(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルアルキルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、1%水溶液の粘度が6000〜30000mPa・s(B型粘度計、測定温度20℃)であるセルロース系バインダーと、
α−オレフィンスルホネートナトリウムを含むアニオン性界面活性剤とを、
前記セルロース系バインダーおよびアニオン性界面活性剤の重量比(セルロース系バインダー/アニオン性界面活性剤)が、99.8/0.2〜97.0/3.0となるように混合してセメント押出成形用混和剤を製造する工程1と、
セメントを必須とする無機材料100重量部に対して前記セメント押出成形用混和剤を0.3〜3.0重量部配合し、セメント押出成形用混合物を製造する工程2とを含み、
前記アニオン性界面活性剤が20℃で固体であり、
前記工程2を前記工程1の24時間以上後に行う、
セメント押出成形用混合物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、セメント押出成形物は、1)普通ポルトランドセメント等の水硬性物質や珪砂等の細骨材とともに、必要に応じて用いられる補強用繊維、軽量骨材等を含むセメント混合物に水を加えて粘土状高粘性物質であるモルタルを作成し、次いで、2)得られたモルタルを真空押出成形機を用いて平板や中空状等の所望の形状に成形することによって製造されてきた。
セメント押出成形物を製造する場合、往々にして、押出圧力が高く、押出速度が不安定となる現象が発生するという問題点があった。また、押出成形で得られたセメント押出成形物についても、往々にして、成形物の金型からの吐出状態が不整となり、蛇行やフクレ、ワレやヒビ、凹凸等の発生での成形物の表面状態が低下することや、寸法精度が低いという問題点があった。このような製造時の押出性や成形物の品位の問題を解決するために、従来、セルロース系バインダーを過剰に配合することが行われていた。しかし、モルタルに含まれる主成分である水硬性物質や細骨材は無機成分であるので、無機成分ではないセルロース系バインダーの配合は避けるほうが好ましいことは言うまでもないことであり、また、過剰に配合することは、コストダウンに逆行し経済上不利であった。
【0003】
押出性の問題を改善するために、たとえば、以下の特許文献1〜4に示す技術が知られている。
特許文献1では、界面活性剤を含んだ液体材料を添加することによりモルタルの流動性向上を計り、押出圧力の低下や速度安定性に寄与するとされている。しかし、実際の押出において圧力低下は不充分であり、また表面性等の品位もはなはだ劣るものであった。
【0004】
特許文献2では、変性ポリカルボン酸を含むセメント組成物を押出成形の際、変性ポリカルボン酸によってセメント等を分散させて、押出成形時に要する圧力を軽減し押出圧力を低くすることができる。また、アスベストの配合量を低減しても、セメント組成物の成形性を高く維持することができると共にセメント硬化体の強度を保持できるものであり、さらにセルロース系バインダーの添加量を低減するとされている。しかし、ポリカルボン酸系AE剤(Air Entraining Agent;気泡連行剤)や減水剤一般に言われることではあるが、この薬剤による流動性向上は、常に空気連行による押出成形物の品位低下の問題が伴い、高度な脱泡技術が必要となる。また、セルロース系バインダーの低減については、アスベスト不使用の現在では低減効果が認められない。
特許文献3では、モルタル流動性の変化に合わせた金型内の流路の調整による設備的な改善で、押出圧の低減および変動軽減が提案されている。しかし、押出成形物の品位への寄与は無く、また、設備への可変金型の導入およびそのメンテナンスにコストを要するため、現在広く使われている方法とはいい難い。
【0005】
特許文献4では、親水性樹脂微粒子を用いた押出成形で、増粘剤の添加量を低減しても、経済的な吐出圧力・押出速度で成形できるとされている。しかし、親水性微粒子自体の保水性や保形性はセルロース系バインダーより劣り、押出成形物の品位低下の問題がある。また、親水性微粒子自体が、押出成形品業界での使用の際に粉体化が求められるが、粉体化においてセルロース系バインダーより高価格な材料となるため、親水性樹脂粒子およびセルロース系バインダーを増粘剤として使用した場合でも、この増粘剤の添加量低減が認められないこと等から、本技術は有効とは言えない。
次に、品位の問題を改善するために、たとえば、以下の特許文献5〜7に示す技術が知られている。
【0006】
特許文献5では、熱ゲル化温度の高いセルロースエーテルバインダーを選択使用することにより、少ない添加量で、必要な成形性と強度が出せるとされている。しかし、品位としてのセメント押出成形物にひび割れ低減は図れるが、他の重要な品位である表面状態や、押出性の向上は得られない。
特許文献6では、高粘度セルロースエーテルバインダーを選択使用することにより、少ない添加量で、保形性が向上したセメント押出成形製品を能率よく製造することができるとされている。確かに、セルロースエーテルバインダーの添加量を減しても、押出成形物が金型から出た状態での形状および寸法が維持される性能は良好となるが、他の重要な品位である、表面状態や、押出圧・押出速度等の押出性の向上は得られない。
【0007】
特許文献7では、水溶性セルロースエーテルに長鎖アルキルベンゼンスルホン酸またはその中和塩を併用してなることを特徴とする水硬性組成物用バインダーが記載されている。無機粒子の流動性向上による、セメント押出成形物の若干の品位向上は図れるが、気泡連行作用による寸法安定性等の品位低下や、また著しい可塑化によりモルタル硬度が軟化し、押出性に問題がある。
上記に示すとおり、セメント押出成形物を製造する場合の押出性の問題およびセメント押出成形物の品位の問題の両方を、経済性に考慮しながら解決するものはないものと考えられている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔セメント押出成形用混和剤およびその製造〕
本発明のセメント押出成形用混和剤は、セルロース系バインダーおよびアニオン性界面活性剤を含み、セメント押出成形に用いられる混和剤である。
セルロース系バインダーは、セメント押出成形用混和剤の主成分であり、後述のセメント押出成形用混合物を用いて得られるモルタルに可塑性と保水性を付与し、モルタルを押出成形して得られるセメント押出成形物に良好な押出性と高い品位を与える成分である。
【0018】
セルロース系バインダーは、セメント押出成形用混和剤や後述のセメント押出成形用混合物から得られるモルタルに優れた可塑性と保水性を付与し、モルタルを押出成形して得られるセメント押出成形物に良好な押出性と高い品位を与えることができる成分である。セルロース系バインダーは、通常、固体であり、粉体である。
セルロース系バインダーとしては、たとえば、メチルセルロース等のアルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース等を挙げることができ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0019】
セルロース系バインダーの1重量%水溶液の粘度(B型粘度計で測定、測定温度20℃)は、6000〜30000mPa・sであり、好ましくは7000〜25000mPa・sであり、さらに好ましくは8000〜20000mPa・s、特に好ましくは9000〜15000mPa・sである。粘度がこの範囲にあると、モルタルを押出成形して得られるセメント押出成形物の保形性が高くなる。本発明でいう保形性とは、金型より吐出された押出成形物の形状が維持できる性能をいい、品位に大きく関わる。セルロース系バインダーの1%水溶液の粘度が6000mPa・s未満であると、保形性が不充分であることがある。一方、セルロース系バインダーの1%水溶液の粘度が30000mPa・sを超えると、水への溶解性が困難となり、また保水性も低粘度品に劣る事から、押出の際の潤滑効果も不充分となり良好な押出性が得られないことがある。
アニオン性界面活性剤は、セルロース系バインダーを水に溶解させることを促進する成分である。従来、モルタル調製時にセルロース系バインダーが約50〜80%程度しか溶解せず、そのためにセルロース系バインダーを必要以上に多く用いることが行われていた。しかし、アニオン性界面活性剤を用いることによってセルロース系バインダーをほぼ完溶に近い状態まで溶解させることができ、これによって、セルロース系バインダーが低配合であっても良好な品位や押出性を獲得できるようになる。
【0020】
アニオン性界面活性剤は、取扱い容易でセルロース系バインダーやセメントと均一分散し易いために、20℃での外観が固体であると好ましく、粉体であるとさらに好ましい。また、アニオン性界面活性剤が、セルロース系バインダーの粉体と同程度の粒子径の粉体であると、セルロース系バインダーおよび界面活性剤が粉体として、分離や偏在が起こらず、均一な粉体となったセメント押出成形用混和剤を得ることから特に好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、たとえば、アルキルサルフェートナトリウム、α−オレフィンスルホネートナトリウムおよびアルキルベンゼンスルホネートナトリウム等を挙げることができ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0021】
アルキルサルフェートナトリウムにおけるアルキルの炭素数については、特に限定はないが、好ましくは8〜18、さらに好ましくは10〜14であり、最も好ましくは11〜13である。アルキルの炭素数が8未満であるとセルロース系バインダーとの相溶性が低下することがある。一方、アルキルの炭素数が18を超えるとセルロース系バインダーの溶解促進効果が低下することがある。
α−オレフィンスルホネートナトリウムにおけるα−オレフィンの炭素数については、特に限定はないが、好ましくは10〜20、さらに好ましくは14〜18であり、最も好ましくは15〜17である。α−オレフィンの炭素数が10未満であるとセルロース系バインダーとの相溶性が低下することがある。一方、α−オレフィンの炭素数が20を超えるとセルロース系バインダーの溶解促進効果が低下することがある。
【0022】
アルキルベンゼンスルホネートナトリウムにおけるアルキルの炭素数については、特に限定はないが、好ましくは8〜18、さらに好ましくは10〜14であり、最も好ましくは11〜13である。アルキルの炭素数が8未満であるとセルロース系バインダーとの相溶性が低下することがある。一方、アルキルの炭素数が18を超えるとセルロース系バインダーの溶解促進効果が低下することがある。
セルロース系バインダーおよびアニオン性界面活性剤の重量比(セルロース系バインダー/アニオン性界面活性剤)は、通常99.8/0.2〜97.0/3.0であり、好ましくは99.6/0.4〜97.2/2.8、さらに好ましくは99.5/0.5〜97.4/2.6、特に好ましくは99.4/0.6〜97.6/2.4、最も好ましくは99.3/0.7〜97.8/2.2である。セルロース系バインダー/アニオン性界面活性剤が99.8/0.2よりも大きいと、セルロース系バインダーの水への溶解が不十分となって、セメント押出成形物を製造する場合の押出性の問題および得られるセメント押出成形物の品位の問題の両方を解決できなくなる。一方、セルロース系バインダー/アニオン性界面活性剤が97.0/3.0よりも小さいと、セメント押出成形用混和剤においてAE剤としての作用が大きくなり大量の気泡をモルタル中に抱き込み、押出成形物の寸法安定性が悪化し品位が低下する。また、セルロース系バインダーの水への溶解が極めて早くなり、セメント押出成形用混合物に通常使用されるパルプ粉や繊維等の成分が十分に分散しない状態で急激に高粘度化し、分散不十分な成分を含んだままで高粘度のモルタルが調製されてしまう。その結果、セメント押出成形物の品位の問題を解決できなくなる。
【0023】
セメント押出成形用混和剤には、上記で説明したセルロース系バインダーやアニオン性界面活性剤以外に、後述のその他成分を配合してもよい。
セメント押出成形用混和剤は、たとえば、セルロース系バインダーおよびアニオン性界面活性剤を、セルロース系バインダー/アニオン性界面活性剤が99.8/0.2〜97.0/3.0となるように混合して、セメント押出成形用混和剤を製造する工程1を行うことで得られる。工程1においては、ナウタミキサー混合機やヘンシェルミキサー混合機、リボンミキサー混合機等を用いてもよい。
【0024】
〔セメント押出成形用混合物およびその製造〕
本発明のセメント押出成形用混合物は、セメント、セルロース系バインダーおよびアニオン性界面活性剤を含み、セメント押出成形に用いられる混合物である。このセメント押出成形用混合物では、セルロース系バインダーおよびアニオン性界面活性剤としてセメント押出成形用混和剤を配合してなる。セメント押出成形用混合物において、セルロース系バインダー、アニオン性界面活性剤等の説明は、セメント押出成形用混和剤で説明したとおりである。
セメント押出成形用混合物に配合されるセメントとしては、たとえば、普通ポルトランドセメント、高炉セメント、早強セメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント等を挙げることができ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0025】
無機材料はセメントを必須とし無機骨材を含むことがある材料であり、実際に無機骨材を含む材料であるとよい。無機骨材としては、たとえば、珪砂、珪石粉、高炉スラグ、シリカフューム、フライアッシュ、カオリン焼成物、石灰石粉等を挙げることができ、1種または2種以上を併用してもよい。
無機材料では、用途に応じた最適な配合をするべきであるが、無機材料に含まれるセメントおよび無機骨材の重量比(セメント/無機骨材)は、好ましくは80/20〜30/70、さらに好ましくは75/25〜35/65、特に好ましくは70/30〜40/60である。セメント/無機骨材が80/20を超えると、水硬前後の寸法変化が大きくなり過ぎ不適である。一方、セメント/無機骨材が30/70より小さいと、得られるセメント押出成形物の水硬後の強度に問題が発生する。
【0026】
また、セルロース系バインダーおよびアニオン性界面活性剤として配合されるセメント押出成形用混和剤の配合量は、セメントを必須とする無機材料100重量部に対して、通常0.3〜3重量部、好ましくは0.4〜2.8重量部、さらに好ましくは0.5〜2.5重量部である。セメント押出成形用混和剤の配合量が0.3重量部未満であると、セメント押出成形用混合物から得られるモルタルを押出成形してセメント押出成形物を製造する際、押出圧力が高く、押出速度が不安定となる現象の発生、すなわち押出性が低下したり、さらに得られるセメント押出成形物の表面状態や吐出状態が不整であり、寸法精度が低いという問題の発生、すなわち品位が低下したりすることがある。一方、セメント押出成形用混和剤の配合量が3重量部を超えると、配合量に見合った性能向上は見られず、むしろ、セメント押出成形用混合物から得られるモルタルを押出成形してセメント押出成形物を製造する際、モルタル硬度が低く、押出速度が不安定となって押出性が低下したり、エッジ部の意匠性が低下したり、波打ち等に起因する品位が低下したりすることがある。
セメント押出成形用混合物は、工程2において、セメント押出成形用混和剤と、セメントを必須とする無機材料とを混合して製造される。セメント押出成形用混和剤および無機材料を混合する工程2は、セメントを必須とする無機材料100重量部に対してセメント押出成形用混和剤を0.3〜3.0重量部配合して行われる。また、両者の混合は、セメント押出成形用混和剤を調製してから24時間以上経過した後に行うことによって、押出成形用混和剤中のセルロース系バインダーのモルタル中での溶解性が高まる。その結果、モルタルからセメント押出成形物を製造する場合の押出性の問題および得られるセメント押出成形物の品位の問題の両方をより十分に解決することが可能になる。また、セメント押出成形物を製造する際のセメント押出成形用混和剤の配合量を下げることができる。
【0027】
〔セメント押出成形物およびその製造〕
本発明のセメント押出成形物は、セメント押出成形用混合物に水を配合し、得られたモルタルを押出成形してなる成形物である。セメント押出成形物は、セメント押出成形用混合物を、たとえば混合機内にて乾式分散し、乾式分散しつつ所定量の水を添加し、必要に応じて混練機等にて混練りすることによって得られたモルタルを真空押出成形してなる成形物であると好ましい。
上記で用いる混合機としては、液添加機構が備わった混合機が好ましく、たとえば、主羽根による浮遊拡散混合とチョッパー羽根による高速剪断分散の2つの機能を備えた混合機;プロシェアミキサー、レーディゲミキサーや、拡散混練方式の混合機;オムニミキサーや、逆流式高速混合機;アイリッヒミキサー等が好ましい。
【0028】
セメント押出成形用混合物に水を配合することによって、モルタルが得られる。
セメント押出成形用混合物と水との割合は、一般には、セメントを必須とする無機材料(通常は、セメントを必須とし、無機骨材を含む無機材料)に対する水の重量比(無機材料/水)として表現される。無機材料/水は、好ましくは85/15〜65/35、より好ましくは82/18〜62/38で、特に好ましくは80/20〜60/40である。無機材料/水が65/35より小さいと、モルタルの硬度が極めて低く、押出成形が困難となり、押出成形板の強度が低下することがある。一方、無機材料/水が85/15より大きいと、モルタルがまとまりのない状態となり、押出成形が困難となることがある。
【0029】
得られたモルタルは必要に応じて混練機を用いて混練し、より均一なモルタルが得られる。混練機としては、混練槽内に2本の攪拌ロータを並列に設け、各攪拌ロータを相対的に逆方向に回転させて内容物を混練する装置;双腕式ニーダー等が好ましい。
セメント押出成形物は、モルタルを押出成形して得られるが、ここで行う押出成形が真空押出成形であると、押出成形物中の気泡が低減され、外観や寸法安定性が良好となる。また、押出成形物が金型から吐出される際のスプリングバック等が防止できるために好ましい。
【0030】
真空押出成形に用いる成形機(真空押出成形機)としては、たとえば、セメント用やセラミック用のスクリュー式押出機、プランジャー式押出機等が挙げられる。市販の成形機としては、たとえば、セメント用真空押出成形機(石川時鐵工所株式会社製)、混練−真空押出成形機(宮崎鉄工株式会社製)、真空押出成形機(本田鐵工株式会社製)等を挙げることができる。特に、混練−真空押出成形機は、前述の混合機および混練機の機能を持った部位が押出成形機に繋がっており、セメント押出成形用混合物の調製から押出成形物までの一連の工程を備えた設備である。
セメント押出成形は、たとえば、次のようにして行われる。1)モルタルを真空押出成形機のパグミル・パグスクリュー部において予備混練し、その後モルタルを真空脱気室に送り、モルタル中に取り込まれていた気泡を除去する。2)モルタルをさらにバレルに落とし、スクリューまたはプランジャーによってバレル終端部に装着された金型まで送り、金型を通過させることによって各種断面形状のセメント押出成形物が得られる。
【0031】
セメント押出成形については、「押出成形はセメント系材料を変える」(守明子、馬場明生;セメント・コンクリート,No.598,p.9−20,1996年12月発行)を参考にして行うことができる。
この真空押出成形における重要な押出条件として、押出圧力、押出速度等が挙げられる。押出圧力は高すぎると、機械への負担の増大や、金型・スクリュー・バレル等の寿命が短くなることがある。また、電力消費の増大について問題となることがある。したがって、一般には低い押出圧力が望まれる。
【0032】
また、押出速度は生産性に直結するので、一般に速いほうがよい。押出速度が遅いときは往々にして押出機のバレル壁面とモルタルの潤滑不良により、押出速度の低下、速度遅速による工程の不安定化、押出圧力の上昇等が現れ、これら押出性の低下に加え、品位も低下することがある。
得られたセメント押出成形物は、乾燥および養生後、必要に応じてオートクレーブによる高温高圧での養生や蒸気養生、裁断や仕上げ等の各工程を経て、セメント押出成形板やセメント押出製品として建築用資材等に広く使用されている。
【0033】
〔その他の成分〕
上記で説明したセメント押出成形用混和剤やセメント押出成形用混合物には、下記に説明するその他の成分を、本発明によって得られる効果に大きな悪影響を及ぼさない範囲で、配合することができる。なお、押出成形用混和剤は、固体であり、粉体であるのが望ましく、そのような状態になることを妨げるその他の成分は、押出成形用混和剤には配合しないほうが良く、セメント押出成形用混合物に配合することが望ましい。
【0034】
(セメント押出成形用混和剤またはセメント押出成形用混合物に配合可能な成分)
セメント押出成形物の強度向上に用いられ、安全衛生面で影響がないものとして、ガラス繊維等の無機繊維;パルプ、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維等の有機繊維等の繊維状材料を配合できる。
軽量化のために、パーライト等の無機軽量骨材;ポリスチレン系等の有機発泡剤、フライアッシュ、有機質中空微小球等の有機軽量化材を配合できる。
凝結時間調整剤として、ケイフッ化マグネシウム等のケイフッ化物;ホウ酸等のホウ酸類;グルコン酸、グルコヘプトン酸、クエン酸、酒石酸等のオキシカルボン酸類およびその塩;リグニンスルホン酸、フミン酸、タンニン酸等の高分子有機酸類およびその塩等の凝結遅延剤等を配合できる。
【0035】
凝結時間調整剤として、また、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の塩化物;チオシアン酸ナトリウム等のチオシアン酸塩;亜硝酸カルシウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム等の亜硝酸塩;硝酸カルシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の硝酸塩;硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の硫酸塩;炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩;珪酸ナトリウム(水ガラス)等の無機系化合物による凝結促進剤・急結剤等を配合できる。
凝結時間調整剤として、また、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)等のアミン類;ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム等の有機酸のカルシウム塩等の有機系化合物による凝結促進剤・急結剤を配合できる。
【0036】
押出成形板や押出製品の水硬前後の過度の収縮を防止するために、ポリプロビレングリコール、ポリプロピレンポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール類、アルコキシポリプロピレングリコールアクリレート類等の収縮低減剤を配合できる。
セルロース系バインダーに類似の増粘効果や分離低減効果が期待できるものとして、ポリビニルアルコール;カルボキシメチルセルロース等のセルロース系水溶性高分子;ヒドロキシプロピル化デンプン等のデンプン系高分子;ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダ等のアクリル系水溶性高分子;キサンタンガム、グアガム等のバイオポリマー;アニオン性アクリル樹脂、EVA(エチレン酢酸ビニルエマルジョン)、PAE(ポリアクリル酸エステルエマルジョン)、PVAC(ポリ酢酸ビニルエマルジョン)、VAVeoVa(酢酸ビニルビニルバーサテートエマルジョン)等のエマルジョン系増粘剤や分離低減剤等を配合できる。
次に、セメント押出成形用混合物に配合することが好ましい成分について説明する。
【0037】
(セメント押出成形用混合物に配合可能な成分)
消泡剤として、エチレンオキシド、プロピレンオキシドを主成分とするポリオキシアルキレン系消泡剤、ポリプロピレングリコール系消泡剤や鉱物油系消泡剤、変性シリコーン系消泡剤、ジメチルポリシロキサン等を配合できる。
膨張剤として、アルミニウム粉体等を配合できる。また防錆剤、着色剤等を配合できる。
【0038】
防水剤や撥水剤として、塩化カルシウム、珪酸ナトリウム、珪酸質粉末、ジルコニウム化合物、脂肪酸石鹸、脂肪酸、脂肪酸エステル、またはこれらをエマルジョン化した脂肪酸系化合物や、シリコーンオイル、シリコーンエマルジョン、パラフィン、パラフィンエマルジョン、アスファルトエマルジョン、油含有廃白土、ゴムラテックス等を配合できる。
【0039】
セメントや無機材料の流動化等に寄与し、流動性やワーカービリティを向上させるために、AE剤、減水剤、AE減水剤、流動化剤、高性能AE減水剤等として、以下の成分を配合することができる。
AE剤として、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を配合できる。
【0040】
減水剤・AE減水剤として、リグニンスルホン酸塩またはその誘導体、オキシカルボン酸塩、ポリオール誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル誘導体、アルキルアリルスルホン酸塩のホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ポリカルボン酸系高分子化合物等を配合できる。
流動化剤として、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ポリカルボン酸化合物、ポリスチレンスルホン酸塩等を配合できる。
【0041】
高性能AE減水剤として、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物とリグニンスルホン酸類の混合物や、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物とポリカルボン酸系高分子化合物の混合物、メラミンスルホン酸塩ホルマリン縮合物とスランプロス低減剤の混合物、ポリカルボン酸化合物、ポリカルボン酸エーテル系化合物、芳香族アミノスルホン酸化合物等を、本発明の効果に悪い影響のない範囲で必要により配合できる。
セメント押出成形用混合物では、セメントを必須とする無機材料を主成分としており、セメントを必須とする無機材料以外の成分の配合は避けるほうが好ましいことは言うまでもないことである。そのために、セメントを必須とする無機材料とそれ以外成分の重量比(セメントを必須とする無機材料/それ以外の成分)は、90/10〜99.7/0.3が好ましい。
なお、本発明のセメント押出成形用混和剤、セメント押出成形用混合物およびセメント押出成形物では、アスベストは一切含まれない。
【実施例】
【0042】
以下に、本発明の実施例をその比較例等とともに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
但し、実施例1〜3及び6と、実施例A1〜8及びA13とは、それぞれ参考例1〜3及び6と、参考例A1〜8及びA13とする。
【0043】
〔実施例1〕
ナウタミキサー型混合機(SVミキサー50型、神鋼パンテック製)に、表2に示すセルロース系バインダーa(ヒドロキシエチルメチルセルロース、マーポローズME−350T、松本油脂製薬製)99.5重量部を投入し、自転12rpmおよび公転60rpmの攪拌条件下で充分撹拌しつつ、表1に示す界面活性剤Aを0.5重量部投入し、30分間攪拌を続けた。なお、ここで用いたセルロース系バインダーaの1重量%水溶液の粘度(20℃)は、10700mPa・s(B型粘度計、NO4、30rpm)であった。
攪拌終了後、アトマイザー(AT−50、ダルトン製)で得られた混合物を粉砕後、20mesh(目開き:870μm)の振動フルイに通して、混和剤1を得た。
【0044】
〔実施例2〜7〕
実施例1において、界面活性剤Aおよびセルロース系バインダーaの種類および量をそれぞれ表3に示すものに変更する以外は、実施例1と同様にして混和剤2〜7を得た。
【0045】
〔比較例1〜8〕
実施例1において、界面活性剤Aおよびセルロース系バインダーaの種類および量をそれぞれ表3に示すものに変更する以外は、実施例1と同様にして混和剤8〜15を得た。
なお、比較例7の混和剤14では、界面活性剤を配合せず、セルロース系バインダーaのみからなる。
実施例1〜7および比較例1〜8(混和剤1〜15)で用いた界面活性剤およびセルロース系バインダーについては、それぞれ表1および2に詳しく示した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
上記で得られた混和剤を用いて、セメント押出成形用混合物を調製し、水を加えてモルタルを製造し、押出成形を行ってセメント押出成形物を得た。
以下にその実施例、比較例、参考例および標準例を説明する。なお、参考例とは、配合されたセルロース系バインダーを全て溶解したモデルを示すものである。標準例とは、セメント押出成形用混和剤として広く一般に使われているセルロース系バインダーによる標準的な押出成形の例を示すものである。
【0050】
〔実施例A1〕
(セメント押出成形用混合物)
以下の表4に示す成分(合計102重量部)および混和剤1の1重量部をレーディゲミキサー(M20型、マツボー製)内に入れ、回転100rpmおよびチョッパー2400rpmの攪拌条件下で5分間攪拌し十分に混合して、セメント押出成形用混合物を得た。
【0051】
【表4】
【0052】
(モルタル)
得られたセメント押出成形用混合物を、引続きレーディゲミキサー内で撹拌しつつ、このセメント押出成形用混合物に水25重量部を約2〜2.5分間で噴霧するとともに、水噴霧開始から回転100rpmおよびチョッパー2400rpmの攪拌条件下で5分間撹拌し、ヒドロキシエチルメチルセルロースを溶解させ、均質な混合物を得た。
得られた均質な混合物を、10Lの双腕ニーダー(HBN−10D、本田鐵工製)内に入れ、3分間、充分に混練を行った後、粘土様の高粘性物質であるモルタルを調製した。
【0053】
(押出成形)
得られたモルタルを真空押出成形機(DE−50D、本田鐵工製)を用いて押出成形し、セメント成形板(セメント押出成形物)を作製した。
なお、成形条件は、真空押出成形機の系内温度は30℃、真空度は−0.096MPa以下であり、金型(40mm×10mm)を使用し、室温25℃、湿度60%の下で平板状のセメント押出成形物を得た。
得られたセメント押出成形物の品位(表面状態、吐出状態、寸法精度)、押出成形時の押出性(押出圧、押出速度、速度の標準偏差)およびセメント押出成形物の硬度を以下に示す評価基準にしたがって評価し、その結果を表5に示した。なお、評価は室温25℃、湿度60%の下で行った。
【0054】
〔実施例A2〜A14〕
実施例A1において、混和剤の種類および量を表5に示すものに変更する以外は実施例A1と同様に混合してセメント押出成形用混合物をそれぞれ得た。
得られたセメント押出成形用混合物から、実施例A1と同様にして、それぞれモルタルを調製し、押出成形してセメント押出成形物を作製し、実施例A1と同様に評価して、その結果を表5に示した。
【0055】
〔参考例A1〕
セルロース系バインダーの完全溶解モデルとして、セルロース系バインダー(マーポローズME−350T)を水に溶解して、濃度3重量%の高粘度水溶液を調製し、液状混和剤−1とした。
(液状混和剤−1の作成方法)
セルロース系バインダーaに90℃以上の熱水を撹拌しつつ、ママコが生じないように徐々に加え、粉体の熱水分散体を形成した状態とした。次いで、この熱水分散体を撹拌しつつ冷却し、セルロース系バインダーaを溶解させる。冷却後、セルロース系バインダーaの濃度が3重量%となるように水を加え、液状混和剤−1を得た。液状混和剤−1は、高粘度水溶液であり、粘度1050000mPa・s(20℃、B型粘度計、NO6、1rpm)で、超高粘度のシーラント状物であった。この様な超高粘度物の調製および使用は、現在のセメント押出成形における工業的な生産の見地からは不適である。
【0056】
表4に示した各成分(セメント、無機骨材、ポリプロピレン繊維およびパルプ粉;合計102重量部)をレーディゲミキサー(M20型、マツボー製)内に入れ、回転100rpmおよびチョッパー2400rpmの攪拌条件下で5分間攪拌し、十分に混合して予備混合物を得た。
次いで、予備混合物を引続きレーディゲミキサー内で撹拌しつつ、25.8重量部の液状混和剤−1をエアレス噴霧装置(グラコ製プレジデント205T型およびそのシステム)を使用して、約2〜2.5分間で予備混合物に噴霧するとともに、噴霧開始から回転100rpmおよびチョッパー2400rpmの攪拌条件下で5分間撹拌し、均質なセメント押出成形物用混合物を得た。なお、液状混和剤−1(25.8重量部)には、0.8重量部のセルロース系バインダーaおよび25重量部の水が含まれている。
【0057】
得られた混合物を、10Lの双腕ニーダー(HBN−10D、本田鉄工製)内に入れ、3分間、充分に混練を行った後、粘土様の高粘性物質であるモルタルを調製した。
参考例A1において、このモルタルを用いる以外は実施例A1と同様にして、押出成形してセメント押出成形物を作製し、実施例A1と同様に評価して、その結果を表6に示した。このセメント押出成形物では、押出性は合格であるが、品位は不合格と判定されている。
【0058】
〔標準例A1〜A5〕
実施例A1において、混和剤の種類および量を表7に示すものに変更する以外は実施例A1と同様に混合してセメント押出成形用混合物をそれぞれ得た。
得られたセメント押出成形用混合物から、実施例A1と同様にして、それぞれモルタルを調製し、押出成形してセメント押出成形物を作製し、実施例A1と同様に評価して、その結果を表7に示した。
【0059】
標準例A1〜A5は、セメント押出成形用混和剤として広く一般に使われているセルロース系バインダーによる標準的な押出成形の一例を示すものである。
標準例A4は、セメントおよび無機骨材の合計100重量部に対して、セルロース系バインダーaを1.2重量部添加した例である。標準例A4では、品位および押出性の両方が満足でき、セルロース系バインダーによる標準的な配合であり、セメント押出成形物の品位および押出性の標準として取扱った。
実施例A1〜A14では、セメント押出成形用混和剤は、セメントおよび無機骨材の合計100重量部に対して1.2重量部未満の添加であるが、品位および押出性の両方が満足できるセメント押出成形物が得られる。
【0060】
〔比較例A1〜A8〕
実施例A1において、混和剤の種類および量を表8に示すものに変更する以外は実施例A1と同様に混合してセメント押出成形用混合物をそれぞれ得た。
得られたセメント押出成形用混合物から、実施例A1と同様にして、それぞれモルタルを調製し、押出成形してセメント押出成形物を作製し、実施例A1と同様に評価して、その結果を表8に示した。
【0061】
〔比較例A9〜A15〕
セメント押出成形用混合物を調製する際に、以下の表4に示す成分(合計102重量部)、および表8に示す所定量の混和剤14をレーディゲミキサー(M20型、マツボー製)内に入れ、次いで表8に示す所定量の界面活性剤Aまたは界面活性剤Cを入れた。その直後に、回転100rpmおよびチョッパー2400rpmの攪拌条件下で5分間攪拌し、十分に混合してセメント押出成形用混合物をそれぞれ得た。
得られたセメント押出成形用混合物から、実施例A1と同様にして、それぞれモルタルを調製し、押出成形してセメント押出成形物を作製し、実施例A1と同様に評価して、その結果を表8に示した。
【0062】
〔セメント押出成形物の品位〕
(表面状態)
セメント押出成形時に金型より押出されるセメント押出成形物を目視により観察し、以下の評価基準により表面状態の評価を行った。
○:セメント押出成形物の表面が平滑で良好。
△:セメント押出成形物の表面に凹凸がやや見られる。
×:セメント押出成形物の表面に凹凸が見られるか、または、セメント押出成形物にひび割れが見られる。
【0063】
(吐出状態)
セメント押出成形時に金型より押出されるセメント押出成形物を目視により観察し、以下の評価基準により吐出状態の評価を行った。
○:セメント押出成形物が安定に真っ直ぐに押出される。
△:セメント押出成形物が押出される際やや変化が見られる。
×:セメント押出成形物が押出される際蛇行や浪打ち、フクレ等の変化が見られ、安定に真っ直ぐに押出されない。
【0064】
(寸法精度)
セメント押出成形時に金型より押出されたセメント押出成形物の寸法を測定し、金型寸法と比較することにより以下の評価基準により寸法精度の評価を行った。
○:セメント押出成形物の幅、厚みの誤差が共に0.2mm以下
△:セメント押出成形物の幅、厚みの誤差が共に0.2mm以上0.3mm以下
×:セメント押出成形物の幅、厚みの誤差が共に0.3mm以上
【0065】
〔押出成形時の押出性〕
(押出圧)
セメント押出成形時に、真空押出成形機に取り付けてある圧力計が示す平均圧力の読み取り値をxとし、混和剤14を使用した標準例A4の場合の平均圧力の読み取り値をyとして、(x/y)×100を計算して押出圧とした。そして、以下の評価基準により押出圧の評価を行った。ここで、押出圧が低いほど、押出成形機への負荷が低く、押出性が良好である。
×:115以上
△:105以上115未満
○:95以上105未満
◎:95未満
【0066】
(押出速度)
セメント押出成形時に、真空押出成形機より押出される際のセメント押出成形物の流れる速度を測定した値をaとし、混和剤14を使用した標準例A4の場合の速度の読み取り値をbとして、(a/b)×100を計算して押出速度とした。そして、以下の評価基準により押出速度の評価を行った。ここで、押出速度が速いほど生産性が高く、押出性が良好である。
◎:105以上
○:95以上105未満
△:85以上95未満
×:85未満
【0067】
(速度の標準偏差)
セメント押出成形時に、真空押出成形機より押出される際のセメント押出成形物の流れる速度の標準偏差をAとし、混和剤14を使用した標準例A4の場合の速度の標準偏差をBとして、(A/B)×100を計算して速度の標準偏差とした。そして、以下の評価基準により速度の標準偏差の評価を行った。ここで、速度の標準偏差が小さいほどモルタルの出来上がり状態が均一であり、押出性が良好である。
×:150以上
△:125以上150未満
○:75以上125未満
◎:75未満
【0068】
〔品位および押出性の総合判定〕
品位の3つの評価項目のうちで、○が2つ以上で、×が1つもない場合を合格(合)とし、それ以外を不合格(不)とした。
押出性の3つの評価項目のうちで、◎および/または○が2つ以上で、×が1つもない場合を合格(合)とし、それ以外を不合格(不)とした。
【0069】
〔セメント押出成形物の硬度〕
セメント押出成形時に金型より押出されたセメント押出成形物をクレー硬度計(日本碍子製)で硬度を測定し、以下の評価基準により硬度の評価を行った。ここで、「硬」の場合は一般に押出圧が高いことを表す。「軟」の場合は押出圧が低いことを現すが、押出圧が低いことは必要だが、モルタル硬度が「軟」であると保形性の低下でのエッジ部分の意匠性低下や寸法精度に問題が発生する場合がある。「適」の場合は品位および押出性ともに問題発生は少ない。
硬:12.5以上
適:11.5以上、12.5未満
軟:11.5未満
【0070】
【表5】
【0071】
【表6】
【0072】
【表7】
【0073】
【表8】
【0074】
表5〜7に示す結果より、以下に示す考察ができる。
(実施例A6、参考例A1および標準例A1〜A5の比較)
実施例A6では、参考例A1とほぼ同等以上の品位および押出性が得られており、配合されている混和剤は参考例A1とほぼ同等程度が溶解していることがわかる。
それに対して、標準例A1およびA2では、明らかに劣った品位および押出性を示しており、セルロース系バインダーが参考例A1に比べ溶解不十分であることを示している。標準例A3、A4およびA5のように、セルロース系バインダーを多く配合すれば、参考例A1と同等以上の品位および押出性を示す。
【0075】
(実施例A1〜A14および比較例A1〜A8の比較)
実施例A1〜A14では、押出成形用混合物への混和剤の配合量が少ないにもかかわらず、比較例A1〜A8と比較して、良好な品位および押出性が示されている。
それに対して、請求項1や請求項5で規定したアニオン性界面活性剤を満足しないものを用いた比較例A2〜A8では、品位および押出性の両方を満たすものではなく、押出成形用混合物への混和剤の配合量を少なくすることができない。
請求項1や請求項5で規定したアニオン性界面活性剤を多量に配合した比較例A1では、押出性良好ではあるが品位が劣る結果となり、品位および押出性の両方を満たすものではなく、押出成形用混合物への混和剤の配合量を少なくすることができない。
【0076】
(実施例A1〜A14および比較例A9〜A15の比較)
実施例A1〜A14では、混和剤を調製してから24時間以上経過した後にセメント押出成形用混合物を調製しており、比較例A9〜A15と比較して、品位および押出性が向上している。
それに対して、比較例A9〜A15のように、アニオン性界面活性剤をセルロース系バインダーと配合した混和剤としてではなくて、アニオン性界面活性剤の一部を無機材料に直接配合した場合は、アニオン性界面活性剤が主にセメントや無機材料等に作用して、モルタルの流動性が僅かに向上するが、実施例A1〜A14のように、品位および押出性の両方を満たすものではない。
混和剤を調製してから24時間以上経過した後にセメント押出成形用混合物を調製すること(セルロース系バインダーおよびアニオン性界面活性剤の事前配合)は、セルロース系バインダーの溶解性向上に寄与し、セメント押出成形物の品位と押出性向上に有効である。