(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この特許文献1のものによると、2つの嵌合部401、501が一体に形成されているので、相対的にネジ溝が小さいネジの場合には、ネジ溝に小径嵌合部501を嵌入させた際に広い当接面積を確保してネジを締緩させることができるが、ネジ溝が大きいネジの場合に問題が生じる。即ち、相対的に大きいネジ溝に嵌入させると、
図8に示すように、大径嵌合部401の先端に小径嵌合部501が一体に形成されているため、小径嵌合部501はネジ溝に嵌合せず、大径嵌合部401は後端側の一部がネジ溝の嵌入口付近に当接するのみとなる。従って、ドライバーを回動させた際にドライバーの大径嵌合部401とネジ溝との当接面積が不十分であるため、両者の当接部分が滑ってドライバーが空回りし、その結果、ネジ溝を破損させるおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ネジ溝の大きさが異なるネジに対応することができ、かつネジ溝を破損させることなく確実に締緩でき、作業効率を向上させるプラスドライバーを提供しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、プラスドライバーにおいて、小径嵌合部を大径嵌合部とは別体にして、その大径嵌合部の先端から出没できるようにスライド可能に支持することで、ネジ溝の大きさが異なるネジに対応でき、かつ確実に締緩できる工夫を設けた。
【0008】
具体的には、第1の発明では、ネジ頭部に形成された十字溝からなるネジ溝に嵌合する嵌合部を先端側に有し、後端側に操作部を有するプラスドライバーにおいて、該嵌合部は、大径嵌合部と、該大径嵌合部とは別体にかつ同心状にかつ回転一体に設けられ、該大径嵌合部よりも小径の小径嵌合部とからなり、大径及び小径嵌合部はそれぞれ先端に平面視で十字形状をなす4枚の嵌合片を有しており、該大径嵌合部の該嵌合片及び該小径嵌合部の該嵌合片は、それぞれ該プラスドライバーの先端側に向かうほど軸中心からの距離が小さくなっている。該大径嵌合部は、該大径嵌合部と一体に形成された連結部によって操作部に連結されており、該大径嵌合部及び該連結部の中心部には、少なくとも先端が開口した収容空間が設けられ、該小径嵌合部には軸部が一体に形成されており、該大径嵌合部の該収容空間には、該小径嵌合部及び該軸部が摺動可能に配設されている。そして、該軸部を軸方向後端側に摺動させることによって、該小径嵌合部の該嵌合片を該大径嵌合部の該嵌合片よりも先端側に突出した位置から、該大径嵌合部の該収容空間内に没入して該大径嵌合部の該嵌合片よりも後退した位置に移動可能になって
おり、該収容空間には、該軸部と同軸上にシャフトが配設され、該収容空間は、後端側に角筒収容部と先端側に円筒収容部とを備え、該シャフトの先端には、フランジ状に拡大し、側面が角筒収容部の外縁に沿うように形成された第1当接部が備えられ、該軸部の後端には、フランジ状に拡大し、側面が角筒収容部の外縁に沿うように形成され、上面が、シャフトの第1当接部の下面に当接するように配設された軸基部が備えられていることを特徴とする。
【0009】
第2の発明では、第1の発明において、該操作部には、小径嵌合部の嵌合片を大径嵌合部の嵌合片から突出した位置に維持するための、ロック状態またはロック解除状態に変位可能なロック機構が設けられ、該ロック機構がロック状態にあるときには、該小径嵌合部の該嵌合片が該大径嵌合部の先端から突出した状態で維持され、該ロック機構がロック解除状態にあるときには、該小径嵌合部の該軸部が軸方向後端側に摺動可能となり、該小径嵌合部の該嵌合片が該大径嵌合部の該収容空間に没入可能となっていることを特徴とする。
【0010】
第3の発明では、第1または第2の発明において、該操作部の内部には、該操作部を回動させた際に該操作部と該小径嵌合部とが別々に回動するのを防止する回り止め機構が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明では、プラスドライバーは、先端部にそれぞれ4枚の刃を有する大径嵌合部、小径嵌合部とを備えており、かつ小径嵌合部は大径嵌合部よりも先端側に突出することができるように設けられている。また、大径嵌合部及び小径嵌合部は、先端側にいくほど軸中心からの距離が小さくなっている。そして、小径嵌合部は大径嵌合部の内部に設けられた収容空間に収容できるようになっている。そのため、相対的にネジ溝の小さいネジを締緩するときには、小径嵌合部を大径嵌合部の先端から突出させた状態で嵌入させる一方、相対的にネジ溝の大きいネジを締緩するときには、小径嵌合部を大径嵌合部内部の収容空間に収容した状態で嵌入させることができる。このように小径嵌合部を大径嵌合部内部に収容した状態で大径ネジのネジ溝に嵌入させると、小径嵌合部は外部に突出していないため、大径嵌合部の4枚の嵌合片がそれぞれネジ溝の内壁に当接した状態となる。すなわち、当接面積を広く確保することができ、大径嵌合部の嵌合片がネジ溝にしっかりと嵌合した状態となる。よって、一本のプラスドライバーでネジ溝の大きさが異なるネジに対応することができる上に、強いトルクでプラスドライバーを回動させても、嵌合片とネジ溝との当接部が滑ってプラスドライバーが空回りすることがないため、ネジ溝を破損させることなく作業性に優れる。
【0012】
第2の発明では、プラスドライバーの操作部にロック状態及びロック解除状態に変位可能なロック機構が設けられている。そして、ロック機構がロック状態にあるときには小径嵌合部の嵌合片が大径嵌合部の先端から突出した状態で維持される。そのため、小径嵌合部を用いてネジの締緩を行う際に、先端方向に向けて荷重がかかった場合においても、小径嵌合部が大径嵌合部の先端から突出した状態を維持することができ、作業の安定性を確保することができる。
【0013】
第3の発明では、プラスドライバーの操作部内部に、操作部と小径嵌合部とが別々に回動するのを防止する回り止め機構が設けられている。すなわち、プラスドライバーを回動させた際に、操作部と小径嵌合部とが一緒に回動するようになっている。したがって、ネジ溝に小径嵌合部を嵌合させてプラスドライバーを回動させた際に、操作部のみが空回りすることがなく、確実にネジの締緩を行うことができる。また、操作部内部に回り止め機構が設けられていることで、嵌合部に設ける場合に比べ、容易に回り止め機構を設けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0016】
なお、以下の説明において、
図1ないし
図8における上方を「後端側」もしくは「上方」とし、下方を「先端側」もしくは「下方」とする。また、「ロック状態」とは、小径嵌合部の嵌合片が大径嵌合部先端から突出している状態をいい、「ロック解除状態」とは、小径嵌合部の嵌合片が大径嵌合部内に収容されて外部に突出していない状態をいう。
【0017】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るプラスドライバー1のロック状態における正面図を示す。上記プラスドライバー1は、後端側にネジを締緩する際に把持するグリップ部21を構成する操作部2を備え、先端側に、後述するようにネジやボルトのネジ頭に形成された十字溝からなるネジ溝に嵌合させるための金属製の嵌合部3を備えている。
【0018】
操作部2において、その軸方向中央よりも上方の側面には、操作部2内に連通する円形の開口部22が形成されている。操作部2の内部には、
図2に示すように後述するロック機構Rを構成するロックピン6が設けられている。ロックピン6を構成する一部分であって該ロックピン6を作動させるための解除ボタン61が、操作部2の内部から開口部22内に突出しており、その一部を外部から操作できるようになっている。
【0019】
操作部2の後端側には、後述する小径嵌合部5を大径嵌合部4から突出させるためのノック部7が設けられている。
【0020】
操作部2の先端側に備えられた上記嵌合部3は、大径嵌合部4と、この大径嵌合部4とは別体にかつ同心状に設けられ、大径嵌合部4よりも小径の小径嵌合部5とからなる。これらの大径嵌合部4及び小径嵌合部5は、それぞれ径の異なる円形軸状の金属部材の先端側に切欠溝41、51を設けることによって形成されている。切欠溝41、51は、大径嵌合部4及び小径嵌合部5の平面視で、軸中心を中心として上下左右対称な十字形状をなすように切削されている。また、切欠溝41、51は、後端側にいくほど表面からの深さが浅くかつ幅が狭くなっている。
【0021】
大径嵌合部4の後端側は、該大径嵌合部4と一体の円筒状の金属部材からなる連結部8を介して操作部2に連結されている。
【0022】
平面視で十字形状をなす大径嵌合部4及び小径嵌合部5は、それぞれ先端側に嵌合片42、52を備えている。嵌合片42、52は、上記切欠溝41、51が切欠き除去された残りの部分で構成されているもので、先端側にいくほど軸中心からの距離が小さくなっている。すなわち、
図1に示すように、嵌合片42、52は、先端側軸中心方向へ向かって傾斜する傾斜面42a、52aを有している。また、嵌合片42、52は、先端側にいくほど厚さが狭くなっている。
【0023】
図2は、
図1のA−A線断面図を示す。
図2に示すように、上記操作部2の内部には、先端側及び後端側が開口した略筒状の筒状空間23が設けられている。筒状空間23は、先端側(
図2におけるB−B線よりも下方)が断面矩形状の角筒状に形成され、他の部分(B−B線の上方)は円筒状に形成されている。
【0024】
筒状空間23には、その周囲壁部である操作部2の内壁面2aに沿うように形成された金属製の補助壁9が操作部2と一体的に配設されている。補助壁9には、後端側の一側面にロックピン6の配設を許容するための導入孔91が貫通状に設けられている。
【0025】
筒状空間23の軸中心には、軸方向に延びる金属製のシャフト10が配置されている。シャフト10の先端には、フランジ状に拡大する第1当接部11が備えられ、この第1当接部11は、下面11aが後述する摺動軸30の軸基部31の上面31aに当接し、側面11bが大径嵌合部4と一体の連結部8の連結部内壁8aに当接する。シャフト10の後端には、フランジ状に拡大する第2当接部12が備えられ、この第2当接部12は、上面12aが後述するガタつき防止ばね40の下部に当接し、側面12bが後述するノック部7の内壁7bに当接する。また、シャフト10の第1当接部11と第2当接部12との間には、等間隔を空けて2ヶ所に突設部13、14が設けられている。突設部13、14は、側面13a、14aが補助壁9の内壁9aに当接するように設けられている。シャフト10の後端側には、後述するロックピン6の係合爪62と係合する係合片15が半径方向に突出して設けられている。係合片15は、シャフト10と略直交する方向に延びる係合面15aを後端部に有している。係合片15と上記ロックピン6とでロック機構Rが構成されている。
【0026】
上記ノック部7は、先端側が開口して後端側が閉じた有底円筒状をなして形成されている。ノック部7は、先端側が操作部2の筒状空間23内に収容されて、後端側が操作部2の後端よりも上方へ突出し、外部から先端側に向かって押し操作できるように操作部2の筒状空間23内を軸方向へ摺動可能に配設されている。ノック部7の内部には、ノック部7のガタつきを防止するためのガタつき防止ばね40が軸方向に伸縮可能に縮装されている。ガタつき防止ばね40は、後端側がノック部7の内壁上面7aに当接し、先端側がシャフト10の第2当接部12の上面12aに当接している。
【0027】
上記ロックピン6は
図2に示すように、断面略L字状をなして形成されている。ロックピン6の上端には、シャフト10の係合片15と係合するための鈎状の係合爪62が操作部の中心に向かうように設けられている。係合爪62は、その先端側にロックピン6の上下方向に延びる長辺部63と略直交する方向に延びる係合面62aを有している。また、長辺部63には、外側へ向けてばね受部64が突設され、このばね受部64にて係合爪62が水平軸回りに揺動可能に補助壁9に軸支されている。ばね受部64にはロックばね65が配設され、ロックピン6はロックばね65によって
図2における反時計回り方向へ付勢されている。ロックピン6下端の水平方向に延びる短辺部66は、一端が操作部2内から補助壁9の導入孔91を通って操作部2の開口部22内に突出して、解除ボタン61を構成している。
【0028】
上記大径嵌合部4は、先端側にネジ溝に嵌合するための嵌合片42を備えている。大径嵌合部4の後端側には、大径嵌合部4と操作部2とを連結する連結部8が一体に形成されている。連結部8は、後端側が操作部2の内部に入り込んで大径嵌合部4と操作部2とを連結している。
【0029】
大径嵌合部4及び連結部8の軸中心には、先端側及び後端側が開口し、小径嵌合部5及び後述する摺動軸30とシャフト10を収容するための収容空間70が設けられている。収容空間70は、後端側(
図2におけるC−C線よりも上方)に位置する角筒状に形成された角筒収容部71と、先端側(C−C線の下方)に位置する円筒状に形成された円筒収容部72とで構成されている。角筒収容部71の外縁71aは、シャフト10の第1当接部11及び後述する摺動軸30の軸基部31の外周縁に沿うように形成されている。円筒収容部72の外縁72aは、後述する小径嵌合部5の摺動軸30の外径に沿うように形成されている。
【0030】
上記小径嵌合部5は、先端側にネジ溝に嵌合するための嵌合片52を備えている。小径嵌合部5の後端側には、小径嵌合部5を摺動させる金属製の摺動軸30が小径嵌合部5と一体に形成されている。摺動軸30は、大径嵌合部4及び連結部8内に形成された収容空間70に軸方向へ摺動可能に収容されている。摺動軸30の後端には、フランジ状に拡大する軸基部31が備えられ、この軸基部31は、側面31cが角筒収容部71の外縁71aに沿うように形成されている。また、軸基部31の上面31aは、シャフト10の第1当接部11の下面11aに当接するように配設されているため、シャフト10の作動を小径嵌合部5に伝達することができる。
図3に示すように、軸基部31とシャフト10の第1当接部11と角筒収容部71とで、ネジを締緩する際に操作部2と小径嵌合部5とが別々に回動することを防止する回り止め機構80を構成している。なお、本実施形態では角筒収容部71と軸基部31及びシャフト10の第1当接部11とを断面四角形状にして回り止め機構80を構成したが、この形状に限られるものではなく、他の形状としてもよい。
【0031】
図2に示すように、軸基部31の下面31bと角筒収容部71の下面71cとの間には、小径嵌合部5の嵌合片52が突出した状態を安定させるための軸ばね50が軸方向へ伸縮可能に縮装されている。軸ばね50は、後端側が軸基部31の下面31bに当接し、先端側が角筒収容部71の下面71cに当接する。軸ばね50は、上記ノック部7の内部に設けられたガタつき防止ばね40よりも強い伸長付勢力を有する。
【0032】
そして、軸ばね50の付勢力により上記摺動軸30(軸部)を軸方向後端側に摺動させることによって、小径嵌合部5の嵌合片52を大径嵌合部4の嵌合片42よりも先端側に突出した位置(
図2に示す位置)から、大径嵌合部4の収容空間70内に没入して該大径嵌合部4の嵌合片42よりも後退した位置に移動可能になっている。
【0033】
次に、実施形態1における作動状態を、
図2ないし
図7に基づいて説明する。まず、相対的に小さいネジ溝Maを有するネジMを締緩する際の作動状態を
図2ないし
図4に基づいて説明する。
【0034】
相対的に小さいネジ溝Maを有するネジMを締緩する際には、
図4に示すように、小径嵌合部5を用いて作業を行う。すなわち、
図2に示すように、小径嵌合部5の嵌合片52を大径嵌合部4の先端から約1.5mm突出させた状態(ロック状態)にして締緩作業を行う。
【0035】
このとき、小径嵌合部5に一体に形成された摺動軸30の軸基部31は連結部8内の角筒収容部71に設けられた軸ばね50の伸長力によって、上方へ付勢されている。また、シャフト10も第1当接部11が軸基部31に当接しているため、軸ばね50の伸長力によって上方へ付勢されている。
【0036】
シャフト10の後端側にはシャフト10と略直交する方向に係合面15aを有する係合片15が設けられている。
【0037】
ロックピン6は、長辺部63に突設されたばね受部64に設けられたロックばね65によって、
図2における反時計回り方向へ付勢されている。ロックピン6の上端には、長辺部63と略直交する方向に係合面62aを有する鉤状の係合爪62が形成されている。そして、ロックピン6の係合爪62の係合面62aと、シャフト10の係合片15の係合面15aとが互いに当接するようになっている。ロックピン6の係合爪62は
図2における反時計回り方向へ付勢されていて、シャフト10の係合片15は上方へ向けて付勢されているため、それぞれのばね力により、強固に係合した状態が維持される。すなわち、
図2に示すように、小径嵌合部5の嵌合片52が大径嵌合部4の先端から突出した状態においては、シャフト10の係合片15とロックピン6とで構成されたロック機構Rによって、突出状態が維持されるロック状態となっている。
【0038】
かかるロック状態において、小径嵌合部5の嵌合片52をネジ溝Maに嵌合させると、
図4に示す状態となる。この
図4に示すように、小径嵌合部5の嵌合片52はネジ溝Maに入り込んで、嵌合片52の傾斜面52aはネジ溝Maの傾斜壁Mbと当接する。また、小径嵌合部5の切欠溝51の一部が、ネジ溝Maの内壁Mcに当接する。このように、小径嵌合部5の嵌合片52及び切欠溝51がそれぞれネジ溝Maに当接し、特に嵌合片52とネジ溝Maとは、十分に広い当接面積を確保することができる。そのため、強いトルクで回動させても、小径嵌合部5とネジ溝Maとの当接部分が滑って小径嵌合部5が空回りしてネジ溝Maを損傷することがない。
【0039】
また、
図3に示すように、連結部8内に形成された角筒収容部71は、断面四角形状をなしている。角筒収容部71に収容されたシャフト10の第一当接部及び摺動軸30の軸基部31は、それぞれ外周縁が角筒収容部71の外縁71aに沿うように形成されている。そのため、操作部2を回動させると、シャフト10と摺動軸30とが一緒に回動する。すなわち、操作部2を回動させた際に、操作部2と小径嵌合部5とが別々に回動することがなく、作業性が安定する。
【0040】
次に、相対的に大きいネジ溝Naを有するネジNを締緩する際の作動状態を
図5ないし
図6に基づいて説明する。
【0041】
相対的に大きいネジ溝Naを有するネジNを締緩する際には、
図6に示すように、大径嵌合部4を用いて作業を行う。そのためには、
図5に示すように、小径嵌合部5の嵌合片52を大径嵌合部4内の収容空間70に収容させた状態(ロック解除状態)にする必要がある。そこで、ロック解除状態にする作動について、以下説明する。
【0042】
ロックピン6の解除ボタン61は、操作部2内の筒状空間23から補助壁9の導入孔91を通って、操作部2の開口部22内に位置し、外部から操作できるようになっている。この解除ボタン61を外部から押し込むと、ロックピン6はロックばね65の付勢力に抗して
図5における時計回り方向へ回動し、ロックピン6の係合爪62とシャフト10の係合片15との係合状態が解除される。
【0043】
シャフト10及び小径嵌合部5と一体に形成された摺動軸30は、軸ばね50によって上方へ付勢されているため、上記係合状態が解除されるとともに、上方へ摺動する。一方、シャフト10の第2当接部12とノック部7の内壁上面7aとの間にはガタつき防止ばね40が設けられているが、相対的に軸ばね50の方が強い付勢力を有しているため、シャフト10及び摺動軸30は、ガタつき防止ばね40の付勢力に抗して上方へ摺動する。シャフト10は、突設部13、14が補助壁9に当接しながら摺動するため、左右にぶれることなく摺動する。かかる摺動軸30の摺動によって、摺動軸30と一体に形成された小径嵌合部5も必然的に上方へ摺動する。このとき、軸ばね50及びガタつき防止ばね40の伸長力は、小径嵌合部5が完全に大径嵌合部4の収容空間70に収容されるように設定されている。そのため、ロック解除状態においては、
図5に示すように、小径嵌合部5は大径嵌合部4内に形成された収容空間70に収容され、大径嵌合部4から先端側(外部)に突出していない没入状態となる。それとともに、ロックピン6はロックばね65の付勢力によって、
図5に二点鎖線で示す元の所定位置に戻る。
【0044】
かかるロック解除状態において、大径嵌合部4の嵌合片42をネジ溝Naに嵌合させると、
図6に示す状態となる。この
図6に示すように、大径嵌合部4の嵌合片42はネジ溝Naに入り込んで、嵌合片42の傾斜面42aはネジ溝Naの傾斜壁Nbと当接する。また、大径嵌合部4の切欠溝41の一部が、ネジ溝Naの内壁Ncに当接する。このように、大径嵌合部4の嵌合片42及び切欠溝41がそれぞれネジ溝Naに当接し、特に嵌合片42とネジ溝Naとは、十分に広い当接面積を確保することができる。そのため、強いトルクで回動させても、大径嵌合部4とネジ溝Naとの当接部分が滑って大径嵌合部4が空回りしてネジ溝Naを損傷することがない。
【0045】
次に、再び
図4に示す小径嵌合部5の嵌合片52が大径嵌合部4の先端から突出した状態(ロック状態)にする際の作動状態について説明する。
【0046】
小径嵌合部5が大径嵌合部4内に収容されたロック解除状態において、ロックピン6の解除ボタン61を外部から押し込んで、ロックピン6をロックばね65の付勢力に抗して
図5における時計回り方向へ回動させる。この操作とともに、操作部2の後端に設けられたノック部7を下方へ押し込む。そうすると、シャフト10の係合片15は下方へ摺動する。シャフト10の係合片15がロックピン6の係合爪62よりも下方まで摺動したときに、ロックピン6の押し込みを解除する。
【0047】
そうすると、ロックピン6がロックばね65の付勢力により
図5における反時計回り方向へ回動するので、シャフト10の係合片15の係合面15aとロックピン6の係合爪62の係合面62aとが再び係合し、
図2に示すロック状態となる。
【0048】
なお、ロックピン6の解除ボタン61を外部から押し込むことなく、操作部2後端のノック部7を下方へ押し込むことのみで、
図2に示すロック状態とするようにしてもよい。例えば
図2等に示すように、シャフト10の係合片15において係合面15aよりも下側部を、下方に向かってシャフト10中心側に向かうように傾斜する傾斜面とする一方、ロックピン6の係合爪62において係合面62aよりも上側部を、上方に向かってシャフト10中心から離れる半径方向外側に向かうように傾斜する傾斜面としておく。ノック部7を下方へ押し込むと、シャフト10の係合片15の上記傾斜面がロックピン6の係合爪62の上記傾斜面を押して、ロックピン6をロックばね65の付勢力に抗して
図5で時計回り方向に回動させることができ、引き続きノック部7を押し込んで、両方の傾斜面同士の当接がなくなると、ロックピン6がロックばね65の付勢力により
図5の反時計回り方向へ回動し、上記と同様に、シャフト10の係合片15の係合面15aとロックピン6の係合爪62の係合面62aとが再び係合する。
【0049】
本実施形態では、このように、一本のドライバー1で異なる大きさからなるネジ溝Ma、Naに確実に嵌合させることができ、小径嵌合部5と大径嵌合部4との切替も簡単に行うことができる。そのため、複数のドライバーを携帯したり、作業中にドライバーを持ち替えたりする必要がなく、作業効率を向上させることができる。
【0050】
なお、本実施形態では、ロックピン6の解除ボタン61を押し込んだ状態でノック部7を下方に摺動させるようにしたが、解除ボタン61が押込まれた状態で維持される構成とし、ノック部7を押込むだけの操作でロック状態にすることも可能である。例えば、
図5のロック解除状態において、ロックピン6が二点鎖線で示す元の位置に戻らないように、すなわち実線で示す状態を維持できるように、係合片15が係合爪62に当接した状態を係合構造や磁石を利用して維持する等の構成にしてもよい。この係合片15が係合爪62に当接した状態を解除するには、例えばシャフト10に突起を設け、ノック部7を下方に押し込んだときに、その突起がロックピン6の短辺部66を押してロックピン6を
図5で反時計回り方向に回動させるようにすればよい。
【0051】
また、本実施形態では、ばねによるロック機構Rを設けたが、この構成に限られたものではなく、回転ロック機構やスライドロック機構を設けても良い。
【0052】
(実施形態2)
図7は、本発明の実施形態2を示す断面図である。連結部8内の角筒収容部71には、受け部材90がボルト等により固定されている。受け部材90と摺動軸30の軸基部31との間には、軸方向へ伸縮可能に押圧ばね91が設けられている。このため、小径嵌合部5は押圧ばね91の付勢力によって、常に下方へ押圧された状態(通常状態)となっている。
【0053】
相対的に小さいネジ溝を有するネジを締緩する際には、かかる通常状態で作業を行う。相対的に大きいネジ溝を有するネジを締緩する際には、通常状態でプラスドライバー101をネジ溝に嵌合させると、小径嵌合部5の先端がネジ溝の中心部分に当接する。さらにプラスドライバー101を押し込むと、小径嵌合部5は押圧ばね91の付勢力に抗して、上方へ摺動することとなる。押し込まれることよって、小径嵌合部5は大径嵌合部4の嵌合片42の先端面42bがネジ溝に当接するまで上方へ摺動することとなり、その結果、小径嵌合部5が大径嵌合部4内の収容空間70に収容された状態となる。そのため、実施形態1と同様に、相対的に大きいネジ溝を有するネジを締緩する際にも広い当接面積を確保することができ、締緩作業の効率が向上する。