特許第6025514号(P6025514)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ケミコート化成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6025514-臨床検査用検体沈渣容器 図000002
  • 特許6025514-臨床検査用検体沈渣容器 図000003
  • 特許6025514-臨床検査用検体沈渣容器 図000004
  • 特許6025514-臨床検査用検体沈渣容器 図000005
  • 特許6025514-臨床検査用検体沈渣容器 図000006
  • 特許6025514-臨床検査用検体沈渣容器 図000007
  • 特許6025514-臨床検査用検体沈渣容器 図000008
  • 特許6025514-臨床検査用検体沈渣容器 図000009
  • 特許6025514-臨床検査用検体沈渣容器 図000010
  • 特許6025514-臨床検査用検体沈渣容器 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025514
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】臨床検査用検体沈渣容器
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20161107BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   G01N1/10 N
   G01N1/10 H
   G01N1/10 V
   G01N33/48 E
   G01N33/48 A
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-249587(P2012-249587)
(22)【出願日】2012年11月13日
(65)【公開番号】特開2014-98588(P2014-98588A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390016506
【氏名又は名称】日本ケミコート化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(74)【代理人】
【識別番号】100069578
【弁理士】
【氏名又は名称】藤川 忠司
(72)【発明者】
【氏名】井上 喜久
【審査官】 後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−507284(JP,A)
【文献】 実開昭59−037600(JP,U)
【文献】 実開平06−072056(JP,U)
【文献】 特開昭58−076082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00− 1/44
G01N 33/48−33/98
C12M 1/00− 3/10
A61B 5/06− 5/22
C12Q 1/00− 3/00
B04B 1/00−15/12
B65D 35/44−35/54
B65D 39/00−55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を収容する容器本体と、容器本体の一端部に設けた筒状口部に着脱可能に装着される検体沈渣塗抹用蓋体と、容器本体の他端部に設けた開口部に着脱可能に装着されるキャップとよりなり、前記検体沈渣塗抹用蓋体は、容器本体の前記筒状口部に圧嵌される栓体部と該栓体部の一端部に一体形成され容器本体内の検体沈渣を堆積させる沈渣堆積皿部と栓体部の他端部に一体形成され容器本体の前記筒状口部より突出して該筒状口部の外周面側に折り返して該外周面に密着可能な液密筒部とからなることを特徴とする臨床検査用検体沈渣容器。
【請求項2】
前記液密筒部の先端部に係合鍔部が形成され、該液密筒部を前記筒状口部の外周面側に折り返して該外周面に密着させたときに前記係合鍔部が係合する被係合突起が前記筒状口部の外周面に形成されてなる請求項1に記載の臨床検査用検体沈渣容器。
【請求項3】
前記検体は採取尿であって、尿細胞診用保存液に混合して容器本体に収容されてなる請求項1又は2に記載の臨床検査用検体沈渣容器。
【請求項4】
前記尿細胞診用保存液は、ブタンジオール、ポリエチレングリコール#1540、ホルマリン、ポリビニールピドリドンK−30及び酢酸を夫々重量比で0.5〜10%含み、その他95%エタノール及び蒸留水を重量比で合計70%以上とする請求項3に記載の臨床検査用検体沈渣容器。
【請求項5】
前記検体は、婦人科用剥離子によって子宮頸部を擦過することによって該婦人科用剥離子に付着した子宮頸部擦過細胞からなる請求項1又は2に記載の臨床検査用検体沈渣容器。
【請求項6】
前記婦人科用剥離子は、子宮頸部擦過用刷毛であって、合成樹脂製基板と該基板に一体突設され前記子宮頸部を擦過する軟質刷毛と該基板に着脱可能に取り付けられる操作棒とからなる請求項5に記載の臨床検査用検体沈渣容器。
【請求項7】
前記婦人科用剥離子は、前記子宮頸部を擦過する子宮頸部擦過用綿棒である請求項5に記載の臨床検査用検体沈渣容器。
【請求項8】
前記婦人科用剥離子は、前記検体の付着した状態で、前記容器本体に充填される婦人科検体用保存液中に収容されてなる請求項5〜7の何れかに記載の臨床検査用検体沈渣容器。
【請求項9】
前記婦人科検体用保存液は、ホルマリン、ポリエチレングリコール#1540、ジチオスレイトウル、ブチルヒドロキシトルエン及びポリビニルピドリドンK−90を夫々重量比で0.5〜20%含み、その他95%エタノール及び蒸留水を重量比で合計60%以上とする請求項8に記載の臨床検査用検体沈渣容器。
【請求項10】
前記容器本体に収容された婦人科用剥離子が、該容器本体に装着された前記検体沈渣塗抹用蓋体に衝接するのを阻止するための網状受皿が前記容器本体内に係合されてなる請求項5〜8の何れかに記載の臨床検査用検体沈渣容器。
【請求項11】
前記網状受皿は、ポリエチレンによって一体形成され、上下に貫通する多数の網孔を有する網状部材と該網状部材の周囲を覆って前記容器本体の内壁に係合される円筒状部材からなる請求項10に記載の臨床検査用検体沈渣容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臨床検査に用いる検体沈渣容器にする。
【背景技術】
【0002】
従来、細胞診検査あるいは細菌検査等の臨床検査を行うために、検体の沈渣をスライドガラスに塗抹して標本を作成する場合、特許文献1に記載のような臨床検査用遠沈管が用いられていた。
【0003】
この遠沈管を用いて検体から沈渣を塗抹用のスライドガラスに塗抹するには、先ず遠沈管に検体を採取して遠心分離を行った後、分離された検体を容器本体の口部からスポイドで沈渣を採取して、スライドガラス上に滴下し、もう一枚のスライドガラス等で沈渣を薄く拡げるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−271309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、この従来の遠沈管では、沈渣をスライドガラス等に塗抹するには、先ず分離された検体の上澄みを何らかの方法で取り除き、その後容器の口部からスポイド等で沈渣を採取し、スライドガラス上に滴下し、もう一枚のスライドガラス等を用いて沈渣を薄く拡げるという面倒で、手間のかかる作業をしなければならなかった。特に、沈渣の量が少ない場合には、スポイド等を用いて沈渣をスライドガラス等に塗抹するには多くの注意や時間を必要としていた。
【0006】
さらに、この遠沈管は医療に用いられる場合が多く、この場合検体として分離される液体は、尿等の人体から排出されるものであって、これをスポイドのようなものによって吸引・排出する事は非常に不衛生であると共に、相互汚染が生じることのないように、各検体に使用するスポイドを毎回変えるか或いは毎回洗浄する必要があるという欠点があった。
【0007】
また、スポイドで検体沈渣を採取してスライドガラスに塗抹させるのに手間がかかって面倒であると共に、不衛生になりやすい。
【0008】
本発明は、何らスポイドを用いることなく、検査を簡単且つ衛生的に行うことができるようにした臨床検査用検体沈渣容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、実施形態に示される参照符号を各構成要素に付して示すと、請求項1に記載の発明は、検体Kを収容する容器本体1と、容器本体1の一端部に設けた筒状口部1aに着脱可能に装着される検体沈渣塗抹用蓋体2と、容器本体1の他端部に設けた開口部1bに着脱可能に装着されるキャップ3とよりなり、前記検体沈渣塗抹用蓋体2は、容器本体1の前記筒状口部1aに圧嵌される栓体部2aと該栓体部2aの一端部に一体形成され容器本体1内の検体沈渣Ka(図6(a),(b))を堆積させる沈渣堆積皿部2bと栓体部2aの他端部に一体形成され容器本体1の前記筒状口部1aより突出して該筒状口部1aの外周面側に折り返して該外周面に密着可能な液密筒部2cと、からなることを特徴とする臨床検査用検体沈渣容器Sに係る。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記液密筒部2cの先端部に係合鍔部2dが形成され、該液密筒部2cを前記筒状口部1aの外周面側に折り返して該外周面に密着させたときに前記係合鍔部2dが係合する被係合突起1cが前記筒状口部1aの外周面に形成されてなる請求項1に記載の臨床検査用検体沈渣容器Sに係る。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記検体Kは採取尿K1であって、尿細胞診用保存液H1に混合して容器本体1に収容されてなる請求項1又は2に記載の臨床検査用検体沈渣容器Sに係る。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記尿細胞診用保存液H1(図6(a),(b))は、ブタンジオール、ポリエチレングリコール#1540、ホルマリン、ポリビニールピドリドンK−30及び酢酸を夫々重量比で0.5〜10%含み、その他95%エタノール及び蒸留水を重量比で合計70%以上とする請求項3に記載の臨床検査用検体沈渣容器Sに係る。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記検体Kは、婦人科用剥離子4に付着した子宮頸部擦過細胞K2(図6(a),(b))からなる請求項1又は2に記載の臨床検査用検体沈渣容器Sに係る。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記婦人科用剥離子4は、子宮頸部擦過用刷毛4A(図6(a))であって、合成樹脂製基板4aと該基板4aに一体突設された軟質刷毛4bと該基板4aに着脱可能に取り付けられる操作棒4cとからなる請求項5に記載の臨床検査用検体沈渣容器Sに係る。
【0015】
請求項7に記載の発明は、前記婦人科用剥離子4は、子宮頸部擦過用胞綿棒4B(図6(b))である請求項5に記載の臨床検査用検体沈渣容器Sに係る。
【0016】
請求項8に記載の発明は、前記婦人科用剥離子4は、前記検体K(K2)の付着した状態で、前記容器本体1に充填される婦人科検体用保存液H2中に収容されてなる請求項5〜7の何れかに記載の臨床検査用検体沈渣容器Sに係る。
【0017】
請求項9に記載の発明は、前記婦人科検体用保存液H2は、ホルマリン、ポリエチレングリコール#1540、ジチオスレイトウル、ブチルヒドロキシトルエン及びポリビニルピドリドンK−90を夫々重量比で0.5〜20%含み、その他95%エタノール及び蒸留水を重量比で合計60%以上とする請求項8に記載の臨床検査用検体沈渣容器Sに係る。
【0018】
請求項10に記載の発明は、前記容器本体1に収容された婦人科用剥離子4が、該容器本体1に装着された前記検体沈渣塗抹用蓋体2に衝接するのを阻止するための網状受皿5(図6(a),(b))が前記容器本体1内に係合載置されてなる請求項5〜8の何れかに記載の臨床検査用検体沈渣容器Sに係る。
【0019】
請求項11に記載の発明は、前記網状受皿5は、ポリエチレンによって一体形成され、上下に貫通する多数の網孔5aを有する網状部材5bと該網状部材5bの周囲を覆って前記容器本体1の内壁に係合載置される円筒状部材5cからなる請求項10に記載の臨床検査用検体沈渣容器Sに係る。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明の臨床検査用検体沈渣容器Sによれば、容器本体1に検体K(K1,K2)が収容された状態で遠心分離機によって遠心分離することによって、検体沈渣Kaは検体沈渣塗抹用蓋体2の沈渣堆積皿部2bに堆積され、この状態で、図10(c),(d)に示すように、検体沈渣塗抹用蓋体2を容器本体1から離脱させて、該蓋体2の沈渣堆積皿部2bをスライドガラス6上に所定の押圧力で押しつけることによって、スライドガラス6に検体沈渣Kaを塗抹させることができる。これがために、従来のように、検体沈渣Kaをスライドガラスに塗抹するにあたって、先ず検体沈渣Kaを容器本体の口部からスポイド等で採取し、これをスライドガラス上に滴下し、もう一枚のスライドガラス等を用いて沈渣を薄く拡げるという面倒で、手間のかかる作業が不要で、単に容器本体1から離脱させた検体沈渣塗抹用蓋体2を直接にスライドガラス6に押しつけることによって、該蓋体2の沈渣堆積皿部2bに付着している検体沈渣Kaをスライドガラス6上に塗抹させることができるから極めて能率的に塗抹作業を行うことができる。又、検体沈渣Kaの量が少なくても、少量の検体沈渣Kaが沈渣堆積皿部2bに堆積されてさえすればスライドガラス6に容易に塗抹することができるから、例え少量の検体沈渣Kaであっても迅速容易に処理することができる。更に、検体Kとして分離される液体は、尿等の人体から排出されるものであって、これをスポイドで吸引・排出する必要がないから衛生的であり、相互汚染が生じることのないように、各検体に使用するスポイドを毎回変えるか或いは毎回洗浄する必要がない。
【0021】
また、検体沈渣塗抹用蓋体2は、その栓体部2aが容器本体1の筒状口部1aに圧嵌されて該筒状口部1aの内周面に密着すると共に、該栓体部2aの他端部に容器本体1の前記筒状口部1aより突出して該筒状口部1aの外周面側に折り返して該外周面に密着可能な液密筒部2cが一体形成されているため、検体沈渣塗抹用蓋体2は、その栓体部2aと液密筒部2cとで容器本体1の筒状口部1aを内外に二重に塞がれているので、容器本体1が遠心分離による過大な負荷がかかる時でも、筒状口部1aから容器本体1内の保存液の液漏れが生じることがなく確実な止液効果を得ることができる。
【0022】
請求項2に記載の発明の臨床検査用検体沈渣容器Sによれば、検体沈渣塗抹用蓋体2は、その液密筒部2cを容器本体1の外周面に密着させたときに該液密筒部2cの先端部に形成された係合鍔部2dが容器本体1に形成されてなる被係合突起1cに係合するようになっているため、両者の係合作用によって容器本体1に遠心分離による過大な負荷がかかる時でも液密筒部2cが容器本体1の外周面からめくられて離脱することがなく、より一層確実に止液効果を果たすことができる。
【0023】
請求項3に記載の発明の臨床検査用検体沈渣容器Sによれば、前記検体Kは採取尿K1であって、尿細胞診用保存液H1に混合して容器本体1に収容されてなるため、長期にわたってその細胞汚染等の発生を防止することができる。
【0024】
請求項4に記載の発明の臨床検査用検体沈渣容器Sによれば、尿細胞診用保存液H1が特定の組成を有するため、より一層長期間にわたって採取尿K1の細胞変性や細胞汚染の発生を長期間防止することができる。
【0025】
請求項5に記載の発明の臨床検査用検体沈渣容器Sによれば、前記検体Kは、婦人科用剥離子4によって子宮頸部を擦過することによって該剥離子4に付着した子宮頸部擦過細胞K2であって、該細胞K2を容器本体1の検体沈渣塗抹用蓋体2の沈渣堆積皿部2bに容易に堆積して検査することができる。
【0026】
請求項6に記載の発明の臨床検査用検体沈渣容器Sによれば、前記婦人科用剥離子4は、合成樹脂製基板4aと該基板4aに一体突設された軟質刷毛4bと該基板4aに着脱可能に取り付けられる操作棒4cとからなる子宮頸部擦過用刷毛4Aであるため、操作棒4cを操作することによって子宮頸部擦過用刷毛4Aに子宮頸部擦過細胞K2を容易に採取することができる共に、該操作棒4cを操作することによって子宮頸部擦過細胞K2の付着した子宮頸部擦過用刷毛4Aを容器本体1内に容易に挿入することができ、しかも容器本体1に挿入された子宮頸部擦過用刷毛4Aから長尺な操作棒4cを離脱することができるため、容器本体1内に嵩張ることなく子宮頸部擦過用刷毛4Aを収容して、円滑に遠心分離機にかけることができる。
【0027】
請求項7に記載の発明の臨床検査用検体沈渣容器Sによれば、前記婦人科用剥離子4は、子宮頸部擦過用胞綿棒4Bからなるものであって、該綿棒4Bによって子宮頸部擦過細胞K2を容易に採取することができる。
【0028】
請求項8に記載の発明の臨床検査用検体沈渣容器Sによれば、前記検体Kは子宮頸部擦過細胞K2であって、婦人科検体用保存液H2に混合して容器本体1に収容されてなるため、長期にわたってその細胞汚染等の発生を防止することができる。
【0029】
請求項9に記載の発明の臨床検査用検体沈渣容器Sによれば、婦人科検体用保存液H2が特定の組成を有するため、より一層長期間にわたって婦人科検体用保存液H2の細胞変性や細胞汚染の発生を長期間防止することができる。
【0030】
請求項10に記載の発明の臨床検査用検体沈渣容器Sによれば、前記容器本体1に収容された婦人科用剥離子4が、該容器本体1に装着された前記検体沈渣塗抹用蓋体2に衝接するのを阻止するための網状受皿5が前記容器本体1内に係合載置されてなるため、容器本体1が遠心分離による負荷がかかって婦人科用剥離子4が容器本体1内で激しく動揺しても、該婦人科用剥離子4は網状受皿5に阻止されて、検体沈渣塗抹用蓋体2の沈渣堆積皿部2bに堆積されているけ検体沈渣Kaに触れにことはなく、安定して検体沈渣Kaを沈渣堆積皿部2bに堆積させることができる。
【0031】
請求項11に記載の発明の臨床検査用検体沈渣容器Sによれば、前記網状受皿5は、ポリエチレンによって簡単な構造によって一体形成されるため軽量であり、容器本体1の遠心分離作用に大きな負荷をかけることはない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態に係る臨床検査用検体沈渣容器の外観正面図であって、その容器本体の一端部の容器口部に検体沈渣を沈渣させるための検体沈渣塗抹用蓋体を、容器本体の他端部の開口部にキャップを、夫々着脱可能に装着した状態を示す。
図2図1に示すB部の拡大断面図である。
図3】(a)は、検体沈渣塗抹用蓋体を示す斜視図で、(b)は、前記蓋体の液密筒部を外周面側に折り畳んだ状態を示す斜視図である。
図4】検体沈渣塗抹用蓋体を容器本体の筒状口部に装着した状態を示す断面図であり、その要部を矢印方向に取り出して拡大断面図で示す。
図5】容器本体の筒状口部に検体沈渣塗抹用蓋体を装着し、前記液密筒体を筒状口部の外周面側に沿うよう折り畳んだ状態を示す外観正面図である。
図6】(a)は、婦人科検体用保存液を充填した容器本体に婦人科用剥離子である子宮頸部擦過用刷毛に子宮頸部擦過細胞を付着させた状態で収容すると共に、同容器本体内において、同刷毛が前記検体沈渣塗抹用蓋体に衝接するのを阻止するために該蓋体から離れた位置で前記刷毛を受け止めておくための網状受皿を容器本体に係合させている状態を示す縦断正面図であり、(b)は、同婦人科用剥離子である子宮頸部擦過用綿棒を同じように収容した状態を示す縦断正面図である。
図7】婦人科用剥離子である子宮頸部擦過用刷毛を示す斜視図である。
図8】婦人科用剥離子である子宮頸部擦過用綿棒を示す斜視図である。
図9】(a)は、前記網状受皿を示す斜視図であり、(b)は、同縦断正面図である。
図10】(a)〜(d)は、臨床検査用検体沈渣容器による検査手順を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明の実施の一形態である臨床検査用検体沈渣容器Sの外観を示し、図2は、その容器本体1の一端部を拡大して示すものであって、容器本体1の一端部は、先窄まり漏斗状部1dに形成されると共に、該漏斗状部1dの先端部からは反対に先広がりのテーパー筒状口部1aに形成され、該筒状口部1aに、図1の一点鎖線、特に図2の断面図に示すように検体沈渣塗抹用蓋体2がその栓体部2aを筒状口部1aに弾力的に圧接するようにして装着し、該栓体部2aの一端部に形成されている沈渣堆積皿部2bも漏斗状に形成され、該皿部2bが容器本体1の前記先窄まり漏斗状部1dの内面延長上に沿うようになっており、これによって後述のように容器本体1内の検体沈渣Kaがその漏斗状部1dの内面から沈渣堆積皿部2bに円滑に流入し、該沈渣堆積皿部2bに正確に堆積されるようになっている。なお、沈渣堆積皿部2bには図示のようにその周方向に複数の小突起部2gを形成しているが、これは後述のように(図10)、沈渣堆積皿部2bをスライドガラス6上を移動させて沈渣堆積皿部2bに付着している検体沈渣Kaをスライドガラス6に塗抹させる際に沈渣堆積皿部2bとスライドガラスとの間に吸引力が働かないようにして沈渣堆積皿部2bをスライドガラス6上の移動を容易にするためのものである。この際、複数の小突起部2gは、詳細には図2に示すように、その長手方向先端部2g1が沈渣堆積皿部2bの周縁から突出状態に形成されることによって、上述の吸引力がより確実に働かないようにすることができる。
【0034】
図2図4に示すように、栓体部2aの他端部に栓体部2aの摘まみ部を兼ねた段部2eと空所部2fとが形成され、栓体部2aを筒状口部1aにその段部2eが筒状口部1aの先端面に当接するまで圧入することによって栓体部2aの筒状口部1aに対する圧入量を正確に規制することができ、又、栓体部2aを筒状口部1aに圧入する際に前記空所部2fが弾性変形することによって圧入作業を容易に行うことができる。
【0035】
又、前記段部2eに弾性変位可能に液密筒部2cが筒状口部1aから外部側に突出して一体形成されており、図3は、検体沈渣塗抹用蓋体2の斜視図を示すもので、(a)は液密筒部2cが栓体部2aから突出状態に延びた状態を示し、この状態から矢印で示すように折り畳み可能となっており、(b)は、液密筒部2cを弾性変位により折り畳たんだ状態を示す。
【0036】
図4は、液密筒部2cが鎖線で示すように、筒状口部1aから外部側に突出している状態から、矢印で示すように、該液密筒部2cを筒状口部1aの外周面に沿うようめくって折り畳み、該液密筒部2cが筒状口部1aの外周面に密着し、この際に、液密筒部2cの先端部に突設された係合鍔部2dが筒状口部1aの外周面に突設された被係合突起1cに係合して、液密筒部2cが筒状口部1aの外周面からはがれないように規制している。
【0037】
このように、検体沈渣塗抹用蓋体2は、その栓体部2aが筒状口部1aの内周面に圧接されると共に、液密筒部2cが筒状口部1aの外周面に密着することによって、筒状口部1aを二重に塞ぐことになり、後述のように臨床検査用検体沈渣容器Sが遠心分離による過大な負荷がかかる時でも容器本体1内の液体が筒状口部1aから液漏れが生じることがなく、確実な止液効果を得ることができる。図5は、容器本体1に検体沈渣塗抹用蓋体2の液密筒部2cを鎖線の突出状態から、矢印に示すように筒状口部1aの外周面側に折り畳んだ状態の臨床検査用検体沈渣容器Sの外観を示す。
【0038】
図6に示すように、容器本体1の他端部にねじ嵌合されるキャップ3は、その天板部3aに環状溝部3bが形成されており、該キャップ9を容器本体1aの開口部1bにねじ嵌合させたときに、その環状溝部3bの外側壁部3cが容器本体1の内周面に圧接してとキャップ9をねじ嵌合した際の容器本体1との液密性を維持する配慮がなされている。
【0039】
図6(a),(b)は、図1に示す臨床検査用検体沈渣容器Sの縦断正面図であり、容器本体1の内部に婦人科用剥離子4の一種である子宮頸部擦過用刷毛4Aが投入された状態を示す。この子宮頸部擦過用刷毛4Aは、図7に示すように、正面視略V字状で両端が半円形状に形成された合成樹脂製基板4aと、該基板4aの一面に多数一体突設された変位自在な軟質刷毛4bと、基板4aの他面中央に一体突設された筒状の取付部4dに着脱可能に取り付けられる操作棒4cとからなり、図6は、後述のように、子宮頸部擦過用刷毛4Aを容器本体1に投入する際に、操作棒4cを取付部4dから取り外した状態を示す。
【0040】
図6(a),(b)に示すように、前記容器本体1には婦人科用剥離子4が容器本体1に収容される前に網状受皿5が設置される。該網状受皿5は、図9(a),(b)に示すように、ボリエチレン等の合成樹脂によって一体形成され、上下に貫通する多数の網孔5aを有する網状部材5bと該網状部材5bの周囲を覆って前記容器本体1の内壁に係合載置される円筒状部材5cからなり、該網状受皿5は、その円筒状部材5cが容器本体1の先窄まり漏斗状部1dの内壁面に係合するように載置される。
【0041】
該網状受皿5は、容器本体1に収容された婦人科用剥離子4が、該容器本体1に装着された前記検体沈渣塗抹用蓋体2に衝接するのを阻止するために設けられるものであって、容器本体1が遠心分離による負荷がかかって婦人科用剥離子4が容器本体1内で激しく動揺しても、該婦人科用剥離子4は網状受皿5に阻止されて、検体沈渣塗抹用蓋体2の沈渣堆積皿部2bに堆積されているけ検体沈渣Kaに触れにことはなく、安定して検体沈渣Kaを沈渣堆積皿部2bに堆積させる役割を担うものである。なお、該網状受皿5は、ボリエチレン等の合成樹脂によって簡単な構造によって一体形成されるため軽量であり、容器本体1の遠心分離作用に大きな負荷をかけることはない。
【0042】
図8は、同じく容器本体1の内部に投入される婦人科用剥離子4の一種である子宮頸部擦過用胞綿棒4Bを示し、綿頭部4aとこれに一体設けられた取付部4dとこれに着脱可能に取り付けられる操作棒4cとからなり、該容器本体1内にも同じく網状受皿5が係合載置されるようになっている。
【0043】
図10は、臨床検査用検体沈渣容器Sの使用方法(検査手順)の一例を説明する説明図であり、先ず(a)に示すように、容器本体1の筒状口部1aに検体沈渣塗抹用蓋体2を装着し、且つ容器本体1の開口部1bから婦人科用剥離子4(図示では、その一種である子宮頸部擦過用刷毛4Aを示す。)を、その操作棒4cを操作して容器本体1内に収容する。なお、婦人科用剥離子4は、網状受皿5に当接して検体沈渣塗抹用蓋体2側に移動することはない。
【0044】
次に(b)に示すように、(a)の液密筒部2cをその突出状態から筒状口部1aの外周面に沿って折り畳んで密着させ、且つ婦人科用剥離子4に突設してある操作棒4cを引き抜き、その後に容器本体1内に婦人科検体用保存液H2を充填し、容器本体1の開口部1bにキャップ3をねじ嵌合する。なお、(a)の段階で、液密筒部2cをその突出状態から、筒状口部1aの外周面に沿って折り畳んで密着させるようにしてもよいことは勿論である。この状態で臨床検査用検体沈渣容器Sを図示しない遠心分離機のターンテーブルにセットし、該ターンテーブルよって矢印で示すように臨床検査用検体沈渣容器Sをを高速回転させる。これによって、婦人科用剥離子4に付着している検体K(K2)は、その検体沈渣Kaが比重差によって検体沈渣塗抹用蓋体2の沈渣堆積皿部2bに堆積する。このように臨床検査用検体沈渣容器Sが遠心分離による過大な負荷がかかる時でも、容器本体1の一端部の検体沈渣塗抹用蓋体2は、その栓体部2aが筒状口部1aの内周面に圧接されると共に、液密筒部2cが筒状口部1aの外周面に密着することによって筒状口部1aを二重に塞ぐことになり、又、容器本体1の他端部にねじ嵌合されるキャップ3は、その天板部3aの環状溝部3bの外側壁部3cが容器本体1の内周面に圧接して容器本体1との液密性を維持し、これがために容器本体1内の保存液が筒状口部1aや開口部1bから液漏れが生じることがない。又、容器本体1内の婦人科用剥離子4は、遠心分離による過負荷がかかって容器本体1内で激しく動揺しても、網状受皿5に阻止されて、検体沈渣塗抹用蓋体2の沈渣堆積皿部2bに堆積されている検体沈渣Kaを破壊することなく、安定して検体沈渣Kaを沈渣堆積皿部2bに堆積させることができる。
【0045】
その後図示しないが、容器本体1の開口部1bからキャップ3を外して保存液を排出させ、容器本体1の筒状口部1aから検体沈渣塗抹用蓋体2を離脱させる。
そして、(c)に示すように、検体沈渣塗抹用蓋体2を、その沈渣堆積皿部2bが下向きで該沈渣堆積皿部2bに堆積している検体沈渣Kaがスライドガラス6に対向するようにしてスライドカラス6に載置する。
【0046】
その状態で、(d)に示すように、該蓋体2の摘まみ部2eを摘んでその沈渣堆積皿部2bをスライドガラス6に所定の押圧力Pで押しつけ、適宜矢印で示すように左右に移動させることによって、沈渣堆積皿部2bに堆積されている検体沈渣Kaをスライドガラス6に塗抹させる。なお、沈渣堆積皿部2bの表面には小突起部2gを突設しているため、沈渣堆積皿部2bとスライドガラスとの間に吸引力が働かないようにして沈渣堆積皿部2bをスライドガラス6上を容易に移動させることができる。この際、(c)に示すように、複数の小突起部2gは、詳細には図2にも示すように、その長手方向先端部2g1が沈渣堆積皿部2bの周縁から突出状態に形成されることによって、上述の吸引力がより確実に働かないようにすることができる。
【0047】
上記は、臨床検査用検体沈渣容器Sの婦人科用剥離子4を用いた使用方法(検査手順)の一例を説明するものであるが、図6(a),(b)及び図10(b)に示すように、検体Kとして採取尿K1のみの検査を行う場合には、採取尿K1と尿細胞診用保存液H1とを臨床検査用検体沈渣容器Sに収納し、この状態で遠心分離機にかけて、上述の手順で、沈渣堆積皿部2bに検体沈渣Kaを堆積させるようにする。
【0048】
そしてその後は、スライドガラス6に塗抹させた検体沈渣Kaを常法に従って乾燥し、1〜2回のアルコール固定を行い、染色を施して標本とし、顕微鏡による観察を行うことになる。
以下、本発明の既述の実施形態による実施例を説明する。
【0049】
実施例1
尿細胞診用保存液
配合
1)1.3ブタンジオール 6.7g
2)1.4ブタンジオール 3.3g
3)ポリエチレングリコール#1540 5.0g
4)ホルマリン 1.0g
5)95%エタノール 48.9g
6)ポリビニールピドリドンK−30 0.5g
7)酢酸 0.5g
8)蒸留水 35.0g
収量 100.9g
上記のように、尿細胞診用保存液が上記特定の組成を有することにより、一層長期間にわたって採取尿の細胞変性や細胞汚染の発生を長期間防止することができる。
【0050】
実施例2
婦人科用液状検体保存液
10)配合
1)95%エタノール 39.0g
2)ホルマリン 0.5g
3)ポリエチレングリコール#1540(EO付加物値) 12.5g
4)ジチオスレイトウル 12.0g
5)ブチルヒドロキシトルエン 21.0g
6)ポリビニルピドリドンK−90 0.96g
7)蒸留水 55.1g
収量 141.06g
上記のように、婦人科検体用保存液Hが特定の組成を有することにより、一層長期間にわたって婦人科検体用保存液Hの細胞変性や細胞汚染の発生を長期間防止することができる。
【符号の説明】
【0051】
K 検体
Ka 検体沈渣
1 容器本体
1a 筒状口部
2 検体沈渣塗抹用蓋体
1b 開口部
3 キャップ
2a 栓体部
2b 沈渣堆積皿部
2c 液密筒部
S 臨床検査用検体沈渣容器
2d 係合鍔部
1c 被係合突起
K1 採取尿
H1 尿細胞診用保存液
K2 婦人科検体
K2 子宮頸部擦過細胞
4 婦人科用剥離子4
4A 子宮頸部擦過用刷毛
4B 子宮頸部擦過用胞綿棒
4a 合成樹脂製基板
4b 軟質刷毛
4c 操作棒
4A 綿棒
H2 婦人科検体用保存液
5 網状受皿5
5a 網孔
5b 網状部材
5c 円筒状部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10