【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には記載されていないが、上述したような補助電源装置、発電装置及び電力消費装置が接続される交流線として、2つの電圧線と1つの中性線とで構成される単相3線式の交流線が用いられる。
図4は、補助電源装置と発電装置と電力消費装置とが、単相3線式の交流線に接続された分散型電源システムを概略的に描いた図である。尚、図示は省略しているが、第1電圧線及び第2電圧線と中性線とを有する単相3線式の交流線と補助電源装置及び発電装置とを接続するとき、それらの間にはインバータやコンバータなどの電力変換部が設けられる。そして、その電力変換部によって、補助電源装置から交流線への出力電力や、発電装置から交流線への供給電力(発電電力)が調節される。
【0005】
電力変換部を介して補助電源装置や発電装置を単相3線式の交流線に接続する場合、具体的には、電力変換部が単一の電力変換回路部で構成されその単一の電力変換回路部が第1電圧線及び第2電圧線に共通に接続される構成や、電力変換部が2つの電力変換回路部で構成され、その一方が第1電圧線に接続され、他方が第2電圧線に接続される構成が考えられる。
【0006】
前者の場合、電力変換部(単一の電力変換回路部)は、第1電圧線及び第2電圧線との間でやり取りする電力を共通して調節することはできるが、第1電圧線及び第2電圧線との間でやり取りする電力を各別に、即ち、片相毎に調節することはできない。後者の場合、電力変換部(2つの電力変換回路部)は、各電力変換回路部を用いて、第1電圧線及び第2電圧線との間でやり取りする電力を各別に、即ち、片相毎に調節することができる。
つまり、前者の場合は、片相毎に電力を調節できないものの、電力変換部の装置コストを低くできるという長所がある。後者の場合、電力変換部の装置コストが高くなるものの、片相毎に電力を調節できるという長所がある。
【0007】
そこで、本願では、発電装置と交流線との間の接続には単一の電力変換回路部を有する電力変換部を採用し、補助電源装置と交流線との間の接続には2つの電力変換回路部を有する電力変換部を採用した分散型電源システムを構築することとした。そして、このような分散型電源システムを運用する場合の課題を考察した。
【0008】
図4は、分散型電源システムの運用例を説明する図である。具体的には、電力消費装置30へ補助電源装置10及び発電装置20からどれだけの電力が供給されるかを示す例である。但し、発電装置20の定格供給電力は700W(片相につき350W)であり、補助電源装置10の定格出力電力は片相につき1200W(両相で2400W)であるとする。また、第1電圧線2aと中性線2cの間の電圧、及び、第2電圧線2bと中性線2cとの間の電圧はともにAC100Vであるので、図中に記載する電流値とAC100Vとの積が、図中に記載する電力値となる。
【0009】
図4(a)は、電力消費装置30を構成する第1消費部31の需要電力及び第2消費部32の需要電力が共に650W(両相合計で1300W)である場合の例である。ここで、
図4に示す発電装置20や補助電源装置10の内部の構成は
図1に示す通りである。
この場合、発電装置20の発電制御部22は、第1電圧線2aを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力と第2電圧線2bを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力との合計電力が最小になり且つ負の電力とはならないように、第1電圧線2a及び第2電圧線2bに対して同一の電力を供給するように発電電力を制御する。具体的には、第1電圧線2aに対して350Wの電力を供給し、第2電圧線2bに対して350Wの電力を供給する。但し、発電装置20から定格供給電力に相当する合計700Wの電力を供給しても、電力消費装置30の需要電力である1300Wには満たない。
【0010】
その結果、第1消費部31における不足電力(即ち、第1電圧線2aを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力)は300Wとなり、第2消費部32における不足電力(即ち、第2電圧線2bを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力)は300Wとなる。
そして、補助電源装置10からこれら300Wずつの電力を出力することで、第1電圧線2aを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力が零になり、第2電圧線2bを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力が零になる。
【0011】
次に、
図4(b)に示すのは、電力消費装置30を構成する第1消費部31の需要電力が1200Wであり及び第2消費部32の需要電力が100W(両相合計で1300W)である場合の例である。
【0012】
この場合も、発電装置20の発電制御部22は、第1電圧線2aを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力と第2電圧線2bを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力との合計電力が最小になり且つ負の電力とはならないように、第1電圧線2a及び第2電圧線2bに対して同一の電力を供給するように発電電力を制御する。具体的には、第1電圧線2aに対して350Wの電力を供給し、第2電圧線2bに対して350Wの電力を供給する。但し、発電装置20から定格供給電力に相当する合計700Wを供給しても、電力消費の需要電力である1300Wには満たない。
【0013】
但し、
図4(b)に示した例では、第1電圧線2aと中性線2cとの間での第1消費電力である1200Wと、第2電圧線2bと中性線2cとの間での第2消費電力である100Wとが異なる。その結果、発電装置20から第1電圧線2a及び第2電圧線2bに対して同一の電力(夫々に対して350W)を供給すると、第1電圧線2aを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力と、第2電圧線2bを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力とが異なってしまう。即ち、
図4(b)に示した例では、第1電圧線2aを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力は+850W(不足電力)であり、第2電圧線2bを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力は−250W(余剰電力)というように、両者の電力の正負の符号が異なってしまう。
【0014】
このような場合、−250Wの余剰電力が発生しているため、補助電源装置10から第2電圧線2bには電力を出力せず、補助電源装置10から第1電圧線2aへ上述した不足電力である850Wだけ出力すると、第1電圧線2aを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力は零(0W)となる。尚、補助電源装置10が、蓄電部12から交流線2への一方向の電力出力を主目的としている場合、電力変換部13は蓄電部12から交流線2への出力電力の変換を行うことができればよく、交流線2から蓄電部12への逆方向の電力の変換を行う必要はない。即ち、電力変換部13は双方向性を有している必要はないため、使用する半導体スイッチング素子は双方向性を有するものでなくてよい。つまり、蓄電部12への充電は電力変換部13とは別の回路(図示せず)を用いて行われる。従って、電力変換部13が蓄電部12から交流線2への一方向の出力電力の変換を行うことのみができる場合、第2電圧線2bを通って第1接続箇所P1側から第2接続箇所P2へ向かう電力は−250W(余剰電力)のまま残される。その結果、第1電圧線2aを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力と第2電圧線2bを通って電力系統1側から第1接続箇所P1へ向かう電力との合計電力が負の電力(−250W)になってしまう。即ち、電力系統1へ250Wの電力の逆潮流が発生してしまうが、太陽光発電により得られる電力や風力発電により得られる電力など、自然エネルギーを利用した発電電力しか一般的には逆潮流が認められていないという状況では、上記のような発電装置20からの電力や補助電源装置10からの電力の逆潮流は認められないという問題がある。
【0015】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電力系統への逆潮流の発生を防止可能な分散型電源システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための本発明に係る分散型電源システムの特徴構成は、電力系統に接続される、第1電圧線及び第2電圧線と中性線とを有する単相3線式の交流線と、前記交流線に対して第1接続箇所で接続される補助電源装置と、前記交流線に対して第2接続箇所で接続される発電装置と、前記交流線の前記第2接続箇所に接続される電力消費装置とを備え、前記交流線に対する前記電力系統の接続箇所から見て下流側に向かって前記第1接続箇所と前記第2接続箇所とがその並び順で設けられている分散型電源システムであって、
前記電力系統側から前記電力消費装置へ向かう電力を正の電力とした場合において、前記電力系統から前記交流線に対する電力供給を行うことができる非停電時に、
前記発電装置は、発電部と、前記第1電圧線を通って前記第1接続箇所側から前記第2接続箇所へ向かう電力と前記第2電圧線を通って前記第1接続箇所側から前記第2接続箇所へ向かう電力との合計電力が最小になり且つ負の電力とはならないように、前記第1電圧線及び前記第2電圧線に対して同一の電力を供給するように前記発電部の発電電力を制御する発電制御部を有し、
前記補助電源装置は、蓄電部と、前記第1電圧線を通って前記第1接続箇所側から前記第2接続箇所へ向かう電力の正負の符号と前記第2電圧線を通って前記第1接続箇所側から前記第2接続箇所へ向かう電力の正負の符号とが互いに異なるとき、前記第1電圧線を通って前記電力系統側から前記第1接続箇所へ向かう電力と前記第2電圧線を通って前記電力系統側から前記第1接続箇所へ向かう電力との合計電力が負の電力とはならないように、前記蓄電部から前記第1電圧線及び前記第2電圧線に対する出力電力を零以上の値に各別に調節する動作制御部を有する点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、補助電源装置の動作制御部は、第1電圧線を通って電力系統側から第1接続箇所へ向かう電力と第2電圧線を通って電力系統側から第1接続箇所へ向かう電力との合計電力が負の電力とはならないように、蓄電部から第1電圧線及び第2電圧線に対する出力電力を零以上の値に各別に調節する。つまり、第1電圧線を通って電力系統側から第1接続箇所へ向かう電力と第2電圧線を通って電力系統側から第1接続箇所へ向かう電力との合計電力が負の電力となる状況、即ち、逆潮流が発生する状況を防止できる。
加えて、交流線に対する電力系統の接続箇所から見て下流側に向かって第1接続箇所と第2接続箇所とがその並び順で設けられており、発電装置の発電制御部は、第1電圧線を通って第1接続箇所側から第2接続箇所へ向かう電力と第2電圧線を通って第1接続箇所側から第2接続箇所へ向かう電力との合計電力が最小になり且つ負の電力とはならないように発電部の発電電力を制御する。つまり、発電装置は、電力消費装置の需要電力を賄うための最大の発電電力で運転する。そして、補助電源装置は、発電装置で賄い切れなかった電力を補助的に出力するように動作することになる。以上のように、本特徴構成の分散型電源システムは、発電装置を高い稼働率で運用でき、且つ、補助電源装置の負荷が小さくなるという点で好ましい。例えば、発電装置が、固体酸化物形燃料電池のように系統電力よりも発電効率が高い場合や、エンジンと発電機とを組み合わせて熱と電力とを得るコージェネレーション装置のように発電効率と排熱効率とを合わせた総合効率が系統電力の発電効率よりも高い場合には、発電装置を高い稼働率で運用できると運転メリット(省エネルギー性)が高くなるという利点がある。他には、補助電源装置の蓄電部に、例えば夜間(即ち、電気料金の安い時間帯)に蓄電し、昼間(即ち、電気料金の高い時間帯)に放電するように設定すると、補助電源装置が無い場合に比べて運転メリット(経済性)が高くなるという利点がある。
従って、電力消費装置への電力供給を行いつつ、電力系統への逆潮流の発生を防止できる分散型電源システムを提供できる。
【0018】
本発明に係る分散型電源システムの別の特徴構成は、前記補助電源装置の前記動作制御部は、前記第1接続箇所から前記第2接続箇所へ向かう電力の符号が負となる方の前記第1電圧線又は前記第2電圧線への前記蓄電部からの出力電力を零に調節し、前記第1接続箇所から前記第2接続箇所へ向かう電力の符号が正となる方の前記第1電圧線又は前記第2電圧線への前記蓄電部からの出力電力を、前記第1電圧線を通って前記電力系統側から前記第1接続箇所へ向かう電力と前記第2電圧線を通って前記電力系統側から前記第1接続箇所へ向かう電力との合計電力が最小になり且つ負の電力とはならないように調節する点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、補助電源装置の動作制御部は、符号が負となる方への蓄電部からの出力電力を零とした上で、第1接続箇所から第2接続箇所へ向かう電力の符号が正となる方の第1電圧線又は第2電圧線への出力電力を調節するだけで、第1電圧線を通って電力系統側から第1接続箇所へ向かう電力と第2電圧線を通って電力系統側から第1接続箇所へ向かう電力との合計電力を最小にし、且つ、負の電力とはならないようにすることができる。その結果、電力消費装置への電力供給を行いつつ、電力系統への逆潮流の発生を防止できる。
【0020】
本発明に係る分散型電源システムの更に別の特徴構成は、前記補助電源装置の前記動作制御部は、前記第1電圧線を通って前記電力系統側から前記第1接続箇所へ向かう電力と前記第2電圧線を通って前記電力系統側から前記第1接続箇所へ向かう電力との合計電力が最小になり且つ負の電力とはならないように、前記蓄電部から前記第1電圧線及び前記第2電圧線に対する出力電力を互いに同じ値に調節する点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、補助電源装置の動作制御部は、蓄電部から第1電圧線及び第2電圧線に対する出力電力を互いに同じ値に調節して、第1電圧線を通って電力系統側から第1接続箇所へ向かう電力と第2電圧線を通って電力系統側から第1接続箇所へ向かう電力との合計電力が最小になり且つ負の電力とはならないようにすることができる。その結果、電力消費装置への電力供給を行いつつ、電力系統への逆潮流の発生を防止できる。更に、蓄電部から第1電圧線及び第2電圧線の両方に出力が行われるので、第1電圧線及び第2電圧線の一方のみに出力を行う場合に比べて、蓄電部からの出力電力の合計を大きくすることができる。その結果、電力系統から供給される電力(即ち、買電の電力)を小さくすることができる。