特許第6025510号(P6025510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025510
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】保冷容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/18 20060101AFI20161107BHJP
   B65D 43/20 20060101ALI20161107BHJP
   B65D 25/20 20060101ALI20161107BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   B65D81/18 A
   B65D43/20 A
   B65D25/20 M
   F25D11/00 101F
【請求項の数】4
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2012-245109(P2012-245109)
(22)【出願日】2012年11月7日
(65)【公開番号】特開2014-91574(P2014-91574A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006884
【氏名又は名称】株式会社ヤクルト本社
(73)【特許権者】
【識別番号】593205831
【氏名又は名称】東邦商事株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000250731
【氏名又は名称】龍野コルク工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594129437
【氏名又は名称】明興産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】特許業務法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久 保 昌 男
(72)【発明者】
【氏名】豊 島 邦 光
(72)【発明者】
【氏名】菅 野 逸 雄
(72)【発明者】
【氏名】平 出 吉 孝
(72)【発明者】
【氏名】秋 田 健太郎
【審査官】 遠藤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02915884(US,A)
【文献】 特開昭61−208478(JP,A)
【文献】 実開昭56−058071(JP,U)
【文献】 実開平03−126841(JP,U)
【文献】 特開昭62−293073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/18
B65D 25/20
B65D 43/20
F25D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に開口部が形成された容器本体を有し、当該開口部を介して容器本体内の空気が容器本体下方の領域側に供給され、且つ容器本体下方の領域からの空気が容器本体内に供給され、容器本体内には上方が開放し且つ多数の孔を有する第2の容器が収容されている保冷容器において、前記容器本体下方の領域には冷却ユニットが設けられており、容器本体の全ての側壁は両端が外方へ突出しており、中央が内方に凹んだ湾曲線で構成され、前記全ての側壁の断熱材は側壁中央部よりも角部が厚くなっており、前記第2の容器の底部には下方へ突出したリブが設けられ、当該リブは容器本体の底部に形成された開口部を横断して延在しており、さらに前記第2の容器の側壁面に前記第2の容器の底部に設けたリブと一体の仕切り用リブが設けられており、前記容器本体の蓋は冷却ユニット上に載置して固定可能となっていることを特徴とする保冷容器。
【請求項2】
前記容器本体を覆う蓋において、物品取出口を形成した蓋本体と、蓋本体に設けられ、摺動するスライド部を有し、スライド部には、その縁部をスライド部に対して回動自在に取り付ける結合機構が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の保冷容器。
【請求項3】
前記結合機構は、スライド部に設けられたスライドガイドと、スライドガイド内を摺動可能なスライドリンクを有し、スライドリンクの一端部は回転軸により縁部に取り付けられ、スライドリンクの他端部は弾性部材の一端に結合しており、弾性部材の他端はスライドガイドに取り付けられている請求項2に記載の保冷容器。
【請求項4】
蓋本体にはスライド部を案内する案内部材が設けられ、当該案内部材は水平面に対して傾斜している請求項2または請求項3に記載の保冷容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば飲料物を低温環境下で収容する保冷容器であって、原動機付の車両(例えば、自動車、自動二輪車、自動三輪車)に搭載可能な保冷容器に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した保冷容器は、例えば乳酸菌飲料等の低温で保存する必要がある商品を配達する場合に使用される。
係る商品(乳酸菌飲料等)は、原動機付の車両(例えば、自動車、自動二輪車、自動三輪車)に保冷容器を取り付け、当該保冷容器内に商品(低温で保存する必要がある商品)を収容して、配達作業員が配達している。
その様な保冷容器の従来技術として、蓋に断面積が小さい第2の蓋を設けた保冷容器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、係る従来技術(特許文献1)では、保冷容器自体には冷却能力がないので、氷等の保冷材を商品と共に保冷容器内に収容する必要がある。そのため、保冷材の体積分だけ、保冷容器の収容能力が低下してしまう。そして、前記第2の蓋が小さいため、商品を取り出すための開口面積が小さく、使いにくいものであった。
また、保冷材として氷を用いた場合に、配達が終了した時点で氷が残存していた(氷が溶け残っていた)場合には、衛生面を考慮して、当該溶け残った氷を廃棄処分する必要があり、当該廃棄処分作業の分だけ配達作業員の労力が増大する。
そして、当該溶け残った氷を廃棄処分する態様によっては(例えば、配達作業の拠点の屋外に廃棄した場合には)、配達作業の拠点の環境を劣化させる要因になってしまう。
【0004】
また従来技術において、ペルチェ素子の冷却装置を有する保冷箱も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、当該従来技術(特許文献2)では、蓋を上方向に跳ね上げて容器を開放しているため、暖かい外気を保冷容器内に巻き込んで、保冷容器内の温度が昇温してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−182391号公報
【特許文献2】特開2007−271091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、保冷材を商品と共に保冷容器内に収容する必要がなく、内部を効果的に冷却することが出来る保冷容器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、底部(41)に開口部(42)が形成された容器本体(40)を有し、当該開口部(42)を介して容器本体(40)内の空気が容器本体(40)下方の領域側に供給され、且つ容器本体(40)下方の領域からの空気が容器本体(40)内に供給され、容器本体(40)内には上方が開放し且つ多数の孔を有する第2の容器(60)が収容されている保冷容器において、前記容器本体(40)下方の領域には冷却ユニット(200)が設けられており、容器本体(40)の全ての側壁(42a、42b)は両端(44)が外方へ突出しており、中央が内方に凹んだ湾曲線で構成され、前記全ての側壁(42a、42b)の断熱材は側壁中央部よりも角部が厚くなっており、前記第2の容器(60)の底部(61)には下方へ突出したリブ(64)が設けられ、当該リブ(64)は容器本体(40)の底部(41)に形成された開口部(42)を横断して延在しており、さらに前記第2の容器(60)の側壁面(62)に前記第2の容器(60)の底部(61)に設けたリブと一体の仕切り用リブ(64)が設けられており、前記容器本体(40)の蓋(10)は冷却ユニット上に載置して固定可能であることを特徴とする保存容器
【0008】
ここで本発明の保冷容器(100)は、冷却ユニット(200)上に載置可能であり、前記容器本体(40)下方の領域には冷却ユニット(200)が設けられているのが好ましい。
【0009】
また本発明によれば、前記容器本体(40)を覆う蓋(10)において、蓋本体(10)に設けられて摺動するスライド部(31)を有し、そのスライド部(31)には、その縁部(36)をスライド部(31)に対して回動自在に取り付ける結合機構(LD)を設けるのが好ましい。
【0010】
そして、本発明によれば、前記結合機構(LD)は、スライド部(31)に設けられたスライドガイド(34)と、スライドガイド内を摺動可能なスライドリンク(38)を有し、スライドリンク(38)の一端部(38a)は回転軸(39)により縁部(36)に取り付けられ、スライドリンク(38)の他端部(38b)は弾性部材(5)の一端(5b)に結合しており、弾性部材(5)の他端(5c)はスライドガイド(34)に取り付けられているのが好ましい。
【0011】
さらに、本発明によれば、蓋本体(10)にはスライド部(31)を案内する案内部材(22)が設けられ、当該案内部材(22)は水平面に対して傾斜しているのが好ましい。
【0015】
さらに、容器本体(40)を覆う前記蓋(10)は冷却ユニット(200)上に載置して固定可能であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上述した構成を具備する本発明の保冷容器(100)によれば、容器本体(40)が載置される冷却ユニット(200)と組み合わせて使用可能であり、当該冷却ユニット(200)で必要な冷却を行うことが出来るので、氷等の保冷材を使用する必要がない。
そして、保冷材として氷を用いる必要が無いので、配達が終了した時点で残存していた(溶け残っていた)氷を廃棄処分する労力が不要であり、その分だけ配達作業員の労力が減少する。また、溶け残った氷を廃棄処分する必要が無いので、例えば配達作業の拠点の屋外に廃棄する必要も無く、配達作業の拠点の環境を劣化させることも防止出来る。
【0017】
そして、本発明の保冷容器(100)によれば、冷却ユニット(200)と組み合わせて使用することが出来て、当該冷却ユニット(200)上に載置可能であり、前記蓋(10)は冷却ユニット(200)上に載置して固定することが可能なので、配達作業の拠点で蓋(10)を収容せずに、冷却ユニット(200)上に固定して置けば良く、配達作業拠点に蓋を収容する施設を別途建造する必要もない。
また、冷却ユニット(200)上に蓋(10)を固定することにより、冷却ユニット(200)に対する「いたずら」を防止することが出来る。
【0018】
ここで、保冷容器の上方(例えば蓋)から冷気を下方へ噴出して保冷容器内部を冷却する場合には、蓋あるいは商品取出口を開放した際に保冷容器内部に侵入した暖かい空気が、下方へ噴出された冷気により保冷容器の下方に押し下げられてしまい(降下してしまい)、商品を加熱してしまい、保冷容器内を効果的に冷却できない。
これに対して、本発明の保冷容器(100)では、容器本体(40)の底部(41)に開口部(42)を形成し、当該開口部(42)を介して容器本体内(40i)の空気が、容器本体(40)下方の領域、例えば冷却ユニット(200)側に供給され、且つ、容器本体(40)下方の領域から供給された空気(冷却ユニット200側で冷却された空気)が容器本体内(40i)に供給されている。そのため、容器本体(40)の内部空間は下側の領域から冷却され、暖かい空気を降下させてしまうことはなく、保冷容器(100)内及び収容された商品(飲料等)を、効果的に冷却或いは冷蔵することが出来る。
また、容器本体(40)の下側から冷却すれば、商品(例えば飲料品G)が収容されている領域のみを冷却し、その上方の領域(商品が存在しない領域)は冷却しない。そのため、商品が存在しない領域を冷却する必要が無くなり、無駄な冷却をする必要が無くなるので、効率的な冷却或いは冷蔵が可能となる。
【0019】
さらに本発明の保冷容器(100)によれば、容器本体内(40i)には上方が開放し且つ多数の孔を有する(網状を含む)第2の容器(内カゴ60)が収容されているので、冷却ユニット(200)で冷却された空気は、容器本体内壁面(40iw)と第2の容器(60)の空間を循環経路として、また第2の容器(60)の多数の孔部(内カゴの目63)を介して冷却された空気が商品に満遍なく接触する。
従って、冷却ユニット(200)で冷却された空気により、収容された商品を効率良く低温状態に保持することが出来る。
【0020】
これに加えて、本発明の保冷容器(100)において、原動機付の車両(例えば、自動車、自動二輪車、自動三輪車300)に搭載可能に構成されており、前記冷却ユニット(200)は原動機付きの車両の電源(バッテリ51)を駆動電源としており、前記冷却ユニット駆動用の補助電源(52)を設け、原動機付きの車両(300)の電源電圧が低下した場合に、冷却ユニット駆動電源(51)を補助電源(52)に切り換える回路(CKT)を具備していれば、原動機付きの車両の電源(バッテリ51)の電圧が低下しても、冷却ユニット(200)の作動が維持され、商品温度が低温であることが保障される。
【0021】
ここで、保冷容器における側壁では、中央部(本発明の保冷容器であれば、42a、42b)では外気の熱は一方向(側壁が面している側)のみから伝達される。一方、側壁の端部(本発明の保冷容器であれば、角部44)では、熱は、二方向(当該端部を挟む両側壁が面している方向)から伝達される。そのため、側壁の端部(44)は側壁中央部(42a、42b)に比較して、加熱され易い。従来の保冷容器では、側壁部全域に亘って断熱材の厚さ寸法が同一であるため、伝達される熱量に比較して、側壁の角部では断熱材厚さが不足し、側壁中央部では断熱材厚さが過大になっている傾向がある。
これに対して、本発明の保冷容器(100)において、保冷容器(容器本体40)の側壁(42)は、両端(44)が外方へ突出しており、中央が内方へ凹んだ湾曲線で構成されているので、断熱材(45)は、側壁中央部(42a、42b)では薄く、側壁両端部(44)では厚くなる。そのため、伝達される熱量に比較して、側壁部の全域に亘って、適切な断熱材厚さ寸法に設定することが可能である。
【0022】
さらに本発明の保冷容器(100)において、前記第2の容器(60)の底部(61)に下方へ突出したリブ(仕切用リブ64)を設け、当該リブ(64)は容器本体底部(41)に形成された開口部(42)を横断して延在する様に構成すれば、当該リブ(64)により容器本体底部(41)に形成された開口部(42)が冷却ユニット(200)の吐出口(42o)と吸い込み口(42i)に仕切られ、冷却ユニット(200)で冷却された空気が、容器本体底部(41)の開口部(42)から保冷容器内(40i)に供給された直後に、当該開口部(42)を介して直ちに冷却ユニット(200)側に吸い込まれること(いわゆるショートサーキット)が防止される。
さらに側壁側にもリブ(64)を設けることにより、前記第2の容器(60)と保冷容器(100)の間の空間の間仕切りとなり、冷却された空気の流れを一方向に制御でき、保冷容器内を効果的に冷却することができる。
【0023】
ここで、従来の保冷容器では、容器の蓋が容器本体に対してヒンジで結合されており、ヒンジを中心軸として当該蓋を上下方向に回動(上下動)させることにより、当該保冷容器を開閉して商品の出し入れを行うのが一般的である。しかし、容器の蓋を回動させているため、商品を出し入れする際に(保冷容器外の)暖かい空気を保冷容器内に巻き込んでしまい、保冷容器内の温度が上昇してしまうという問題を有している。
また、ヒンジ式の蓋は、開放するときには上方に跳ねあげる様に移動し、閉鎖するときには下方に倒すように移動するため、保冷容器の天面よりも高い位置での開閉操作が必要であり、特に配達作業員が小柄な女性の場合に、蓋の開閉が困難である。一方、開閉操作の位置を低くするため、保冷容器の垂直方向寸法を小さくすると、保冷容器の容量が小さくなり、配達するべき商品の収容能力が小さくなってしまう。また、保冷容器の水平方向寸法(或いは底面積)は当該保冷容器を搭載する車両の荷台等の水平面積により制約を受けているため、水平方向寸法を大きくして保冷容器の容量を大きくすることも困難である。
これに対して、本発明の保冷容器(100)で好適に用いられる蓋(10)において、蓋本体(20)とスライド部(30)を有し、蓋本体(20)には商品取出口(21o)が形成されており、スライド部(30)は蓋本体(20)に対して水平方向(水平方向に対して、若干傾斜した方向も含む)に摺動可能に構成すれば、商品の出し入れ等の際に商品取出口(21o)を開放するときに、蓋(10)を容器本体の上方に跳ね上げる様に移動する必要がなく、スライド部(30)を水平方向に移動するのみで良い。
【0024】
そのため、商品取出口(21o)を閉鎖する時には蓋(10)を垂直方向下方に移動する必要も無く、スライド部(30)を水平方向に(開く時とは反対方向に)摺動すれば良いので、商品取出口(21o)を閉鎖する際に、外部の暖かい空気を保冷容器(100)内部に巻き込んでしまう恐れがなく、保冷容器内部(40i)を昇温させてしまうことが防止される。
また、商品の出し入れ等の際に商品取出口(21o)を開放する時に、蓋(10)を容器本体(40)の上方に跳ね上げる様に開放する必要がないため、前記蓋(10)によれば、配達作業員の背が低い場合でも、当該配達作業員はスライド部(30)を水平方向に移動することにより、容易且つ確実に保冷容器(100)の商品取出口(21o)を開閉することが出来る。
【0025】
さらに上述した蓋(10)において、スライド部(30)に、その縁部(自動三輪車進行方向後方の縁部36)をスライド部(スライド部本体31)に対して回動自在に取り付ける結合機構(LD)が設けられていれば、保冷容器(100)を閉めている場合にはスライド部の縁部(36)をスライド部(スライド部本体31)に対して折曲した状態にして、保冷容器(100)の商品取出口(21o)を確実に閉鎖することが出来る。
一方、保冷容器(100)の商品取出口(21o)を開放するに際しては、スライド部の縁部(36)をスライド部(スライド部本体31)と面一になるまで回動することにより、スライド部の縁部(36)が商品等に干渉することもなくスライド部(30)を容易に摺動させることが出来る。
【0026】
ここで、上述した蓋(10)において、スライド部(31)に設けられたスライドガイド(34)と、スライドガイド(34)内を摺動可能なスライドリンク(38)を有する結合機構(LD)をスライド部(31)に設け、スライドリンク(38)の一端部(38a)を回転軸(39)により縁部(スライド部の縁部36)に取り付け、スライドリンク(38)の他端部(38b)を弾性部材(例えば、引張バネ5)の一端(5b)に結合して、弾性部材(5)の他端(5c)をスライドガイド(34)に取り付ければ、スライド部(31)の縁部(36)が、スライド部の本体(スライド部本体31)に対して、回動自在となる。
回動自在であれば、スライド部(31)を蓋本体(20)に対してスライドする際に、当該縁部(36)をスライド部の本体(31)に対してフラットになる様に回動して、蓋本体(20)に対するスライド部(31)の摺動(スライド)を円滑にすることが出来る。
【0027】
これに加えて、上述した蓋(10)において、蓋本体(20)にスライド部(30)を案内する案内部材(蓋本体側レール:スライドレール22)を設け、当該案内部材(22)を水平面に対して傾斜すれば(商品取出口21oが開放する方向について、スライド部30が上方に移動する傾斜が形成されていれば)、スライド部(30)が摺動する部分のシール性が十分保たれた状態で、蓋本体(20)に対してスライド部(30)が容易且つ確実に摺動する。
案内部材(22)に傾斜(商品取出口21oが開放する方向について、スライド部30が上方に移動する傾斜)を設けることにより、商品取出口(21o)が開放する方向にスライド部(30)が摺動すると、スライド部(30)に設けたパッキン(32c)と、商品取出口(21o)が閉鎖している状態で当該パッキン(32c)を押圧する蓋本体(20)側の線状の突起(24)との間に空隙が生じ、当該パッキン(32c)がスライド部(30)の摺動の抵抗にならないからである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の保冷容器の実施形態を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る保冷容器を自動三輪車に搭載した状態を示す斜視図である。
図3】実施形態に係る保冷容器と組み合わせると好適な冷却ユニットを示す斜視図である。
図4】実施形態に係る保冷容器と図3の冷却ユニットが組み合わせて使用されている状態を示す断面図である。
図5図3図4の冷却ユニットを示す平面図である。
図6図5の冷却ユニットにおける放熱部を示す説明断面図である。
図7図5の冷却ユニットにおける冷凍機とヒートシンクの接続箇所の詳細を示す部分断面図である。
図8】従来技術における冷凍機とヒートシンクの接続箇所の詳細を示す部分断面図である。
図9】実施形態に係る保冷容器において、収容物が多い場合に当該保冷容器内が効率的に冷却される状態を示す説明図である。
図10】実施形態に係る保冷容器において、収容物が少ない場合に当該保冷容器内が効率的に冷却される状態を示す説明図である。
図11】蓋から冷気を下降させる構造を採用した場合の問題点を示す説明図であって、蓋を開けた時の状態を示す説明図である。
図12】蓋から冷気を下降させる構造に採用した場合の問題点を示す説明図であって、蓋を閉めた時の状態を示す説明図である。
図13】実施形態に係る保冷容器の上縁近傍の水平断面図である。
図14】実施形態に係る保冷容器の底部を示す底面図である。
図15】実施形態に係る保冷容器における第2の容器を示す斜視図である。
図16図3図5図7の冷却ユニットの駆動電源を自動三輪車のバッテリから補助バッテリに切り換える電気回路を示す回路図である。
図17】自動三輪車及び補助バッテリの残量により電源及び冷却ユニットの運転を切り換える制御を示すフローチャートである。
図18】本発明の実施形態に係る保冷容器と好適に組み合わせられる蓋を示す斜視図であって、蓋本体に対してスライド部が摺動して全開となった状態を示す斜視図である。
図19図18で示す蓋が閉鎖した状態図(側面図)である。
図20図18で示す蓋が開放した状態図(側面図)である。
図21図18で示す蓋における開閉機構を示す断面図である。
図22図18で示す蓋において、閉鎖した状態を模式的に示す説明図である。
図23図18で示す蓋において、閉鎖した状態からスライド部が摺動可能になる動作の途中の状態を模式的に示す説明図である。
図24図18で示す蓋において、スライド部が摺動可能になった状態を模式的に示す説明図である。
図25図18で示す蓋における本体部の線状突起を一部破断して示す斜視図である。
図26図18で示す蓋におけるスライド部のシール機構を一部破断して示す斜視図である。
図27図18で示す蓋において、開放状態を説明する断面図である。
図28図18で示す蓋を冷却ユニットに載置した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に、図1図17を参照して、本発明の実施形態について説明する。
そして、本発明の実施形態に係る保冷容器と好適に組み合わされる蓋については、図18図28を参照して説明する。
図1において、本発明の実施形態に係る保冷容器(例えば、乳酸菌飲料を配達時に収容するための保冷容器)は、全体が符号100で示されている。
保冷容器100は、蓋10と容器本体40を有している。蓋10は、蓋本体20と、蓋本体20に対して水平方向(水平方向に対して、若干傾斜した方向を含む)に摺動するスライド部30を有している。
【0030】
図2に示す様に、図示の実施形態に係る保冷容器100は、原動機付の車両(例えば自動車、自動二輪車や自動三輪車300等)に搭載されて使用される。図示の実施形態では、自動三輪車(いわゆる「三輪バイク」)300の後部310に搭載されて使用される態様について説明している。
すなわち、図2において、自動三輪車300の後部310には冷却ユニット200が取り付けられており、当該冷却ユニット200は保冷容器100と組み合わせて用いられており、冷却機構を構成している。そして、冷却ユニット200上に保冷容器100が載置されている。
【0031】
図3において、冷却ユニット200はユニットケース200Cを有している。そして図5で示す様に、冷却ユニット200は、冷凍機収容ボックス206及び熱交換部収容ボックス207を有している。
図3図5では明示されていないが、冷凍機収容ボックス206(図5)及び熱交換部収容ボックス207は、ユニットケース200C(図3)内に収容されている。
【0032】
図3において、ユニットケース200Cの上面の左側領域には、通気窓200Coが形成されている。通気窓200Coは、保冷容器100の容器本体40(図1図2)と連通して、容器本体40内の空気を冷却ユニット200内に吸い込み、冷却ユニット200で冷却した空気を容器本体40内に供給するための通路として機能する。
図3で示す様に、通気窓200Coの開口部全面には、網状部材(パンチングメタル等を含む)が設けられており、冷却ユニット200側に異物が落下するのを防止している。
【0033】
図3で示す通気窓200Coは、保冷容器100を冷却ユニット200上に載置した場合に(図4参照)、容器本体40の底部41に形成された開口部42(図4参照)と通気窓200Coとが整合する様な位置に形成されている。
なお、容器本体40の開口部42とユニットケース200Cの通気窓200Coは、形状及び断面積が等しく設定されている。
【0034】
図3において、ユニットケース200Cの4辺には、それぞれ取手状の部材251、252、253、254が固設されている。取手状の部材251、252、253、254は、保冷容器100を載置する際の位置決め用のガイドであり、転倒や衝突等に対する保護部材としての機能を有している。また、取手として用いることも出来る。
取手状の部材251は自動三輪車300(図2)の後方に位置しており、取手状の部材252は自動三輪車300(図2)の前方に位置している。取手状の部材253と取手状の部材254とは自動三輪車300(図2)の側方に設けられている。なお、図2では自動三輪車300の左上方向が前方であるが、図3では右上方向が自動三輪車300の前方である。
【0035】
冷却ユニット200と保冷容器100の相対位置を示す図4において、保冷容器100は蓋10と容器本体40を有しており、容器本体40の内部には内カゴ60が収容されている。図4において、図示の簡略化のため、内カゴ60は点線で表現されている。
内カゴ60は上方が開放しており、残りの5面(底面及び4側面)には多数の開口が形成されている。そして内カゴ60の底部には仕切り用リブ64が形成されている。
内カゴ60と仕切り用リブ64については、図15を参照して後述する。
【0036】
図5において、冷却ユニット200は、冷凍機201と、放熱部202と、ヒートシンク203と、ファン204とを備えている。
図5における符号201cは、冷凍機201の冷却部を示している。図5の冷却部201cは、実機ではヒートシンク203に埋まっている。
冷凍機201と、放熱部202は冷凍機収容ボックス206内に収容され、ヒートシンク203とファン204は熱交換部収容ボックス207内に収容されている。
熱交換部収容ボックス207における冷凍機収容ボックス206と隣接する壁面には断熱材208が配置されており、冷凍機収容ボックス206と熱交換部収容ボックス207における熱の授受を遮断している。
【0037】
冷凍機201としては、例えば、フリーピストン・スターリング方式冷凍機(以下、「FPSC」と表記する)を採用することが出来る。ただし、その他の方式の冷凍機(例えば、圧縮式冷凍機、その他)を採用することも可能である。
放熱部202は、FPSC201の冷却サイクルにおける熱を、FPSC201外に放出する機能を有している。
ヒートシンク203は、FPSC201の冷却部201cと熱的に接続されており、通気窓200Coを介してファン204が吸い込んだ空気(容器本体40内から冷却ユニット200内に吸い込まれた空気)と熱交換を行なって、当該空気を冷却する機能(熱交換器としての機能)を有している。
【0038】
ファン204は、図4における白抜きの矢印で示す様に、保冷容器40内の空気を吸い込んでFPSC201のヒートシンク203側へ送り出し、FPSC201のヒートシンク203により冷却された空気を保冷容器40内へ送り出している。ファン204による冷気循環風量は、1.23m/min〜1.85m/minが好ましく、1.58m/min〜1.85m/minがさらに好適である。風量が1.23m/min未満では、風量が少な過ぎて実用的ではない場合がある。また、発明者の実験では、風量が1.85m/minよりも大きいと、保冷容器40の上方の領域と下方の領域の温度差が殆どなくなり、下方に集中して冷気を送ることが出来なくなる場合がある。
なお、図4における符号Gは、冷蔵するべき商品を包括的に示している。
図5において、冷却ユニット200における熱交換部収容ボックス207には開口部207oが形成されている。開口部207oは、通気窓200Co(図3参照)の直下に位置しており、通気窓200Coと同じ形状である。
【0039】
図6で示す様に、FPSC201の放熱部202は、円の上下(図6において2点鎖線で示す箇所)を切り欠いた様な断面形状(図6において実線で示す)を有している。
図6において、放熱部202の高さ方向寸法Hを減少するため、円形の上下(図6において2点鎖線で示す箇所)に相当する切欠部Lcを形成している。
そして、切欠部Lcを形成しても、放熱部202における放熱効果を維持するため、符号Mで示す部分(図6でハッチングを付している)を追加して、放熱部202の断面積を確保している。
【0040】
図8で示す様に、従来技術では、冷凍機の冷却部201cとヒートシンク203は直接接続されてはおらず、伝熱部材Jhを介して接続されている。
それに対して図示の実施形態では、図7で示す様に、冷凍機201の冷却部201cは、ヒートシンク203に対して、直接接続されている。そのため、冷凍機の冷却部201cからヒートシンク203への冷熱の伝達効率が向上しており、容器本体40内の空気を冷却する効率も高い。
【0041】
図示の保冷容器100を用いて商品を配達する場合には、例えば、配達の前日に、商品(例えば乳酸菌飲料の様な冷蔵するべき商品)を、保冷容器100(図1参照)の容器本体40内に収容する。そして、蓋10(図18図27を参照して後述)を取り外した状態で、容器本体40を専用の冷蔵庫に収納して、冷蔵保管しておく。
また、配達前の段階で、配達用の自動三輪車300(図2参照)のバッテリ51とは別の補助バッテリ52(図16参照)を用意し、その補助バッテリ52を充電しておく。
【0042】
商品配達の当日、容器本体40に蓋10をして、保冷容器100を配達用自動三輪車300における冷却ユニット200の上面に搭載する。
容器本体40を冷却ユニット200に搭載した状態で、図4で示す様に、容器本体40の底部41の開口42は、冷却ユニット200の通気窓200Co及び開口部207oと合致する。
そして冷却ユニット200を作動して、容器本体40内部の冷却(商品Gの冷却)を開始する。
【0043】
商品の配達が終了したならば、空になった保冷容器100の蓋10を容器本体40から取り外して、自動三輪車300の後部310に固設された冷却ユニット200の上面に、図28で示す状態で蓋10を被せ、蓋10を後部310に固定する。
冷却ユニット200の上面には、通気窓200Coが形成されており、通気窓200Coが開放した状態では、例えば「いたずら」によって、冷却ユニット200が故障する恐れがあり、また、通気窓200Coを介して異物が冷却ユニット200内に侵入する恐れがある。蓋10を冷却ユニット200の上面に被せ、蓋10を冷却ユニット200上に固定することにより、係る事態を未然に防止することが出来る。
ここで、蓋10を後部310に固定するに際しては、ダイヤル錠3L(図21参照)を用いても良いし、図示しない鍵を蓋10に別途設けても良いし、図示しない鍵付きの固縛用バンドを用いても良い。蓋10を後部310に固定する手段については、特に限定するものではない。
【0044】
また、図示の保冷容器100では、容器本体40の底部41に形成された開口部42を介して、冷却された空気が(容器本体40内へ)供給され、容器本体40の下側の領域から冷却される(図4参照)。
そのため、保冷すべき商品Gが多い場合(図9)でも、保冷すべき商品Gが少ない場合(図10)でも、商品Gが収容されている領域のみを冷却し、その上方の領域(商品が存在しない空の領域)は冷却しない。そのため、無駄な冷却をしないで済み、冷却効率が向上する。
【0045】
ここで、例えば図11図12で示す保冷容器40Jの様に、上方から冷気が降下する様な構造(図12)である場合には、保冷容器40J内の商品温度が低下し難い。
図11で示す様に、蓋10Jを開放した際に、暖かい空気Fhが保冷容器40J内に侵入する。ここで、蓋10Jから冷気が降下する構造であれば、図12で示す様に、ボックス内に入り込んでしまった暖かい空気Fhが、降下する冷気Fcにより、下方の商品Gに向って押し込まれてしまい、商品Gが暖められてしまうからである。
発明者の実験でも、図12で示す様に上方から冷却した場合には、商品温度が良好に低下しなかった。
【0046】
これに対して、図9図10で示す様に、図示の保冷容器40では、下側から冷気Fcを放出して保冷容器40内を循環する様に構成しているので、蓋10を開放した際に暖かい空気Fh(図11図12)が保冷容器40内に侵入したとしても、冷気Fcによって暖かい空気Fhが下方の商品Gに向って押し込まれてしまうことはない。また、上述した通り、図示の保冷容器40では商品Gが収容されている領域のみを冷却し、その上方の領域(商品が存在しない空の領域)は冷却しない。
これ等の理由により、図示の保冷容器40によれば、良好に商品が冷却される。
さらに、図示の保冷容器100では蓋10を採用することにより、図18図27を参照して後述する様に、暖かい空気が容器本体40の上方から侵入し難い構造となっている。
【0047】
容器本体40上方の開口近傍の水平断面を示す図13において、容器本体40の外表面の水平断面は四角形ではなく、四角形の各辺42a、42bの外周面は、容器の内側に湾曲する様に(辺の中心部が凹む様に)形成されている。そして4つの角部44は、容器本体40の外方へ突出している。
なお、容器本体40の内壁面(保冷対象の収容室)40iの水平断面は、正方形である。ただし、長方形に構成することも可能である。
図13で示す様に、容器本体40の底部41の4隅には、立体的な面取り40cが形成されており、以って、清掃をし易くして、且つ、隅部の断熱材厚さ寸法を大きくしている。
【0048】
容器本体40の側壁42a、42bの各々における中央部では、外気の熱は一方向(側壁が面している側:外側)のみから、容器本体40内部へ伝達される。一方、容器本体40の角部44(側壁42a、42bの端部)では、熱は、角部44を挟む2つの辺の方向、すなわち2方向から、容器本体40内部へ伝達される。そのため、容器本体40の角部44は、側壁42a、42bの中央部に比較して、熱伝達量が多く、加熱され易い。
図示の保冷容器100では、図13で示す様に、容器本体40の各辺42a、42bの外周面を容器本体40の内側に湾曲する様に(辺の中心部が凹む様に)形成し、4つの角部44の外周面を容器本体40の外方へ突出する様に構成し、側壁42a、42bの中央部における断熱材45の厚さ寸法が小さくなり、角部44における断熱材45の厚さ寸法が大きくなる様に構成している。換言すれば、断熱材45が薄い側壁中央部は容器本体40の内側へ凹んでおり、断熱材が厚い角部44は容器本体40の外側へ突出している。
発明者が実機を製作した結果、容器本体40の角部44における断熱材の厚さ(断熱材の最厚部厚さ)は、側壁42a、42bの中央部における断熱材の厚さ(断熱材の最薄部厚さ)に対して、1.3倍〜3.0倍であれば、熱伝達量の多寡に対応することが出来ることが分かった。そして、外観、機能等を総合的に判断すれば、断熱材の最厚部厚さは断熱材の最薄部厚さ)に対して、1.5倍〜2.5倍であるのが好ましいことが分かった。さらに、量産性を考慮すると、断熱材の最厚部厚さは断熱材の最薄部厚さ)に対して、1.9倍〜2.3倍が好適であった。
【0049】
図14は、保冷容器100を下面(底面)側から見た状態を示している。
図14において、容器本体40の底面41には開口部42が形成されている。この開口部42を介して、容器本体40内の空気が冷凍機201(図14では図示せず)側へ吸い込まれ、冷凍機201で冷却された空気が容器本体40内へ供給される。
図14で示す開口部42の内側には、内カゴ60の底部61及び内カゴ60の底部61に形成された仕切り用リブ64の一部が示されている。
【0050】
内カゴ60及び仕切り用リブ64は、図15でも示されている。
図15において、内カゴ60は上方が開放されており、底部(底面)61と4つの側壁面62を有している。
内カゴ60を構成する底面61と側壁面62には、共通パターン或いは相似パターンの長孔63が、同一向きに整列して形成されている。
そして、対向する2つの側壁面62と底部61に亘って(概略コ字状に)、仕切用リブ64が形成されており、これらが一体となって仕切りの役割を果たしている。
【0051】
仕切用リブ64は、FPSC201で冷却された空気が、図14の開口部42から容器本体40内の空間40iに供給された直後に、当該開口部42を介して直ちにFPSC201側に吸い込まれてしまう事態、いわゆる「ショートサーキット(冷気が容器本体40内の空間40i内に収容された商品を冷却する以前の段階で、開口部42、通気窓200Coを介して冷却ユニット200側に吸い込まれる現象)」を防止するために設けられている。
このリブ64を設けることにより、開口部42はFPSC201から容器本体40内へ吐出する領域(42o)と、容器本体40内からFPSC201に吸い込む領域(42i)とに仕切られる。そして、FPSC201で冷却された空気が、開口部42(図14)から容器本体40内(符号40iの空間)に供給された直後に、容器本体40内を循環せずに直ちに開口部42からFPSC201側に吸い込まれてしまうことはない。
また、前記仕切り用リブ64は、内カゴ60の対向する2つの側壁面62にも形成されているため、内カゴ60と保冷容器100の間の空間の間仕切りとなり、冷却された空気の流れを一方向に制御でき、保冷容器内を効果的に冷却することができる。
【0052】
図15において、内カゴ60の開口側端部(図15では上端部)には、外側に突出した水平なリブ65が複数(図15では合計12箇所)設けられている。
保冷容器100に振動が作用して、内カゴ60の側壁面62が容器本体40の内壁面40iwに密着しようとしても、リブ65により、内カゴ60の側壁面62と容器本体40の内壁面40iwの間に形成されている冷気の流路が閉塞されてしまうことは防止される。
【0053】
また、図面では明示されていないが、内カゴ60の側壁面62における水平方向において隣り合う長孔63の間の領域(垂直方向に延在する領域:桟あるいは余肉部)は、内カゴ60の垂直方向全長に亘って、その水平断面が緩やかな円弧状に形成されている。以って、内カゴ60の剛性、強度を向上させている。
ここで、仮に、内カゴ60に板状の補強リブを設けると、内カゴ60の清掃がし難くなり、不衛生になる恐れがある。上述した様に構成することにより、内カゴ60の清掃が容易になる。
なお、内カゴ60の底部61において、4箇所の角部には、底面の仕切り用リブ64と垂直方向寸法が等しい脚部66が設けられている。
【0054】
さらに、明示してはいないが、保冷容器100の蓋10が開放されたことを検知するためのスイッチが容器本体40の上縁部に設けられ、当該図示しないスイッチにより蓋10(のスライド部30)が開放されたことを検知した際に、FPSC201のファン204を停止する様に構成することが出来る。
その様に構成することにより、蓋10(のスライド部30)が開放された際に、ファン204は負圧を発生せず、容器本体40の内部空間40iに暖かい外気を吸い込んでしまうことが防止される。
【0055】
さらに、冷却ユニット200における保冷容器100を載置する箇所に図示しないセンサ或いはスイッチを設け、保冷容器100が載置された場合にのみ、冷却ユニット200のファン204が駆動する様に構成して、保冷容器を載置する前に冷却ユニット200を稼動して、ヒートシンク203を予冷出来る様にすることも可能である。
また、保冷容器100が載置されない場合にはファン204が駆動しない様に構成することにより、指の巻き込み等の事故を防止することが出来る。
【0056】
図示の保冷容器100と組み合わせて用いられる冷却ユニット200は、FPSC201は自動三輪車300のバッテリ51(図16)により作動するが、当該バッテリの電力残量が少なくなった場合に備えて、補助バッテリ52(図16)を備えている。そして、自動三輪車300のバッテリ51の電圧が降下した場合には、補助バッテリ52に切り換える様に構成されている。
図16は、FPSC201の電源を自動三輪車300のバッテリ51から補助バッテリ52に切り換える回路(電源切替え回路)CKTを示している。
【0057】
図16において、電源切替え回路CKTは、制御装置50と、自動三輪車のバッテリ(以下、「バイクバッテリ」と言う)51と、補助バッテリ52と、DC/DCコンバータ53と、電圧計測手段54A、54Bと、第1のダイオード55と、第1のスイッチ56と、第2のダイオード57と、第2のスイッチ58と、FPSC駆動基板59と、アラーム50Aとで構成されている。
【0058】
バイクバッテリ51は、第1のダイオード55を介装した電源ラインLE1によって第1のスイッチ56と接続されている。第1のスイッチ56の接点561は、電源ラインLE2によってFPSC駆動基板59と接続されている。そしてバイクバッテリ51は、電源ラインLE3によって分岐点LBと接続されている。
補助バッテリ52は、電源ラインLE4によってDC/DCコンバータ53と接続されている。
DC/DCコンバータ53は、第2のダイオード57を介装した電源ラインLE5によって第2のスイッチ58と接続されている。第2のスイッチ58の接点581は、電源ラインLE6によって第1のスイッチ56の接点561と接続されている。
さらに、補助バッテリ52は、電源ラインLE7によって分岐点LBと接続されている。そして、分岐点LBは、電源ラインLE8によってFPSC駆動基板59と接続されている。
【0059】
バイクバッテリ51は、入力信号ラインSi1によって電圧計測手段54Aと接続され、電圧計測手段54Aは入力信号ラインSi2によって制御装置50と接続されている。
補助バッテリ52は、入力信号ラインSi3によって電圧計測手段54Bと接続され、電圧計測手段54Bは入力信号ラインSi4によって制御装置50と接続されている。
制御装置50は、制御信号ラインSo1を介してDC/DCコンバータ53と接続され、制御信号ラインSo2を介して第1のスイッチ56と接続され、制御信号ラインSo3を介して第2のスイッチ58と接続され、制御信号ラインSo4を介してアラーム50Aと接続されている。
【0060】
次に、図17及び図16を参照して、バイクバッテリ51及び補助バッテリ52の電圧により、FPSC201の駆動電源とその運転を切り換える制御について説明する。
図17のステップS1において、バイクバッテリ51の電圧を電圧計測手段54Aによって計測し、ステップS2で計測した電圧値が12V未満であるか否かを制御装置50で判断する。計測した電圧値が12V未満であれば(ステップS2がYES)、ステップS3に進み、一方、計測した電圧値が12V以上であれば(ステップS2がNO)、ステップS4に進む。
【0061】
ステップS4(バイクバッテリ51の電圧が12V以上)では、FPSC201の駆動電源として、バイクバッテリ51を使用し、補助バッテリ52は使用しない。回路図16においては、第1のスイッチ56が閉じて、第2のスイッチ58が開く。
そしてステップS1まで戻り、再びステップS1以降を繰り返す。
【0062】
ステップS3(バイクバッテリ51の電圧が12V未満)では、バイクバッテリ51の電圧が降下したと判断して、FPSC201の駆動電源をバイクバッテリ51から補助バッテリ52へ切り替える。FPSC201の駆動電源を補助バッテリ52へ切り替えると、図16において、第1のスイッチ56は開き、第2のスイッチ58は閉じる。
図示の例では補助バッテリ52の電圧は24Vであり、FPSC201の駆動電圧(12V)とは異なる。そのため、DC/DCコンバータ53により、FPSC駆動基板59への供給電圧を12Vに調整する。
そして、ステップS5に進む。
【0063】
ステップS5では、電圧計測手段54Bの計測結果によって、補助バッテリ電圧が24V未満であるか否かを判断する。補助バッテリ電圧が24V以上であれば(ステップS5がNO)、ステップS1まで戻り、ステップS1、S2、S3、S5のルーチンを繰り返す。
一方、補助バッテリ電圧が24V未満であれば(ステップS5がYES)、補助バッテリ52の残量が少なくなったと判断して、ステップS6に進み、FPSC201への供給電圧を12Vから11Vへ降下させる(いわゆる「省エネルギーモード」)と共に、アラーム50Aによって警告を与える。
【0064】
FPSC駆動基板59への供給電圧を12Vから11Vへ降下させるのは、制御装置50からDC/DCコンバータ53に制御信号を出力することにより実行する。発明者の実験によれば、FPSC駆動基板59への供給電圧を12Vから11Vへ降下させると、補助バッテリ52は最低でも30分は保持される。この30分という時間は、商品の配達を中断し、営業拠点に戻って補助バッテリ52を交換するのに十分な時間である。
ステップS6が終了した後、回路の制御を終了する。
【0065】
次に、図18図27を参照して、図1図17の説明した実施形態に係る保冷容器100と好適に組み合わされる蓋10について説明する。
図18において、蓋10は蓋本体20とスライド部30を有しており、蓋本体20には商品取出口21oが形成されている。図18は、蓋本体20に対してスライド部30が摺動して、商品取出口21oが全開となった状態が示されている。スライド部30は、スライド部本体31とスライド後縁部(以下、「回動縁部」と言う)36を有している。
【0066】
図18において、蓋本体20における商品取出口21oの側部には、蓋本体20のガイドレール22が設けられている。そして、蓋本体20における商品取出口21oの側部20isと、スライド方向の端部20ieには、蓋本体20の線状の突起24が形成されている。
線状突起24は、蓋10のスライド部30に設けられたパッキン32c(図19参照)を押圧する様に構成されている。
スライド部30の側部31sには、スライド部30のガイドレール33が形成されている。
【0067】
スライド部30が全閉の状態が、蓋本体20の図示を省略した状態で、図19に示されている。
図19において、スライド部30は、スライド部本体31と、回動縁部36と、結合機構LDを備えている。結合機構LDは、スライド部本体31の端部(図19における右端部)において、ピン39を中心として回動縁部36を矢印R方向に約90°回動させる機能を有している。
回動縁部36は、図19では右端部に設けられており、スライド部本体31の左端の形状に対して、左右対称な形状となっている。
結合機構LDについては、図21図24を参照して後述する。
【0068】
図19において、スライド部本体31の下縁部32bには、下縁部32bの左右方向全域に亘ってパッキン32cが設けられており、パッキン32cは図19では点線で表示されている。明確には図示されていないが、下縁部32bにはパッキン32cを埋め込む溝が形成されており、パッキン32cは当該図示しない溝に埋め込まれている。
スライド部30が蓋本体20を閉鎖している状態(蓋を閉めた状態:図19の状態)では、蓋本体20において、スライド部30のパッキン32cが設けられた箇所に対応する位置には、図18で示す線状の突起24が形成されている。そして、スライド部30が蓋本体20を閉鎖している状態(蓋を閉めた状態:図19の状態)において、線状の突起24はパッキン32cに当接しており、以って、保冷容器100の気密を保持している。
【0069】
図19において、スライド部本体31の上縁32t近傍には、蓋本体20の1対のガイドレール22(図19では2点鎖線で示す)が左右方向へ延在している。
スライド部本体31における右端部近傍で且つ上縁32t近傍の位置には、ガイドピン35が固設されている。図19ではガイドピン35は1本のみ示されているが、ガイドピン35はスライド部本体31の側面に1本ずつ(1対)設けられている。
ガイドピン35の図19における上下方向位置は、2点鎖線で示すガイドレール22(蓋本体20のガイドレール22)の上下方向中心となっている。そしてスライド部本体31における1対のガイドピン35は、蓋本体20の1対のガイドレール22にそれぞれ係合している。
【0070】
スライド部30が摺動(スライド)して蓋本体20を開放している状態を示す図20では、蓋本体20の左右方向へ延在しているガイドレール22が点線で示されており、蓋本体20の左端近傍には、蓋本体20のガイドピン23が固設されている。そして、スライド部30の下縁部近傍にはガイドレール33が設けられており、図20の左右方向へ延在している。さらに、スライド部30のガイドピン35は、図20では点線で示されている。
図20ではガイドレール22は1本のみ示されているが、蓋本体20がスライド部30と摺接する両側にガイドレール22がそれぞれ設けられている。すなわち、蓋本体20には1対のガイドレール22が設けられている。
【0071】
蓋本体20のガイドレール22は、図20における左側が高く、右側が低くなる様に、僅かな傾斜を有している。換言すれば、蓋本体20のガイドレール22には、商品取出口21oが開放する方向にスライド部30を摺動した場合に、スライド部30が上方に移動する様な傾斜がついている。
一方、スライド部30の左右(図20における紙面の表裏方向)側部の下縁32b近傍にも、図20の左方側が高くなる様に僅かな傾斜を有する1対のガイドレール33が設けられている。
【0072】
蓋本体20の1対のガイドレール22の各々には、スライド部30の1対のガイドピン35の各々が係合しており、スライド部30の1対のガイドレール33の各々には、蓋本体20の1対のガイドピン23の各々が係合している。
そして、蓋本体20のガイドピン23はスライド部30のガイドレール33に沿って摺動し、それと同時に、スライド部30のガイドピン35は蓋本体20のガイドレール22に沿って摺動する。
【0073】
ここで、スライド部30を全開にするまでの過程で、スライド部30が蓋本体20のガイドピン23を中心に回動してスライド動作を妨げることのない様にするためには、蓋本体20側のガイドピン23と、スライド部側のガイドピン35が、スライド部30のスライド方向(図19図20の左右方向)について、同一位置にならない様に配置することが好ましい。
すなわち、スライド部30が全閉から全開となる過程において、蓋本体20側のガイドピン23と、スライド部30側のガイドピン35が、スライド方向(図20の左右方向)について、常に、所定距離だけ離隔している。
発明者が実機を製造して確認した結果、当該所定距離が10mm以上であれば、ダイヤル錠3L(図21参照)を片手で把持した状態で、全閉から全開あるいは全開から全閉までのスライド動作が可能である。また、当該所定距離が35mm以上であれば、全閉から全開あるいは全開から全閉までのスライド動作を円滑に行うことが出来る。さらに、当該所定距離が50mm以上であれば、円滑にスライド動作を行うことが出来ると共に、スライド部30のガタツキが殆ど生じなかった。したがって、スライド部30が全閉から全開となる過程において、ガイドピン23とガイドピン35のスライド方向の距離は常に10mm以上が好ましく、より好ましくは35mm以上であり、さらに好ましくは50mm以上である。
【0074】
図21では、回動縁部36(図21の右側縁部:自動三輪車300の進行方向後方の縁部)を回動させる機構LD(スライド後端回動機構LD)が示されている。
図21で示す様に、スライド後端回動機構LDは、スライドガイド34と、スライドリンク38と、回転軸39と、引張コイルスプリング5とを備えている。スライドガイド34は、スライドリンク38が図21の左右方向へ摺動(スライド)するのを案内する機能を有している。
図21において、回動縁部36の右端部の下縁近傍には、ダイヤル錠3Lが設けられており、ダイヤル錠3Lは施錠部材としての機能と開閉操作用のつまみとして機能を兼ねている。
【0075】
スライドガイド34は明示しないガイド溝を有しており、フック係合ピン341を備えている。
フック係合ピン341は、スライドリンク38が摺動する方向と直交する方向(図21の紙面に垂直な方向)に突設されており、引張コイルスプリング5の一端(図21の左端)のフック5cを係止している。
【0076】
スライドリンク38は、スライドガイド34に形成されたガイド溝(図示せず)内を、図21における左右方向にスライド(摺動)する様に構成されている。
スライドリンク38の図21における左端近傍には、フック係合ピン381が固設されている。フック係合ピン381は、スライドリンク38が摺動する方向と直交する方向(図21の紙面に垂直な方向)に突設されており、引張コイルスプリング5の他端(図21では右端)のフック5bを係合している。
【0077】
回転軸39は図21の紙面に垂直な方向に延在している。そして、スライドリンク38の端部(図21における右端)に形成された軸孔と係合している。これにより、スライド後縁部36全体は、回転軸39周りに回動する様に構成されている。
図21において、符号38aはスライドリンク38の一方の端部(図21における右端)を示し、符号38bはスライドリンク38の他方の端部(図21における左端)を示している。
【0078】
次に、図22図24を参照して、回動縁部36の回動を説明する。
図22は、回動縁部36は、蓋本体20の取出口21oを閉鎖している(閉じている)状態を示している。図22の状態では、回動縁部36は垂直方向に延在している。
図22の状態から、スライド部31を蓋本体20に対して摺動させるには、回動縁部36のつまみ3L(ダイヤル錠が付いている円形の部材:図21参照)を作業者が把持して図21の上方(反時計方向)に引き上げて、図24で示す様に、回動縁部36をスライド部本体31に対して直線状に(面一に)する、或いは、フラットにする必要がある。
【0079】
ここで、図22で示す状態では、引張コイルスプリング5の引張力により、回動縁部36において、スライドリンク38を跨ぐ位置に配置されたパッキンPcが、スライド部本体31の右端部に当接している。そのため、図22で示す状態(蓋10が閉鎖している状態)では、保冷容器100は高い気密性を保持している。
図22の状態から、つまみ3L(図21)を図21の上方(反時計方向)に引き上げて、回動縁部36を図21の上方(反時計方向)へ回動すると、図23で示す様に、回転軸39及びスライドリンク38が図22の右方向に移動し、その分だけ、引張コイルスプリング5が伸長する。
【0080】
図23の状態から、さらにつまみ3L(図21)を反時計方向に回動すると、図24で示す様に、回動縁部36は概略水平に延在した状態となる。そして、回動縁部36が概略水平に延在した状態では、引張コイルスプリング5の引張力により保持される。
これにより、回動縁部36は概略水平に延在した状態となれば、スライド部30全体が水平に延在した状態(平らな状態)となり、スライド部30は蓋本体20に対して摺動(スライド)可能となる。そして、スライド部30を図19図24で右側に概略水平方向へ摺動すれば、図20で示す様に、蓋本体20の取出口21oが開放した状態になる。
図24の状態(スライド後縁部36が水平方向に延在した状態:スライド部本体31に対してフラットになった状態)で概略水平方向へ摺動する際に、スライド部30が容器本体40内部の商品(例えば、飲料品)と干渉することなく(スライド部30が商品に引っ掛かることなく)、蓋本体20に対して摺動(スライド)する。
また、回動縁部36を設けることにより、取出口21oの垂直方向位置を低くすることが出来る。
【0081】
回動縁部36が水平方向に延在してスライド部本体31に対してフラットな状態となる際に、スライド後縁部36は回転軸39を中心にして回動する。
係る回動の際に、スライド後縁部36がスライド部本体31の右端面と干渉して、回動縁部36の滑らかな(スムーズな)回動を妨げることがない様に、図示の実施形態ではスライド後縁部回動機構LDを設けている。
スライド後縁部36は回転軸39を中心にして回動する際に、スライド後縁部36がスライド部本体31の右端面と干渉しない様にするためには、スライド後縁部36とスライド部本体31の右端面の間に、スライド後縁部36のパッキンPcを設けた領域が回動するのに十分な空間を設ければ良い。図21で示すスライド後縁部回動機構LDは、係る空間を確保する機能を有している。
【0082】
図21で示す様に、スライド後縁部回動機構LDでは、引張コイルスプリング5を設けている。そして、図23で示す様に、スライド後縁部36は回転軸39を中心にして回動する際に、引張コイルスプリング5が伸長して、回転軸39及びスライドリンク38が図22の右方向(スライド部本体31から離隔する方向)に移動する。
回転軸39及びスライドリンク38がスライド部本体31から離隔する方向に移動することにより、スライド後縁部36とスライド部本体31の右端面の間に、スライド後縁部36が回動するのに十分な空間が形成される。
そのため、スライド後縁部36が蓋本体20に対して摺動する際に、スライド後縁部36がスライド部本体31の右端面と干渉することなく、スライド後縁部36は回転軸39を中心にして回動することが出来るのである。そして、パッキンPcがスライド部本体31の右端面と干渉することも防止される。
【0083】
また、引張コイルスプリング5の引張力により、スライド後縁部36が水平方向に延在した状態(図24で示す状態)が保持される。換言すれば、引張コイルスプリング5の引張力が存在しないと、スライド後縁部36は、その自重により、回転軸39を中心に図24において下方(時計方向)に回動して、図22で示す状態に戻ってしまう。
スライド後縁部36が水平方向に延在した状態(図24で示す状態:開放状態)から、回動縁部36が垂直方向に延在した状態(図21図22の状態:閉鎖状態)に戻すには、引張コイルスプリング5の引張力に抗して、回動縁部36を垂直方向に押し下げれば良い(図24において時計方向或いは下方へ回動すれば良い)。
【0084】
図19図20において、蓋本体20のスライドレール22及びスライド部30のスライドレール33は、左上がりに僅かに傾斜している。すなわち、スライド部30を開放する方向に移動するほど、スライド部30が僅かに上方へ移動する傾斜が設けられている。この傾斜については、スライド部30の全開〜全閉のスライドストロークを400mmとして、蓋本体20の厚さ寸法を50mmとした場合に、スライド部30の傾斜角度が0.1°〜5.0°であるものを例示することができる。
蓋本体20のスライドレール22及びスライド部30のスライドレール33を僅かに傾斜させることで、開放する際におけるスライド部30のスライド(摺動)が容易になる。上述した傾斜を設けることにより、スライド部30を開放する(図19の状態から図20の状態にする)ほど、スライド部30側のシール材(パッキン)32c(図26参照)と、蓋本体20側の線状突起24(図25参照)との距離が(僅かに)大きくなり、シール材32cと突起24の摩擦が小さくなるからである。発明者が試作した結果、スライド部30の上述の傾斜角度が0.3°以上であれば、スライド動作の初期の段階でパッキン32cと突起24が離隔して、円滑なスライド動作が可能であった。そして、前記傾斜角度が1°を超えると、スライド部30のスライド動作の抵抗が無視できない程度に大きくなった。なお、発明者が試作品を制作した際に、前記傾斜角度が0.3°〜1°、好ましくは0.4°〜0.7°であると、密閉性とスライド動作のバランスが良好だった。
【0085】
上述した傾斜について、さらに説明する。
蓋の気密性を確保して保冷性能を維持するためパッキンを設けると、パッキンがスライド部の円滑な摺動を妨げる恐れがある。
それに対して、図示の実施形態では、スライドレール22、33に傾斜(商品取出口21oを開放するほど、スライド部30が上方に移動する傾斜:スライド部30を開放する方向に移動するほど、スライド部30が僅かに上方へ移動する傾斜)を設けている。
そのため、商品取出口21oが開放する方向へスライド部30が摺動すると、スライド部30に設けたパッキン32cも上方へ移動し、蓋本体側の線状突起24(商品取出口21oが閉鎖している際に当該パッキン32cを押圧する突起)との間に空隙が生じる。係る空隙が生じる結果として、パッキン32cと線状突起24の摩擦が減少し、スライド部30の摺動の抵抗は小さくなる。
なお、蓋本体20の線状突起24は図25で示されており、スライド部本体31に設けたパッキン32cは図26で示されている。
【0086】
図27において、配達員Hが蓋10のスライド部30をスライドさせて、容器本体40の中から商品を取り出している。
明確には図示されていないが、スライド部30は任意の開度に保持可能に構成することが出来る。この様に構成することにより、スライド部30を開放して形成される開口のスライド方向寸法λを、商品Gを取り出すのに必要最小限にすることができ、夏場の暑い時期でも容器本体40内に暖かな外気は入り難く、保冷性能を高く維持できる。
【0087】
上述した様に、商品の配達時には、保冷容器100は冷却ユニット200の上面に載置されている。
しかし、図28で示す様に、図18図27で示す蓋10のみを冷却ユニット200に載置することも可能である。
蓋10のみを冷却ユニット200に載置することを可能にすれば、配達作業の拠点で蓋10を収容せずに、冷却ユニット200上に固定して置けば良く、商品配達作業の拠点に蓋10を収容する箇所を別途建造しなくても良い。
また、冷却ユニット200上に蓋10を固定することにより、冷却ユニット200に対する「いたずら」を防止することが出来る。
【0088】
図示の実施形態に係る保冷容器100では、冷却ユニット200と組み合わせて使用され、冷却ユニット200上に載置されている。そのため、冷却ユニット200により保冷容器100内の空気が冷却されるので、氷等の保冷材を使用しなくても、商品を好適に冷蔵することが出来る。
そして、保冷材として氷を使用する必要も無く、配達が終了した時点で氷が残存していた(溶け残っていた)場合に、当該溶け残った氷を廃棄処分する必要もない。そのため、当該廃棄処分作業の分だけ配達作業員の労力は減少する。
また、当該溶け残った氷を廃棄処分する必要が無いため、当該氷が(例えば)配達作業の拠点の屋外に廃棄されてしまうことも無く、配達作業の拠点の環境を劣化させる要因になることが防止される。
【0089】
また、図示の実施形態に係る保冷容器100では、容器本体40の底部41に開口部42を形成し、当該開口部42を介して容器本体内40iの空気が冷却ユニット200側に供給し且つ冷却ユニット200側で冷却された空気が容器本体内40iに供給する様に構成されており、容器本体40の下側から冷却される。そのため、保冷容器の上方(例えば蓋)から冷気を下方へ噴出して保冷容器内部を冷却することはなく、蓋あるいは商品取出口を開放した際に容器内部に侵入した暖かい空気が、冷気により降下されて、商品を加熱してしまうことも防止される。
また、容器本体40の下側から冷却しているので、商品(例えば飲料品G)が収容されている領域のみを冷却し、その上方の領域(商品が存在しない領域)は冷却しない。そのため、無駄な冷却をしないで済む。
【0090】
さらに図示の実施形態に係る保冷容器100では、容器本体内40iには上方が開放し且つ多数の孔を有する(網状を含む)第2の容器(内カゴ)60が収容されており、冷却ユニット200で冷却された空気は、容器本体内壁面40iwと内カゴ60の空間を循環経路として、また内カゴ60の多数の孔部(内カゴの目63)を介して冷却された空気が商品に満遍なく接触する。
従って、冷却ユニット200で冷却された空気により、収容された商品が効率良く低温状態に保持されるのである。
【0091】
これに加えて図示の実施形態に係る保冷容器100では、冷却ユニット200は原動機付きの車両の電源(バッテリ)51に加えて、補助電源52を設けており、原動機付きの車両300の電源電圧が低下した場合に、冷却ユニット駆動電源を、原動機付きの車両の電源(バッテリ)51から補助電源52に切り換える回路CKT(図16)を具備している。そのため、原動機付きの車両300の電源電圧が低下した場合でも、冷却ユニット200の作動が維持され、商品が好適に冷蔵されている状態が補償される。
【0092】
ここで、容器本体40の側壁42において、中央部42a、42bでは外気の熱は一方向(側壁が面している側)のみから伝達される。一方、側壁の端部(角部)44では、熱は、二方向(当該端部を挟む両側壁が面している方向)から伝達される。そのため、側壁の端部44は側壁中央部42a、42bに比較して、加熱され易い。
これに対して、従来の保冷容器では、側壁部全域に亘って断熱材の厚さ寸法が同一であるため、伝達される熱量に比較して、側壁の角部では断熱材厚さが不足し、側壁中央部では断熱材厚さが過大になっている傾向がある。
図示の実施形態に係る保冷容器100では、容器本体40の側壁42が、両端44が外方へ突出しており、中央が内方へ凹んだ湾曲線で構成されている。そのため、側壁42内の断熱材45は、側壁中央部42a、42bでは薄く、側壁両端部44では厚くなる。これにより、側壁部の全域に亘って、断熱材の厚さ寸法を、伝達される熱量に合致した適切な断熱材厚さに設定することが出来る。
また、容器本体40の側壁42が、中央が内方へ凹んだ湾曲線で構成されていることにより、容器本体40を持ち運ぶ際に当該湾曲線が身体にフィットして、持ち運び易くすることが出来る。
【0093】
さらに図示の実施形態に係る保冷容器100では、内カゴ60の底部61に下方へ突出したリブ(仕切用リブ)64を設け、当該リブ64は容器本体底部41に形成された開口部42を横断して延在する様に構成されているので、当該リブ64により容器本体底部41に形成された開口部42が冷却ユニット200の吐出口と吸い込み口に仕切られ、冷却ユニット200で冷却された空気が、容器本体底部41の開口部42から保冷容器内40iに供給された直後に、当該開口部42を介して直ちに冷却ユニット200側に吸い込まれる事態(いわゆるショートサーキット)が防止される。
また、仕切り用リブ64は、内カゴ60の対向する2つの側壁面62にも形成されているため、内カゴ60と保冷容器100の間の空間の間仕切りとなり、冷却された空気の流れを一方向に制御でき、保冷容器内を効果的に冷却することができる。
【0094】
図示の実施形態では、図18図27を参照して説明した蓋10を、冷却ユニット200上に載置して固定することが可能であるため、配達作業の拠点で蓋10を収容せずに、冷却ユニット200上に固定して置けば良く、配達作業拠点に蓋収容箇所を別途設けなくても良い。
また、冷却ユニット200上に蓋10を固定することにより、冷却ユニット200に対する「いたずら」を防止することも出来る。
【0095】
図18図27を参照して説明した蓋10によれば、スライド部30は蓋本体20に対して水平方向(水平方向に対して、若干傾斜した方向も含む)に摺動可能に構成されているので、商品の出し入れ等の際に商品取出口21oを開放する時に、蓋10を容器本体40の上方に跳ね上げる様に移動する必要がなく、スライド部30を水平方向に摺動(スライド)するのみで良い。
そのため、商品取出口21oを閉鎖する時には蓋10を垂直方向下方に移動する必要も無く、スライド部30を水平方向に(開く時とは反対方向に)摺動すれば良い。したがって、商品取出口21oを閉鎖する際に、外部の暖かい空気を保冷容器100内部に巻き込んでしまう恐れがなく、保冷容器内部を昇温させてしまうことが防止される。
また、商品の出し入れ等の際に商品取出口21oを開放する時に、蓋10を容器本体40の上方に跳ね上げる様に移動する必要がないので、配達作業員の背が低い場合でも、当該配達作業員はスライド部30を水平方向に移動することにより、容易且つ確実に保冷容器100の商品取出口21oを開閉することが出来る。
【0096】
さらに図18図27を参照して説明した蓋10によれば、スライド部30には、回動縁部36をスライド部本体31に対して回動自在に取り付ける結合機構LDが設けられているので、保冷容器100を閉めている場合にはスライド部の回動縁部36をスライド部本体31に対して折り曲げた状態(垂直方向に延在した状態)にして、保冷容器100の商品取出口21oを確実に閉鎖することが出来る。
【0097】
一方、保冷容器100の商品取出口21oを開放するに際しては、スライド部の回動縁部36を水平方向に延在する様に(スライド部本体31とフラットになる様に)回動して、スライド部本体31を蓋本体20に対して容易に摺動させることが出来る。
ここで、スライド部本体31に設けられたスライドガイド34と、スライドガイド34内を摺動可能なスライドリンク38を有する結合機構LDをスライド部本体31に設け、スライドリンク38の一端部38aは回転軸39により回動縁部36に取り付けられ、スライドリンク38の他端部38bは引張コイルスプリング5の一端5bに結合しており、引張コイルスプリング5の他端5cはスライドガイド34に取り付けられているので、図18図27を参照して説明した蓋10では、スライド部30の回動縁部36をスライド部本体31と干渉すること無く、回動自在にすることが出来る。
【0098】
これに加えて、図18図27を参照して説明した蓋10によれば、蓋本体20にはスライド部30を案内するスライドレール22が設けられ、当該スライドレール22は水平面に対して傾斜していれば(商品取出口21oが開放する方向について、スライド部30が上方に移動する傾斜が形成されていれば)、商品取出口21oが閉鎖している状態ではスライド部30が摺動する部分のシール性が良好に維持される一方で、商品取出口21oを開放するときには蓋本体20に対してスライド部30が容易に摺動する状態にすることが出来る。
これは、スライドレール22に傾斜(商品取出口21oが開放する方向について、スライド部30が上方に移動する傾斜)を設けることにより、商品取出口21oが開放する方向にスライド部30が摺動すると、スライド部30に設けたパッキン32cと、商品取出口21oが閉鎖している状態で当該パッキン32cを押圧する蓋本体20側の線状突起24との間に空隙が生じ、当該パッキン32cがスライド部30の摺動の抵抗にならないためである。
【0099】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば、図示の実施形態では、自動三輪車300に保冷容器100が載置された状態が示されているが、保冷容器100は、自動車、自動二輪車等の原動機付の車両全般に搭載することが可能である。
【符号の説明】
【0100】
5・・・引張コイルスプリング
10・・・蓋
20・・・蓋本体
30・・・スライド部
40・・・容器本体
41・・・底部
42・・・開口部
51・・・車両のバッテリ
52・・・補助バッテリ
60・・・内カゴ
64・・・仕切り用リブ
100・・・保冷容器
200・・・冷却ユニット
300・・・自動三輪車
CKT・・・電源切替え回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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