特許第6025260号(P6025260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025260
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】食肉のスライス方法
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/28 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   B26D3/28 610Q
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-127947(P2013-127947)
(22)【出願日】2013年6月3日
(65)【公開番号】特開2014-233828(P2014-233828A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年4月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000152815
【氏名又は名称】株式会社日本キャリア工業
(72)【発明者】
【氏名】越智 一志
(72)【発明者】
【氏名】大西 秀明
【審査官】 矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−115931(JP,A)
【文献】 特開平10−236642(JP,A)
【文献】 実開昭49−107072(JP,U)
【文献】 特開2007−084313(JP,A)
【文献】 特公昭55−018214(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/28
B65G 47/64
B65G 47/68−47/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉箱と刃物が相対移動して肉箱から送り出された食肉を周期的にスライスするスライサー2台を、スライス肉片が切り出される方向に沿って並列させて配置し、
夫々のスライサーから切り出されるスライス肉片が、所望のスライス回数分毎にトレーに投入され盛り付けられるようにし、
該トレーを、スライス回数分のスライス周期の半周期分をずらせた状態で交互に排出させるようにし、
その排出方向を、スライス肉片が切り出される方向に対し直交させるとともに、トレーを互いに対向する方向に移送させるようにし、
該トレーが、トレーを移送する夫々の移送帯の先端に設けられた移送方向を90度変換するカーブコンベヤと、平行に移送されるトレーを単列にする合流コンベヤを経て単一コンベヤ上に排出されるようにしたことを特徴とする食肉スライス方法。
【請求項2】
スライス肉片が、肉箱に複数の小肉塊を相互に接触させて詰め込み一体化させて同時にスライスしたコマギレ肉であことを特徴とする請求項1に記載の食肉スライス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食肉のスライス方法に関し、より詳しくは肉箱と刃物が相対移動して食肉が周期的にスライスされるスライサーを2台一組で使用し、夫々のスライサーから切出され周期的に排出されるスライス肉片を単一のコンベヤ上に単列になるように合流させて搬出するスライス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する特許文献1は、丸刃に対して肉タンク(肉箱)を水平方向に往復動させ肉塊をスライスするスライサーであって、丸刃が水平方向反対側に配置された対称形状のスライサーを一対設けて夫々のスライサーから切出される肉片を作業者が回収する食肉スライス装置が開示されている。
【0003】
この特許文献1において切出されるスライス肉片は人手によって回収されるが、比較的生産規模の大きい食肉加工場などにおいては複数のスライサーから切り出されるスライス肉片を夫々排出コンベヤで受けてから単一のコンベヤに単列になるよう合流させて以降の工程に引き渡すことが多い。この場合、順序よく整然と合流させなければ以降の計量、異物混入検査などの工程がスムーズに進まない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−39386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述のような状況に鑑み、2台一組の食肉スライサーを使用し夫々のスライサーから周期的に切出されるスライス肉片を単一のコンベヤに単列になるように順序よく整然と合流させることができるスライス方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明においては、肉箱と刃物が相対移動して肉箱から送り出された食肉を周期的にスライスするスライサー2台を、スライス肉片が切り出される方向に沿って並列させて配置し、夫々のスライサーから切り出されるスライス肉片が、所望のライス回数分毎にトレーに投入され盛り付けられるようにし、該トレーを、スライス回数分のスライス周期の半周期分をずらせた状態で交互に排出させるようにし、その排出方向を、スライス肉片が切り出される方向に対し直交させるとともに、トレーを互いに対向する方向に移送させるようにし、該トレーが、トレーを移送する夫々の移送帯の先端に設けられた移送方向を90度変換するカーブコンベヤと、平行に移送されるトレーを単列にする合流コンベヤを経て単一コンベヤ上に排出されるようにしたことを特徴とする食肉スライス方法とすることで目的を達成する。
また、スライス肉片が、肉箱に複数の小肉塊を相互に接触させて詰め込み一体化させて同時にスライスしたコマギレ肉であことが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る食肉スライス方法によれば、2台一組の食肉のスライサーを使用し夫々のスライサーから周期的に切出されるスライス肉片を単一のコンベヤに単列になるよう順序よく整然と合流させることができるので以降の工程がスムーズに進められる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に供される2台一組の夫々のスライサーにけるクランク機構によって往復動される肉箱の動きを概念的に表した線図である。
図2】同2台一組のスライサーから排出されるスライス肉片が合流するまでの流れを示す平面図である。
図3】同スライサーの側面図である。
図4】同正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に供される食肉のスライサーは特に限定されるものではないが、食肉を搭載して先端から送出す肉箱と、肉箱における食肉の送出し口付近に位置して食肉の先端をスライスする刃物とが相対移動することで肉箱に搭載された食肉を周期的にスライスし、スライス肉片を次工程へ向けて排出するものであればよい。
また、切出されるスライス肉片も厚みが1〜2mm程度の薄切りから10〜30mm程度の厚切りまで全てに対応する。
スライスされる原料肉は通常比較的大形の部分肉が多いが、複数の小肉塊を相互に接触させて肉箱に詰め込み一体化させて同時にスライスしたコマギレ肉と呼ばれるものにも適用される。
本実施例においては、コマギレ肉を対象とし、切出されたコマギレ肉が販売用の小トレーに盛付けられて次工程まで排出されるスライサーとしているが限定されるものではない。
【0010】
図3および図4に示されるようにコマギレ肉の原料の小肉塊が詰め込まれる肉箱1は、肉箱1の後部の左右から一体的に突設された支持軸3、3が機台2から立設された支柱に支持され、肉箱1が支持軸3,3を中心として水平位置付近における一定区間を周期的に上下に往復動できるようされている。
4は機台2に据え付けられたサーボモーターであってこのサーボモーター4の出力軸に設けられたクランク機構5が肉箱1に連結されて肉箱1を周期的に往復動させる。
肉箱1には底部コンベヤ6が幅方向一杯に後部から出口に亘って敷設されており、広く用いられる手段なので詳述はしないが適宜サーボモーターに連結されて駆動される。
また、肉箱1の左右両側には側壁7、7が後部から出口に亘って立設されるとともに、肉箱1の出口付近の上部位置には、上部押圧部材8が設けられる。この上部押圧部材8は必ずしもコンベヤでなくとも単なる平板状のものでもよい。又、側壁7,7は単なる平板状であってもよいが、コンベヤで構成されると送り込み性能が向上してスライス厚みの変動が少なくなり一度に切り出されるスライス肉の量が安定する。
【0011】
このように底部に底部コンベヤ6と、両側部に側壁7,7と、上部に上部押圧部材8とを有した肉箱1の出口には送り出し方向に位置調節されてスライス厚みを規制する当て板9が設けられている。この当て板9の上端部には切り出し口を隔ててバンドナイフ10が水平方向に走行自在に掛け回され、クランク機構5によって上下方向に往復動する肉箱1が上動(往動)するときに、肉箱1に詰め込まれた複数の小肉塊の先端がバンドナイフ10によって切削されてコマギレ肉となって切り出し口から切り出される構成である。
【0012】
スライサーの切り出し口の下方位置には、始端部を臨ませて移送面となる表面が平滑なベルトコンベヤ11が設けられる。このベルトコンベヤ11は、切出されるコマギレ肉を受けてから後述するコマギレ肉が投入され盛付けられるトレーへの投入位置まで延設されている。
【0013】
次にベルトコンベヤ11の終端部から下方位置に待機する、コマギレ肉が盛り付けられる販売用の小トレー12への盛付けに係わる構成について説明する。
ベルトコンベヤ11の終端部付近の移送面には、移送されたコマギレ肉を剥ぎ取るローラ13が、コンベヤベルト11の移送面との間隙がコマギレ肉の厚み以下となるよう接近乃至接触させた状態でコンベヤベルト11の走行方向とは逆方向に走行するように設けられる。
【0014】
ローラ13の下方位置であって所定のコマギレ肉の落下距離を隔てた投入位置へトレー12を移送するトレー移送手段14が設けられる。トレー移送手段14自体の構成については公知技術なので詳細には記載しないが、本例においてはコンベヤ11の移送方向に対して直交してトレー12が移送されるように設けられていて、多数のトレー12を上下方向に積み重ねて保持するトレータンク15から、コマギレ肉の切り出しに関連して制御手段の指令にもとづき、トレー12を一個ずつ取り出して係止片を有した無端帯からなる移送帯16で投入位置を経て次工程まで移送し排出する。
スライサーから切出されるコマギレ肉をトレーに盛付けないで次工程に送り出す場合には、移送帯16を、平ベルトなどを使用したコンベヤに置き換えればよい。
【0015】
なお、ベルトコンベヤ11の終端部は、適宜機構によってベルトコンベヤ11の走行方向に沿って、停止中のトレー12の巾寸法内の所定範囲を往復移動可能に構成されていてトレー内への落下位置が変更可能である。
【0016】
一個のトレーへの盛付量を多くしたいときなど必要に応じてトレー12を、移送帯16によってベルトコンベヤ11の移送方向に直交する方向に沿って移動させて、トレー12の長さ方向におけるコマギレ肉の落下位置を変更して均らされた状態に盛付けられるようにすることもできる。
さらに、ベルトコンベヤ11の終端部を移動させてコマギレ肉の落下位置を変更することと組合わせて、大形のトレーへ複数回数分のスライス肉を、升目状に分割した箇所に落下させて整然と盛り付けることもできる。
このようにしてスライサーから切出されるコマギレ肉は、所望のスライス回数分毎にトレー12に盛付けられて次工程へ向けてトレーごと排出される。
【0017】
次に、上述したようなスライサーを2台一組で使用して夫々のスライサーから周期的に切出されるコマギレ肉が所望のスライス回数分毎に盛付けられ、移送帯16から排出されたトレー12を単一のコンベヤ上に単列になるよう合流させて搬出させる構成について説明する。
2台のスライサーA,Bは図2にアウトラインで示されるように並列させて配置する。ただしトレー移送手段14はトレー12を互いに対向して移送させるよう平面対称に構成される。
【0018】
スライサーA,Bから切出されるコマギレ肉は、夫々のスライサーからの切り出しに関連してベルトコンベヤ11の終端部下方のコマギレ肉の落下位置へ移送されて停止中のトレー12内に落下して盛り付けられる。このとき、盛付けられるコマギレ肉は一回にスライスされる量を単位として所望の回数分が盛付けられるように制御する。
【0019】
ここでは、理解を容易にするためにトレーに投入され盛付けられるコマギレ肉の量は最小のスライス回数一回分として説明する。
図1は、クランク機構によって往復動される肉箱の動きを概念的に表した線図であって、A,B2台一組のスライサーの内、実線表示されたスライサーAは肉箱1が往動する半周期で食肉をスライスする。
細線表示のスライサーBを、Aに対して半周期ずらせて肉箱1が移動するように肉箱1を、クランク機構5を介して往復動させるサーボモーターを制御すると、スライサーAの肉箱1が往動して食肉をスライスし終えて復動を始めるときに、Bの肉箱1が往動を始めてAの肉箱1が復動を終えるまでにBの肉箱1が往動して食肉がスライスされる。
即ち、図1の線図における上半分に表示された山形がコマギレ肉の切出される状態を示していて、AとBから半周期ずらせた状態で交互にコマギレ肉が切出されることが理解できよう。
本例ではトレーへの盛付量を最小のスライス回数1回分としたが、一つのトレーに複数回数分を盛付ける場合においては、トレー12に複数回分のコマギレ肉が投入される間トレー12を停止させるが、複数回数分を一周期とし、その半周期分をずらせた状態で夫々の移送帯16からコマギレ肉が盛り付けられたトレー12を交互に排出させるように制御する。
【0020】
図2に示されるように、スライサーAとBから切出されるコマギレ肉が盛付けられたトレー12が次工程に向けて排出される行程は、移送帯16の先端からトレー12を受取って、移送方向を90度変換するカーブコンベヤ18,18と、カーブコンベヤ18からトレー12を受け取り川下の合流コンベヤ20まで移送する並走コンベヤ19,19と、合流コンベア20上に設けられた誘導板21、21と、誘導板21で誘導されるトレー12を単列にして川下に向けて搬出する単一コンベヤ22とで平面対称に構成される。
この行程におけるトレーの流れは図2において、スライサーAから切出されたコマギレ肉が盛付けられたトレー12aは、理解を容易にするために斜線で区別しているがスライサーBから切出されたコマギレ肉が盛付けられたトレー12b(斜線なし)とは、排出周期が半周期ずれた状態で交互に秩序よく単一コンベヤ22上に単列に並んで川下に向けて搬出されるので以下の計量、異物混入検査などの工程がスムーズに進行する。
【0021】
以上コマギレ肉をトレーに盛り付けて排出させるスライス方法について説明したが、トレー移送手段を単なるベルトコンベヤに置き換えて、単一の部分肉をスライスした肉片を複数枚毎に一部を重ね合わせた鱗列状にして1パック分毎に仕切られた状態でベルとコンベヤによって半周期ずらせた状態で排出させるようにすることにも適用できる。
また、比較的厚切りされた肉片は一枚毎に適宜間隔を保って排出させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0022】
1 肉箱
2 機台
4 サーボモーター
5 クランク機構
10 バンドナイフ
11 ベルトコンベヤ
12 トレー
14 トレー移送手段
16 移送帯
図1
図2
図3
図4