特許第6025873号(P6025873)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6025873特に自動車用の内燃機関及びそのような内燃機関の作動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025873
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】特に自動車用の内燃機関及びそのような内燃機関の作動方法
(51)【国際特許分類】
   F02B 23/10 20060101AFI20161107BHJP
   F02B 23/00 20060101ALI20161107BHJP
   F02M 61/18 20060101ALI20161107BHJP
   F02M 61/14 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   F02B23/10 D
   F02B23/00 C
   F02M61/18 350Z
   F02M61/14 310S
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-556953(P2014-556953)
(86)(22)【出願日】2013年2月14日
(65)【公表番号】特表2015-507141(P2015-507141A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】EP2013000419
(87)【国際公開番号】WO2013120607
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2014年8月14日
(31)【優先権主張番号】102012002897.0
(32)【優先日】2012年2月14日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】ベツナー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ギルダイン,ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】カーデン,アーノルド
(72)【発明者】
【氏名】スンドハイム,ディルク
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−518499(JP,A)
【文献】 特開2002−021569(JP,A)
【文献】 特開2005−201062(JP,A)
【文献】 特開2005−098121(JP,A)
【文献】 特開2005−188305(JP,A)
【文献】 特開平06−081654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 23/00−23/10
F02M 61/14−61/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の内燃機関(10)であって、前記内燃機関(10)の少なくとも1つの内壁(16)により画定された少なくとも1つの燃焼室(12)、前記燃焼室(12)に割り当てられた少なくとも1つのインジェクタ(20)及び点火プラグ(30)を備え、前記インジェクタ(20)は、前記インジェクタ(20)の軸方向に対して少なくとも本質的に平行に伸びる前記内壁(16)の第1の内壁領域(34)により画定されている収容開口部(32)中に少なくとも部分的に収容されており、かつ前記インジェクタ(20)は、前記収容開口部(32)を介して前記燃焼室(12)へと通じる少なくとも1つの噴射孔(22)を有し、前記燃焼室(12)の方向には、前記第1の内壁領域(34)に直接、軸方向に対して傾斜して伸びる前記内壁(16)の更なる内壁領域(38)が連接し、この前記更なる内壁領域(38)によって、前記収容開口部(32)の、前記燃焼室(12)へと拡張された少なくとも本質的には円錐形の領域(36)が画定されており、かつ前記インジェクタ(20)によって、前記内燃機関(10)の燃料を前記燃焼室(12)中へ導入するために、少なくとも本質的に円錐形の噴射流(26)が生じうる、内燃機関(10)において、
前記更なる内壁領域(38)は、前記内壁領域(38)の長さ(e)にわたって前記インジェクタ(20)の半径方向に関して前記インジェクタ(20)から離されており、かつ少なくとも領域的に前記インジェクタ(20)と重なって配置されており、かつ50度以上90度以下の範囲の円錐開度(α)を有し、
前記円錐開度(α)は、前記噴射流(26)の噴霧角(γ)より小さく、
前記更なる内壁領域(38)と、前記燃焼室(12)中へ前記内燃機関(10)の燃料を導入するための前記インジェクタ(20)によって生じうる前記噴射流(26)との間の最少間隔(a)が、1mm以上4mm以下の範囲内であり、
前記インジェクタ(20)の吹き付け点のうちの1つと前記点火プラグ(30)のスパーク箇所(35)との間の間隔に対する、前記更なる内壁領域38のガイド長さFLの比が0.2以上0.35以下の範囲にある
ことを特徴とする、内燃機関(10)。
【請求項2】
前記更なる内壁領域(38)が、3mm以上6mm以下の範囲内の長さ(e)にわたって前記インジェクタ(20)の軸方向に関して伸びている
ことを特徴とする、請求項1記載の内燃機関(10)。
【請求項3】
前記第1の内壁領域(34)が、少なくとも間接的にインジェクタ(20)に接触することを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の内燃機関(10)。
【請求項4】
前記内燃機関(10)はガソリンエンジンとして構成されていることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の内燃機関(10)。
【請求項5】
前記インジェクタ(20)によって前記内燃機関(10)の層状運転及び/又は均質運転が実施可能である
ことを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の内燃機関(10)。
【請求項6】
直円柱の形で構成されている前記インジェクタ(20)の外周側面のジャケット面(37)と前記第1の内壁領域(34)とが、前記燃焼室(12)に対して共通の高さで終わっている
ことを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の内燃機関(10)。
【請求項7】
前記インジェクタ(20)が、外開き又は内開きインジェクタとして構成されている
ことを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の内燃機関(10)。
【請求項8】
前記更なる内壁領域(38)が、前記インジェクタ(20)の中心軸(28)に対して回転対称的に構成されている
ことを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の内燃機関(10)。
【請求項9】
自動車用の内燃機関(10)の作動方法であって、前記内燃機関(10)の少なくとも1つの内壁(16)により画定された少なくとも1つの燃焼室(12)、前記燃焼室(12)に割り当てられた少なくとも1つのインジェクタ(20)及び点火プラグ(30)を備え、前記インジェクタ(20)は、前記インジェクタ(20)の軸方向に対して少なくとも本質的に平行に伸びる前記内壁(16)の第1の内壁領域(34)により画定されている収容開口部(32)中に少なくとも部分的に収容されており、かつ前記インジェクタ(20)は、前記収容開口部(32)を介して前記燃焼室(12)へと通じる少なくとも1つの噴射孔(22)を有し、前記燃焼室(12)の方向には、前記第1の内壁領域(34)に直接、軸方向に対して傾斜して伸びる前記内壁(16)の更なる内壁領域(38)が連接し、この前記更なる内壁領域(38)によって、前記収容開口部(32)の、前記燃焼室(12)へと拡張された少なくとも本質的には円錐形の領域(36)が画定されており、かつ前記インジェクタ(20)によって、前記内燃機関(10)の燃料を前記燃焼室(12)中へ導入するために、少なくとも本質的に円錐形の噴射流(26)が生じる、内燃機関(10)の作動方法において、
前記更なる内壁領域(38)は、前記内壁領域(38)の長さ(e)にわたって前記インジェクタ(20)の半径方向に関して前記インジェクタ(20)から離されており、かつ少なくとも領域的に前記インジェクタ(20)と重なって配置されており、かつ50度以上90度以下の範囲の円錐開度(α)を有し、
前記円錐開度(α)は、前記噴射流(26)の噴霧角(γ)より小さく、
前記内燃機関(10)は、前記インジェクタ(20)によって層状運転で作動され、
前記更なる内壁領域(38)と、前記燃焼室(12)中へ前記内燃機関(10)の燃料を導入するための前記インジェクタ(20)によって生じうる前記噴射流(26)との間の最少間隔(a)が、1mm以上4mm以下の範囲内であり、
前記インジェクタ(20)の吹き付け点のうちの1つと前記点火プラグ(30)のスパーク箇所(35)との間の間隔に対する、前記更なる内壁領域38のガイド長さFLの比が0.2以上0.35以下の範囲にある
ことを特徴とする、内燃機関(10)の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載の、特に自動車用の内燃機関及び請求項の前段に記載の、そのような内燃機関の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、内燃機関の内壁によって画定された燃焼室及び燃焼室に割り当てられたインジェクタを備える直接噴射式ガソリン内燃機関を開示している。インジェクタは、燃焼室中へ燃料を導入するために用いられ、収容開口部中に少なくとも部分的に収容されている。その際、収容開口部は、インジェクタの軸方向に対して少なくとも本質的に平行に伸びる内壁の内壁領域によって画定されている。インジェクタは少なくとも1つの噴射孔を有し、この噴射孔は収容開口部を介して燃焼室へと通じている。このことは、内燃機関を作動するための燃料が、インジェクタの噴射孔及び内壁の収容開口部を介して燃焼室中へ導入されうること、特に噴射されうることを意味する。
【0003】
インジェクタは、少なくとも本質的には燃焼室中央に配置されており、少なくとも本質的には円錐形の燃料噴射流または燃料スプレーにより燃料を燃焼室中へ噴射することができる。インジェクタ自体は、噴射することにより、着火性の燃料−空気−混合物が点火プラグから一定の距離をおいて集まるように、燃焼室天井部に配置されている。これは、スプレーガイド式燃焼法である。
【0004】
特許文献2及び特許文献3から、内燃機関の少なくとも1つの内壁により画定された少なくとも1つの燃焼室及び燃焼室に割り当てられた少なくとも1つのインジェクタを有する内燃機関が公知である。それぞれのインジェクタは、収容開口部中に少なくとも部分的に収容されている。収容開口部は、インジェクタの軸方向に対して少なくとも本質的に平行に伸びる第1の内壁により画定されている。インジェクタは、収容開口部を介して燃焼室へと通じる少なくとも1つの噴射孔を有する。燃焼室の方向に、軸方向に対して傾斜して伸びる内壁の更なる内壁領域が、第1の内壁領域に直接連接している。この更なる内壁領域によって、収容開口部の、燃焼室へと拡張された少なくとも本質的には円錐形の領域は画定されている。更にインジェクタによって、内燃機関の燃料を燃焼室中へ導入するために、少なくとも本質的に円錐形の噴射流が生じうる。
【0005】
特に内燃機関のいわゆる層状運転において、インジェクタによって噴射される特に僅かな量の燃料では引火安定性及び燃焼安定性に関する問題が生じうることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許発明第199 11 023 C2号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1 548 248 A2号明細書
【特許文献3】独国特許出願第697 12 155 T2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明は、冒頭で記載した種類の内燃機関及びそのような内燃機関の作動方法を、特に高い燃焼安定性が実現可能であるように更に発展させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の特徴を有する特に自動車用の内燃機関及び請求項の特徴を有するそのような内燃機関の作動方法により達成される。本発明の有利かつ重要な更なる発展を伴う有利な実施形態は、他の請求項に記載されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の観点は、特に自動車及び特に自家用車用の内燃機関に関する。内燃機関は、内燃機関の少なくとも1つの内壁により画定された少なくとも1つの燃焼室、例えばシリンダを含む。更に、内燃機関は、燃焼室に割り当てられた少なくとも1つのインジェクタを含み、このインジェクタは収容開口部中に少なくとも部分的に収容されている。収容開口部は、インジェクタの軸方向に対して少なくとも本質的に平行に伸びる内壁の第1の内壁領域により画定されている。収容開口部は、例えば少なくとも本質的には円形にまたは直円柱として構成されていて、もしくはこの形状で第1の内壁領域により画定されている。
【0010】
インジェクタは、収容開口部を介して燃焼室へと通じる少なくとも1つの噴射孔を有する。従って噴射孔及び収容開口部を介して、内燃機関の燃料、特に液体燃料が、燃焼室中へと導入、特に噴射、特に直接噴射されうる。
【0011】
燃焼室の方向に、インジェクタの軸方向に対して傾斜して伸びる内壁の更なる内壁領域が第1の内壁領域に直接連接している。この更なる内壁領域によって、収容開口部の、燃焼室へと拡張された少なくとも本質的には円錐形の領域は画定されている。更にインジェクタによって、内燃機関の燃料を燃焼室中へ導入するために、少なくとも本質的に円錐形の噴射流が生じうる。
【0012】
本発明により、更なる内壁領域は、更なる内壁領域の長さにわたってインジェクタの半径方向に関してインジェクタから離されていて、かつ少なくとも領域的にインジェクタと重なって配置されている。更に、更なる内壁領域は50°以上90°以下の範囲の円錐開度を有し、その際円錐開度は噴射流の噴霧角より小さい。ここで、噴霧角は少なくとも本質的には円錐形の噴射流の円錐開度を特徴付け、かつ更なる内壁領域の円錐開度と概念的に特に良好に区別することができるように噴霧角と呼ぶ。
【0013】
更なる内壁領域の円錐開度が噴射流の噴霧角よりも小さいことによって、インジェクタにより作動する特に液体燃焼の噴射の結果生じる、噴射された燃料と燃焼室に供給された空気との雲状混合物は、更なる内壁領域、従って燃焼室の燃焼室天井部において安定化されうる。換言すると、更なる内壁領域のこのような構成によって、燃焼室内でのインジェクタ周囲の先細設計が成し遂げられ、従って雲状混合物は安定化されうる。このことにより、例えば燃焼室に割り当てられた点火プラグにおける雲状混合物の特に有利な及び安定した割り当てまたは供給が実現されえ、従って雲状混合物または燃料と空気とからなる混合物は点火プラグによって非常に良好に着火されえ、かつ安定して燃焼しうる。従って、燃焼室内の燃料−空気−混合物の望ましい燃焼を生じない燃焼停止の危険性を、特に低く抑えることができる。
【0014】
相応して構成された収容開口部故に、特に着火性の燃料−空気−混合物及び特に多量の着火性の燃料−空気−混合物が点火プラグまで達する。これは、この場合に特に雲状混合物が特に有利に燃焼室内で方向安定的に拡散しうるからである。
【0015】
このようにして成し遂げられた高い燃焼安定性は、インジェクタを用いて実施可能である内燃機関のいわゆる層状運転にとって特に有利である。このような層状運転は、特にガソリンエンジンとして構成された内燃機関において非常に低燃費かつ低排出の作動を可能にするが、燃料−空気−混合物の安定的燃焼を実現するためには一定の要求がある。この要求は、本発明による内燃機関により特に良好に満たされうる。
【0016】
層状運転において、燃料は、インジェクタによって点火上死点(ZOT)の直前に例えば2又は3回、時間的に非常に短時間に連続噴射することで、燃焼室中へ導入される。従来によれば、後続噴射は、先行噴射の混入特性において誘導された流体故に、先行噴射による影響を受け、着火性混合物の点火プラグへの供給が減少する。このことは、特に低排出値にとって有利である第2及び第3の少ない噴射量の場合に、引火安定性及び燃焼安定性に悪影響を与えうる。
【0017】
この問題は、本発明による内燃機関においては少なくとも減少している。主噴射に比べてより僅かな燃料噴射量での後続噴射の燃料−空気−混合物に対する主噴射(先行噴射)の流体影響は特に僅かであり、従って雲状混合物は方向安定的に拡散されている。このことにより、本発明の内燃機関を用いて特に有利なスプレーガイド式燃焼法が提示されえ、この方法においては、極僅かなミスファイア確率での高い燃焼安定性が、直接噴射及び外開き又は内開きインジェクタを用いるガソリンエンジンの層状運転において、特に僅かな排出を提示するための噴射時間と結びついて実現可能である。
【0018】
本発明の特に有利な更なる形態において、更なる内壁領域が、3mm以上6mm以下の範囲内の長さにわたってインジェクタの軸方向に対して伸びている。このことにより、特に高い燃焼安定性、従って僅かなミスファイア確率をもたらす特に有利な流体条件が実現可能である。
【0019】
第1の内壁領域が少なくとも間接的にインジェクタに接触する場合は、特に有利であることが判明した。従って、インジェクタは、特に収容開口部中へ限定的に収容されかつ保持されていて、かつ高い噴射圧でも内壁に関して不所望に移動しえない。
【0020】
更なる実施形態は、更なる内壁領域と燃焼室中へ燃料を噴射する際にインジェクタによって生じうる噴射流との間の最少間隔が、1mm以上4mm以下の範囲内であることにより特徴付けられている。このことにより噴射流及び相当する燃料−空気−混合物は、その拡散特性において安定化され、このことにより特に高い燃焼安定性と低いミスファイア確率がもたらされる。
【0021】
本発明の更なる形態において、内燃機関はガソリンエンジンとして構成されている。特に、ガソリンエンジンにおいては、多量の着火性混合物を点火プラグへ導くことができるために、次いで効率の良い低排出の作動を実現し並びに燃焼停止の危険性を低く抑えることができるために、雲状混合物の安定化が重要である。
【0022】
本発明の更なる形態において、インジェクタによって、内燃機関の層状運転及び/又は均質運転が実施可能である。このことにより、排出も内燃機関の燃費も特に低く抑えることができる。
【0023】
少なくとも本質的に直円柱の形で構成されているインジェクタの外周側面のジャケット面と第1の内壁領域とが燃焼室に対して共通の高さで終わっている場合が特に有利であることが判明した。換言すると、第1の内壁領域とインジェクタの外周側面のジャケット面とが燃焼室に対して共通の高さまで伸びている。このことにより特に有利な周囲環境条件が成し遂げられ、従って燃料の噴射から得られる雲状混合物は非常に良好に安定化されうる。
【0024】
本発明の更なる実施形態において、インジェクタは外開き又は内開きインジェクタとして構成されている。このことにより特に高い燃焼安定性が実現可能である。
【0025】
最後に、更なる内壁領域がインジェクタの中心軸に対して回転対称的に構成されている場合が特に有利であることが判明した。従ってこの更なる内壁領域は、時間効率が良く、かつ低コストで製造されうる。
【0026】
有利には、このインジェクタは、少なくとも本質的に燃焼室の中央に配置されている。換言すると、インジェクタの中心軸と燃焼室の中心軸とは重なる。このことは、これらの中心軸が一致していることを意味する。
【0027】
本発明の第2の観点は、内燃機関、特に本発明による内燃機関の作動方法に関する。内燃機関は、内燃機関の少なくとも1つの内壁により画定された少なくとも1つの燃焼室、及び燃焼室に割り当てられた少なくとも1つのインジェクタを有し、このインジェクタは、インジェクタの軸方向に対して少なくとも本質的に平行に伸びる内壁の内壁領域により画定されている収容開口部中に、少なくとも部分的に収容されている。
【0028】
インジェクタは少なくとも1つの噴射孔を有し、この噴射孔は収容開口部を介して燃焼室中へ通じており、その際燃焼室の方向には、第1の内壁領域に直接、軸方向に対して傾斜して伸びる内壁の更なる内壁領域が連接している。更なる内壁領域によって、収容開口部の、燃焼室へと拡張された少なくとも本質的には円錐形の領域は画定されている。
【0029】
この方法の範囲において、インジェクタによって、内燃機関の燃料を燃焼室中へ導入するために、少なくとも本質的に円錐形の噴射流が生じる。特に高い安定性を実現するために、本発明により、更なる内壁領域は、その更なる内壁領域の長さにわたってインジェクタの半径方向に関してインジェクタから離されかつ少なくとも領域的にインジェクタと重なって配置されていて、50°以上90°以下の範囲の円錐開度を有し、その際円錐開度は噴射流の噴霧角より小さく、その際内燃機関はインジェクタによって層状運転で作動される、ことができる。本発明の第1の観点の有利な実施形態は、本発明の第2の形態の有利な実施形態として見ることができ、またその逆もありうる。
【0030】
層状燃焼法とも呼ばれる層状運転において、高い過給運動が生じうる。通常、この高い過給運動は、燃焼安定性に不利に作用しうる。燃焼室の相応する構成により、この過給運動は今や低く抑えられるので、従って燃料と空気からなる雲状混合物は燃焼室内で安定に拡散し、かつ例えば点火プラグへ誘導されえ、次いでこの点火プラグによって雲状混合物は着火されうる。
【0031】
この内燃機関が、内燃機関に圧縮空気を供給するために少なくとも1つのエグゾーストターボチャージャーを有するいわゆる過給された内燃機関である場合、内燃機関のこの過給は通常非常に高い過給運動をもたらす。しかし燃焼室の構成に基づいて、点火プラグのところでの着火性混合物の形成が保証されうるため、特に頑強な層状運転が実現されえる。
【0032】
更に、例えば150bar以上300bar以下の範囲の特に高い燃料圧力で内燃機関を作動することが可能であり、従って特に効率の良い、従って低燃費での作動が実現可能である。
【0033】
有利には、少なくとも本質的に円錐形の収容開口部の底面直径は、インジェクタにより生じうる噴射流を妨げずに拡散しうるように選択されている。換言すると、第2の内壁領域は噴射流の拡散及び形成を妨げないことが規定されている。
【0034】
本発明の更なる利点、特徴及び詳細は、有利な実施形態の後述の説明から及び図により明らかである。明細書中上記した特徴及び特徴の組み合わせ、並びに後述の図面の説明で挙げられかつ/又は図中に単独で示された特徴及び特徴の組み合わせは、本発明の範囲を逸脱しない限り、そのつど示された組み合わせだけでなく他の組み合わせも又は単独でも使用可能である。
【0035】
図1は本発明の背景を説明するために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】シリンダヘッドの燃焼室天井部により画定された少なくとも1つのシリンダ及びシリンダに割り当てられたインジェクタであって、シリンダヘッドの収容開口部中に配置されているインジェクタを備え、このインジェクタによって収容開口部を介して燃料がシリンダ中へ噴射される、往復ピストン内燃機関として構成された内燃機関の概略断面を部分的に示す図である。
図2】収容開口部が少なくとも第1の内壁領域及びシリンダに連接している更なる内壁領域により画定されており、この更なる内壁領域によって、収容開口部の少なくとも本質的に円錐形の領域が画定されており、かつ更なる内壁領域の円錐開度が、少なくとも本質的に円錐形でありかつインジェクタによって生じうる噴射流の噴霧角より小さい、第1の実施形態による往復ピストン内燃機関として構成された内燃機関の概略断面を部分的に示す図である。
図3】第2の実施形態における図2による往復ピストン内燃機関の概略断面を部分的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図中、同じ又は機能的に同じ構成要素には同じ符号が付けられている。
【0038】
図1は、往復ピストン内燃機関として構成された、自動車、例えば自家用車用の内燃機関10を示す。図1中、内燃機関10の燃焼室12が見て取れる。内燃機関10はこのような燃焼室12を複数有していてもよい。ここでは、燃焼室12は内部で燃焼行程が進行するシリンダとして構成されている。
【0039】
内燃機関の高さ方向上方において、燃焼室12は燃焼室天井14によって画定されている。燃焼室天井部14は、例えば、内燃機関10のシリンダヘッド18の内壁16によって形成されている。その際シリンダヘッド18は、例えば内燃機関10のクランクケースと連結している。内燃機関10のクランクシャフトは、クランクケースに対して回転軸を中心にして回転可能にクランクケースに設置されている。
【0040】
燃焼室12は、側面ではシリンダ内壁によって画定されているが、このシリンダ内壁は図1では図示されておらず、シリンダクランクケースとして構成されたクランクケースによって形成されている。内燃機関10の高さ方向下方において、燃焼室12は、内燃機関10のピストンによって画定されている。ピストンは、燃焼室12中で、燃焼室天井14に関して直進運動可能に収容されていて、かつピストンピンを介してコネクティングロットと関節状に連結している。コネクティングロッドは、更に、クランクシャフトのクランクピンと関節状に連結している。この関節状の連結は、燃焼室12中のピストンの直進上下運動を、回転軸を中心とするクランクシャフトの回転運動へと変換することができる。
【0041】
燃焼室12には、インジェクタ20が割り当てられている。通常、インジェクタ20は噴射バルブとも、噴射エレメントとも呼ばれる。インジェクタ20を用いて、内燃機関10の作動のための液体燃料を燃料室12中に直接噴射することができる。このため、インジェクタ20は、燃焼室12へと通じる、インジェクタ20の噴射ノズル24の非常に概略的に示された少なくとも1つの噴射孔22を含む。
【0042】
図1中には、全体で26の符号を付けられた噴射流が概略的に示されており、この噴射流はインジェクタ20によって生じうる。このことは、インジェクタ20によって噴射流26を形成して液体燃料を燃焼室12中へ直接噴射可能であることを意味する。図1から明らかなように、インジェクタ20によって生じうる燃料からなる噴射流26は少なくとも本質的に円錐形で構成されており、かつ噴霧角γを有する。従って噴霧角γは、少なくとも本質的には円錐形の噴射流26の円錐開度である。更に、図1中にはインジェクタ20の中心軸28が示されている。中心軸28は、噴射流26及び燃焼室12の中心軸と一致する。換言すると、インジェクタ20、燃焼室12及び噴射流26のそれぞれの中心軸は一致している。
【0043】
更に、燃焼室12には点火プラグ30が割り当てられており、この点火プラグ30によって燃焼室12中の燃料−空気−混合物もしくは燃料と空気からなる雲状混合物に着火することができる。内燃機関10の作動の間、燃焼室12には、燃料の他に、シリンダヘッド18の吸気セクション及び吸気路を介して空気が供給される。空気は、インジェクタ20によって、燃焼室12中へ直接噴射された燃料と混合し、有利には、着火性の燃料−空気−混合物または雲状混合物を形成することができる。燃料−空気−混合物または雲状混合物は、燃料−空気−混合物の燃焼を開始するための点火プラグ30によって着火可能である。燃料−空気−混合物の着火のために、点火プラグ30の2つの電極31、33の間に少なくとも1つのスパークが生じ、このスパークは、いわゆるスパーク箇所35に形成される。インジェクタ20の噴射孔22はそれぞれ燃料が燃焼室12へ噴射される、いわゆるインジェクタ吹き付け点である。
【0044】
図1によれば、インジェクタ20が少なくとも部分的にシリンダヘッド18の収容開口部32中に収容されていることが明らかである。収容開口部32は、軸方向へ平行即ちインジェクタ20の中心軸28に対して少なくとも本質的に平行に伸びる、シリンダヘッド18の内壁16の内壁領域34によって画定されている。内壁領域34によって、収容開口部32の領域は画定されていて、この収容開口部32は少なくとも本質的には直円柱の形で構成されている。
【0045】
特に高い燃焼安定性及びその結果得られる内燃機関10の燃焼停止の特に低い危険性を実現するために、図2中には、第1の実施形態による往復ピストン内燃機関として構成された自動車、特に自家用車用の内燃機関が示されている。図2から明らかなように、インジェクタ20の周囲の領域36中の燃焼室天井部14が、図1に示される燃焼室天井部14に対して3mmから6mm下げられていることである。このことにより、領域36中の収容開口部32は、少なくとも本質的に円錐形にかつ燃焼室天井部14の方向へ拡張して構成される。
【0046】
このことは、内壁16の更なる内壁領域38により実現される。更なる内壁領域38は、燃焼室12の方向ですなわち燃焼室12に向かって、第1内壁領域34に直接連接していて、かつ軸方向、従ってインジェクタ20の中心軸28に対して傾斜して伸びている。ここで第1の内壁領域34は、インジェクタ20に直接接続している。それに対して、更なる内壁領域38は、半径方向に、すなわち中心軸28に対して横方向に、インジェクタ20から離されていて、かつインジェクタ20と少なくとも領域的に重なって配置されている。軸方向に対してすなわち中心軸28に対して平行に伸びる方向に関して、更なる内壁領域38は、3mm以上6mm以下の範囲で燃焼室12の方向へ伸び、その際この伸びは更なる内壁領域38の長さeとして示されている。
【0047】
更なる内壁領域38は50°以上90°以下の範囲にある円錐開度αを有している。更に、更なる内壁領域38と噴射流26との間の最少間隔aは、1mm以上4mm以下の範囲である。
【0048】
図2から更に明らかなように、インジェクタ20は外周側面のジャケット面37を有しており、このジャケット面37は少なくとも本質的に直円柱の形で構成されている。少なくとも本質的に直円柱の形で構成された外周側面のこのジャケット面37は、インジェクタ20の半径方向に、第1の内壁領域34と重なって配置されている。その際、第1の内壁領域34は、少なくとも本質的に円柱形の外周側面のジャケット面37の末端で終わる。換言すると、外周側面のジャケット面37と第1の内壁領域34とは、燃焼室12に対して共通の高さで配置されている。このことは、外周側面のジャケット面37と第1の内壁領域34とが、インジェクタ20の軸方向で燃焼室12に対して共通の高さで終わることを意味する。
【0049】
更に図2から同様に明らかなように、噴射流26がいわゆる中空円錐噴射流特徴を有する。このことは、噴射流26が少なくとも本質的に中空円錐の形で構成されていることを意味する。このことは、例えば、内開きインジェクタにおいては、噴射ノズル24の噴射孔22が互いに離され、かつ互いに離れて対向するインジェクタ20のそれぞれの側面に配置されており、従って噴射孔22を介してそれぞれの噴射流部分が、中空円錐が噴射流26として構成されるように噴射されることによって、実現できる。外開きインジェクタにおいては、リング状に一周する開放可能な噴射孔22によって、噴射流26が中空円錐として吹き付けられる。噴霧角γは75°以上90°以下の範囲内が好ましい。従って噴霧角γは、少なくとも本質的には円錐形または中空円錐形の噴射流26の円錐開度である。
【0050】
図2及び特に図3から明らかなように、更なる内壁領域38の円錐開度αは、噴射流26の噴霧角γよりも小さい。このことにより、更なる内壁領域38が噴射流26に対して傾斜し、従って更なる内壁領域38と単独の噴射流22または複数の噴射流22の中空円錐との間のリング状の通路が狭まり、このことにより、初めに単独の噴射孔22から流出する単独の噴射流26または初めに複数の噴射孔22から流出する複数の噴射流26は、燃焼室中の過給運動及び先行噴射の影響から遮断されている。このことにより、雲状混合物は燃焼室天井部14において特に良好に安定化されえ、従って特に多量の着火性混合物が点火プラグ30へ拡散されうる。換言すると、この燃焼室天井部14のこの構成により噴射流26の流体ガイドが成し遂げられており、従って後続噴射の混合物に対する燃焼室12中への燃料の主噴射又は先行噴射の流体影響は僅かである。このことによって、雲状混合物は方向安定的に拡散し、これによって特に高い割合の着火性燃料−空気−混合物が点火プラグ30に達しかつ着火されうる。
【0051】
このことは、非常に僅かな燃料量での複数、すなわち少なくとも2つの連続する燃料噴射を用いる内燃機関10のいわゆる層状運転において特に有利である。このことにより、例えばガソリンエンジンとして構成された内燃機関10は、内燃機関10の高い燃焼能力と作動能力とを同時に実現しながら、特に低排出でかつ非常に僅かな燃料消費で作動されうる。
【0052】
図3は、第2の実施形態での図2による内燃機関10を示している。図3からは、領域Bにおいて特に、燃焼室天井部14の相応する構成による雲状混合物の安定性が明らかである。燃焼室天井部14の相応するデザインにより、スプレー角度とも称される噴霧角γが円錐開度αの形の燃焼室天井部角度よりも大きいため、インジェクタ周囲の先細設計は成し遂げられている。図3では、更なる内壁領域38のいわゆるガイド長さにFLの符号が付けられている。特に、上記インジェクタ吹き付け点のうちの1つとスパーク箇所35との間の間隔に対するガイド長さFLの比は0.2以上0.35以下の範囲にある。
【0053】
燃焼室天井部14の相応する形態により、雲状混合物は特に安定して拡散することができ、従って特にはっきりとした成層運転が実現可能である。この際、燃料の複数回の噴射がインジェクタ20によって引き起こされうる。例えば100〜1000μsの範囲の時間間隔で2〜5回の噴射が実施される。換言すると、連続する2回の噴射の間に100〜1000μsの範囲の休止が行われる。
【0054】
更に、更なる内壁領域38は、中心軸28に対して少なくとも本質的に回転対称的に構成されていて、簡単かつ低コストな方法で製造されうる。更にインジェクタ20は燃焼室12に対して少なくとも本質的に中央に取り付けられている。このことは、燃焼室12及びインジェクタ20のそれぞれの中心軸が少なくとも本質的に互いに一致していることを意味する。燃焼室12、噴射流26及び前記内壁領域38の中心軸が本質的には一致している限り、インジェクタ20の中間軸28を、燃焼室12の中心軸に対して傾けることも考えられる。
図1
図2
図3