特許第6025883号(P6025883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025883
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】誤り率測定装置及び誤り率測定方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/02 20060101AFI20161107BHJP
   H04L 1/00 20060101ALI20161107BHJP
   H04L 25/49 20060101ALI20161107BHJP
   H04B 17/15 20150101ALI20161107BHJP
   H04B 17/29 20150101ALI20161107BHJP
【FI】
   H04L25/02 302B
   H04L1/00 C
   H04L25/49 L
   H04B17/15
   H04B17/29
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-22238(P2015-22238)
(22)【出願日】2015年2月6日
(65)【公開番号】特開2016-146535(P2016-146535A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2015年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 岳人
(72)【発明者】
【氏名】藤沼 一弘
【審査官】 阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−119331(JP,A)
【文献】 特開平09−186726(JP,A)
【文献】 特開平04−277931(JP,A)
【文献】 特開平08−331183(JP,A)
【文献】 特開昭58−097986(JP,A)
【文献】 特開2005−328110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/02
H04B 17/15
H04B 17/29
H04L 1/00
H04L 25/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験デバイスに所定パターンのテスト信号を入力し、このテスト信号の入力に伴って前記被試験デバイスから受信した入力データのビット誤り率を被試験デバイスに入力したテスト信号との比較によって測定する誤り率測定装置において、
全体の振幅電圧範囲(H)が電圧レベルの高い方から高電圧範囲(H1)、中電圧範囲(H2)、低電圧範囲(H3)に分けられた3つのアイパターン開口部による連続した範囲からなる4PAM信号を前記入力データとし、該入力データを所定のサンプリング周期でデジタル値に変換するA/D変換部(4)と、
データ閾値電圧(Vth)を所定ステップで可変する閾値電圧可変部(3)と、
前記閾値電圧可変部にて前記データ閾値電圧を可変したときに、前記A/D変換部からのデジタル値が飽和する上限のデータ閾値電圧を前記高電圧範囲の上限電圧として検出し、前記A/D変換部からのデジタル値が飽和する下限のデータ閾値電圧を前記低電圧範囲の下限電圧として検出する飽和電圧検出手段(6b)と、
前記飽和電圧検出手段が検出した前記高電圧範囲の上限電圧と前記低電圧範囲の下限電圧を用いて前記中電圧範囲の中心電圧を算出し、この算出した中電圧範囲の中心電圧と前記飽和電圧検出手段が検出した前記高電圧範囲の上限電圧又は前記低電圧範囲の下限電圧を用いて前記高電圧範囲の中心電圧又は前記低電圧範囲の中心電圧を算出する中心電圧算出手段(6c)とを備えたことを特徴とする誤り率測定装置。
【請求項2】
前記高電圧範囲(H1)、前記中電圧範囲(H2)、前記低電圧範囲(H3)の3つの電圧範囲から何れか1つの振幅電圧範囲を選択操作する操作部(2)と、
前記中心電圧算出手段の算出結果に基づき、前記操作部にて選択された振幅電圧範囲の中心電圧を表示する表示部(5)とを備えたことを特徴とする請求項1記載の誤り率測定装置。
【請求項3】
前記閾値電圧可変部(3)は、所定の電圧範囲において第1のステップでデータ閾値電圧(Vth)を可変し、前記A/D変換部(4)のデジタル値が飽和したときに、そのデジタル値が飽和する点を中心とする電圧範囲において前記第1のステップよりも細かい第2のステップで前記データ閾値電圧を可変することを特徴とする請求項1又は2記載の誤り率測定装置。
【請求項4】
被試験デバイスに所定パターンのテスト信号を入力し、このテスト信号の入力に伴って前記被試験デバイスから受信した入力データのビット誤り率を被試験デバイスに入力したテスト信号との比較によって測定する誤り率測定方法において、
全体の振幅電圧範囲(H)が電圧レベルの高い方から高電圧範囲(H1)、中電圧範囲(H2)、低電圧範囲(H3)に分けられた3つのアイパターン開口部による連続した範囲からなる4PAM信号を前記入力データとし、該入力データを所定のサンプリング周期でデジタル値に変換するステップと、
データ閾値電圧(Vth)を所定ステップで可変するステップと、
前記データ閾値電圧を可変したときに、前記デジタル値が飽和する上限のデータ閾値電圧を前記高電圧範囲の上限電圧として検出し、前記デジタル値が飽和する下限のデータ閾値電圧を前記低電圧範囲の下限電圧として検出するステップと、
前記高電圧範囲の上限電圧と前記低電圧範囲の下限電圧を用いて前記中電圧範囲の中心電圧を算出し、この算出した中電圧範囲の中心電圧と前記高電圧範囲の上限電圧又は前記低電圧範囲の下限電圧を用いて前記高電圧範囲の中心電圧又は前記低電圧範囲の中心電圧を算出するステップとを含むことを特徴とする誤り率測定方法。
【請求項5】
前記高電圧範囲(H1)、前記中電圧範囲(H2)、前記低電圧範囲(H3)の3つの電圧範囲から何れか1つの振幅電圧範囲を選択操作するステップと、
前記算出の結果に基づき、前記選択された振幅電圧範囲の中心電圧を表示するステップとを含むことを特徴とする請求項4記載の誤り率測定方法。
【請求項6】
所定の電圧範囲において第1のステップで前記データ閾値電圧(Vth)を可変し、前記デジタル値が飽和したときに、そのデジタル値が飽和する点を中心とする電圧範囲において前記第1のステップよりも細かい第2のステップで前記データ閾値電圧を可変するステップを含むことを特徴とする請求項4又は5記載の誤り率測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被試験デバイス(DUT:Device Under Test )に所定パターンのテスト信号を入力し、このテスト信号の入力に伴って被試験デバイスから受信した入力データのビット誤り率(Bit Error Rate)を被試験デバイスに入力したテスト信号との比較によって測定する誤り率測定装置及び誤り率測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種のディジタル通信装置は、利用者数の増加やマルチメディア通信の普及に伴い、より大容量の伝送能力が求められている。また、これらのディジタル通信装置におけるディジタル信号の品質評価の指標の一つとしては、受信データのうち符号誤りが発生した数と受信データの総数との比較として定義されるビット誤り率が知られている。
【0003】
そして、上述したディジタル通信装置において、試験対象となる光電変換部品等の被試験デバイスに対して固定データを含むテスト信号を送信し、被試験デバイスを介して入力される被測定信号と基準となる参照信号とをビット単位で比較して、被測定信号の誤り率を測定する誤り率測定装置として、例えば下記特許文献1に開示される符号誤り率測定装置が知られている。
【0004】
特許文献1に開示される符号誤り率測定装置は、クロック位相を所定範囲内で自動設定するクロック位相検出部と、2値化のためのデータ閾値電圧を所定範囲内で自動設定するデータ閾値電圧検出部と、クロック位相検出部により設定されたクロック位相およびデータ閾値電圧検出部により設定されたデータ閾値電圧に基づき、クロック位相およびデータ閾値の安定状態を検出する位相閾値安定状態検出部と、位相閾値安定状態検出部により設定された位相閾値に基づき、符号誤り率を測定する符号誤り率測定部と、符号誤り率測定部の測定結果に基づきアイパターン開口部におけるクロック位相およびデータ閾値電圧の最適設定値を検出する同期確立検出部を設け、クロック位相とデータ閾値電圧を高速かつ高精度でアイパターンの開口部中心に自動設定している。
【0005】
ところで、情報信号の振幅をパルス信号の系列で符号化したパルス振幅変調信号として、振幅をシンボルごとに4種類に分けた4PAM信号が知られている。4PAM信号は、図4に示すように、4つの異なる振幅を持ち、全体の振幅電圧範囲Hが電圧レベルの高い方から高電圧範囲H1、中電圧範囲H2、低電圧範囲H3に分けられ、3つのアイパターン開口部による連続した範囲からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−328110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示される従来の符号誤り率測定装置は、上述した4PAM信号を入力データとして想定したものではなかった。すなわち、上述した特許文献1に開示されるアイパターンの開口部中心を設定する技術を、4PAM信号の振幅電圧範囲Hにおける高電圧範囲H1、中電圧範囲H2、低電圧範囲H3のそれぞれに単純に適用だけでは、最適な誤り測定ポイントとして、中電圧範囲H2の中心電圧にデータ閾値電圧を設定することはできても、高電圧範囲H1や低電圧範囲H3の中心電圧にデータ閾値電圧を設定することはできなかった。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、最適な誤り測定ポイントとして、4PAM信号の振幅電圧範囲における中電圧範囲だけでなく高電圧範囲や低電圧範囲の中心電圧にデータ閾値電圧を設定することができる誤り率測定装置および誤り率測定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された誤り率測定装置は、被試験デバイスに所定パターンのテスト信号を入力し、このテスト信号の入力に伴って前記被試験デバイスから受信した入力データのビット誤り率を被試験デバイスに入力したテスト信号との比較によって測定する誤り率測定装置において、
全体の振幅電圧範囲Hが電圧レベルの高い方から高電圧範囲H1、中電圧範囲H2、低電圧範囲H3に分けられた3つのアイパターン開口部による連続した範囲からなる4PAM信号を前記入力データとし、該入力データを所定のサンプリング周期でデジタル値に変換するA/D変換部4と、
データ閾値電圧Vthを所定ステップで可変する閾値電圧可変部3と、
前記閾値電圧可変部にて前記データ閾値電圧を可変したときに、前記A/D変換部からのデジタル値が飽和する上限のデータ閾値電圧を前記高電圧範囲の上限電圧として検出し、前記A/D変換部からのデジタル値が飽和する下限のデータ閾値電圧を前記低電圧範囲の下限電圧として検出する飽和電圧検出手段6bと、
前記飽和電圧検出手段が検出した前記高電圧範囲の上限電圧と前記低電圧範囲の下限電圧を用いて前記中電圧範囲の中心電圧を算出し、この算出した中電圧範囲の中心電圧と前記飽和電圧検出手段が検出した前記高電圧範囲の上限電圧又は前記低電圧範囲の下限電圧を用いて前記高電圧範囲の中心電圧又は前記低電圧範囲の中心電圧を算出する中心電圧算出手段6cとを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載された誤り率測定装置は、請求項1記載の誤り率測定装置において、
前記高電圧範囲H1、前記中電圧範囲H2、前記低電圧範囲H3の3つの電圧範囲から何れか1つの振幅電圧範囲を選択操作する操作部2と、
前記中心電圧算出手段の算出結果に基づき、前記操作部にて選択された振幅電圧範囲の中心電圧を表示する表示部5とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載された誤り率測定装置は、請求項1又は2記載の誤り率測定装置において、
前記閾値電圧可変部3は、所定の電圧範囲において第1のステップでデータ閾値電圧Vthを可変し、前記A/D変換部4のデジタル値が飽和したときに、そのデジタル値が飽和する点を中心とする電圧範囲において前記第1のステップよりも細かい第2のステップで前記データ閾値電圧を可変することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載された誤り率測定方法は、被試験デバイスに所定パターンのテスト信号を入力し、このテスト信号の入力に伴って前記被試験デバイスから受信した入力データのビット誤り率を被試験デバイスに入力したテスト信号との比較によって測定する誤り率測定方法において、
全体の振幅電圧範囲Hが電圧レベルの高い方から高電圧範囲H1、中電圧範囲H2、低電圧範囲H3に分けられた3つのアイパターン開口部による連続した範囲からなる4PAM信号を前記入力データとし、該入力データを所定のサンプリング周期でデジタル値に変換するステップと、
データ閾値電圧Vthを所定ステップで可変するステップと、
前記データ閾値電圧を可変したときに、前記デジタル値が飽和する上限のデータ閾値電圧を前記高電圧範囲の上限電圧として検出し、前記デジタル値が飽和する下限のデータ閾値電圧を前記低電圧範囲の下限電圧として検出するステップと、
前記高電圧範囲の上限電圧と前記低電圧範囲の下限電圧を用いて前記中電圧範囲の中心電圧を算出し、この算出した中電圧範囲の中心電圧と前記高電圧範囲の上限電圧又は前記低電圧範囲の下限電圧を用いて前記高電圧範囲の中心電圧又は前記低電圧範囲の中心電圧を算出するステップとを含むことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載された誤り率測定方法は、請求項4記載の誤り率測定方法において、
前記高電圧範囲H1、前記中電圧範囲H2、前記低電圧範囲H3の3つの電圧範囲から何れか1つの振幅電圧範囲を選択操作するステップと、
前記算出の結果に基づき、前記選択された振幅電圧範囲の中心電圧を表示するステップとを含むことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載された誤り率測定方法は、請求項4又は5記載の誤り率測定方法において、
所定の電圧範囲において第1のステップで前記データ閾値電圧Vthを可変し、前記デジタル値が飽和したときに、そのデジタル値が飽和する点を中心とする電圧範囲において前記第1のステップよりも細かい第2のステップで前記データ閾値電圧を可変するステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、4PAM信号の全体の振幅電圧範囲における各振幅電圧範囲(高電圧範囲、中電圧範囲、低電圧範囲)の中心電圧を算出し、選択された振幅電圧範囲における中心電圧にデータ閾値電圧を最適な測定ポイントとして設定することができる。
【0016】
また、高電圧範囲の上限電圧や低電圧範囲の下限電圧を検出する場合には、最初にデータ閾値電圧を荒い第1のステップで可変し、AD値が飽和すると、AD値が飽和する点を中心として第1のステップよりも細かい第2のステップでデータ閾値電圧を可変してAD値が飽和する上限又は下限のデータ閾値電圧を検出するので、効率良く高電圧範囲の上限電圧や低電圧範囲の下限電圧を検出することができる。
【0017】
さらに、操作部にて選択された振幅電圧範囲における中心電圧を表示部に表示するので、ユーザは設定した振幅電圧範囲における中心電圧を視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る誤り率測定装置のブロック構成図である。
図2】本発明に係る誤り率測定装置における設定画面の表示例を示す図である。
図3】本発明に係る誤り率測定装置におけるデータ閾値電圧とAD値(10進数)との関係を示す図である。
図4】4PAM信号のアイパターン開口部の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面の図1〜4を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
本発明に係る誤り率測定装置及び誤り率測定方法は、被試験デバイス(DUT)に所定パターンのテスト信号を入力し、このテスト信号の入力に伴って被試験デバイスから受信した入力データのビット誤り率を被試験デバイスに入力したテスト信号との比較によって測定するものである。
【0021】
そして、本実施の形態に係る誤り率測定装置及び誤り率測定方法は、入力データとしての4PAM信号の振幅電圧範囲Hにおける高電圧範囲H1、中電圧範囲H2、低電圧範囲H3から選択された振幅電圧範囲の中心電圧を算出し、最適な誤り測定ポイントとして、算出した中心電圧にデータ閾値電圧を設定する機能を有する。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態の誤り率測定装置1は、上述した4PAM信号の各振幅電圧範囲の中心電圧を効率的に算出するための構成として、操作部2、閾値電圧可変部3、A/D変換部4、表示部5、制御部6を備えて概略構成される。
【0023】
操作部2は、例えば装置本体に設けられる各種キー、スイッチ、ボタンや表示部5の表示画面上のソフトキーなどで構成され、誤り率測定の開始・終了など誤り率測定に関わる各種設定を行う際にユーザにより操作される。
【0024】
特に、本例における操作部2は、4PAM信号における高電圧範囲H1、中電圧範囲H2、低電圧範囲H3から自動検索対象とする振幅電圧範囲を設定する際に操作される。具体的には、図2の設定画面11に表示される高電圧範囲H1、中電圧範囲H2、低電圧範囲H3の3つの電圧範囲から何れか1つの振幅電圧範囲を選択操作すると、選択操作された振幅電圧範囲が設定される。図2の例では、高電圧範囲H1が設定された状態を示している。
【0025】
閾値電圧可変部3は、高電圧範囲H1の上限電圧V1又は低電圧範囲H3の下限電圧V4を検出する際に、閾値電圧制御手段6aからの制御信号により、所定の電圧範囲においてデータ閾値電圧Vthを所定ステップで可変する。
【0026】
さらに説明すると、操作部2にて高電圧範囲H1が設定された場合は、所定の電圧範囲(例えば−0.6〜−0V)において第1のステップ(例えば10mV)でデータ閾値電圧Vthを可変し、A/D変換部4のAD値が飽和すると、そのAD値が飽和する点を中心とする電圧範囲(例えば−0.3〜−0.1V)において第1のステップよりも細かい第2のステップ(例えば2mV)でデータ閾値電圧Vthを可変する。
【0027】
また、操作部2にて低電圧範囲H3が設定された場合は、所定の電圧範囲(例えば0〜0.6V)において第1のステップ(例えば10mV)でデータ閾値電圧Vthを可変し、A/D変換部4のAD値が飽和すると、そのAD値が飽和する点を中心とする電圧範囲(例えば0.1〜0.3V)において第1のステップよりも細かい第2のステップ(例えば2mV)でデータ閾値電圧Vthを可変する。
【0028】
A/D変換部4は、入力信号としての4PAM信号を所定のサンプリング周期でAD値(10進数)に変換する。この4PAM信号をA/D変換したAD値は制御部6に入力される。
【0029】
表示部5は、例えば液晶表示器などで構成され、誤り率測定に関わる設定画面や測定結果などを表示する。特に、本例における表示部5は、図2の設定画面11に示すように、高電圧範囲H1、中電圧範囲H2、低電圧範囲H3の3つの選択項目12から1つを選択すると、選択した振幅電圧範囲の中心電圧を算出し、算出した中心電圧の電圧値を算出結果項目13に表示する。図2の例では、高電圧範囲H1の中心電圧Vc1の電圧値が算出結果項目13に表示された状態を示している。
【0030】
制御部6は、入力される4PAM信号の誤り率を測定するため、操作部2、閾値電圧可変部3、A/D変換部4、表示部5を統括制御する。また、制御部6は、操作部2にて設定された振幅電圧範囲の中心電圧を算出するための構成として、閾値電圧制御手段6a、飽和電圧検出手段6b、中心電圧算出手段6cを有する。
【0031】
閾値電圧制御手段6aは、所定の電圧範囲でデータ閾値電圧Vthを所定ステップごとに可変するように閾値電圧可変部3に制御信号を出力する。
【0032】
飽和電圧検出手段6bは、図3に示すように、A/D変換部4からのAD値が飽和する上限のデータ閾値電圧Vthを高電圧範囲H1の上限電圧V1として検出する。また、飽和電圧検出手段6bは、図3に示すように、A/D変換部4からのAD値が飽和する下限のデータ閾値電圧Vthを低電圧範囲H3の下限電圧V4として検出する。
【0033】
中心電圧算出手段6cは、操作部2の操作により設定された振幅電圧範囲(高電圧範囲H1、中電圧範囲H2、低電圧範囲H3の何れかの振幅電圧範囲)における中心電圧を算出する。
【0034】
さらに説明すると、中心電圧算出手段6cは、飽和電圧検出手段6bが検出した高電圧範囲H1の上限電圧V1と低電圧範囲H3の下限電圧V4を用い、(V1+V4)/2の計算式により中電圧範囲H2の中心電圧Vc2を算出する。
【0035】
また、中心電圧算出手段6cは、上記のように算出した中電圧範囲H2の中心電圧Vc2、飽和電圧検出手段6bが検出した高電圧範囲H1の上限電圧V1と低電圧範囲H3の下限電圧V4を用い、(V1+Vc2)/2の計算式により高電圧範囲H1の中心電圧Vc1を算出し、(V4+Vc2)/2の計算式により低電圧範囲H3の中心電圧Vc3を算出する。
【0036】
なお、制御部6は、設定された測定ポイントにおいて、A/D変換部4からの4PAM信号に基づくデータと、被試験デバイスに入力したテスト信号とのビット比較により被試験デバイスから受信した入力データのビット誤り率を算出する。
【0037】
次に、上記のように構成される誤り率測定装置1の動作として、4PAM信号における各振幅電圧範囲H1,H2,H3の中心電圧Vc1,Vc2,Vc3の算出処理について説明する。
【0038】
4PAM信号における各振幅電圧範囲H1,H2,H3の中心電圧Vc1,Vc2,Vc3を算出するにあたっては、図2に示す設定画面11において、選択項目12に表示される高電圧範囲H1、中電圧範囲H2、低電圧範囲H3の中から何れか1つの振幅電圧範囲を選択する。
【0039】
そして、飽和電圧検出手段6bは、振幅電圧範囲が選択されると、A/D変換部4からのAD値が飽和する上限のデータ閾値電圧Vthを高電圧範囲H1の上限電圧V1として検出する。また、A/D変換部4からのAD値が飽和する下限のデータ閾値電圧Vthを低電圧範囲H3の下限電圧V4として検出する。
【0040】
また、中心電圧算出手段6cは、飽和電圧検出手段6bが検出した高電圧範囲H1の上限電圧V1と低電圧範囲H3の下限電圧V4を用い、(V1+V4)/2の計算式により中電圧範囲H2の中心電圧Vc2を算出する。
【0041】
さらに、中心電圧算出手段6cは、(V1+Vc2)/2の計算式から高電圧範囲H1の中心電圧Vc1を算出し、中心電圧算出手段6cは、(V4+Vc2)/2の計算式から低電圧範囲H3の中心電圧Vc3を算出する。
【0042】
そして、操作部2の操作により選択された振幅電圧範囲が高電圧範囲H1であれば、中心電圧算出手段6cが算出した中心電圧Vc1の電圧値を、図2に示す設定画面11の算出結果項目13に表示し、この中心電圧Vc1の電圧値にデータ閾値電圧Vthを設定する。
【0043】
また、操作部2の操作により選択された振幅電圧範囲が中電圧範囲H2であれば、中心電圧算出手段6cが算出した中心電圧Vc2の電圧値を、図2に示す設定画面11の算出結果項目13に表示し、この中心電圧Vc2の電圧値にデータ閾値電圧Vthを設定する。
【0044】
さらに、操作部2の操作により選択された振幅電圧範囲が低電圧範囲H3であれば、中心電圧算出手段6cが算出した中心電圧Vc3の電圧値を、図2に示す設定画面11の算出結果項目13に表示し、この中心電圧Vc3の電圧値にデータ閾値電圧Vthを設定する。
【0045】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、4PAM信号の全体の振幅電圧範囲Hにおける各振幅電圧範囲(高電圧範囲H1、中電圧範囲H2、低電圧範囲H3)の中心電圧を算出することができ、選択された振幅電圧範囲における中心電圧の電圧値にデータ閾値電圧Vthを最適な測定ポイントとして設定することができる。
【0046】
また、高電圧範囲H1の上限電圧V1や低電圧範囲H3の下限電圧V4を検出する場合には、最初にデータ閾値電圧Vthを荒い第1のステップで可変し、AD値が飽和すると、AD値が飽和する点を中心として第1のステップよりも細かい第2のステップでデータ閾値電圧Vthを可変してAD値が飽和する上限又は下限のデータ閾値電圧Vthを検出する。これにより、効率良く高電圧範囲H1の上限電圧V1や低電圧範囲H3の下限電圧V4を検出することができる。
【0047】
さらに、操作部2の操作により選択された振幅電圧範囲における中心電圧の電圧値を表示部5の算出結果項目13に表示するので、ユーザは設定した振幅電圧範囲における中心電圧を表示により視認することができる。
【0048】
以上、本発明に係る誤り率測定装置及び誤り率測定方法の最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
1 誤り率測定装置
2 操作部
3 閾値電圧可変部
4 A/D変換部
5 表示部
6 制御部
6a 閾値電圧制御手段
6b 中心電圧算出手段
6c 誤り率算出手段
11 設定画面
12 選択項目
13 算出結果項目
H 4PAM信号の全体の振幅電圧範囲
H1 高電圧範囲
H2 中電圧範囲
H3 低電圧範囲
V1 高電圧範囲の上限電圧
V2 中電圧範囲の上限電圧
V3 中電圧範囲の下限電圧
V4 低電圧範囲の下限電圧
Vc1 高電圧範囲の中心電圧
Vc2 中電圧範囲の中心電圧
Vc3 低電圧範囲の中心電圧
図1
図2
図3
図4