(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025360
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】液面位置計測装置及び原子力施設
(51)【国際特許分類】
G01F 23/18 20060101AFI20161107BHJP
G21C 17/035 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
G01F23/18
G21C17/02 DGDP
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-72231(P2012-72231)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-205107(P2013-205107A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】東 淳一
(72)【発明者】
【氏名】吉次 信
【審査官】
山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−034421(JP,A)
【文献】
特開昭59−176626(JP,A)
【文献】
特開平02−156118(JP,A)
【文献】
特開昭62−278412(JP,A)
【文献】
実開昭57−170025(JP,U)
【文献】
実開昭56−016025(JP,U)
【文献】
特開平08−292080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/14 − 23/18
G21C 17/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力施設で用いられる液体を貯留する液体タンクに接続されて前記液体タンクが貯留する液体の一部が導入される基準脚が保有する前記液体の圧力を検出する基準脚圧力検出センサと、
前記液体タンク内の圧力を検出する液体タンク圧力検出センサと、
前記基準脚圧力検出センサが検出した前記液体の圧力と、前記液体タンク圧力検出センサが検出した前記液体タンク内の圧力とに基づいて前記基準脚が保有する液体の液面の位置を求める液面位置演算装置と、
を含み、前記基準脚の下端部は、前記液体タンクの下部と配管で接続され、前記基準脚の上端部は、前記液体の蒸気を凝集させるコンデンススポットを介して前記液体タンクと接続されることを特徴とする液面位置計測装置。
【請求項2】
前記液面位置演算装置は、前記基準脚が保有する液体の液面の位置に基づいて前記液体タンクが貯留する液体の液面の位置を求める、請求項1に記載の液面位置計測装置。
【請求項3】
前記液面位置演算装置は、前記基準脚が保有する液体の液面の位置が所定の基準値以下になったときに警告を報知する、請求項1又は2に記載の液面位置計測装置。
【請求項4】
前記液面位置演算装置は、前記基準脚が保有する液体の液面の位置が所定の基準値以下になったときに、前記基準脚が保有する液体の液面の位置に基づいて前記液体タンクが貯留する液体の液面の位置を求める、請求項1又は3に記載の液面位置計測装置。
【請求項5】
原子炉を内部に格納する原子炉格納容器と、
前記原子炉格納容器の内部に設けられ、液体を貯留する液体タンクと、
前記液体タンク内の一部の液体が導入される基準脚と、
請求項1から4のいずれか1項に記載の液面位置計測装置と、
を含むことを特徴とする原子力施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力施設で用いられる液体を貯留する液体タンクに接続された液体タンク内の一部の液体が導入される基準脚が保有する前記液体の液面の位置を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラント等の原子力施設において、一次冷却材又は二次冷却材等の液体を貯留する冷却材タンクがある。原子力施設においては、冷却材タンクに貯留された冷却材の液面の位置を監視する必要がある。特許文献1には、基準脚と可変脚とを用い、両者の差圧に基づいて常時監視容器内の液面を監視する液面測定システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−71878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、基準脚が保有する液体が蒸発した場合、原子力施設で用いられる液体を貯留する液体タンクに貯留された液体の液面の位置を求める精度が低下する可能性がある。
【0005】
本発明は、基準脚が保有する液体が蒸発した場合に、液体タンクに貯留された液体の液面の位置を求める際の精度低下を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、原子力施設で用いられる液体を貯留する液体タンクに接続されて前記液体タンクが貯留する液体の一部が導入される基準脚が保有する前記液体の圧力を検出する基準脚圧力検出センサと、前記液体タンク内の圧力を検出する液体タンク圧力検出センサと、前記基準脚圧力検出センサが検出した前記液体の圧力と、前記液体タンク圧力検出センサが検出した前記液体タンク内の圧力とに基づいて前記基準脚が保有する液体の液面の位置を求める液面位置演算装置と、を含むことを特徴とする液面位置計測装置である。
【0007】
この液面位置計測装置は、基準脚が保有する液体の液面の位置を求めるので、求めた基準脚が保有する液体の液面の位置に基づいて、液体タンクが貯留する液体の液面の位置を求めることができる。このため、この液面位置計測装置は、基準脚が保有する液体が蒸発した場合であっても、実際に求めた、基準脚が保有する液体の液面の位置に基づき、液体タンクに貯留された液体の液面の位置を求めることができる。その結果、この液面位置計測装置は、液体タンクに貯留された液体の液面の位置を求める際における精度低下を抑制することができる。
【0008】
本発明において、前記液面位置演算装置は、前記基準脚が保有する液体の液面の位置に基づいて前記液体タンクが貯留する液体の液面の位置を求めることが好ましい。この液面位置計測装置は、基準脚が保有する液体の圧力と液体タンク内の圧力とに基づいて、基準脚が保有する液体の液面の位置を実際に求めるので、この位置を用いて液体タンクが貯留する液体の液面の位置を求めることにより、液体タンクが貯留する液体の液面の位置の精度低下を抑制できる。
【0009】
本発明において、前記液面位置演算装置は、前記基準脚が保有する液体の液面の位置が所定の基準値以下になったときに警告を報知することが好ましい。このようにすることで、原子力施設の作業員は、基準脚液面位置が低下していることを把握できる。
【0010】
本発明において、前記液面位置演算装置は、前記基準脚が保有する液体の液面の位置が所定の基準値以下になったときに、前記基準脚が保有する液体の液面の位置に基づいて前記液体タンクが貯留する液体の液面の位置を求めることが好ましい。このようにすれば、基準脚が保有する液体の液面の位置が所定の基準値以下になったときに、基準脚が保有する液体の液面の位置に基づいて液体タンクが貯留する液体の液面の位置を求めるので、液面位置演算装置の演算の負荷を低減できる。
【0011】
本発明は、原子炉を内部に格納する原子炉格納容器と、前記原子炉格納容器の内部に設けられ、液体を貯留する液体タンクと、前記液体タンク内の一部の液体が導入される基準脚と、前記液面位置計測装置と、を含むことを特徴とする原子力施設である。この原子力施設は、上述した液面位置計測装置を含むので、液体タンクに貯留された液体の液面の位置を求める際における精度低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、基準脚が保有する液体が蒸発した場合に、液体タンクに貯留された液体の液面の位置を求める際の精度低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る液面位置計測装置が設けられた原子力施設の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る液面位置計測装置を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る液面位置計測装置の制御例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る液面位置計測装置が設けられた原子力施設の概略構成図である。原子力施設1は、例えば、原子力発電プラントである。本実施形態において、原子力発電プラントは、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)となっている。加圧水型の原子力発電プラントは、原子炉5が一次冷却材となる軽水を加熱した後、加圧器6によって高温・高圧となった軽水をポンプにより蒸気発生器7に送る。そして、原子力発電プラントは、蒸気発生器7が、高温となった軽水を二次冷却材と熱交換させることにより二次冷却材を蒸発させ、蒸発した二次冷却材(蒸気)をタービンに送って発電機を駆動させることにより、発電を行っている。一次冷却材ポンプ18は、原子炉5と蒸気発生器7との間で一次冷却材を循環させる。
【0016】
図1に示すように、原子力施設1は、原子炉5と、原子炉5を格納する原子炉格納容器10と、原子炉格納容器10の底部に設けられた貯水槽15とを備えている。原子炉格納容器10は、中空半球状に形成された容器天井部10aと、有底円筒状に形成された容器本体部10bとで一体に構成されている。原子炉格納容器10内の容器天井部10aには、スプレイ設備16が設けられている。スプレイ設備16は、複数のスプレイリング17と、貯水槽15からスプレイリング17へ向けて冷却水を供給する図示しないスプレイポンプとを有している。
【0017】
貯水槽15は、冷却水を貯水するものであり、用途に応じて複数種設けられている。貯水槽15としては、例えば、原子炉格納容器10内で用いられる冷却水を貯水する格納容器サンプ15a、スプレイリング17に供給される冷却水を貯水する再循環サンプ15b、原子炉格納容器10内の冷却時において冷却水が溜まるキャビティ15c等がある。
【0018】
図2は、本実施形態に係る液面位置計測装置を示す模式図である。原子力施設1は、原子力施設1で用いられる液体(一次冷却材又は二次冷却材等)を貯留する液体タンク20を有する。原子力施設1の液体タンク20は、例えば、上述した加圧器6及び蒸気発生器7等がある。加圧器6は、原子力施設1で用いられる液体のうち二次冷却材を貯留し、蒸気発生器7は、水室に一次冷却材を、伝熱管群が格納されて一次冷却材と二次冷却材との熱交換を行う熱交換部に二次冷却材を貯留する。
【0019】
液体タンク20は、基準脚21を有する。基準脚21は、筒状の容器であり、内部に液体Wを貯留する。基準脚21の下端部は、液体タンク20の下部と配管22で接続されている。基準脚21の上端部は、液体Wの蒸気を凝集させるコンデンススポット23を介して液体タンク20と接続されている。このような構造により、基準脚21には、液体タンク20に接続されて液体タンク20が貯留する液体Wの一部が導入される。
【0020】
原子力施設1の運用時において、液面位置計測装置30は、液体タンク20が貯留する液体Wの液面の位置(以下、タンク液面位置という)Hwを計測する。液面位置計測装置30は、基準脚圧力検出センサ31と、液体タンク圧力検出センサ32と、液面位置演算装置33とを含む。本実施形態において、液面位置計測装置30は、さらに、差圧検出センサ34と、格納容器内温度センサ35とを含む。
【0021】
基準脚圧力検出センサ31は、基準脚21に設けられて、基準脚21が保有する液体Wの圧力を検出する。液体タンク圧力検出センサ32は、液体タンク20内の圧力を検出する。液面位置演算装置33は、基準脚圧力検出センサ31が検出した基準脚21が保有する液体Wの圧力と、液体タンク圧力検出センサ32が検出した液体タンク20内の圧力とに基づいて、基準脚21が保有する液体Wの液面の位置(以下、基準脚液面位置という)を求める。差圧検出センサ34は、配管22に設けられて、液体タンク20が貯留する液体Wの圧力と基準脚21が保有する液体Wの圧力との差圧(液体タンク液面位置差圧)を検出する。格納容器内温度センサ35は、原子炉格納容器10内の温度を検出する。
【0022】
液面位置計測装置30は、液体タンク液面位置差圧からタンク液面位置Hwの位置を計測すると、原子炉格納容器10内の環境が低下する条件において、基準脚21内の液体Wが蒸発して正しいタンク液面位置Hwを求めることができなくなる可能性がある。このため、本実施形態において、液面位置計測装置30は、液面位置演算装置33が、基準脚圧力検出センサ31が検出した基準脚21が保有する液体Wの圧力と、液体タンク圧力検出センサ32が検出した液体タンク20内の圧力とに基づき、基準脚21が保有する液体Wの量に相当する基準脚液面位置を求める。そして、液面位置計測装置30は、求められた基準脚液面位置に基づいて、液面位置演算装置33が、タンク液面位置の誤差を補正できるようにする。その結果、液面位置計測装置30は、基準脚21が保有する液体Wが蒸発した場合であっても、基準脚液面位置を実際に求めることにより、タンク液面位置Hwを求める際の精度低下を抑制することができるので、正しいタンク液面位置を求めることができる。
【0023】
基準脚液面位置をHb、基準脚圧力検出センサ31が検出した基準脚21が保有する液体Wの圧力(基準脚圧力)をPbとし、液体タンク圧力検出センサ32が検出した液体タンク20内の圧力(タンク内圧力)をPtとすると、基準脚液面位置Hbは、式(1)のようになる。式(1)中のρは、原子炉格納容器10内の温度Tに基づいて求めた液体Wの密度である。
Hb=(Pb−Pt)×ρ・・・(1)
【0024】
また、タンク液面位置Hwは、液体タンク液面位置差圧をΔH、基準脚標準液面位置をHbsとすると、式(2)のようになる。液体タンク液面位置差圧ΔHは、液体タンク20が貯留する液体Wの圧力及び基準脚21が保有する液体Wの圧力は、いずれも水頭圧であり、液体タンク20が貯留する液体Wの液面の位置と、基準脚21が保有する液体Wの液面の位置との差である。基準脚標準液面位置Hbsは、原子力施設1が通常運転しているとき(例えば、異常が発生していない状態で定常運転しているとき)における基準脚21の液面位置である。式(2)により、液面位置計測装置30の液面位置演算装置33は、基準脚液面位置をHbに基づいてタンク液面位置Hwを求めることができる。
Hw=ΔH+(Hbs−Hb)・・・(2)
【0025】
このように、液面位置計測装置30は、基準脚圧力Pbとタンク内圧力Ptとに基づいて基準脚液面位置Hbを求める。そして、液面位置計測装置30は、求めた基準脚液面位置Hbを用いてタンク液面位置Hwを求める。このため、液面位置計測装置30は、基準脚21が保有する液体Wが蒸発した場合であっても、液体Wの蒸発に応じた基準脚液面位置Hbを求めることができるので、正しいタンク液面位置Hwを求めることができる。
【0026】
図3は、本実施形態に係る液面位置計測装置の制御例を示すフローチャートである。液面位置計測装置30が有する液面位置演算装置33は、基準脚液面位置Hbが所定の基準値Hbc以下になったときに、警告を報知してもよい。まず、液面位置演算装置33は、基準脚圧力検出センサ31から基準脚圧力Pbを、液体タンク圧力検出センサ32からタンク内圧力Ptを、格納容器内温度センサ35は、原子炉格納容器10内の温度Tを取得する。そして、液面位置演算装置33は、式(1)から基準脚液面位置Hbを求める(ステップS101)。
【0027】
次に、液面位置演算装置33は、ステップS101で求めた基準脚液面位置Hbと所定の基準値Hbcとを比較する(ステップS102)。その結果、基準脚液面位置Hbが所定の基準値Hbc以下である場合(ステップS102、Yes)、基準脚21内に液体Wの蒸気が増加しており、正しいタンク液面位置Hwが計測できない可能性がある。この場合、液面位置演算装置33は、基準脚液面位置Hbが低下している旨の警告を報知する(ステップS103)。例えば、液面位置演算装置33は、液面位置演算装置33に接続されている警告灯36を点灯又は点滅等させたり、液面位置演算装置33に接続されているモニタ37の画面に表示させたりすることにより、上述した警告を報知する。
【0028】
警告が報知されたら、液面位置演算装置33は、差圧検出センサ34から液体タンク液面位置差圧ΔHを取得し、式(2)からタンク液面位置Hwを求め、例えば、モニタ37の画面に表示させる(ステップS104)。このようにすることで、液面位置計測装置30は、原子力施設1の作業員は、基準脚液面位置Hbが低下していることを把握できる。また、原子力施設1の作業員は、現在のタンク液面位置Hwが、基準脚圧力Pb、タンク内圧力Pt及び原子炉格納容器10内の温度Tから求めた基準脚液面位置Hbを用いて求めたものであることを把握できる。さらに、基準脚液面位置Hbが所定の基準値Hbc以下である場合に、基準脚液面位置Hbを求めるので、液面位置演算装置33の演算の負荷を低減できる。
【0029】
次に、ステップS102に戻って説明する。基準脚21が保有する液体Wが蒸発したにおける比較の結果、基準脚液面位置Hbが所定の基準値Hbcよりも大きい場合(ステップS102、No)、液面位置演算装置33は、ステップS101、ステップS102を繰り返す。
【0030】
以上、本実施形態について説明したが、本実施形態は、上述した内容によって限定されるものではない。また、上述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、上述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0031】
本実施形態は、加圧水型原子炉の液体タンク20を対象としたが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、本実施形態で説明した液面位置計測装置30は、沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)の液体タンクに対しても適用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 原子力施設
5 原子炉
6 加圧器
7 蒸気発生器
10 原子炉格納容器
10a 容器天井部
10b 容器本体部
18 一次冷却材ポンプ
20 液体タンク
21 基準脚
22 配管
23 コンデンススポット
30 液面位置計測装置
31 基準脚圧力検出センサ
32 液体タンク圧力検出センサ
33 液面位置演算装置
34 差圧検出センサ
35 格納容器内温度センサ
36 警告灯
37 モニタ