(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体]
<共重合体>
本発明の実施形態に係る共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体は、少なくとも共役ジエン化合物と非共役オレフィンとを共重合してなる共重合体であって、植物資源を含む生物由来の資源から合成されるバイオ共役ジエン化合物成分とバイオ非共役オレフィン成分の少なくともいずれかを有するバイオマス由来化合物を含んでおり、該バイオマス由来化合物のΔ14Cの値が−75〜−225‰である。
共役ジエン化合物と非共役オレフィンのうち一方は、石油資源から合成されるものであってもよい。すなわち、バイオマス由来化合物は、バイオ共役ジエン化合物成分のみを含むものであってもよいし、バイオ共役ジエン化合物成分とバイオ非共役オレフィン成分の両方を含んでいてもよい。
前記共重合体は、共役ジエン化合物10〜90質量%、非共役オレフィン10〜90質量%を含むことが好ましい。
また、バイオマス由来化合物の
14Cの壊変毎分毎グラム量値が0.1dpm/gC以上である。
14Cの壊変毎分毎グラム量値は、加速器質量分析法(Accelerator Mass Spectrometry ;AMS)、液体シンチレーション法(Liquid Scintillation Counting Method; LSC)により測定される値である。
【0010】
本発明の共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体の重量平均分子量(Mw)は、低分子量化の問題が起こることも無く、高分子構造材料への適用の観点から、該共重合体のMwが10,000以上であることが好ましく、Mwが1,000,000以下であることが更に好ましい。Mwが10,000以下だと構造材料としての機械的強度が不足するからであり,Mwが1,000,000を超えると成型加工性が悪くなるからである。
また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、10以下が好ましく、6以下が更に好ましい。これは均質な物性を発生させることが容易になるからである。ここで、平均分子量及び分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレンを標準物質として求めることができる。
【0011】
本発明の共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体は、共役ジエン化合物部分のシス−1,4結合量が50%以上であることが好ましく、70%以上であることが更に好ましい。共役ジエン化合物部分のシス−1,4結合量が50%以上であれば、高い伸長結晶性と低いガラス転移点(Tg)を保持することができ、これにより、耐摩耗性等の物性が改良される。
【0012】
本発明に係る共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。あるいは、テーパー共重合体であってもよい。テーパー共重合体とは、ランダム共重合体とブロック共重合体とが混在してなる共重合体であり、共役ジエン化合物の単量体単位からなるブロック部分及び非共役オレフィンの単量体単位からなるブロック部分のうち少なくとも一方のブロック部分(ブロック構造ともいう)と、共役ジエン化合物及び非共役オレフィンの単量体単位が不規則に配列してなるランダム部分(ランダム構造ともいう)とから構成される共重合体である。また、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとが交互に配列する交互共重合体(共役ジエン化合物をAと、非共役オレフィンをBとした場合の、−ABABABAB−の分子鎖構造)であってもよい。
【0013】
ブロック共重合体の構造は、(A−B)
x、A−(B−A)
x及びB−(A−B)
x(ここで、Aは、共役ジエン化合物の単量体単位からなるブロック部分であり、Bは、非共役オレフィンの単量体単位からなるブロック部分であり、xは1以上の整数である)のいずれかである。
ブロック共重合体の場合には、本発明の共重合体の非共役オレフィン(非共役オレフィン由来部分)の含有量は、0mol%を超え且つ50mol%以下であることが好ましく、0mol%を超え且つ40mol%以下であることが更に好ましい。非共役オレフィン(非共役オレフィン由来部分)の含有量が上記範囲内にあれば、マクロな相分離を起こすことなく、耐熱性を効果的に向上させることができる。
一方、本発明の共重合体の共役ジエン化合物(共役ジエン化合物由来部分)の含有量は、50mol%以上で且つ100mol%未満であることが好ましく、60mol%以上で且つ100mol%未満であることが更に好ましい。共役ジエン化合物(共役ジエン化合物由来部分)の含有量が上記範囲内にあれば、本発明の共重合体は、ゴム状の弾性力を有するものとなる。
【0014】
<共役ジエン化合物>
共役ジエン化合物のΔ14Cの値が−75〜−225‰である。非共役オレフィンのΔ14Cの値とは、試料である炭素がδ13C=−25.0‰であると仮定したときの、
14C濃度(
14AN)に換算した値である。
共役ジエン化合物のδ13Cの値とは、安定同位体比測定装置により測定されたものである。δ13Cは、物質における安定同位体の比率を表す。δ13Cは、対象とする物質中の
13Cと
12Cとの比である
13C/
12Cが、標準試料(白亜紀のベレムナイト(矢石)類の化石)中の同位体比と比較して、どの程度ずれているかを表す指標であり、この比は、‰(千分率)で表される。δ13Cの値(負値)がゼロから離れるほど、物質中の
13Cの割合が低いことを意味する。
軽い同位体は、重い同位体よりも拡散が早く、反応性も高いことから、例えば、光合成によって植物体内に取り込まれた大気中の二酸化炭素の炭素原子の場合、
13Cよりも
12Cのほうが植物体内に固定され易いことがわかっている。
すなわち、植物体内に取り込まれた炭素原子は、大気中の炭素原子に比べて、相対的に
12Cが多く
13Cが少なくなる。したがって、植物体内に取り込まれた炭素の安定同位体比(δ13C)は、大気中に存在する炭素の安定同位体比よりも低くなる。
このようにして同位体比が変わることを同位体分別と呼び、Δ13Cで表される(Δ13Cは、δ13Cと区別される)。
Δ13C=(大気中のδ13C)−(試料中のδ13C)
Δ14Cは、上述したδ13Cの値から、さらに下記のようにして算出できる。
δ14C=[(
14As−
14AR)/
14AR]×1000 (1)
δ13C=[(
13As−
13APDB)/
13APDB]×1000 (2)
ここで、
14As:試料炭素の
14C濃度:(
14C/
12C)sまたは(
14C/
13C)s
14AR:標準現代炭素の
14C濃度:(
14C/
12C)Rまたは(
14C/
13C)R
(1)式の
14C濃度を、δ13Cの測定値をもとに、次式に基づいて換算する。
14AN=
14As×(0.975/(1+δ13C/1000))
2 (
14Asとして
14C/
12Cを使用するとき)
または
14AN=
14As×(0.975/(1+δ13C/1000)) (
14Asとして
14C/
13Cを使用するとき)
以上より、
Δ14C=[(
14AN−
14AR)/
14AR]×1000 (‰)
【0015】
共役ジエン化合物のΔ14Cの値が−75〜−225‰であることは、現在の大気中の二酸化炭素における炭素のΔ14Cと同等のレベルであり、現存生育する植物体内中に固定された有機物に含まれる炭素であることを意味する。放射性炭素
14Cの半減期は、約5730年であるため、化石資源中に含まれる炭素には、
14Cは含まれない。化石資源由来の共役ジエン化合物のΔ14Cは、−1000‰程度である。
したがって、共役ジエン化合物のΔ14C値、或いは
14Cの壊変毎分毎グラム量、δ13Cの値により、共役ジエン化合物の由来物質を特定することができる。
また、共役ジエン化合物の
14Cの壊変毎分毎グラム量値が0.1dpm/gC以上である。
14Cの壊変毎分毎グラム量値は、加速器質量分析法(Accelerator Mass Spectrometry ;AMS)、液体シンチレーション法(Liquid Scintillation Counting Method; LSC)により測定される値である。
【0016】
単量体として用いる共役ジエン化合物は、植物資源を含む生物由来の資源から合成される化合物であって、炭素数4〜8であることが好ましい。該共役ジエン化合物としては、具体的には、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン等が挙げられる。これら共役ジエン化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。上述の共役ジエン化合物の中でも、1,3−ブタジエン及びイソプレンが好ましく、1,3−ブタジエンが特に好ましい。
【0017】
≪バイオブタジエン単量体の製造方法≫
(製造方法)
植物資源を含む生物由来の資源(バイオマス)から合成されるバイオエタノールを出発物質として、バイオブタジエン単量体を合成する方法について説明する。バイオブタジエン単量体の製造方法について説明する。
まず、バイオマスからバイオエタノールを生成する。生成されたバイオエタノールを加熱下において、金属元素として少なくともマグネシウム及びケイ素を含む複合金属酸化物に接触させることにより、バイオブタジエン単量体成分を含む混合物を生成することができる。この製造方法では、複合金属酸化物は、触媒として作用する。良好な触媒活性を発現させる観点から、バイオエタノールを複合金属酸化物に接触させる際における温度は、350℃〜450℃とすることが好ましい。
【0018】
(バイオエタノールの生成)
バイオエタノールの原料となる生物由来の資源としては、サトウキビ、トウモロコシ、甜菜、キャッサバ、ビート、木材、藻類などが挙げられる。これらの資源のなかでも、生産効率の面から糖質あるいはデンプン質を多く含む、サトウキビ、トウモロコシ、甜菜を用いることが好ましい。
【0019】
(複合金属酸化物)
複合金属酸化物は、金属元素として、少なくともマグネシウム及びケイ素を含む。なかでも、ゾルゲル法により合成したシリカ−マグネシアの複合酸化物を使用することが好ましい。使用可能な金属元素としては、亜鉛、ジルコニウム、銅、アルミニウム、カルシウム、リン、タンタルなどが挙げられる。
【0020】
(複合金属酸化物の製造方法)
複合金属酸化物の製造方法としては、ゾルゲル法や、金属塩の水溶液中とシリカを混合し、蒸発乾燥により担持させる方法などが挙げられる。
【0021】
(バイオエタノールと複合金属酸化物との接触反応)
複合金属酸化物とバイオエタノールとの接触反応は、一般的に知られている反応方式を用いることができる。例えば、特開2009−051760号公報に開示された反応方式のうち、固定床ガス流通式触媒反応装置を用いた反応方式が適用可能である。
複合金属酸化物を反応管に充填し、前処理として窒素ガスなどのキャリアガス雰囲気下において加熱した後、反応管の温度を反応温度まで下げる。その後、所定量のキャリアガスと、バイオエタノールとを導入する。反応により生成したガスからバイオブタジエン単量体を分離する。分離方法としては、生成したガスを冷却した凝縮器に通し、未反応のバイオエタノールや水などの重質不純物を分離し、その後、反応ガスを有機溶媒中にバブリングし、バイオブタジエン単量体を溶媒中に溶解させて、溶液として回収する。エチレンやキャリアガスであるN
2などの軽質不純物は、有機溶媒中に溶解せずに通過させて、溶媒タンクから排出する。
【0022】
<非共役オレフィン>
本発明の実施形態に係る共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体における非共役オレフィンは、植物資源を含む生物由来の資源から合成されるものであって、安定同位体比測定装置により測定された非共役オレフィンのδ13Cの値が−30‰〜−28.5‰、又は−22‰以上である。
非共役オレフィンのδ13Cの値は、−21‰〜−12‰の範囲が好ましい。非共役オレフィンのδ13Cの値は、−29.5‰〜−28.5‰の範囲が好ましい。また、非共役オレフィンのδ13Cの値は、−30‰〜−29‰の範囲が好ましい。非共役オレフィンのδ13Cの値から非共役オレフィンの由来物質を特定することができる。
【0023】
単量体として用いる非共役オレフィンは,共役ジエン化合物以外の非共役オレフィンであって、優れた耐熱性や、共重合体の主鎖中に占める二重結合の割合を減らし、結晶性を制御することでエラストマーとしての設計自由度を高めることが可能となる。
非共役オレフィンとしては、非環状オレフィンであることが好ましく、炭素数が2〜10のα−オレフィンであることが好ましい。α−オレフィンであれば、オレフィンのα位に二重結合を有するため、共役ジエン化合物との共重合を効率よく行うことができる。
この観点から、非共役オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等のα−オレフィンが好適に挙げられる。これらの非共役オレフィンは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。上述の非共役オレフィンの中でも、エチレン、プロピレン及び1−ブテンが好ましく、エチレンが特に好ましい。
なお、オレフィンは、脂肪族不飽和炭化水素で、炭素−炭素二重結合を1個以上有する化合物を指す。
【0024】
≪バイオエチレン単量体の製造方法≫
(製造方法)
植物資源を含む生物由来の資源(バイオマス)から合成されるバイオエタノールを出発物質として、バイオエチレン単量体を合成することができる。この製造方法では、バイオマスをガス化して合成ガスを生成し、この合成ガスをエタノールに変換することにより、バイオエタノールを得る。続いて、バイオエタノールを脱水処理してバイオエチレンを得ることができる。
【0025】
≪バイオプロピレン単量体の製造方法≫
(製造方法)
植物資源を含む生物由来の資源(バイオマス)から合成されるバイオエタノールを出発物質として、バイオメタノールを脱水反応によりエチレン(バイオエチレンという)へ変換し、該バイオエチレンと生成水等とを分離した後、該分離されたバイオエチレンを吸着精製する。得られたバイオエチレンをn−ブテンを含有する原料とともに、メタセシス反応により、バイオプロピレンを製造することができる。
【0026】
<その他の成分>
本発明の実施形態に係る共重合体は、共役ジエン化合物及び非共役オレフィンのほか、第3成分として、該共役ジエン化合物以外のジエン系化合物、芳香族ビニル化合物などとの共重合体であってもよい。上述以外の共役ジエン化合物として、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。また、共役ジエン化合物以外のジエン系化合物としては、ジオレフィン性炭化水素が好適である。具体的には、クロロプレン(2−クロロ−1,3−ブタジエン)、シクロペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等を用いることができる。
また、ジエン系化合物としては、エチリデンノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン(1,4−HD)、ジシクロペンタジエン(DCP)等があげられる。
また、芳香族ビニル化合物として、スチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
上記化合物を共重合させてなる共重合体としては、エチレン−ブタジエン共重合体(EBR)、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)などが挙げられる。各種スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体、イソプレン−ブタジエン共重合体などが挙げられる。
なお、本発明の実施形態に係る共重合体を形成する際に使用する単量体としては、上述のように植物資源を含む生物由来の資源から合成されたものに加えて、従来公知の石油化学由来の単量体を使用することができる。
【0027】
[共重合体の製造方法]
本発明の実施形態に係る共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体の製造方法は、下記に示す重合触媒又は重合触媒組成物の存在下、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとを重合させる。なお、重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、用いられる溶媒は重合反応において不活性であればよく、例えば、トルエン、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン等が挙げられる。
【0028】
共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体の製造方法では、上記重合触媒又は重合触媒組成物を用いること以外は、通常の配位イオン重合触媒による重合体の製造方法が適用できる。
【0029】
<製造方法(1):第一重合触媒組成物>
第一重合触媒組成物として、下記一般式(I)で表されるメタロセン錯体、及び下記一般式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに下記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体からなる群より選択される少なくとも1種類の錯体を含む重合触媒組成物(以下、第一重合触媒組成物ともいう)が挙げられる。
【0030】
【化1】
(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Cp
Rは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、R
a〜R
fは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)
【0031】
【化2】
(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Cp
Rは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、X’は、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)
【0032】
【化3】
(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Cp
R’は、無置換もしくは置換シクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示し、[B]
-は、非配位性アニオンを示す)
【0033】
該重合触媒組成物は、更に、通常のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物に含有される他の成分、例えば助触媒等を含んでいてもよい。ここで、メタロセン錯体は、一つ又は二つ以上のシクロペンタジエニル又はその誘導体が中心金属に結合した錯体化合物であり、特に、中心金属に結合したシクロペンタジエニル又はその誘導体が一つであるメタロセン錯体を、ハーフメタロセン錯体と称することがある。なお、重合反応系において、第一重合触媒組成物に含まれる錯体の濃度は0.1〜0.0001mol/lの範囲であることが好ましい。
【0034】
上記一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体において、式中のCp
Rは、無置換インデニル又は置換インデニルである。インデニル環を基本骨格とするCp
Rは、C
9H
7-XR
X又はC
9H
11-XR
Xで示され得る。ここで、Xは0〜7又は0〜11の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。置換インデニルとして、具体的には、2−フェニルインデニル、2−メチルインデニル等が挙げられる。なお、一般式(I)及び式(II)における二つのCp
Rは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
【0035】
上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体において、式中のCp
R’は、無置換もしくは置換のシクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルであり、これらの中でも、無置換もしくは置換のインデニルであることが好ましい。シクロペンタジエニル環を基本骨格とするCp
R’は、C
5H
5-XR
Xで示される。ここで、Xは0〜5の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。シクロペンタジエニル環を基本骨格とするCp
R’として、具体的には、以下のものが例示される。
【0036】
【化4】
(式中、Rは水素原子、メチル基又はエチル基を示す。)
【0037】
一般式(III)において、上記インデニル環を基本骨格とするCp
R’は、一般式(I)のCp
Rと同様に定義され、好ましい例も同様である。
【0038】
一般式(III)において、上記フルオレニル環を基本骨格とするCp
R’は、C
13H
9-XR
X又はC
13H
17-XR
Xで示され得る。ここで、Xは0〜9又は0〜17の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。
【0039】
一般式(I)、式(II)及び式(III)における中心金属Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムである。ランタノイド元素には、原子番号57〜71の15元素が含まれ、これらのいずれでもよい。中心金属Mとしては、サマリウムSm、ネオジムNd、プラセオジムPr、ガドリニウムGd、セリウムCe、ホルミウムHo、スカンジウムSc及びイットリウムYが好適に挙げられる。
【0040】
一般式(I)で表されるメタロセン錯体は、シリルアミド配位子[−N(SiR
3)
2]を含む。シリルアミド配位子に含まれるR基(一般式(I)におけるR
a〜R
f)は、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子である。また、R
a〜R
fのうち少なくとも一つが水素原子であることが好ましい。R
a〜R
fのうち少なくとも一つを水素原子にすることで、触媒の合成が容易になり、また、ケイ素まわりのかさ高さが低くなるため、非共役オレフィンが導入され易くなる。同様の観点から、R
a〜R
cのうち少なくとも一つが水素原子であり、R
d〜R
fのうち少なくとも一つが水素原子であることが更に好ましい。なお、アルキル基としては、メチル基が好ましい。
【0041】
一般式(II)で表されるメタロセン錯体は、シリル配位子[−SiX’
3]を含む。シリル配位子[−SiX’
3]に含まれるX’は、下記で説明される一般式(III)のXと同様に定義される基であり、好ましい基も同様である。
【0042】
一般式(III)において、Xは水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基及び炭素数1〜20の炭化水素基からなる群より選択される基である。ここで、上記アルコキシド基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の脂肪族アルコキシ基;フェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ基、2,6−ジイソプロピルフェノキシ基、2,6−ジネオペンチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−ネオペンチルフェノキシ基、2−イソプロピル−6−ネオペンチルフェノキシ基等のアリールオキシド基が挙げられ、これらの中でも、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ基が好ましい。
【0043】
一般式(III)において、Xが表すチオラート基としては、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオプロポキシ基、チオn−ブトキシ基、チオイソブトキシ基、チオsec−ブトキシ基、チオtert−ブトキシ基等の脂肪族チオラート基;チオフェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルチオフェノキシ基、2,6−ジイソプロピルチオフェノキシ基、2,6−ジネオペンチルチオフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルチオフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−チオネオペンチルフェノキシ基、2−イソプロピル−6−チオネオペンチルフェノキシ基、2,4,6−トリイソプロピルチオフェノキシ基等のアリールチオラート基が挙げられ、これらの中でも、2,4,6−トリイソプロピルチオフェノキシ基が好ましい。
【0044】
一般式(III)において、Xが表すアミド基としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基等の脂肪族アミド基;フェニルアミド基、2,6−ジ−tert−ブチルフェニルアミド基、2,6−ジイソプロピルフェニルアミド基、2,6−ジネオペンチルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−ネオペンチルフェニルアミド基、2−イソプロピル−6−ネオペンチルフェニルアミド基、2,4,6−tert−ブチルフェニルアミド基等のアリールアミド基;ビストリメチルシリルアミド基等のビストリアルキルシリルアミド基が挙げられ、これらの中でも、ビストリメチルシリルアミド基が好ましい。
【0045】
一般式(III)において、Xが表すシリル基としては、トリメチルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、ビス(トリメチルシリル)メチルシリル基、トリメチルシリル(ジメチル)シリル基、トリイソプロピルシリル(ビストリメチルシリル)シリル基等が挙げられ、これらの中でも、トリス(トリメチルシリル)シリル基が好ましい。
【0046】
一般式(III)において、Xが表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子のいずれでもよいが、塩素原子又は臭素原子が好ましい。また、Xが表す炭素数1〜20の炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等の直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;ベンジル基等のアラルキル基等の他;トリメチルシリルメチル基、ビストリメチルシリルメチル基等のケイ素原子を含有する炭化水素基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基、イソブチル基、トリメチルシリルメチル基等が好ましい。
【0047】
一般式(III)において、Xとしては、ビストリメチルシリルアミド基又は炭素数1〜20の炭化水素基が好ましい。
【0048】
一般式(III)において、[B]
-で示される非配位性アニオンとしては、例えば、4価のホウ素アニオンが挙げられる。該4価のホウ素アニオンとして、具体的には、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル、ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル)、フェニル]ボレート、トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート等が挙げられ、これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
【0049】
上記一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、更に0〜3個、好ましくは0〜1個の中性ルイス塩基Lを含む。ここで、中性ルイス塩基Lとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム、中性のオレフィン類、中性のジオレフィン類等が挙げられる。ここで、上記錯体が複数の中性ルイス塩基Lを含む場合、中性ルイス塩基Lは、同一であっても異なっていてもよい。
【0050】
また、上記一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、単量体として存在していてもよく、二量体又はそれ以上の多量体として存在していてもよい。
【0051】
上記一般式(I)で表されるメタロセン錯体は、例えば、溶媒中でランタノイドトリスハライド、スカンジウムトリスハライド又はイットリウムトリスハライドを、インデニルの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)及びビス(トリアルキルシリル)アミドの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)と反応させることで得ることができる。なお、反応温度は室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また、反応時間は任意であるが、数時間〜数十時間程度である。反応溶媒は特に限定されないが、原料及び生成物を溶解する溶媒であることが好ましく、例えばトルエンを用いればよい。以下に、一般式(I)で表されるメタロセン錯体を得るための反応例を示す。
【0052】
【化5】
(式中、X’’はハライドを示す。)
【0053】
上記一般式(II)で表されるメタロセン錯体は、例えば、溶媒中でランタノイドトリスハライド、スカンジウムトリスハライド又はイットリウムトリスハライドを、インデニルの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)及びシリルの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)と反応させることで得ることができる。なお、反応温度は室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また、反応時間は任意であるが、数時間〜数十時間程度である。反応溶媒は特に限定されないが、原料及び生成物を溶解する溶媒であることが好ましく、例えばトルエンを用いればよい。以下に、一般式(II)で表されるメタロセン錯体を得るための反応例を示す。
【0054】
【化6】
(式中、X’’はハライドを示す。)
【0055】
上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、例えば、次の反応により得ることができる。
【0057】
ここで、一般式(IV)で表される化合物において、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Cp
R’は、それぞれ独立して無置換もしくは置換シクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す。また、一般式[A]
+[B]
-で表されるイオン性化合物において、[A]
+は、カチオンを示し、[B]
-は、非配位性アニオンを示す。
【0058】
[A]
+で表されるカチオンとしては、例えば、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アミンカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等が挙げられる。カルボニウムカチオンとしては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオン等の三置換カルボニウムカチオン等が挙げられ、トリ(置換フェニル)カルボニルカチオンとして、具体的には、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン等が挙げられる。アミンカチオンとしては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。ホスホニウムカチオンとしては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオン等が挙げられる。これらカチオンの中でも、N,N−ジアルキルアニリニウムカチオン又はカルボニウムカチオンが好ましく、N,N−ジアルキルアニリニウムカチオンが特に好ましい。
【0059】
上記反応に用いる一般式[A]
+[B]
-で表されるイオン性化合物としては、上記の非配位性アニオン及びカチオンからそれぞれ選択し組み合わせた化合物であって、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が好ましい。また、一般式[A]
+[B]
-で表されるイオン性化合物は、メタロセン錯体に対して0.1〜10倍モル加えることが好ましく、約1倍モル加えることが更に好ましい。なお、一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を重合反応に用いる場合、一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体をそのまま重合反応系中に提供してもよいし、上記反応に用いる一般式(IV)で表される化合物と一般式[A]
+[B]
-で表されるイオン性化合物を別個に重合反応系中に提供し、反応系中で一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を形成させてもよい。また、一般式(I)又は式(II)で表されるメタロセン錯体と一般式[A]
+[B]
-で表されるイオン性化合物とを組み合わせて使用することにより、反応系中において、一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を形成させることもできる。
【0060】
一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体の構造は、X線構造解析により決定することが好ましい。
【0061】
上記第一重合触媒組成物に用いることができる助触媒は、通常のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物の助触媒として用いられる成分から任意に選択され得る。該助触媒としては、例えば、アルミノキサン、有機アルミニウム化合物、上記のイオン性化合物等が好適に挙げられる。これら助触媒は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
上記アルミノキサンとしては、アルキルアミノキサンが好ましく、例えば、メチルアルミノキサン(MAO)、修飾メチルアルミノキサン等が挙げられる。また、修飾メチルアルミノキサンとしては、MMAO−3A(東ソーファインケム社製)等が好ましい。なお、上記第一重合触媒組成物におけるアルミノキサンの含有量は、メタロセン錯体の中心金属Mと、アルミノキサンのアルミニウム元素Alとの元素比率Al/Mが、10〜1000程度、好ましくは100程度となるようにすることが好ましい。
【0063】
一方、上記有機アルミニウム化合物としては、一般式AlRR’R’’(式中、R及びR’はそれぞれ独立してC1〜C10の炭化水素基又は水素原子であり、R’’はC1〜C10の炭化水素基である)で表される有機アルミニウム化合物が好ましい。また、上記有機アルミニウム化合物の具体例としては、例えば、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムクロライド、アルキルアルミニウムジクロライド、ジアルキルアルミニウムハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリアルキルアルミニウムが好ましい。更に、トリアルキルアルミニウムとしては、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等が挙げられる。なお、上記重合触媒組成物における有機アルミニウム化合物の含有量は、メタロセン錯体に対して1〜50倍モルであることが好ましく、約10倍モルであることが更に好ましい。
【0064】
更に、上記重合触媒組成物においては、一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体をそれぞれ、適切な助触媒と組み合わせることで、シス−1,4結合量や得られる共重合体の分子量を増大できる。
【0065】
<製造方法(2)第二重合触媒組成物>
また、上記重合触媒組成物としては、
(A)成分:希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物であって、希土類元素と炭素との結合を有さない該希土類元素化合物又は反応物と、
(B)成分:非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物(B−1)、アルミノキサン(B−2)、並びにルイス酸、金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物及び活性ハロゲンを含む有機化合物のうち少なくとも一種のハロゲン化合物(B−3)よりなる群から選択される少なくとも一種とを含む重合触媒組成物(以下、第二重合触媒組成物ともいう)を好適に挙げることができ、
該第二重合触媒組成物が、イオン性化合物(B−1)及びハロゲン化合物(B−3)の少なくとも一種を含む場合、該重合触媒組成物は、更に、
(C)成分:下記一般式(X):
YR
1aR
2bR
3c ・・・ (X)
[式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R
1及びR
2は、同一又は異なり、炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子で、R
3は炭素数1〜10の炭化水素基であり、但し、R
3は上記R
1又はR
2と同一又は異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a、b及びcは1である]
で表される有機金属化合物を含むことを特徴とする。
【0066】
前記共重合体の製造方法に用いる第二重合触媒組成物は、上記(A)成分及び(B)成分を含むことを要し、ここで、該重合触媒組成物が、上記イオン性化合物(B−1)及び上記ハロゲン化合物(B−3)の少なくとも一種を含む場合には、更に、
(C)成分:下記一般式(X):
YR
1aR
2bR
3c ・・・ (X)
[式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R
1及びR
2は、同一又は異なり、炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子で、R
3は炭素数1〜10の炭化水素基であり、但し、R
3は上記R1又はR2と同一又は異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a、b及びcは1である]
で表される有機金属化合物を含むことを要する。
【0067】
上記イオン性化合物(B−1)及び上記ハロゲン化合物(B−3)は、(A)成分へ供給するための炭素原子が存在しないため、該(A)成分への炭素供給源として、上記(C)成分が必要となる。なお、上記重合触媒組成物が上記アルミノキサン(B−2)を含む場合であっても、該重合触媒組成物は、上記(C)成分を含むことができる。また、上記第二重合触媒組成物は、通常の希土類元素化合物系の重合触媒組成物に含有される他の成分、例えば助触媒等を含んでいてもよい。
【0068】
上記第二重合触媒組成物に用いる(A)成分は、希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物であり、ここで、希土類元素化合物及び該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物は、希土類元素と炭素との結合を有さない。該希土類元素化合物及び反応物が希土類元素−炭素結合を有さない場合、化合物が安定であり、取り扱いやすい。ここで、希土類元素化合物とは、周期律表中の原子番号57〜71の元素から構成されるランタノイド元素又はスカンジウムもしくはイットリウムを含有する化合物である。なお、ランタノイド元素の具体例としては、ランタニウム、セリウム、プラセオジム、ネオジウム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミニウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムを挙げることができる。なお、上記(A)成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
また、上記希土類元素化合物は、希土類金属が2価もしくは3価の塩又は錯体化合物であることが好ましく、水素原子、ハロゲン原子及び有機化合物残基から選択される1種又は2種以上の配位子を含有する希土類元素化合物であることが更に好ましい。更に、上記希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物は、下記一般式(XI)又は(XII):
M
11X
112・L
11w ・・・ (XI)
M
11X
113・L
11w ・・・ (XII)
[式中、M
11は、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、X
11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基、アルデヒド残基、ケトン残基、カルボン酸残基、チオカルボン酸残基又はリン化合物残基を示し、L
11は、ルイス塩基を示し、wは、0〜3を示す]
で表されることができる。
【0070】
上記希土類元素化合物の希土類元素に結合する基(配位子)として、具体的には、水素原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の脂肪族アルコキシ基;フェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ基、2,6−ジイソプロピルフェノキシ基、2,6−ジネオペンチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−ネオペンチルフェノキシ基、2−イソプロピル−6−ネオペンチルフェノキシ基;チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオプロポキシ基、チオn−ブトキシ基、チオイソブトキシ基、チオsec−ブトキシ基、チオtert−ブトキシ基等の脂肪族チオラート基;チオフェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルチオフェノキシ基、2,6−ジイソプロピルチオフェノキシ基、2,6−ジネオペンチルチオフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルチオフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−チオネオペンチルフェノキシ基、2−イソプロピル−6−チオネオペンチルフェノキシ基、2,4,6−トリイソプロピルチオフェノキシ基等のアリールチオラート基;ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基等の脂肪族アミド基;フェニルアミド基、2,6−ジ−tert−ブチルフェニルアミド基、2,6−ジイソプロピルフェニルアミド基、2,6−ジネオペンチルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−ネオペンチルフェニルアミド基、2−イソプロピル−6−ネオペンチルフェニルアミド基、2,4,6−tert−ブチルフェニルアミド基等のアリールアミド基;ビストリメチルシリルアミド基等のビストリアルキルシリルアミド基;トリメチルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、ビス(トリメチルシリル)メチルシリル基、トリメチルシリル(ジメチル)シリル基、トリイソプロピルシリル(ビストリメチルシリル)シリル基等のシリル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。更には、サリチルアルデヒド、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−3−ナフトアルデヒド等のアルデヒドの残基;2’−ヒドロキシアセトフェノン、2’−ヒドロキシブチロフェノン、2’−ヒドロキシプロピオフェノン等のヒドロキシフェノンの残基;アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、プロピオニルアセトン、イソブチルアセトン、バレリルアセトン、エチルアセチルアセトン等のジケトンの残基;イソ吉草酸、カプリル酸、オクタン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、シクロペンタンカルボン酸、ナフテン酸、エチルヘキサン酸、ビバール酸、バーサチック酸[シェル化学(株)製の商品名、C10モノカルボン酸の異性体の混合物から構成される合成酸]、フェニル酢酸、安息香酸、2−ナフトエ酸、マレイン酸、コハク酸等のカルボン酸の残基;ヘキサンチオ酸、2,2−ジメチルブタンチオ酸、デカンチオ酸、チオ安息香酸等のチオカルボン酸の残基、リン酸ジブチル、リン酸ジペンチル、リン酸ジヘキシル、リン酸ジヘプチル、リン酸ジオクチル、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)、リン酸ビス(1−メチルヘプチル)、リン酸ジラウリル、リン酸ジオレイル、リン酸ジフェニル、リン酸ビス(p−ノニルフェニル)、リン酸ビス(ポリエチレングリコール−p−ノニルフェニル)、リン酸(ブチル)(2−エチルヘキシル)、リン酸(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)、リン酸(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)等のリン酸エステルの残基;2−エチルヘキシルホスホン酸モノブチル、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、フェニルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−p−ノニルフェニル、ホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、ホスホン酸モノ−1−メチルヘプチル、ホスホン酸モノ−p−ノニルフェニル等のホスホン酸エステルの残基、ジブチルホスフィン酸、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸、ビス(1−メチルヘプチル)ホスフィン酸、ジラウリルホスフィン酸、ジオレイルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸、ブチル(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸、(2−エチルヘキシル)(1−メチルヘプチル)ホスフィン酸、(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸、ブチルホスフィン酸、2−エチルヘキシルホスフィン酸、1−メチルヘプチルホスフィン酸、オレイルホスフィン酸、ラウリルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、p−ノニルフェニルホスフィン酸等のホスフィン酸の残基を挙げることもできる。なお、これらの配位子は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
上記第二重合触媒組成物に用いる(A)成分において、上記希土類元素化合物と反応するルイス塩基としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム、中性のオレフィン類、中性のジオレフィン類等が挙げられる。ここで、上記希土類元素化合物が複数のルイス塩基と反応する場合(式(XI)及び(XII)においては、wが2又は3である場合)、ルイス塩基L
11は、同一であっても異なっていてもよい。
【0072】
上記第二重合触媒組成物に用いる(B)成分は、イオン性化合物(B−1)、アルミノキサン(B−2)及びハロゲン化合物(B−3)よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物である。なお、上記第二重合触媒組成物における(B)成分の合計の含有量は、(A)成分に対して0.1〜50倍モルであることが好ましい。
【0073】
上記(B−1)で表されるイオン性化合物は、非配位性アニオンとカチオンとからなり、上記(A)成分である希土類元素化合物又はそのルイス塩基との反応物と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物等を挙げることができる。ここで、非配位性アニオンとしては、例えば、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル、ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル)、フェニル]ボレート、トリデカハイドライド−7、8−ジカルバウンデカボレート等が挙げられる。一方、カチオンとしては、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等を挙げることができる。カルボニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオン等の三置換カルボニウムカチオン等が挙げられ、トリ(置換フェニル)カルボニルカチオンとして、より具体的には、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオン等が挙げられる。アンモニウムカチオンの具体例としては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン(例えば、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオン)等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。ホスホニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオン等が挙げられる。従って、イオン性化合物としては、上述の非配位性アニオン及びカチオンからそれぞれ選択し組み合わせた化合物が好ましく、具体的には、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が好ましい。また、これらのイオン性化合物は、1種単独で使用することも、2種以上を混合して用いることもできる。なお、上記第二重合触媒組成物におけるイオン性化合物の含有量は、(A)成分に対して0.1〜10倍モルであることが好ましく、約1倍モルであることが更に好ましい。
【0074】
上記(B−2)で表されるアルミノキサンは、有機アルミニウム化合物と縮合剤とを接触させることによって得られる化合物であり、例えば、一般式:(−Al(R’)O−)で示される繰り返し単位を有する鎖状アルミノキサン又は環状アルミノキサン(式中、R’は炭素数1〜10の炭化水素基であり、一部の炭化水素基はハロゲン原子及び/又はアルコキシ基で置換されてもよく、繰り返し単位の重合度は、5以上が好ましく、10以上が更に好ましい)を挙げることができる。ここで、R’として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基が好ましい。また、アルミノキサンの原料として用いられる有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム及びその混合物等が挙げられ、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。例えば、トリメチルアルミニウムとトリブチルアルミニウムとの混合物を原料として用いたアルミノキサンを好適に用いることができる。なお、上記第二重合触媒組成物におけるアルミノキサンの含有量は、(A)成分を構成する希土類元素Mと、アルミノキサンのアルミニウム元素Alとの元素比率Al/Mが、10〜1000程度となるようにすることが好ましい。
【0075】
上記(B−3)で表されるハロゲン化合物は、ルイス酸、金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物及び活性ハロゲンを含む有機化合物のうち少なくとも一種からなり、例えば、上記(A)成分である希土類元素化合物又はそのルイス塩基との反応物と反応して、ハロゲン化遷移金属化合物や遷移金属中心が電荷不足の化合物を生成することができる。なお、上記第二重合触媒組成物におけるハロゲン化合物の合計の含有量は、(A)成分に対して1〜5倍モルであることが好ましい。
【0076】
上記ルイス酸としては、B(C
6F
5)
3等のホウ素含有ハロゲン化合物、Al(C
6F
5)
3等のアルミニウム含有ハロゲン化合物を使用できる他、周期律表中の第III、IV、V、VI又はVIII族に属する元素を含有するハロゲン化合物を用いることもできる。好ましくはアルミニウムハロゲン化物又は有機金属ハロゲン化物が挙げられる。又はロゲン元素としては、塩素又は臭素が好ましい。上記ルイス酸として、具体的には、メチルアルミニウムジブロマイド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジブロマイド、エチルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジブロマイド、ブチルアルミニウムジクロライド、ジメチルアルミニウムブロマイド、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジブチルアルミニウムブロマイド、ジブチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムセスキブロマイド、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジブチル錫ジクロライド、アルミニウムトリブロマイド、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三塩化リン、五塩化リン、四塩化錫、四塩化チタン、六塩化タングステン等が挙げられ、これらの中でも、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムジブロマイドが特に好ましい。
【0077】
上記金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物を構成する金属ハロゲン化物としては、塩化ベリリウム、臭化ベリリウム、ヨウ化ベリリウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化カドミウム、臭化カドミウム、ヨウ化カドミウム、塩化水銀、臭化水銀、ヨウ化水銀、塩化マンガン、臭化マンガン、ヨウ化マンガン、塩化レニウム、臭化レニウム、ヨウ化レニウム、塩化銅、ヨウ化銅、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、塩化金、ヨウ化金、臭化金等が挙げられ、これらの中でも、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化マンガン、塩化亜鉛、塩化銅が好ましく、塩化マグネシウム、塩化マンガン、塩化亜鉛、塩化銅が特に好ましい。
【0078】
また、上記金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物を構成するルイス塩基としては、リン化合物、カルボニル化合物、窒素化合物、エーテル化合物、アルコール等が好ましい。具体的には、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジエチルホスフィノエタン、ジフェニルホスフィノエタン、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、プロピオニトリルアセトン、バレリルアセトン、エチルアセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸フェニル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジフェニル、酢酸、オクタン酸、2−エチル−ヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、安息香酸、ナフテン酸、バーサチック酸、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、2−エチル−ヘキシルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、1−デカノール、ラウリルアルコール等が挙げられ、これらの中でも、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、アセチルアセトン、2−エチルヘキサン酸、バーサチック酸、2−エチルヘキシルアルコール、1−デカノール、ラウリルアルコールが好ましい。
【0079】
上記ルイス塩基は、上記金属ハロゲン化物1モル当り、0.01〜30モル、好ましくは0.5〜10モルの割合で反応させる。このルイス塩基との反応物を使用すると、ポリマー中に残存する金属を低減することができる。
【0080】
上記活性ハロゲンを含む有機化合物としては、ベンジルクロライド等が挙げられる。
【0081】
上記第二重合触媒組成物に用いる(C)成分は、下記一般式(X):
YR
1aR
2bR
3c ・・・ (X)
[式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R
1及びR
2は、同一又は異なり、炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子で、R
3は炭素数1〜10の炭化水素基であり、但し、R
3は上記R
1又はR
2と同一又は異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a、b及びcは1である]
で表される有機金属化合物であり、下記一般式(Xa):
AlR
1R
2R
3 ・・・ (Xa)
[式中、R
1及びR
2は、同一又は異なり、炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子で、R
3は炭素数1〜10の炭化水素基であり、但し、R
3は上記R
1又はR
2と同一又は異なっていてもよい]
で表される有機アルミニウム化合物であることが好ましい。
【0082】
式(X)の有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム;水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ−n−プロピルアルミニウム、水素化ジ−n−ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウム、水素化ジイソヘキシルアルミニウム、水素化ジオクチルアルミニウム、水素化ジイソオクチルアルミニウム;エチルアルミニウムジハイドライド、n−プロピルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウムが好ましい。以上に述べた(C)成分としての有機金属化合物は、1種単独で使用することも、2種以上を混合して用いることもできる。なお、上記第二重合触媒組成物における有機アルミニウム化合物の含有量は、(A)成分に対して1〜50倍モルであることが好ましい。
【0083】
<製造方法(3):重合触媒及び第三の重合触媒組成物>
上記重合触媒としては、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの重合用であり、下記式(A):
R
aMXQY ・・・ (A)
[式中、Rはそれぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、該RはMに配位しており、Mはランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Xはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を示し、該XはM及びQにμ配位しており、Qは周期律表第13族元素を示し、Yはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子を示し、該YはQに配位しており、a及びbは2である]
で表されるメタロセン系複合触媒が挙げられる。
【0084】
上記重合触媒の好適例においては、下記式(3−I)で表されるメタロセン系複合触媒が挙げられる。
【0085】
【化8】
(式中、M
1は、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Cp
Rは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、R
A及びR
Bは、それぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を示し、該R
A及びR
Bは、M
1及びAlにμ配位しており、R
C及びR
Dは、それぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子を示す)
【0086】
また、上記第三重合触媒組成物は、上記のメタロセン系複合触媒と、ホウ素アニオンとを含むことを特徴とする。
【0087】
<メタロセン系複合触媒>
以下に、上記重合触媒を詳細に説明する。上記重合触媒は、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムの希土類元素と周期律表第13族元素とを有し、下記式(A)で表されることを特徴とする。
R
aMX
bQY
b ・・・ (A)
(式中、Rはそれぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、該RはMに配位しており、Mはランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Xはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を示し、該XはM及びQにμ配位しており、Qは周期律表第13族元素を示し、Yはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子を示し、該YはQに配位しており、a及びbは2である)
【0088】
上記メタロセン系重合触媒を用いることで、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体を製造することができる。また、上記重合触媒、例えば予めアルミニウム触媒と複合させてなる触媒を用いることで、共重合体合成時に使用されるアルキルアルミニウムの量を低減したり、無くしたりすることが可能となる。なお、従来の触媒系を用いると、共重合体合成時に大量のアルキルアルミニウムを用いる必要がある。例えば、従来の触媒系では、金属触媒に対して10当量以上のアルキルアルミニウムを用いる必要があるところ、上記メタロセン系複合触媒であれば、5当量程度のアルキルアルミニウムを加えることで、優れた触媒作用が発揮される。
【0089】
上記メタロセン系複合触媒において、上記式(A)中の金属Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムである。ランタノイド元素には、原子番号57〜71の15元素が含まれ、これらのいずれでもよい。金属M1としては、サマリウムSm、ネオジムNd、プラセオジムPr、ガドリニウムGd、セリウムCe、ホルミウムHo、スカンジウムSc及びイットリウムYが好適に挙げられる。
【0090】
上記式(A)において、Rは、それぞれ独立して無置換インデニル又は置換インデニルであり、該Rは上記金属Mに配位している。なお、置換インデニル基の具体例としては、例えば、1,2,3−トリメチルインデニル基、ヘプタメチルインデニル基、1,2,4,5,6,7−ヘキサメチルインデニル基等が挙げられる。
【0091】
上記式(A)において、Qは、周期律表第13族元素を示し、具体的には、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等が挙げられる。
【0092】
上記式(A)において、Xはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を示し、該XはM及びQにμ配位している。ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。なお、μ配位とは、架橋構造をとる配位様式のことである。
【0093】
上記式(A)において、Yはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子を示し、該YはQに配位している。ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。
【0094】
上記式(3−I)において、金属M
1は、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムである。ランタノイド元素には、原子番号57〜71の15元素が含まれ、これらのいずれでもよい。金属M
1としては、サマリウムSm、ネオジムNd、プラセオジムPr、ガドリニウムGd、セリウムCe、ホルミウムHo、スカンジウムSc及びイットリウムYが好適に挙げられる。
【0095】
上記式(3−I)において、Cp
Rは、無置換インデニル又は置換インデニルである。インデニル環を基本骨格とするCp
Rは、C
9H
7-XR
X又はC
9H
11-XR
Xで示され得る。ここで、Xは0〜7又は0〜11の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。置換インデニルとして、具体的には、2−フェニルインデニル、2−メチルインデニル等が挙げられる。なお、式(3−I)における二つのCp
Rは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
【0096】
上記式(3−I)において、R
A及びR
Bは、それぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を示し、該R
A及びRは、M
1及Alにμ配位している。ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。
【0097】
上記式(3−I)において、R
C及びR
Dは、それぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子である。ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。
【0098】
なお、上記メタロセン系複合触媒は、例えば、溶媒中で、下記式(3−II) で表されるメタロセン錯体を、AlR
KR
LR
Mで表される有機アルミニウム化合物と反応させることで得られる。
【0099】
【化9】
(式中、M
2は、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Cp
Rは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、R
E〜R
Jは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)
【0100】
なお、反応温度は室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また、反応時間は任意であるが、数時間〜数十時間程度である。反応溶媒は特に限定されないが、原料及び生成物を溶解する溶媒であることが好ましく、例えばトルエンやヘキサンを用いればよい。なお、上記メタロセン系複合触媒の構造は、
1H−NMRにより決定することが好ましい。
【0101】
上記式(3−II)で表されるメタロセン錯体において、Cp
Rは、無置換インデニル又は置換インデニルであり、上記式(3−I)中のCp
Rと同義である。また、上記式(3−II)において、金属M
2は、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムであり、上記式(3−I)中の金属M
1と同義である。
【0102】
上記式(3−II)で表されるメタロセン錯体は、シリルアミド配位子[−N(SiR
3)
2]を含む。シリルアミド配位子に含まれるR基(R
E〜R
J基)は、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子である。また、R
E〜R
Jのうち少なくとも一つが水素原子であることが好ましい。R
E〜R
Jのうち少なくとも一つを水素原子にすることで、触媒の合成が容易になる。更に、アルキル基としては、メチル基が好ましい。
【0103】
上記式(3−II)で表されるメタロセン錯体は、更に0〜3個、好ましくは0〜1個の中性ルイス塩基Lを含む。ここで、中性ルイス塩基Lとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム、中性のオレフィン類、中性のジオレフィン類等が挙げられる。ここで、上記錯体が複数の中性ルイス塩基Lを含む場合、中性ルイス塩基Lは、同一であっても異なっていてもよい。
【0104】
また、上記式(3−II)で表されるメタロセン錯体は、単量体として存在していてもよく、二量体又はそれ以上の多量体として存在していてもよい。
【0105】
一方、上記メタロセン系複合触媒の生成に用いる有機アルミニウム化合物は、AlR
KR
LR
Mで表され、ここで、R
K及びR
Lは、それぞれ独立して炭素数1〜20の1価の炭化水素基又は水素原子で、R
Mは炭素数1〜20の1価の炭化水素基であり、但し、R
Mは上記R
K又はR
Lと同一でも異なっていてもよい。炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。
【0106】
上記有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム;水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ−n−プロピルアルミニウム、水素化ジ−n−ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウム、水素化ジイソヘキシルアルミニウム、水素化ジオクチルアルミニウム、水素化ジイソオクチルアルミニウム;エチルアルミニウムジハイドライド、n−プロピルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウムが好ましい。また、これら有機アルミニウム化合物は、1種単独で使用することも、2種以上を混合して用いることもできる。なお、上記メタロセン系複合触媒の生成に用いる有機アルミニウム化合物の量は、メタロセン錯体に対して2〜50倍モルであることが好ましく、約3〜5倍モルであることが更に好ましい。
【0107】
<第三の重合触媒組成物>
また、上記重合触媒組成物(以下、第三重合触媒組成物ともいう)は、上記メタロセン系複合触媒と、ホウ素アニオンとを含むことを特徴とし、更に、通常のメタロセン系触媒を含む重合触媒組成物に含有される他の成分、例えば助触媒等を含むことが好ましい。なお、上記メタロセン系複合触媒とホウ素アニオンとを合わせて2成分触媒ともいう。上記第三重合触媒組成物によれば、上記メタロセン系複合触媒と同様に、共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体を製造することが可能であるが、更にホウ素アニオンを含有するため、各単量体成分の共重合体中での含有量を任意に制御することが可能となる。
【0108】
上記第三重合触媒組成物において、2成分触媒を構成するホウ素アニオンとして、具体的には、4価のホウ素アニオンが挙げられる。例えば、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル、ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル)、フェニル]ボレート、トリデカハイドライド−7、8−ジカルバウンデカボレート等が挙げられ、これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
【0109】
なお、上記ホウ素アニオンは、カチオンと組み合わされたイオン性化合物として使用することができる。上記カチオンとしては、例えば、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アミンカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等が挙げられる。カルボニウムカチオンとしては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオン等の三置換カルボニウムカチオン等が挙げられ、トリ(置換フェニル)カルボニルカチオンとして、具体的には、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン等が挙げられる。アミンカチオンとしては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。ホスホニウムカチオンとしては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオン等が挙げられる。これらカチオンの中でも、N,N−ジアルキルアニリニウムカチオン又はカルボニウムカチオンが好ましく、N,N−ジアルキルアニリニウムカチオンが特に好ましい。従って、上記イオン性化合物としては、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が好ましい。なお、ホウ素アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物は、上記メタロセン系複合触媒に対して0.1〜10倍モル加えることが好ましく、約1倍モル加えることが更に好ましい。
【0110】
上記第三重合触媒組成物に用いることができる助触媒としては、例えば、上述のAlR
KR
LR
Mで表される有機アルミニウム化合物の他、アルミノキサン等が好適に挙げられる。上記アルミノキサンとしては、アルキルアミノキサンが好ましく、例えば、メチルアルミノキサン(MAO)、修飾メチルアルミノキサン等が挙げられる。また、修飾メチルアルミノキサンとしては、MMAO−3A(東ソーファインケム社製)等が好ましい。なお、これらアルミノキサンは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0111】
なお、本発明の共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体の第一の製造方法においては、上述の通り、上記メタロセン系複合触媒又は上記第三重合触媒組成物を用いること以外は、通常の配位イオン重合触媒による重合体の製造方法と同様にして、重合を行うことができる。ここで、本発明の共重合体の製造方法が上記第三重合触媒組成物を用いる場合は、例えば、(1)単量体として共役ジエン化合物及び非共役オレフィンを含む重合反応系中に、2成分触媒の構成成分を別個に提供し、該重合反応系中において第三重合触媒組成物としてもよいし、(2)予め調製された第三重合触媒組成物を重合反応系中に提供してもよい。なお、上記メタロセン系複合触媒の使用量は、共役ジエン化合物及び非共役オレフィンの合計に対して、0.0001〜0.01倍モルの範囲が好ましい。
【0112】
また、本発明の共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体の製造方法においては、エタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を用いて、重合を停止させてもよい。
【0113】
本発明の共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体の製造方法において、共役ジエン化合物及び非共役オレフィンの重合反応は、不活性ガス、好ましくは窒素ガスやアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。上記重合反応の重合温度は、特に制限されないが、例えば−100℃〜200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。なお、重合温度を上げると、重合反応のシス−1,4選択性が低下することがある。また、上記重合反応の圧力は、共役ジエン化合物及び非共役オレフィンを十分に重合反応系中に取り込むため、0.1〜10.0MPaの範囲が好ましい。また、上記重合反応の反応時間も特に制限されず、例えば1秒〜10日の範囲が好ましいが、重合される単量体の種類、触媒の種類、重合温度等の条件によって適宜選択することができる。
【0114】
前記共重合体の製造方法において、上記共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外の非共役オレフィンとの重合の際、該非共役オレフィンの圧力は、0.1MPa〜10MPaであることが好ましい。該非共役オレフィンの圧力が0.1MPa以上であれば、反応混合物中に非共役オレフィンを効率的に導入することができる。また、非共役オレフィンの圧力を高くし過ぎても、非共役オレフィンを効率的に導入する効果が頭打ちとなるため、非共役オレフィンの圧力を10MPa以下とするのが好ましい。
【0115】
前記共重合体の製造方法において、上記共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外の非共役オレフィンとの重合の際、重合開始時における該共役ジエン化合物の濃度(mol/l)と該非共役オレフィンの濃度(mol/l)とは、下記式:
非共役オレフィンの濃度/共役ジエン化合物の濃度 ≧ 1.0
の関係を満たすことが好ましく、更に好ましくは下記式:
非共役オレフィンの濃度/共役ジエン化合物の濃度 ≧ 1.3
の関係を満たし、一層好ましくは下記式:
非共役オレフィンの濃度/共役ジエン化合物の濃度 ≧ 1.7
の関係を満たす。非共役オレフィンの濃度/共役ジエン化合物の濃度の値を1以上とすることで、反応混合物中に非共役オレフィンを効率的に導入することができる。
【0116】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、本発明の共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体を含み、更に、本発明の共重合体以外のゴム成分、無機充填剤、カーボンブラック、その他添加剤などを含むことが好ましい。共重合体は、本発明のブタジエン重合体を含んでいればよく、ブタジエン重合体以外の成分は、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明のゴム組成物中における共重合体の含有量に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。共重合体の含有量は、10質量%以上であることが好ましい。
【0117】
<共重合体以外のゴム成分>
本発明のゴム組成物に配合可能なゴム成分に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ゴム成分としては、例えば、本発明の共重合体、天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、各種ブタジエンゴム、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、イソブチレンとp−メチルスチレンの共重合体の臭化物、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリロブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0118】
<補強性充填剤>
ゴム組成物には、必要に応じて補強性充填剤を配合することができる。補強性充填剤としては、カーボンブラック、無機充填剤、などを挙げることができ、カーボンブラック及び無機充填剤から選択される少なくとも一種が好ましい。
無機充填剤に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。無機充填剤としては、例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、クレー、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、無機充填剤を用いる場合には、シランカップリング剤を適宜使用してもよい。
補強性充填剤の含有量に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。補強性充填剤は、ゴム成分100質量部に対し、5質量部〜200質量部含まれることが好ましい。
補強性充填剤の含有量が、5質量部以上であると、ゴム組成物を補強する効果が得られる。200質量部以下であると、ゴム成分と補強性充填剤とを混合させることができ、ゴム組成物としての性能を向上することができる。
【0119】
<その他の添加剤>
その他の添加剤として、加硫促進剤が挙げられる。加硫促進剤としては、グアジニン系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、チウラム系、ジチオカルバメート系、ザンテート系等の化合物が使用できる。
必要に応じて、補強剤、軟化剤、充填剤、加硫助剤、着色剤、難燃剤、滑剤、発泡剤、可塑剤、加工助剤、酸化防止剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、着色防止剤、その他の配合剤など公知のものをその使用目的に応じて使用することができる。
【0120】
[架橋ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、本発明の共重合体、共重合体以外のゴム成分、無機充填剤、カーボンブラック、その他添加剤などのほかに架橋剤を含んでいてもよい。ゴム組成物は、架橋された架橋ゴム組成物を形成することができる。
【0121】
<架橋剤>
架橋ゴム組成物の作製に使用可能な架橋剤に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、硫黄系架橋剤、有機過酸化物系架橋剤、無機架橋剤、ポリアミン架橋剤、樹脂架橋剤、硫黄化合物系架橋剤、オキシム−ニトロソアミン系架橋剤硫黄などが挙げられる。これらのなかでも、タイヤ用ゴム組成物の場合には、硫黄系架橋剤を用いることが好ましい。
架橋剤の含有量に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。架橋剤は、ゴム成分100質量部に対し、0.1質量部〜20質量部含まれることが好ましい。
架橋剤の含有量が0.1質量部以上であれば、所定の効果が得られるように架橋させることができる。20質量部以下であれば、混練り中に架橋が進行することを防止でき、加硫物の物性を損なうことも無い。
【0122】
[タイヤ]
本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物又は架橋ゴム組成物を含む。本発明のタイヤにおいて、ゴム組成物又は架橋ゴム組成物以外の成分は、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明のゴム組成物又は架橋ゴム組成物のタイヤにおける適用部位は、例えば、トレッド、ベーストレッド、サイドウォール、サイド補強ゴム及びビードフィラーなどが挙げられ。適用部位は、これらに限定されない。
本発明のタイヤは、慣用の方法を用いて製造できる。例えば、タイヤ成形用ドラム上に未加硫ゴムからなるカーカス層、ベルト層、トレッド層等の通常タイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、ドラムを抜き去ってグリーンタイヤとする。次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより、所望のタイヤを製造することができる。
【0123】
[タイヤ以外の用途]
タイヤ用途以外にも、防振ゴム、免震ゴム、ベルト(コンベアベルト)、ゴムクローラ、各種ホース、モランなどに本発明のゴム組成物、又は、本発明の架橋ゴム組成物を使用することができる。
【実施例】
【0124】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0125】
[バイオブタジエン重合体の製造例]
<触媒の製造方法>
触媒として、ゾルゲル法により合成したシリカ−マグネシアの複合酸化物を使用した。この触媒の製造方法は以下の通りである。まずMg(NO
3)
2・6H
2O(64g)を蒸留水100mLに溶解した溶液に、14%アンモニア水溶液100mLを滴下することでMg(OH)
2ゲルを合成した。一方で、Si(OC
2H
5)
4(55mL)をエタノール150mLに溶解した溶液に1.38M硝酸12.5mL及び14%アンモニア水溶液50mLを滴下することによりSi(OH)
4ゲルを合成した。得られたMg(OH)
2ゲルは蒸留水で洗浄後、吸引ろ過を行い、Si(OH)
4ゲルについてはエタノールで洗浄後、吸引ろ過を行った。これら2種類のゲルを混合し、混合後のゲルを風乾、その後80℃乾燥、500℃、N
2雰囲気下において焼成を行うことで、シリカ−マグネシアの複合酸化物触媒を製造した。
【0126】
<バイオブタジエン単量体の生成方法>
出発物質として、サトウキビ、タピオカ、トウモロコシのデンプン質を酵母で発酵させて得たバイオエタノールを使用した。
上記方法により製造した触媒と、上記バイオエタノールとを接触させることによりバイオブタジエン単量体を生成した。
反応装置として、固定床ガス流通式触媒反応装置を用いた。製造したシリカ−マグネシア複合酸化物触媒を、石英製の反応管に充填し、前処理としてキャリアガス雰囲気下(N
2;ガス流量66mL/min)で500℃、2時間加熱処理を行った。
前処理終了後、触媒管の温度を反応温度まで下げ、N
2で希釈したバイオエタノールガスを導入した。反応温度は350℃もしくは450℃で行った。
反応により生成したガスに対し、以下の分離操作を行うことでバイオブタジエン単量体を含む混合物を回収した。まず、生成ガスをヘキサン中にバブリングすることで、目的物であるバイオブタジエン単量体を溶媒中に溶解させた。回収したブタジエン溶液を乾燥精製し、不純物であるエタノール、アセトアルデヒド、ジエチルエーテル、エトキシエチレン、酢酸エチルを更に除去した。これにより、1,3−ブタジエンを得た。
【0127】
[バイオエチレンの製造例]
住友化学活性アルミナ(NKHD24)100mlを外径20mm、長さ80cmの加圧流通装置のSUS製反応器の中心へ充填し、常圧窒素ガス200ml/minを反応器上部から500℃にて2時間流通した後、350℃へ降温した。ここへ、ペトロプラス社製バイオマス由来のエタノール(エタノール含量92%)を反応器上部から20g/hの早さで送液した。反応器下部の出口ラインは、SUS社製のトラップ(容量500ml)を経て0.5MPaに設定した背圧弁に繋がっており、反応中は、SUS社製トラップを外部から氷冷することにより、反応により生成した水と見反応エタノールを捕集し、生成したエチレンは気体状態で背圧弁を経た後、圧縮機により5MPaへ圧縮し、液化エチレンとして液化ガス容器へ捕集した。10時間後、液化ガス容器に捕集されたバイオエチレンの重量は119gであり、転化率99%以上、収率は99%であった。
【0128】
[重合体の製造方法]
<実施例1>
上記得られた1,3−ブタジエン(バイオブタジエン)を用いて、下記に基づいて、共重合体Aを製造した。
十分に乾燥した1000ml耐圧ガラス反応器に、上記得られた1,3−ブタジエン(バイオブタジエン)40gを含むトルエン溶液300mlを添加した後、エチレンを1.0MPaで導入した。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にビス(2−フェニルインデニル)ガドリニウムビス(ジメチルシリルアミド)[(2−PhC
9H
6)
2GdN(SiHMe
2)
2]9.6μmmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me
2NHPhB(C
6F
5)
4]9.6μmmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド0.384mmolを仕込み、トルエン20mlに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、モノマー溶液へ添加し、60℃で90分間重合を行った。重合後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液1mlを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノールで共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体Aを得た。得られた共重合体Aの収量は43gであった。
【0129】
<実施例2>
上記得られた1,3−ブタジエン(バイオブタジエン)及び得られたエチレン(バイオエチレン)を用いて、下記に基づいて、共重合体Bを製造した。
十分に乾燥した1000ml耐圧ガラス反応器に、上記得られた1,3−ブタジエン(バイオブタジエン)40gを含むトルエン溶液300mlを添加した後、上記得られたエチレン(バイオエチレン)を1.0MPaで導入した。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にビス(2−フェニルインデニル)ガドリニウムビス(ジメチルシリルアミド)[(2−PhC
9H
6)
2GdN(SiHMe
2)
2]9.6μmmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me
2NHPhB(C
6F
5)
4]9.6μmmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド0.384mmolを仕込み、トルエン20mlに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、モノマー溶液へ添加し、60℃で90分間重合を行った。重合後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液1mlを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノールで共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体Bを得た。得られた共重合体Bの収量は43gであった。
【0130】
<実施例3>
十分に乾燥した1500ml耐圧ガラス反応器に、あらかじめトルエン300mlを添加した後、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にビス(2−フェニルインデニル)ガドリニウムビス(ジメチルシリルアミド)[(2−PhC
9H
6)
2GdN(SiHMe
2)
2]20μmmol、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph
3CB(C
6F
5)
4]30μmmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド1.8mmolを仕込み、トルエン20mlに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、耐圧ガラス反応器に添加し、60℃に加温した後、エチレンを1.5MPaで導入すると同時に、上記得られた1,3−ブタジエン(バイオブタジエン)150gを含むトルエン溶液600mlを120分間(5ml/min)かけて耐圧ガラス反応器に添加し重合を行った。その後10分放置した後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液1mlを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノールで共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体Cを得た。得られた共重合体Cの収量は171gであった。
【0131】
<比較例1>
上記得られた1,3−ブタジエン(バイオブタジエン)の代わりに市販の石油由来の合成ブタジエンを用いた以外は、実施例1と同様の方法で重合を行ったところ、共重合体Dを収量43gで得た。
【0132】
[評価方法]
<ミクロ構造>
共重合体中のブタジエン部分のミクロ構造を,
1H−NMRスペクトル(1,2−ビニル結合の結合量)及び
13C−NMRスペクトル(シス−1,4結合とトランス−1,4結合の含有量比)の積分比より求めた。シス−1,4結合量(%)の計算値を表1に示す。
【0133】
<エチレンの含有率>
共重合体中のエチレン部分の含有率(mol%)を
1H−NMRスペクトル及び
13C−NMRスペクトルの積分比より求めた。計算値を表1に示す。
【0134】
<重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー製HLC−8121GPC/HT,カラム:東ソー製GMH
HR−H(S)HT×2本,検出器:示差屈折率計(RI),GPC測定温度:140℃]で単分散ポリスチレンを基準として,重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。分析値を表1に示す。
【0135】
<δ13Cの測定>
トウモロコシ、サトウキビ、タピオカ由来のエタノールから生成されたバイオブタジエンを用いて製造されたブタジエンのδ13Cの値を安定同位体比測定装置により測定した。
【0136】
<Δ14Cの測定>
出発物質として、サトウキビ、タピオカ、トウモロコシのデンプン質を酵母で発酵させて得たバイオエタノールから生成されたエチレンのδ13Cの値を安定同位体比測定装置により測定し、上述した換算方法により、Δ14Cを算出した。
【0137】
<
14Cの壊変毎分毎グラム量の測定>
トウモロコシ、サトウキビ、タピオカ由来のエタノールから生成されたエチレンの
14Cの壊変毎分毎グラム量値を加速器質量分析法(Accelerator Mass Spectrometry ;AMS)、液体シンチレーション法(Liquid Scintillation Counting Method; LSC)により測定した。
【0138】
<ロール加工性>
実施例1〜3、比較例1によって得られた共重合体A〜Dのそれぞれを用いてゴム組成物を生成した。
未加硫のゴム配合物を60℃の8インチオープンロールに巻き付け、その巻き付き状況を目視で観察して、ロール加工性をつぎの3段階で評価した。
A:ロールに粘着し、ロール加工性良好。
B:多少バギングが起こるがロールに巻き付き加工可能。
C:粘着性がなくロールに巻き付かずロール加工できない(粉,粒状)。
<耐オゾン性>
JIS K 6259に従って耐オゾン性を測定した。
実施例1〜3、比較例1によって得られた共重合体A〜Dのそれぞれを用いてゴム組成物を生成し、短冊状試験片を作成した。短冊状試験片に30%動的伸張を与えながら、40℃,オゾン濃度50ppm条件で暴露し、24時間後の試料の状況(亀裂の有無)を目視で判断した。
【0139】
【表1】
【0140】
[評価結果]
バイオブタジエンと通常のエチレンとの共重合体A及びCを用いた実施例1,3のゴム組成物、及びバイオブタジエンとバイオエチレンとの共重合体Bを用いた実施例2のゴム組成物のいずれも、市販の石油由来の合成ブタジエンとエチレンとから重合された共重合体Dを用いたゴム組成物と遜色のない結果が得られることが判った。