特許第6025525号(P6025525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025525
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】弾頭
(51)【国際特許分類】
   F42B 12/02 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   F42B12/02
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-259721(P2012-259721)
(22)【出願日】2012年11月28日
(65)【公開番号】特開2014-105928(P2014-105928A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2014年3月12日
【審判番号】不服2015-12765(P2015-12765/J1)
【審判請求日】2015年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中永 毅
(72)【発明者】
【氏名】安藤 進
(72)【発明者】
【氏名】小林 真登
【合議体】
【審判長】 和田 雄二
【審判官】 氏原 康宏
【審判官】 森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−75251(JP,A)
【文献】 特表2004−518928(JP,A)
【文献】 特開2011−158204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42B 12/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炸薬(14)と、該炸薬(14)が充填された弾殻(12)と、該弾殻(12)に保持されたライナ(16)とを備え、上記炸薬(14)の爆轟圧力によって上記ライナ(16)を射出すると共に変形させて飛翔体(20)を生成するように構成された迎撃用弾薬に用いられる弾頭であって、
上記ライナ(16)は、迎撃対象となる目標弾薬(100)の炸薬(102)の反応幅以下の粒径の酸化還元反応を生じない複数種の金属材料によって構成された粉体材料と結合剤との冷間圧縮成形物であって
上記ライナ(16)は、上記炸薬(14)の爆轟圧力によって上記弾殻(12)の外側へ射出された直後に、中央部分が上記弾殻(12)の外側へ押し出される一方、外縁部が上記弾殻(12)の内側へ倒れ込むように変形して飛翔する飛翔体(20)となると共に粒子化し、該飛翔体(20)が粒子群として上記目標弾薬(100)に衝突するように構成されている
ことを特徴とする弾頭。
【請求項2】
請求項1において、
上記粉体材料の粒径は、0.1mm以下である
ことを特徴とする弾頭。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記粉体材料は、アルミニウムとチタンとによって構成されている
ことを特徴とする弾頭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、迎撃用弾薬の弾頭に関し、迎撃時の副次的被害の低減対策に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ロケット弾やミサイルの迎撃に、弾薬が用いられている。該迎撃用弾薬は、通常、弾殻に炸薬が充填された破片式弾頭を有している。破片式弾頭は、炸薬を起爆すると、発生した爆轟圧力によって弾殻が破裂し、弾殻が破片化する。迎撃用弾薬では、このように破片式弾頭の爆轟によって生じた破片を目標物である目標弾薬の弾頭に衝突させて該弾頭の炸薬を爆轟させることにより、目標弾薬の無力化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−90782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、市街地において目標弾薬を迎撃する場合、目標弾薬の炸薬を爆轟させてしまうことにより、周囲の人や建物に被害を及ぼすおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、目標弾薬の炸薬を爆燃以下の速度で反応させて無力化する迎撃用弾薬の弾頭を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、炸薬(14)と、該炸薬(14)が充填された弾殻(12)と、該弾殻(12)に保持されたライナ(16)とを備え、上記炸薬(14)の爆轟圧力によって上記ライナ(16)を射出すると共に変形させて飛翔体(20)を生成するように構成された迎撃用弾薬に用いられる弾頭であって、上記ライナ(16)は、迎撃対象となる目標弾薬(100)の炸薬(102)の反応幅以下の粒径の酸化還元反応を生じない複数種の金属材料によって構成された粉体材料と結合剤との冷間圧縮成形物であって、上記ライナ(16)は、上記炸薬(14)の爆轟圧力によって上記弾殻(12)の外側へ射出された直後に、中央部分が上記弾殻(12)の外側へ押し出される一方、外縁部が上記弾殻(12)の内側へ倒れ込むように変形して飛翔する飛翔体(20)となると共に粒子化し、該飛翔体(20)が粒子群として上記目標弾薬(100)に衝突するように構成されている。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、上記粉体材料の粒径は、0.1mm以下である。
【0008】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記粉体材料は、アルミニウムとチタンとによって構成されている。
【0009】
第1乃至第3の発明では、ライナ(16)が、目標弾薬(100)の炸薬(102)の反応幅以下の粒径の粉体材料と結合剤とを冷間において圧縮成形することにより、材料が溶融することなく成形されている。そのため、ライナ(16)は、粒子間結合が弱く、炸薬(14)の爆轟圧力によって射出された直後に変形して飛翔体(20)となり、該飛翔体(20)は音響インピーダンスの違いによる粒子間での応力波の反射と透過によって粒子化する。粒子化した飛翔体(20)は、迎撃対象となる目標弾薬(100)に衝突する。目標弾薬(100)では、飛翔体(20)の粒子が弾殻(101)を貫通し、弾殻(101)の内部空間に充填された炸薬に衝突する。その結果、目標弾薬(100)の炸薬(102)は、爆燃以下の速度で反応する。以下、迎撃する目標弾薬(100)の炸薬(102)が、定常爆轟を発生せず、爆燃以下の速度で反応する理由について詳述する。
【0010】
ZNDの定常理論(Zeldovich von Neumann Doering detonation model)から、炸薬の定常爆轟を維持するために要する単位面積当たりの衝撃エネルギEs(以下、単に「単位面積エネルギEs」と称する。)は、反応幅とCJ点(Chapman-Jouguet point)の圧力と粒子速度の積として簡易的に求められる。例えば、目標弾薬(100)の炸薬(102)がComp.Bである場合には、上記単位面積エネルギEsは、201.8J/cm程度となる。定常爆轟を維持するためには、迎撃する目標弾薬(100)の炸薬(102)の臨界径(4mm程度)以上の長さを直径とする領域において、単位面積エネルギEsと同等量のエネルギを、粒子化した飛翔体の粒子の運動エネルギとして有する必要がある。例えば、飛翔体(20)を形成するライナ(16)の材料をチタン(Ti)とし、仮に速度3000m/s,平均粒径38μmで飛翔する際の単位面積当たりの運動エネルギEと上記単位面積エネルギEsとを比較すると、EはEsの約1/4である。即ち、反応幅(130μm程度)で4個の飛翔体(20)の粒子が衝突しなければならず、そのためには、反応帯の幅方向(反応幅)に隙間なく飛翔体(20)の粒子が充填され、この状態が目標弾薬(100)の炸薬(102)の臨界径以上の長さを直径とする領域において充足されなければならない。しかしながら、上述のように、速度勾配のある離散した飛翔体(20)の粒子によって上述の空間占有率を満足するのは困難である。つまり、粒子化した飛翔体(20)が目標弾薬(100)に衝突しても、該目標弾薬(100)の炸薬(102)に爆轟に至る衝撃エネルギが与えられない。また、粒子化した飛翔体(20)の粒子と目標弾薬(100)の炸薬(102)との接触時の過渡温度解析から、伝熱によって炸薬が発火温度に達する時間と距離との関係を求めると、発火温度に達する昇温速度が10mm/s以下であり、これは燃焼領域の反応速度である。つまり、目標弾薬(100)の炸薬(102)は、爆燃以下の速度で反応することとなる。
【発明の効果】
【0011】
第1乃至第3の発明によれば、ライナ(16)を、目標弾薬(100)の炸薬(102)の反応幅以下の粒径の粉体材料と結合剤とを冷間において圧縮して材料を溶融させずに成形することで、粒子間結合を弱め、炸薬(14)の爆轟圧力によって射出された直後に変形して飛翔体(20)となると共に粒子化するように構成している。これにより、飛翔体(20)を粒子化した状態で迎撃対象となる目標弾薬(100)に衝突させることができ、目標弾薬(100)の炸薬(102)に与える衝撃エネルギを爆燃以下の速度の反応に至る衝撃エネルギに抑えることができる。従って、上記弾頭(10)によれば、目標弾薬(100)の炸薬(102)を爆轟させることなく爆燃以下の速度で反応させて、破片威力及び爆風を極力低く抑えた上で無力化することができる。これにより、目標弾薬(100)の迎撃の際に生じ得る副次的被害を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態1に係るEFP弾頭を備えた迎撃用弾薬の側面図である。
図2図2は、図1のEFP弾頭の一部及び該EFP弾頭から生成される飛翔体の射出から衝突までの過程を示す断面図である。
図3図3は、ZND理論のダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
《発明の実施形態1》
実施形態1に係る弾頭は、ライナを有し、炸薬の爆轟エネルギーによってライナを変形させて成形弾と称される本発明に係る飛翔体としてのEFP(Explosively Formed Projectile, or Explosively Formed Penetrator)を多数生成して該多数のEFP(飛翔体)を高速度で側方に射出する側方散布型のマルチEFP弾頭である。
【0015】
弾頭(10)は、図1に示すような迎撃用の弾薬(1)に搭載されている。弾薬(1)は、戦車に搭載されたランチャーに装填され、弾頭(10)と、該弾頭(10)の後方に形成されて飛翔姿勢を安定させる翼部(11)とを備えている。弾頭(10)は、高速度で側方(外周方向)に多数のEFP(20)を射出して目標物に衝突させて該目標物を無力化するように構成されている。
【0016】
図2に示すように、弾頭(10)は、内部に空間(S)が形成された弾殻(12)と、該弾殻(12)の内部空間(S)に充填された炸薬(14)と、該炸薬(14)を起爆する信管(15)とを備えている。
【0017】
弾殻(12)は、両端が閉塞された筒形状に形成され、側面(外周壁)に複数の円形状の孔が形成されている。多数の孔には、ライナ(16)が嵌め込まれている。本実施形態では、弾殻(12)は、外径が50mm程度、厚さが2mm程度に形成されている。
【0018】
多数のライナ(16)は、それぞれ円板形状に形成され、弾殻(12)の各孔にそれぞれ嵌め込まれることによって該弾殻(12)に保持されている。より具体的には、各ライナ(16)は、弾殻(12)の各孔に内部空間(S)に向かって窪むように撓んだ形状で嵌め込まれている。ライナ(16)は、迎撃対象となる目標弾薬(100)の炸薬(102)の反応幅以下(0.1mm以下)の粒径の粉体材料と結合剤とを冷間等方圧加圧(CIP:Cold Isostatic Pressing)によって成形することによって構成されている。具体的には、本実施形態では、各ライナ(16)は、粉体材料としてアルミニウム(Al)の粉体(平均粒径)とチタン(Ti)の粉体(平均粒径38μm)とを混合したものが用いられ、結合剤として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が用いられている。即ち、本実施形態では、ライナ(16)は、冷間等方圧加圧により、粉体材料としてのアルミニウム及びチタンの各粒子が溶融することなくPTFEによって結合されることによって形成されている。
【0019】
炸薬(14)は、弾殻(12)とライナ(16)とによって形成された内部空間(S)に充填されている。また、炸薬(14)を起爆する起爆手段としての信管(15)は、弾殻(12)の底部の中央部に接続されている。図1及び図2では、信管(15)の内部の図示を省略しているが、該信管(15)には、爆発を誘起する起爆薬と、該起爆薬の発火を炸薬(14)に伝える導爆薬(伝爆薬)とが充填されている。
【0020】
−動作−
迎撃する目標弾薬(100)を検知すると、信管(15)による炸薬(14)の爆轟によって各ライナ(16)が弾殻(12)の径方向外側に加速されてEFP(飛翔体)(20)に成形され、目標弾薬(100)に向かって高速で飛翔する。
【0021】
具体的には、炸薬(14)を起爆すると、爆轟によって発生した衝撃圧がライナ(16)に作用し、ライナ(16)が弾殻(12)の径方向外側へ射出される。このとき、ライナ(16)は、中央部分が径方向外側へ押し出される一方、外縁部が径方向内側へ倒れ込むように変形し、EFP(20)に成形される。このようにして、上記弾頭(10)では、多数のEFP(20)が生成されると共に、該多数のEFP(20)が側方に散布される。
【0022】
ここで、各ライナ(16)は、0.1mm以下の粒径の粉体材料と結合剤とを冷間等方圧加圧によって成形することによって構成されている。そのため、各ライナ(16)は、粒子間結合が弱く、炸薬(14)の爆轟圧力によって射出された直後に変形してEFP(20)となると共に、音響インピーダンスの違いによる粒子間での応力波の反射と透過によって粒子化する。これにより、EFP(20)は、粒子群として、迎撃する目標弾薬(100)に向かって飛翔し、目標弾薬(100)に衝突する。
【0023】
目標弾薬(100)では、粒子群としてのEFP(20)が衝突することにより、粒子が弾殻(101)を貫通し、弾殻(101)の内部空間に充填された炸薬に衝突する。その結果、目標弾薬(100)の炸薬(102)は、爆燃以下の速度で反応することとなる。以下、迎撃する目標弾薬(100)の炸薬(102)が、定常爆轟を発生せず、爆燃以下の速度で反応する理由について詳述する。
【0024】
図3は、ユゴニオ(Hugoniots)曲線とレイリー(Rayleigh)線とを用いて初期の未反応状態から爆轟への遷移過程を説明するZND理論(Zeldovich von Neumann Doering detonation model)のダイアグラムである。ZND理論によると、目標弾薬(100)の炸薬(102)に衝撃波が入射すると、まず、圧力が上昇して未反応のユゴニオ曲線上のA点(初期位置)から未反応のB点(Neumann Spike 点)に移行する。その後、発熱反応が生起され、レイリー線に沿って反応エネルギが付加された反応生成物のユゴニオ曲線上のCJ点(Chapman-Jouguet Point)に達する。目標弾薬(100)の炸薬(102)に衝撃波が入射すると、このような過程で爆轟へ遷移する。
【0025】
ところで、目標弾薬(100)の炸薬(102)に衝撃波が入射すると、反応が生起され、衝撃波の背後に反応帯が形成される。ここで、反応帯の先端、即ち、衝撃波の先端が上記B点であり、反応帯の後端が反応が終了したCJ点であり、上記B点からCJ点までの距離が反応帯の幅(反応幅)である。反応帯では、先端(B点)での格子振動が分子内振動に転換され、分子が切断されて発熱反応が生起されることによって後端(CJ点)になる。その際に生起された発熱エネルギが前方の未反応領域のB点を維持することによって、目標弾薬(100)の炸薬(102)が定常爆轟を維持することとなる。
【0026】
以上の考えに基づいて炸薬の定常爆轟を維持するために必要なエネルギEsを反応幅δと圧力と粒子速度の積を近似的に求めて実験と対比したYadav 等の論文("Critical Shock Energy and Detonation Parameters of an Explosive Defence Science Journal, Vol.59, No.4, July 2009")がある。該論文では、爆轟速度Dj、衝撃波速度をUs、CJ点での粒子速度をUj、B点背面での粒子速度をUp、反応帯での粒子速度の平均値をU、炸薬の初期密度をρ、爆轟生成物の比熱比をγ、反応幅をδとし、以下の手順で炸薬の定常爆轟に必要な単位面積当たりのエネルギEs(以下、単に「単位面積エネルギEs」と称する。)を計算している。
【0027】
まず、定常爆轟であるため、
Dj=Us…(1)
が得られる。また、衝撃波が粒子速度の1次関数であるとすると、
Us=a+b×Up(a,bは定数)…(2)
となる。さらに、
Uj=Dj/(γ+1)…(3)
であり、(1)及び(2)から、
Up=(Dj−a)/b…(4)
が得られる。また、
U=(Uj+Up)/2…(5)
であるため、
Es≒(ρ×Dj×U×δ)/(Dj−U)…(6)
が得られる。Comp.B(RDX;60、TNT;40)の定常爆轟に必要な単位面積当たりのエネルギEsを求めるために、ρ=1.72(g/cc)、Dj=0.798(cm/μs)、a=0.271、b=1.86、γ=2.711、δ=0.013(cm)を代入すると、Es=201.8(J/cm)となる。
【0028】
目標弾薬(100)の炸薬(102)が定常爆轟を維持するためには、該炸薬の臨界径(4mm程度)以上の領域において、単位面積エネルギEsと同等量のエネルギを、粒子化したEFP(20)の粒子の運動エネルギとして有する必要がある。例えば、EFP(20)を形成するライナ(16)の材料の中で密度が高いチタン(Ti)とし、仮に速度3000m/s,平均粒径38μmで飛翔する際の単位面積当たりの運動エネルギEを計算し、上記単位面積エネルギEsと比較すると、Eは、Esの約1/4である。即ち、Comp.Bの反応幅(δ=0.013cm)で4個のEFP(20)の粒子が衝突しなければならず、そのためには、反応帯の幅方向(反応幅)に隙間なくEFP(20)の粒子が充填され、この状態が目標弾薬(100)の炸薬(102)の臨界径以上の長さを直径とする領域において充足されなければならない。しかしながら、上述のように、速度勾配のある離散したEFP(20)の粒子によって上述の空間占有率を満足するのは困難である。つまり、粒子化したEFP(20)が目標弾薬(100)に衝突しても、該目標弾薬(100)の炸薬(102)に爆轟に至る衝撃エネルギが与えられない。そのため、粒子化したEFP(20)が目標弾薬(100)に衝突しても、該目標弾薬(100)の炸薬(102)は爆轟に至らない。なお、目標弾薬(100)の炸薬(102)としては、通常の弾頭に用いられるCom.Bだけでなく、Com.C−4やPBX系炸薬である場合にも適用可能である。
【0029】
また、EFP(20)の粒子の衝突により目標弾薬(100)の炸薬(102)に爆轟に至る衝撃エネルギが与えられない場合、その他に目標弾薬(100)の炸薬(102)の化学反応を誘起する要因として、温度(圧力の関数)が重要な要因となる。しかしながら、EFP(20)の粒子と目標弾薬(100)の炸薬(102)との接触時の過渡温度解析では、伝熱によって目標弾薬(100)の炸薬(102)が発火温度に達する時間と距離との関係を求めると、発火温度に達する昇温速度が10mm/s以下であった。これは燃焼領域の反応速度である。つまり、目標弾薬(100)の炸薬(102)は、爆燃以下の速度で反応することとなる。
【0030】
−実施形態1の効果−
本弾頭(10)によれば、ライナ(16)を、目標弾薬(100)の炸薬(102)の反応幅(130μm程度)以下の粒径の粉体材料と結合剤とを冷間において圧縮して材料を溶融させずに成形することで、粒子間結合を弱め、炸薬(14)の爆轟圧力によって射出された直後に変形してEFP(飛翔体)(20)となると共に粒子化するように構成している。これにより、EFP(20)を、粒子化した状態で迎撃対象となる目標弾薬(100)に衝突させることができ、目標弾薬(100)の炸薬(102)に与える衝撃エネルギを爆燃以下の速度の反応に至る衝撃エネルギに抑えることができる。従って、上記弾頭(10)によれば、目標弾薬(100)の炸薬(102)を爆轟させることなく爆燃以下の速度で反応させて、破片威力及び爆風を極力低く抑えた上で無力化することができる。これにより、目標弾薬(100)の迎撃の際に生じ得る副次的被害を低減することができる。
【0031】
《その他の実施形態》
上記実施形態1において、ライナ(16)を構成する粉体材料は、上述のものに限られない。ライナ(16)を構成する粉体材料は、例えば、鉄(Fe203)、ニッケル(Ni)、酸化チタン(Ti)等の単体の金属材料又はこれらの中で酸化還元反応を生じない複数種の金属材料を混合したものであってもよい。また、ライナ(16)を構成する粉体材料は、金属材料以外の材料、例えば、セラミックであってもよい。
【0032】
また、上記各実施形態では、炸薬(14)の爆轟エネルギーによってライナ(16)を変形させて飛翔体としてのEFP(Explosively Formed Projectile, or Explosively Formed Penetrator)を多数生成するマルチEFP弾頭(10)について説明した。しかしながら、本発明に係る弾頭(10)はこれに限られず、ライナ(16)を射出すると共に変形させて飛翔体を生成するものであればいかなるものであってもよい。例えば、成形炸薬弾であってもよい。また、1つのEFPを生成するシングルタイプのEFP弾頭であってもよい。
【0033】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上説明したように、本発明は、目標弾薬を迎撃する迎撃用弾薬の弾頭について有用である。
【符号の説明】
【0035】
10 EFP弾頭(弾頭)
12 弾殻
14 炸薬
16 ライナ
20 EFP(飛翔体)
100 目標弾薬
101 弾殻
102 炸薬
図1
図2
図3