(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記1対の側板から内側にそれぞれ突出しており、前記チェーンホイールの間で前記底板の逆側に位置する前記スクレーパを支持する1対のガイド部を更に備える、請求項1又は2記載のチェーン式スクレーパコンベヤ。
一部の前記スクレーパの前記押圧部は、前記底板の全幅に亘って延在すると共に、他の前記スクレーパの前記押圧部に比べ高い圧力で前記底板に押し当たるように構成されている、請求項1〜3のいずれか一項記載のチェーン式スクレーパコンベヤ。
前記一部の前記スクレーパの前記押圧部のうち、前記底板に押し当たる部分の厚さは、他の前記スクレーパの前記押圧部のうち、前記底板に押し当たる部分の厚さに比べ小さい請求項5記載のチェーン式スクレーパコンベヤ。
前記スクレーパは、スクレーパは、前記1対のチェーンに架け渡された接続された本体部材と、前記本体部材に固定された錘部材とを有する、請求項1〜6のいずれか一項記載のチェーン式スクレーパコンベヤ。
廃棄物処理工程において生成された灰に、含有物の溶出防止処理を施した処理灰の搬送に用いられる、請求項1〜8のいずれか一項記載のチェーン式スクレーパコンベヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、処理灰の付着性が高いことから、廃棄物処理施設に上述したフライトコンベヤ(チェーン式スクレーパコンベヤ)を用いたとしても、処理灰の固着層の成長を十分に抑制できない場合がある。この場合、処理灰の固着層によりフライト(スクレーパ)が押し上げられ、主務チェーンと主務チェーン押さえ(規制部材)との摩擦抵抗が著しく大きくなる等の悪影響が生じ、フライトコンベヤの動作が不安定となるおそれがある。このため、メンテナンスの頻度を十分に低減させることができない。
【0006】
そこで、本発明は、メンテナンスの頻度を十分に低減させることができるチェーン式スクレーパコンベヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るチェーン式スクレーパコンベヤは、鉛直方向に交差する方向に被搬送物を搬送するコンベヤであって、被搬送物の搬送方向に沿って延在する底板と、搬送方向に沿って延在し、底板にそれぞれ直交する1対の側板とを有するケーシングと、ケーシング内で底板の幅方向に並び、側板に対し平行な面に沿う環形状をそれぞれ構成する1対のチェーンと、底板の両端部で底板の幅方向に並ぶように配置され、環形状が底板の両端部間に亘るように1対のチェーンを保持し、環形状の周方向に沿って循環させる4個のチェーンホイールと、環形状の周方向に並ぶようにチェーンの複数の箇所に設けられ、底板の幅方向に並ぶチェーン同士の間にそれぞれ架け渡された複数のスクレーパと、を備え、チェーンは、複数の環体を連結して構成されたリンクチェーンであり、スクレーパには、底板の幅方向に延在すると共に、チェーンの環形状の外周より外側に張り出す板状の押圧部が設けられ、スクレーパの質量は、底板の両端部に配置されたチェーンホイールの間で底板側に位置する全ての押圧部が重力により底板に押し当たるように設定されている。
【0008】
このチェーン式スクレーパコンベヤでは、チェーンホイールの間で底板側に位置する押圧部が被搬送物を搬送する。チェーンホイールの間で底板側に位置する全ての押圧部は重力により底板に押し当たる。このため、底板上に形成された被搬送物の固着層が押圧部により掻き落とされる。また、押圧部が重力により底板に押し当たることから、スクレーパを強制的に底板に近づけるための規制部材を設ける必要がない。仮にこのような規制部材が設けられていると、固着層により押圧部が押し上げられたときに、スクレーパが規制部材に押し当たって大きな摩擦抵抗が生じる。規制部材を設けなければ、このような摩擦抵抗が発生しないので、チェーン及びスクレーパの円滑な動きを維持して固着層を掻き落とし続けることができる。従って、固着層の成長を抑制し、メンテナンスの頻度を十分に低減させることができる。
【0009】
なお、チェーンは、複数の環体を連結して構成されたリンクチェーンである。リンクチェーンの構造は、ローラチェーン等の構造に比べ単純であり、構成要素同士の隙間が少ない。仮に、ローラチェーンを用いると、構成要素同士の隙間に入り込んだ被搬送物により、チェーンの動作抵抗が大きくなる場合がある。チェーンの動作抵抗が大きくなると、重力に抵抗する力が大きくなることから、各スクレーパを底板に押し当てる力が低下する。リンクチェーンでは、このような現象が生じ難いため、各スクレーパを底板に押し当てる力を確保できる。このことも、固着層の成長の抑制に寄与する。
【0010】
一部のスクレーパの押圧部は、底板の全幅に亘って延在すると共に、他のスクレーパの押圧部に比べ高い圧力で底板に押し当たるように構成されていてもよい。この一部のスクレーパにより、底板の全幅に亘り、固着層をよりしっかりと掻き落とすことができる。
【0011】
一部のスクレーパの押圧部と底板との接触面積は、他のスクレーパの押圧部と底板との接触面積に比べ小さくてもよい。これにより、一部のスクレーパを、他のスクレーパに比べ高い圧力で底板に押し当てることができる。
【0012】
一部のスクレーパの押圧部のうち、底板に押し当たる部分の厚さは、他のスクレーパの押圧部のうち、底板に押し当たる部分の厚さに比べ小さくてもよい。搬送を長期間継続すると、底板上の固着層から掻き落とされた被搬送物が押圧部の下端に固着する場合がある。すると、底板上の固着層と押圧部とが直接接触し難くなり、スクレーパの掻き落とし性能が低下するおそれがある。押圧部のうち底板に押し当たる部分の厚さが小さいと、押圧部の下端に対する被搬送物の固着は生じ難い傾向がある。このため、一部のスクレーパの押圧部のうち底板に押し当たる部分の厚さを小さくすることで、押圧部の下端に対する被搬送物の固着を抑制し、このスクレーパの掻き落とし性能を維持できる。更に、このスクレーパにより固着層をしっかりと掻き落とすことで、他のスクレーパの押圧部に対する被搬送物の固着も抑制し、他のスクレーパの掻き落とし性能も維持できる。
【0013】
チェーンホイールの外周には、チェーンを構成する環体を収容する溝部が形成され、チェーンホイールの近傍には、溝部内に挿入される爪部を有し、チェーンホイールの回転に伴って爪部により溝部内の被搬送物を掻き出すチェーンホイールクリーナが設けられていてもよい。この場合、溝部が被搬送物によって埋まってしまうことを防止できる。これにより、チェーンホイールとチェーンとの円滑な動作を維持し、メンテナンスの頻度をより低減させることができる。
【0014】
廃棄物処理工程において生成された灰に、含有物の溶出防止処理を施した処理灰の搬送に用いられてもよい。処理灰は付着性が強く、コンベヤ内で固着層を形成し易い。このため、処理灰の搬送に用いられると、上述した効果がより顕著となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るチェーン式スクレーパコンベヤによれば、メンテナンスの頻度を十分に低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るチェーン式スクレーパコンベヤの好適な実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。まず、チェーン式スクレーパコンベヤが用いられる灰処理装置について説明する。灰処理装置1は、廃棄物処理工程において生成された灰を処理する装置であり、集塵器2,3と、灰搬送コンベヤ4と、サイロ5と、混練機6と、処理灰コンベヤ7と、処理灰バンカ8とを有している。
【0018】
集塵器2,3は、例えばバグフィルターであり、廃棄物処理工程において排出されたガス中の灰を不織布等により捕捉し、回収する。集塵器2,3の下部には、回収した灰を送り出すフィーダ2a,3aが設けられている。フィーダ2a,3aにより、灰搬送コンベヤ4に灰が送り出される。灰搬送コンベヤ4は、例えばベルトコンベヤ等により構成され、集塵器2,3から送り出された灰を搬送する。
【0019】
サイロ5は、灰を収容する貯蔵容器5aと、貯蔵容器5aの下部に設けられたフィーダ5bとを有している。貯蔵容器5aは、灰搬送コンベヤ4により搬送された灰を収容する。フィーダ5bは、貯蔵容器5a内に収容された灰を切り出し、混練機6に向かって送り出す。貯蔵容器5aの下部には、ガス吹込装置9が接続されている。ガス吹込装置9は、貯蔵容器5aの下部に窒素ガス等の不活性ガスを吹き込む。これにより、貯蔵容器5a内において灰の塊状化が防止され、灰の円滑な送り出しが可能となる。
【0020】
混練機6には、薬剤用ポンプ10及び水用ポンプ11が、それぞれバルブ12,13を介して接続されている。薬剤用ポンプ10は、薬剤貯留槽14に貯留された薬剤を混練機6に向かって圧送する。薬剤は、例えば重金属固定用のキレート剤である。水用ポンプ11は、混練機6に向かって水を圧送する。混練機6には混練用のスクリュー6aが内蔵されている。サイロ5から混練機6に送られた灰と、薬剤用ポンプ10によって圧送された薬剤と、水用ポンプ11によって圧送された水とがスクリュー6aによって混練される。このような混練処理により、灰中に含まれる重金属などの溶出が防止される。すなわち、この混練処理が、含有物の溶出防止処理である。
【0021】
混練機6において混練処理された処理灰は、処理灰コンベヤ7に送り出される。処理灰コンベヤ7は、本発明が適用されたチェーン式スクレーパコンベヤであり、混練機6から送り出された処理灰を処理灰バンカ8に搬送する。
【0022】
処理灰バンカ8は、処理灰を貯留する処理灰貯留槽8aと、処理灰貯留槽8aの底部に設けられた開閉扉8bとを有している。開閉扉8bは、処理灰貯留槽8aの下方にダンプカー等の搬送用車両(不図示)が停車した状態で開放される。開閉扉8bを開放すると、処理灰貯留槽8a内の処理灰が下方に送り出され、搬送用車両に供給される。搬送用車両に供給された処理灰は、搬送用車両により廃棄場等に搬送される。
【0023】
続いて、処理灰コンベヤ7について詳細に説明する。
図2及び
図3に示されるように、処理灰コンベヤ7は、水平方向に延在する略直方体形状のケーシング15と、ケーシング15に内蔵された2個の環状のチェーン16、2個の駆動ホイール17(チェーンホイール)及び2個の従動ホイール18(チェーンホイール)と、駆動装置19とを備えており、延在方向に沿って処理灰を搬送する。以下の説明において、「前後左右」は、処理灰の搬送方向を前方とした方向を意味する。
【0024】
ケーシング15の底板15aは、略水平であり、前後方向に延在している。ケーシング15の側板15b,15cは、前後方向に延在し、底板15aにそれぞれ直交している。側板15b,15cの内面には、内側に突出すると共に前後方向に延在するガイド部26A,26Bがそれぞれ形成されている(
図6参照)。ガイド部材26A,26Bは、後述のスクレーパ27を支持する。ケーシング15の上部の後側部分には、上方に開口する受入部15dが設けられている。ケーシング15の下部の前側部分には、下方に開口する排出部15eが設けられている。
【0025】
ケーシング15内の前側の端部には、左右方向に延在した駆動軸20が設けられている。駆動軸20は、前後方向で排出部15eと同じ位置に配置されている。駆動軸20の両端部20a,20bは、ケーシング15の左右の側板15b,15cをそれぞれ貫通している。駆動軸20の右側の端部20bの外周には、動力伝達用のスプロケット20cが設けられている。
【0026】
駆動装置19は、ケーシング15の上部の前側に設けられている。駆動装置19は、右側に突出する動力軸21と、動力軸21を回動させるモータ22及び減速機23とを有している。動力軸21の外周には、動力伝達用のスプロケット21aが設けられている。動力軸21のスプロケット21aと駆動軸20のスプロケット20cとには、環状のチェーン24が掛け渡されている。スプロケット21a,20c及びチェーン24により、動力軸21の回転が駆動軸20に伝達される。
【0027】
ケーシング15内の後側の端部には、左右方向に延在した従動軸25が設けられている。従動軸25の両端部25a,25bは、ケーシング15の左右の側板15b,15cをそれぞれ貫通している。従動軸25は、受入部15dに比べ後方に位置している。
【0028】
2個の駆動ホイール17は、ケーシング15内において駆動軸20の外周に設けられ、左右に並んでいる。2個の従動ホイール18は、ケーシング15内において従動軸25の外周に設けられ、左右に並んでいる。一方のチェーン16は、側板15b,15cに平行な面に沿う環形状を構成するように配置され、左側の駆動ホイール17及び左側の従動ホイール18に掛け渡されている。他方のチェーン16も、側板15b,15cに平行な面に沿う環形状を構成するように配置され、右側の駆動ホイール17及び右側の従動ホイール18に掛け渡されている。これにより、各チェーン16の環形状はケーシング15の両端部間に亘っている。各チェーン16は、駆動ホイール17と従動ホイール18の間に、前後方向に延在する2本の鎖線部CL1,CL2を構成している。チェーン16には、環形状の周方向に等間隔で並ぶように、複数のスクレーパ27が設けられている。各スクレーパ27は、左側のチェーン16と右側のチェーン16とに架け渡されている。下側の鎖線部CL1に位置するスクレーパ27は、底板15aによって支持される。上側の鎖線部CL2に位置するスクレーパ27は、ガイド部26A,26Bによって支持される。
【0029】
駆動装置19が動力軸21を回転させると、その回転がスプロケット21a,20c及びチェーン24を介して駆動軸20に伝わり、駆動軸20と共に駆動ホイール17が回転する。すると、駆動ホイール17の回転に伴い、環形状の周方向に沿ってチェーン16が循環し、チェーン16の循環に伴って従動ホイール18が回転する。チェーン16に設けられた各スクレーパ27は、チェーン16の循環に伴って移動する。
【0030】
受入部15dには、被搬送物である処理灰が投入され、投入された処理灰は底板15aによって支持される。駆動装置19は、下側の鎖線部CL1に位置する各スクレーパ27が前方に移動し、上側の鎖線部CL2に位置する各スクレーパ27が後方に移動するように動力軸21を回転させ、チェーン16を循環させる。すると、下側の鎖線部CL1に位置する各スクレーパ27は、底板15a上の処理灰を前方に搬送すると共に、底板15a上に形成された処理灰の固着層を掻き落とす。このとき、側板15b,15cにより、底板15a上からの処理灰の脱落が防止される。一方、上側の鎖線部CL2に位置する各スクレーパ27は、左右のガイド部26A,26Bに支持された状態で後方に戻る。前方に搬送された処理灰は、排出部15eを通って処理灰バンカ8に排出される。
【0031】
続いて、チェーン16及びスクレーパ27について詳細に説明する。各スクレーパ27の上下及び前後は、下側の鎖線部CL1に位置するときと上側の鎖線部CL2に位置するときとで逆転する。以下、スクレーパ27の説明における「上下」及び「前後」は、スクレーパ27が下側の鎖線部CL1に位置するときの上下方向及び前後方向を意味するものとする。
【0032】
図4〜
図6に示されるように、チェーン16は、複数の単位鎖線28を直列に連結して構成されている。各単位鎖線28は、5個の長円状の環体39を連結して構成されている。各スクレーパ27は、直列に連なる単位鎖線28同士の間に介在している。
【0033】
各スクレーパ27は、本体部材29と、2個の錘部材30とを有している。本体部材29及び錘部材30は、略長方形の板状部材であり、長辺が左右方向に沿うように配置されている。本体部材29の両面の左側部分及び右側部分には、単位鎖線28を接続するための継手部材31が取り付けられている。左側の継手部材31には、左側のチェーン16を構成する単位鎖線28が接続され、右側の継手部材31には、右側のチェーン16を構成する単位鎖線28が接続されている。各継手部材31は、左右方向に延在し、中央部31aが本体部材29から離れる方向に膨出した形状を呈しており、中央部31aが単位鎖線28の端部の環体39に通されている。本体部材29の両面側に配置された継手部材31の左側の端部同士及び右側の端部同士は、ボルト32及びナット33で締結されている。これにより、各継手部材31が本体部材29に固定されている。本体部材29を挟む2個の継手部材31の中央部31aは、単位鎖線28同士を連結する1個の環体39Aを構成している。
【0034】
このようにして、複数の環体39,39Aを連結したリンクチェーンとして、2個のチェーン16が構成されると共に、チェーン16に複数の本体部材29が等間隔に設けられ、各本体部材29が左側のチェーン16と右側のチェーン16とに架け渡されている。また、各本体部材29は、チェーン16の鎖線に交差して起立した状態に保持されている。各本体部材29の上部の左側部分及び右側部分には、切欠部29a,29bが形成されている。切欠部29a,29bを形成することにより、本体部材29とホイール17,18との干渉が防止されている。各本体部材29は、チェーン16の環形状の外周より外側に張り出している。これにより、底板15aの幅方向に延在すると共に、チェーン16の環形状の外周より外側に張り出す板状の押圧部Pが構成されている。
【0035】
2枚の錘部材30は、左右の継手部材31の間で本体部材29の両面側に重なっている。
図7に示されるように、本体部材29の上端面29cと錘部材30の上端面30aとは揃っている。本体部材29の下端面29dは錘部材30の下端面30bから張り出している。錘部材30の外面の下部には、下方に向かうに従って本体部材29に近づくように傾斜した斜面30cが形成されている。これにより、錘部材30と本体部材29との段差が軽減され、錘部材30と本体部材29との段差部に処理灰が溜り難くなっている。本体部材29の両面側に重なった錘部材30同士は、左右方向に並ぶ2箇所において(
図6参照)、ボルト34及びナット35で締結されている。これにより、錘部材30が本体部材29に固定されている。
【0036】
錘部材30の厚さ、大きさ、材質等を変更することによって、各スクレーパ27の質量を調整することが可能である。各スクレーパ27の質量は、下側の鎖線部CL1に位置する全てのスクレーパ27の押圧部P(ホイール17,18の間で底板15a側に位置する全ての押圧部P)が、重力により底板15aに押し当たるように調整されている。これにより、下側の鎖線部CL1に位置する各スクレーパ27の押圧部Pが底板15aに押し当たるため、底板15a上に形成された処理灰の固着層が押圧部Pにより掻き落とされる。
【0037】
ここで、
図8及び
図9に示されるように、スクレーパ27のうち、一部のスクレーパ27Aは、クリーナチップ36を更に有している。クリーナチップ36は、略長方形の板状部材であり、長辺が左右方向に沿うように配置され、本体部材29の下部の前面側に重ねられている。クリーナチップ36の下端面36aは、本体部材29の下端面29dから張り出している。このため、スクレーパ27Aの押圧部Pがチェーン16の環形状の外周より外側に張り出す量は、他のスクレーパ27Bの押圧部Pがチェーン16の環形状の外周より外側に張り出す量に比べ大きい。この張り出し量の差は、チェーン16の弛みによって吸収され、下側の鎖線部CL1に位置する全てのスクレーパ27A,27Bの押圧部Pが底板15aに押し当たる。
【0038】
クリーナチップ36の左右の端面36b,36cは、本体部材29の左右の端面29e,29fから張り出しており、クリーナチップ36の長辺は底板15aの全幅に亘っている。また、クリーナチップ36の下端面36aの面積は、他のスクレーパ27Bの本体部材29の下端面29dの面積に比べ小さい。すなわち、スクレーパ27Aの押圧部Pと底板15aとの接触面積は、スクレーパ27Bの押圧部Pと底板15aとの接触面積に比べ小さい。このため、スクレーパ27Aの押圧部Pは、底板15aの全幅に亘って延在すると共に、スクレーパ27Bの押圧部Pに比べ高い圧力で底板15aに押し当たる。スクレーパ27Aにより、底板15aの全幅に亘って、固着層をよりしっかりと掻き落とすことができる。なお、「底板15aの全幅に亘る」とは、底板15aの全幅の95%以上に亘ることを意味する。スクレーパ27Aの押圧部Pは、底板15aの全幅の97%以上に亘って延在していることがより好ましく、99%以上に亘って延在していることが更に好ましい。
【0039】
クリーナチップ36の厚さは、本体部材29の厚さに比べ小さい。このため、スクレーパ27Aの押圧部Pのうち底板15aに押し当たる部分の厚さは、スクレーパ27Bの押圧部Pのうち底板15aに押し当たる部分の厚さに比べ小さい。搬送を長期間継続すると、底板15a上の固着層から掻き落とされた処理灰が押圧部Pの下端に固着する場合がある。すると、底板15a上の固着層と押圧部Pとが直接接触し難くなり、スクレーパ27の掻き落とし性能が低下するおそれがある。押圧部Pのうち底板15aに押し当たる部分の厚さが小さいと、押圧部Pの下端に対する処理灰の固着は生じ難い傾向がある。このため、スクレーパ27Aの押圧部Pのうち底板15aに押し当たる部分の厚さを小さくすることで、押圧部Pの下端に対する処理灰の固着を抑制し、スクレーパ27Aの掻き落とし性能を維持できる。更に、このスクレーパ27Aにより固着層をしっかりと掻き落とすことで、他のスクレーパ27Bの押圧部Pに対する処理灰の固着も抑制し、他のスクレーパ27Bの掻き落とし性能も維持できる。
【0040】
スクレーパ27Aの本体部材29において、後面の下部には、下方に向かうに従ってクリーナチップ36に近づくように傾斜した斜面29gが形成されている。これにより、クリーナチップ36と本体部材29との段差が軽減され、クリーナチップ36と本体部材29との段差部に処理灰が溜り難くなっている。
【0041】
図10に示されるように、スクレーパ27Aの本体部材29とクリーナチップ36とは、左右方向に並ぶ複数箇所において(
図9参照)、ボルト37及びナット38で締結されている。本体部材29の斜面29gのうち、ボルト37及びナット38に対応する部分には、ザグリ孔29hが形成され、ボルト37の頭部又はナット38がザグリ孔29hに収容されている。
【0042】
スクレーパ27と底板15aとの接触面積、スクレーパ27の質量等を適宜変更することで、スクレーパ27が底板15aに押し当たる圧力を適宜調整できる。スクレーパ27が底板15aに押し当たる圧力の実測値は、スクレーパ27の位置等によって変動する。そこで、例えば、スクレーパ27の質量と、2本の単位鎖線28の質量とを合算し、それをスクレーパ27と底板15aとの接触面積で除することで基準圧力を算出し、基準圧力の値を適宜調整してもよい。スクレーパ27の質量には、継手部材31、ボルト32,34,37及びナット33,35,38の質量を含む。処理灰コンベヤ7における好適な設定例として、スクレーパ27Aの基準圧力を0.4〜0.7kg/cm
2とすることが挙げられる。
【0043】
また、スクレーパ27の個数に対するスクレーパ27Aの個数の割合も、適宜変更可能である。スクレーパ27の個数に対するスクレーパ27Aの個数の割合を増やすと、処理灰の固着層の掻き落とし性能が向上する一方で、処理灰コンベヤ7の駆動エネルギーが増加する傾向がある。スクレーパ27の個数に対するスクレーパ27Aの個数の割合は、これらのことを考慮して設定されることが好ましい。処理灰コンベヤ7における好適な設定例として、5個のスクレーパ27に1個の割合でスクレーパ27Aを設けることが挙げられる。
【0044】
続いて、ホイール17,18について詳細に説明する。
図11及び
図12に示されるように、ホイール17,18は、放射状に複数の凸部T1を有する外形を呈している。また、ホイール17,18の外周には、径方向に開口する溝部D1が形成されている。チェーン16は、中心軸が左右方向に沿う環体R1と、中心軸が左右方向に直交する環体R2とが交互に並ぶように保持される。環体R1はホイール17,18の溝部D1に入り込み、ホイール17,18の凸部T1は環体R2の間に入り込む。これにより、ホイール17,18とチェーン16とが噛み合い、連動する。なお、
図12は、スクレーパ27を省略して描かれている。
【0045】
左右の側板15b,15cの内面には、駆動軸20を囲む筒状部40A,40Bがそれぞれ設けられると共に、従動軸25を囲む筒状部41A,41Bがそれぞれ設けられている。駆動軸20を囲む筒状部40A,40Bには、2個の駆動ホイール17の溝部D1にそれぞれ挿入された2個の爪部43を有するチェーンホイールクリーナ42が固定されている。チェーンホイールクリーナ42は、筒状部40A,40Bの周面から後方に突出する支持アーム44A,44Bと、支持アーム44A,44Bに架け渡された桁部45とを有し、2個の爪部43は桁部45に固定されている。チェーンホイールクリーナ42は、駆動ホイール17の回転に伴って、爪部43により溝部D1内の処理灰を掻き出す。
【0046】
従動軸25を囲む筒状部41A,41Bには、2個の従動ホイール18の溝部D1にそれぞれ挿入された2個の爪部47を有するチェーンホイールクリーナ46が固定されている。チェーンホイールクリーナ46は、筒状部41A,41Bの周面から前方に突出する支持アーム48A,48Bと、支持アーム48A,48Bに架け渡された桁部49とを有し、2個の爪部47は桁部49に固定されている。チェーンホイールクリーナ46は、従動ホイール18の回転に伴って、爪部47により溝部D1内の処理灰を掻き出す。
【0047】
チェーンホイールクリーナ42,46により、溝部D1が処理灰によって埋まってしまうことを防止できる。これにより、ホイール17,18とチェーン16との円滑な動作を維持できる。
【0048】
以上のように構成された処理灰コンベヤ7では、ホイール17,18の間で底板15a側に位置する押圧部Pが処理灰を搬送する。チェーンホイール17,18の間で底板15a側に位置する全ての押圧部Pは重力により底板15aに押し当たる。このため、底板15a上に形成された処理灰の固着層が押圧部Pにより掻き落とされる。また、押圧部Pが重力により底板15aに押し当たることから、スクレーパ27を強制的に底板15aに近づけるための規制部材を設ける必要がない。仮にこのような規制部材が設けられていると、固着層により押圧部Pが押し上げられたときに、スクレーパ27が規制部材に押し当たって大きな摩擦抵抗が生じる。規制部材を設けなければ、このような摩擦抵抗が発生しないので、チェーン16及びスクレーパ27の円滑な動きを維持して固着層を掻き落とし続けることができる。従って、固着層の成長を抑制し、メンテナンスの頻度を十分に低減させることができる。
【0049】
なお、チェーン16は、複数の環体39,39Aを連結して構成されたリンクチェーンである。リンクチェーンの構造は、ローラチェーン等の構造に比べ単純であり、構成要素同士の隙間が少ない。仮に、ローラチェーンを用いると、構成要素同士の隙間に入り込んだ処理灰により、チェーン16の動作抵抗が大きくなる場合がある。チェーン16の動作抵抗が大きくなると、重力に抵抗する力が大きくなることから、各スクレーパ27を底板15aに押し当てる力が低下する。リンクチェーンでは、このような現象が生じ難いため、各スクレーパ27を底板15aに押し当てる力を確保できる。このことも、固着層の成長の抑制に寄与する。
【0050】
また、本実施形態は、処理灰の搬送に用いられている。処理灰は付着性が強く、コンベヤ内で固着層を形成し易い。このため、処理灰の搬送に用いられることで、上述した効果がより顕著となっている。
【0051】
続いて、
図13及び
図14を参照してスクレーパ27の変形例について説明する。
図13及び
図14は、スクレーパ27が上側の鎖線部CL2に位置する状態を示している。
図13及び
図14に示される変形例では、クリーナチップ36を有するスクレーパ27Aの上部(図中では下部)に、他のクリーナチップ51,52が更に設けられている。クリーナチップ51,52は、略長方形の板状部材であり、長辺が左右方向に沿うように配置されている。クリーナチップ51,52は、本体部材29の上部の左側及び右側にそれぞれ配置され、本体部材29の後面側に重ねられている。クリーナチップ51,52と本体部材29とは、ボルト及びナット等(不図示)によって締結されている。
【0052】
クリーナチップ51,52の上端面51a,52aは、上端面29cから張り出している。クリーナチップ51,52の厚さは、本体部材29の厚さに比べ小さい。クリーナチップ51,52は、スクレーパ27Aが上側の鎖線部CL2に位置するときにガイド部26A,26Bの上面に接触する。クリーナチップ51,52とガイド部26A、26Bとの接触面積は、スクレーパ27Bの本体部材29とガイド部26A,26Bとの接触面積に比べ小さい。
【0053】
クリーナチップ51,52を取り付けることにより、ガイド部26A,26B上の処理灰の固着層をよりしっかりと掻き落とすことができ、メンテナンスの頻度を一層低減させることができる。なお、クリーナチップ36とクリーナチップ51,52とは、別のスクレーパ27に取り付けられていてもよい。
【0054】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、クリーナチップ36,51,52は、本体部材29と一体化されていてもよい。
【0055】
また、本発明に係るチェーン式スクレーパコンベヤは、処理灰コンベヤ以外のコンベヤにも適用可能である。例えば、灰処理施設には、複数の処理灰バンカ8に処理灰を振り分ける分配コンベヤを有している場合がある。
図15は、本発明に係るチェーン式スクレーパコンベヤを適用した分配コンベヤ53を示す断面図である。
図15に示される分配コンベヤ53は、処理灰コンベヤ7と同様に、ケーシング15と、ケーシング15に内蔵された2個の環状のチェーン16、2個の駆動ホイール17及び2個の従動ホイール18と、駆動装置19とを備えている。分配コンベヤ53では、処理灰コンベヤ7に比べ、受入部15dがケーシング15の中央寄りに設けられ、ケーシング15の両端部に排出部15f,15gが設けられている。
【0056】
分配コンベヤ53では、下側の鎖線部CL1に位置するスクレーパ27が排出部15f側に移動するようにチェーン16が循環すると、処理灰が排出部15fから排出され、一方の処理灰バンカ8に処理灰が供給される。この逆側にチェーン16が循環すると、処理灰が排出部15gから排出され、他方の処理灰バンカ8に処理灰が供給される。このような分配コンベヤ53においても、メンテナンスの頻度を低減させることができる。