特許第6025512号(P6025512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025512
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】エンジンのギヤケース装置
(51)【国際特許分類】
   F02F 7/00 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   F02F7/00 K
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-246652(P2012-246652)
(22)【出願日】2012年11月8日
(65)【公開番号】特開2014-95327(P2014-95327A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年11月2日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 三菱重工業株式会社相模原製作所(神奈川県相模原市中央区田名3000)から取引先へ販売(販売日:平成24年5月9日)。
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松丸 祥久
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−040131(JP,U)
【文献】 特開2004−293423(JP,A)
【文献】 特開2000−282953(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第0640776(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00− 1/42
F02F 7/00
F02B 61/00−79/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのギヤケース装置において、
少なくとも、クランクシャフトに連結されたクランクシャフトギヤと、該クランクシャフトギヤから動力が伝達される燃料圧送ポンプギヤとを含むタイミングギヤトレーンと、
前記タイミングギヤトレーンを収容するギヤケースと、
前記ギヤケースに開孔して設けられ、該開孔を介して前記ギヤケースの外部より前記燃料圧送ポンプギヤを視認可能に構成された作業窓と、
前記燃料圧送ポンプギヤに設けられたギヤ側マーク、及び前記作業窓の縁部に設けられた窓側マークからなる一対の位置合わせマークと、を備え、
前記作業窓の開孔軸線方向が、前記燃料圧送ポンプギヤの軸心に対してずらされて配向され
前記ギヤ側マークは、前記燃料圧送ポンプギヤの歯面に形成されており、
前記作業窓は、その開孔を介して前記燃料圧送ポンプギヤの歯面を視認可能なように、前記燃料圧送ポンプギヤ近傍に位置する前記ギヤケースの側面に設けられることを特徴とするエンジンのギヤケース装置。
【請求項2】
前記燃料圧送ポンプギヤは、予め燃料圧送ポンプが連結された状態で、前記ギヤケースの背面側から軸方向に装着されることで、前記ギヤケースに収容されるように構成されていることを特徴とする請求項に記載のエンジンのギヤケース装置。
【請求項3】
前記ギヤケースの側面の外周側には台座部が設けられており、該台座部の台座面と直交する方向が、前記作業窓の開孔軸線方向と同じ方向となるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のエンジンのギヤケース装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はエンジンのギヤケース装置に関し、詳しくは、簡単な装置構成で燃料圧送ポンプギヤの位相合わせを行うことが出来るエンジンのギヤケース装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのギヤケース装置では、タイミングギヤトレーンを構成する各ギヤが、所定の位相に合わされた状態でギヤケース内に配置されている。そして、クランクシャフトギヤの回転により、その他の各ギヤが回転し、各ギヤとシャフトを介して連結されているバルブ機構の開閉タイミングを制御する各カム機構が所定のタイミングで作動するように構成されている。
【0003】
各ギヤの位相合わせは、図6に示したように、ギヤの軸方向頂面に刻印された合いマーク100a,110aを利用して行われる。一方のギヤ100には、所定の隣接する2つの歯101,102にそれぞれ合いマーク100aが刻印されている。また、他方のギヤ110の所定の歯111には、合いマーク100aに対応する合いマーク110aが刻印されている。そして、ギヤ100をギヤケース内に所定の位相で配置し、その後、ギヤ100の2つの歯101,102の間に歯111を噛み合わせるようにしてギヤ110をギヤケース内に配置することで、ギヤ110の位相合わせが行われる。
【0004】
タイミングギヤトレーンを構成する各ギヤの内、燃料圧送ポンプギヤは、シャフトを介して燃料圧送ポンプと連結されており、燃料圧送ポンプギヤの位相によって、燃料圧送ポンプにおける噴射タイミングが制御されるようになっている。このため、燃料圧送ポンプギヤは、クランクシャフトギヤに対して所定の位相となるように配置する必要がある。
【0005】
燃料圧送ポンプギヤは、燃料圧送ポンプを点検整備する度にギヤケースからポンプ取付フランジと一体で取り外される。このため、燃料圧送ポンプギヤを取付けフランジを介してギヤケースから取り外し、またその位相を合わせてギヤケース内に再び配置できるように、ギヤケースの頂面には作業窓が形成されている。そして、この作業窓からギヤの軸方向頂面に刻印された合いマークを視認することで、燃料圧送ポンプギヤの位相合わせを行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−65151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ギヤケースには、ギヤケース内に潤滑油を供給するための給油孔が形成されている。この給油孔は、給油作業が容易なように、例えばギヤケースの側面などに形成される。したがって、上述したように、ギヤケースに作業窓を設ける場合には、ギヤケースに複数の開孔を設けることとなり、ギヤケースの構造が複雑になるとの問題があった。
【0008】
また、上述したような、隣接する2つのギヤに合いマークを設けてギヤの位相合わせを行う方法は、先に配置したギヤの位相がずれないように順々にギヤを配置する必要があり、大変手間がかかるものであった。燃料圧送ポンプギヤは、バルブ機構の開閉タイミングを制御するカムシャフトギヤよりもその位相合わせ精度を多少ルーズに管理することが出来るため、より手間のかからない簡単な位相合わせ方法が求められていた。
【0009】
なお、特許文献1には、クランクシャフトの位相を単一の作業窓により位相合わせできるようにした位相合わせ構造にかかる発明が開示されている。しかしながら、この特許文献1の発明は、クランクケースに関する発明であり、本願発明とは異なる対象に適用されるものである。
【0010】
本発明の少なくとも一つの実施形態は、上述したような従来技術の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、燃料圧送ポンプギヤの位相合わせを簡単に行うことが出来、しかも簡素な構成からなるエンジンのギヤケース装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するために、本発明のエンジンのギヤケース装置の少なくとも一つの実施形態は、
エンジンのギヤケース装置において、
少なくとも、クランクシャフトに連結されたクランクシャフトギヤと、該クランクシャフトギヤから動力が伝達される燃料圧送ポンプギヤとを含むタイミングギヤトレーンと、
前記タイミングギヤトレーンを収容するギヤケースと、
前記ギヤケースに開孔して設けられ、該開孔を介して前記ギヤケースの外部より前記燃料圧送ポンプギヤを視認可能に構成された作業窓と、
前記燃料圧送ポンプギヤに設けられたギヤ側マーク、及び前記作業窓の縁部に設けられた窓側マークからなる一対の位置合わせマークと、を備え、
前記作業窓の開孔軸線方向が、前記燃料圧送ポンプギヤの軸心に対してずらされて配向されていることを特徴とする。
【0012】
このようなエンジンのギヤケース装置によれば、ギヤケースに開孔して設けられる作業窓の開孔軸線方向が、燃料圧送ポンプギヤの軸心に対してずらされて配向されている。このため、作業窓を利用して燃料圧送ポンプギヤの位相合わせを行うとともに、作業窓にオイルガンを挿入してギヤケース内に潤滑油を供給することも出来るため、ギヤケースに別途給油窓を設ける必要がなく、ギヤケース装置を簡素な構成にすることが出来る。
【0013】
また、燃料圧送ポンプギヤに設けられたギヤ側マークと、作業窓の縁部に設けられた窓側マークとを利用して、燃料圧送ポンプギヤの位相合わせを行うため、他のギヤの位相合わせとは独立して、燃料圧送ポンプギヤの位相合わせを行うことが出来る。このため、燃料圧送ポンプギヤの位相合わせを、従来よりも容易に行うことが出来る。
【0014】
また、本発明の一実施形態では、
前記ギヤ側マークは、前記燃料圧送ポンプギヤの歯面に形成されており、
前記作業窓は、その開孔を介して前記燃料圧送ポンプギヤの歯面を視認可能なように、前記燃料圧送ポンプギヤ近傍に位置する前記ギヤケースの側面に設けられる。
【0015】
このような構成によれば、作業窓がギヤケースの側面に設けられるため、作業窓がギヤケースの頂面に設けられる場合よりも、給油作業が容易である。しかも、ギヤケースの側面側から燃料圧送ポンプギヤの歯面に向かって、直接に潤滑油を供給することが出来るため、潤滑油をギヤの歯面に効果的に供給出来る。
【0016】
また、本発明の一実施形態では、
前記燃料圧送ポンプギヤは、予め燃料圧送ポンプが連結された状態で、前記ギヤケースの背面側から軸方向に装着されることで、前記ギヤケースに収容されるように構成されている。
【0017】
このような構成によれば、例えば燃料圧送ポンプの点検整備時において、ケース蓋を付けたままの状態で、燃料圧送ポンプ及び燃料圧送ポンプギヤをギヤケースから取り外し、またその位相を合わせてギヤケース内に再び配置することが出来る。
【0018】
また、本発明の一実施形態では、
前記ギヤケースの側面の外周側には台座部が設けられており、該台座部の台座面と直交する方向が、前記作業窓の開孔軸線方向と同じ方向となるように構成されている。
【0019】
このような構成によれば、台座部の台座面に対して直交する方向に作業窓が開孔されるため、作業窓の視認性にも優れるとともに、オイルフィラキャップの装着性にも優れる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、燃料圧送ポンプギヤの位相合わせを簡単に行うことが出来、しかも簡素な構成からなるエンジンのギヤケース装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態のギヤケース装置が取り付けられているエンジンの外観を示した斜視図である。
図2】本実施形態のギヤケース装置の内部を示した平面図である。
図3】燃料圧送ポンプギヤの周辺を拡大して示した平面図である。
図4図2におけるa〜c部の拡大図である。
図5図3においてギヤケースをA方向から視認した図である。
図6】従来のギヤの位相合わせについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
ただし、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、本発明の範囲をそれにのみ限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0023】
図1は、本実施形態のギヤケース装置が取り付けられているエンジンの外観を示した斜視図である。なお、図1において、説明の便宜上、図の手前側を「前方側」、奥側を「後方側」と定義するが、この「前方側」「後方側」とは、エンジン1が車両に搭載された時の車両に対する配向方向とは無関係である。
【0024】
本実施形態のギヤケース装置10は、図1に示したように、エンジン1の前方側において回転可能に軸支されているファン2の背面に配置されている。また、その側面には、後述する作業窓30が設けられている。また、図中の符号4は、ロッカカバーであり、このロッカカバー4の下方には、複数のシリンダが直列に配置されており、さらにその下方には、エンジン1の前後方向に延在するクランクシャフト12´が回転可能に支持されている。
【0025】
図2は、本実施形態のギヤケース装置の内部を示した平面図である。図2では、ギヤケース28のケース蓋が取り外された状態のギヤケース装置10を、エンジン1の前方側から視認した状態を示している。ギヤケース28は、不図示のシリンダブロックに固定されるケース本体28aと、ケース蓋とからなる二つ割り形状に構成されており、両者は、複数のボルト孔29においてボルトにより締結される。
【0026】
図2に示したように、ギヤケース28の内部には、クランクシャフトギヤ12、カムシャフトギヤ14、第1アイドラギヤ16、オイルポンプギヤ18、燃料圧送ポンプギヤ20、及び第2アイドラギヤ22からなるタイミングギヤトレーン10Aが収容されている。カムシャフトギヤ14、オイルポンプギヤ18、及び第2アイドラギヤ22は、第1アイドラギヤ16を介して、クランクシャフトギヤ12と接続されている。また、燃料圧送ポンプギヤ20は、第2アイドラギヤ22及び第1アイドラギヤ16を介して、クランクシャフトギヤ12と接続されている。
【0027】
また、クランクシャフトギヤ12は、クランクシャフト12´の軸端部に連結されている。そして、タイミングギヤトレーン10Aを構成する各ギヤは、クランクシャフトギヤ12の回転に伴い、クランクシャフトギヤ12から動力が伝達されて夫々図中の矢印で示した方向に回転するように構成されている。
【0028】
また、図2に示したように、カムシャフトギヤ14の近傍には、カムシャフトギヤ14の位相を検出するカムトップセンサ38がギヤケース28に嵌設されている。
【0029】
図3は、燃料圧送ポンプギヤの周辺を拡大して示した平面図である。
図3に示したように、ギヤケース28の燃料圧送ポンプギヤ20近傍の側面には、その一壁面28cの外周側に、平面視で台形状をなす台座部34が設けられている。そして、この台座部34には、その台座面34aに対して直交する方向に、作業窓30が開孔して設けられている。この作業窓30は、図2に示すように使用時にはオイルフィラキャップ32によって閉止される。またこの作業窓30は、オイルフィラキャップ32を取り外した時に、ギヤケース28の外部から燃料圧送ポンプギヤ20の歯先面を視認可能な位置に設けられ、好ましくは、図3に示したように、燃料圧送ポンプギヤ20近傍の壁面28cや28dに設けられる。
【0030】
また、図3に示したように、作業窓30の開孔軸線方向Xは、燃料圧送ポンプギヤ20の軸心20aに対してずらされて配向されている。これにより、ギヤケース28の内部に、潤滑油を供給するためのオイルガンを挿入可能な給油スペース40が確保される。
【0031】
また、燃料圧送ポンプギヤ20の所定の歯42の先端面には、燃料圧送ポンプギヤ20の位置合わせマークとして、ギヤ側マーク42aが設けられている。またこのギヤ側マーク42aと対応して、作業窓30の縁部には窓側マーク44aが設けられている。この窓側マーク44aは、平面視において、開孔軸線方向Xに沿った位置に設けられている。
【0032】
そして、図3に示したように、開孔軸線方向Xの延長線上にギヤ側マーク44aが位置するように燃料圧送ポンプギヤ20を配置した時に、後述するように、燃料圧送ポンプギヤ20が所定の位相に合わされた状態となるように構成されている。
【0033】
上述した構成において、タイミングギヤトレーン10Aは、次のようにしてギヤケース28内に配置される。
先ず、クランクシャフト12´が所定のピストン位相(例えば、第1ピストンが上死点となる位相)となるようにクランクシャフトギヤ12を配置する。また、カムシャフトギヤ14及びオイルポンプギヤ18をギヤケース28内に配置する。
【0034】
そして、先に配置したクランクシャフトギヤ12、カムシャフトギヤ14、オイルポンプギヤ18と噛み合わせるように、第1アイドラギヤ16を配置する。この際、クランクシャフトギヤ12、カムシャフトギヤ14、及び第1アイドラギヤ16の所定の歯には、図4(a)(b)に示すような合いマーク12a,14b,16a,16bが刻印されている。そして、これらの合いマークを目印にして、第1アイドラギヤ16を配置することで、カムシャフトギヤ14がクランクシャフトギヤ12に対して所定の位相となる。
【0035】
なお、オイルポンプギヤ18は、バルブ機構の開閉タイミングを制御するカムシャフトギヤ14とは異なり、クランクシャフトギヤ12に対して特定の位相に合わせて配置する必要はない。このため、図4(c)に示したように、オイルポンプギヤ18には、合いマークは刻印されていない。
【0036】
そして次に、燃料圧送ポンプギヤ20及び第2アイドラギヤ22をギヤケース28内に配置する。燃料圧送ポンプギヤ20、第2アイドラギヤ22、燃料圧送ポンプ24、及び取付フランジ26は、予め連結されて1つのアセンブリを構成している。そして、この燃料圧送ポンプギヤ20を含むアセンブリをギヤケース28(ケース本体28a)の背面側から軸方向に挿入し、燃料圧送ポンプギヤ20を所定の位相を合わせた後、取付フランジ26とケース本体28aとを不図示のボルト孔によって締結することで、燃料圧送ポンプギヤ20及び第2アイドラギヤ22がギヤケース28内に所定の位相で配置される。
【0037】
この際、燃料圧送ポンプギヤ20の位相合わせは、次のように行われる。ここで図5は、図3においてギヤケースをA方向から視認した図である。
【0038】
図5に示したように、ギヤ側マーク42aは、例えば、所定の歯42の先端面にペイントを塗布することで形成されている。また窓側マーク44aは、例えば、円形に開孔された作業窓30の中央上部に設けられた突起44aとして形成されている。そして、ギヤケース28の外側から作業窓30を開孔軸線方向Xに沿って視認し、突起44aの真下にギヤ側マーク42aのペイントが位置するように燃料圧送ポンプギヤ20の位置を調整することで、燃料圧送ポンプギヤ20の位相合わせが行われる。また、このようにする事によって、第2アイドラギヤ22、燃料圧送ポンプギヤ20の合いマークが必要無くなり、部品製作コストの低減が可能となる。
【0039】
なお、本実施形態のギヤ側マーク42aは、図5に示したように、連続する3つの歯42,42,42の夫々先端面に設けられている。そして、この3つのギヤ側マーク42aのいずれかが窓側マーク44aの真下に位置するように、燃料圧送ポンプギヤ20の位置を調整することで、燃料圧送ポンプギヤ20が所定の位相に合わされるようになっている。このように、要求される燃料圧送ポンプギヤ20の位相合わせ精度に応じて、ギヤ側マーク42aを設ける範囲を設定することが可能である。
【0040】
このように構成される本実施形態のエンジン1のギヤケース装置10によれば、ギヤケース28に開孔して設けられる作業窓30の開孔軸線方向Xが、燃料圧送ポンプギヤ20の軸心20aに対してずらされて配向されている。このため、作業窓30を利用して燃料圧送ポンプギヤ20の位相合わせを行うとともに、作業窓30にオイルガンを挿入してギヤケース28内に潤滑油を供給することも出来るため、ギヤケース28に別途給油窓を設ける必要がなく、ギヤケース装置10を簡素な構成にすることが出来、部品作成コストの低減が可能となる。
【0041】
また、燃料圧送ポンプギヤ20に設けられたギヤ側マーク42aと、作業窓30の縁部に設けられた窓側マーク44aとを利用して、燃料圧送ポンプギヤ20の位相合わせを行うため、カムシャフトギヤ14の位相合わせとは独立して、燃料圧送ポンプギヤ20の位相合わせを行うことが出来る。このため、燃料圧送ポンプギヤ20の位相合わせを、従来よりも容易に行うことが可能である。
【0042】
また上述したように、作業窓30がギヤケース28の側面に設けられており、図1に示したように、その作業窓30がエンジン1の側方に配置されるようにレイアウトすることが出来る。このため、作業窓30がギヤケース28の頂面に設けられる場合よりも、給油作業が容易となる。しかも、ギヤケース28の側面側から燃料圧送ポンプギヤ20の歯面に向かって、直接に潤滑油を供給することが出来るため、潤滑油を歯面に効果的に供給することが出来る。
【0043】
また上述したように、燃料圧送ポンプギヤ20は、予め燃料圧送ポンプ24が連結された状態で、ギヤケース28の背面側から軸方向に装着されるように構成されている。よって、例えば燃料圧送ポンプ24の点検整備時において、ケース蓋を付けたままの状態で、燃料圧送ポンプ24及び燃料圧送ポンプギヤ20をギヤケース28から取り外し、またその位相を合わせてギヤケース28内に再び配置することが可能である。
【0044】
また上述したように、ギヤケース28の側面の外周側には台座部34が設けられており、作業窓30はこの台座部34の台座面34aと直交する方向に開孔して設けられている。このため、台座部34の台座面34aに対して直交する方向に作業窓30が開孔されるため、作業窓30の視認性にも優れるとともに、作業窓30を閉止するオイルフィラキャップ32の装着性にも優れる。
【0045】
以上、本発明の好ましい形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
【0046】
例えば、上述した実施形態では、作業窓30はギヤケース28の側面に形成されていた。しかしながら、本発明のギヤケース装置10はこれに限定されず、例えば、ギヤケース28の頂面(ケース蓋)に開孔されていてもよいものである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の少なくとも一つの実施形態は、簡単な装置構成で燃料圧送ポンプギヤの位相合わせを行うことが出来るエンジンのギヤケース装置として、特に、産業用車両に搭載されるディーゼルエンジン等に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0048】
1 エンジン
2 ファン
4 ロッカカバー
10 ギヤケース装置
10A タイミングギヤトレーン
12 クランクシャフトギヤ
12´ クランクシャフト
12a 合いマーク(クランク側)
14 カムシャフトギヤ
14a 合いマーク(カム側)
16 第1アイドラギヤ
16a、16b 合いマーク(アイドラ側)
18 オイルポンプギヤ
20 燃料圧送ポンプギヤ
20a 燃料圧送ポンプギヤの軸心
22 第2アイドラギヤ
24 燃料圧送ポンプ
26 取付フランジ
28 ギヤケース
28a ケース本体
28c,28c 壁面
29 ボルト孔
30 作業窓
32 オイルフィラキャップ
34 台座部
34a 台座面
38 カムトップセンサ
40 給油スペース
42 歯
42a ギヤ側マーク
44a 窓側マーク(突起)
図1
図2
図3
図4
図5
図6