(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025266
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】湿分分離器構成
(51)【国際特許分類】
F22B 37/30 20060101AFI20161107BHJP
F28B 9/08 20060101ALI20161107BHJP
B01D 45/08 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
F22B37/30 A
F22B37/30 L
F28B9/08
B01D45/08 B
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-117559(P2014-117559)
(22)【出願日】2014年6月6日
(65)【公開番号】特開2014-238255(P2014-238255A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2014年6月6日
(31)【優先権主張番号】13170731.7
(32)【優先日】2013年6月6日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(72)【発明者】
【氏名】ローリス パドヴァン
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ ズガンバーティ
【審査官】
黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−112977(JP,A)
【文献】
特開昭51−45376(JP,A)
【文献】
特開昭49−60057(JP,A)
【文献】
特開昭47−5440(JP,A)
【文献】
特開2011−78874(JP,A)
【文献】
特開2012−125757(JP,A)
【文献】
特開2002−126429(JP,A)
【文献】
特開昭54−90851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/30
B01D 45/08
F28B 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気および水滴の混合物を含む流れ(20)の蒸気から水滴を分離するための湿分分離器構成(10)であって、引用した流れ(20)は、この分離が達成されるように湿分分離器構成(10)を通過し、該湿分分離器構成(10)は、前記流れ(20)と平行に向きづけられた複数の第1プレート(11)を有する、湿分分離器構成(10)において、
前記複数の第1プレート(11)はチャネル(30)を形成しており、これらのチャネル(30)を前記流れ(20)が通過するようになっており、前記チャネル(30)は、前記流れ(20)における蒸気から分離された水滴を次第に収集するために、前記流れ(20)の方向に沿って漸進的な横断面変化を有し、
前記第1プレート(11)及び第2プレート(11’)のそれぞれの対のカップリングは、ベンチュリチャネル(40)を構成し、該ベンチュリチャネル(40)は、蒸気流線が衝突壁から解離しないことを助け、これにより、この壁側における再飛散効果を防止し、
前記第2プレート(11’)は、チャネル(30)を形成するための複数の窓開口(70)を有しており、複数の前記窓開口(70)は、前記流れ(20)のための通路を形成していることを特徴とする、蒸気および水滴の混合物を含む流れの蒸気から水滴を分離するための湿分分離器構成(10)。
【請求項2】
前記複数の第1プレート(11)は、波形に曲げられた複数のシートを含む、請求項1記載の湿分分離器構成(10)。
【請求項3】
前記チャネル(30)は、蒸気からの小さな水滴の収集を増大させるために、前記流れ(20)が、増大した乱流分散に曝されるところに中間領域(101)が形成されるように構成されている、請求項2記載の湿分分離器構成(10)。
【請求項4】
前記複数の第1プレート(11)のそれぞれ1つは、その壁側(13)のうちの一方において、複数の排水チャネル(60)を構成する複数の長手方向溝(14)を有しており、これにより、界面蒸気/水膜せん断応力効果による水膜搬送を回避している、請求項1から3までのいずれか1項記載の湿分分離器構成(10)。
【請求項5】
前記第1プレート(11)及び前記第2プレート(11’)のそれぞれの対のカップリングは、小さな水滴を捕捉し、該水滴を前記流れ(20)における蒸気から分離し、チャネルのこの側に収集された水膜がキャリオーバされることを防止するために、第1の凹面状キャビティ(104)を構成している、請求項1から4までのいずれか1項記載の湿分分離器構成(10)。
【請求項6】
第1の凹面状キャビティ(104)によってまだ捕捉されていない水滴を捕捉し、チャネルのこの側に収集された水膜がキャリオーバされるのを防止するために、第2の凹面状キャビティ(103)が前記第1プレート(11)の端部に構成されている、請求項5記載の湿分分離器構成(10)。
【請求項7】
壁段部(102)が形成されている領域において蒸気によって加えられるせん断力の作用から水膜を隔離するために、湿分分離器構成(10)の端部において2つの前記第1プレート(11)および前記第2プレート(11’)が合わせられたときに、壁段部(102)も構成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の湿分分離器構成(10)。
【請求項8】
複数の前記窓開口(70)は、前記湿分分離器構成(10)における振動を防止する、請求項1から7までのいずれか1項記載の湿分分離器構成(10)。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の湿分分離器構成(10)を含む熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に発電所において使用される、高められた有効性を提供する湿分分離器構成に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴分離器としても知られる湿分分離器は、蒸気から水滴を分離するための装置である。湿分分離器は、ガスまたは蒸気から液滴を除去するためにオイルおよびガス工業において広く用いられている。概して、以下で説明するように、複数の理由からミスト除去が必要である。
・1つの理由は、発電所のサイクル効率を高めることである。通常、火力発電所では、ボイラから発生された蒸気は、いわゆる高圧タービン(HPT)、中圧タービン(MPT)および低圧タービン(LPT)において複数回膨張させられる。原子力発電所では、ボイラから送られてくる過熱または飽和した蒸気のHPTにおける一回目の膨張の間、HPTシリンダに沿って核生成現象が生じ、HPT排気における結果的な作動流体は、所定の蒸気品質を有する湿り蒸気である。効率の理由からMPTおよびLPTの上流において湿り蒸気を再熱する前に、飽和蒸気からの湿分の機械的な分離は、湿分分離器によって行われる:再熱器束へ送られる結果的な作動流体は、湿分含有量の低い湿り蒸気である。水の蒸発の潜熱は著しく高いので、湿分蒸発のために多くのエネルギを用いる代わりに、湿り蒸気における水分を排除し、収集された水を熱力学的サイクルにおいて送り戻すことが好ましく、蒸発プロセスによって生ぜしめられる、束における熱負荷をも制限する。
・湿分含有量を除去することによって達成される別の利点は、腐食損傷からの下流の機器の保護である。1つのタイプの湿分分離器は、ガスまたは蒸気相から液滴を除去するために、オイルおよびガス工業ならびに発電工業において広く使用されているいわゆる波形プレートミストエリミネータである。ほとんどの分離器は、慣性の原理を利用し、これにより、大きな水滴は、これらの水滴が運搬されている空気/蒸気流の流れの方向が変化させられたときに、より直線で移動し続けようとする。これらの波側プレートミストエリミネータは、空気/蒸気流路と平行に向けられた、狭い間隔を置いて配置された複数の波形の曲げられた金属シートを含む。二相流(蒸気および水滴の混合物)は、蛇行したチャネルを強制的に通過させられ、流れ方向を繰り返し変化させられる。慣性によりこのような方向転換に追従することができない水滴は、主流から逸脱し、チャネル壁部に衝突し、壁部に付着および凝集する。液体の量が十分に大きい場合、膜および液体細流が形成され、これらは、重力によって波形プレートミストエリミネータから継続的に排水される。液滴の慣性および蒸気の抗力は、チャネルを通る液滴の運動を制御する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来技術における湿分分離器と比較して有効性が高められた湿分分離器に関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、特に発電所において使用される湿分分離器構成に関する。湿分分離器構成は、複数のプレート、好適には波形に曲げられた複数の金属シートを備え、これらのプレートは、ガス/蒸気および水滴を含みかつ引用された湿分分離器構成を通過する流れと平行に向けられており、これにより、水滴は、流れた湿分分離器構成を通過した後に蒸気から有効に分離されている。蒸気から分離された水滴は、プレート壁部に収集され、これにより、これらの水滴の量が十分に大きい場合に、液体膜または細流が形成され、これらは、次いで、重力によってプレートから排水される。
【0005】
本発明の湿分分離器構成は、以下の特徴を有する:
−各プレートは、非衝突壁側および衝突壁側を有し、非衝突壁側は滑らかな表面を有するのに対し、衝突壁側は、存在する膜厚さを減じ、ひいては臨界ガス/蒸気速度における再飛散のリスクを低減し、かつプレート壁部に蓄積した液体膜を排出することを助けるための、複数の排出チャネルを構成した複数の長手方向溝を有する。
−各プレート対のカップリングは、プレート壁部からの蒸気流線分離/解離による再飛散効果を防止することを目的とするベンチュリチャネルを形成している。
−各プレート対のカップリングは、堆積した水滴を捕捉し、高い/蒸気流速度に直接的に曝されることを防止するための、第1の凹面状のキャビティを構成している。
−第2の凹面状のキャビティは、第1の凹面状のキャビティによってまだ捕捉されていない水滴を捕捉し、これらの水滴を蒸気から分離するために、湿分分離器構成におけるプレートの端部に構成されている。
−壁段部が形成されている領域において蒸気によって加えられるせん断力の作用から水膜を隔離するために、湿分分離器構成の端部において2つのプレートが合わせられたときに、壁段部も構成されている。
−まだ残っており、まだ収集されていない小さな水滴の分離を増大し、蒸気からのこれらの小さな水滴を分離するために、増大した乱流分散を有する中間領域が形成されている。
−プレートに複数の窓開口が形成されており、これらの窓開口は、蒸気のための通路を形成し、同時に構造的装置として作用し、湿分分離器構成における振動を防止する。
【0006】
したがって、本発明による湿分分離器構成は、高い有効性を有する保持システムを提供することができ、漸進的な水滴収集が達成される。
【0007】
本発明の、前記課題、及び付随する利点の多くは、さらに容易に認められるであろう。なぜならば、それらは、添付の図面に関連して見た場合に以下の詳細な説明を参照することによってさらに理解されるからである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明による、高められた有効性を提供する湿分分離器構成の平面図である。
【
図2】本発明による、高められた有効性を提供する湿分分離器構成の側面図である。
【
図3】本発明による、高められた有効性を提供する湿分分離器構成の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、
図1、
図2または
図3のいずれかに示したように、複数のプレート11、好適には波形に曲げられた複数の金属シートを含む湿分分離器構成10に関する。複数のプレート11はチャネル30を形成しており、これらのチャネル30を通って流れ20が案内される:プレート11は、引用された湿分分離器構成10を通過する流れ20と平行に向けられており、この流れ20は、蒸気および水滴の混合物を含む。水滴は、流れた湿分分離器構成10を通過している間に、蒸気から分離される。プレート11の壁部に収集された水滴の量が十分に大きくなると、液体膜が形成され、この液体膜は次いで重力によってプレート11から排水される。湿分分離器構成10における各プレート11は、非衝突壁側12と、衝突壁側13とを有し、非衝突壁側12は滑らかな表面を有し、衝突壁側13は、複数の長手方向溝14を有し、これらの長手方向溝14は、プレート壁部に収集された水滴の排出を助け、平均的な壁膜厚さを減じ、ひいては、せん断力の効果を減じ、その結果として、蒸気/水膜境界面のレベルにおいて作用する水抗力を減じることによって、水膜から蒸気を分離するための、複数の排出チャネル60を形成している。プレート11および11’(
図2参照)の各対のカップリングは、ベンチュリチャネル40を形成しており、このベンチュリチャネル40は、逆の圧力勾配によって誘発される壁の輪郭からの蒸気流線分離/解離による再飛散効果を防止する。その他に、プレート11および11’の各対のカップリングは、水滴を捕捉し、かつ非衝突壁側12における水膜搬送を防止するために、第1の凹面状のキャビティ104をも形成している。
【0010】
各プレート11は、滑らかな非衝突壁側12を有するのに対し、他方の側は、衝突壁側13において長手方向溝14を有する。これらの長手方向溝14は、流れ20から収集された水滴の排水を助けるために設けられており、これにより、水膜抗力を防止/制限する。排水チャネル60を有するプレート11のそれぞれのプレートの衝突壁側13は、チャネル30を通過するときの流れ20における運搬蒸気の方向転換がプレート11の衝突壁側13にほとんど衝突する傾向を有するので、水滴を逸らせる。
【0011】
排出チャネル60は、3つの機能を有する:
a)水膜が排水チャネル60に進入すると、(運搬媒体である流れ20と、水膜との間の)水膜表面に作用する界面せん断力を減少させ、湿分分離器構成10の出口に向かう水膜搬送をできるだけ回避する。
b)排水チャネル60における水自体の蓄積により、水の重力を増大させ、排水を助ける。
c)平均的な壁膜厚さを減少させる。
【0012】
2つのプレート11および11’のカップリングは、一種のベンチュリチャネル40を生じ、非衝突壁側に収集された水を捕捉することを目的とする第1の凹面状のキャビティ104を生じる。ベンチュリチャネル40は、(ベンチュリチャネルの直前におけるチョーキングを回避するために)ベンチュリ自体の内部に水膜を吸い込み、それと同時に、この種の波形プレート湿分分離器のための文献において再飛散として知られる効果である、ベンチュリチャネル40の入口に対応するプレート11の湾曲の直後に生じる、搬送媒体(流れ20)の乱流分離による、プレート11の衝突壁側13からの水膜解離を回避することを目的とする。ベンチュリチャネル40の反対側において、チャネル30の初期幅は、ベンチュリ自体によって占められる空間のために減少させられており、窓開口およびチャネル30の曲げによるチャネル30の残りの部分の横断面の減少により、流れ20における残りの水滴は加速させられ、これらの水滴は、流れ20(運搬媒体)の方向の強い変化をたどることができないので、これらの水滴は、プレート11の非衝突壁側12に衝突し、これにより、水膜を形成し、この水膜は、第1の凹面状キャビティ104により収集および排水される。
【0013】
本発明の湿分分離器構成10は、まだ排水されていないならば、ベンチュリチャネル40から搬出される水膜を排水するために、また、まだ第1の凹面状キャビティ104によってまだ捕捉されていない水滴を捕捉し、これらの水滴を蒸気(
図2)から分離するために、プレート11の端部に構成された少なくとも第2の凹面状キャビティ103を有する。その他に、壁段部102が形成されている領域において蒸気によって加えられるせん断力の作用から水膜を隔離するために、湿分分離器構成10の端部において2つのプレート11および11’が合わせられたときに、壁段部102も構成されている。
【0014】
図2は、増大した乱流分散を備えた中間領域101を示しており、この中間領域101は、まだ残っておりかつまだ収集されていない小さな液滴の収集を増大するように構成されており、これらの小さな水滴を流れ20における蒸気から分離する。
【0015】
本発明の湿分分離器構成10は、流れ20への通路を形成すると同時に構造的装置として作用し、チャネル30を形作り、湿分分離構成10における振動を防止する、複数の窓開口70(
図3参照)をも有する。
【0016】
一般的に、湿分分離器は、海洋ガスタービンおよび工業用途において使用される。発電所では、複数の理由からミスト除去が必要である:
−1つの理由は、HPT(高圧タービン)、MPTおよびLPT(中圧および低圧タービン)によって複数回蒸気が膨張させられる熱サイクルを扱う発電所のサイクル効率を高めることであり、蒸気は、膨張させられた後、次のタービンによって処理される前に、そのエンタルピを増大させるために再熱プロセスを受ける。蒸発の潜熱はかなり高いので、湿り蒸気の湿分含有量は、蒸発プロセスによって除去する代わりに機械的に分離される。
−湿分含有量を除去することによって達成される別の利点は、腐食損傷からの下流の機器の保護である。
【0017】
従来技術における公知の構成に対する本発明の湿分分離器構成10の主な利点は以下のとおりである:
−再飛散効果が生じるためのより高い動的圧力
−分離器プレート(ガター)の底部に水を収集するために、より高いプレートおよび結果的により少ない構成部材が必要である
−蒸気の方向に関するより短いプレート
−モジュール性。
【0018】
本発明は、好適な実施の形態に関して完全に説明されたが、本発明の範囲に変更が加えられてよく、本発明をこれらの実施の形態によって限定されるものと考えず、しかし以下の請求項の内容による。
【符号の説明】
【0019】
10 湿分分離器構成
11,11’ プレート
20 流れ(流れ及び水滴)
30 チャネル
12 プレートの非衝突壁側
13 プレートの衝突壁側
14 長手方向溝
40 ベンチュリチャネル
101 増大した乱流分散を備えた中間領域
102 壁段部
103 第2の凹面状キャビティ
104 第1の凹面状キャビティ
60 排水チャネル
70 窓開口