(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような樹脂成形品として成形される車輌用灯具部品は、金型のキャビティに充填された溶融樹脂が冷却されることにより成形されるため、冷却時に収縮が生じ易い。特に、樹脂材料としてポリブチレンテレフタレート等の結晶性樹脂材料が用いられた場合には、冷却時に大きな収縮が生じるおそれがある。
【0007】
また、金型の内部温度は部分によって異なっており、局所的に他の部分より高温であったり低温であったりする部分もあり、このような温度の相違により溶融樹脂の収縮状態や金型に対する接触状態(密着状態)も異なってしまう。
【0008】
従って、溶融樹脂の冷却時に収縮が生じると、溶融樹脂の各部分における収縮状態や金型に対する接触状態の相違に起因し、キャビティにおいて溶融樹脂の一部が金型から剥離され、樹脂成形品において剥離された部分と剥離されなかった部分との境界にクラックが生じるおそれがある。このようなクラックが発生すると、クラックの生じた部分が白くなり白化が生じたり、クラックが年輪状に生じてしまい、樹脂成形品(車輌用灯具部品)の成形性が低下してしまう。
【0009】
そこで、
本発明車輌用灯具部品は、上記した問題点を克服し、成形性の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
車輌用灯具部品は、上記した課題を解決するために、第1の型又は第2の型の少なくとも一方の溶融樹脂に接する面側に係合凹部又は係合切欠が形成された金型によって成形され車輌用灯具の部品として用いられる
ポリブチレンテレフタレートを材料とする車輌用灯具部品であって、前記溶融樹脂の冷却時に、前記係合凹部又は前記係合切欠に位置され前記金型に係合されて前記冷却時における収縮を抑制する係合突部が設けら
れ、前記溶融樹脂の前記第2の型に接する面が意匠面として形成され、前記係合突部が前記意匠面側に設けられ、前記係合突部の外面のうち、前記係合突部の周囲に位置する面に連続する面が段差面として形成され、一部が屈曲された形状に形成されることにより屈曲された部分が稜線として形成され、前記係合突部が前記稜線上に設けられたものである。
【0012】
従って、
車輌用灯具部品にあっては、溶融樹脂の冷却時に係合突部が係合凹部又は係合切欠に係合し、溶融樹脂の収縮が抑制される。
【発明の効果】
【0013】
本発明
車輌用灯具部品は、第1の型又は第2の型の少なくとも一方の溶融樹脂に接する面側に係合凹部又は係合切欠が形成された金型によって成形され車輌用灯具の部品として用いられる
ポリブチレンテレフタレートを材料とする車輌用灯具部品であって、前記溶融樹脂の冷却時に、前記係合凹部又は前記係合切欠に位置され前記金型に係合されて前記冷却時における収縮を抑制する係合突部が設けら
れ、前記溶融樹脂の前記第2の型に接する面が意匠面として形成され、前記係合突部が前記意匠面側に設けられ、前記係合突部の外面のうち、前記係合突部の周囲に位置する面に連続する面が段差面として形成され、一部が屈曲された形状に形成されることにより屈曲された部分が稜線として形成され、前記係合突部が前記稜線上に設けられたことを特徴とする。
【0014】
従って、冷却時に、溶融樹脂の一部が第1の型又は第2の型から剥離される状態が生じ難く、クラックやクラックに起因する白化の発生を防止することができ、樹脂成形品の成形性の向上を図ることができる。
【0018】
また、意匠面の良好な意匠性を確保した上でクラックやクラックに起因する白化の発生を防止することができ、意匠面の良好な意匠性を確保することができると共に樹脂成形品の成形性の向上を図ることができる。
【0020】
さらに、係合突部が長く延びる形状に形成され、溶融樹脂の収縮に関する抑制効果の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。
【0025】
<樹脂成形品(車輌用灯具部品)の構成>
先ず、車輌用灯具部品として成形される樹脂成形品1の構成について説明する(
図1乃至
図4参照)。
【0026】
樹脂成形品1は射出成形によって、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアセタール(POM)等の結晶性樹脂材料又はこれらの合成樹脂材料により成形されている。樹脂成形品1は、例えば、車輌用灯具の部品として用いられる車輌用灯具部品であり、例えば、車輌用前照灯の内部構造を遮蔽して見栄えの向上を図るためのエクステンションとして成形されている。
【0027】
樹脂成形品1は横長の外枠部2と外枠部2のうち上下に位置する部分を連結する仕切部3と後方へ突出された突状部4とを有している(
図1及び
図2参照)。
【0028】
外枠部2は略前後方向を向く細幅のベース面部2aとベース面部2aの外周縁から略後方へ突出された外周面部2bとベース面部2aの内周縁から略後方へ突出された内周面部2cとを有している。外周面2bと内周面部2cは後方へ行くに従って互いに離隔するように緩やかに傾斜されている。
【0029】
仕切部3は略上下に延びる形状に形成され、外枠部2の内側において左右方向における中間部に位置されている。仕切部3は、略前後方向を向く基面部3aと、基面部3aの一方の側縁から略後方へ突出された第1の側面部3bと、基面部3aの他方の側縁から略後方へ突出された第2の側面部3cとを有している。第1の側面部3bと第2の側面部3cは後方へ行くに従って互いに離隔するように緩やかに傾斜されている。
【0030】
樹脂成形品1における仕切部3の左右両側の部分はそれぞれ透過孔1a、1aとされている。樹脂成形品1が車輌用前照灯の内部に配置された状態において、透過孔1a、1aの後方にそれぞれ単数又は複数の図示しない灯具ユニットが配置され、これらの各灯具ユニットから出射された光が透過孔1a、1aを透過されて前方へ照射される。
【0031】
突状部4は、
図3に示すように、外枠部2の内周面部2cにおける後縁の一部から後方へ突出された第1の面部5と、仕切部3の側縁における後縁の一部から後方へ突出された第2の面部6と、第1の面部5と第2の面部6の各後縁に連続する第3の面部7とから成る。
【0032】
第1の面部5と第2の面部6はともに後方へ行くに従って幅が狭くなる形状に形成され、両者の各一方の側縁が連続されている。第3の面部7は略三角形状に形成され、二つの側縁がそれぞれ第1の面部5の後縁と第2の面部6の後縁とに連続されている。第1の面部5と第2の面部6が連続された部分は屈曲されており、この屈曲された部分が第1の稜線4aとして形成されている。また、第1の面部5と第3の面部7が連続された部分も屈曲されており、この屈曲された部分が第2の稜線4bとして形成されている。さらに、第2の面部6と第3の面部7が連続された部分も屈曲されており、この屈曲された部分が第3の稜線4cとして形成されている。
【0033】
突状部4には第1の稜線4aと第2の稜線4bと第3の稜線4c上にそれぞれ後方へ突出された第1の係合突部8と第2の係合突部9と第3の係合突部10が設けられている。第1の係合突部8と第2の係合突部9と第3の係合突部10は幅方向、即ち、各稜線が延びる方向における各一端部が連続されている。
【0034】
第1の係合突部8と第2の係合突部9と第3の係合突部10はそれぞれ後方へ行くに従って厚みが徐々に薄くなる形状に形成されている。
【0035】
上記のように構成された樹脂成形品1は外枠部2の外面、仕切部3の外面及び突状部4の前方側の面が鏡面にされた意匠面1bとして形成され、樹脂成形品1が車輌用前照灯の内部に配置された状態において意匠面1bが外部から視認可能な面とされている。
【0036】
樹脂成形品1には意匠面1b側に、例えば、上方又は下方を向く段差面11、11が、例えば、外枠部2の上下両端部に形成されている(
図4参照)。但し、段差面11、11は、例えば、外枠部2の全体に亘って環状に形成されていてもよい。尚、
図4は、理解を容易にするために樹脂成形品1の形状(断面形状)を模式的に示している。
【0037】
段差面11、11の外側の部分はそれぞれ内側の部分12より僅かに前方へ突出された一対の係合突部13、13として設けられている。段差面11、11は意匠面1bの意匠(デザイン)として形成されており、高さが意匠面1bの良好な意匠性を確保することが可能な1mm以下、例えば、0.2mm程度にされている。
【0038】
<金型の構造>
次に、樹脂成形品1を射出成形によって成形する金型100について説明する(
図5及び
図6参照)。
【0039】
図5及び
図6は、金型100の各断面を樹脂成形品1とともに示すものであり、
図5は突状部4が成形される状態を模式的に示し、
図6は段差面11を有する部分が成形される状態を模式的に示す。
【0040】
金型100は可動型として用いられた第1の型101と固定型として用いられた第2の型102とを有している。第1の型101は、例えば、可動型として用いられるコア型であり、第2の型102は、例えば、固定型として用いられるキャビ型である。第1の型101と第2の型102が突き合わされて溶融樹脂が充填されるキャビティ103が形成される。金型100にあっては、第1の型101と第2の型102の型閉め時又は型開き時の離接方向が、例えば、前後方向(
図5及び
図6に示すA方向)とされている。
【0041】
第1の型101と第2の型102の各内面はそれぞれキャビティ103を形成するキャビティ形成面104、105として形成されている。
【0042】
第1の型101には係合凹部(係合切欠)101a、101a、101aが形成され、第2の型102には係合凹部(係合切欠)102a、102aが形成されている。係合凹部101a、101a、101aによってそれぞれ第1の係合突部8と第2の係合突部9と第3の係合突部10が形成され、係合凹部102a、102aによってそれぞれ係合突部13、13が形成される。
【0043】
<各部の機能>
以下に、第1の係合突部8、第2の係合突部9、第3の係合突部10の機能と係合突部13、13の機能とについて説明する。
【0044】
先ず、第1の係合突部8、第2の係合突部9、第3の係合突部10の機能について説明する(
図5参照)。
【0045】
金型100のキャビティ103に溶融樹脂が充填されて冷却されると、冷却時に溶融樹脂に収縮力が生じ、突状部4は厚み方向に直交する方向(
図5に示すB方向)に収縮し易い。このような収縮力が生じた状態において、突状部4を形成する溶融樹脂の各部分間に温度差があると溶融樹脂の収縮状態や金型100に対する接触状態(密着状態)が異なってしまう可能性があり、突状部4の一部がキャビティ形成面104、105から剥離され、突状部4において剥離される部分と剥離されない部分とが生じるおそれがある。特に、突状部4はキャビティ103における奥側に位置されるため、溶融樹脂を冷却するための冷却管から離隔する位置に存在し易く、温度差が生じ易い部分である。
【0046】
ところが、樹脂成形品1においては、収縮方向に対して異なる方向、例えば、直交する方向へ突出された第1の係合突部8と第2の係合突部9と第3の係合突部10が設けられているため、第1の係合突部8と第2の係合突部9と第3の係合突部10によって突状部4の収縮が抑制される。
【0047】
従って、樹脂成形品1にあっては、突状部4において一部がキャビティ形成面104、105から剥離される状態が生じ難く、クラックやクラックに起因する白化の発生を防止することができ、樹脂成形品1の成形性の向上を図ることができる。
【0048】
また、第1の係合突部8と第2の係合突部9と第3の係合突部10は第1の型101と第2の型102の型閉め方向又は型開き方向である後方へ突出されているため、第1の係合突部8と第2の係合突部9と第3の係合突部10がアンダーカットにならず、第1の型101と第2の型102の型開きを円滑に行うことができ樹脂成形品1の成形性の向上を図ることができる。
【0049】
さらに、第1の係合突部8と第2の係合突部9と第3の係合突部10がそれぞれ突状部4の第1の稜線4aと第2の稜線4bと第3の稜線4c上に設けられているため、第1の係合突部8と第2の係合突部9と第3の係合突部10が長く延びる形状に形成され、溶融樹脂の収縮に関する抑制効果の向上を図ることができる。
【0050】
加えて、第1の係合突部8と第2の係合突部9と第3の係合突部10が意匠面1bと反対側の面においてそれぞれ第1の稜線4aと第2の稜線4bと第3の稜線4c上に設けられているため、意匠面1bの良好な意匠性を確保した上で溶融樹脂の収縮に関する抑制効果の向上を図ることができる。
【0051】
次に、係合突部13、13の機能について説明する(
図6参照)。
【0052】
金型100のキャビティ103に溶融樹脂が充填されて冷却されると、冷却時に溶融樹脂に収縮力が生じ、段差面11、11が形成された部分は厚み方向に直交する方向(
図6に示すB方向)に収縮し易い。このような収縮力が生じた状態において、溶融樹脂の各部分間に温度差があると溶融樹脂の収縮状態や金型100に対する接触状態(密着状態)が異なってしまう可能性があり、一部がキャビティ形成面104、105から剥離され、剥離される部分と剥離されない部分とが生じるおそれがある。
【0053】
ところが、樹脂成形品1においては、収縮方向に対して異なる方向、例えば、直交する方向へ突出された係合突部13、13が設けられているため、係合突部13、13によって樹脂成形品1の収縮が抑制される。
【0054】
従って、樹脂成形品1にあっては、一部がキャビティ形成面104、105から剥離される状態が生じ難く、クラックやクラックに起因する白化の発生を防止することができ、樹脂成形品1の成形性の向上を図ることができる。
【0055】
また、樹脂成形品1にあっては、意匠面1bの意匠として設けられた段差面11、11が形成されることにより係合突部13、13が設けられているため、意匠面1bの良好な意匠性を確保した上で樹脂成形品1の成形性の向上を図ることができる。
【0056】
さらに、係合突部13、13は第1の型101と第2の型102の型閉め方向又は型開き方向である前方へ突出されているため、係合突部13、13がアンダーカットにならず、第1の型101と第2の型102の型開きを円滑に行うことができ樹脂成形品1の成形性の向上を図ることができる。
【0057】
<その他>
上記には、第1の係合突部8、第2の係合突部9、第3の係合突部10及び係合突部13、13が突状部4又は外枠部2に設けられた例を示したが、第1の係合突部8、第2の係合突部9、第3の係合突部10及び係合突部13、13は樹脂成形品1において収縮により金型100のキャビティ形成面104、105からの溶融樹脂の剥がれが生じるおそれがある任意の各部に設けることが可能である。
【0058】
また、上記には、第1の係合突部8、第2の係合突部9及び第3の係合突部10が後方に突出され、係合突部13、13が前方に突出された例を示したが、第1の係合突部8、第2の係合突部9、第3の係合突部10及び係合突部13、13の突出方向は溶融樹脂の収縮方向に対して異なる方向であれば何れの方向であってもよい。
【0059】
さらに、キャビティ形成面104、105からの溶融樹脂の一部の剥がれを防止するために、キャビティ形成面104、105に樹脂成形品1の第1の型101及び第2型102に対する離型性の向上を図る処理膜を塗布してもよい。処理膜としては、例えば、クロムメッキ、窒化クロム、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)等を用いることが可能である。
【0060】
加えて、樹脂成形品1にあっては、デザイン性の向上等の観点により、所要の各部にアルミニウム等による蒸着を施してもよい。
【0061】
上記した発明を実施するための最良の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。