特許第6025554号(P6025554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025554
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】分散型電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   H02J3/38 110
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-283354(P2012-283354)
(22)【出願日】2012年12月26日
(65)【公開番号】特開2014-128120(P2014-128120A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120352
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100128901
【弁理士】
【氏名又は名称】東 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】桝本 幸嗣
(72)【発明者】
【氏名】濱走 正美
【審査官】 高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−281672(JP,A)
【文献】 特開2004−072813(JP,A)
【文献】 特開平07−107744(JP,A)
【文献】 特開平04−265632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 − 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に接続される、第1電圧線及び第2電圧線と中性線とを有する単相3線式の交流線と、前記交流線に対して第1接続箇所で接続される補助電源装置と、前記交流線に対して第2接続箇所で接続される発電装置と、前記交流線の前記第2接続箇所に対して接続される電力消費装置とを備え、前記交流線に対する前記電力系統の接続箇所から見て下流側に向かって前記第1接続箇所と前記第2接続箇所とがその並び順で設けられている分散型電源システムであって、
前記電力系統側から前記電力消費装置へ向かう電力を正の電力とした場合において、前記電力系統から前記交流線に対する電力供給を行うことができる非停電時に、
前記発電装置は、発電部と、前記第1電圧線を通って前記第1接続箇所側から前記第2接続箇所へ向かう電力と前記第2電圧線を通って前記第1接続箇所側から前記第2接続箇所へ向かう電力との合計電力が最小になり且つ負の電力とはならないように、前記第1電圧線及び前記第2電圧線に対して同一の電力を供給するように前記発電部の発電電力を制御する発電制御部を有し、
前記補助電源装置は、蓄電部と、前記第1電圧線を通って前記第1接続箇所側から前記第2接続箇所へ向かう電力の正負の符号と前記第2電圧線を通って前記第1接続箇所側から前記第2接続箇所へ向かう電力の正負の符号とが互いに異なるとき、前記第1電圧線を通って前記電力系統側から前記第1接続箇所へ向かう電力と前記第2電圧線を通って前記電力系統側から前記第1接続箇所へ向かう電力との合計電力が負の電力とはならないように、前記蓄電部から前記第1電圧線及び前記第2電圧線に対する出力電力を零以上の値に各別に調節する動作制御部を有する分散型電源システム。
【請求項2】
前記補助電源装置の前記動作制御部は、
前記第1接続箇所から前記第2接続箇所へ向かう電力の符号が負となる方の前記第1電圧線又は前記第2電圧線への前記蓄電部からの出力電力を零に調節し、
前記第1接続箇所から前記第2接続箇所へ向かう電力の符号が正となる方の前記第1電圧線又は前記第2電圧線への前記蓄電部からの出力電力を、前記第1電圧線を通って前記電力系統側から前記第1接続箇所へ向かう電力と前記第2電圧線を通って前記電力系統側から前記第1接続箇所へ向かう電力との合計電力が最小になり且つ負の電力とはならないように調節する請求項1に記載の分散型電源システム。
【請求項3】
前記補助電源装置の前記動作制御部は、
前記第1電圧線を通って前記電力系統側から前記第1接続箇所へ向かう電力と前記第2電圧線を通って前記電力系統側から前記第1接続箇所へ向かう電力との合計電力が最小になり且つ負の電力とはならないように、前記蓄電部から前記第1電圧線及び前記第2電圧線に対する出力電力を互いに同じ値に調節する請求項1に記載の分散型電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統に接続される、第1電圧線及び第2電圧線と中性線とを有する単相3線式の交流線と、交流線に対して第1接続箇所で接続される補助電源装置と、交流線に対して第2接続箇所で接続される発電装置と、交流線の第2接続箇所に接続される電力消費装置とを備え、交流線に対する電力系統の接続箇所から見て下流側に向かって第1接続箇所と第2接続箇所とがその並び順で設けられている分散型電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、商用の電力系統に接続される交流線に蓄電部を有する補助電源装置と発電装置と電力消費装置とが接続され、電力系統と補助電源装置と発電装置とから電力消費装置への電力供給が可能に構成されている分散型電源システムが記載されている。特に、特許文献1には、補助電源装置が有する蓄電部の出力能力の大小に応じて、補助電源装置が有する蓄電部を出力作動させるか、或いは、発電装置を発電運転させるかを切り換えることで、電力消費装置への電力供給を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−333386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には記載されていないが、上述したような補助電源装置、発電装置及び電力消費装置が接続される交流線として、2つの電圧線と1つの中性線とで構成される単相3線式の交流線が用いられる。図4は、補助電源装置と発電装置と電力消費装置とが、単相3線式の交流線に接続された分散型電源システムを概略的に描いた図である。尚、図示は省略しているが、第1電圧線及び第2電圧線と中性線とを有する単相3線式の交流線と補助電源装置及び発電装置とを接続するとき、それらの間にはインバータやコンバータなどの電力変換部が設けられる。そして、その電力変換部によって、補助電源装置から交流線への出力電力や、発電装置から交流線への供給電力(発電電力)が調節される。
【0005】
電力変換部を介して補助電源装置や発電装置を単相3線式の交流線に接続する場合、具体的には、電力変換部が単一の電力変換回路部で構成されその単一の電力変換回路部が第1電圧線及び第2電圧線に共通に接続される構成や、電力変換部が2つの電力変換回路部で構成され、その一方が第1電圧線に接続され、他方が第2電圧線に接続される構成が考えられる。
【0006】
前者の場合、電力変換部(単一の電力変換回路部)は、第1電圧線及び第2電圧線との間でやり取りする電力を共通して調節することはできるが、第1電圧線及び第2電圧線との間でやり取りする電力を各別に、即ち、片相毎に調節することはできない。後者の場合、電力変換部(2つの電力変換回路部)は、各電力変換回路部を用いて、第1電圧線及び第2電圧線との間でやり取りする電力を各別に、即ち、片相毎に調節することができる。
つまり、前者の場合は、片相毎に電力を調節できないものの、電力変換部の装置コストを低くできるという長所がある。後者の場合、電力変換部の装置コストが高くなるものの、片相毎に電力を調節できるという長所がある。
【0007】
そこで、本願では、発電装置と交流線との間の接続には単一の電力変換回路部を有する電力変換部を採用し、補助電源装置と交流線との間の接続には2つの電力変換回路部を有する電力変換部を採用した分散型電源システムを構築することとした。そして、このような分散型電源システムを運用する場合の課題を考察した。
【0008】
図4は、分散型電源システムの運用例を説明する図である。具体的には、電力消費装置30へ補助電源装置10及び発電装置20からどれだけの電力が供給されるかを示す例である。但し、発電装置20の定格供給電力は700W(片相につき350W)であり、補助電源装置10の定格出力電力は片相につき1200W(両相で2400W)であるとする。また、第1電圧線2aと中性線2cの間の電圧、及び、第2電圧線2bと中性線2cとの間の電圧はともにAC100Vであるので、図中に記載する電流値とAC100Vとの積が、図中に記載する電力値となる。
【0009】
図4(a)は、電力消費装置30を構成する第1消費部31の需要電力及び第2消費部32の需要電力が共に650W(両相合計で1300W)である場合の例である。ここで、図4に示す発電装置20や補助電源装置10の内部の構成は図1に示す通りである。
この場合、発電装置20の発電制御部22は、第1電圧線2aを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力と第2電圧線2bを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力との合計電力が最小になり且つ負の電力とはならないように、第1電圧線2a及び第2電圧線2bに対して同一の電力を供給するように発電電力を制御する。具体的には、第1電圧線2aに対して350Wの電力を供給し、第2電圧線2bに対して350Wの電力を供給する。但し、発電装置20から定格供給電力に相当する合計700Wの電力を供給しても、電力消費装置30の需要電力である1300Wには満たない。
【0010】
その結果、第1消費部31における不足電力(即ち、第1電圧線2aを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力)は300Wとなり、第2消費部32における不足電力(即ち、第2電圧線2bを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力)は300Wとなる。
そして、補助電源装置10からこれら300Wずつの電力を出力することで、第1電圧線2aを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力が零になり、第2電圧線2bを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力が零になる。
【0011】
次に、図4(b)に示すのは、電力消費装置30を構成する第1消費部31の需要電力が1200Wであり及び第2消費部32の需要電力が100W(両相合計で1300W)である場合の例である。
【0012】
この場合も、発電装置20の発電制御部22は、第1電圧線2aを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力と第2電圧線2bを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力との合計電力が最小になり且つ負の電力とはならないように、第1電圧線2a及び第2電圧線2bに対して同一の電力を供給するように発電電力を制御する。具体的には、第1電圧線2aに対して350Wの電力を供給し、第2電圧線2bに対して350Wの電力を供給する。但し、発電装置20から定格供給電力に相当する合計700Wを供給しても、電力消費の需要電力である1300Wには満たない。
【0013】
但し、図4(b)に示した例では、第1電圧線2aと中性線2cとの間での第1消費電力である1200Wと、第2電圧線2bと中性線2cとの間での第2消費電力である100Wとが異なる。その結果、発電装置20から第1電圧線2a及び第2電圧線2bに対して同一の電力(夫々に対して350W)を供給すると、第1電圧線2aを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力と、第2電圧線2bを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力とが異なってしまう。即ち、図4(b)に示した例では、第1電圧線2aを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力は+850W(不足電力)であり、第2電圧線2bを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力は−250W(余剰電力)というように、両者の電力の正負の符号が異なってしまう。
【0014】
このような場合、−250Wの余剰電力が発生しているため、補助電源装置10から第2電圧線2bには電力を出力せず、補助電源装置10から第1電圧線2aへ上述した不足電力である850Wだけ出力すると、第1電圧線2aを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力は零(0W)となる。尚、補助電源装置10が、蓄電部12から交流線2への一方向の電力出力を主目的としている場合、電力変換部13は蓄電部12から交流線2への出力電力の変換を行うことができればよく、交流線2から蓄電部12への逆方向の電力の変換を行う必要はない。即ち、電力変換部13は双方向性を有している必要はないため、使用する半導体スイッチング素子は双方向性を有するものでなくてよい。つまり、蓄電部12への充電は電力変換部13とは別の回路(図示せず)を用いて行われる。従って、電力変換部13が蓄電部12から交流線2への一方向の出力電力の変換を行うことのみができる場合、第2電圧線2bを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力は−250W(余剰電力)のまま残される。その結果、第1電圧線2aを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力と第2電圧線2bを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力との合計電力が負の電力(−250W)になってしまう。即ち、電力系統1へ250Wの電力の逆潮流が発生してしまうが、太陽光発電により得られる電力や風力発電により得られる電力など、自然エネルギーを利用した発電電力しか一般的には逆潮流が認められていないという状況では、上記のような発電装置20からの電力や補助電源装置10からの電力の逆潮流は認められないという問題がある。
【0015】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電力系統への逆潮流の発生を防止可能な分散型電源システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための本発明に係る分散型電源システムの特徴構成は、電力系統に接続される、第1電圧線及び第2電圧線と中性線とを有する単相3線式の交流線と、前記交流線に対して第1接続箇所で接続される補助電源装置と、前記交流線に対して第2接続箇所で接続される発電装置と、前記交流線の前記第2接続箇所に接続される電力消費装置とを備え、前記交流線に対する前記電力系統の接続箇所から見て下流側に向かって前記第1接続箇所と前記第2接続箇所とがその並び順で設けられている分散型電源システムであって、
前記電力系統側から前記電力消費装置へ向かう電力を正の電力とした場合において、前記電力系統から前記交流線に対する電力供給を行うことができる非停電時に、
前記発電装置は、発電部と、前記第1電圧線を通って前記第1接続箇所側から前記第2接続箇所へ向かう電力と前記第2電圧線を通って前記第1接続箇所側から前記第2接続箇所へ向かう電力との合計電力が最小になり且つ負の電力とはならないように、前記第1電圧線及び前記第2電圧線に対して同一の電力を供給するように前記発電部の発電電力を制御する発電制御部を有し、
前記補助電源装置は、蓄電部と、前記第1電圧線を通って前記第1接続箇所側から前記第2接続箇所へ向かう電力の正負の符号と前記第2電圧線を通って前記第1接続箇所側から前記第2接続箇所へ向かう電力の正負の符号とが互いに異なるとき、前記第1電圧線を通って前記電力系統側から前記第1接続箇所へ向かう電力と前記第2電圧線を通って前記電力系統側から前記第1接続箇所へ向かう電力との合計電力が負の電力とはならないように、前記蓄電部から前記第1電圧線及び前記第2電圧線に対する出力電力を零以上の値に各別に調節する動作制御部を有する点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、補助電源装置の動作制御部は、第1電圧線を通って電力系統側から第1接続箇所へ向かう電力と第2電圧線を通って電力系統側から第1接続箇所へ向かう電力との合計電力が負の電力とはならないように、蓄電部から第1電圧線及び第2電圧線に対する出力電力を零以上の値に各別に調節する。つまり、第1電圧線を通って電力系統側から第1接続箇所へ向かう電力と第2電圧線を通って電力系統側から第1接続箇所へ向かう電力との合計電力が負の電力となる状況、即ち、逆潮流が発生する状況を防止できる。
加えて、交流線に対する電力系統の接続箇所から見て下流側に向かって第1接続箇所と第2接続箇所とがその並び順で設けられており、発電装置の発電制御部は、第1電圧線を通って第1接続箇所側から第2接続箇所へ向かう電力と第2電圧線を通って第1接続箇所側から第2接続箇所へ向かう電力との合計電力が最小になり且つ負の電力とはならないように発電部の発電電力を制御する。つまり、発電装置は、電力消費装置の需要電力を賄うための最大の発電電力で運転する。そして、補助電源装置は、発電装置で賄い切れなかった電力を補助的に出力するように動作することになる。以上のように、本特徴構成の分散型電源システムは、発電装置を高い稼働率で運用でき、且つ、補助電源装置の負荷が小さくなるという点で好ましい。例えば、発電装置が、固体酸化物形燃料電池のように系統電力よりも発電効率が高い場合や、エンジンと発電機とを組み合わせて熱と電力とを得るコージェネレーション装置のように発電効率と排熱効率とを合わせた総合効率が系統電力の発電効率よりも高い場合には、発電装置を高い稼働率で運用できると運転メリット(省エネルギー性)が高くなるという利点がある。他には、補助電源装置の蓄電部に、例えば夜間(即ち、電気料金の安い時間帯)に蓄電し、昼間(即ち、電気料金の高い時間帯)に放電するように設定すると、補助電源装置が無い場合に比べて運転メリット(経済性)が高くなるという利点がある。
従って、電力消費装置への電力供給を行いつつ、電力系統への逆潮流の発生を防止できる分散型電源システムを提供できる。
【0018】
本発明に係る分散型電源システムの別の特徴構成は、前記補助電源装置の前記動作制御部は、前記第1接続箇所から前記第2接続箇所へ向かう電力の符号が負となる方の前記第1電圧線又は前記第2電圧線への前記蓄電部からの出力電力を零に調節し、前記第1接続箇所から前記第2接続箇所へ向かう電力の符号が正となる方の前記第1電圧線又は前記第2電圧線への前記蓄電部からの出力電力を、前記第1電圧線を通って前記電力系統側から前記第1接続箇所へ向かう電力と前記第2電圧線を通って前記電力系統側から前記第1接続箇所へ向かう電力との合計電力が最小になり且つ負の電力とはならないように調節する点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、補助電源装置の動作制御部は、符号が負となる方への蓄電部からの出力電力を零とした上で、第1接続箇所から第2接続箇所へ向かう電力の符号が正となる方の第1電圧線又は第2電圧線への出力電力を調節するだけで、第1電圧線を通って電力系統側から第1接続箇所へ向かう電力と第2電圧線を通って電力系統側から第1接続箇所へ向かう電力との合計電力を最小にし、且つ、負の電力とはならないようにすることができる。その結果、電力消費装置への電力供給を行いつつ、電力系統への逆潮流の発生を防止できる。
【0020】
本発明に係る分散型電源システムの更に別の特徴構成は、前記補助電源装置の前記動作制御部は、前記第1電圧線を通って前記電力系統側から前記第1接続箇所へ向かう電力と前記第2電圧線を通って前記電力系統側から前記第1接続箇所へ向かう電力との合計電力が最小になり且つ負の電力とはならないように、前記蓄電部から前記第1電圧線及び前記第2電圧線に対する出力電力を互いに同じ値に調節する点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、補助電源装置の動作制御部は、蓄電部から第1電圧線及び第2電圧線に対する出力電力を互いに同じ値に調節して、第1電圧線を通って電力系統側から第1接続箇所へ向かう電力と第2電圧線を通って電力系統側から第1接続箇所へ向かう電力との合計電力が最小になり且つ負の電力とはならないようにすることができる。その結果、電力消費装置への電力供給を行いつつ、電力系統への逆潮流の発生を防止できる。更に、蓄電部から第1電圧線及び第2電圧線の両方に出力が行われるので、第1電圧線及び第2電圧線の一方のみに出力を行う場合に比べて、蓄電部からの出力電力の合計を大きくすることができる。その結果、電力系統から供給される電力(即ち、買電の電力)を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】分散型電源システムの構成を示す図である。
図2】本実施形態の分散型電源システムの運用例を説明する図である。
図3】本実施形態の分散型電源システムの運用例を説明する図である。
図4】比較例の分散型電源システムの運用例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に図面を参照して本発明に係る分散型電源システムについて説明する。図1は、分散型電源システムの構成を示す図である。
この分散型電源システムは、電力系統1に接続される、第1電圧線2a及び第2電圧線2bと中性線2cとを有する単相3線式の交流線2と、交流線2に対して第1接続箇所P1で接続される蓄電部12を有する補助電源装置10と、交流線2に対して第2接続箇所P2で接続される発電装置20と、交流線2に対して第3接続箇所P3で接続される電力消費装置30とを備える。交流線2に対する電力系統1の接続箇所から見て下流側に向かって第1接続箇所P1と第2接続箇所P2と第3接続箇所P3とがその並び順で設けられている。尚、図1において、電力消費装置30は第2接続箇所P2に接続されていると見なすことができる。つまり、発電装置20と電力消費装置30の両方が、交流線2に対して第2接続箇所P2で接続されていると見なすことができる。
【0024】
本実施形態において、電力系統1側から電力消費装置30へ向かう電力を正の電力とする。また、電力系統1から交流線2に対する電力供給を行うことができる非停電時の場合を考える。
【0025】
本実施形態の例において、第1電圧線2aと中性線2cとの間の電圧はAC100Vであり、第2電圧線2bと中性線2cとの間の電圧もAC100Vである。更に、第1電圧線2aと第2電圧線2bとの間の電圧はAC200Vである。図1では、電力消費装置30として、第1電圧線2aと中性線2cとの間に接続されている100V負荷としての第1消費部31と、第2電圧線2bと中性線2cとの間に接続されている100V負荷としての第2消費部32とを備える。
【0026】
〔発電装置20〕
発電装置20は、発電部21と、その発電部21の発電電力(即ち、交流線2への供給電力)を制御する発電制御部22とを有する。発電部21は、燃料電池や、エンジンの駆動力によって動作する発電機など、自身の発電電力を制御可能な装置を用いて構成できる。図示は省略するが、発電装置20は、発電部21での発電電力を所望の電圧、周波数、位相などに変換して交流線2に供給するための電力変換部も有している。
【0027】
発電制御部22による発電電力の制御について説明すると、発電制御部22は、第1電圧線2aを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力と第2電圧線2bを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力との合計電力が最小になり且つ負の電力とはならない(即ち、逆潮流しない)ように、第1電圧線2a及び第2電圧線2bに対して同一の電力を供給するように発電電力を制御する。発電装置20の発電制御部22は、第1電圧線2aを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力と、第2電圧線2bを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力とを、カレントトランス(図示せず)の検出結果を参照して(即ち、第1電圧線2a、第2電圧線2b上の第1接続箇所P1と第2接続箇所P2との間を流れる電流値に基づいて導出できる電力を参照して)、監視している。
【0028】
〔補助電源装置10〕
補助電源装置10は、電気を蓄えることのできる蓄電部12と、その蓄電部12から交流線2への出力電力を調節可能な電力変換部13と、電力変換部13の動作を制御する動作制御部11とを有する。補助電源装置10の動作制御部11は、第1電圧線2aを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力と、第2電圧線2bを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力と、第1電圧線2aを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力と、第2電圧線2bを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力とを、カレントトランス(図示せず)の検出結果を参照して(即ち、第1接続箇所P1よりも電力系統1の側の第1電圧線2a、第2電圧線2b上を流れる電流値に基づいて導出できる電力、第1接続箇所P1と第2接続箇所P2との間の第1電圧線2a、第2電圧線2b上を流れる電流値に基づいて導出できる電力を参照して)、監視している。
【0029】
蓄電部12は、蓄電池(化学電池)や電気二重層キャパシタなど、蓄電機能を有する各種機器で構成することができる。
【0030】
電力変換部13は、第1DC/DCコンバータ回路14a及び第1インバータ回路15aで構成される組と、第2DC/DCコンバータ回路14b及び第2インバータ回路15bで構成される組とで構成される。第1DC/DCコンバータ回路14a及び第1インバータ回路15aの組は、蓄電部12と第1電圧線2a及び中性線2cとの間に接続され、その結果、第1電圧線2aと中性線2cとの間への出力電力を調節できる。第2DC/DCコンバータ回路14b及び第2インバータ回路15bの組は、蓄電部12と第2電圧線2b及び中性線2cとの間に接続され、その結果、第2電圧線2bと中性線2cとの間への出力電力を調節できる。これら第1DC/DCコンバータ回路14a、第1インバータ回路15a、第2DC/DCコンバータ回路14b、第2インバータ回路15bは半導体スイッチング素子などを用いて構成される。半導体スイッチング素子のスイッチング動作は、動作制御部11が制御する。つまり、蓄電部12から交流線2への出力電力は動作制御部11が制御する。
【0031】
本実施形態において、交流線2と蓄電部12とを絶縁するために、第1DC/DCコンバータ回路14a及び第1インバータ回路15aの少なくとも何れか一方は絶縁型の回路構成となっており、同じく第2DC/DCコンバータ回路14b及び第2インバータ回路15bの少なくとも何れか一方も絶縁型の回路構成となっている。加えて、本実施形態では、蓄電部12から交流線2への一方向の電力出力を主目的としているため、第1DC/DCコンバータ回路14a及び第2DC/DCコンバータ回路14bは、蓄電部12から交流線2への出力電力の変換を行うことができればよく、交流線2から蓄電部12への逆方向の電力の変換を行う必要はない。即ち、第1DC/DCコンバータ回路14a及び第2DC/DCコンバータ回路14bは双方向性を有している必要はないため、回路の作製に必要なコストを小さくすることができる。
【0032】
更に、本実施形態の分散型電源システムにおいて、補助電源装置10の動作制御部11は、第1電圧線2aを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力の正負の符号と第2電圧線2bを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力の正負の符号とが互いに異なるとき、第1電圧線2aを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力と第2電圧線2bを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力との合計電力が負の電力とはならないように、蓄電部12から第1電圧線2a及び第2電圧線2bに対する出力電力を零以上の値に各別に調節する。
以下に、この制御の内容について具体例を挙げて説明する。
【0033】
図2は、分散型電源システムの運用例を説明する図であり、具体的には、補助電源装置10の動作制御部11の動作例を説明する図である。但し、発電装置20の定格供給電力は700W(片相につき350W)であり、補助電源装置10の定格出力電力は片相につき1200W(両相で2400W)であるとする。この仮定は、先に図4に関して説明した仮定と同様である。また、第1電圧線2a、2bと中性線2cとの間の電圧はAC100Vであるので、図中に記載する電流値とAC100Vとの積が、図中に記載する電力値となる。
【0034】
図2(a)に示すのは、電力消費装置30を構成する第1消費部31の需要電力が1200Wであり及び第2消費部32の需要電力が100W(両相合計で1300W)である場合の例である。
【0035】
この場合、発電装置20の発電制御部22は、第1電圧線2aを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力と第2電圧線2bを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力との合計電力が最小になり且つ負の電力とはならないように、第1電圧線2a及び第2電圧線2bに対して同一の電力を供給するように発電電力を制御する。本例では、発電装置20は、第1電圧線2aに対して350Wの電力を供給し、第2電圧線2bに対して350Wの電力を供給する。但し、発電装置20からそれだけの電力(合計700W)を供給しても、電力消費装置30の需要電力である1300Wには満たない。更に、発電装置20から第1電圧線2a及び第2電圧線2bに対して同一の電力(350W)を供給すると、第1電圧線2aを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力の正負の符号と、第2電圧線2bを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力の正負の符号とが異なってしまう。具体的には、図2(a)に示した例では、第1電圧線2aを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力は+850Wであり、第2電圧線2bを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力は−250Wというように、両者の電力の正負の符号が異なる。
【0036】
このように第1電圧線2aを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力の正負の符号と第2電圧線2bを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力の正負の符号とが互いに異なるとき、補助電源装置10の動作制御部11は、第1電圧線2aを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力と第2電圧線2bを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力との合計電力が負の電力とはならないように(即ち、逆潮流しないように)、蓄電部12から第1電圧線2a及び第2電圧線2bに対する出力電力を零以上の値に各別に調節する。そして、本実施形態では、補助電源装置10の動作制御部11は、第1接続箇所P1から第2接続箇所P2へ向かう電力の符号が負となる方の第1電圧線2a又は第2電圧線2bへの出力電力を零に調節し、第1接続箇所P1から第2接続箇所P2へ向かう電力の符号が正となる方の第1電圧線2a又は第2電圧線2bへの出力電力を、第1電圧線2aを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力と第2電圧線2bを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力との合計電力が最小になり且つ負の電力とはならないように調節する。
【0037】
具体的には、図2(a)に示すように、動作制御部11は、補助電源装置10から第1電圧線2aへ600Wの出力を行い、且つ、補助電源装置10と第2電圧線2bとの間で出力を行わないような出力制御を行う。その結果、第1電圧線2aを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力は+250Wとなり、第2電圧線2bを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力とは−250Wとなって、それらの合計電力は零(0W)となる。
従って、電力系統1への逆潮流を防止できる。
【0038】
次に、図2(b)を参照して、動作制御部11による出力制御の別の例を説明する。尚、この場合も、電力消費装置30を構成する第1消費部31の需要電力が1200Wであり及び第2消費部32の需要電力が100W(両相合計で1300W)である場合の例である。
【0039】
図2(b)に示す例でも、発電装置20の発電制御部22は、第1電圧線2aを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力と第2電圧線2bを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力との合計電力が最小になり且つ負の電力とはならないように、第1電圧線2a及び第2電圧線2bに対して同一の電力を供給するように発電電力を制御する。具体的には、第1電圧線2aに対して350Wの電力を供給し、第2電圧線2bに対して350Wの電力を供給する。その結果、第1電圧線2aを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力は+850Wであり、第2電圧線2bを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力は−250Wというように、両者の電力の正負の符号が異なる。
【0040】
この場合、補助電源装置10の動作制御部11は、第1電圧線2aを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力と第2電圧線2bを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力との合計電力が最小になり且つ負の電力とはならないように、蓄電部12から第1電圧線2a及び第2電圧線2bに対する出力電力を互いに同じ値に調節する。
具体的には、図2(b)に示すように、動作制御部11は、補助電源装置10から第1電圧線2aへ300Wの出力を行い、且つ、補助電源装置10から第2電圧線2bへも300Wの出力を行う。その結果、第1電圧線2aを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力は+550Wとなり、第2電圧線2bを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力とは−550Wとなって、それらの合計電力は零(0W)となる。
従って、図2(b)に示す運用例の場合も、電力系統1への逆潮流を防止できる。
【0041】
図3は、本実施形態の分散型電源システムの運用例を説明する図であり、具体的には、電力消費装置30を構成する第1消費部31の需要電力が3100Wであり及び第2消費部32の需要電力が100W(両相合計で3200W)である場合の例である。そして、図3(a)に示すのは、図2(a)と同様の制御手法を用いた場合の例であり、図3(b)に示すのは、図2(b)と同様の制御手法を用いた場合の例である。図2で説明した場合と同様に、発電装置20の定格供給電力は700W(片相につき350W)であり、補助電源装置10の定格出力電力は片相につき1200W(両相で2400W)であるとする。
【0042】
図3(a)に示した場合、発電装置20の発電制御部22は、第1電圧線2aを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力と第2電圧線2bを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力との合計電力が最小になり且つ負の電力とはならないように、第1電圧線2a及び第2電圧線2bに対して同一の電力を供給するように発電電力を制御する。具体的には、発電装置20は、第1電圧線2aに対して350Wの電力を供給し、第2電圧線2bに対して350Wの電力を供給する。その結果、第1電圧線2aを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力は+2750Wであり、第2電圧線2bを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力は−250Wというように、両者の電力の正負の符号が異なる。
【0043】
この場合、図2(a)と同様の制御手法を用いると、図3(a)に示すように、動作制御部11は、補助電源装置10から第1電圧線2aへ1200W(定格出力電力)の出力を行い、且つ、補助電源装置10と第2電圧線2bとの間で出力を行わないような出力制御を行う。その結果、第1電圧線2aを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力は+1550Wとなり、第2電圧線2bを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力とは−250Wとなって、それらの合計電力、即ち電力系統1から供給を受ける電力は+1300Wとなる。
従って、電力系統1への逆潮流を防止できたものの、電力系統1から供給を受ける電力が大きくなってしまう。
【0044】
これに対して、図3(b)に示す例では、動作制御部11は、補助電源装置10から第1電圧線2aへ1200Wの出力を行い、且つ、補助電源装置10から第2電圧線2bへも1200Wの出力を行う。その結果、第1電圧線2aを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力は+1550Wとなり、第2電圧線2bを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力とは−1450Wとなって、それらの合計電力、即ち電力系統1から供給を受ける電力は+100Wとなる。
従って、電力系統1への逆潮流を防止できると共に、電力系統1から供給を受ける電力を低くできる。
【0045】
<別実施形態>
上記実施形態では、補助電源装置10の動作制御部11の動作例について、具体的な数値を挙げて説明したが、それらの数値は例示目的で記載したものであり、本発明がそれの数値に限定されるわけではない。他にも、第1電圧線2aと中性線2cとの間の電圧、及び、第2電圧線2bと中性線2cとの間の電圧は、上記実施形態で例示したAC100Vに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、電力系統への逆潮流の発生を防止するための分散型電源システムに利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 電力系統
2 交流線
2a 第1電圧線
2b 第2電圧線
2c 中性線
10 補助電源装置
11 動作制御部
12 蓄電部
13 電力変換部
14a 第1DC/DCコンバータ回路
14b 第2DC/DCコンバータ回路
15a 第1インバータ回路
15b 第2インバータ回路
20 発電装置
21 発電部
22 発電制御部
30 電力消費装置
31 第1消費部
32 第2消費部
P1 第1接続箇所
P2 第2接続箇所
P3 第3接続箇所
図1
図2
図3
図4