(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記接地電極(120b)の一部を切り欠いたスリット溝状の通気部(121)、又は、上記接地電極(120c)を貫通する貫通孔状の通気部(121c)を一箇所以上に具備する請求項1又は2記載の点火装置(1b、1c)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、高過給、高圧縮、高EGR、リーン燃焼による高効率、低NOXを達成するエンジン等の難着火性の内燃機関に用いられ優れた着火性と耐久性を示す内燃機関点火装置である。
図1を参照して本発明の第1の実施形態における点火装置1の概要について説明する。
点火装置1は、内燃機関5に設けられ機関燃焼室52内にその先端部が特定の長さだけ突出するように設けられている点に特徴を有する。
具体的な突出量等の詳細に付いては、
図2A〜
図2Fを参照して後述する。
電子制御装置(ECU)3は、内燃機関5の運転状況に応じて、点火装置1に高エネルギを供給する高エネルギ電源2から、所定の周波数の高周波電圧を、所定の印加時間だけ印加して、点火装置1の先端部において、非平衡プラズマを発生させ、燃焼室内の混合気との反応によりプラズマ火炎核を発生させるものである。
【0018】
本発明の点火装置1に用いられる高エネルギ電源2は、例えば、周波数15kHz〜50MHzの範囲で、ECUからの点火信号に応じた適切なタイミングで点火装置1に発振することによって、熱プラズマを発生させることなく、非平衡プラズマを発生させることができる。
このとき、点火装置1の先端側に設けた少なくとも接地電極120が燃焼室52内に所定の高さH
120だけ突出しているため、燃焼室52内に発生したタンブル渦等の強い筒内気流TMBが、接地電極120に外壁に衝突して流速が弱められた状態で、接地電極120の開口部に放電空間130内の気体を燃焼室52側に引き込む引込流れを形成しつつ、接地電極120の下流側に筒内気流TMBと逆向きの渦VTXを形成する。
なお、本発明において、筒内気流TMBをTMBの符号を付して表現してあるが、筒内気流TMBは、タンブル渦に限定するものではなく、スワール等を含み、燃焼室内に発生する気流の総称として用いている。
【0019】
高エネルギ電源2から点火装置1に所定の周波数のエネルギが投入され、放電空間130内に非平衡プラズマが発生し、放電空間130内に引き込まれた混合気と直接反応して初期火炎核FMKが発生する。
このとき、燃焼室52内に接地電極120が突き出しているので、火炎核FMKが筒内気流TMBによって吹き消されることなく、点火装置1の先端に保持された状態となり、火炎核FMKの淀み部STGで、新気との混合による火炎成長が促進されるため、早期に火炎成長を安定化させ、難着火性の機関の点火を安定して実現することができる。
【0020】
本発明の適用される内燃機関5について極簡単に説明する。
内燃機関5は、筒状のシリンダ50と、その上面を覆うシリンダヘッド51と、シリンダ50の内側で昇降可能に保持されたピストン53の頂面とで、燃焼室52を区画し、シリンダヘッド51に設けた吸気筒511と、これを開閉する吸気バルブ512と、シリンダヘッド51に設けた排気筒513と、これを開閉する排気バルブ514と、吸気筒510内の吸気圧力を検出する吸気圧センサ54、ピストン53の上下動を伝達するコンロッド531、ピストン53の上下動を回転運動に変換するクランクシャフト532、クランクシャフト532の回転角を検出するための回転角検出子551及び回転角センサ55、ECU3からの信号により、所定のタイミングで所定量の燃料を燃焼室52内に噴射する燃料噴射弁4等によって構成されている。
ECU3は、吸気圧センサ54の検出圧力からエンジン負荷を算出し、回転角センサ55からエンジン回転数、及び、燃焼サイクルを算出し、所定のタイミングで、燃料噴射弁4から所定量の燃料噴射を実施すると共に、所定のタイミングで点火装置1に所定の電圧を印加して、放電空間130内に非平衡プラズマを発生させ、燃焼室52内の混合気に点火する。
なお、本発明において、内燃機関5を特に限定するものではなく、ガソリン、ディーゼル、気体燃料等の種々の燃料系に適用可能である。
【0021】
図2Aを参照して、より具体的な実施形態における点火装置1について説明する。
第1の実施形態における点火装置1は、
図2Aに示すように、少なくとも、例えば、アルミナ、ジルコニア等の耐熱性の誘電材料を用いて略有底筒状に形成した中心誘電体110と、その中心に保持され、ステンレス、ニッケル、ニッケル合金、銅等の良電導性金属材料を用いて長軸状に形成した中心電極100と、ステンレス、ニッケル、ニッケル合金等の導電性材料を用いて略筒状に形成され中心誘電体110を保持するハウジングを兼ねて中心誘電体110の先端側に配設された略環状の接地電極120とからなる。
本発明の点火装置1では、放電時に熱プラズマを発生しないので、本質的に電極の消耗が起こり難いので、必ずしも、イリジウム等の耐熱性に優れた特別な材料を用いる必要はなく、一般的な点火プラグに用いられている材料を適宜選択できる。
【0022】
本実施形態においては、中心誘電体110の先端、及び、接地電極120の先端が、燃焼室52側に突出して設けられており、少なくとも、接地電極突出高H
120を、シリンダヘッド51の内壁を基準として、例えば、
3mm以上、25mm以下の範囲に設けている。
さらに、中心誘電体突出高H
110は、少なくとも接地電極突出高H
120より大きく設定されている。
接地電極突出高H
120を3mmより低くすると、筒内気流TMBを弱めることができず、筒内気流が接地電極120の開口部を通過する際に強い引込み力が発生し、放電空間130内に作用し、初期火炎核FMKが吹き飛ばされ本発明の効果を発揮できない。
【0023】
一方、接地電極突出高H
120を20mm以上で、火炎成長を加速させる効果は一定となることが判明し、25mmより高くすると、筒内気流TMBを点火装置1の先端方向に向かって整流する作用が強くなり、放電空間130内に発生した非平衡プラズマを吸い出す力が強くなり、却って着火性が低下する虞がある。
また、中心誘電体突出高H
110が一定以上となると、ピストン53の頂面との距離が短くなり、接地電極120によって筒内気流TMBの放電空間130よりも、中心誘電体110とピストン53との間で放電を起こすことになり、発生した非平衡プラズマが火炎核を生成する前に広い燃焼室内に直ちに拡散してしまう虞もある。
【0024】
そこで、中心誘電体110の先端表面から上死点におけるピストン53の頂面までの距離D
110/53が中心誘電体110の表面から接地電極120の内側表面までの距離D
110/120よりも長くなるように中心誘電体突出高さH
110を決定するのが望ましい。
また、接地電極突出高H
120を中心誘電体突出高H
110よりも高くすると、中心電極100の先端に電界集中を招き、中心誘電体110の絶縁が破壊され、接地電極120と中心電極100との間でアーク放電を発生する虞もある。
【0025】
さらに、本実施形態において、放電空間130の接地電極120の先端から、基端側底部までの放電空間高H
130は、シリンダヘッド52の内周面を基準面として、基端側底部までの距離が10mm以下となるように設定してある。
このように、放電空間高H
130を制限することで、放電空間130内に発生した非平衡プラズマのエネルギを効率良く点火に利用することが可能となる。
本発明においては、接地電極120によって、筒内気流TMBの流速が制限されているので、引込力が相対的に弱くなっており、本発明の範囲を外れ、10mmを超えて放電空間を設けても、基端側奥に発生した非平衡プラズマは点火に利用されず、エネルギの無駄となる虞がある。
【0026】
本発明においては、中心誘電体110の先端を平らにし、外周を丸めた形状に形成してあるが、これは、中心誘電体110の先端と接地電極120との間でアーク放電を招くことなく、より接地電極120の開口端に近い位置でのストリーマ放電を誘発し、混合気との反応をできる限り速やかに行わせるためのものである。
中心誘電体110の先端を球面状に形成した場合には、アーク放電は確実に防止される反面、中心誘導体110の側面外周と接地電極120との間のストリーマ放電が起こり易くあるため、放電空間130の基端側底部に近い位置での放電エネルギが無駄になる虞がある。
【0027】
図2B、
図3A〜
図4Cを参照して、第2の実施形態における点火装置1aについて説明する。
上記実施形態においては、中心誘電体突出高H
110を接地電極突出高H
120よりも僅かに高く設定した例を示したが、本実施形態においては、接地電極突出高H
120aを中心誘電体突出高H
110の5分の1以上、5分の4以下とした点が相違する。
なお、本実施形態において、上記実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、相違点のある構成については、対応する構成と同じ符号に枝番としてアルファベットを付加して示してあるので、一致する点については説明を省略し、相違点を中心に説明する。以下の実施例においても同様である。
【0028】
本実施形態のように、接地電極突出高H
120と中心誘電体突出高H
110との段差を大きくすることによって、点火装置1の先端側に発生する渦がより複雑な流れを形成し、放電空間130a内に発生した初期火炎核FMKと新気との混合を促進させより、早期の火炎成長を達成できる。
図3A、
図3B、
図3Cに本実施形態における非平衡プラズマ放電から火炎核FMKの成長に至るまでの様子を模式的に示す。
【0029】
図3Aに示すように、点火装置1aに、高エネルギ電源1から、所定の周波数の高電圧を所定時間印加すると、中心誘電体110の表面から接地電極120aの内周壁に向かってストリーマ放電が開始される。次いで、
図3Bに示すように、放電空間130内に存在する混合気と非平衡プラズマとが直接反応し、火炎核を発生する。さらに、
図3Cに示すように、放電空間130内に発生した火炎核は、筒内気流TMBによって下流側に引き込まれるが、接地電極120aの開口部における筒内気流TMBの流速は、燃焼室52内に突き出した接地電極120aとの衝突によって抑制されているため、引込力も抑制されており、吹き飛ばされることがない。さらに、中心誘電体110及び接地電極120aの下流側には、渦VTXが発生しているため、発生した火炎核FMKと燃焼室52内に存在する混合気との撹拌が行われ、火炎核FMKが点火装置1aの先端部に留まった状態で速やかに成長する。
また、後述の試験結果により、接地電極120aを、中心誘電体110より短くすることによって、冷熱損を低減し、第1の実施形態よりもさらに、早期に火炎成長できることが判明した。
【0030】
図2Cを参照して、第3の実施形態における点火装置1bについて説明する。
上記実施形態においては、燃焼室52側に突出する接地電極120を略環状に形成した例を示したが、本実施形態においては、接地電極120bの一部をスリット溝状に切り欠いた通気部121を一箇所以上に形成した点が相違する。
なお、本図においては、周方向に向かって等間隔に3箇所に設けた例を示してある。
通気部121を介して放電空間130内に新気が入り込むため、より複雑な渦を形成し、放電空間130内に発生した非平衡プラズマと混合気との反応による体積点火によって発生した火炎成長がさらに促進される。
なお、本実施形態は、上記第1、第2のいずれにも適用可能で、接地電極突出高H
120bは、3mm以上、中心誘電体突出高H
110より低くい範囲で任意に設定することができる。
【0031】
さらに、通気部121の開口幅W
121は、0.5mm以上、4mm以下とするのが望ましい。
本実施例の範囲を外れ通気部121の開口幅W
121を大きくしすぎると、接地電極120bによる筒内気流TMBの速度を抑制することができなくなり、本発明の効果が発揮されなくなる。
また、通気部121は、1個以上、6個以下の範囲で設けるのが望ましい。
通気部121の数が多すぎると、開口幅W
121を大きくしたのと同様、本発明の効果が発揮されなくなる。
【0032】
図2Dを参照して、第4の実施形態における点火装置1cについて説明する。
第3の施形態においては、通気部121として、スリット溝状に形成した例を示したが、本実施形態においては、通気部121cとして、接地電極120cを貫通する貫通孔状に形成した点が相違する。
通気部121cの開口径φ
121cは、φ0.5mm以上、φ5mm以下の範囲で設定するのが望ましい。
通気部121cは、1個以上、6個以下の範囲で設けるのが望ましい。
上記実施形態と同様、上限を超えると筒内気流TMBの流速が抑制されず、本発明の効果が発揮されない。
【0033】
図4A、及び、
図5A〜5Cを参照して、比較例1として示す従来の点火装置1zについて説明する。本発明の点火装置1と対応する構成について同じ符号を用い、相違する部分にzの枝番を付してある。以下の比較例においても同様とする。
比較例1として示す点火装置1zは、特許文献1にあるような従来の点火装置を代表するものであり、比較例1においては、中心誘電体110zの先端、及び、接地電極120zの先端が共に、シリンダヘッド52の内壁面と略面一となるように配設されており、燃焼室52内に突出していない。
また、放電空間高H
130zは、本発明の放電空間高H
130に比べて遙かに高い。
点火装置1zに高エネルギ電源から所定の周波数の高電圧を印加すると、
図5Aに示すように、放電空間130z内にストリーマ放電が開始され、非平衡プラズマが発する。
このとき、放電空間130z内の混合気との反応により火炎核を形成し得るが、
図5Bに示すように、点火装置1zにおいては、筒内気流TMBが接地電極120yの先端側を通過する際に、強い引込力が作用する。
【0034】
このため、
図5cに示すように、放電空間130z内に発生した非平衡プラズマが、燃焼室52内に放出され、点火装置1yの先端から離れた位置に拡散する。
したがって、比較例1の点火装置においては、非平衡プラズマと混合気との直接的な反応による体積点火を引き起こさず、非平衡プラズマは、圧縮自着火や、火花放電着火をする際に着火性を改善する着火性向上物質として作用するに留まる。
【0035】
図4Bを参照して、比較例として示す従来の点火装置1yについて説明する。
比較例2においては、中心誘電体110yが燃焼室52内に大きく突出している点が比較例1と相違するが、接地電極120yが、シリンダヘッド52の内周壁と略面一に形成されている点は比較例1と同様である。
比較例2においては、筒内気流TMBが、中心誘電体110yに衝突し、中心誘導体110yの長手軸方向に沿った流れが形成され、中心誘電体110yの下流側には渦を発生する。
しかし、筒内気流TMBの流速が早い状態で中心誘電体110yに衝突するため、発生する軸方向の流れが強く、しかも直接放電空間130yに渦の影響が作用するため、強い引込流が作用し、早期に非平衡プラズマが放電空間130y内から排出されるため、火炎核の成長が促進されない。
【0036】
図6を参照して比較例と共に本発明の効果を確認するために行った試験結果について説明する。
本試験結果は、燃焼室内に10m/sの流速の筒内気流が発生した状態で、各実施形態において放電後の火炎伝播の様子を写真撮影したものである。
試料No.1、No.2、No.3は、それぞれ、上述の点火装置1、点火装置1a、点火装置1bとして示したものである。比較例1として、点火装置1zを用いた。
比較例1においては、点火装置1zの先端における着火が確認されず、点火装置1を用いた場合に、点火装置1の先端において火炎核の成長が観察され、点火装置1aにおいて、さらなる火炎成長が観察され、点火装置1bにおいて、さらに早期の火炎成長が観察された。
【0037】
図7を参照して、本発明の効果を確認するために行った試験結果について説明する。
本試験においては、上述の点火装置1、1a、1b、1c及び比較例2として示した点火装置1yを用いて、火炎成長速度の比較を行った。
横軸は、点火開始からの時間、縦軸は、それぞれの時間における写真撮影した火炎の面積を示す。
本図に示すように、本発明の点火装置は、比較例2に比べて、最大で3.1ms程度、一定の火炎面積に到達するまでの火炎成長時間を短くできることが判明した。
【0038】
図8Aから
図8Hは、点火装置の違いによる燃焼室52内に発生する筒内気流TMBの違いをシミュレーションした流れ解析図である。
図8Aに示すように、比較例1においては強い筒内気流TMBの影響により、放電空間130z内の気体が引き込まれ点火装置1zから遠い位置に運ばれることが判る。
図8Bに示すように、接地電極突出高H
120及び中心誘電体突出高H
110を2mmとしても、筒内気流TMBへの影響は少ない。
図8Cに示すように、接地電極突出高H
120を5mmとし、中心誘電体突出高H
110を6mmとしたとき、筒内気流TMBの抑制効果が見られ、接地電極120の下流側に渦VTXが発生した。
図8Dから
図8Fに示すように、接地電極突出高H
120を10mmから25mmの範囲で、中心誘電体突出高H
110を10mmから30mm以下の範囲で変化させたときに接地電極開口部における筒内気流TMBの流速を抑制しつつ、下流側に渦VTXが形成される。
図8Gに示すように、中心誘電体110yのみを燃焼室52内に突出させた場合、下流側に渦VTXが形成されるが、放電空間130y内の気体が渦流VTXに直接的に引き込まれることが判明し、
図8Hに示すように、接地電極突出高H
120を30mm以上とすると、下向きの流れが強くなる上に、渦VTXの中心が、点火装置1の先端から遠くなるため、火炎核FMKを点火装置1の先端付近に留める効果が却って低下する虞があることが判明した。
【0039】
さらに、燃焼室内に気流を発生していない状態と、10m/sの流速の気流を付加した状態で、中心誘電体突出高H
110を変化させた場合の火炎伝播速度Vfに対する効果の違いを計測した結果を
図9に示す。
火炎伝播速度Vfは、所定時間毎の火炎の広がる様子を写真撮影し、火炎の大きさの変化を速度換算したものである。
本図に示すように、燃焼室内に気流が発生していない状態(@0m/s)では、中心誘電体突出高H
110を変えても、火炎伝播速度Vfに変化はないが、燃焼室内に流速10m/sの気流を発生させた状態(@10m/s)においては、中心誘電体突出高(H
110)を3mm以上としたときに、火炎伝播速度Vfの上昇が認められ、10mm以上とすることで、急激な火炎伝播速度Vfの向上が認められた。中心誘電体突出高(H
110)を20mm以上突出させても火炎伝播速度Vfの向上効果は一定となる。
このことから、上述のシミュレーション結果と合わせて考えると、少なくとも接地電極突出高H
120を3mm以上とすることによって筒内気流TMBを点火装置1の先端側を通過する
際の速度を弱めつつ、下流側に渦VTXを形成して火炎を点火装置1の先端位置に留め、混合気との反応を促進できると考えられる。
【0040】
以上により、以下の知見を得た。
(A)燃焼室52内に強い筒内気流TMBが発生する内燃機関5に設けられ、少なくとも、長軸状の中心電極100と、該中心電極100を覆う有底筒状の中心誘電体110と、略環状の接地電極120と、中心電極100と接地電極120との間に所定の周波数の高電圧を所定時間だけ印加して、中心誘電体110によって中心電極100と接地電極120との絶縁を保持した状態で、中心誘電体110と接地電極120との間に区画した略筒状の放電空間130内に、放電を行う高エネルギ電源2とを具備し、放電によって発生した非平衡プラズマと上記放電空間130内に存在する混合気とを反応せしめて、機関5の点火を行う点火装置であって、少なくとも、接地電極120が機関5の燃焼室52内に向かって所定の接地電極突出高H
120をもって突出すると共に、中心誘電体110が、接地電極突出高H
120より大きい中心誘電体突出高H
110をもって突出することにより、発生した火炎を点火装置先端の淀み部に留め、火炎伝播速度を向上させることができる。
(B)接地電極突出高H
120を中心誘電体突出高H
110の5分の1以上5分の4以下(例えば、中心誘電体突出高H
110を15mmとした場合に、接地電極突出高H
120を3mm以上、12mm以下とする。)とすることで、強い筒内気流が存在する場合でも上述の火炎伝播速度の向上効果を発揮できる。接地電極突出高H
120を一定以上に維持することで、筒内気流が直接的に点火装置1の先端に作用し強い引き込み力を発生するのを抑制しつつ、中心誘電体突出高H
110よりも僅かに低く設定することにより初期火炎核の発生位置をより先端側に配置させ、更なる火炎伝播速度の向上を図ることができる。(C)接地電極120bの一部を切り欠いたスリット溝状の通気部121、又は、接地電極120cを貫通する貫通孔状の通気部121cを一箇所以上に設けることで、点火装置1b、1cの先端に発生した火炎核と混合気との撹拌が促され、更なる着火性の向上を図ることができる。
(D)中心誘電体110の先端表面から燃焼室52を区画するピストン53の頂面までの距離D
110/53が、中心誘電体110の表面から接地電極120の内側表面までの距離D
110/120よりも長くなる範囲で中心誘電体突出高H
110を設けることによって、強い筒内気流の発生している中心誘電体110の先端とピストン53の頂面との間で放電を起こすことなく、確実に中心誘電体110の表面と接地電極120との間でストリーマ放電を起こし、接地電極120によって覆われた放電空間130内に非平衡プラズマを発生させ、安定した着火を実現できる。
(E)具体的には、接地電極突出高H
120を3mm以上、25mm以下の範囲で設定するのが望ましい。
(F)具体的には、中心誘電体突出高H
110を
接地電極突出高H120より大きく、30mm以下の範囲で設定するのが望ましい。