(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体チップとプリント配線基板とを実装する方法として、半導体チップの電極(パッド)と基板配線電極との間に導電性フィルムを挟み込んで熱圧着し、半導体チップとプリント配線基板の電極同士を、導電性フィルム中の導電性粒子によって導通するという、フリップチップ実装技術が知られている。
【0003】
また、導電性フィルムとしての電磁波シールドフィルムをプリント配線板に貼着したり、プリント基板上に実装された送信系回路と受信系回路との間に電磁シールドフィルムを実装して、両者のカップリングを防止したりすることも行われている。
【0004】
この種の導電性フィルムとしては、例えば特許文献1(特開2003−298285号公報)には、電磁波シールド性接着フィルムとして、カバーフィルムの片面に、導電性接着剤層及び必要に応じて金属薄膜層からなるシールド層を有し、他方の面に接着剤層と離型性補強フィルムとが順次積層されてなる補強シールドフィルムが開示されている。
【0005】
特許文献2(特開2004−273577号公報)には、シールド層と芳香族ポリアミド樹脂からなるベースフィルムとを有するシールドフィルムが開示されていると共に、これを用いて共振回路を形成する方法として、フレキシブルプリント配線板のカバーレイにスルーホールを数カ所開けておき、グランド回路(アース回路)が露出するように加工しておき、次いで、シールドフィルムの導電性接着剤層とカバーレイを熱プレスで貼り合せた後、グランド回路と導電性接着剤層との接合部を形成して回路のグランドと銀蒸着層との間で共振回路を形成する方法が開示されている。
【0006】
特許文献3(特開2007−189091号公報)には、離型フィルムと、導電性粒子及びバインダを含む等方導電性接着剤層とを備えた等方導電性接着シートが開示されており、その使用方法として、離型フィルム付きの接着シートを回路基板に仮止めした後、離型フィルムを剥がし、補強板を導電性接着剤層表面に重ね合わせ、プレス加工(130〜190℃、1〜4MPa)で熱圧着し、補強板と電極とを低融点金属粉を介して電気的に接続させる方法が開示されている。
【0007】
特許文献4(特開2009−191099号公報)には、多数の導電性粒子と、これら導電性粒子を分散したバインダとを有するフィルム状に形成された導電性接着剤層と、タック性を備えたタック性樹脂層と、を有する導電性接着シートが開示されている。
【0008】
特許文献5(特開2009−289840号公報)には、剥離性フィルムと、フィルム状硬化性絶縁性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(II)からなる絶縁性層と、硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤(I)からなる導電性接着剤層と、剥離性フィルムとが順次積層されてなる電磁波シールド性接着性フィルムが開示されている。
【0009】
特許文献6(特開2010−168518号公報)には、シート状に形成された熱可塑性エラストマ樹脂やアクリル系樹脂などからなる粘着性物質と、当該粘着性物質に分散されたAgコートCu粉やAgコートNi粉などの導電性粒子とを有する組成物で構成される導電性接着剤層を有しており、前記導電性粒子の平均粒子径に対して前記粘着性物質の厚みの平均値が0.8倍〜1.4倍の範囲にあり、前記導電性粒子の含有量が前記導電性接着剤層全体の15〜25重量%の範囲にある導電性粘着シートが開示されている。
【0010】
特許文献7(特開2011−66329号公報)には、外部グランド部材に接続するための金属層と導電性粒子を含む導電性接着層とを接触状態に備えた導電部材に、加熱および加圧により接続されるシールドフィルムであって、前記加熱によって軟化される樹脂により形成され、前記加熱および加圧により接続された後において、前記導電性接着層から突出した前記導電性粒子の平均突出長よりも薄い層厚みで形成されるとともに、前記導電性接着層に接着されるカバーフィルムと、前記カバーフィルムに順に積層された金属薄膜層および接着層と、を有することを特徴とするシールドフィルムが開示されていると共に、これを用いたグランド接続方法として、外部グランド部材に接続された金属層と導電性粒子を含む導電性接着層とを接触状態に備えた導電部材を、前記樹脂が軟化する温度で加熱しながら加圧して当該導電性接着層と前記カバーフィルムとを接着することにより、前記カバーフィルムの層厚みよりも長く突出した前記導電性粒子が前記金属薄膜層にまで達することでグランド接続することを特徴とするシールドフィルムのグランド接続方法が開示されている。
【0011】
特許文献8(特開2011−166100号公報)には、硬化性絶縁層、導電性被膜、及び硬化性導電性接着剤層をこの順序で具備する、電磁波シールド性接着性フィルムであって、前記導電性被膜が、導電性粒子が保護物質によって被覆されてなる平均粒子径が0.001〜0.5μmの被覆導電性粒子を含む分散体から形成された被膜であり、前記硬化性導電性接着剤層が、硬化性絶縁性樹脂と、平均粒子径が1〜50μmの金属粉とを含有する、ことを特徴とする電磁波シールド性接着性フィルムが開示されている。硬化性導電性接着剤層をプリント配線基板などの被着体に重ね合わせ、加熱することにより、硬化性導電性接着剤層及び硬化性絶縁層を硬化させ、これらの硬化によって接着が確保され、被着体を電磁波から遮蔽することが可能となる。
【0012】
特許文献9(特開2011−187895号公報)には、(A)金属粉と(B)バインダ樹脂とからなる導電層に、保護層が積層されてなる電磁波シールドフィルムにおいて、導電層が(a)平均厚さ50〜300nm、平均粒径3〜10μmの薄片状金属粉と、(b)平均粒径3〜10μmの針状又は樹枝状金属粉(特に銀被覆銅粉)とを含有する導電性ペーストから形成されてなるものが開示されている。
【0013】
特許文献10(特開2011−171523号公報)には、硬化性を有しない絶縁フィルム、導電性被膜、及び硬化性導電性接着剤層をこの順序で具備する、電磁波シールド性接着性フィルムであって、前記導電性被膜が、導電性粒子が保護物質によって被覆されてなる平均粒子径が0.001〜0.5μmの被覆導電性粒子を含む分散体から形成された被膜であり、前記硬化性導電性接着剤層が、硬化性絶縁性樹脂と、平均粒子径が1〜50μmの金属粉とを含有することを特徴とする電磁波シールド性接着性フィルムが開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について詳述する。但し、本発明の範囲が以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
<本導電性フィルム1>
本実施形態に係る導電性フィルム(「本導電性フィルム1」と称する)は、Bステージ状態の樹脂層中に、棒有状導電性粒子を含有する樹脂層Aと、離型フィルムと、を備えた構成の導電性フィルムである。
但し、当該離型フィルムは必要に応じて備えていればよい。
【0024】
なお、Bステージ状態とは、接着性乃至粘着性を有する熱硬化性樹脂の硬化中間状態を意味し、フィルム状乃至シート状を維持することができ、且つ加熱すると樹脂が軟化若しくは溶融し、さらに加熱すると硬化する状態を意味する。
【0025】
本導電性フィルム1は、前記樹脂層A及び離型フィルム以外の層を一層又は二層以上備えていてもよい。
【0026】
(樹脂層A)
樹脂層Aを構成する樹脂組成物は、Bステージ状態となり得る樹脂組成物であればよい。通常、この種のベース樹脂は熱硬化性樹脂が一般的である。但し、熱硬化性樹脂に熱可塑性樹脂が混合したものであってもよい。
【0027】
樹脂組成物をBステージ状態とする方法としては、1)溶剤を適宜揮発させる方法、2)硬化反応を途中で強制的に停止させる方法、3)硬化領域の異なる2種類以上の硬化性樹脂を含有させる方法、4)その他公知の方法を採用することができる。
【0028】
Bステージ状態となり得る樹脂組成物を主として構成する樹脂(「ベース樹脂」と称する)としては、特に限定するものではない。例えばエポキシ樹脂、ポリジメチルシロキサン樹脂、アクリル樹脂、その他の有機官能性ポリシロキサン樹脂、ポリイミド樹脂、フッ化炭素樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、フッ素化ポリアリルエーテル、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、フェノールクレゾール樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フッ素樹脂などを挙げることができ、これらのうち一種又は二種以上の混合樹脂であってもよい。
また、硬化性又は架橋性材料として、遊離基重合、原子移動、ラジカル重合、開環重合、開環メタセシス重合、アニオン重合、またはカチオン重合によって架橋可能な、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリジメチルシロキサン樹脂、またはその他の有機官能性ポリシロキサン樹脂の一つ以上を配合してもよい。
【0029】
中でも、樹脂層Aを構成する樹脂組成物は、100〜150℃における最低溶融粘度が10000Pa・s〜1000000Pa・sの樹脂が好ましく、中でも100000Pa・s以上の樹脂組成物であるのがより一層好ましい(例えば
図3の上方の実線で示される樹脂組成物)
【0030】
具体的には、樹脂層Aを構成する樹脂組成物は、エポキシ樹脂、エポキシ硬化剤、有機溶媒、シランカップリング剤、界面活性剤などから形成することができる。但し、これは一例である。
アクリル系樹脂とエポキシ樹脂のポリマーブレンドによっても、Bステージ状態とすることができる。
また、例えばエポキシ樹脂を樹脂層Aのベース樹脂とする場合、溶剤を揮発させることにより、その樹脂組成物をBステージ状態とすることができる。
【0031】
熱硬化のために添加される材料として、有機過酸化物やイソシアネート化合物、エポキシ化合物やアミン化合物等の熱硬化剤などを挙げることができる。
【0032】
(導電性粒子)
樹脂層Aに含まれる導電性粒子は、銀粉粒子、銅粉粒子、鉄粉粒子などの導電性粒子、或いは、任意材料からなる粒子、例えば前記導電性粒子を芯材としてこれらの表面の一部又は全部を異種導電性材料、例えば金、銀、銅、ニッケル、スズなどで被覆してなる粒子などを挙げることができる。但し、これらに限定する趣旨ではなく、導電性を有する材料であれば任意に採用可能である。
【0033】
アンカー効果を効果的に発揮させる観点から、樹脂層A中の導電性粒子のうち、50個数%以上を「棒有状導電性粒子」が占めるのが好ましく、中でも70個数%以上、その中でも80個数%を超える割合(100%を含む)を棒有状導電性粒子が占めるのが好ましい。
【0034】
ここで、「棒有状導電性粒子」とは、針状部分及び突起状部分を包含する棒状部分を有する形状を呈する導電性粒子の意味であり、例えばデンドライト状導電性粒子(
図4(A)参照)、針状導電性粒子(
図4(B)参照)、突起有粒状導電性粒子(
図4(D)(E)参照)などを挙げることができる。
前記「針状導電性粒子」とは、棒状部分のみからなる粒子であり、「デンドライト状導電性粒子」とは、光学顕微鏡若しくは電子顕微鏡(500〜20、000倍)で観察した際に、棒状部分を主軸とし、該主軸から直交方向又は斜め方向に複数の枝が分岐して、二次元的或いは三次元的に成長した形状を呈する粒子を意味する。幅広の葉が集まって松ぼっくり状を呈するものや、主軸を有さず多数の針状部が放射状に伸長してなる形状のものは、本発明においては「デンドライト状導電性粒子」には含まれない。
また、「突起有粒状導電性粒子」とは、球状、略球状、楕円粒状、略楕円球状、芋状(
図4(C)参照)、角柱状などの粒状粒子の表面に突起部を備えた形状を呈する導電性粒子の意味である。
【0035】
このような棒有状導電性粒子の中でも、アンカー効果の観点から、針状導電性粒子やデンドライト状導電性粒子などの「針有状導電性粒子」が好ましく、その中でも、電磁波シールド特性を加味すると、デンドライト状導電性粒子が特に好ましい。
前記「針有状導電性粒子」とは、針状部分を有する形状を呈する導電性粒子の意味であり、例えば針状導電性粒子やデンドライト状導電性粒子などを挙げることができる。
他方、アンカー効果と流動性の両方を備えている点から、棒有状導電性粒子の中でも、粒状粒子の表面に尖った突起部を備えた突起有粒状を呈する導電性粒子が特に好ましい。
【0036】
これら「棒有状導電性粒子」は、平均最長径/平均円相当径の比率で示すと、1.2〜2.5の範囲に入るという特徴を有しており、中でも1.2以上或いは2.0以下が好ましく、その中でも1.4以上或いは1.9以下が特に好ましい。
ここで、「平均最長径」とは、走査型電子顕微鏡写真(SEM写真、500倍若しくは2000倍)の視野中に観察される全粒子の最長径の平均値である。
「平均円相当径」とは、走査型電子顕微鏡写真(SEM写真、500倍若しくは2000倍)の視野中に観察される全粒子の円相当径、すなわち各粒子の投影面積から円に近似した場合の直径の全粒子の最長径の平均値である。
【0037】
他方、樹脂層Aに含まれる棒有状導電性粒子以外の導電性粒子の形状は、特に限定するものではない。例えば球状や芋状などの粒状、或いは鱗片状などの形状を挙げることができる。
【0038】
樹脂層Aに含まれる導電性粒子の粒径が大き過ぎると、塗料中で沈降したり、薄膜化できなかったり、電磁波シールド特性が悪くなったりする可能性がある一方、小さ過ぎると、分散性が低下して塗料が増粘して塗工性が低下する可能性があるため、樹脂層Aに含まれる導電性粒子の平均円相当径は、0.1μm〜30μmであるのが好ましく、中でも0.5μm〜20μm、その中でも1.0μm以上或いは10μm以下であるのがより一層好ましい。
【0039】
樹脂層Aにおける導電性粒子の含有量は、本導電性フィルム1の用途や、棒有状導電性粒子の割合等によって、必要量が異なるから、適宜調整するのが好ましい。例えば棒有状導電性粒子は、例えば球状導電性粒子に比べて少ない量でも導通を得ることができるため、樹脂層A中の導電性粒子のうち、50個数%以上を棒有状導電性粒子が占める場合には、樹脂層Aにおける導電性粒子の含有量は、樹脂層A全体の50〜95質量%、中でも60質量%以上或いは90質量%以下、その中でも80質量%以上であるのが好ましい。
【0040】
樹脂層Aの厚さは、特に制限されるものではない。但し、厚過ぎてもアンカー効果が高まる訳ではなく材料が無駄である一方、薄過ぎると、被着面の凹凸に追従でき難くなるばかりか、樹脂層Aで安定した導電性を確保するのが難しくなるため、樹脂層Aの厚さは0.1μm〜100μmであるのが好ましく、中でも0.5μm以上或いは80μm以下、中でも特に1.0μm以上或いは50μm以下であるのがより一層好ましい。
【0041】
(離型フィルム)
離型フィルムとしては、例えばポリエステル系、ポリプロピレン系、ポリエチレン系或いはポリテトラフルオロエチレン系のキャストフィルムや延伸フィルムに、シリコーン樹脂を塗布して離型処理したものや、離型紙などを挙げることができる。
【0042】
(作製方法)
Bステージ状態とすることができる樹脂組成物に導電性粒子、その他、必要に応じて硬化剤やカップリング剤、腐食抑制剤などと混合し、導電性粒子の形状を壊さずに分散させるように混練し、離型フィルムの上に塗布し、溶剤を揮発させるなどして第1次硬化させてフィルム成形するのが好ましい。
混練に際しては、導電性粒子の粒子形状が崩れないように、機械的な衝撃を導電性粒子に与える攪拌機などの使用は避けて、例えばあわとり練太郎(商標名)やプラネタリーミキサなどを使って、機械的な衝撃を与えることなく混練するのが好ましい。
【0043】
(使用方法)
本導電性フィルム1は、
図1(A)に示すように、樹脂層Aを被着体の被着面に重ねて、プレス熱板等を離型フィルムの表面に当接させるなどして加熱して樹脂層Aの樹脂を軟化させ、該離型フィルムの表面を前記プレス熱板等で押圧し、言い換えれば離型フィルムの表面を被プレス面として被着体方向にプレス(押圧)し、さらに加熱して前記で軟化させた樹脂を硬化させることにより、本導電性フィルム1を被着体に接合することができる。
このように本導電性フィルム1を熱プレスすることで、
図1(B)に示すように、樹脂層A中の棒有状導電性粒子の棒状部分先端が被着面に突き刺さってアンカー効果を発揮するため、剥離しないばかりか、横方向にずれることなく、強固に接着させることができる。
【0044】
例えば電子部品が実装され、該電子部品がモールド樹脂で封止され、さらにハーフダイシングにより切込み溝が設けられてなる構成を備えたプリント配線基板において、本導電性フィルム1の樹脂層A側を該モールド樹脂に重ねて、例えば熱板などを当接させるなどして加熱して樹脂層Aの樹脂を軟化させた後、離型フィルムの表面を被プレス面として該プレス接着用導電性フィルムを基板側にプレスし、次いでさらに加熱して、前記で軟化させた樹脂を硬化させることで、樹脂層Aの樹脂はモールド樹脂部分を被覆すると共に、前記の切込み溝内に侵入して充填するため、電子部品パッケージを製造することができる。
【0045】
<本導電性フィルム2>
本発明の第2の実施形態に係る導電性フィルム(「本導電性フィルム2」と称する)は、上記樹脂層A、すなわちBステージ状態の樹脂中に棒有状導電性粒子を含有する樹脂層Aと、Bステージ状態の樹脂を含有し、且つ導電性粒子を含有しない樹脂層Bと、離型フィルムと、を備えた構成の導電性フィルムである。
但し、離型フィルムは必要に応じて備えていればよい。
【0046】
本導電性フィルム2は、前記樹脂層A、前記樹脂層B及び離型フィルム以外の層を一層又は二層以上備えていてもよい。
【0047】
本導電性フィルム2において、樹脂層A及び離型フィルムは、本導電性フィルム1と同様である。
【0048】
樹脂層Bの樹脂組成物は、樹脂層Aの樹脂組成物と同じであっても、異なる樹脂組成物であってもよい。樹脂層Aと樹脂層Bの剥離し難さなどの点からすると、同じベース樹脂からなる樹脂組成物であるのが好ましい。
【0049】
樹脂層Bの厚さは、特に制限されるものではない。但し、厚過ぎても効果が高まる訳でなく材料が無駄である一方、薄過ぎると被着面の凹凸に追従でき難くなるため、樹脂層Bの厚さは5μm〜500μmであるのが好ましく、中でも20μm以上或いは200μm以下、中でも特に50μm以上或いは150μm以下であるのがより一層好ましい。
【0050】
樹脂層Aは、被接着面となる層であるのが好ましい。すなわち、離型フィルム、樹脂層B、樹脂層Aの順に積層するのが好ましい。
【0051】
(作製方法)
また、Bステージ状態とすることができる樹脂組成物に必要に応じて硬化剤やカップリング剤、腐食抑制剤などを混合し、離型フィルムの上に塗布し、溶剤を揮発させるなどして第1次硬化させて、Bステージ状態の樹脂層Bを形成するのが好ましい。
他方、Bステージ状態とすることができる樹脂組成物に導電性粒子、その他、必要に応じて硬化剤やカップリング剤、腐食抑制剤などと混合し、導電性粒子の形状を壊さずに分散させるように混練し、上記樹脂層B上に塗布し、溶剤を揮発させるなどして第1次硬化させてBステージ状態の樹脂層Aを形成し、離型フィルム、樹脂層B、樹脂層Aの順に積層してなる本導電性フィルム2を作製するのが好ましい。
【0052】
上述のように、導電性粒子の形状を壊さずに分散させるように混練するためには、機械的な衝撃を導電性粒子に与える攪拌機などの使用は避けて、例えばあわとり練太郎(商標名)やプラネタリーミキサなどを使って、機械的な衝撃を与えることなく混練するのが好ましい。
【0053】
(使用方法)
本導電性フィルム2は、樹脂層Aを被着体の被着面に重ねて、プレス熱板等を離型フィルムの表面に当接させて加熱して樹脂層A及び樹脂層Bの樹脂を軟化させた後、該離型フィルムの表面を前記プレス熱板等で押圧し、言い換えれば離型フィルムの表面を被プレス面としてプレス(押圧)し、次いでさらに加熱して、前記で軟化させた樹脂を硬化させることにより、本導電性フィルム2を被着体に接合することができる。
このように本導電性フィルム2を熱プレスすることで、樹脂層A中の棒有状導電性粒子の棒状部分先端が被着面に突き刺さってアンカー効果を発揮するため、確実に本導電性フィルム2を被着体に接着させることができる。
他方、樹脂層Bは、樹脂層Aに押される形で、樹脂層Aを突き破って、例えばハーフダイシングにより形成された切込み溝内に流れ込んで当該切込み溝を空隙なく埋め込むことができる。
また、樹脂層Bを設けることによって、レーザーマークがし易くなったり、耐候性性が高まり経時的な変色を防ぐことができたりなどの利益を享受することができる。
【0054】
よって、例えば電子部品が実装され、該電子部品がモールド樹脂で封止され、さらにハーフダイシングにより切込み溝が設けられてなる構成を備えたプリント配線基板において、本導電性フィルム2の樹脂層A側を該モールド樹脂に重ねて、例えば熱板などを当接させるなどして加熱して樹脂層A及び樹脂層Bの樹脂を軟化させた後、離型フィルムの表面を被プレス面として該プレス接着用導電性フィルムを基板側にプレスし、次いで加熱して、前記で軟化させた樹脂を硬化させることで、樹脂層Aの樹脂はモールド樹脂部分を被覆し、樹脂層Bの樹脂は樹脂層Aを突き破って前記の切込み溝内に侵入するため、樹脂層Aの樹脂及び樹脂層Bの樹脂で該切込み溝を埋め込んで充填することができ、電子部品パッケージを製造することができる。
これによって、モールド樹脂で封止された電子部品の周囲を、導電性粒子を含む被覆層で覆うことができ、しかも、当該被覆層の端部は切込み溝内などに侵入してグランドと接合しているため、導通を得ることができる。このように、本導電性フィルム2は、電磁波シールドフィルムとして好適に使用することができる。
【0055】
<本導電性フィルム3>
本発明の第3の実施形態に係る導電性フィルム(「本導電性フィルム3」と称する)は、上記樹脂層A、すなわちBステージ状態の樹脂中に、棒有状導電性粒子を含有する樹脂層Aと、Bステージ状態の樹脂中に導電性粒子を含有する樹脂層Cと、離型フィルムと、を備えた構成の導電性フィルムである。
但し、離型フィルムは必要に応じて備えていればよい。
【0056】
本導電性フィルム3は、前記樹脂層A、前記樹脂層C及び離型フィルム以外の層を一層又は二層以上備えていてもよい。
【0057】
本導電性フィルム3において、樹脂層A及び離型フィルムは、本導電性フィルム1と同様である。
【0058】
(樹脂層Cに含まれる導電性粒子)
樹脂層Cに含まれる導電性粒子は、銀粉粒子、銅粉粒子、鉄粉粒子などの導電性粒子、或いは、任意材料からなる粒子、例えば前記導電性粒子を芯材としてこれらの表面の一部又は全部を異種導電性材料、例えば金、銀、銅、ニッケル、スズ、亜鉛などで被覆してなる粒子などを挙げることができる。但し、これらに限定する趣旨ではなく、導電性を有する材料であれば任意に採用可能である。
【0059】
上述した棒有状導電性粒子の中でも、針状導電性粒子やデンドライト状導電性粒子を多く含んでいると、例えば50個数%以上を樹脂層Cが含んでいると、樹脂層Cが軟化乃至溶融しても、これらの導電性粒子によって樹脂の流動が阻害され、例えばハーフダイシングにより形成された切込み溝などへの埋め込みが阻止されてしまう。
そこで、流動性、言い換えれば埋め込み性に優れる点から、樹脂層C中の導電性粒子のうちの50個数%以上を、粒状導電性粒子が占めるのが好ましく、中でも70個数%以上、その中でも80個数%を超える割合を粒状導電性粒子が占めるのが好ましい。
【0060】
ここで、「粒状導電性粒子」とは、例えば球状、略球状、楕円粒状、略楕円球状、芋状、角柱状などを挙げることができる。また、これら粒状粒子の表面に尖った突起部を備えた突起有粒状導電性粒子も包含する。中でも、流動性、言い換えれば溝部への埋め込み性に優れている点では、球状若しくは略球状であるのが特に好ましい。
【0061】
このように樹脂層Cの流動性を確保する観点から、樹脂層Cにおける導電性粒子は、平均最長径/平均円相当径の比率が1.0〜2.0であるのが好ましく、中でも1.5以下、その中でも1.3以下であるのが好ましい。
【0062】
樹脂層Cにおける導電性粒子の含有量は、本導電性フィルム3の用途などに応じて調整するのが好ましい。目安としては、樹脂層Cにおける導電性粒子の含有量は、樹脂層C全体の50〜95質量%、中でも65質量%以上或いは90質量%以下、その中でも80質量%以上或いは90質量%以下であるのが好ましい。
【0063】
(樹脂層Cの樹脂)
樹脂層Cの樹脂組成物は、樹脂層Aの樹脂組成物と、同じであっても、異なる樹脂組成物であってもよい。
樹脂層Aと樹脂層Cの剥離し難さなどの点からすると、同じベース樹脂からなる樹脂組成物であるのが好ましい。
【0064】
他方、樹脂層Aが密着性を高める役割を果たし、樹脂層Cが例えばハーフダイシングにより形成された切込み溝内などへ流入して埋め込む役割を果たす観点からすると、樹脂層Cの樹脂組成物と樹脂層Aの樹脂組成物は異なるのが好ましく、少なくとも樹脂層Cの方が、100〜150℃での粘弾性がより低い方が好ましい。
かかる観点から、樹脂層Cを構成する樹脂組成物は、100〜150℃における最低溶融粘度が100000Pa・s以下である樹脂が好ましく、中でも50000Pa・s以下、その中でも30000Pa・s以下である樹脂がより一層好ましい(例えば
図3の下方の点線で示される樹脂組成物)。
【0065】
樹脂層Cの厚さは、特に制限されるものではない。樹脂層Cは、例えばハーフダイシングにより形成された切込み溝などに流入して当該溝部を埋め込むために働くため、このような溝部などの大きさに応じて樹脂層Cの厚さを適宜調整するのが好ましい。
【0066】
樹脂層Aは、被接着面となる層であるのが好ましい。すなわち、離型フィルム、樹脂層C、樹脂層Aの順に積層するのが好ましい。
【0067】
(作製方法)
Bステージ状態とすることができる樹脂組成物に導電性粒子、その他、必要に応じて硬化剤やカップリング剤、腐食抑制剤などと混合し、導電性粒子の形状を壊さずに分散させるように混練し、離型フィルムの上に塗布し、溶剤を揮発させるなどして第1次硬化させて、Bステージ状態の樹脂層Cを形成するのが好ましい。
他方、Bステージ状態とすることができる樹脂組成物に導電性粒子、その他、必要に応じて硬化剤やカップリング剤、腐食抑制剤などと混合し、導電性粒子の形状を壊さずに分散させるように混練し、上記樹脂層C上に塗布し、溶剤を揮発させるなどして第1次硬化させてBステージ状態の樹脂層Aを形成し、離型フィルム、樹脂層C、樹脂層Aの順に積層してなる本導電性フィルム3を作製するのが好ましい。
【0068】
上述のように、導電性粒子の形状を壊さずに分散させるように混練するためには、機械的な衝撃を導電性粒子に与える攪拌機などの使用は避けて、例えばあわとり練太郎(商標名)やプラネタリーミキサなどを使って、機械的な衝撃を与えることなく混練するのが好ましい。
【0069】
(使用方法)
本導電性フィルム3は、
図2(A)に示すように、樹脂層Aを被着体の被着面に重ねて、プレス熱板等を離型フィルムの表面に当接させて加熱して樹脂層A及び樹脂層Cの樹脂を軟化させた後、該離型フィルムの表面を前記プレス熱板等で押圧し、言い換えれば離型フィルムの表面を被プレス面としてプレス(押圧)し、さらに加熱して、前記で軟化させた樹脂を硬化させることにより、本導電性フィルム3を被着体に接合することができる。
このように本導電性フィルム3を熱プレスすることで、
図2(B)に示すように、樹脂層A中の棒有状導電性粒子の棒状部分先端が被着面に突き刺さってアンカー効果を発揮するため、接着性を高めることができる。
また、樹脂層Cは、導電性粒子が流動性を阻害することがなく、流動性が高いため、樹脂層Aを突き破ってハーフダイシングにより形成された切込み溝内に流れ込んで前記切込み溝を空隙なく埋め込むことができる。
なお、これらの効果は、樹脂層Aが接着面側に位置している場合に特に効果的に得られる点に留意が必要である。
【0070】
よって、例えば電子部品が実装され、該電子部品がモールド樹脂で封止され、さらにハーフダイシングにより切込み溝が設けられてなる構成を備えたプリント配線基板において、
図2(A)に示すように、本導電性フィルム3の樹脂層A側を該モールド樹脂に重ねて、例えば熱板などを当接させるなどして加熱して樹脂層A及び樹脂層Cの樹脂を軟化させた後、離型フィルムの表面を被プレス面として該プレス接着用導電性フィルムを基板側にプレスし、次いで加熱して、前記で軟化させた樹脂を硬化させることで、
図2(B)に示すように、樹脂層Aの樹脂はモールド樹脂部分を被覆し、樹脂層Cの樹脂は樹脂層Aを突き破って前記の切込み溝内に侵入するため、樹脂層Aの樹脂及び樹脂層Cの樹脂で該切込み溝を埋め込んで充填することができ、電子部品パッケージを製造することができる。
これによって、モールド樹脂で封止された電子部品の周囲を、導電性粒子を含む被覆層で覆うことができ、しかも、当該被覆層の端部は、例えばハーフダイシングにより形成された切込み溝内などに侵入してグランドと接合しているため、導通を得ることができる。このように、本導電性フィルム3は、電磁波シールドフィルムとして好適に使用することができる。
【0071】
<本導電性フィルムの特徴・用途>
本導電性フィルム1−3はいずれも、例えば電磁波抑制シート、電磁波吸収シート、電磁波シールドフィルム、回路基板と回路基板とを接続するボンディングフィルム、静電気防止フィルムなどの導電性フィルムとして利用することができる。中でも、デンドライト状導電性粒子は電磁波シールド特性に優れているため、デンドライト状導電性粒子を含有する本導電性フィルムは、電磁波シールドフィルムとして特に好ましく利用することができる。
【0072】
<語句の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「好ましくYより小さい」の意を包含する。
【実施例】
【0073】
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
<導電性粉末>
(1)銀被覆銅粉A:D50が13μmであって、且つ、電子顕微鏡(2000倍)で観察すると80個数%超える粒子がデンドライト状を呈する銀被覆銅粉。
(2)銀被覆銅粉B:D50が5μmであって、且つ、電子顕微鏡(2000倍)で観察すると80個数%超える粒子がデンドライト状を呈する銀被覆銅粉。
(3)銀被覆銅粉C:D50が12μmであって、且つ、電子顕微鏡(2000倍)で観察すると80個数%超える粒子が、棒状を呈する銀被覆銅粉。
(4)銀被覆銅粉D:D50が5μmであって、且つ、電子顕微鏡(2000倍)で観察すると80個数%超える粒子が、球状粒子の表面に突起部分を有する突起有球状を呈する銀被覆銅粉。
(5)銅粉E:D50が5μmであって、且つ、電子顕微鏡(2000倍)で観察すると80個数%超える粒子が、球状粒子の表面に突起部分を有する突起有球状を呈する銅粉。
(6)銀被覆銅粉F:D50が5.5μmであって、且つ、電子顕微鏡(2000倍)で観察すると80個数%超える粒子が、球状粒子を呈する銀被覆銅粉。
【0075】
なお、上記D50は次のようにして求めた値である。
導電性粉末を少量ビーカーに取り、3%トリトンX溶液(関東化学製)を2、3滴添加し、粉末になじませてから、0.1%SNディスパーサント41溶液(サンノプコ製)50mLを添加し、その後、超音波分散器TIPφ20(日本精機製作所製)を用いて2分間分散処理して測定用サンプルを調製した。この測定用サンプルを、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置MT3300 (日機装製)を用いて体積累積基準D50を測定した。
【0076】
<樹脂>
(1)エポキシ樹脂X:100〜150℃での最低溶融粘度が110℃で25000Pa・s
(2)エポキシ樹脂Y:100〜150℃での最低溶融粘度が110℃で500000Pa・s
【0077】
なお、樹脂の最低溶融粘度は、サンプルの厚みを5mmとして、粘度測定装置(Thermo ELECTRON CORPORATION社製「HAAKE Rheo Stress 600」)を使用し、昇温速度:2℃/minにて、周波数(角速度)を適宜調整しながら測定した。
【0078】
<実施例1−5及び比較例1>
エポキシ樹脂X11質量部に、表1に示す銀被覆銅粉A〜D又は銅粉Eを63質量部、有機溶剤26質量部の割合で加えて、撹拌機(あわとり練太郎(商標名))を用いて回転速度2000rpmで3分間混練した後、厚さ25μmの離型フィルム(旭硝子社製、商品名「アフレックス」)上に、アプリケータを使用して厚さ50μmに塗布して塗膜を形成し、オーブン中にて150℃、3分間加熱して、離型フィルム上にBステージ状態の樹脂層Aを備えた導電性フィルムを作製した。
【0079】
上記で得られた導電性フィルムの樹脂層Aを、モジュール基板(基板上に素子が実装され、さらにエポキシ樹脂製のモールド樹脂で封止され、ハーフダイシングにより表面が溝加工され、パッケージ基板まで切込み溝が設けられたもの)に重ねて、真空プレス機を用いて、昇温速度3℃/分で加熱して前記フィルムの樹脂を軟化させた後(120℃)、離型フィルムの表面を被プレス面として被着体方向に30kgf/cm
2の圧力でプレス(押圧)し、さらに180℃まで加熱して前記で軟化させた樹脂を硬化させてフィルムを基板に接合し、セミオートマチックダイシングを用いてフルダイシングして個片化した。
【0080】
<実施例6>
エポキシ樹脂X11質量部に、表1に示す銀被覆銅粉Aを63質量部、有機溶剤26質量部の割合で加えて、撹拌機(あわとり練太郎(商標名))を用いて回転速度2000rpmで3分間混練した後、厚さ25μmの離型フィルム(旭硝子社製、商品名「アフレックス」)上に、アプリケータを使用して厚さ50μmに塗布して塗膜を形成した。
前記作製した塗膜上に、エポキシ樹脂Xをアプリケータを使用して厚さ100μmに塗布して塗膜を形成し、オーブン中にて150℃、3分間加熱して、離型フィルム上にBステージ状態の樹脂層B及び樹脂層Aを順次積層してなる導電性フィルムを作製した。
【0081】
上記で得られた導電性フィルムの樹脂層Aを、モジュール基板(基板上に素子が実装され、さらにエポキシ樹脂製のモールド樹脂で封止され、ハーフダイシングにより表面が溝加工され、パッケージ基板まで切込み溝が設けられたもの)に重ねて、真空プレス機を用いて、昇温速度3℃/分で加熱して前記フィルムの樹脂を軟化させた後(120℃)、離型フィルムの表面を被プレス面として被着体方向に30kgf/cm
2の圧力でプレス(押圧)し、さらに180℃まで加熱して前記で軟化させた樹脂を硬化させてフィルムを基板に接合し、セミオートマチックダイシングを用いてフルダイシングして個片化した。
【0082】
<実施例7−8>
エポキシ樹脂X又はY11質量部に、表1に示す銀被覆銅粉A又はDを63質量部、有機溶剤26質量部の割合で加えて、撹拌機(あわとり練太郎(商標名))を用いて回転速度2000rpmで3分間混練した後、厚さ25μmの離型フィルム(旭硝子社製、商品名「アフレックス」)上に、アプリケータを使用して厚さ50μmに塗布して塗膜を形成した。
エポキシ樹脂X11質量部に、表1に示す銀被覆銅粉Dを63質量部、有機溶剤26質量部の割合で加えて、撹拌機(あわとり練太郎(商標名))を用いて回転速度2000rpmで3分間混練した後、前記作製した塗膜上に、アプリケータを使用して厚さ100μmに塗布して塗膜を形成し、オーブン中にて150℃、3分間加熱して、離型フィルム上にBステージ状態の樹脂層C及び樹脂層Aを順次積層してなる導電性フィルムを作製した。
【0083】
上記で得られた導電性フィルムの樹脂層Aを、モジュール基板(基板上に素子が実装され、さらにエポキシ樹脂製のモールド樹脂で封止され、ハーフダイシングにより表面が溝加工され、パッケージ基板まで切込み溝が設けられたもの)に重ねて、真空プレス機を用いて、昇温速度3℃/分で加熱して前記フィルムの樹脂を軟化させた後(120℃)、離型フィルムの表面を被プレス面として被着体方向に30kgf/cm
2の圧力でプレス(押圧)し、さらに180℃まで加熱して前記で軟化させた樹脂を硬化させてフィルムを基板に接合し、セミオートマチックダイシングを用いてフルダイシングして個片化した。
【0084】
(フィルム中の導電性粒子形状の観察)
実施例・比較例で得たフィルムを、光学顕微鏡(2,000倍)を使用して、任意の100視野において、それぞれ500個の粒子の形状を観察し、主な粒子形状、すなわち50個数%を超える粒子の形状を表1に示した。
【0085】
(フィルム中の導電性粒子の粒子径の測定)
平均円相当径は、実施例・比較例で得たフィルムを、走査型電子顕微鏡(2000倍)を使用して観察し、その視野中に観察される全粒子の円相当径を、走査型電子顕微鏡写真から、画像解析ソフトウェア(オープンソースのフリーソフト「ImageJ」)を用いて、SetMeasurementのAeraの値より算出し、当該全粒子の平均値として平均円相当径を求めた。
他方、平均最長径は、実施例・比較例で得たフィルムを、走査型電子顕微鏡(2000倍)を使用して観察し、その視野中に観察される全粒子の最長径を、走査型電子顕微鏡写真から、画像解析ソフトウェア(オープンソースのフリーソフト「ImageJ」)を用いて、SetMeasurementのFeret'sDiameterの値より算出し、当該全粒子の平均値として平均最長径を求めた。
【0086】
<シート抵抗>
四端子法により測定を行った。具体的には、アジレントテクノロジーズ社製の半導体デバイスアナライザー「B1500A」に、同じくアジレントテクノロジーズ社製の電圧計「34420A」を接続した測定装置を使用して、100mAにて、実施例及び比較例で得たモジュールにおけるフィルムのシート抵抗を測定した。
【0087】
<密着性>
JIS K5600−5−6で規定されている基盤目試験法に準拠して、実施例・比較例で得たモジュールにおけるフィルムの密着性を「0」〜「5」の6段階で評価した。
数値が小さいほど密着性が良いと評価することができ、「3」以下を「合格」、好ましくは「2」以下、中でも好ましくは「1」以下である。
【0088】
【表1】
【0089】
(考察)
表1の結果並びにこれまで行ってきた試験結果から、モジュールにおけるフィルムの密着性を高める観点からすると、少なくとも樹脂層Aには、棒有形状を呈する導電性粒子を含有させるのが好ましいことが分かった。中でも、デンドライト状粒子が特に好ましいことが分かった。このような効果は、フィルムを熱プレスした際に、樹脂層A中の棒有状導電性粒子の棒状部分先端が被着面に突き刺さるために、アンカー効果を発揮するためであると考えることができる。
これら棒有状導電性粒子の中でも、フィルムの密着性の観点から、平均最長径/平均円相当径の比率で示すと1.2〜2.5の範囲に入るものが好ましく、中でも1.2以上或いは2.0以下であるものが特に好ましく、その中でも1.4以上或いは1.9以下のものが特に好ましいことが分かった。
なお、実施例1−5においてはいずれの場合も、樹脂層Aの樹脂はモールド樹脂部分を被覆すると共に、ハーフダイシングにより形成された切込み溝内に侵入して、当該溝内は樹脂によって充填されたことを確認することができた。
【0090】
また、実施例6のように、棒有形状を呈する導電性粒子を含有する樹脂層Aと、導電性粒子を含有しない樹脂層Bとを備えた導電性フィルムであっても、樹脂層Aからなる単層の導電性フィルムに比べて、密着性及びシート抵抗が大きく低下せず、しかも、樹脂層Aの樹脂はモールド樹脂部分を被覆する一方、樹脂層Bの樹脂は樹脂層Aを突き破って、ハーフダイシングにより形成された切込み溝内に侵入して、樹脂層A及びBの樹脂で当該溝内が充填されることを確認することができた。
これより、樹脂層Bを積層することで、レーザーマークがし易くなったり、耐候性性が高まり経時的な変色を防ぐことができる、導電性フィルムとして有効に利用することができるものと考えることができる。
【0091】
さらに実施例7及び8のように、棒有形状を呈する導電性粒子を含有する樹脂層Aと、デンドライト状若しくは突起有粒状を呈する導電性粒子を含有する樹脂層Cとを備えた導電性フィルムを使用すると、しっかりと密着させることができる上、樹脂層Aの樹脂がモールド樹脂部分を被覆する一方、樹脂層Cの樹脂は、樹脂層Aを突き破って、ハーフダイシングにより形成された切込み溝内の隅々にまで侵入して、樹脂層A及びCの樹脂によって当該溝内を隙間なく埋めて充填することができることが分かった。
このような溝部に対する埋め込み性(充填性)の観点からすると、樹脂層Cに含有させる導電性粒子は、デンドライト状粒子よりも、突起有粒状粒子や突起無粒状粒子などの粒状粒子の方が好ましいことが分かった。これを、平均最長径/平均円相当径の比率で示すと、1.0〜2.0である導電性粒子であるのが好ましく、中でも1.5以下、その中でも1.3以下である導電性粒子であるのがより一層好ましいことが分かった。
【0092】
また、樹脂層Aを構成する樹脂組成物は、エポキシ樹脂X(110℃で25000Pa・s)及びエポキシ樹脂Y(110℃で500000Pa・s)のように、100〜150℃での最低溶融粘度が10000Pa・s〜1000000Pa・sであるのが好ましく、中でも、エポキシ樹脂Y(110℃で500000Pa・s)のように100000Pa・s以上であるのがより一層好ましいことが分かった。
他方、樹脂層B及びCを構成する樹脂組成物は、エポキシ樹脂X(110℃で25000Pa・s)のように、100〜150℃における最低溶融粘度が100000Pa・s以下である樹脂が好ましく、中でも50000Pa・s以下、その中でも30000Pa・s以下である樹脂がより一層好ましいことが分かった。