特許第6025822号(P6025822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6025822炭化珪素質多孔体、ハニカム構造体及び電気加熱式触媒担体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025822
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】炭化珪素質多孔体、ハニカム構造体及び電気加熱式触媒担体
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/06 20060101AFI20161107BHJP
   C04B 35/565 20060101ALI20161107BHJP
   B01J 27/224 20060101ALI20161107BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20161107BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20161107BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   C04B38/06 E
   C04B35/56 101C
   B01J27/224 A
   B01J35/04 301P
   B01J32/00
   B01D39/20 D
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-508263(P2014-508263)
(86)(22)【出願日】2013年3月28日
(86)【国際出願番号】JP2013060262
(87)【国際公開番号】WO2013147321
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2015年11月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-73692(P2012-73692)
(32)【優先日】2012年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】冨田 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】松島 潔
(72)【発明者】
【氏名】井上 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 義政
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−176185(JP,A)
【文献】 特許第4307781(JP,B2)
【文献】 特許第4398260(JP,B2)
【文献】 特開平08−218857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 38/00−38/10
B01D 53/86
B01J 27/224
B01J 35/04
B01J 37/34
C04B 35/565−35/577
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素粒子と、金属珪素と、酸化物相とを含み、前記炭化珪素粒子どうしが前記金属珪素及び前記酸化物相の少なくとも一方を介して結合されている炭化珪素質多孔体であって、
前記酸化物相は、母相と、該母相中に分散し該母相より熱膨張率の高い分散相とを備え、
炭化珪素粒子の含有率の下限値が50質量%であり、上限値が80質量%であり、金属珪素の含有率の下限値が15質量%であり、上限値が45質量%であり、酸化物の含有率の下限値が1質量%であり、上限値が25質量%である、
炭化珪素質多孔体。
【請求項2】
前記酸化物相中の前記分散相の含有率の下限値は1質量%であり、上限値は40質量%である、請求項1に記載の炭化珪素質多孔体。
【請求項3】
前記分散相の平均粒径の下限値が0.1μmであり、上限値が5μmである、請求項1又は2に記載の炭化珪素質多孔体。
【請求項4】
前記分散相は、板状、針状、繊維状である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化珪素質多孔体。
【請求項5】
前記母相は、アルカリ土類金属、アルミニウム、及び、珪素を含む酸化物であり、前記分散相は、アルカリ土類金属、アルミニウム、及び、珪素のうちの1種以上を含む酸化物である、請求項1〜のいずれか1項に記載の炭化珪素質多孔体。
【請求項6】
前記母相は、コーディエライトである、請求項1〜のいずれか1項に記載の炭化珪素質多孔体。
【請求項7】
前記分散相は、ムライトである、請求項1〜のいずれか1項に記載の炭化珪素質多孔体。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の炭化珪素質多孔体で構成される、ハニカム構造体。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の炭化珪素質多孔体を利用した、電気加熱式触媒担体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素質多孔体、ハニカム構造体及び電気加熱式触媒担体に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素粒子を金属珪素及び酸化物相で結合した炭化珪素質多孔体は、耐熱衝撃性に優れることで触媒担体やDPF用材料として利用されている(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4307781号公報
【特許文献2】特許第4398260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、サイズの大型化やセル構造の複雑化、あるいは、使用環境が過酷になるのに伴い、従来の炭化珪素質多孔体と比較して、さらなる耐熱衝撃性の向上が求められている。ところで、耐熱衝撃性の指標となる熱衝撃破壊抵抗係数R’は、破壊強度をσ、ポアソン比をν、熱伝導率をκ、ヤング率をE、熱膨張係数をαとすると、
R’=σ・(1−ν)・κ/E・α
で表される。このため、耐熱衝撃性の向上には、強度を高く、ポアソン比を低く、熱伝導率を高く、ヤング率を低く、熱膨張係数を低くすることが求められており、これらのいずれかを向上させる必要がある。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、耐熱衝撃性が高い炭化珪素質多孔体を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、炭化珪素粒子と、金属珪素と、コーディエライトを含む酸化物相とを含む炭化珪素質多孔体につき、種々検討した。このように種々検討したところ、酸化物相としてコーディエライトとムライトを含み、コーディエライトにムライトが分散したものが耐熱衝撃性に優れることを見いだした。さらに、酸化物相は、コーディエライトにムライトが分散したものに限られず、母相に母相より熱膨張率の高い分散相が分散していればよいことを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の第1は、炭化珪素粒子と、金属珪素と、酸化物相とを含み、前記炭化珪素粒子どうしが前記金属珪素及び前記酸化物相の少なくとも一方を介して結合されている炭化珪素質多孔体である。更に、この炭化珪素質多孔体の前記酸化物相は、母相と、該母相中に分散し該母相より熱膨張率の高い分散相とを備えたものである。
【0008】
本発明の第2及び第3は、それぞれ、本発明の第1の炭化珪素質多孔体で構成されるハニカム構造体及び電気加熱式触媒担体である。
【発明の効果】
【0009】
この炭化珪素質多孔体では、従来の炭化珪素質多孔体に比べて、耐熱衝撃性に優れる。ここで、耐熱衝撃性は、例えば、所定の高温で維持した後、室温に取り出したときのクラックの有無によって判断される。本発明の第2のハニカム構造体や本発明の第3の電気加熱式触媒担体は、いずれも本発明の第1の炭化珪素質多孔体を使用したものであるため、耐熱衝撃性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の炭化珪素質多孔体の微構造写真である。
図2】比較例4の炭化珪素質多孔体の微構造写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体は、炭化珪素粒子と、金属珪素と、酸化物相とを含み、炭化珪素粒子どうしが金属珪素及び酸化物相の少なくとも一方を介して結合されているものである。また、本発明の第1の炭化珪素質多孔体は、焼結助剤としてホウ素やカーボン、金属酸化物が含まれていてもよく、BC、希土類金属の酸化物が含まれていてもよい。炭化珪素質多孔体の形状としては、例えば、板状、チューブ状、レンコン状、ハニカム状などが挙げられる。ハニカム状の場合には、例えば、隔壁の厚さの最小値を、30μmとすることが好ましく、50μmとすることが更に好ましい。また、隔壁の厚さの最大値を、1000μmとすることが好ましく、500μmとすることが更に好ましく、200μmとすることが特に好ましい。また、セル密度の最小値を、10セル/cmとすることが好ましく、20セル/cm、とすることが更に好ましく、50セル/cmとすることが特に好ましい。また、セル密度の最大値を、200セル/cmとすることが好ましく、150セル/cmとすることが更に好ましい。
【0012】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体の酸化物相は、母相と、母相中に分散して存在している分散相とを備えている。また、分散相は母相より熱膨張率が高い。ここで、母相と分散相との熱膨張率(線熱膨張係数)の差は特に限定されないが、例えば、1×10−6/K以上1×10−5/K以下が好ましい。なお、酸化物相は結晶質でも非晶質でもよいし、両者を含むものでもよい。
【0013】
母相は、アルカリ土類金属、アルミニウム、及び、珪素を含む酸化物であることが好ましい。アルカリ土類金属としては、Mg、Ca、Srが好ましく、Mgがより好ましい。具体的には、コーディエライト(MgAlSi18)、サフィリン(MgAl10Si23)、アノーサイト(CaAlSi)、ストロンチウムアルミノシリケート(SrAlSi)などが挙げられる。このうち、コーディエライトが好ましい。コーディエライトは、熱膨張率が小さく、耐熱衝撃性をより高めることができるからである。
【0014】
分散相は、アルカリ土類金属、アルミニウム、及び、珪素のうちの1種以上を含む酸化物であることが好ましい。アルカリ土類金属、アルミニウム、及び、珪素の全てを含むものとしては、サフィリン、アノーサイト、ストロンチウムアルミノシリケートなどが挙げられる。アルカリ土類金属、アルミニウム、及び、珪素のうちの2種を含むものとしては、ムライト(AlSi13)、スピネル(MgAl)、フォルステライト(MgSiO)、プロトエンスタタイト(MgSiO)などが挙げられる。また、アルカリ土類金属、アルミニウム、及び、珪素のうちの1種を含むものとしては、クリストバライト(SiO)、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、マグネシア(MgO)などが挙げられる。これらのうち、分散相は、ムライトが好ましい。耐熱衝撃性を高めることができるからである。特に、母相がコーディエライトの場合に耐熱衝撃性をより高めることができる。
【0015】
参考として、表1に、母相や、分散相として例示した酸化物の室温〜800℃付近での線熱膨張係数の概略値を示す。
【0016】
【表1】
【0017】
酸化物相中の分散相の含有率の下限値は、1質量%であることが好ましい。また、酸化物相中の分散相の含有率の上限値は、40質量%であることが好ましい。1質量%以上であれば、耐熱衝撃性を高める効果が得られる。また、40質量%以下であれば、熱膨張による体積変化が大きくなりすぎない。酸化物相中の分散相の含有率の下限値は、7質量%であることが更に好ましい。また、酸化物相中の分散相の含有率の上限値は、38質量%であることが更に好ましい。
【0018】
酸化物相において、分散相の平均粒子径の下限値は、0.1μmであることが好ましく、0.2μmであることが更に好ましく、0.3μmであることが特に好ましい。分散相の平均粒子径の上限値は、5μmであることが好ましく、4μmであることが更に好ましく、3μmであることが特に好ましい。0.1μm以上であれば、耐熱衝撃性を高めることができる。また、5μm以下であれば、分散相の熱膨張による変形が大きくなりすぎない。ここで、分散相の粒子の大きさ(粒子径)は、微構造観察したときの長径と短径の平均値として求めるものとすることができる。なお、ここでいう粒子径は、観察視野に含まれる分散相の平均値(平均粒径)をいうものとする。なお、微構造観察は2000〜5000倍で行った。分散相の形状は、等方的な形状(例えば球状)でもよいし、板状、針状、繊維状のような異方性の大きな形状でもよいが、異方性の大きな形状がより好ましく、針状が更に好ましい。耐熱衝撃性をより高めることができるからである。
【0019】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体は、炭化珪素の含有率の下限値が50質量%であ、上限値が80質量%である。また、金属珪素の含有率の下限値が15質量%であ、上限値が45質量%である。また、酸化物の含有率の下限値が1質量%であ、上限値が25質量%である。更に、本発明の第1の炭化珪素質多孔体は、炭化珪素の含有率の下限値が55質量%であることが更に好ましく、上限値が75質量%であることが更に好ましい。また、金属珪素の含有率の下限値が20質量%であることが更に好ましく、上限値が40質量%であることが更に好ましい。また、酸化物の含有率の下限値が2質量%であることが更に好ましく、上限値が20質量%であることが更に好ましい。こうすれば、耐熱衝撃性や抵抗発熱特性が一層向上する。
【0020】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体の強度は、特に限定するものではないが、下限値が10MPaであることが好ましく、20MPaであることが更に好ましい。本発明の第1の炭化珪素質多孔体の強度は、上限値が80MPaであることが好ましく、70MPaであることが更に好ましい。強度が10MPaより小さいと、耐熱衝撃性が低下するため好ましくない。なお、強度は高いに越したことはないが、炭化珪素質多孔体を使用している関係上、80MPaが上限になる。本明細書で、強度は、炭化珪素質多孔体がハニカム構造体(即ち、ハニカム構造の炭化珪素質多孔体)の場合には、以下のようにして算出した値である。ハニカム構造の炭化珪素質多孔体をセルが貫通する方向を長手方向とした試験片に加工し、JIS R1601に準拠した曲げ試験により曲げ強度を算出した後、別途計測したハニカム構造体の開口率を用いて下記式により算出した値である。
強度=ハニカム構造体の曲げ強度/{1−(開口率/100)}
【0021】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体のヤング率は、特に限定するものではないが、下限値が5GPaであることが好ましい。また、本発明の第1の炭化珪素質多孔体のヤング率の上限値が50GPaであることが好ましい。ヤング率が5GPaより小さいと、剛性が小さすぎるため好ましくない。また、ヤング率が50GPaより大きいと、耐熱衝撃性が低下するため好ましくない。本明細書では、ヤング率は、炭化珪素質多孔体がハニカム構造体(即ち、ハニカム構造の炭化珪素質多孔体)の場合には、以下のようにして算出した値である。ハニカム構造の炭化珪素質多孔体をセルが貫通する方向を長手方向とした試験片に加工し、JIS R1602に準拠した共振法(吊り下げスパン50mm)によりヤング率を算出した後、別途計測したハニカム構造体の開口率を用いて下記式により算出した値である。
ヤング率=ハニカム構造体のヤング率/{1−(開口率/100)}
【0022】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体は、ヤング率に対する強度の比(強度/ヤング率比)の下限値が、1.2×10−3であることが好ましく、1.6×10−3であることが更に好ましい。本発明の第1の炭化珪素質多孔体は、ヤング率に対する強度の比(強度/ヤング率比)の上限値が、3.0×10−3であることが好ましく、2.0×10−3であることが更に好ましい。
【0023】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体は、室温〜800℃の線熱膨張係数の下限値が、3.8×10−6/Kであることが好ましく、4.0×10−6/Kであることが更に好ましい。本発明の第1の炭化珪素質多孔体は、室温〜800℃の線熱膨張係数の上限値が、4.8×10−6/Kであることが好ましく、4.7×10−6/Kであることが更に好ましい。線熱膨張係数は小さいに越したことはないが、炭化珪素質多孔体を使用している関係上、3.8×10−6/Kが下限となる。また、4.8×10−6/Kより大きいと、耐熱衝撃性が低下するため好ましくない。本明細書において、熱膨張係数は、JIS R1618に準拠する方法で、測定した値である。具体的には、ハニカム構造体から縦3セル×横3セル×長さ20mmの試験片を切り出し、40〜800℃のA軸方向(ハニカム構造体の流路に対して平行方向)の平均線熱膨張係数(熱膨張係数)を測定した値である。
【0024】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体は、開気孔率の下限値が10%であることが好ましい。また、開気孔率の上限値が70%であることが好ましい。開気孔率が10%より小さいと、触媒担体として使用する際に触媒が担持され難くなるため好ましくない。開気孔率が70%より大きいと、体積抵抗率が大きくなりすぎるため好ましくない。なお、開気孔率の下限値は20%であることが更に好ましい。また、開気孔率の上限値は40%であることが更に好ましい。本明細書で、開気孔率は、水銀圧入法(JIS R 1655準拠)による全細孔容積(単位:cm/g)と気相置換法による乾式自動密度測定器による見掛け密度(単位:g/cm)から、下記式により算出した値である。なお、開気孔率は、例えば、炭化珪素質多孔体を製造する際に用いる造孔材の量やSi/SiC比、焼結助剤量、焼成雰囲気などにより調整することができる。
開気孔率[%]=全細孔容積/{(1/見掛け密度)+全細孔容積} ×100
【0025】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体の平均気孔径は、特に限定するものではないが、下限値が2μmであることが好ましい。また、平均気孔径の上限値は、50μmであることが好ましい。平均気孔径が2μmより小さいと、触媒担体として使用する際に触媒が担持され難くなるため好ましくない。また、平均気孔径が50μmより大きいと、強度が低下するため好ましくない。平均気孔径の上限値は、15μmであることが更に好ましい。本明細書で、平均気孔径は、水銀圧入法(JIS R 1655準拠)で測定した値である。
【0026】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体の熱伝導率は、特に限定するものではないが、下限値が10W/m・Kであることが好ましい。熱伝導率の上限値は、70W/m・Kであることが好ましい。熱伝導率が10W/m・Kより小さいと、+極と−極とを取り付けて通電し発熱させたとしても温度分布にムラが生じるおそれがあるため好ましくない。なお、熱伝導率は高いに越したことはないが、炭化珪素質多孔体を使用している関係上、70W/m・Kが上限になる。本明細書で、熱伝導率は、比熱、熱拡散率及び嵩密度の積として求めた値である。
【0027】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体は、炭化珪素粒子が金属珪素によって結合された構造を有することが好ましい。また、金属珪素は酸化物相によって覆われていることが好ましい。こうすれば、耐熱衝撃性や抵抗発熱特性が一層向上しやすくなる。なお、金属珪素が酸化物相によって覆われている場合、酸化物相の膜厚の下限値は0.1μmであることが好ましい。また、酸化物相の膜厚の上限値は10μmであることが好ましい。
【0028】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体の製造方法について、以下に炭化珪素質多孔体がハニカム構造体の場合を例に挙げて説明する。
【0029】
まず、炭化珪素粉末と金属珪素粉末と酸化物相原料粉末とを混合し、必要に応じて、バインダー、界面活性剤、造孔材、水等を添加して、成形原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素粉末の質量との合計に対して、金属珪素粉末の質量の下限値が約40質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末の質量と金属珪素粉末の質量との合計に対して、金属珪素粉末の質量の上限値が約40質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末の平均粒子径の下限値は、5μmが好ましく、20μmが更に好ましい。炭化珪素粉末の平均粒子径の上限値は、100μmが好ましく、40μmが更に好ましい。金属珪素粉末の平均粒子径の下限値は、0.1μmであることが好ましく、1μmが更に好ましい。金属珪素粉末の平均粒子径の上限値は、20μmであることが好ましく、10μmが更に好ましい。酸化物相原料粉末の平均粒子径の下限値は、0.1μmであることが好ましく、1μmであることが更に好ましい。酸化物相原料粉末の平均粒子径の上限値は、50μmであることが好ましく、10μmであることが更に好ましい。これらの平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。なお、酸化物相原料粉末としては、母相の組成を有する原料と、それと反応しない、分散相の組成を有する原料とを用いてもよいし、焼成時に反応して母相と分散相とを生じるものを用いてもよい。後者の場合、例えば、アルカリ土類金属源とAl源とSi源を所定の組成になるような比率で用いればよい。アルカリ土類金属源、Al源、Si源としては、例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩などを用いることができる。具体的には、タルク(3MgO・4SiO・HO)、カオリン(2SiO・Al・2HO)、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウムなどを用いることができる。なお、原料の配合比率は、アルカリ土類金属酸化物(例えばMgO)とAlとSiOとの三元系状態図から、目的とする母相と分散相が得られるようなアルカリ土類金属酸化物(例えばMgO)とAlとSiOの比率を求め、それに基づいて定めてもよい。
【0030】
バインダーとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の有機バインダーを挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダーの含有量は、成形原料全体に対して2〜10質量%であることが好ましい。
【0031】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、成形原料全体に対して2質量%以下であることが好ましい。
【0032】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、成形原料全体に対して10質量%以下であることが好ましい。造孔材の平均粒子径の下限値は、10μmであることが好ましい。また、造孔材の平均粒子径の上限値は、30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。また、吸水性樹脂を使用する場合、好ましい平均粒子径は吸水後の値である。
【0033】
水の含有量は、成形しやすい坏土硬度となるように適宜調整されるが、成形原料全体に対して20〜60質量%であることが好ましい。
【0034】
次に、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0035】
次に、坏土を押出成形してハニカム成形体を形成する。押出成形には、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度等を有する口金を用いることが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。ハニカム成形体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを有する構造である。ハニカム成形体の隔壁厚さ、セル密度、外周壁の厚さ等は、乾燥、焼成における収縮を考慮し、作製しようとするハニカム構造体の構造に合わせて適宜決定することができる。こうして得られたハニカム成形体について、焼成前に乾燥を行うことが好ましい。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。乾燥の方法としては、成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。具体的には、乾燥の条件として、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜99質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。
【0036】
次に、ハニカム成形体の中心軸方向長さが、所望の長さではない場合は、両端面(両端部)を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法は特に限定されないが、丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。
【0037】
次に、ハニカム成形体を焼成して、ハニカム構造体を作製する。焼成の前に、バインダー等を除去するため、仮焼を行うことが好ましい。仮焼は、大気雰囲気において行うことが好ましい。仮焼の温度の下限値は200℃であることが好ましい。また、仮焼の温度の上限値は、600℃であることが好ましい。また、仮焼の時間の下限値は、0.5時間であることが好ましい。仮焼の時間の上限値は、20時間であることが好ましい。焼成は、窒素、アルゴン等の非酸化雰囲気下(酸素分圧は10−4atm以下)で行うことが好ましい。焼成温度の下限値は、1300℃であることが好ましい。焼成温度の上限値は、1600℃であることが好ましい。また、焼成は、常圧で行うことが好ましい。また、焼成時間の下限値は、1時間であることが好ましい。また、焼成時間の上限値は、20時間であることが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、酸化処理を行うことが好ましい。酸化処理は、大気中(水蒸気を含んでいてもよい)で行うことが好ましい。また、酸化処理の温度の下限値は、1100℃であることが好ましい。また、酸化処理の温度の上限値は1400℃であることが好ましい。また、酸化処理時間の下限値は、1時間であることが好ましい。また酸化処理時間の上限値は、20時間であることが好ましい。なお、仮焼及び焼成は、例えば、電気炉、ガス炉等を用いて行うことができる。
【0038】
本発明の第1の炭化珪素質多孔体で構成されるハニカム構造体は、例えば貴金属触媒を担持することによりDPFや触媒コンバーターとして利用される。つまり、本発明のハニカム構造体の一利用形態は、触媒担体である。また、触媒コンバーターのうち電気加熱方式の触媒コンバーターは、高い耐熱衝撃性が要求されるため、本発明の第1の炭化珪素質多孔体を利用した電気加熱式触媒担体を用いることが特に好ましい。
【0039】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【実施例】
【0040】
以下には、本発明の炭化珪素質多孔体で構成されるハニカム構造体を具体的に作製した例を示す。
【0041】
[実施例1]
炭化珪素粉末、金属珪素粉末、タルク(3MgO・4SiO・HO)、水酸化アルミニウム、シリカを表2に示す質量割合で混合した。ここで、タルク、水酸化アルミニウム、シリカが酸化物相を形成する材料である。なお、後述のX線回折測定によれば、実施例1では、母相がコーディエライト、分散相がムライトとなることが確認できた。これに、バインダーとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とし、成形原料を混練し、土練して円柱状の坏土を作製した。バインダーの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(金属Si)粉末の合計に対し7質量%であり、造孔材の含有量は炭化珪素粉末と金属珪素粉末の合計に対し2質量%であり、水の含有量は炭化珪素粉末と金属珪素粉末の合計に対し35質量%であった。炭化珪素粉末の平均粒子径は30μmであり、金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。また、造孔材の平均粒子径は、20μmであった。なお、炭化珪素、金属珪素及び造孔材の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0042】
得られた円柱状の坏土を押出成形機を用いてハニカム形状に成形し、ハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、ハニカム乾燥体を得た。
【0043】
得られたハニカム乾燥体を、大気雰囲気にて550℃で3時間かけて脱脂し、その後、Ar不活性雰囲気にて約1450℃で2時間焼成し、更に、1200℃で4時間、酸化処理を行ってハニカム構造の炭化珪素質多孔体(ハニカム構造体)を得た。
【0044】
このときのハニカム構造体の、隔壁の厚さは90μmであり、セル密度は90セル/cmであった。また、ハニカム構造体の底面は直径93mmの円形であり、ハニカム構造体のセルの延びる方向における長さは100mmであった。このハニカム構造体の断面の微構造写真を図1に示す。また、比較のため、分散相を有しない比較例4のハニカム構造体の断面微構造写真を図2に示す。金属Si,SiC,コーディエライト,ムライトの同定は、粉末XRDによる構成相の同定とともに、EPMAによる定性・定量分析及び元素マッピングの結果に基づいて行った。これにより、実施例1のハニカム構造体は、炭化珪素粒子と、金属珪素と、酸化物相とを含み、酸化物相が母相(コーディエライト)と母相中に分散する分散相(ムライト)とを備えていることが確認された。
【0045】
得られたハニカム構造の炭化珪素質多孔体の開気孔率は36%であり、平均細孔径は12μmであり、強度は41MPaであり、ヤング率は22GPaであり、熱伝導率は46W/mKであり、平均線熱膨張係数は4.3×10−6−1であった。また、耐熱衝撃性を評価した電気炉スポーリング試験では、評価が「○」であり、高い耐熱衝撃性を示した。これらの結果を表3にまとめた。なお、この表3には、後述する実施例2〜11及び比較例1〜5の結果も示した。
【0046】
なお、各パラメーターの値は、以下のようにして求めた値である。
・組成
ハニカム構造体の炭化珪素質多孔体の組成は、粉末X線回折の内部標準法により測定した。なお、原料の組成比と炭化珪素質多孔体の組成比とのズレは1%程度であった。
・開気孔率
水銀圧入法(JIS R 1655準拠)による全細孔容積[cm/g]と気相置換法による乾式自動密度測定機による見掛密度[g/cm]から、下記式にて算出した。
開気孔率[%]=全細孔容積/{(1/見掛密度)+全細孔容積}×100
・平均気孔径
水銀圧入法(JIS R 1655準拠)により測定した。
・強度
ハニカム構造体をセルが貫通する方向を長手方向とした試験片(縦5セル×横10セル×長さ40mm)に加工し、JIS R1601に準拠した曲げ試験によりハニカム構造体の曲げ強度を算出した。その後、別途計測した上記ハニカム構造体の開口率を用いて、下記式にて算出した。
強度=ハニカム構造体の曲げ強度/{1−(開口率/100)}
・ヤング率
ハニカム構造体をセルが貫通する方向を長手方向とした試験片(縦5セル×横10セル×長さ70mm)に加工し、吊り下げスパンを50mmとした共振法にてヤング率を測定した。
・熱伝導率
比熱と熱拡散率と嵩密度の積として算出した。なお、比熱はDSC法、熱拡散率は光交流法により測定した。また、嵩密度は下記式から算出した。
嵩密度=1/{(1/見掛密度)+全細孔容積}
・平均線熱膨張係数
JIS R1618に準拠して、室温〜800℃の平均線熱膨張係数を測定した。
・電気炉スポーリング試験(急速冷却試験)
ハニカム構造体を電気炉にて所定温度で2時間加熱し、均一な温度にした後、室温に取り出し、クラックの発生の有無を目視で観察した。このとき、所定温度を700℃としたときにクラックが発生しなかったものを「○」、所定温度を700℃としたときにクラックが発生したものを「△」、それ以下の温度でクラックが発生したものを「×」とした。クラックが発生する温度が高いものほど耐熱衝撃性が高いことを示す。
【0047】
[実施例2〜10]
原料組成を表2に示すものとした以外は実施例1に準じて実施例2〜10の炭化珪素質多孔体を製造した。
【0048】
[実施例11]
タルクの代わりに炭酸カルシウムを用い、原料組成を表2に示すものとした以外は実施例1に準じて実施例11の炭化珪素質多孔体を製造した。
【0049】
[比較例1,2]
タルクの代わりに炭酸ストロンチウムを用い、原料組成を表2に示すものとした以外は実施例1に準じて比較例1,2の炭化珪素質多孔体を製造した。
【0050】
[比較例3,4]
原料組成を表2に示すものとした以外は実施例1に準じて比較例3,4の炭化珪素質多孔体を製造した。
【0051】
[比較例5]
タルクとともに炭酸ストロンチウムを用い、原料組成を表2に示すものとした以外は実施例1に準じて比較例5の炭化珪素質多孔体を製造した。
【0052】
表3から明らかなように、電気炉スポーリング試験の評価は、実施例1〜11では「○」だったのに対して、比較例3〜5では「△」、比較例1,2では「×」であった。こうしたことから、比較例1〜5の炭化珪素質多孔体に比べて、実施例1〜11の炭化珪素質多孔体は耐熱衝撃性に優れることがわかった。
【0053】
こうした試験結果について、以下に考察する。実施例1〜11では、母相と分散相とを備え、分散相が母相より熱膨張係数が大きいという条件を満たしているのに対し、比較例1〜4では、分散相を備えておらず、比較例5は、分散相を備えているものの、母相が分散相より熱膨張係数が大きい。このため、実施例1〜11では、良好な試験結果が得られたのに対して、比較例1〜5では良好な結果が得られなかったと考えられる。また、実施例1〜11は、平均線熱膨張係数4.6×10−6/K以下、熱伝導率30W/mK以上、強度/ヤング率比1.60以上の全てを満たしたが、比較例1〜5は、平均線熱膨張係数、熱伝導率、強度/ヤング率比の少なくとも1つを満たしていなかった。このことも、実施例1〜11では、良好な試験結果が得られたのに対して、比較例1〜5では、良好な結果が得られなかった要因と考えられた。
【0054】
なお、母相をコーディエライト、分散相をムライトとする実施例1〜5では、平均線熱膨張係数が低く、熱伝導率が高く、強度/ヤング率比が高い傾向にあるから、この組み合わせが好ましいことがわかった。また、母相をコーディエライトとし、分散相の種類を異なるものとした実施例6〜10でも、良好な試験結果が得られたことから、分散相の種類は、ここに示したものでなくても、母相よりも熱膨張率の高いものであれば同様の効果が得られると推察された。また、母相をコーディエライトでなくアノーサイトとした実施例11でも、良好な試験結果が得られたことから、母相の種類は、ここに示したものでなくても、同様の効果が得られるものと推察された。
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の炭化珪素質多孔体は、触媒担体やDPF材料として利用することができる。例えば、本発明の炭化珪素質多孔体で構成されるニカム構造体は、例えば貴金属触媒を担持することにより触媒コンバーターとして利用される。つまり、ハニカム構造体の一利用形態は、触媒担体である。特に、触媒コンバーターのうち電気加熱方式の触媒コンバーターのための触媒担体は、高い耐熱衝撃性が要求されるため、本発明の炭化珪素質多孔体を利用することが特に好ましい。
図1
図2