特許第6025576号(P6025576)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • 6025576-防寒衣類 図000002
  • 6025576-防寒衣類 図000003
  • 6025576-防寒衣類 図000004
  • 6025576-防寒衣類 図000005
  • 6025576-防寒衣類 図000006
  • 6025576-防寒衣類 図000007
  • 6025576-防寒衣類 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025576
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】防寒衣類
(51)【国際特許分類】
   A41D 31/02 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   A41D31/02 G
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-8642(P2013-8642)
(22)【出願日】2013年1月21日
(65)【公開番号】特開2014-139352(P2014-139352A)
(43)【公開日】2014年7月31日
【審査請求日】2015年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】594137960
【氏名又は名称】株式会社ゴールドウイン
(73)【特許権者】
【識別番号】592019523
【氏名又は名称】株式会社ゴールドウインテクニカルセンター
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100154391
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康義
(72)【発明者】
【氏名】井上 一宏
【審査官】 田中 尋
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−098822(JP,U)
【文献】 実開昭52−095501(JP,U)
【文献】 実開平07−009924(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 31/02
A41D 27/10
A41D 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表地と裏地との間にマチを設けて区画を形成し、前記区画の中に充てん材を収容した立体キルト構造を有する身頃および袖を備えた防寒衣類であって、
前記袖の裏地の袖周り方向の寸法は、前記袖の表地の袖周り方向の寸法に比べて短い、防寒衣類。
【請求項2】
前記袖の立体キルト構造において、
前記マチは帯状の布であり、
前記マチの前記裏地側の部分にタックを形成して前記マチの裏地側の部分は前記裏地に接合される、請求項1に記載の防寒衣類。
【請求項3】
前記タックは、前記マチの少なくとも5箇所に形成される、請求項2に記載の防寒衣類。
【請求項4】
前記タックは、前記マチの少なくとも7箇所に形成される、請求項3に記載の防寒衣類。
【請求項5】
前記袖の立体キルト構造において、
前記マチは円弧状に延びている帯状の布である、請求項1に記載の防寒衣類。
【請求項6】
前記マチは帯状の布であり、
前記マチの幅方向の断面は略U字状または略Z字状である、請求項1に記載の防寒衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表地と裏地との間に充てん材を備えた防寒衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
表地と裏地との間に羽毛や羽根や中綿などの充てん材を収容した防寒衣類では、充てん材が偏らないようにするために、表地と裏地とを縫い合わせていくつかの区画を形成し、その区画の中に充てん材を収容している。しかし、このような構造では、区画の境界である縫い目において充てん材が存在しないため、この縫い目から熱が放出され、防寒衣類の保温性が損なわれるという問題があった。そこで、保温性を高めるために、表地と裏地との間にマチを設けて区画を形成し、その区画の中に充てん材を収容した立体キルト構造を有するダウンジャケットが従来技術として知られている(たとえば特許文献1)。このダウンジャケットでは、区画の境界においても表地および裏地が充てん材によって離隔されているので、優れた保温性を得ることができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−192613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような従来の立体キルト構造を有する防寒衣類では、袖の部分で着用者が防寒衣類から受ける圧迫感が強く、着心地が悪い場合があるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を採用した。
すなわち、本発明は、表地と裏地との間にマチを設けて区画を形成し、区画の中に充てん材を収容した立体キルト構造を有する身頃および袖を備えた防寒衣類であって、袖の裏地の袖周り方向の寸法は、袖の表地の袖周り方向の寸法に比べて短い。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、着心地がよい、立体キルト構造を有する防寒衣服を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の一実施形態におけるダウンジャケットの正面図である。
図2図2は、図1に示す本発明の一実施形態におけるダウンジャケットの袖のA−A断面を示す図である。
図3図3は、図1に示す本発明の一実施形態におけるダウンジャケットの充てん材を除いた袖の分解図である。
図4図4は、本発明の一実施形態におけるダウンジャケットの立体キルト構造の形成方法を説明するための図である。
図5図5は、本発明の一実施形態におけるダウンジャケットの立体キルト構造の形成方法を説明するための図である。
図6図6は、本発明の一実施形態におけるダウンジャケットの立体キルト構造の変形例を説明するための図である。
図7図7は、本発明の一実施形態におけるダウンジャケットの立体キルト構造のマチの変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者は、鋭意検討した結果、立体キルト構造を有するダウンジャケットの袖の部分で着用者がダウンジャケットから受ける圧迫感が強く、着心地が良好でない原因は、袖において表地の大きさと裏地の大きさとが同じであることを見出し、本発明を想到した。以下、図1図3を参照して本発明の一実施形態におけるダウンジャケットを説明する。図1は、本発明の一実施形態におけるダウンジャケット1の正面図である。図2は、図1に示す本発明の一実施形態におけるダウンジャケット1の袖20のA−A断面を示す図である。図3は、図1に示す本発明の一実施形態におけるダウンジャケット1の充てん材26を除いた袖20の分解図である。
【0009】
図1に示すように、本発明の一実施形態におけるダウンジャケット1は、身頃10と、身頃10の左右にあって、着用者の両腕を覆う一対の袖20とを備える。ダウンジャケット1の身頃10および袖20は立体キルト構造を有する。
【0010】
図2に示すダウンジャケット1の袖20のA−A断面を例にあげて、ダウンジャケット1の立体キルト構造を説明する。立体キルト構造では、表地22と裏地24との間にマチ32を設けて区画30が形成される。区画30の中には充てん材26が収容される。
【0011】
表地22には、たとえば、ナイロン、ポリエステルなどの、比較的軽く、引っ張り強度および摩擦強度が高い合成繊維を用いた生地が用いられる。また、表地の表面を撥水加工してもよい。裏地24にも、たとえば、ナイロン、ポリエステルなどの、比較的軽く、引っ張り強度および摩擦強度が高い合成繊維を用いた生地が用いられる。
【0012】
充てん材26には、たとえば、羽毛(ダウン)、羽根(フェザー)、綿、またはそれらの混合物などが用いられる。とくに、充てん材26には、羽毛、羽根またはそれらの混合物が好ましい。
【0013】
マチ32は、隣接する区画30を仕切る仕切り布である。マチ32には、たとえば、表地22または裏地24に用いられた布地と同じ布地が用いられる。マチ32は、好ましくは、帯状の布である。マチ32は、区画30の境界34において、熱可塑性接着剤などの接着剤を用いた接着、縫合などにより、表地22および裏地24と接合する。区画30の境界34は袖周り方向に延在する。
【0014】
図3を用いてダウンジャケット1の袖20をさらに詳細に説明する。図3のX方向が袖周り方向に対応し、Y方向が袖丈方向に対応する。袖周り方向Xに延びる複数のマチ32が、所定の間隔で袖丈方向Yに並べられて配置される。マチ32の長さは、表地22の袖周り方向の寸法に等しく、裏地24の袖周り方向の寸法よりも長い。
【0015】
図3の点線22’は、表地22の大きさを示している。図3に示すように、裏地24の袖周り方向Xの寸法は、表地22の袖周り方向Xの寸法に比べて短くなっている。これにより、袖20の部分で着用者がダウンジャケット1から受ける圧迫感が弱まり、ダウンジャケット1の着心地が良好になる。ところで、袖のキルト構造が厚くなると、袖の外径と内径との差が大きくなり、その結果、袖の外周の長さと内周の長さとの差が大きくなる。このため、従来は、表地の大きさと裏地の大きさとが同じであったため、裏地がだぶつき、これにより袖の部分で着用者がダウンジャケットから受ける圧迫感が強かった。しかし、本発明の一実施形態のダウンジャケット1によれば、裏地24の上述のだぶつきは小さくなるので、ダウンジャケット1から受ける圧迫感が弱くなり、ダウンジャケット1の着心地が良好になる。また、着用したときに立体キルト構造がつぶれてダウンジャケット1の保温性が低下することを抑制できる。
【0016】
袖20の裏地24の袖周り方向Xの寸法は、好ましくは、袖20の表地22の袖周り方向Xの寸法の75〜95%であり、より好ましくは袖20の表地22の袖周り方向Xの寸法の85〜90%である。また、袖のキルト構造の厚さがTである場合、表地22の袖周り方向Xの寸法と裏地24の袖周り方向Xの寸法との間の差は、たとえば、T×2×πで算出される長さであってもよい。
【0017】
図2および図3に示すように、マチ32の幅方向(袖周り方向Xに対して垂直な方向)の断面は、好ましくは略U字状である。これにより、隣接する区画30の間をマチ32により確実に塞ぐことができる。
【0018】
次に、図4および図5を参照して、本発明の一実施形態におけるダウンジャケット1の立体キルト構造の形成方法を説明する。図4および図5は、本発明の一実施形態におけるダウンジャケット1の立体キルト構造の形成方法を説明するための図である。
【0019】
図4(a)に示すように、裏地24を用意する。図4(b)に示すように、2つに折り曲げられたマチ32の一方を縫合36により裏地24に接合する。なお、接着剤を用いてマチ32を裏地24に接合してもよい。
【0020】
図5を参照して、マチ32の裏地24への縫合をさらに詳細に説明する。まず、図5(a)に示すように、マチ32の端側の一部を裏地24に縫合する(符号36a)。そして、縫合部分36aに隣接する、マチ32における2本の線38aに挟まれる部分をつまんでマチ32の裏地側の部分にタック(図5(b)の符号42a参照)を形成する。次に、図5(b)に示すように、タック42aに隣接するマチ32の一部を裏地24に縫合する(符号36b)。そして、縫合部分36bに隣接する、マチ32における2本の線38bに挟まれる部分をつまんでマチ32の裏地側の部分にタックを形成する。
【0021】
マチ32の一部の裏地24への縫合36a〜36hと、マチ32の裏地側の部分のタック42a〜42gの形成とを繰り返して、図5(c)に示すように、マチ32を裏地24に縫合する。これにより、裏地24の袖周り方向Xの寸法よりも長いマチ32において、その裏地側の部分を裏地24の袖周り方向Xの長さに合わせることができる。
【0022】
タックは、好ましくは、マチ32の少なくとも5箇所に形成され、より好ましくは、マチ32の少なくとも7箇所に形成される。これにより、袖20の環状の形状にマチ32を容易に合わせることができる。
【0023】
次に、図4(c)に示すように、2つに折り曲げられたマチ32の他方を縫合36により表地22に接合する。なお、接着剤を用いてマチ32を表地22に接合してもよい。これにより、区画30が形成される。そして、図4(d)に示すように、区画30の中に、充てん材26を充てんする。これにより、立体キルト構造が形成される。
【0024】
以上の本発明の一実施形態によるダウンジャケット1は、次のような作用効果を奏する。
(1)表地22と裏地24との間にマチ32を設けて区画30を形成し、区画30の中に充てん材26を収容した立体キルト構造を有する身頃10および袖20を備えたダウンジャケット1であって、袖20の裏地24の袖周り方向Xの寸法は、袖20の表地24の袖周り方向Xの寸法に比べて短くなるようにした。これにより、着心地がよい、立体キルト構造を有するダウンジャケット1を提供することができる。
【0025】
(2)袖20の立体キルト構造において、マチ32は帯状の布であり、マチ32の裏地側の部分にタック42a〜42gを形成してマチ32の裏地側の部分は裏地24に接合されるようにした。これにより、裏地24の袖周り方向Xの長さよりも長いマチ32において、その裏地側の部分を裏地24の袖周り方向Xの寸法に合わせることができる。
【0026】
(3)タック42a〜42gは、マチ32の少なくとも5箇所に形成されるようにした。これにより、袖20の環状の形状にマチ32を容易に合わせることができる。
【0027】
(4)タック42a〜42gは、マチ32の少なくとも7箇所に形成されるようにした。これにより、袖20の環状の形状にマチ32をさらに容易に合わせることができる。
【0028】
(5)マチ32は帯状の布であり、マチ32の幅方向の断面は略U字状であるようにした。これにより、隣接する区画30の間をマチ32により確実に塞ぐことができる。
【0029】
以上の本発明の一実施形態のダウンジャケット1を次のように変形することができる。
(1)本発明は、表地と裏地との間にマチを設けて区画を形成し、区画の中に充てん材を収容した立体キルト構造を有する身頃および袖を備えた防寒衣類であれば、ダウンジャケットに限定されない。
【0030】
(2)図6(a)に示すように、マチ32Aの幅方向の断面は略Z字状であってもよい。この場合も、隣接する区画30の間をマチ32により確実に塞ぐことができる。
【0031】
(3)図6(b)に示すように、表地22とマチ32との間の接合部44Aの位置が、裏地24とマチ32との間の接合部36Aの位置に対して、袖周り方向Xにずれていてもよい。
【0032】
(4)図7に示すように、裏地24に接合されるマチ32Bは円弧状に延びている帯状の布であるようにしてもよい。これにより、袖の環状の形状にマチ32Bを容易に合わせることができる。
【0033】
(5)身頃10の裏地24の胴周り方向の寸法は、身頃10の表地24の胴周り方向の寸法に比べて短くなるようにしてもよい。これにより、身頃10の部分で着用者がダウンジャケットから受ける圧迫感が弱くなり、着心地がよい、立体キルト構造を有するダウンジャケット1を提供することができる。また、袖20の立体キルト構造に用いられるマチ32と同様に、タックをマチに形成してもよい。さらに、身頃の両側面(脇)の部分のみにおいてタックをマチに形成してもよい。
【0034】
(6)本発明は、ボトムの防寒衣類にも適用できる。たとえば、立体キルト構造を有するパンツの場合、股下の部分において、裏地の膝周り方向の寸法は、表地の膝周り方向の寸法に比べて短くなるようにしてもよい。また、袖20の立体キルト構造に用いられるマチ32と同様に、タックをマチに形成してもよい。
【0035】
実施形態と変形例の一つ、もしくは複数を組み合わせることは可能である。変形例同士をどのように組み合わせることも可能である。
【0036】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明は上記実施形態の構成になんら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0037】
1 ダウンジャケット
10 身頃
20 袖
22 表地
24 裏地
26 充てん材
30 区画
32,32A,32B マチ
42a〜42g タック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7