特許第6025460号(P6025460)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025460
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】パイル編成方法
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/02 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   D04B1/02
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-192342(P2012-192342)
(22)【出願日】2012年8月31日
(65)【公開番号】特開2014-47446(P2014-47446A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】島崎 宣紀
(72)【発明者】
【氏名】中口 一人
(72)【発明者】
【氏名】山内 賢
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−047854(JP,A)
【文献】 特開2005−290572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B1/00−39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも前後に対向する前後一対の針床と、各針床に複数本並列して設けられる複合針を備え、前後の針床間で編目の目移しが可能な横編機を用いて、
締糸で編成されたベース部と、このベース部に編み込まれたパイル糸の一部によって形成されるパイルループと、を備えるパイル編地部を編成するパイル編成方法において、
針床の編幅方向にパイル編成領域を規定し、そのパイル編成領域における各編目が係止される複数の複合針を、2以上のn個の組P〜組Pに分け、
前記組P〜Pのうち、任意の組Pを選択し、前記締糸を用いて、組Pの複合針で留め置き編成を行なって接合部編目を編成すると共に、組Pを除く残りの組の複合針でニットを行なってニット目を編成する工程αと、
前記工程αの後に、前記パイル糸を用いて、組Pの複合針でタックを行なって前記接合部編目とタック目とからなる重ね目を編成すると共に、組Pの複合針を備える針床に対向する針床の複合針でパイルループを編成する工程βと、
前記工程αと工程βを、選択する組Pがなくなるまで繰り返す工程γと、
前記工程β以降の任意のタイミングで前記パイルループを複合針から外す工程δと、
を行なうことを特徴とするパイル編成方法。
但し、組P〜Pは、編幅方向に4つ以上連続する複合針を有さない。
【請求項2】
前記nは2であることを特徴とする請求項1に記載のパイル編成方法。
【請求項3】
請求項2に記載のパイル編成方法において、
組Pの複合針と、組Pの複合針と、が交互に並ぶように組分けをすることを特徴とするパイル編成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締糸で編成されたベース部と、このベース部に編み込まれたパイル糸の一部によって形成されるパイルループと、を備えるパイル編地部を編成するパイル編成方法、およびそのパイル編成方法を用いて編成されたパイル編地部を有する編地に関する。
【背景技術】
【0002】
フェイスタオルやバスタオルなどのパイル編地部を備える編地が知られている。このパイル編地部を編成する方法として、本出願人は、複合針を備える横編機を用いパイル編成方法を提案した(例えば、特許文献1の段落0042〜0045、および図22〜28を参照)。複合針は、先端にフックを有する針本体と、先端にタングを形成した2枚のブレードを有するスライダーと、を備え、針本体とスライダーとの相対移動によってスライダーの先端に設けたタングでフックを開閉し、そのタングがフックを越える位置まで進出可能に構成された編針のことである。この特許文献1のパイル編成方法によれば、編地の一部にパイル編地部を編成することが可能になる。
【0003】
特許文献1に開示されるパイル編成方法を、図2〜4に基づいて簡単に説明する。図2は、パイル編地部の編成工程図である。また、図3は、編成工程において行なう『留め置き編成』の手順を示す説明図、図4は、留め置き編成後にパイルループを編成する手順を示す説明図である。図2の左欄の『アルファベット+数字』は編成工程の番号を、右欄は各編成工程における針床上の編成状態を示す。右欄における縦棒は複合針の針本体を、横棒はスライダーを示す(スライダーは、スライダーを使用する工程においてのみ示す)。また、右欄の大文字A〜Hは後針床BBの複合針の位置を、小文字a〜hは前針床FBの複合針の位置を示し、水滴状のマークはT0に示す編成開始時にBBに係止される旧編目1を、Ω状のマークはタック目4を、V字状のマークはパイルループ5を、Π状のマークは留め置き編成によって編成される接合部編目2を示す。留め置き編成については図3を参照して後述する。
【0004】
図2のT0には、BBの複合針A〜Hに旧編目1が係止された状態が示されている。この状態から、パイル編地部を編成するパイル編成領域を規定する。図2に示す例では、編幅方向に並ぶ全ての旧編目1をパイル編成領域の編目として規定する。次のT1では、締糸7Yを用いて、そのパイル形成領域の旧編目1に対して留め置き編成を行なうベース部編成工程を実施し、接合部編目2からなるベース部7BがBBの複合針A〜Hに編成された状態とする。ここで、『留め置き編成』とは、図3(A)に示す複合針9の針本体90のフックに係止される旧編目1を、図3(B)に示すように同じ複合針9のスライダー91上にホールディングし、それによって空になったフックに編糸(パイル編成では特に締糸と呼ぶ)を給糸して、フックに接合部編目2を形成することである。フックに給糸する編糸は、旧編目1を編成した編糸と同じでも良いし、異なっていても良い。
【0005】
T2では、締糸7Yとは異なる編糸(パイル糸8Y)を用いて、FBの複合針a〜hにパイルループ5を編成することと、BBの複合針A〜Hにタック目4を編成することと、を交互に繰り返すパイルループ編成工程を実施する。このT2によって、図4に示すように、接合部編目2とタック目4とからなる重ね目が旧編目1から引き出されてフックに係止された状態となり、タック目4を構成するパイル糸8Yがベース部7Bに編み込まれる。また、タック目4に繋がるパイルループ5は、FBの複合針(図4では図示略)に係止される。
【0006】
T3では、パイルループ5をFBの複合針a〜hのフックから外す。複合針a〜hから外されたパイルループ5は、ベース部7Bの表面から突出した状態となる。さらにパイル編地部をウエール方向に形成するのであれば、BBの複合針A〜Hに係止される重ね目を、T0の旧編目1と見做し、T1,T2を繰り返す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2917146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図3(B)に示すように、留め置き編成を行なうと、針本体90のフックに接合部編目2が形成されるが、図3(B)の段階ではこの接合部編目2のループ形状はまだ固定されていない。接合部編目2が、旧編目1のように何らかの編目のウエール方向に連続して編成されたものではないからである。ここで、上記特許文献1のパイル編成方法では、ベース部編成工程においてこの留め置き編成を編幅方向に連続して行なっており、ループ形状が固定されていない接合部編目2が編幅方向に連続して並ぶことになる。そうなると、接合部編目2の保持状態が不安定になる場合があり、ベース部編成工程に続くパイルループ編成工程が行ない難くなる恐れがある。そこで、特許文献1のパイル編成方法を行なう場合、隣接する複合針間で編糸を下方に押えるループプレッサやシンカーなどの付加的なハードウェアを用いて接合部編目2の保持状態を安定させ、パイルループ編成工程を実施することが好ましい。しかし、このような付加的なハードウェアを備えない横編機もあるため、付加的なハードウェアを用いることなく、安定してパイル編地部を編成できるパイル編成方法が望まれている。
【0009】
また、編成されたパイル編地部においてパイルループをしっかりしたものにしたいというニーズもある。パイル編地部では、パイルループがベース部から突出しているため、この突出したループに何かが引っ掛かったときに、パイルループがベース部から引き出され、編地が形崩れする場合があるからである。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、付加的なハードウェアに依存せずに安定してパイル編地部を編成できるパイル編成方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、パイルループがしっかりしており、形崩れし難いパイル編地部を備える編地を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のパイル編成方法は、少なくとも前後に対向する前後一対の針床と、各針床に複数本並列して設けられる複合針を備え、前後の針床間で編目の目移しが可能な横編機を用いて、締糸で編成されたベース部と、このベース部に編み込まれたパイル糸の一部によって形成されるパイルループと、を備えるパイル編地部を編成するための方法である。この本発明のパイル編成方法は、針床の編幅方向にパイル編成領域を規定し、そのパイル編成領域内で旧編目が係止される複数の複合針を、2以上のn個の組P〜組Pに分け、次の工程α〜工程δを行なうことを特徴とする。但し、組P〜Pは、編幅方向に4つ以上連続する複合針を有さないように組分けする。もちろん、各組P〜Pの編針は重複してはならない。
[工程α]…前記組P〜Pのうち、任意の組Pを選択し、前記締糸を用いて、組Pの複合針で留め置き編成を行なって接合部編目を編成すると共に、組Pを除く残りの組の複合針でニットを行なってニット目を編成する。ここで、Pのmは、1〜nまでの任意の自然数である。
[工程β]…前記工程αの後に、前記パイル糸を用いて、組Pの複合針でタックを行なって接合部編目とタック目とからなる重ね目を編成すると共に、組Pの複合針を備える針床に対向する針床の複合針でパイルループを編成する。
[工程γ]…前記工程αと工程βを、選択する組Pがなくなるまで繰り返す。
[工程δ]…前記工程β以降の任意のタイミングで前記パイルループを複合針から外す。
【0012】
上記本発明のパイル編成方法におけるパイル編成領域内の複合針の組分け数は、2以上であれば良く、3でも4でも構わない。例えば、組分け数を3とした場合、組Pを選択し、組Pの複合針で留め置き編成を行なうと共に、組P,Pの複合針でニットを行なう工程αを実施し、その後、工程βを実施する。次いで組Pを選択して工程αと工程βを行ない、最後に組Pを選択して工程αと工程βを行なえば良い。編成効率を考えれば、組分け数は2とすることが好ましい。パイル編成領域内の複合針の組分け数を2とする場合、一方の組Pの複合針と、他方の組Pの複合針と、が交互に並ぶように組分けをすることが好ましい。
【0013】
上記本発明のパイル編成方法における工程δを行なうタイミングは特に限定されない。例えば、組分け数を3とした場合を以下に例示する。もちろん、以下の例示に限定されるわけではない。
(例示1)
…『組Pの工程α,β』→『組Pの工程δ』→『組Pの工程α,β』→『組Pの工程δ』→『組Pの工程α,β』→『組Pの工程δ』
(例示2)
…『組Pの工程α,β』→『組Pの工程α,β』→『組P,Pの工程δ』→『組Pの工程α,β』→『組Pの工程δ』
(例示3)
…『組Pの工程α,β』→『組Pの工程α,β』→『組Pの工程α,β』→『組P,P,Pの工程δ』
編成効率を考えれば、例示3に示すように、全ての工程αと工程βが終了した後(即ち工程γの後)に工程δを行なうことが好ましい。
【0014】
本発明のパイル編地部を有する編地は、少なくとも前後に対向する前後一対の針床と、各針床に複数本並列して設けられる複合針を備え、前後の針床間で編目の目移しが可能な横編機を用いて編成された編地であり、締糸で編成されたベース部と、このベース部に編み込まれたパイル糸の一部によって形成されるパイルループと、を備える。この本発明のパイル編地部を有する編地は、次の[1]〜[4]構成を備えることを特徴とする。
[1]…前記ベース部は、複数の接合部編目と、複数のニット目と、からなる。
[2]…各接合部編目に前記パイル糸のタック目が重ねられることで、前記パイル糸が前記ベース部に編み込まれている。
[3]…前記パイルループは、前記パイル糸のうち、編幅方向に最も近接するタック目の間を繋ぐ部分によって形成されている。
[4]…前記パイル編地部には、前記接合部編目が編幅方向に4つ以上連続する箇所が存在しない。
【発明の効果】
【0015】
本発明のパイル編成方法は、従来一度に行なっていたベース部編成工程とパイルループ編成工程を敢えて複数回に分けて行なうパイル編成方法である。そして、本発明のパイル編成方法では、その複数回に分けた各ベース部編成工程(工程α相当)において、接合部編目を編成する留め置き編成の合間にニット目の編成を行なっている。このニット目は、接合部編目を複合針のフックから外れ難くするアンカーの役割を果たし、工程αに続くパイルループ編成工程(工程β相当)を安定して行えるようにする。ニット目が接合部編目の保持状態を安定させるアンカーの役割を確実に果たすのは、接合部編目が編幅方向に4個以上連続しない場合である。つまり、接合部編目が編幅方向に3個連続することは許容する。接合部編目が3個連続する場合、両端部の接合部編目のいずれかの隣には必ずニット目が編成され、そのニット目が、編幅方向に3個連続する接合部編目の保持状態を安定させる。なお、ニット目がアンカーの役割を果たす理由は、実施形態で詳しく述べる。
【0016】
本発明のパイル編成方法において、パイル編成領域内の複合針の組分け数を2とし、一方の組Pの複合針と、他方の組Pの複合針と、が交互に並ぶように組分けすることで、工程αに続く工程βをより安定的に実施することができる。
【0017】
本発明のパイル編地部を有する編地は、編地の少なくとも一部に形成されるパイル編地部を本発明のパイル編成方法によって編成することで得られる。この本発明のパイル編地部を有する編地のパイル編地部は、丈夫で、形崩れし難い。それは、パイル編地部のベース部がしっかりしており、そのためパイルループがベース部から引き出され難くなっているからである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】留め置き編成を用いた本発明のパイル編地部の編成工程図である。
図2】留め置き編成を用いた従来のパイル編地部の編成工程図である。
図3】留め置き編成を行なう際の編目の係止状態を説明する説明図であって、(A)は留め置き編成を行なう前の複合針における編目の係止状態を、(B)は留め置き編成を行なった後の複合針における編目の係止状態を示す。
図4】留め置き編成の後に、パイルループを形成する際の編目の係止状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の実施形態では、左右方向に延び、かつ前後方向に互いに対向する一対の針床を備え、前後の針床間で編目の目移しが可能な2枚ベッド横編機を用いた編成例を説明する。この横編機に備わる複合針は、フックを有する針本体と、針本体に対して相対的にスライドするスライダーと、を備える複合針である(例えば、特許2917146号公報を参照)。もちろん、使用する横編機は2枚ベッド横編機に限定されるわけではなく、例えば4枚ベッド横編機であっても良い。
【0020】
本実施形態では、図1の編成工程図を参照し、本発明のパイル編成方法を説明する。図1の見方は、背景技術の説明の際に用いた図2と同じである。
【0021】
S0には、BBの複合針A〜Hに旧編目1が係止された状態が示されている。このS0の状態からパイル編地部を編成していく。ここで、パイル編地部を編成するにあたり、針床の編幅方向にパイル編成領域を規定すると共に、パイル編成領域内で旧編目1が係止される複合針を、2以上の組に区分する。本実施形態では、BB全体をパイル編成領域と規定し、複合針B,D,F,Hからなる組Pと、複合針A,C,E,Gからなる組Pと、に区分した。
【0022】
S1では、締糸7Yを用いて、組Pの複合針B,D,F,Hに留め置き編成を行なうことと、組Pの複合針A,C,E,Gにニットを行なうことと、を交互に繰り返した(工程α相当)。その結果、留め置き編成によって複合針B,D,F,Hには接合部編目2が編成され、複合針A,C,E,Gには旧編目1のウエール方向に続くニット目3が編成され、BBにおいて接合部編目2とニット目3とからなるベース部7Bが1段分編成される。また、留め置き編成によって、S0において複合針B,D,F,Hに係止されていた旧編目1は、複合針B,D,F,Hのスライダー(横棒で示す)上に保持された状態になる。なお、留め置き編成については、図3を用いて既に説明しているので、その説明を参照のこと。
【0023】
ここで、上記S1において複合針B,D,F,Hの針本体に編成される接合部編目2の保持状態は、ループプレッサやシンカーなどの付加的なハードウェアの助けがなくとも非常に安定している。それは、複合針B,D,F,Hの針本体に係止される接合部編目2の左右に繋がるニット目3が、複合針B,D,F,Hの接合部編目2を下方に下げて安定させるアンカーの役割を果たすからである。なお、本発明のパイル編成方法は、上記付加的なハードウェアの使用を否定するものではない。付加的なハードウェアを併用すれば、上記保持状態はより安定する。
【0024】
S2では、締糸7Yとは異なるパイル糸8Yを用いて、組Pの複合針B,D,F,Hに係止される接合部編目2にタックを行なうことと、FBの複合針b,d,f,hに掛け目からなるパイルループ5を編成することと、を交互に繰り返した(工程β相当)。複合針B,D,F,Hでタック目4を編成することで、S1においてスライダー上に保持されていた旧編目1のウエール方向に連続する重ね目(接合部編目2、タック目4)が複合針B,D,F,Hに係止された状態になり、パイル糸8Yがベース部7Bに編み込まれる。このタック目4の編成の際、接合部編目2の保持状態が安定しているため、タック目4の編成(即ち、重ね目の編成)を安定して行なうことができる。一方、タック目4の合間に編成されるパイルループ5は、パイル糸8Yのうち、編幅方向に最も近接するタック目4,4の間を繋ぐ部分によって形成される。
【0025】
S3では、組Pを選択し、S1と同様の編成を行なった(工程γ相当)。具体的には、組Pの複合針A,C,E,Gに留め置き編成を行なうことと、組Pの複合針B,D,F,Hにニットを行なうことと、を交互に繰り返した。留め置き編成によって複合針A,C,E,Gには接合部編目2’が編成され、複合針B,D,F,HにはS2の重ね目のウエール方向に続くニット目3’が編成され、BBにおいて接合部編目2’とニット目3’とからなるベース部7Bが1段分編成される。また、S1において複合針A,C,E,Gに編成されたニット目3は、複合針A,C,E,Gのスライダー上に保持された状態になる。
【0026】
S4では、組Pを選択し、S2と同様の編成を行なった(工程γ相当)。具体的には、組Pの複合針A,C,E,Gに係止される接合部編目2’にタックを行なうことと、FBの複合針a,c,e,gにパイルループ5’を編成することと、を交互に繰り返した。複合針A,C,E,Gでタック目4’を編成することで、S3においてスライダー上に保持されていたニット目3のウエール方向に連続する重ね目(接合部編目2’、タック目4’)が複合針A,C,E,Gに係止された状態になる。このタック目4’の編成の際、接合部編目2’の保持状態が安定しているため、タック目4’の編成(即ち、重ね目の編成)を安定して行なうことができる。なお、パイルループ5’を編成する複合針は、パイルループ5を編成した複合針と同じ複合針であっても構わない。パイルループ5,5’は共に、次のS5で複合針から外してしまうので、どの複合針で編成しようと問題にならないからである。
【0027】
S4が終了した時点でのFBとBBにおける編目の係止状態をS4’に示す。このS4’の時点ではFBにパイルループ5,5’が係止されている。そこで、S5では、これらパイルループ5,5’をFBの編針から外す(工程δ相当)。その際、パイルループ5からBBに延びる渡り糸と、パイルループ5’からBBに延びる渡り糸とが、歯口の位置で交差しているため、パイルループ5,5’が複合針から外し易くなっている。例えば、編針bからパイルループ5が外れるときを例にすれば、編針cのパイルループ5’からBBに延びる渡り糸が、パイルループ5の浮き上がりを抑制するので、パイルループ5が外れ易い。外されたパイルループ5,5’はベース部7Bの表面から突出した状態になる。
【0028】
なお、パイルループ5,5’の外しは、1回で行なう必要はなく、2回以上にわけても良い。例えば、パイルループ5を全て外してから、パイルループ5’を全て外しても良いし、その逆であっても良い。その他、S2で編成したパイルループ5は、S3の前に編針B,D,F,Hから外しても構わない。
【0029】
<応用例>
図1を参照する編成工程では、編地の全面にわたってパイル編地部を編成する例を説明した。これに対して、編地のごく一部にパイル編地部を編成することもできる。例えば、編地に花柄状のパイル編地部を形成すれば、編地の表面に盛り上がったパイルループによって花柄を形成することができる。その他、一つの編地において、表側にパイルループが突出するパイル編地部と、裏側にパイルループが突出するパイル編地部と、を混在させることもできる。
【符号の説明】
【0030】
1 旧編目
2,2’ 接合部編目
3,3’ ニット目
4,4’ タック目
5,5’ パイルループ
7Y 締糸 7B ベース部
8Y パイル糸
9 複合針 90 針本体 91 スライダー
図1
図2
図3
図4