特許第6025804号(P6025804)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025804
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】絶縁劣化方向判別方法
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/347 20060101AFI20161107BHJP
   G01R 31/08 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   H02H3/347
   G01R31/08
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-227420(P2014-227420)
(22)【出願日】2014年11月7日
(65)【公開番号】特開2016-93038(P2016-93038A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2014年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】314011714
【氏名又は名称】株式会社エネサーブ岐阜
(74)【代理人】
【識別番号】100098224
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 勘次
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】宮川 琢次
【審査官】 緑川 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−095149(JP,A)
【文献】 特開2013−088256(JP,A)
【文献】 特開2012−141232(JP,A)
【文献】 特開昭54−000748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/32−3/52,7/22−7/30
G01R 31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から負荷に電気を供給する電路であって、電気事業者の設備である高圧引込柱と需要者の設備である高圧受電設備との間に引込ケーブルが配線されており、該引込ケーブルの前記高圧受電設備側の端部から引き出された引出シールド線によって接地されている電路において、
前記高圧引込柱より前記電源側で生じた地絡を、電気事業者の管理区間の地絡である電源側地絡と判定し、前記高圧受電設備より負荷側で生じた地絡を、需要者の管理区間の地絡である負荷側地絡と判定する絶縁劣化方向判別方法であり、
前記引込ケーブルにのみ取付けられ第一零相変流器と、
前記第一零相変流器と前記高圧受電設備との間の前記引込ケーブルに、前記第一零相変流器と極性の向きを同一にして取付けられ第二零相変流器と、
前記引出シールド線にのみ、接地点側の極性を前記第一零相変流器及び前記第二零相変流器の前記電源側の極性と同一にして取付けられ第三零相変流器と、を具備する絶縁劣化方向判別装置を使用し、
前記引込ケーブルで生じた地絡を前記電源側地絡に含める場合は、前記引出シールド線に前記第二零相変流器を取付けることなく、前記第二零相変流器は前記引込ケーブルのみに取付ける一方、前記引込ケーブルで生じた地絡を前記負荷側地絡に含める場合は、前記引出シールド線において前記第三零相変流器より前記高圧受電設備側で、前記第三零相変流器と極性の向きを同一にして前記第二零相変流器を取付け、
前記第一零相変流器で第一電流を検出し、
前記第二零相変流器で第二電流を検出すると共に、前記第三零相変流器で第三電流を検出し、前記第二電流と前記第三電流とを合成することにより第四電流を取得し、
前記第一電流及び前記第四電流それぞれを絶対値の大きさで比較することにより、
前記第一電流が前記第四電流より大きい場合は前記電源側地絡と判定し、前記第四電流が前記第一電流より大きい場合は前記負荷側地絡と判定する
ことを特徴とする絶縁劣化方向判別方法
【請求項2】
電源から負荷に電気を供給する電路であって、電気事業者の設備である高圧引込柱と需要者の設備である高圧受電設備との間に引込ケーブルが配線されており、該引込ケーブルの前記高圧引込柱側の端部から引き出された引出シールド線によって接地されている電路において、
前記高圧引込柱より前記電源側で生じた地絡を、電気事業者の管理区間の地絡である電源側地絡と判定し、前記高圧受電設備より負荷側で生じた地絡を、需要者の管理区間の地絡である負荷側地絡と判定する絶縁劣化方向判別方法であり、
前記引込ケーブルに取付けられ第一零相変流器と、
前記第一零相変流器と前記高圧受電設備との間の前記引込ケーブルに、前記第一零相変流器と極性の向きを同一にして取付けられ第二零相変流器と、
前記引出シールド線にのみ、接地点側の極性を前記第一零相変流器及び前記第二零相変流器の前記電源側の極性と同一にして取付けられ第三零相変流器と、を具備する絶縁劣化方向判別装置を使用し、
前記引込ケーブルで生じた地絡を前記電源側地絡に含める場合は、前記引出シールド線において前記第三零相変流器より前記高圧引込柱側で、前記第三零相変流器と極性の向きを反対にして前記第一零相変流器及び前記第二零相変流器を取付ける一方、前記引込ケーブルで生じた地絡を前記負荷側地絡に含める場合は、前記引出シールド線において前記第三零相変流器より前記高圧引込柱側で、前記第三零相変流器と極性の向きを反対にして前記第一零相変流器のみを取付け、
前記第一零相変流器で第一電流を検出し、
前記第二零相変流器で第二電流を検出すると共に、前記第三零相変流器で第三電流を検出し、前記第二電流と前記第三電流とを合成することにより第四電流を取得し、
前記第一電流及び前記第四電流それぞれを絶対値の大きさで比較することにより、
前記第一電流が前記第四電流より大きい場合は前記電源側地絡と判定し、前記第四電流が前記第一電流より大きい場合は前記負荷側地絡と判定する
ことを特徴とする絶縁劣化方向判別方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧電路で地絡事故が発生した際に絶縁劣化方向を判別する絶縁劣化方向判別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高圧電路では、電気事業者の設備である高圧引込柱や高圧キャビネット等と、需要者の高圧受電設備との接続点を責任分界点として、責任分界点から変電所側(以下、電源側と称する)を電気事業者が管理し、高圧受電設備側(以下、負荷側と称する)を需要者が管理している。このため、負荷側で地絡事故が発生し停電した場合、需要者が復旧する。しかし、地絡事故により絶縁劣化した箇所(以下、絶縁劣化方向と称する)が負荷側であるか、電源側であるかを判別することは容易ではない。従って、地絡事故時に流れる地絡電流等に基づいて絶縁劣化方向を判別することができる装置が開発されている。
【0003】
従来、地絡事故による絶縁劣化方向を判別する装置として、地絡時に生じる零相電圧の位相に対して、負荷側で地絡事故が発生した場合に流れる地絡電流の位相は進み、電源側で地絡事故が発生した場合に流れる地絡電流の位相は遅れることを利用して判別する装置がある(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、前記装置は、零相電圧を検出するための零相変圧器を必要とする。零相変圧器は機器自体が高価であることに加え、設置するためには設備を停電させる必要があり、取付作業が困難である。また、地絡電流と零相電圧の位相を比較する複雑な回路を必要としていた。
【0005】
このため、零相変圧器を用いずに絶縁劣化方向を判別する装置が提案されている(特許文献2参照)。この装置は、二つの零相変流器と、零相変流器により検出された電流に基づいて絶縁劣化方向を判別する回路から構成されている。地絡事故が発生した際にケーブルに流れる零相電流と、接地されたシールド線に流れる零相電流とを二つの零相変流器により検出する。そして、シールド線に流れる零相電流を零相電圧に変換し、変換された零相電圧の位相に対するケーブルに流れる零相電流の位相の進み・遅れから絶縁劣化方向を判別するものである。
【0006】
しかしながら、上記の装置はシールド線に流れる零相電流を電圧に変換するための抵抗や、零相電流から変換された零相電圧を位相情報のみとする回路、零相電流と位相情報をベクトル乗算する演算回路等を必要とし、依然として複雑な装置構成となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許2554217号公報
【特許文献2】特開2014−142230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、簡易な構成で取付作業が容易であり、絶縁劣化方向を容易に判別できる絶縁劣化方向判別方法の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる高圧絶縁劣化方向判別方法は、
電源から負荷に電気を供給する電路であって、電気事業者の設備である高圧引込柱と需要者の設備である高圧受電設備との間に引込ケーブルが配線されており、該引込ケーブルの前記高圧受電設備側の端部から引き出された引出シールド線によって接地されている電路において、
前記高圧引込柱より前記電源側で生じた地絡を、電気事業者の管理区間の地絡である電源側地絡と判定し、前記高圧受電設備より負荷側で生じた地絡を、需要者の管理区間の地絡である負荷側地絡と判定する絶縁劣化方向判別方法であり、
前記引込ケーブルにのみ取付けられた第一零相変流器と、
前記第一零相変流器と前記高圧受電設備との間の前記引込ケーブルに、前記第一零相変流器と極性の向きを同一にして取付けられた第二零相変流器と、
前記引出シールド線にのみ、接地点側の極性を前記第一零相変流器及び前記第二零相変流器の前記電源側の極性と同一にして取付けられた第三零相変流器と、を具備する絶縁劣化方向判別装置を使用し、
前記引込ケーブルで生じた地絡を前記電源側地絡に含める場合は、前記引出シールド線に前記第二零相変流器を取付けることなく、前記第二零相変流器は前記引込ケーブルのみに取付ける一方、前記引込ケーブルで生じた地絡を前記負荷側地絡に含める場合は、前記引出シールド線において前記第三零相変流器より前記高圧受電設備側で、前記第三零相変流器と極性の向きを同一にして前記第二零相変流器を取付け、
前記第一零相変流器で第一電流を検出し、
前記第二零相変流器で第二電流を検出すると共に、前記第三零相変流器で第三電流を検出し、前記第二電流と前記第三電流とを合成することにより第四電流を取得し、
前記第一電流及び前記第四電流それぞれを絶対値の大きさで比較することにより、
前記第一電流が前記第四電流より大きい場合は前記電源側地絡と判定し、前記第四電流が前記第一電流より大きい場合は前記負荷側地絡と判定する」ものである。この方法に使用する高圧絶縁劣化方向判別装置は、
「責任分界点と高圧受電設備との間に配線されている引込ケーブルにのみ取付けられる第一零相変流器と、
前記第一零相変流器と前記高圧受電設備との間の前記引込ケーブルに取付けられる第二零相変流器と、
前記引込ケーブルの受電端から引出されて接地された引出シールド線にのみ取付けられる第三零相変流器と、
前記第一零相変流器が接続されると共に、前記第二零相変流器と前記第三零相変流器とが並列で接続され、入力された電流値を出力する出力手段と、
該出力手段から出力された前記電流値に基づき絶縁劣化情報を表示する表示手段と
を具備する」ものである。
【0010】
「責任分界点」の意義は、背景技術に関する記載において定義したものと同じである。
【0011】
「引込ケーブル」は、高圧電力用の三心ケーブルである。引込ケーブルは、三本の被覆された電線と、電線の外周に巻かれた銅テープと、銅テープが巻かれた三本の電線を被覆するシース等から構成される。ここで、引込ケーブルの銅テープが「シールド線」である。また、引込ケーブルから引出されて接地されているシールド線が「引出シールド線」である。
【0012】
「受電端」は、引込ケーブルの高圧受電設備に接続されている端部である。また、引込ケーブルの責任分界点に接続されている端部が「送電端」である。
【0013】
「第一零相変流器」、「第二零相変流器」、及び「第三零相変流器」はそれぞれ貫通形零相変流器を用いることができる。貫通形零相変流器の中では、取付けが容易な点でクランプ式零相変流器や、分割貫通形零相変流器が好適である。
【0014】
「第一零相変流器」が「引込ケーブルにのみ取付けられる」とは、第一零相変流器の貫通孔に引込ケーブルのみが挿通されることを意味している。また、「第二零相変流器」が「引込ケーブルに取付けられる」とは、第二零相変流器の貫通孔に引込ケーブルのみが挿通される場合、及び引込ケーブルと引出シールド線とが挿通される場合があることを意味している。同様に、「第三零相変流器」が「引出シールド線にのみ取付けられる」とは、第三零相変流器の貫通孔に引出シールド線のみが挿通されることを意味している。
【0015】
「出力手段」は有線で接続された表示手段に出力してもよく、または無線や通信ネットワークを介して接続された表示手段に出力してもよい。
【0016】
「表示手段」は、液晶ディスプレイやCRTディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置を備えるものである。また、「表示手段」として、表示装置を備える携帯電話やコンピュータ等を複数備える構成であってもよい。
【0017】
本構成の絶縁劣化方向判別装置は、引込ケーブルが受電端側で接地されている場合に使用されるものである。本構成の絶縁劣化方向判別装置では、第一零相変流器で検出された電流の大きさを、第二零相変流器で検出された電流と第三零相変流器で検出された電流との合成電流の大きさと比較することにより絶縁劣化方向を判別する。ここで、第二零相変流器と第三零相変流器が並列で接続されていることにより、合成された電流が出力手段に入力される。従って、装置を簡易な構成とすることができる。このような簡易な方法で絶縁劣化方向を判別できる原理の詳細については後述する。また、三つの零相変流器をそれぞれ取付けるだけであるため、取付作業が容易である。
【0018】
ここで、「絶縁劣化情報」としては、第一零相変流器で検出された電流の大きさと、第二零相変流器と第三零相変流器とで検出された合成電流の大きさとすることができる。この場合は、表示された二つの電流の大きさを比較することで絶縁劣化方向を判別できる。または、表示手段が入力された二つの電流の大きさに基づき、別途絶縁劣化方向を判別する判別手段を備え、「電源側」または「負荷側」と表示するものでもよい。なお、この場合において判別手段は、電気回路で構成されるものであっても、プログラムで構成されるものであってもよい。
【0019】
本発明にかかる高圧絶縁劣化方向判別方法は、上記構成に替えて、
電源から負荷に電気を供給する電路であって、電気事業者の設備である高圧引込柱と需要者の設備である高圧受電設備との間に引込ケーブルが配線されており、該引込ケーブルの前記高圧引込柱側の端部から引き出された引出シールド線によって接地されている電路において、
前記高圧引込柱より前記電源側で生じた地絡を、電気事業者の管理区間の地絡である電源側地絡と判定し、前記高圧受電設備より負荷側で生じた地絡を、需要者の管理区間の地絡である負荷側地絡と判定する絶縁劣化方向判別方法であり、
前記引込ケーブルに取付けられ第一零相変流器と、
前記第一零相変流器と前記高圧受電設備との間の前記引込ケーブルに、前記第一零相変流器と極性の向きを同一にして取付けられ第二零相変流器と、
前記引出シールド線にのみ、接地点側の極性を前記第一零相変流器及び前記第二零相変流器の前記電源側の極性と同一にして取付けられ第三零相変流器と、を具備する絶縁劣化方向判別装置を使用し、
前記引込ケーブルで生じた地絡を前記電源側地絡に含める場合は、前記引出シールド線において前記第三零相変流器より前記高圧引込柱側で、前記第三零相変流器と極性の向きを反対にして前記第一零相変流器及び前記第二零相変流器を取付ける一方、前記引込ケーブルで生じた地絡を前記負荷側地絡に含める場合は、前記引出シールド線において前記第三零相変流器より前記高圧引込柱側で、前記第三零相変流器と極性の向きを反対にして前記第一零相変流器のみを取付け、
前記第一零相変流器で第一電流を検出し、
前記第二零相変流器で第二電流を検出すると共に、前記第三零相変流器で第三電流を検出し、前記第二電流と前記第三電流とを合成することにより第四電流を取得し、
前記第一電流及び前記第四電流それぞれを絶対値の大きさで比較することにより、
前記第一電流が前記第四電流より大きい場合は前記電源側地絡と判定し、前記第四電流が前記第一電流より大きい場合は前記負荷側地絡と判定する」ものとすることができる。この方法に使用する高圧絶縁劣化方向判別装置は、
「責任分界点と高圧受電設備との間に配線されている引込ケーブルと、前記引込ケーブルの送電端から引出されて接地された引出シールド線とに取付けられる第一零相変流器と、
前記第一零相変流器と前記高圧受電設備との間の前記引込ケーブルに取付けられる第二零相変流器と、
前記引出シールド線にのみ取付けられる第三零相変流器と、
前記第一零相変流器が接続されると共に、前記第二零相変流器と前記第三零相変流器とが並列で接続され、入力された電流値を出力する出力手段と、
該出力手段から出力された前記電流値に基づき絶縁劣化情報を表示する表示手段と
を具備する」ものとすることができる。
【0020】
本構成の絶縁劣化方向判別装置は、引込ケーブルが送電端側で接地されている場合に使用されるものである。本構成の絶縁劣化方向判別装置では、前記絶縁劣化方向判別装置と同様に、第一零相変流器で検出された電流の大きさを、第二零相変流器で検出された電流と第三零相変流器で検出された電流との合成電流の大きさと比較することにより、絶縁劣化方向を判別することができる。従って、装置が簡易な構成であり、取付作業が容易である。
【0021】
上記のように、本発明にかかる絶縁劣化方向判別方法は、
「上記の絶縁劣化方向判別装置を使用する絶縁劣化方向判別方法であって、
前記第一零相変流器で第一電流を検出する第一電流検出工程と、
前記第二零相変流器で第二電流を検出する第二電流検出工程と、
前記第三零相変流器で第三電流を検出する第三電流検出工程と、
前記第二電流と前記第三電流とを合成し、第四電流を得る合成工程と、
前記第一電流と前記第四電流の大きさを比較し、絶縁劣化方向を判別する判別工程と
を具備する」ものである。
【0022】
本発明の絶縁劣化方向判別方法は、前記絶縁劣化方向判別装置を使用して絶縁劣化方向を判別する方法に関するものである。本構成の絶縁劣化方向判別方法では、第一電流と第四電流の大きさを比較するという容易な方法によって絶縁劣化方向を判別することができる。これにより、絶縁劣化方向を判別するための複雑な回路等を必要とせず、装置を簡易な構成にすることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明の効果として、簡易な構成で取付作業が容易あり、絶縁劣化方向を容易に判別できる絶縁劣化方向判別方法を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第一実施形態である絶縁劣化方向判別方法に使用する絶縁劣化方向判別装置の図である。
図2】本発明の絶縁劣化方向判別方法を説明するフローチャートである。
図3図1の絶縁劣化方向判別装置において、(a)は電源側で地絡事故が発生した場合、(b)は負荷側で地絡事故が発生した場合、(c)は引込ケーブル内で地絡事故が発生した場合の地絡電流の流れを説明する図である。
図4】第一実施形態の絶縁劣化方向判別装置の異なる取付けにおいて、引込ケーブル内で地絡事故が発生した場合の地絡電流の流れを説明する図である。
図5】本発明の第二実施形態である絶縁劣化方向判別方法に使用する絶縁劣化方向判別装置の取付けを説明する図である。
図6】第二実施形態の絶縁劣化方向判別装置の異なる取付けを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の第一実施形態及び第二実施形態である絶縁劣化方向判別方法それぞれに使用する絶縁劣化方向判別装置1,2について図1乃至図6を用いて説明する。
【0026】
第一実施形態の絶縁劣化方向判別装置1は、責任分界点80と高圧受電設備81との間に配線されている引込ケーブル50にのみ取付けられる第一零相変流器11と、第一零相変流器11と高圧受電設備81との間の引込ケーブル50に取付けられる第二零相変流器12と、引込ケーブル50の受電端71から引出されて接地された引出シールド線53にのみ取付けられる第三零相変流器13と、第一零相変流器11が接続されると共に、第二零相変流器12と第三零相変流器13とが並列で接続され、入力された電流値を出力する出力手段30と、出力手段30から出力された電流値に基づき絶縁劣化情報を表示する表示手段とを具備している。
【0027】
より詳細に説明すると、本実施形態の絶縁劣化方向判別装置1は、受電端71側で接地されている引込ケーブル50に取付けられるものである。図1では、引込ケーブル50内の三本の電線をケーブル本線51として一本の実線で示すと共に、シールド線52を実線で示している。引込ケーブル50は、送電端70が高圧引込柱に備えられている計器用変成器等の区分開閉器82に接続されており、受電端71が高圧受電設備81に接続されている。引込ケーブル50の区分開閉器82との接続点が責任分界点80である。また、引込ケーブル50から引出されたシールド線52が引出シールド線53であり、受電端71から引出されて接地されている。
【0028】
第一零相変流器11、第二零相変流器12、及び第三零相変流器13はそれぞれ、クランプ式零相変流器である。クランプ式零相変流器は、開環可能である環状の検出部を備えている。これにより、開環した検出部にケーブルを通した後に閉環して、検出部の貫通孔にケーブルを挿通させた状態にすることができる。第一零相変流器11と第二零相変流器12の貫通孔には、引込ケーブル50のみが挿通されている。また、第三零相変流器13の貫通孔には、引出シールド線53のみが挿通されている。なお、第一零相変流器11乃至第三零相変流器13は、検出される電流の大きさとケーブルの太さに応じて電流値の測定範囲と貫通孔の孔径を変更可能である。ここでは、第一零相変流器11と第二零相変流器12は、電流値の測定範囲が1mA〜1000A、貫通孔の孔径が80mmのものを使用している。第三零相変流器13は、電流値の測定範囲が1mA〜120A、貫通孔の孔径が22mmのものを使用している。
【0029】
出力手段30は、第一零相変流器11が接続される第一入力端子21、第二零相変流器12と第三零相変流器13とが並列で接続される第二入力端子22、及び通信ネットワーク41を介してサーバ42に電流値を出力する通信手段を備えている。なお、出力手段30として、市販の漏れ電流計測装置を使用することができる。
【0030】
また、出力手段30は、入力された電流値が予め設定されたタップ値よりも大きい場合に、電流値を出力する。ここで、高圧電路には、ケーブル内の三本の電線で対地浮遊静電容量が不平衡になることにより、残留零相電圧が発生し小さな零相電流が流れる場合がある。このため、地絡事故が発生していなくても残留零相電圧に起因する零相電流を出力するおそれがある。従って、タップ値を設け、第一入力端子21及び第二入力端子22に入力された電流値がタップ値以上の場合にそれぞれの電流値を出力することにより、誤作動を防止することができる。タップ値は、25mA〜50mAとすることができる。タップ値が25mA未満では、残留零相電圧に起因する零相電流を出力するおそれがある。また、タップ値が50mAよりも大きいと、地絡時に出力手段30が動作しないおそれがある。従って、タップ値は、25mA〜50mAとするのが好適である。
【0031】
サーバ42は、主記憶装置と補助記憶装置とからなる記憶装置、記憶装置に記憶されたプログラムに従って情報処理を行う中央処理装置、通信ネットワーク41を介して情報の送受信を行う通信装置を主に具備するコンピュータで構成されている。サーバ42は、出力手段30から送信された電流値を受信し、記憶装置に保存すると共に、携帯電話40に送信する。サーバ42に保存された電流値は、携帯電話40を用いて閲覧することができる。
【0032】
表示手段としての携帯電話40は、主記憶装置と補助記憶装置とからなる記憶装置、記憶装置に記憶されたプログラムに従って情報処理を行う中央処理装置、通信ネットワーク41を介して情報の送受信を行う通信装置、及び表示装置を主に具備している。携帯電話40は、出力手段30からサーバ42を介して送信された電流値に基づき絶縁劣化情報を表示してユーザに報知する。ここで、絶縁劣化情報は、第一入力端子21に入力された電流値と、第二入力端子22に入力された電流値の情報を有するものである。表示手段が携帯電話40であることにより、本実施形態の絶縁劣化方向判別装置1の取付場所から離れた場所にいる場合であっても、地絡事故が発生したことを瞬時に把握することができる。
【0033】
次に、本実施形態の絶縁劣化方向判別装置1を用いた絶縁劣化判別方法について図2を用いて説明する。本実施形態の絶縁劣化判別方法は、第一零相変流器11で第一電流を検出する第一電流検出工程S1と、第二零相変流器12で第二電流を検出する第二電流検出工程S2と、第三零相変流器13で第三電流を検出する第三電流検出工程S3と、第二電流と第三電流とを合成し、第四電流を得る合成工程S4と、第一電流と第四電流の大きさを比較し、第一電流が第四電流よりも大きい場合に、電源側の絶縁劣化であると判別し、第四電流が第一電流よりも大きい場合に、負荷側の絶縁劣化であると判別する判別工程S5とを具備している。
【0034】
地絡事故が発生すると、第一電流検出工程S1では、第一零相変流器11により検出された引込ケーブル50のケーブル本線51とシールド線52に流れる零相電流が、第一電流として第一入力端子21に入力される。第二電流検出工程S2では、第二零相変流器12により検出された引込ケーブル50のケーブル本線51とシールド線52に流れる零相電流が、第二電流として第二入力端子22に入力される。第三電流検出工程S3では、第三零相変流器13により検出された引出シールド線53に流れる零相電流が、第三電流として第二入力端子22に入力される。
【0035】
合成工程S4では、第二零相変流器12と第三零相変流器13とが第二入力端子22に並列で接続されていることにより、第二電流と第三電流とが合成される。そして、合成された第四電流が第二入力端子22に入力される。従って、絶縁劣化方向判別装置1は、第二電流と第三電流を合成するための複雑な回路を具備していない。入力された第一電流と第四電流の大きさは、出力手段30により通信ネットワーク41に接続されたサーバ42を介して携帯電話40に出力される。
【0036】
判別工程S5では、携帯電話40に表示された絶縁劣化情報をユーザが参照して判別する。絶縁劣化情報である第一入力端子21及び第二入力端子22に入力された電流値、すなわち第一電流と第四電流の大きさを比較し、第一電流が大きい場合は、絶縁劣化方向が電源側であると判別することができる。また、第四電流が大きい場合は、絶縁劣化方向が負荷側であると判別することができる。
【0037】
次に、本実施形態の絶縁劣化方向判別装置1を用いて、絶縁劣化方向が判別できる原理について図3を用いて説明する。図3は、図1での三つの零相変流器の取付位置のみを示したものである。図1と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0038】
図3において、Caは送電端70から電源側の対地静電容量、Cbは引込ケーブル50の対地静電容量、Ccは受電端71から負荷側の対地静電容量を示している。また、零相変流器の記号のK及びLは零相変流器の極性を示している。極性Kから極性L方向に零相電流が流れる場合は、正(+)の電流が検出され、極性Lから極性K方向に零相電流が流れる場合は、負(−)の電流が検出される。ここで、第一零相変流器11及び第二零相変流器12は、電源側を極性Kとして取付けられ、第三零相変流器13は接地点91側を極性Kとして取付けられる。つまり、第一零相変流器11及び第二零相変流器12は、極性の向きを同一にして引込ケーブル50にのみ取付けられているため、同一の電流が検出される。また、シールド線52と引出シールド線53とを零相電流が流れる場合、第三零相変流器13と、第一零相変流器11及び第二零相変流器12とで、正負が異なって検出される。
【0039】
図3(a)に示すように、電源側で地絡した場合は、電源側の地絡点90に向かって地絡電流Igが流れる。具体的には、ケーブル本線51を電源側に向かってIcが流れる。また、Ibが引出シールド線53とシールド線52を通り、ケーブル本線51に流入して電源側に向かって流れる。この時、第一零相変流器11及び第二零相変流器12では、ケーブル本線51を流れる−Icとシールド線52を流れる−Ibとが検出される。また、第三零相変流器13では引出シールド線53を流れる+Ibが検出される。結果として、第一零相変流器11で検出される第一電流の大きさは、|−Ib−Ic|=Ib+Icになる。また、第二零相変流器12で検出される第二電流と、第三零相変流器13で検出される第三電流との合成電流である第四電流の大きさは、|(−Ib−Ic)+(Ib)|=Icになる。従って、電源側で地絡した場合は、第一電流が第四電流よりも大きい。
【0040】
図3(b)に示すように、負荷側で地絡した場合は、負荷側の地絡点90に向かって地絡電流Igが流れる。具体的には、Iaがケーブル本線51を負荷側に流れる。また、Ibが引出シールド線53とシールド線52を通り、ケーブル本線51に流入して負荷側に向かって流れる。この時、第一零相変流器11及び第二零相変流器12では、ケーブル本線51を流れる+Ia、シールド線52を流れる−Ib、及びシールド線52から流入してケーブル本線51を流れる+Ibが検出される。従って、Ibは打消され、+Iaのみが検出される。第三零相変流器13では、引出シールド線53を流れる+Ibが検出される。結果として、第一電流の大きさは、Iaになり、第二電流と第三電流の合成電流である第四電流の大きさは、Ia+Ibになる。従って、負荷側で地絡した場合は、第四電流が第一電流よりも大きい。
【0041】
図3(c)に示すように、引込ケーブル50内で地絡した場合は、地絡電流Igはケーブル本線51からシールド線52に流入し接地点91へ流れる。この時、第一零相変流器11及び第二零相変流器12では、ケーブル本線51を流れる−Ic、シールド線52を流れる+Ia,+Icが検出される。従って、Icは打消され、+Iaのみが検出される。また、第三零相変流器13では、引出シールド線53を流れる−Ia,−Icが検出される。結果として、第一電流の大きさは、Iaになり、第二電流と第三電流の合成電流である第四電流の大きさは、|Ia+(−Ia−Ic)|=Icになる。ここで、Iaは送電端70から電源側の対地静電容量Caに比例し、Icは受電端71から負荷側の対地静電容量Ccに比例する。対地静電容量Ca,Ccは、それぞれの高圧電路の長さに比例するため、CaがCcよりも大きい。従って、引込ケーブル50内で地絡した場合は、第一電流が第四電流よりも大きい。
【0042】
図3に示した零相変流器の取付けにおいて、第一電流が第四電流よりも大きい場合は、上記のように、電源側と、引込ケーブル50内で地絡事故が発生した場合である。逆に、第四電流が第一電流よりも大きい場合は、負荷側で地絡事故が発生した場合である。従って、第一零相変流器11で検出された第一電流の大きさと、第二零相変流器12で検出された第二電流と第三零相変流器13で検出された第三電流の合成電流である第四電流の大きさを比較するという簡易な方法により、絶縁劣化方向を判別することができる。
【0043】
ここで、引込ケーブル50内に地絡事故が発生した場合を負荷側の絶縁劣化と判別することもできる。以下に、詳細を説明する。
【0044】
図4は、引込ケーブル50内で発生した地絡事故を、負荷側の絶縁劣化と判別する場合の絶縁劣化方向判別装置1の取付けを示した図である。図4では、受電端71から引出された引出シールド線53が巻戻されて第二零相変流器12に極性L側から挿通されている。この様に取付けることで、第二零相変流器12ではシールド線52に流れる電流を、引出シールド線53に流れる電流で打消すことができる。
【0045】
引込ケーブル50内で地絡事故が発生した時、第一零相変流器11では、ケーブル本線51を流れる−Ic、シールド線52を流れる+Ia,+Icが検出される。つまり、Icが打消され、+Iaのみが検出される。そして、第二零相変流器12では、ケーブル本線53を流れる−Ic、シールド線52を流れる+Ia,+Ic、極性L側から挿通された引出シールド線53を流れる−Ia,−Icが検出される。つまり、+Ia,+Icが−Ia,−Icに打消され、−Icのみが検出される。第三零相変流器13では、引出シールド線53を流れる−Ia,−Icが検出される。結果として、第一電流の大きさはIaになり、第四電流の大きさは|(−Ic)+(−Ia−Ic)|=Ia+2Icになる。従って、第四電流が第一電流よりも大きいことから、引込ケーブル50内で地絡事故が発生した場合に、負荷側の地絡と判別することができる。
【0046】
図4の取付けにおいて電源側で地絡事故が発生した場合、第一零相変流器11ではケーブル本線51を流れる−Ic、シールド線52を流れる−Ibが検出される。第二零相変流器12では、ケーブル本線51を流れる−Ic、シールド線52を流れる−Ib、引出シールド線53を流れるIbが検出される。つまり、Ibが打消され、−Icのみが検出される。第三零相変流器13では、引出シールド線53を流れる+Ibが検出される。結果として、第一電流の大きさは、|−Ib−Ic|=Ib+Icになる。また、第四電流の大きさは、|−Ic+Ib|=Ib−Icになる。従って、第一電流が第四電流よりも大きいことから、図1と同様に電源側の地絡事故と判別することができる。
【0047】
また、図4の取付けにおいて負荷側で地絡事故が発生した場合、第一零相変流器11では、ケーブル本線51を流れる+Ia及び+Ib、シールド線52を流れる−bが検出される。つまり、Ibが打消され、+Iaのみが検出される。第二零相変流器12では、ケーブル本線51を流れる+Ia及び+Ib、引出シールド線53を流れる+Ib、シールド線52を流れる−Ibが検出される。つまり、シールド線52と引出シールド線53を流れるIbが打消され、+Ia及び+Ibのみが検出される。第三零相変流器13では引出シールド線53を流れる+Ibが検出される。結果として、第一電流の大きさはIaになり、第四電流の大きさは、|Ia+Ib+Ib|=Ia+2Ibになる。従って、第四電流が第一電流よりも大きいことから、図1と同様に負荷側の地絡事故と判別することができる。
【0048】
なお、図1及び図4に示した以外の絶縁劣化方向判別装置1の取付けをした場合、具体的には、第一零相変流器11に引出シールド線53を挿通させた場合等では、CbやCcの大きさによっては第一電流と第四電流の差が小さくなり、逆転も起こりうることから、明確な判別が困難になる。
【0049】
上記のように、本実施形態の絶縁劣化方向判別装置1によれば、三つの零相変流器を用い、地絡事故発生時に第一零相変流器11で検出される第一電流の大きさと、第二零相変流器12で検出される第二電流と第三零相変流器13で検出される第三電流との合成電流である第四電流の大きさとを比較することにより、絶縁劣化方向を判別することができる。
【0050】
また、二つの電流の大きさを比較して絶縁劣化方向を判別する容易な絶縁劣化方向判別方法であるため、複雑な回路を必要とせず、装置を簡易な構成とすることができる。更に、引込ケーブル50及び引出シールド線53に三つの零相変流器を取付けるだけでよいため、取付作業が容易である。
【0051】
次に、第二実施形態の絶縁劣化方向判別装置2について図5及び図6を用いて説明する。本実施形態の絶縁劣化方向判別装置2は、送電端70側で引込ケーブル50が接地されている場合に使用するものである。本実施形態の絶縁劣化方向判別装置2は、第一零相変流器11乃至第三零相変流器13の取付位置が第一実施形態の絶縁劣化方向判別装置1と相違しており、その他の構成は第一実施形態の絶縁劣化方向判別装置1と同一である。従って、図5及び図6では、本実施形態の絶縁劣化方向判別装置2の第一零相変流器11乃至第三零相変流器13の取付位置のみを示し、その他の構成の図示は省略する。
【0052】
本実施形態の絶縁劣化方向判別装置2は、第一実施形態の絶縁劣化方向判別装置1と同様に、責任分界点80と高圧受電設備81との間に配線されている引込ケーブル50と(図1参照)、引込ケーブル50の送電端70から引出されて接地された引出シールド線53とに取付けられる第一零相変流器11と、第一零相変流器11と高圧受電設備81との間の引込ケーブル50に取付けられる第二零相変流器12と、引出シールド線53にのみ取付けられる第三零相変流器13と、第一零相変流器11が接続されると共に、第二零相変流器12と第三零相変流器13とが並列で接続され、入力された電流値を出力する出力手段30と、出力手段30から出力された電流値に基づき絶縁劣化情報を表示する表示手段とを具備している。
【0053】
本実施形態の絶縁劣化方向判別装置2も、引込ケーブル50内で発生した地絡事故を電源側と判別する場合と、負荷側と判別する場合とで二つの取付けがある。引込ケーブル50内で発生した地絡事故を電源側とする場合は、図5に示したように第一零相変流器11乃至第三零相変流器13を取付ける。すなわち、引込ケーブル50の送電端70から引出した引出シールド線53を第一零相変流器11と第二零相変流器12とに極性K側から挿通させる。図5に示したように取付けた場合、検出される第一電流及び第四電流の大きさは、図1の取付けの場合と同一になる。つまり、電源側と引込ケーブル50内で地絡事故が発生した場合は、第一電流が第四電流よりも大きい。また、負荷側で地絡事故が発生した場合は、第四電流が第一電流よりも大きい。従って、引込ケーブル50内で地絡事故が発生した場合は、電源側と判別される。
【0054】
また、引込ケーブル50内で発生した地絡事故を負荷側と判別する場合は、図6に示したように第一零相変流器11乃至第三零相変流器13を取付ける。すなわち、引込ケーブル50の送電端70から引出した引出シールド線53を第一零相変流器11にのみ極性K側から挿通させる。図6に示したように第一零相変流器11乃至第三零相変流器13を取付けた場合、検出される第一電流及び第四電流の大きさは図4の取付けの場合と同一になる。つまり、電源側地絡事故が発生した場合は、第一電流が第四電流よりも大きい。また、負荷側と引込ケーブル50内で地絡事故が発生した場合は、第四電流が第一電流よりも大きい。従って、引込ケーブル50内で地絡事故が発生した場合は、負荷側と判別される。
【0055】
第二実施形態の絶縁劣化方向判別装置2によれば、引込ケーブル50が送電端70側で接地されている場合も取付けることができる。
【0056】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0057】
例えば、上記の実施形態では、ユーザが第一電流と第四電流の大きさに基づき絶縁劣化方向を判別する場合を例示したが、表示手段が判別手段を備え、絶縁劣化方向を表示してもよい。この場合は、ユーザがより容易に絶縁劣化方向を把握することができる。
【符号の説明】
【0058】
1,2 絶縁劣化方向判別装置
11 第一零相変流器
12 第二零相変流器
13 第三零相変流器
30 出力手段
40 携帯電話(表示手段)
50 引込ケーブル
52 シールド線
53 引出シールド線
80 責任分界点
81 高圧受電設備
図1
図2
図3
図4
図5
図6