特許第6025248号(P6025248)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電工システムソリューション株式会社の特許一覧

特許6025248航続可能経路演算装置及びコンピュータプログラム
<>
  • 特許6025248-航続可能経路演算装置及びコンピュータプログラム 図000002
  • 特許6025248-航続可能経路演算装置及びコンピュータプログラム 図000003
  • 特許6025248-航続可能経路演算装置及びコンピュータプログラム 図000004
  • 特許6025248-航続可能経路演算装置及びコンピュータプログラム 図000005
  • 特許6025248-航続可能経路演算装置及びコンピュータプログラム 図000006
  • 特許6025248-航続可能経路演算装置及びコンピュータプログラム 図000007
  • 特許6025248-航続可能経路演算装置及びコンピュータプログラム 図000008
  • 特許6025248-航続可能経路演算装置及びコンピュータプログラム 図000009
  • 特許6025248-航続可能経路演算装置及びコンピュータプログラム 図000010
  • 特許6025248-航続可能経路演算装置及びコンピュータプログラム 図000011
  • 特許6025248-航続可能経路演算装置及びコンピュータプログラム 図000012
  • 特許6025248-航続可能経路演算装置及びコンピュータプログラム 図000013
  • 特許6025248-航続可能経路演算装置及びコンピュータプログラム 図000014
  • 特許6025248-航続可能経路演算装置及びコンピュータプログラム 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025248
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】航続可能経路演算装置及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20161107BHJP
   G08G 1/137 20060101ALI20161107BHJP
   B60L 3/00 20060101ALI20161107BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   G01C21/26 Z
   G08G1/137
   B60L3/00 S
   G09B29/00 A
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-175261(P2012-175261)
(22)【出願日】2012年8月7日
(65)【公開番号】特開2014-35215(P2014-35215A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】504126112
【氏名又は名称】住友電工システムソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福永 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】中島 正浩
(72)【発明者】
【氏名】西村 茂樹
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−217509(JP,A)
【文献】 特開2001−74482(JP,A)
【文献】 特開2012−103141(JP,A)
【文献】 特開平10−19592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00−21/36
B60L 3/00
G08G 1/137
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の航続可能経路を演算する装置であって、
道路地図データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記道路地図データに基づいて、前記車両の航続余力が予め定めた値以下になるまでに前記車両が基準地点から走行し得る航続可能経路を求める演算部と、
を備え、
前記記憶部は、道路の詳細度異なる複数の道路地図データを記憶しており、
前記演算部は、前記基準地点から前記車両の航続余力が予め設定した値以下になるまでの地点における前記車両の航続余力に応じて、道路の詳細度が異なる複数の道路地図データのいずれか一つを選択し、選択した道路地図データを用いて、前記車両の航続余力が予め定めた値以下になるまでに前記車両が走行し得る道路を航続可能経路として求める
ことを特徴とする航続可能経路演算装置。
【請求項2】
前記記憶部が記憶する前記複数の道路地図データは、第1道路地図データと、前記第1道路地図データよりも道路の詳細度が高い第2道路地図データと、を含み、
前記演算部は、
前記航続余力が閾値よりも大きくなる地点での航続可能経路を求める際には、前記第1道路地図データを用いて航続可能経路を求め、
前記航続余力が前記閾値よりも小さくなる地点での航続可能経路を求める際には、前記第2道路地図データを用いて航続可能経路を求める
請求項1記載の航続可能経路演算装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記第2道路地図データを用いて航続可能経路を求める際には、前記第1道路地図データを用いて既に求めた航続可能経路よりも前記基準地点側の経路が航続可能経路として求められるのを抑制する処理を行う
請求項2記載の航続可能経路演算装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記航続余力が前記閾値よりも大きくなる地点であっても、求めた航続可能経路での基準地点からの距離が、基準距離を超えない点では前記第2道路地図データを用いて航続可能経路を求め、前記基準距離を超えた地点では前記第1道路地図データを用いて航続可能経路を求める
請求項2又は3記載の航続可能経路演算装置。
【請求項5】
前記演算部は、求めた航続可能経路を、求めた航続可能経路上における前記航続余力の大きさに応じて区別して表示させるための表示データを生成する
請求項1〜4のいずれか1項に記載の航続可能経路演算装置。
【請求項6】
前記演算部は、求めた航続可能経路を、前記航続可能経路を求めるのに用いた道路地図データの詳細度に応じて区別して表示させるための表示データを生成する
請求項1〜5のいずれか1項に記載の航続可能経路演算装置。
【請求項7】
前記基準地点における前記航続余力を示す余力情報を取得する取得部を更に備え、
前記余力情報は、前記車両のバッテリ残量を示す情報を含む
請求項1〜6のいずれか1項に記載の航続可能経路演算装置。
【請求項8】
前記取得部は、前記車両の補機の使用電力を示す情報を更に取得し、
前記演算部は、前記車両の補機の使用電力を示す前記情報を用いて、航続可能経路上での航続余力を演算する
請求項7記載の航続可能経路演算装置。
【請求項9】
前記取得部は、前記車両の乗車人数を示す情報を更に取得し、
前記演算部は、前記車両の乗車人数を示す前記情報を用いて、航続可能経路上での航続余力を演算する
請求項7又は8記載の航続可能経路演算装置。
【請求項10】
前記演算部は、経時的に変化する動的交通情報を用いて、航続可能経路上での航続余力を演算する
請求項1〜9のいずれか1項に記載の航続可能経路演算装置。
【請求項11】
コンピュータを、車両の航続可能経路を演算する演算部として機能させるコンピュータプログラムであって、
前記演算部は、
車両の航続余力が予め定めた値以下になるまでに前記車両が基準地点から走行し得る航続可能経路を求めるものであり、
前記基準地点から前記車両の航続余力が予め設定した値以下になるまでの地点における前記車両の航続余力に応じて、道路の詳細度が異なる複数の道路地図データのいずれか一つを選択し、選択した道路地図データを用いて、前記車両の航続余力が予め定めた値以下になるまでに前記車両が走行し得る道路を航続可能経路として求める
ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航続可能経路演算装置及びコンピュータプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車の開発が進められているが、現時点では、その航続距離は短い(200km未満)。したがって、電気自動車は、日帰りのドライブであったとしても、その行く途中又は帰る途中で充電ステーションに立ち寄り、バッテリの充電を行わなければならないことがある。
【0003】
したがって、現在のバッテリ残量で、どの程度走行できるかを示す航続可能距離の情報が、ドライバにとって重要となる。
なお、ドライバによる航続可能距離の把握は、電気自動車の場合に限られず、内燃機関を有する自動車の場合においても必要となる。
【0004】
特許文献1には、航続可能距離を単に数値で表示するものが記載されている。航続可能距離が数値表示されることで、ドライバは航続可能距離を把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−096647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、単に航続可能距離が数値で表示されるだけでは、ドライバは、具体的にどの場所まで走行することができるのかを直感的に把握することが困難である。
ここで、どの場所まで走行できるかを地図上で示すことができれば、ドライバによる直感的な把握が容易となる。
例えば、図14に示すように、現在地を中心として航続可能距離(例えば、100km)を半径とした円Cを、地図上に表示することが考えられる。地図上に航続可能範囲を示す円Cを表示することで、どの場所まで走行することができるのかを、ドライバが直感的に把握するのが容易となる。
【0007】
ところが、航続可能距離を半径とした円Cを地図上に表示させるだけでは、不正確な表示となる場合がある。
つまり、車両は、道路を走行するため、車両がどこまで走行できるかは、どの道路を通るかに依存する。したがって、実際の航続可能範囲は、現在地を中心とする単純な円Cにはならず、円Cの内側までしか走行できない場合もあるし、円Cの外側まで走行できることもある。
【0008】
そこで、道路地図データを用いて、航続可能距離から車両が走行できる経路を演算し、航続可能距離に照らして走行できる道を道路航続可能な道路として表示することが考えられる。
【0009】
しかし、特定の目的地がない状態で、航続可能距離から経路演算をすると、現在地につながる全ての道(細街路などを含めた膨大な数の道)が経路演算の対象となるため、演算時間が大きくなる。また、航続可能距離に照らして走行できる道の数も膨大になるため、走行できる道の表示データも膨大なサイズになる。
【0010】
そこで、本発明は、航続可能な経路演算の演算負荷を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)一の観点からみた本発明は、車両の航続可能経路を演算する装置であって、道路地図データを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記道路地図データに基づいて、前記車両の航続余力が予め定めた値以下になるまでに前記車両が基準地点から走行し得る航続可能経路を求める演算部と、を備えている。
したがって、車両の航続余力が予め定めた値以下になるまでに車両が基準地点から走行し得る航続可能経路を道路地図データに即して求めることができる。
【0012】
前記記憶部は、詳細度の異なる複数の道路地図データを記憶しており、前記演算部は、前記基準地点から前記車両の航続余力が予め定めた値以下になるまでの地点に応じて、前記複数の道路地図データのいずれか一つを選択し、選択した道路地図データを用いて航続可能経路を求める。基準地点から車両の航続余力が予め定めた値以下になるまでの地点に応じて、詳細度の異なる複数の道路地図データのいずれか一つが選択されるため、航続可能経路の全てが詳細度の高い道路地図データだけを用いて、航続可能経路求める演算が行われることを回避できる。
したがって、航続可能経路を求めるための演算負荷を低減することができる。
【0013】
(2)前記記憶部が記憶する前記複数の道路地図データは、第1道路地図データと、前記第1道路地図データよりも道路の詳細度が高い第2道路地図データと、を含み、前記演算部は、前記航続余力が閾値よりも大きくなる地点での航続可能経路を求める際には、前記第1道路地図データを用いて航続可能経路を求め、前記航続余力が前記閾値よりも小さくなる地点での航続可能経路を求める際には、前記第2道路地図データを用いて航続可能経路を求めるのが好ましい。
この場合、航続余力が大きい地点には、詳細度が低い道路地図データが用いられるため、航続余力が大きい地点での演算負荷を低減することができる。
【0014】
(3)前記演算部は、前記第2道路地図データを用いて航続可能経路を求める際には、前記第1道路地図データを用いて既に求めた航続可能経路よりも前記基準地点側の経路が航続可能経路として求められるのを抑制する処理を行うのが好ましい。
この場合、航続可能経路の折り返しを抑制することができる。
【0015】
(4) 前記演算部は、前記航続余力が前記閾値よりも大きくなる地点であっても、求めた航続可能経路での基準地点からの距離が、基準距離を超えない点では前記第2道路地図データを用いて航続可能経路を求め、前記基準距離を超えた地点では前記第1道路地図データを用いて航続可能経路を求めるのが好ましい。この場合、基準地点からの距離が比較的近い場合には、詳細度のより高い第2道路地図データを用いて詳細な航続可能経路を求めることができる。
【0016】
(5)前記演算部は、求めた航続可能経路を、求めた航続可能経路上における前記航続余力の大きさに応じて区別して表示させるための表示データを生成するのが好ましい。この場合、航続可能経路を航続余力の大きさに応じて区別して表示することができる。
【0017】
(6)前記演算部は、求めた航続可能経路を、前記航続可能経路を求めるのに用いた道路地図データの詳細度に応じて区別して表示させるための表示データを生成するようにしてもよい。例えば、詳細度がより低い道路地図データを用いて求めた航続可能経路を、詳細度がより高い道路地図データを用いて求めた航続可能経路よりも太く表示させる表示データを生成する。この場合、詳細度がより低い道路地図データを用いて求めた航続可能経路を太く表示させることができる。
【0018】
(7)前記基準地点における前記航続余力を示す余力情報を取得する取得部を更に備え、前記余力情報は、前記車両のバッテリ残量を示す情報を含むのが好ましい。
【0019】
(8)前記取得部は、前記車両の補機の使用電力を示す情報を更に取得し、前記演算部は、前記車両の補機の使用電力を示す前記情報を用いて、航続可能経路上での航続余力を演算するのが好ましい。この場合、航続余力がより適切に演算される。
【0020】
(9)前記取得部は、前記車両の乗車人数を示す情報を更に取得し、前記演算部は、前記車両の乗車人数を示す前記情報を用いて、航続可能経路上での航続余力を演算するのが好ましい。この場合、航続余力がより適切に演算される。
【0021】
(10)前記演算部は、経時的に変化する動的交通情報を用いて、航続可能経路上での航続余力を演算するのが好ましい。この場合、航続余力がより適切に演算される。
【0022】
(11)他の観点からみた本発明は、コンピュータを、車両の航続可能経路を演算する演算部として機能させるコンピュータプログラムであって、前記演算部は、車両の航続余力が予め定めた値以下になるまでに前記車両が基準地点から走行し得る航続可能経路を求めるものであり、前記基準地点から前記車両の航続余力が予め定めた値以下になるまでの地点に応じて、複数の道路地図データのいずれか一つを選択し、選択した道路地図データを用いて航続可能経路を求めることを特徴とするコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、基準地点から車両の航続余力が予め定めた値以下になるまでの地点に応じて、詳細度の異なる複数の道路地図データのいずれか一つが選択されるため、航続可能経路を求めるための演算負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の航続可能経路演算装置を備えている情報システムの一例を示すブロック図である。
図2】複数の道路地図データを示す図である。
図3】航続可能経路演算装置の処理を示すフローチャートである。
図4】航続可能経路の演算処理を示すフローチャートである。
図5】道路地図データ選択処理を示すフローチャートである。
図6】道路地図データの切り替えを示す図である。
図7】道路リンクの選択に関する説明図である。
図8】バッテリ残量と表示色の関係を示す図である。
図9】航続可能経路の表示例を示す図である。
図10】航続可能経路の表示例を示す図である。
図11】航続可能経路の表示例を示す図である。
図12】航続可能経路の折り返しの説明図である。
図13】走行不可道路リンクの説明図である。
図14】航続可能距離の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[1.情報システム]
図1は、航続可能範囲を定めるのに用いる航続可能経路の演算装置を備えた情報システムの一例を示している。情報システムには、車載装置3と、サーバ5と、を備えている。
サーバ5は、無線通信を行う路側通信機4を介して、無線通信機能を有する車載装置3との間で通信が可能である。
なお、車載装置3は車両に固定的に搭載された装置に限られず、車両上で用いられる装置であればよく、車載装置3としては、車両2に固定的に設置される装置以外に、たとえば、ドライバ(搭乗者)が携帯しているスマートフォンなどの携帯端末であってもよい。
【0026】
本実施形態の車両2は、充電可能なバッテリ7を有しており、このバッテリ7を電源として駆動される走行モータ(主機)によって走行する電気自動車である。なお、車両2は、主機である走行モータ以外に補機を備えている。補機は、ヘッドライト、ワイパー、エアコンなどのように、走行に直接関連しないが、車両2において、バッテリ7の電力を使用する機器をいう。
【0027】
車載装置3は、コンピュータを有しており、この車載装置3を搭載している電気自動車2の情報を取得し、路側通信装置4を介して、サーバ5へ送信する。さらに、サーバ5が生成した情報(後述する表示データなど)は、路側通信装置4を介して、車載装置3へ送信される。
【0028】
また、車載装置3は、ドライバ(搭乗者;ユーザ)が各種の情報の入力操作を行うための入力部3aと、現在位置の情報を取得可能な位置取得部3bと、表示部3cと、を備えている。
入力部3aは、例えばドライバが操作するタッチパネルからなり、ドライバは、文字入力等により、車両の乗車人数など、様々な情報を入力することができる。
位置取得部3bは、例えばGPS機能を有した装置からなり、現在位置の情報を取得する。
表示部3cは、ディスプレイを有して構成され、様々な表示データを画面表示することができる。
また、車載装置3は、車両2のバッテリ7におけるバッテリ残量(残り電力量)の情報、および補機の使用電力量(補機の使用状況)を取得可能である。
【0029】
路側通信装置4は各地域の道路等に多数設置されている。各路側通信装置4は、通信機及び通信制御機を備えており、車載装置3と無線通信可能であり、また、有線(又は無線)によりサーバ5と通信可能である。路側通信装置4は、車載装置3としての携帯端末と無線通信を行う無線基地局であってもよい。
【0030】
サーバ5は、一又は複数のコンピュータからなり、コンピュータプログラム及び各種情報を記憶しているハードディスク等からなる記憶部15と、路側通信装置4と通信を行うための通信インタフェースからなる通信装置16と、演算処理を行う機能を有する演算装置17とを備えている。
【0031】
記憶部15は、各地域の道路地図データ(道路ネットワークデータ)を記憶している道路ネットワークデータベース15aと、交通情報を蓄積している交通情報データベース15bと、を有している。なお、記憶部15は、コンピュータの内部バスまたは外部インタフェースを介して演算装置15がデータを取得可能であればよく、コンピュータに内蔵されている必要はない。
道路ネットワークデータベース15aは、道路ネットワークの情報を有しているほか、道路ネットワークを構成する各道路リンクの長さ、勾配、道路の種類、その他、電気自動車2が各道路リンクを走行するために要するバッテリ7の消費電力を演算するのに必要な静的交通情報を有している。
【0032】
交通情報データベース15bは、経時的に変化する動的交通情報を記憶している。動的交通情報としては、たとえば、道路の渋滞状況、気温、天気、事故の発生などの情報がある。動的交通情報も、道路リンクを走行するために要するバッテリ7の消費電力を演算するために用いられる。
なお、静的交通情報及び動的交通情報は、サーバ5の外部に記憶されていてもよい。この場合、サーバ5は、外部に記憶された静的交通情報又は動的交通情報を必要に応じて取得すればよい。
【0033】
道路ネットワークデータベース15aは、図2に示すように複数層(3層)の道路地図データW,M,Lを有している。それぞれの道路地図データW,M,Lは、ノードと道路リンクとの組み合わせからなる道路リンクの情報を含んでいる。
複数層の道路地図データのうち、第1層である第1道路地図データWは幹線道路地図データであり、第2層である第2道路地図データMは一般道路地図データであり、第3層である第3道路地図データLは詳細道路地図データである。
【0034】
幹線道路地図データWは、高速道路・国道などの幹線道路だけを含んだ道路地図データである。一般道路地図データMは、高速道路・国道などの幹線道路のほか一般道路(道幅5.5m以上)も含んだ道路地図データである。詳細道路地図データLは、幹線道路および一般道路のほかに生活道路(道幅3.3m以上)も含んだ道路地図データである。
【0035】
道路地図データの詳細度は、幹線道路地図データWが最も低く、一般道路地図データM、詳細道路地図データLの順で詳細度が高くなる。
【0036】
[2.航続可能経路演算装置]
サーバ5は、様々な機能を奏する複数の機能部を有しており、これら機能部のうちの一つが航続可能経路検算装置1である。サーバ5は、CPU及び内部メモリ等を有するコンピュータを有しており、このサーバ5を航続可能経路演算装置1として機能させるためのコンピュータプログラムが、記憶部15にインストールされている。この航続可能経路演算装置1が備えている各機能(取得部18、演算部19の機能)は、前記コンピュータプログラムがサーバ5(コンピュータ)によって実行されることで発揮される。
【0037】
図1に示すように、車載装置3は、車両2の航続可能経路の表示データをサーバ5から取得するため、要求情報i1を送信する。要求情報i1は、ドライバ(車載装置3のユーザ)による入力部3aによって行った操作に基づいて送信されてもよいし、又は、周期的に送信されてもよい。
車載装置3は、要求情報i1の送信の際に、要求情報i1とともに、車両2の航続可能経路を演算するために用いられる情報をサーバ5へ送信する。
車両2の航続可能経路を演算するために用いられる情報としては、例えば、車両2の現在地(基準地点)、時刻(現在時刻)、バッテリ7のバッテリ残量、車両2の車両ID(車両2の型式)、車両2の補機の使用電力量、車両2の乗車人数などの情報を含むことができる。
【0038】
サーバ5へ送信される現在地は、位置取得部3bによって取得される。サーバ5へ送信される時刻は、車載装置3が有する計時機能部(図示省略)によって取得される。
サーバ5へ送信されるバッテリ残量は、バッテリ7が有するバッテリ残量監視機能部(図示省略)から取得される。バッテリ残量は、車両2の現在地(現時点)における航続余力を示す余力情報の一例である。
なお、サーバ5へ送信される余力情報としては、バッテリ残量に限られず、燃料残量(エンジンを有する車両2の場合)、バッテリ残量又は燃料残量によって算出される航続可能距離(航続可能残距離)、又は、航続可能な時間を示す情報であってもよい。
また、サーバ5へ送信される余力情報は、車両2の電力消費量を示す情報であってもよい。例えば、サーバ5が車両2の過去の時点におけるバッテリ残量を把握している場合には、車載装置3は、当該過去の時点からの消費電力量を示す情報をサーバ5に送信するようにしてもよい。この場合、サーバは、当該過去の時点のバッテリ残量から消費電力量を減算することで、現時点での車両2のバッテリ残量を求めることができる。なお、消費電力量に代えて、消費燃料量であってもよい。
【0039】
サーバ5へ送信される車両ID(車両型式)は、車両3の制御部(図示省略)から取得してもよいし、車載装置3の記憶装置15に登録されていてもよい。
サーバに送信される補機使用電力は、車両3において補機を制御する制御部(図示省略)から取得してもよいし、車両3において補機を制御する制御部(図示省略)の使用状況を取得して、車載装置3にて補機の使用電力を計算してもよい。
サーバに送信される乗車人数は、入力部3aから入力される。また、入力部3aからの入力がないときは、デフォルト値として設定された人数(例えば、1名又は2名)をサーバ5へ送信してもよい。
【0040】
図3に示すように、サーバ5の取得部18は、車載装置3から送信されてきた要求情報i1とともに、車両2の現在地、時刻(現在時刻)、バッテリ7のバッテリ残量(余力情報)、車両2の車両ID(車両2の型式)、車両2の補機の使用電力量、車両2の乗車人数などの情報を取得する(ステップS1)。
サーバ5は、要求情報i1を取得すると、要求情報i1とともに取得したバッテリ残量(余力情報)などの情報を用いて、車両2の航続可能経路を求める演算を行う(ステップS2)。この演算は演算部19によって行われる。
本実施形態において、航続可能経路は、あるバッテリ残量の車両2が、バッテリ残量がゼロになるまでに現在地から走行し得る道路(経路)をいう。
サーバ5は、航続可能経路を求めると、求めた航続可能経路を、車載装置3の表示部3cにて道路地図上に表示させるための表示データを生成し、その表示データを車載装置3へ送信する(ステップS3)。
【0041】
車載装置3は、サーバ5から表示データを受信すると、その表示データを用いて表示画面を生成し、表示部3cに表示させる。車載装置3は、表示データに基づき、車両2の航続可能経路となっている道路を、表示用道路地図上に色付きの線で強調して示した表示画面を生成する。
これにより、車両2のドライバは、車両2がどこまで航続可能であるかを直感的に理解するのが容易となる。
【0042】
[3.航続可能経路の演算]
図4は、航続可能経路の演算(ステップS2)の手順を示している。
航続可能経路の演算では、演算に用いる航続余力値としてのバッテリ残量の設定処理(ステップS21)、使用する道路地図データW,M,Lの選択処理(ステップS22)、航続可能経路となる道路リンク抽出処理(ステップS23)、バッテリ残量算出処理(ステップS24)、及び、航続可能経路の演算処理の終了確認処理(ステップS25)が行われる。
【0043】
設定処理(ステップS21)では、車載装置3から取得した情報に含まれるバッテリ残量の情報(現在地における航続余力を示す余力情報)を、航続可能経路演算における航続余力値としてのバッテリ残量として設定する。
航続余力値としてのバッテリ残量は、航続可能経路の演算によって既に求めた航続可能経路を車両2が走行したと仮定した場合におけるバッテリ残量(航続可能経路上における航続余力値)を算出するために用いられる(ステップS24)。
【0044】
なお、航続余力値は、バッテリ残量でなくてもよい。例えば、航続余力値は、車両2の燃料残量であってもよい。また、車載装置3から取得した情報に含まれるバッテリ残量(又は燃料残量)の情報に基づいて算出される航続可能距離(航続可能残距離)を航続余力値として用いてもよい。さらに、航続余力値は、航続可能な時間であってもよい。
【0045】
道路地図データの選択処理(ステップS22)では、航続余力値としてのバッテリ残量(航続余力)に応じて、航続可能経路を抽出(選択)するために用いる道路地図データを、記憶部15に記憶された複数の道路地図データW,M,Lの中から一つ選択する。
ここで、航続余力値としてのバッテリ残量は、現在地(基準地点)からの距離(道のり)の大きさに応じて減少する。したがって、道路地図データの選択は、現在地(基準地点)から航続余力がなくなるまでの地点に応じて、選択される道路地図データW,M,Lが異なるものとなる。
【0046】
図5は、選択処理(S22)の詳細な手順を示している。道路地図データは、演算中において既に求めた航続可能経路のその時点での終点(図7の点X)におけるバッテリ残量(航続余力値)に応じて決定される(ステップS221)。なお、航続可能経路を求める演算の最初の段階では、既に求めた航続可能経路は存在しないので、車両2の現在地(基準地点)におけるバッテリ残量(航続余力値)に応じて、道路地図データが選択される。
【0047】
本実施形態では、航続余力値としてのバッテリ残量に関し、第1閾値と第2閾値とが設けられている。本実施形態では、第1閾値をバッテリ残量=10%(満充電時の電力量を100%としたときの残電力の割合)とし、第2閾値をバッテリ残量=20%とした。
なお、閾値の値は、特に限定されるものではない。閾値の数も特に限定されるものではなく、選択可能な道路地図データの数に応じて、1個の閾値が設定されているだけでもよいし、3個以上の閾値が設定されていてもよい。
【0048】
前述のステップS221において、バッテリ残量が第1閾値(10%)未満であると判定された場合、最も詳細な第3道路地図データ(第3層)Lが選択される(ステップS222)。
ステップS221において、バッテリ残量が第1閾値(10%)以上第2閾値(20%)未満であると判定された場合、第3道路地図データLよりも詳細度が低い第2道路地図データ(第2層)Mが選択される(ステップS223)。
ステップS221において、バッテリ残量が第2閾値(20%)以上であると判定された場合、基本的には、第2道路地図データMよりも詳細度が低い第1道路地図データ(第1層)Wが選択される(ステップS225)。
【0049】
つまり、本実施形態では、航続余力値としてのバッテリ残量が小さくなるにつれて(既に求めた航続可能経路の終点が現在地から離れるにつれて)、航続可能経路を求めるために用いられる道路地図データW,M,Lは、より詳細度の高いものへと変更されていく。
【0050】
ただし、本実施形態では、航続余力値としてのバッテリ残量が第2閾値(20%)以上である場合であっても、車両2の現在地(基準地点)からの航続距離Dによっては、第3道路地図データL又は第2道路地図データMが選択されることもある。
具体的には、ステップS221にて、航続余力値としてのバッテリ残量が第2閾値(20%)以上であると判定されても、航続距離Dによって、いずれかの道路地図データW,M,Lが選択される(ステップS224)。
【0051】
本実施形態では、距離Dに応じて選択される道路地図データW,M,Lを決定するために、第1基準距離と第2基準距離とが設けられている。本実施形態では、第1基準距離を10kmとし、第2基準距離を20kmとした。
なお、基準距離の値は、特に限定されるものではない。基準距離の数も特に限定されるものではなく、選択可能な道路地図データの数に応じて、1個の基準距離が設定されているだけでもよいし、3個以上の基準距離が設定されていてもよい。
【0052】
ステップS224において、航続距離Dが、第1基準距離(10km)未満であると判定された場合、最も詳細な第3道路地図データ(第3層)Lが選択される(ステップS226)。
ステップS224において、前記距離Dが、第1基準距離(10km)以上第2基準距離(20km)未満であると判定された場合、第3道路地図データLよりも詳細度が低い第2道路地図データ(第2層)Mが選択される(ステップS227)。
ステップS224において、前記距離Dが、第2基準距離(20km)以上であると判定された場合、第2道路地図データMよりも詳細度が低い第1道路地図データ(第1層)Wが選択される(ステップS225)。
【0053】
つまり、図6(b)に示すように、求めた航続可能経路による(演算上の)航続距離が長くなるにつれて、航続可能経路を求めるために用いられる道路地図データW,M,Lは、より詳細度の低いものへと変更されていく。
したがって、本実施形態では、現在地近傍及び航続余力がなくなる直前の地点では、詳細度のより高い道路地図データLを用いて航続可能経路が求められるのに対し、現在地からある程度離れており、しかも航続余力値としてのバッテリ残量が十分にある地点の場合には、詳細度のより低い道路地図データWを用いて航続可能経路が求められることになる。
【0054】
図4に戻り、ステップS23の抽出処理では、ステップS22にて選択された道路地図データW,M.Lを用いて、航続可能経路となる道路リンクが抽出される。
図7は、道路リンクの抽出の仕方を示している。図7における地点Xは、既に求めた航続可能経路の先端にある道路リンクRの終点ノード(現在地からみた航続可能経路の終点の一つ)を示している。なお、航続可能経路を求める演算の最初の段階では、既に求めた航続可能経路は存在しないので、車両2の現在地(基準地点)が地点Xとなる。
【0055】
ステップS23の抽出処理では、ステップS22にて選択された道路地図データW,M.Lにおいて、地点Xのノードに接続されている未選択(未抽出)の道路リンクA,B,Cが存在する場合、これらの道路リンクA,B,Cが、既に求めた航続可能経路に追加される道路リンクとして選択(抽出)される。したがって、航続可能経路は、地点Xからさらに道路リンクA,B,Cそれぞれへ分岐して延長される。つまり、航路リンクA,B,Cは更新された航続可能経路の新たな一部となる。
【0056】
ただし、現在地を出発点として地点Xを終点とする航続可能経路を車両2が走行したと仮定した場合に、地点Xにおいて航続余力値であるバッテリ残量(地点Xにおけるバッテリ残量)がゼロ(航続余力無し)となる場合には、新たな道路リンクA,B,Cの選択(抽出)は行われない。
また、選択した道路地図データW,M,Lにおいて地点Xに接続されている未選択(未抽出)の道路リンクが存在しない場合も、当然に、道路リンクの選択(抽出)は行われない)。
【0057】
ステップS23の抽出処理は、求めた航続可能経路を車両2が走行したものと考えた場合のバッテリ残量(航続余力)がゼロになるまで繰り返し行われる。
したがって、航続可能経路は、現在地を中心に放射状に網目のように広がる道路ネットワークとして求められる。
【0058】
ここで、航続可能経路をより適切に求めるには、詳細度の高い道路地図データを用いるのが好ましい。ただし、航続可能経路を求める演算を、詳細度の高い道路地図データだけを用いて行うと、ステップS23において抽出される道路リンクの数が多くなり、したがって、バッテリ残量の演算など、航続可能経路を求める演算全体における演算負荷が大きくなる。
一方、本実施形態のように、詳細度が低い道路地図データを用いる場合、あるノードに接続されている道路リンクの数が比較的少ないため、選択される道路リンクの数が少なくなり、演算量の増加を抑えることができる。本実施形態では、航続可能経路の一部は詳細度の低い道路地図データを用いて求められるため、演算量を抑えることができる。
【0059】
ステップS23において、航続可能経路を構成する新たな道路リンクA,B,Cが抽出されると、新たな道路リンクの終点ノードXA,XB,XC(更新された航続可能経路の終点)それぞれにおけるバッテリ残量(航続余力値)が算出される(ステップS24)。
ステップ24にて算出されたバッテリ残量は、前述のステップS23及び後述のステップS25において用いられる。
【0060】
本実施形態では、航続余力値としてのバッテリ残量の演算は、記憶部15の道路地図データW,M,Lだけでなく、静的交通情報及び動的交通情報、並びに車載装置3から取得した情報(時刻、車両ID(車両型式)、補機使用電力量、乗車人数)も用いて行われる。
【0061】
簡単にバッテリ残量を求める場合、地点XA,XB,XCにおけるバッテリ残量の算出は、地点Xにおけるバッテリ残量と道路リンクA,B,Cの距離に応じたモータの消費電力がわかればよい。
ただし、車両2のモータの消費電力は、距離だけでなく、道路の勾配によっても変化するため、静的交通情報に含まれる道路の勾配の情報も考慮した演算を行うことで、より適切なバッテリ残量を算出することができる。また、同じ距離でも事故・渋滞によって車両の消費電力は変化するため、該当する道路リンクにおける事故・渋滞情報などの動的交通情報も考慮した演算を行うことで、より適切なバッテリ残量を算出することができる。
【0062】
また、車両の型式によってモータ性能などが異なるため、車両ID(車両型式)を考慮した演算を行うことで、より適切なバッテリ残量を算出することができる。
さらに、車両2の補機(ヘッドライト、ワイパー、エアコン)の使用電力量によって、車両の消費電力は影響を受けるため、補機の使用電力量を考慮した演算を行うことで、より、適切なバッテリ残量を算出することができる。
さらにまた、乗車人数によって車両2の消費電力は影響を受けるため、乗車人数を考慮した演算を行うことで、適切なバッテリ残量を算出することができる。
【0063】
算出されたバッテリ残量(推定バッテリ残量)は、航続可能経路を構成する道路リンク毎に、記憶部15に蓄積される。選択(抽出)された道路リンク毎に、抽出(選択)に用いられた道路地図データW,M,Lを示す情報も、記憶部15に蓄積される。これらの道路リンク毎のバッテリ残量及び道路地図データを示す情報は、車載装置3における表示のための表示データの生成に用いられる。
【0064】
道路ネットワークとして求められた航続可能経路における数多くの終点のすべてにおいて、航続余力値であるバッテリ残量がゼロ(航続余力無し)となる場合には(ステップS25)、ステップS24の抽出処理を含む処理ループから抜け出し、航続可能経路の演算処理(ステップS2)が終了する。
なお、本実施形態では、バッテリ残量がゼロ(航続余力無し)となるまで、航続可能経路を求め続けたが、航続可能経路演算は、バッテリ残量(航続余力)が予め定めた値(例えば、バッテリ残量が5%)以下になるまで行えばよい。
【0065】
航続可能経路の演算処理(ステップS2)が終了すると、演算部19は、前述のデータを生成し、送信を行う(ステップS3)。ここで、車載装置3に送信される表示データについて説明する。
表示データには、ステップS2において求められた航続可能経路を構成する道路リンクを示す道路リンク情報が含まれる。道路リンク情報が表示データに含まれることで、車載装置3では、表示用の道路地図上において、航続可能経路として求められた道路やそれに基づく航続可能範囲を示すことができる。
【0066】
本実施形態では、表示データには、さらに、航続可能経路として求められた道路を、バッテリ残量(推定バッテリ残量)に応じて区別(色分け)して表示するための情報(区分情報)が含まれる。
本実施形態において、区分情報は、道路リンク情報が示す道路を、車載装置3側において何色で表示するかを示す色情報となっている。バッテリ残量と車載装置3における表示色との関係を、図8に示した。
演算部19は、記憶部15に蓄積された道路リンク毎のバッテリ残量(推定バッテリ残量)に基づいて、図8に示す関係に従って、航続可能経路を構成する道路リンク毎の表示色を決定し、決定した表示色を示す情報を、道路リンク毎の色情報(区分情報)とする。
【0067】
表示データに色情報(区分情報)が含まれることで、車載装置3の表示部3cでは、航続可能経路として求められた道路をバッテリ残量(航続余力)の大きさに応じて区別(色分け)して表示することができる。バッテリ残量の大きさに応じて航続可能経路を区別(色分け)して表示することで、バッテリ残量と航続可能地点との関係を、ドライバ(ユーザ)が直感的に理解するのが一層容易となる。
【0068】
なお、車載装置3では、区分情報に応じて色分け表示する必要はなく、例えば、3次元表示が可能な車載装置3では、バッテリ残量を高さで示すものを、2次元の道路地図上に表示してもよい。
【0069】
また、本実施形態では、表示データには、航続可能経路を求めるために(航続可能経路を構成する道路リンクを抽出するために)用いた道路地図データW,M,Lに応じて、航続可能経路である道路を示す線の太さを異ならせるための線幅情報が含まれる。
本実施形態では、詳細度の最も低い第1道路地図データを用いて求められた航続可能経路(道路リンク)の道路を示す線幅を最大で、用いられた道路地図データの詳細度が高くなるにつれて、道路を示す線幅が小さくなるように線幅情報が狭くなるように設定される。
【0070】
つまり、第1道路地図データを用いて抽出された道路リンクの表示時の線幅を「大」とすると、第2道路地図データを用いて抽出された道路リンクの表示時の線幅は「中」となり、第3道路地図データを用いて抽出された道路リンクの表示時の線幅を「小」となる。
【0071】
詳細度の低い道路地図データを用いて航続可能経路を求めた場合、その航続可能経路の周辺には、詳細度の低い道路地図データでは省略されているけれども、実際には道路が存在する。したがって、詳細度の低い道路地図データを用いて求められた航続可能経路は、網目の粗い道路ネットワークとなるが、詳細度の低い道路地図データが用いられたということはバッテリ残量が比較的多いため、網目の中にも到達可能な可能性が高い。
【0072】
そこで、求めた航続可能経路を、前記航続可能経路を求めるのに用いた道路地図データの詳細度に応じて区別して表示させるための表示データを生成するようにしてもよい。例えば、詳細度の低い道路地図データでは省略されている航続可能経路周辺の道路(航続可能経路としては抽出されていない道路)にも航続可能であることを示すため、詳細度の低い道路地図を用いて抽出された道路リンクの表示時の線幅を太くすることで、航続可能経路としては抽出されていない道路への航続可能性をドライバー(ユーザ)に示すことができる。
【0073】
例えば、国道が航続可能経路として選択されている場合に、その国道を示す表示時の線幅は、国道の周辺の道路もカバーするような太い線とすることで、その国道周辺にも航続可能であることをドライバー(ユーザ)に示すことができる。
【0074】
[4.航続可能経路の表示例]
図9は、表示データを受信した車載装置3が、表示部3cに表示した道路地図画面を示している。なお、図9では、簡略化のため、縦横(東西南北)方向だけの整列した道路を示したが、実際には、現実の道路形状に応じたものとなる。
図9において、最も細い線が、航続可能経路ではない道路を示し、それよりも太い線は、航続可能経路であることを示している。
【0075】
図9に示すように、航続可能経路が、航続可能経路ではない道路とは区別して表示(実際には、色分け表示)されるため、ドライバー(ユーザ)は、表示部3cに表示された道路地図上において、現在地からの航続可能範囲を直感的に把握することができる。航続可能範囲の最外周部が、バッテリ残量(航続余力)がゼロになる地点である。
なお、図9では、航続可能経路のバッテリ残量に応じた色分け表示は、簡略化のため省略されている。
【0076】
図9では、航続可能経路を示す太い線には、より太い線とより細い線の2種類ある。図9では、簡略化のため、航続可能経路を求めるために用いた道路地図データの種類を2種類とし、より詳細度が低い道路地図データWを用いて求めた航続可能経路をより太い線で示し、より詳細度が高い道路地図データMを用いて求めた航続可能経路をより細い線で示した。
【0077】
図5に示す選択処理(ステップ22)において、第3道路地図データ選択に関するステップS222,S226を省略した場合、図9に示すように、現在地の近傍Nの航続可能経路と、バッテリ残量(航続余力)が小さくなる遠方範囲Fの航続可能経路と、は、より細い線で示される。現在地近傍N及び遠方範囲Fの間の周状の範囲Iの航続可能経路は、より太い線で示される。
【0078】
バッテリ残量(航続余力)が小さくなる遠方範囲Fでは、正確にどの地点まで到達できるか把握できたほうがよいため、細街路などの細い道路も含めて航続可能経路を示すほうがよいが、バッテリ残量が比較的大きい範囲Iでは、幹線道路など比較的大きな道路だけを示しても問題はない。
また、現在地N近傍においては、細街路など様々な道路を走行する可能性がある(現時点からすぐに幹線道路を走行するとは限らない)ため、現在地近傍では、より詳細に航続可能経路を示すことで、適切な表示となる。
【0079】
なお、図10に示すように、現在地近傍の航続可能経路も荒い表示で行ってもよい。つまり、図5のステップS224,226,227を省略してもよい。航続可能範囲の最外周部の表示を重視する場合、図10のような表示であっても適切なものとなる。
【0080】
図11は、航続可能経路の表示例の参考例である。図11では、一種類の道路地図データMだけを用いて航続可能経路を求めた場合の表示画面を示している。つまり、図5の選択処理を省略したものである。なお、図11においても、航続可能経路のバッテリ残量に応じた色分け表示は、簡略化のため省略されている。
【0081】
[5.下位層の道路地図データにおける折返抑制処理]
さて、本実施形態では、航続可能経路を求めるのに用いられる道路地図データが、より詳細度の低いものから、より詳細度の高い道路地図データに切り替わることがあるが、この場合、図12に示すような現象が生じる。
【0082】
図12(a)では、詳細度のより低い道路地図データ(例えば第1道路地図データW)を用いて求められた航続可能経路をハッチングで示した。図12(a)において点線は、詳細度のより低い道路地図データ(例えば第1道路地図データW)に含まれる道路を示している。図12(a)の点線で示すように、道路地図データに含まれる道路は少ない。
また、図12(a)においてハッチングで示される航続可能経路は、推定バッテリ残量に応じた表示色で表示され、ここでは黄緑色YGの色で示されるものとする。
【0083】
図12(a)の状態まで航続可能経路が求められた状態で、道路地図データが、より詳細度の高い道路地図データ(例えば道路地図データM)に切り替わるものとする。より詳細度の高い道路地図データMには、図12(b)の点線で示すように、図12(a)よりも多くの道路(道路リンク)が存在する。
したがって、より詳細度の高い道路地図データMに切り替わると、航続可能経路を構成する新たな道路リンクの選択の際には、図12(b)において、既に求めた航続可能経路(黄緑YGで示される道路)の周辺の道路リンクの多くが選択可能になる。
【0084】
ここでは、より詳細度の高い道路地図データMを用いて選択された道路リンクの道路の色は、黄緑色YGよりもバッテリ残量の少ないことを示す黄色Yで示されるものとする(図8参照)。
図12(b)は、図12(b)において点線で示される道路のほとんどが、新たな航続可能経路となり、新たな航続可能経路が黄色Yで表示される。
この場合、図12(b)に示すように、図12(a)で既に求められていた航続可能経路(黄緑色YGで示される道路)よりも、現在地に近い道路が、黄色Yで示されることになる。つまり、バッテリ残量がより少ないことを示す黄色Yが、バッテリ残量がより多いことを示す黄緑色YGよりも現在地側に表示されることになる。
【0085】
このような表示は、より詳細度の高い道路地図データMに切り替わると、より詳細度の低い道路地図データWで到達できた地点から、現在地側へ折り返すように経路(道路リンク)を求めることにより生じる。
つまり、より詳細度の高い道路地図データMに切り替わると、より詳細度の低い道路地図データWには存在しなかった道路リンクを選択することが可能になるため、そのような道理リンクを選択することで現在地に近づくように折り返す経路を求めることが可能となるからである。
【0086】
このような経路の折り返しが生じても、航続可能経路をバッテリ残量(航続余力)に応じて区別(色分け)して表示しない場合には、特に問題ない。
しかし、航続余力)に応じて区別(色分け)して表示する場合には、バッテリ残量がより少ないことを示す表示色Yが、バッテリ残量がより多いことを示す表示色YGよりも現在地側に表示されることになり、ドライバー(ユーザ)に不自然さを与える。
【0087】
そこで、本実施形態では、図13に示すように、航続可能経路を求めるために用いられる道路地図デーが、より詳細度の低い道路地図データWから、より詳細度の高い道路地図データMに切り替わると、それまでに求めた航続可能経路(より詳細度の低い道路地図データWを用いて選択された道路リンク群)が、走行(横断を含む)不可の道路リンクとして設定される(折返抑制処理)。
【0088】
より詳細度の高い道路地図データMを用いて、航続可能経路を構成する新たな道路リンクの抽出(選択)が行われる場合、走行不可の道路リンクを通過(横断)するような道路リンクの選択は禁止される。
例えば、図7の地点Xから新たな道路リンクを選択する場合において、道路リンクA,Bが走行不可の道路リンクとして設定されているものとする。道路リンクA,Bが走行不可でない場合、航続可能経路として未選択の道路リンクBを選択することが可能であるが、ここでは、道路リンクA,Bを通過(横断)することが禁止されているから、道路リンクBは選択されない。つまり、地点Xから新たに航続可能経路が延長されることはない。
【0089】
航続可能経路は、多くの場合、現在地を中心とした網目状の道路ネットワークが放射状に形成されるため、既に航続可能経路となっている道路リンクを走行不可とすることで、網目状の道路ネットワークの内側に折り返すような航続可能経路(道路リンク)が生じることを抑制することができる。
したがって、走行不可な道路(道路リンク)が設定されることで、より詳細度の高い道路地図データへの切り替えが生じても、より詳細度の低い道路地図データを用いて既に求めた航続可能経路よりも現在地(基準地点)側の経路が、新たに航続可能経路として求められるのが抑制される。よって、航続可能経路の折り返しが抑制され、不自然な表示となることを抑制することができる。
【0090】
より詳細度の低い道路地図データを用いて既に求めた航続可能経路よりも現在地(基準地点)側の経路が航続可能経路として求められるのを抑制する処理(折返抑制処理)としては、走行不可な道路(道路リンク)の設定する処理に限られず、より詳細度の低い道路地図データを用いて既に求めた航続可能経路よりも現在地(基準地点)側の未抽出(未選択)の道路リンクを、抽出済(選択済)の道路リンクとみなす処理であってもよい。
抽出済(選択済)の道路リンクとみなすことで、既に求めた航続可能経路よりも現在地(基準地点)側の未抽出(未選択)の道路リンクが、新たに航続可能経路として求められることを抑制できる。
【0091】
[6.付記]
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0092】
1:航続可能経路演算装置
2:車両(電気自動車)
5:サーバ
7:バッテリ
15:記憶部
17:演算装置
18:取得部
19:演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14