【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の観点は、特に自動車及び特に自家用車用の内燃機関に関する。内燃機関は、内燃機関の少なくとも1つの内壁により画定された少なくとも1つの燃焼室、例えばシリンダを含む。更に、内燃機関は、燃焼室に割り当てられた少なくとも1つのインジェクタを含み、このインジェクタは収容開口部中に少なくとも部分的に収容されている。収容開口部は、インジェクタの軸方向に対して少なくとも本質的に平行に伸びる内壁の第1の内壁領域により画定されている。収容開口部は、例えば少なくとも本質的には円形にまたは直円柱として構成されていて、もしくはこの形状で第1の内壁領域により画定されている。
【0010】
インジェクタは、収容開口部を介して燃焼室へと通じる少なくとも1つの噴射孔を有する。従って噴射孔及び収容開口部を介して、内燃機関の燃料、特に液体燃料が、燃焼室中へと導入、特に噴射、特に直接噴射されうる。
【0011】
燃焼室の方向に、インジェクタの軸方向に対して傾斜して伸びる内壁の更なる内壁領域が第1の内壁領域に直接連接している。この更なる内壁領域によって、収容開口部の、燃焼室へと拡張された少なくとも本質的には円錐形の領域は画定されている。更にインジェクタによって、内燃機関の燃料を燃焼室中へ導入するために、少なくとも本質的に円錐形の噴射流が生じうる。
【0012】
本発明により、更なる内壁領域は、更なる内壁領域の長さにわたってインジェクタの半径方向に関してインジェクタから離されていて、かつ少なくとも領域的にインジェクタと重なって配置されている。更に、更なる内壁領域は50°以上90°以下の範囲の円錐開度を有し、その際円錐開度は噴射流の噴霧角より小さい。ここで、噴霧角は少なくとも本質的には円錐形の噴射流の円錐開度を特徴付け、かつ更なる内壁領域の円錐開度と概念的に特に良好に区別することができるように噴霧角と呼ぶ。
【0013】
更なる内壁領域の円錐開度が噴射流の噴霧角よりも小さいことによって、インジェクタにより作動する特に液体燃焼の噴射の結果生じる、噴射された燃料と燃焼室に供給された空気との雲状混合物は、更なる内壁領域、従って燃焼室の燃焼室天井部において安定化されうる。換言すると、更なる内壁領域のこのような構成によって、燃焼室内でのインジェクタ周囲の先細設計が成し遂げられ、従って雲状混合物は安定化されうる。このことにより、例えば燃焼室に割り当てられた点火プラグにおける雲状混合物の特に有利な及び安定した割り当てまたは供給が実現されえ、従って雲状混合物または燃料と空気とからなる混合物は点火プラグによって非常に良好に着火されえ、かつ安定して燃焼しうる。従って、燃焼室内の燃料−空気−混合物の望ましい燃焼を生じない燃焼停止の危険性を、特に低く抑えることができる。
【0014】
相応して構成された収容開口部故に、特に着火性の燃料−空気−混合物及び特に多量の着火性の燃料−空気−混合物が点火プラグまで達する。これは、この場合に特に雲状混合物が特に有利に燃焼室内で方向安定的に拡散しうるからである。
【0015】
このようにして成し遂げられた高い燃焼安定性は、インジェクタを用いて実施可能である内燃機関のいわゆる層状運転にとって特に有利である。このような層状運転は、特にガソリンエンジンとして構成された内燃機関において非常に低燃費かつ低排出の作動を可能にするが、燃料−空気−混合物の安定的燃焼を実現するためには一定の要求がある。この要求は、本発明による内燃機関により特に良好に満たされうる。
【0016】
層状運転において、燃料は、インジェクタによって点火上死点(ZOT)の直前に例えば2又は3回、時間的に非常に短時間に連続噴射することで、燃焼室中へ導入される。従来によれば、後続噴射は、先行噴射の混入特性において誘導された流体故に、先行噴射による影響を受け、着火性混合物の点火プラグへの供給が減少する。このことは、特に低排出値にとって有利である第2及び第3の少ない噴射量の場合に、引火安定性及び燃焼安定性に悪影響を与えうる。
【0017】
この問題は、本発明による内燃機関においては少なくとも減少している。主噴射に比べてより僅かな燃料噴射量での後続噴射の燃料−空気−混合物に対する主噴射(先行噴射)の流体影響は特に僅かであり、従って雲状混合物は方向安定的に拡散されている。このことにより、本発明の内燃機関を用いて特に有利なスプレーガイド式燃焼法が提示されえ、この方法においては、極僅かなミスファイア確率での高い燃焼安定性が、直接噴射及び外開き又は内開きインジェクタを用いるガソリンエンジンの層状運転において、特に僅かな排出を提示するための噴射時間と結びついて実現可能である。
【0018】
本発明の特に有利な更なる形態において、更なる内壁領域が、3mm以上6mm以下の範囲内の長さにわたってインジェクタの軸方向に対して伸びている。このことにより、特に高い燃焼安定性、従って僅かなミスファイア確率をもたらす特に有利な流体条件が実現可能である。
【0019】
第1の内壁領域が少なくとも間接的にインジェクタに接触する場合は、特に有利であることが判明した。従って、インジェクタは、特に収容開口部中へ限定的に収容されかつ保持されていて、かつ高い噴射圧でも内壁に関して不所望に移動しえない。
【0020】
更なる実施形態は、更なる内壁領域と燃焼室中へ燃料を噴射する際にインジェクタによって生じうる噴射流との間の最少間隔が、1mm以上4mm以下の範囲内であることにより特徴付けられている。このことにより噴射流及び相当する燃料−空気−混合物は、その拡散特性において安定化され、このことにより特に高い燃焼安定性と低いミスファイア確率がもたらされる。
【0021】
本発明の更なる形態において、内燃機関はガソリンエンジンとして構成されている。特に、ガソリンエンジンにおいては、多量の着火性混合物を点火プラグへ導くことができるために、次いで効率の良い低排出の作動を実現し並びに燃焼停止の危険性を低く抑えることができるために、雲状混合物の安定化が重要である。
【0022】
本発明の更なる形態において、インジェクタによって、内燃機関の層状運転及び/又は均質運転が実施可能である。このことにより、排出も内燃機関の燃費も特に低く抑えることができる。
【0023】
少なくとも本質的に直円柱の形で構成されているインジェクタの外周側面のジャケット面と第1の内壁領域とが燃焼室に対して共通の高さで終わっている場合が特に有利であることが判明した。換言すると、第1の内壁領域とインジェクタの外周側面のジャケット面とが燃焼室に対して共通の高さまで伸びている。このことにより特に有利な周囲環境条件が成し遂げられ、従って燃料の噴射から得られる雲状混合物は非常に良好に安定化されうる。
【0024】
本発明の更なる実施形態において、インジェクタは外開き又は内開きインジェクタとして構成されている。このことにより特に高い燃焼安定性が実現可能である。
【0025】
最後に、更なる内壁領域がインジェクタの中心軸に対して回転対称的に構成されている場合が特に有利であることが判明した。従ってこの更なる内壁領域は、時間効率が良く、かつ低コストで製造されうる。
【0026】
有利には、このインジェクタは、少なくとも本質的に燃焼室の中央に配置されている。換言すると、インジェクタの中心軸と燃焼室の中心軸とは重なる。このことは、これらの中心軸が一致していることを意味する。
【0027】
本発明の第2の観点は、内燃機関、特に本発明による内燃機関の作動方法に関する。内燃機関は、内燃機関の少なくとも1つの内壁により画定された少なくとも1つの燃焼室、及び燃焼室に割り当てられた少なくとも1つのインジェクタを有し、このインジェクタは、インジェクタの軸方向に対して少なくとも本質的に平行に伸びる内壁の内壁領域により画定されている収容開口部中に、少なくとも部分的に収容されている。
【0028】
インジェクタは少なくとも1つの噴射孔を有し、この噴射孔は収容開口部を介して燃焼室中へ通じており、その際燃焼室の方向には、第1の内壁領域に直接、軸方向に対して傾斜して伸びる内壁の更なる内壁領域が連接している。更なる内壁領域によって、収容開口部の、燃焼室へと拡張された少なくとも本質的には円錐形の領域は画定されている。
【0029】
この方法の範囲において、インジェクタによって、内燃機関の燃料を燃焼室中へ導入するために、少なくとも本質的に円錐形の噴射流が生じる。特に高い安定性を実現するために、本発明により、更なる内壁領域は、その更なる内壁領域の長さにわたってインジェクタの半径方向に関してインジェクタから離されかつ少なくとも領域的にインジェクタと重なって配置されていて、50°以上90°以下の範囲の円錐開度を有し、その際円錐開度は噴射流の噴霧角より小さく、その際内燃機関はインジェクタによって層状運転で作動される、ことができる。本発明の第1の観点の有利な実施形態は、本発明の第2の形態の有利な実施形態として見ることができ、またその逆もありうる。
【0030】
層状燃焼法とも呼ばれる層状運転において、高い過給運動が生じうる。通常、この高い過給運動は、燃焼安定性に不利に作用しうる。燃焼室の相応する構成により、この過給運動は今や低く抑えられるので、従って燃料と空気からなる雲状混合物は燃焼室内で安定に拡散し、かつ例えば点火プラグへ誘導されえ、次いでこの点火プラグによって雲状混合物は着火されうる。
【0031】
この内燃機関が、内燃機関に圧縮空気を供給するために少なくとも1つのエグゾーストターボチャージャーを有するいわゆる過給された内燃機関である場合、内燃機関のこの過給は通常非常に高い過給運動をもたらす。しかし燃焼室の構成に基づいて、点火プラグのところでの着火性混合物の形成が保証されうるため、特に頑強な層状運転が実現されえる。
【0032】
更に、例えば150bar以上300bar以下の範囲の特に高い燃料圧力で内燃機関を作動することが可能であり、従って特に効率の良い、従って低燃費での作動が実現可能である。
【0033】
有利には、少なくとも本質的に円錐形の収容開口部の底面直径は、インジェクタにより生じうる噴射流を妨げずに拡散しうるように選択されている。換言すると、第2の内壁領域は噴射流の拡散及び形成を妨げないことが規定されている。
【0034】
本発明の更なる利点、特徴及び詳細は、有利な実施形態の後述の説明から及び図により明らかである。明細書中上記した特徴及び特徴の組み合わせ、並びに後述の図面の説明で挙げられかつ/又は図中に単独で示された特徴及び特徴の組み合わせは、本発明の範囲を逸脱しない限り、そのつど示された組み合わせだけでなく他の組み合わせも又は単独でも使用可能である。
【0035】
図1は本発明の背景を説明するために用いられる。