフロロアンチモネート等が挙げられ、ルイス酸のスルホニウム塩としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロホスホネート(UnionCarbide社製CyracureUVI−6990等)、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート(UnionCarbide社製CyracureUVI−6974等)等が挙げられ、ルイス酸のホスホニウム塩としては、トリフェ
ニルホスホニウムヘキサフロロアンチモネート等が挙げられる。
【0101】
その他のハロゲン化物としては、2,2,2−トリクロロ−[1−4’−(ジメチルエチル)フェニル]エタノン(AKZO社製TrigonalPI等)、2.2−ジクロロ−1−4−(フェノキシフェニル)エタノン(Sandoz社製Sandray1000等)、α,α,α−トリブロモメチルフェニルスルホン(製鉄化学社製BMPS等)等が挙げられる。トリアジン系開始剤としては、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシフェニル)−6−トリアジン(Panchim社製TriazineA等)、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン(Panchim社製TriazinePMS等)、2,4−トリクロロメチル−(ピプロニル)−6−トリアジン(Panchim社製TriazinePP等)、2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシナフチル)−6−トリアジン(Panchim社製TriazineB等)、2[2’(5−メチルフリル)エチリデン]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(三和ケミカル社製等)、2(2’−フリルエチリデン)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(三和ケミカル社製)等が挙げられる。
【0102】
ボレート系光重合開始剤としては、日本感光色素製NK−3876及びNK−3881等が挙げられ、その他の光酸発生剤等としては、9−フェニルアクリジン、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール(黒金化成社製ビイミダゾール等)、2,2−アゾビス(2−アミノ−プロパン)ジヒドロクロリド(和光純薬社製V50等)、2,2−アゾビス[2−(イミダソリン−2イル)プロパン]ジヒドロクロリド(和光純薬社製VA044等)、[イータ−5−2−4−(シクロペンタデシル)(1,2,3,4,5,6,イータ)−(メチルエチル)−ベンゼン]鉄(II)ヘキサフロロホスホネート(CibaGeigy社製Irgacure261等)、ビス(y5−シクロペンタジエニル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピリ−1−イル)フェニル]チタニウム(CibaGeigy社製CGI−784等)等が挙げられる。
【0103】
この他、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル等の熱に感応する過酸化物系ラジカル型開始剤等を併せて用いても良い。また、ラジカル系とカチオン系の双方の開始剤を併せて用いても良い。開始剤は、1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併せて用いることもできる。
【0104】
その他の添加剤としては、例えばメラミン等の熱硬化触媒、アエロジル等のチキソトロピー付与剤、シリコーン系、フッ素系のレベリング剤や消泡剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤、安定剤、酸化防止剤等を使用することが出来る。
【0105】
また、その他の顔料材料としては例えば、着色を目的としないもの、いわゆる体質顔料を用いることも出来る。例えば、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸バリウム、水酸化アルミニウム、シリカ、クレー等が挙げられる。
【0106】
この他に活性エネルギー線に反応性を示さない樹脂類(いわゆるイナートポリマー)として、たとえばその他のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ケトンホルムアルデヒド樹脂、クレゾール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、スチレン樹脂、グアナミン樹脂、天然及び合成ゴム、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びこれらの変性物を用いることもできる。これらは樹脂組成物中に40重量部までの範囲において用いることが好ましい。
【0107】
特に、ソルダーレジスト用途に反応性ポリカルボン酸化合物(B)を用いようとする場合には、活性エネルギー線に反応性を示さない樹脂類として公知一般のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。これは活性エネルギー線によって反応、硬化させた後も(B)に由来するカルボキシル基が残留してしまい、結果としてその硬化物は耐水性や加水分解性に劣ってしまう。したがって、エポキシ樹脂を用いることで残留するカルボキシル基をさらにカルボキシレート化し、さらに強固な架橋構造を形成させる。該公知一般のエポキシ樹脂は、前記カチオン反応型単量体を用いることができる。
【0108】
また使用目的に応じて、粘度を調整する目的で、樹脂組成物中に50重量部、さらに好ましくは35重量部までの範囲において揮発性溶剤を添加することも出来る。
【実施例】
【0109】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。また、実施例中、特に断りがない限り、部は質量部を示す。
【0110】
軟化点、エポキシ当量、酸価は以下の条件で測定した。
1)エポキシ当量:JISK7236:2001に準じた方法で測定した。
2)軟化点:JISK7234:1986に準じた方法で測定した。
3)酸価:JISK0070:1992に準じた方法で測定した
4)GPCの測定条件は以下の通りである。
機種:TOSOH HLC−8220GPC
カラム:Super HZM−N
溶離液:THF(テトラヒドロフラン);0.35ml/分、40℃
検出器:RI(示差屈折計)
分子量標準:ポリスチレン
【0111】
合成例1:エポキシ樹脂の合成
合成例1−1
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらエポキシ樹脂(X)(日本化薬株式会社製 XD−1000 エポキシ当量 254g/eq. 平均官能基数2.5 Mw/Mnの値は1.95)187部、フェノール樹脂(Y)(新日本石油株式会社 DPP−6095L 水酸基当量178g/eq. 平均官能基数2.2)13部、トルエン50部、テトラメチルアンモニウムクロライド0.2部を加え、120℃で4時間反応を行った。反応終了後、トルエン300部を加え、水洗し、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下に溶剤等を留去することで目的とするエポキシ樹脂(EP1)198部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は290g/eq.、軟化点は92℃、溶融粘度(200℃)0.10Pa・sであった。またMw/Mnの値は2.1であった。
【0112】
合成例1−2
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらエポキシ樹脂(X)(日本化薬株式会社製 XD−1000 エポキシ当量 254g/eq. 平均官能基数2.5 Mw/Mnの値は1.95)185部、フェノール樹脂(Y)(新日本石油株式会社 DPP−6095L 水酸基当量178g/eq. 平均官能基数2.2)15部、トルエン50部、テトラメチルアンモニウムクロライド0.2部を加え、120℃で4時間反応を行った。反応終了後、トルエン300部を加え、水洗し、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下に溶剤等を留去することで目的とするエポキシ樹脂(EP2)198部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は303g/eq.、軟化点は96℃、溶融粘度(200℃)0.13Pa・sであった。またMw/Mnの値は2.8であった。
【0113】
合成例1−3
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらエポキシ樹脂(X)(日本化薬株式会社製 XD−1000 エポキシ当量 254g/eq. 平均官能基数2.5 Mw/Mnの値は1.95)183部、フェノール樹脂(Y)(新日本石油株式会社 DPP−6095L 水酸基当量178g/eq. 平均官能基数2.2)17部、トルエン50部、テトラメチルアンモニウムクロライド0.2部を加え、120℃で4時間反応を行った。反応終了後、トルエン300部を加え、水洗し、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下に溶剤等を留去することで目的とするエポキシ樹脂(EP3)198部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は310g/eq.、軟化点は99℃、溶融粘度(200℃)0.18Pa・sであった。またMw/Mnの値は3.5であった。
【0114】
合成例1−4
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらエポキシ樹脂(X)(日本化薬株式会社製 XD−1000 エポキシ当量 254g/eq. 平均官能基数2.5 Mw/Mnの値は1.95)180部、フェノール樹脂(Y)(新日本石油株式会社 DPP−6095L 水酸基当量178g/eq. 平均官能基数2.2)20部、トルエン50部、テトラメチルアンモニウムクロライド0.2部を加え、120℃で4時間反応を行った。反応終了後、トルエン300部を加え、水洗し、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下に溶剤等を留去することで目的とするエポキシ樹脂(EP4)198部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は342g/eq.、軟化点は102℃、溶融粘度(200℃)0.26Pa・sであった。またMw/Mnの値は4.8であった。
【0115】
合成例1−5
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらエポキシ樹脂(X)(日本化薬株式会社製 XD−1000 エポキシ当量 254g/eq. 平均官能基数2.5 Mw/Mnの値は1.95)170部、フェノール樹脂(Y)(新日本石油株式会社 DPP−6095L 水酸基当量178g/eq. 平均官能基数2.2)30部、トルエン50部、テトラメチルアンモニウムクロライド0.2部を加え、120℃で4時間反応を行った。反応終了後、トルエン300部を加え、水洗し、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下に溶剤等を留去することで目的とするエポキシ樹脂(EP5)198部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は419g/eq.、軟化点は117℃、溶融粘度(200℃)0.94Pa・sであった。またMw/Mnの値は8.3であった。
【0116】
合成例1−6
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらエポキシ樹脂(X)(日本化薬株式会社製 XD−1000 エポキシ当量 254g/eq. 平均官能基数2.5 Mw/Mnの値は1.95)165部、フェノール樹脂(Y)(新日本石油株式会社 DPP−6095L 水酸基当量178g/eq. 平均官能基数2.2)35部、トルエン50部、テトラメチルアンモニウムクロライド0.2部を加え、120℃で4時間反応を行った。反応終了後、トルエン300部を加え、水洗し、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下に溶剤等を留去することで目的とするエポキシ樹脂(EP6)198部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は473g/eq.、軟化点は120℃、溶融粘度(200℃)1.8Pa・sであった。またMw/Mnの値は18であった。
【0117】
比較合成例1−1
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらエポキシ樹脂(X)(日本化薬株式会社製 XD−1000 エポキシ当量 254g/eq. 平均官能基数2.5 Mw/Mnの値は1.95)190部、フェノール樹脂(Y)(新日本石油株式会社 DPP−6095L 水酸基当量178g/eq. 平均官能基数2.2)10部、トルエン50部、テトラメチルアンモニウムクロライド0.2部を加え、120℃で4時間反応を行った。反応終了後、トルエン300部を加え、水洗し、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下に溶剤等を留去することで目的とするエポキシ樹脂(EP7)198部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は288g/eq.、軟化点は88℃、溶融粘度(200℃)0.06Pa・sであった。またMw/Mnの値は1.99であった。
【0118】
比較合成例1−2
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらエポキシ樹脂(X)(日本化薬株式会社製 XD−1000 エポキシ当量 254g/eq. 平均官能基数2.5 Mw/Mnの値は1.95)160部、フェノール樹脂(Y)(新日本石油株式会社 DPP−6095L 水酸基当量178g/eq. 平均官能基数2.2)40部、トルエン50部、テトラメチルアンモニウムクロライド0.2部を加え、120℃で4時間反応を行った。反応終了後、トルエン300部を加え、水洗し、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下に溶剤等を留去することで目的とするエポキシ樹脂(EP8)198部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は551g/eq.、軟化点は126℃、溶融粘度(200℃)3.0Pa・sであった。またMw/Mnの値は26であった。
【0119】
実施例1:エポキシカルボキシレート化合物(A)の調製
合成例1−1、1−2、1−3、1−4、1−5、1−6で調製したエポキシ樹脂(a)を表中記載量、分子中に一個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)としてアクリル酸(略称AA、Mw=72)を表中記載量、触媒としてトリフェニルホスフィン3g、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを固形分80%となるように加え、100℃24時間反応させ、エポキシカルボキシレート化合物(A)溶液を得た。
【0120】
比較例1:比較用エポキシカルボキシレート化合物の調製
XD−1000(日本化薬株式会社製 エポキシ当量 254g/eq.平均官能基数2.5 Mw/Mnの値は1.95)、比較合成例1−1、1−2で調製したエポキシ樹脂をそれぞれ表中記載量、分子中に一個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)としてアクリル酸(略称AA、Mw=72)を表中記載量、触媒としてトリフェニルホスフィン3g、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを固形分80%となるように加え、100℃24時間反応させ、エポキシカルボキシレート化合物(A)溶液を得た。
【0121】
反応終点は固形分酸価(AV:mgKOH/g)にて決定し、測定値を表1中に記載した。酸価測定は、反応溶液にて測定し固形分としての酸価に換算した。また、GPCにて分子量を測定し、重量平均分子量を表1中に記載した。
【0122】
【表1】
注)AAのエポキシ樹脂(a)に対するモル比はいずれも1.0である。
【0123】
実施例2:反応性ポリカルボン酸化合物(B)の調製
実施例1において得られたカルボキシレート化合物(A)溶液297gに多塩基酸無水物(c)として、テトラヒドロ無水フタル酸(略称THPA)を表2に記載量、及び溶剤として固形分が65重量部となるようプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを添加、100℃に加熱した後、酸付加反応させ反応性ポリカルボン酸化合物(B)溶液を得た。固形分酸価(AV:mgKOH/g)、重量平均分子量を表2中に記載した。
【0124】
【表2】
【0125】
実施例3:ハードコート用組成物の調製
実施例1において合成したエポキシカルボキシレート化合物(A)20g、ラジカル硬化型の反応性化合物(C)であるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート4g、紫外線反応型開始剤としてイルガキュアー1841.5gを加熱溶解した。
さらにこれを、乾燥時の膜厚20ミクロンになるようハンドアプリケータによってポリカーボネート板上に塗工し、80℃30分間電気オーブンにて溶剤乾燥を実施した。乾燥後、高圧水銀ランプを具備した紫外線垂直露光装置(オーク製作所製)によって照射線量1000mJの紫外線を照射、硬化させ樹脂組成物でオーバーコートされた物品を得た。
この樹脂組成物でオーバーコートされた物品の塗膜の硬度をJISK5600−5−4:1999により測定し、さらに衝撃性の試験をISO6272−1:2002によって実施した。
耐衝撃性試験 ○:傷、剥がれ無し
△:僅かに傷あり
×:剥離
【0126】
【表3】
【0127】
上記の結果から明らかなように、本発明におけるハードコート用組成物は高い衝撃性と硬度を有している。
【0128】
実施例4:ドライフィルム型レジスト組成物の調製
実施例2で得られた反応性ポリカルボン酸化合物(B)を54.44g、その他反応性化合物(C)としてHX−220(商品名:日本化薬(株)製ジアクリレート単量体)3.54g、光重合開始剤としてイルガキュアー907(チバスペシャリチィーケミカルズ製)を4.72g及びカヤキュアーDETX−S(日本化薬(株)製)を0.47g、硬化成分としてGTR−1800(日本化薬製)を14.83g、熱硬化触媒としてメラミンを1.05g及び濃度調整溶媒としてメチルエチルケトンを20.95g加え、ビーズミルにて混練し均一に分散させレジスト樹脂組成物を得た。
得られた組成物をロールコート法により、支持フィルムとなるポリエチレンテレフタレートフィルムに均一に塗布し、温度70℃の熱風乾燥炉を通過させ、厚さ30μmの樹脂層を形成した後、この樹脂層上に保護フィルムとなるポリエチレンフィルムを貼り付け、ドライフィルムを得た。得られたドライフィルムをポリイミドプリント基板(銅回路厚:12μm、ポリイミドフィルム厚:25μm)に、温度80℃の加熱ロールを用いて、保護フィルムを剥離しながら樹脂層を基板全面に貼り付けた。
【0129】
次いで、紫外線露光装置((株)オーク製作所、型式HMW−680GW)を用い回路パターンの描画されたマスク、および感度を見積もるために、コダック製ステップタブレットNo.2を通して紫外線を照射した。その後、ドライフィルム上のフィルムを剥離し剥離状態を確認した。その後1%炭酸ナトリウム水溶液でスプレー現像を行い、紫外線未照射部の樹脂を除去した。水洗乾燥した後、プリント基板を150℃の熱風乾燥器で60分加熱硬化反応させ硬化膜を得た。
【0130】
耐冷熱衝撃性評価
レジストの硬化膜を形成したポリイミドプリント基板を−65〜120℃の範囲で冷熱衝撃試験を実施した。試験方法はJISC5012−9.1:1993に準拠した。試験終了後、セロハンテープ(登録商標)による剥離試験を実施した。
○:剥がれ無し
△:僅かな剥がれが観察される。
×:剥離
【0131】
高温耐湿性評価
レジストの硬化膜を形成したポリイミドプリント基板を120℃のオートクレーブ中に1時間入れた。基板を取り出し、室温で風乾させた後、セロハンテープ(登録商標)による剥離試験を実施した。
○:剥がれ無し
△:僅かな剥がれが観察される。
×:剥離
【0132】
感度評価
感度は、ステップタブレットを透過した露光部に、何段目の濃度部分までが現像時に残存したかで判定した。段数(値)が大きいほうがタブレットの濃部で高感度と判定される(単位:段)。
【0133】
現像性評価
現像性は、パターンマスクを透過した露光部を現像する際に、パターン形状部が完全に現像されきるまでの時間、いわゆるブレイクタイムをもって現像性の評価とした(単位:秒)。
【0134】
硬化性評価
硬化性評価は、150℃加熱終了後の硬化膜の鉛筆硬度をもって示した。評価方法は、JISK5600−5−4:1999に準拠した。
【0135】
【表4】
【0136】
上記の結果から明らかなように、本発明におけるレジスト組成物は高い耐冷熱衝撃性と高温耐湿性を有している。また、レジストとして良好な現像性と感度を有している。
【0137】
実施例5及び比較例5:顔料分散性
実施例2又は比較例2で得られたポリカルボン酸化合物をそれぞれ20g、反応性化合物(C)としてDPHA(商品名:日本化薬(株)製アクリレート単量体)5.0g、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10g、着色顔料として三菱カーボンブラックMA−100を10g混合攪拌した。そこに35gのガラスビーズを入れ、ペイントシェーカーで1時間分散を行った。
分散終了後の分散液を、ワイヤーバーコーター#2でポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、80℃の温風乾燥機で10分間乾燥を行った。乾燥終了後の塗膜表面の光沢を、60°反射グロス計(堀場製作所IG−331光沢計)を用いて測定しカーボンブラックの分散性を評価し、表7に示した。この際、光沢が高いほうが良好な顔料分散性ということを示している。
【0138】
【表5】
【0139】
上記の結果から明らかなように、本発明のおける反応性ポリカルボン酸化合物(B)を含有する分散液は、顔料分散性に優れている。