(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025925
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】プレスフィット端子及びこれを用いたコネクタ並びにプレスフィット端子連続体、プレスフィット端子連続体巻き付け体
(51)【国際特許分類】
H01R 12/58 20110101AFI20161107BHJP
【FI】
H01R12/58
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-128433(P2015-128433)
(22)【出願日】2015年6月26日
(62)【分割の表示】特願2013-550253(P2013-550253)の分割
【原出願日】2012年12月13日
(65)【公開番号】特開2015-165519(P2015-165519A)
(43)【公開日】2015年9月17日
【審査請求日】2015年11月4日
(31)【優先権主張番号】特願2011-281531(P2011-281531)
(32)【優先日】2011年12月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000039
【氏名又は名称】特許業務法人アイ・ピー・ウィン
(72)【発明者】
【氏名】内田 佳秀
(72)【発明者】
【氏名】日名川 武
【審査官】
竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−259502(JP,A)
【文献】
特開2005−222821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長さ及び所定厚さを有する線材からなるプレスフィット端子であって、
前記線材には、一端に基板に挿入される先端部と、他端に相手方端子と接続される接続部と、前記線材の前記先端部側に前記基板に圧入されるプレスフィット部が形成され、
前記プレスフィット部の前記接続部側に肩部が形成され、
前記肩部には、前記線材の所定厚さより凹んだ凹部と、前記凹部に隣接した凸状の凸部と、が形成され、
前記凸部は、前記線材の軸線方向に沿って形成されていることを特徴とするプレスフィット端子。
【請求項2】
前記肩部は、治具で押圧可能な大きさで形成された肩部端部が前記プレスフィット部の前記接続部側に隣接して設けられ、前記肩部端部の幅より、前記プレスフィット部と最も隣接する箇所の幅が狭くなるように形成され、
前記プレスフィット部と最も隣接する箇所から前記肩部端部に向けて広がるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプレスフィット端子。
【請求項3】
前記肩部と前記プレスフィット部との間には、前記肩部と前記プレスフィット部が繋がれる繋ぎ部が前記肩部及び前記プレスフィット部と一体に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレスフィット端子。
【請求項4】
前記肩部と前記プレスフィット部との間には、前記肩部と前記プレスフィット部が繋がれる繋ぎ部が前記肩部及び前記プレスフィット部と一体に形成され、
前記凹部は、前記肩部から前記繋ぎ部に亘って形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプレスフィット端子。
【請求項5】
前記肩部及び前記プレスフィット部は、前記線材の軸線方向に対して対称に突出して形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレスフィット端子。
【請求項6】
前記プレスフィット部は、中央部分に縦長な孔が形成され、前記線材の厚さと略同じ厚さで前記プレスフィット部の外側側面が形成され、前記孔へ向かうにつれて前記厚さが薄くなるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレスフィット端子。
【請求項7】
前記先端部及び前記接続部には、端部に向かうにつれて細くなるようにテーパーが形成されており、
前記先端部の端部の端面及び前記接続部の端部の端面は、ねじり切られた断面を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のプレスフィット端子。
【請求項8】
絶縁性材料で形成され、複数の開口を有するハウジングを有するコネクタであって、
前記請求項1〜7のいずれかに記載のプレスフィット端子が前記複数の開口に装着されたことを特徴とするコネクタ。
【請求項9】
前記請求項1〜7のいずれかに記載のプレスフィット端子が線材に連続して形成されており、
一の前記プレスフィット端子の前記先端部と他の前記プレスフィット端子の前記接続部とが各々連結されていることを特徴とするプレスフィット端子連続体。
【請求項10】
前記請求項9に記載のプレスフィット端子連続体が、円状に巻かれていることを特徴とするプレスフィット端子連続体巻き付け体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板等のスルーホールに圧入される時に治具等で押圧される肩部が形成されたプレスフィット端子及びコネクタ並びにプレスフィット端子連続体、プレスフィット端子連続体巻き付け体に関し、詳しくは、肩部の強度を高め、治具等により押圧されたとき安定して圧入が行える信頼性の高いプレスフィット端子及びコネクタ並びにプレスフィット端子連続体、プレスフィット端子連続体巻き付け体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンタクト端子等を基板等のスルーホールへ接続する場合に、はんだ付けを行わずに弾性力により接続されるプレスフィット部を備えたプレスフィット端子等が普及している。このプレスフィット端子は基板との接続に半田付けを行わないため、基板との接続を容易に行うことができると共に、プレスフィット端子の脱着を繰り返し行うことができる。
【0003】
このようなプレスフィット端子を基板等に接続するときには、冶具等を用いて圧入することにより行われる。この圧入の際にプレスフィット端子に直接冶具等を当てると端子が損傷するおそれがあるため、プレスフィット端子に肩部を設け、この肩部に冶具等を当てることによってプレスフィット端子を基板に圧入するようにされている。
【0004】
また、プレスフィット端子の製造方法としては、圧延した板材をプレス機で打ち抜く方法と、線材を用いて連続して形成する方法とが採用されている。このとき、線材から形成したものを使用すると、線材の製造時の圧延方向がプレスフィット端子の長手方向に沿っているので、板材から形成したものと比べて基板への圧入時により高い押圧力に耐えられるため、プレスフィット端子の損傷を抑制することができるようになる。
【0005】
このような線材からプレスフィット端子を製造したものとして、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。下記特許文献1に記載のプレスフィットピンは、
図11に示すように、電気コンタクト用のワイヤ材料製のプレスフィットピン40であって、前記プレスフィットピンの前記材料から一体品で形成された少なくとも1個の肩部41を具備するものである。
【0006】
下記特許文献1に開示されているプレスフィットピンによれば、圧入工具によって肩部上を容易に支持することができ、プレスフィットピンの先端側を圧入工具によって支持しなくても済むという利点を有し、また、プレスフィットピンの先端側を損傷することがなく、より容易に力を圧入工具からプレスフィットピンに対して縦方向に伝達することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−130564号公報
【特許文献2】特開2009−283363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載のプレスフィットピンは、ワイヤ材料から肩部等が圧延等により一体に形成されている。このように、ワイヤ材料から圧延等により形成された肩部は、ワイヤ材料の部分が横に引き伸ばされているので、肩部が形成される部分の強度が不足し、基板への圧入の際の押圧力により変形や破壊のおそれがあり、信頼性が問題が生じる。また、プレスフィットピンの肩部が形成される部分の強度を確保しようとすると、肩部を大きく形成することができなくなり、肩部の冶具等により押圧される部分の面積が小さくなり、基板への圧入が不安定となるおそれがあり、やはり信頼性の問題が生じる。
【0009】
また、線材で端子を形成することにより、端子が連続して形成された連鎖状の端子を得ることができる。このような発明としては、例えば上記特許文献2に端子連続体の発明が開示されている。しかし、上記特許文献2には、プレスフィット部と肩部が形成された端子連続体は示されていない。一方、上記特許文献1には、連続した状態のプレスフィット端子については示されていない。
【0010】
本発明は、このような従来技術が抱える課題を解決するためになされたもので、プレスフィット端子のプレスフィット部と肩部を隣接して形成することで、肩部の強度を高めるための複数の補強部を形成させて基板への挿入力に耐え得る形状とし、また、肩部と基板面間の距離を短くすることにより、基板穴中心軸上に沿うようにプレスフィット端子を挿入することが可能となり、基板へのダメージ及びコンタクトの破損を抑制し、安定した挿入力及び保持力を得ることができるプレスフィット端子及びこのプレスフィット端子を用いたコネクタ並びにプレスフィット端子連続体、プレスフィット端子連続体巻き付け体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様のプレスフィット端子は、所定長さ及び所定厚さを有する線材からなるプレスフィット端子であって、
前記線材には、一端に基板に挿入される先端部と、他端に相手方端子と接続される接続部と、前記線材の前記先端部側に前記基板に圧入されるプレスフィット部が形成され、
前記プレスフィット部の前記接続部側に肩部が形成され、
前記肩部には、前記線材の所定厚さより凹んだ凹部
と、前記凹部に隣接した凸状の凸部と、が形成され、
前記凸部は、前記線材の軸線方向に沿って形成されていることを特徴とする。
【0013】
第
2の態様のプレスフィット端子は、
第1の態様のプレスフィット端子において、前記肩部は、治具で押圧可能な大きさで形成された肩部端部が前記プレスフィット部の前記接続部側に隣接して設けられ、前記肩部端部の幅より、前記プレスフィット部と最も隣接する箇所の幅が狭くなるように形成され、
前記プレスフィット部と最も隣接する箇所から前記肩部端部に向けて広がるように形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、第
3の態様のプレスフィット端子は、第1又は第
2の態様のプレスフィット端子において、前記肩部と前記プレスフィット部との間には、前記肩部と前記プレスフィット部が繋がれる繋ぎ部が前記肩部及び前記プレスフィット部と一体に形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、第
4の態様のプレスフィット端子は、第1の態様のプレスフィット端子において、前記肩部と前記プレスフィット部との間には、前記肩部と前記プレスフィット部が繋がれる繋ぎ部が前記肩部及び前記プレスフィット部と一体に形成され、
前記凹部は、前記肩部から前記繋ぎ部に亘って形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、第
5の態様のプレスフィット端子は、第1又は第
2の態様のプレスフィット端子において、前記肩部及び前記プレスフィット部は、前記線材の軸線方向に対して対称に突出して形成されていることを特徴とする。
【0017】
また、第
6の態様のプレスフィット端子は、第1又は第
2の態様のプレスフィット端子において、前記プレスフィット部は、中央部分に縦長な孔が形成され、前記線材の厚さと略同じ厚さで前記プレスフィット部の外側側面が形成され、前記孔へ向かうにつれて前記厚さが薄くなるように形成されていることを特徴とする。
【0018】
また、第
7の態様のプレスフィット端子は、第1又は第
2の態様のプレスフィット端子において、前記先端部及び前記接続部には、端部に向かうにつれて細くなるようにテーパーが形成されており、
前記先端部の端部の端面及び前記接続部の端部の端面は、ねじり切られた断面を有することを特徴とする。
【0019】
第
8の態様のコネクタは、絶縁性材料で形成され、複数の開口を有するハウジングを有するコネクタであって、
前記第1〜第
7のいずれかの態様のプレスフィット端子が前記複数の開口に装着されたことを特徴とする。
【0020】
第
9の態様のプレスフィット端子連続体は、前記第1〜第
7のいずれかの態様のプレスフィット端子が線材に連続して形成されており、
一の前記プレスフィット端子の前記先端部と他の前記プレスフィット端子の前記接続部とが各々連結されていることを特徴とする。
【0021】
第
10の態様のプレスフィット端子連続体巻き付け体は、第
9の態様のプレスフィット端子連続体が、円状に巻かれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
第
1の態様のプレスフィット端子によれば、プレスフィット端子に肩部が設けられ、この肩部にプレスフィット端子を基板に圧入させるときの冶具を当てることで、プレスフィット端子を損傷することを抑制することができる。さらにこの肩部はプレスフィット端子と隣接して形成されているので、冶具を押し当てる肩部と圧入される基板面間の距離を短くすることができ、基板穴の中心軸上を沿う様にプレスフィット端子を挿入することが可能となり、基板ダメージ及びコンタクト破損を防ぎ、安定した挿入力・保持力を得ることができる。また、線材で形成することで、板材からプレス加工により形成されるものに比べ、軸線方向の力に強いプレスフィット端子となり、圧入時の押圧力により損傷することが抑制される。
【0023】
第
2の態様のプレスフィット端子によれば、線材の横方向に突出させた肩部が冶具により押圧可能な大きさに形成されているため、治具からの押圧力をプレスフィット端子の肩部が無駄なく受けることができ、基板への挿入を円滑に行うことができる。また、肩部端部がプレスフィット部と隣接して形成されるため、肩部端部と基板面との距離をより近づけることができ、プレスフィット端子を基板に挿入する時に、より精度良く基板穴の中心軸に沿うように真っ直ぐ挿入可能となり、挿入の確実性及び安定性が向上すると共に、基板に対する端子保持力も確保できるようになる。
【0024】
また、肩部の幅は、肩部端部の幅より、プレスフィット部と最も隣接する箇所の幅が狭く形成されているため、冶具で押圧されたとき、冶具の押圧力をプレスフィット端子の軸線に沿って伝えることにより、まっすぐに基板に挿入することができるようになる。
【0025】
第
3の態様のプレスフィット端子によれば、肩部とプレスフィット部との間に繋ぎ部が一体に形成されることで、プレスフィット部と肩部との間の部分を線材にそれぞれ形成するよりも、強度を高めることができ、また、プレスフィット部と肩部とをより隣接して形成し一体化させることができるため、肩部が押圧されたとき肩部とプレスフィット部の間の部分の変形を抑制し、強固にすることができる。また、肩部とプレスフィット部の間に肩部とプレスフィット部より狭めた繋ぎ部を形成することで、プレスフィット部の繋ぎ部側を狭めることができるので、肩部の幅から直接プレスフィット部を形成する場合に比べ、プレスフィット部が十分な弾性力を得ることができるようになる。なお、繋ぎ部の太さは、繋ぎ部の断面積をSとし、線材の断面積Aとしたとき、繋ぎ部の断面積SはA≧S≧0.9Aの範囲で形成されることが好ましい。このようにすることで、繋ぎ部の太さを線材と同じか又は略同じ断面積の太さで形成することができるので、繋ぎ部をより強固に形成することができる。
【0026】
また、第
4の態様のプレスフィット端子によれば、凹部を肩部から繋ぎ部に亘って形成することにより、肩部と繋ぎ部とを繋ぐ部分を強固に形成することができるため、より座屈等を抑制することができる。
【0027】
また、第
5の態様のプレスフィット端子によれば、肩部及びプレスフィット部が対称に形成されているため、治具により肩部を均等な押し圧で押圧でき、また、プレスフィット部も均等に変形することができるので、より座屈等を抑制することができる。
【0028】
また、第
6の態様のプレスフィット端子によれば、大きさや弾性力を線材の限られた材料を最大限に利用した効率のよいプレスフィット部を形成することができるようになる。
【0029】
また、第
7の態様のプレスフィット端子によれば、線材で形成されたプレスフィット端子が、線材の状態から単体に分断されるときプレスフィット端子をねじることで切断するため、プレスフィット端子の先端部の端部及び接続部の端部は、ねじり切られた渦状の断面となり、剪断による切断のようなバリの発生を抑制することができる。
【0030】
第
8の態様のコネクタによれば、第1〜第
7のいずれかの態様のプレスフィット端子の効果を奏するコネクタを得ることができる。
【0031】
第
9の態様のプレスフィット端子連続体によれば、第1〜第
7のいずれかの態様の効果を奏するプレスフィット端子を連続して形成したプレスフィット端子連続体を得ることができる。なお、先端部及び接続部が連結される部分に向かうにつれて細くなるようにテーパーを形成し、連結される部分が最も細くなるように形成することで、プレスフィット端子連続体からプレスフィット端子に分断するためにねじり切る際に、この連結した部分で分断しやすくなると共に、よりバリの発生を抑制することができる。
【0032】
第
10の態様のプレスフィット端子連続体巻き付け体によれば、長尺のプレスフィット端子連続体を巻き付け体とすることで、運搬や保管が容易となり、また、効率よく行うことができるようになる。なお、プレスフィット端子連続体巻き付け体を形成するときに、芯となるロールやボビン等の筒状部材に巻きつけるようにすることもできる。このようにすることでプレスフィット端子連続体巻き付け体の運搬や保管がより容易となり、また、効率よく作業を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図4】
図4Aは実施形態のプレスフィット端子の装着前の状態を示した図であり、
図4Bは装着後の状態を示した図である。
【
図5】
図5Aは実施形態のプレスフィット端子の使用態様の一例を示した斜視図であり、
図5Bは
図5Aの続きを示した斜視図である。
【
図7】
図7Aは実施形態のプレスフィット端子の他の使用態様の一例を示した斜視図であり、
図7Bは
図7Aの続きを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのプレスフィット端子を例示するものであって、本発明をこれに特定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。
【0035】
[実施形態1]
図1〜
図3を参照して、本発明の実施形態に係るプレスフィット端子を説明する。本発明の実施形態1に係るプレスフィット端子(以下、「PF端子」という)10は、長尺の線材11Aに一定の間隔でプレス加工等によりPF端子の形状を施し(
図9A及び
図9B参照)、その後、所定の長さの線材11に分断することで単体のPF端子が形成される。このPF端子10は、線材11の一端に基板に挿入される先端部12と、他端に相手方の端子と接続される接続部13が形成されている。また、線材11の先端部12側には基板に圧入されるプレスフィット部(以下、「PF部」という)14が形成され、このPF部14の上部、すなわち接続部13が形成される側にはPF部14と隣接して肩部16が形成されている。
【0036】
なお、線材11は、ステンレススチール、鉄−ニッケル合金、銅や銅合金等を圧延して引き伸ばし、メッキ加工を施して長尺の線材11A(
図9A及び
図9B参照)を形成したのち、所定の長さに分断したものである。なお、長尺の線材を形成したときにPF端子の形状が連続して形成される(
図9A及び
図9B参照)。そして、PF端子10を線材で形成することで、板材からプレス加工により形成されるものに比べ、軸線方向の力に強いプレスフィット端子となり、圧入時の押圧力により先端部が損傷することが抑制される。また、実施形態のPF端子は、その断面が方形の角を面取りした形状をしているが(
図2A参照)、これに限らず、断面が、円形、楕円形、矩形等の線材を形成できる形状であればよい。以下、PF端子の構造について説明する。
【0037】
先端部12は、PF端子10が基板等のスルーホールに装着される際に、PF端子10を所定のスルーホールに確実に導くための部分である。そのため、先端部12はスルーホールに挿入しやすいようにテーパー12aが設けられ先細になっている。
【0038】
接続部13は、相手方の端子と接続する部分である。そのため、相手方の端子のあわせ任意の形状に形成することができる。実施形態の接続部13は、先端部12と同様に先細になるようにテーパー13aが設けられている。先端部12及び接続部13の形成は、プレス加工によって行われる。
【0039】
なお、先端部12及び接続部13の端部の端面は、渦状の切断面35となっている(
図9E参照)。これは、長尺な線材11Aに連続して形成されたプレスフィット端子を分断するとき、分断される側のプレスフィット端子を線材側のプレスフィット端子に対して回転させ、ねじり切るようにして分断するため、このような渦状に形成されるものである(
図9C及び
図9D参照)。そのため、剪断するときのようなバリの発生を抑制することができる。
【0040】
PF部14は、線材11の先端部12側に形成されており、線材11の軸線に対して横方向に対称に突出して線材11の幅より幅広に形成されている。このPF部14を広がって形成するためにPF部14の中央部分には、PF部14の大きさ応じた孔15が設けられており、この孔15が形成されることで、孔15の分の線材11の体積が横に広がりPF部14が形成されることとなる。このPF部14の形成は後述する肩部と隣接するように複数回のプレス加工によって行われ、また、この孔15が形成されることで、PF部14の弾性変形が可能となる。
【0041】
このPF部14の横への広がりは、挿入される基板に形成されたスルーホールの径により調整することができ、PF部14の広がりは、スルーホールの径より大きくなるようにされる。このようにすることで、PF端子が基板に挿入されたとき、基板のスルーホールから受ける圧力によりPF部が弾性変形され、弾性変形による弾性力によりPF部がスルーホールに固定及び接続される。
【0042】
なお、PF部14を形成する際には、単にPF部14に孔15を形成するだけではなく、線材の厚さと略同じ厚さでPF部の外面を形成し、PF部の孔へ向かうにつれて薄くするように形成することで、孔を大きく形成せずに高い強度のPF部を効率よく形成することができる。
【0043】
次に、肩部16について説明する。肩部16は、PF部14が横方向に突出した方向と同一の方向に線材11の軸線に対して対称に突出して形成されている。この肩部16は、PF端子10を基板に圧入する際に治具等から押圧力を受ける部分であり、上述したPF部14と隣接して形成されている。また、肩部16には治具等で押圧される肩部端部17が設けられ、肩部端部17は、この冶具等で押圧可能な大きさ(面積)で形成されている。また、この肩部16は、PF部14と隣接して形成されているため、従来に比べて、PF部14と肩部とが隣接して形成されることで、冶具に押圧される肩部端部17と基板面との距離がより近くなる。
【0044】
このように、肩部16はPF端子10と隣接して形成されているので、冶具を押し当てる肩部と圧入される基板面間の距離を短くすることができ、基板穴の中心軸上を沿う様にプレスフィット端子を挿入することが可能となり、精度良く基板穴の中心軸に沿うように真っ直ぐ挿入可能となり、挿入の確実性及び安定性が向上すると共に、基板に対する端子保持力も十分に確保できるようになる。
【0045】
また、肩部16の形状は、肩部端部17の幅Lが最も広く、この幅Lを少し延ばし、肩部16のPF部14と最も隣接する箇所が狭められているような略五角形状に形成されている。この肩部16の形成には線材11をプレスして横方向に広げるようにするため、肩部16には、線材11の断面よりも薄く広がる圧延部20と共に、線材11の厚さより凹んだ凹状の凹部36が形成される(
図2、
図3参照)。しかし、圧延部20のみでは肩部16の強度が保てないので、必要な強度を得るために肩部16には第1補強部18及び第2補強部19が一体に形成されている。
【0046】
この第1補強部18は、肩部16の中央部分に線材11の軸線方向に沿って凸状の凸部としてのリブで形成されている。なお、凹部36は、凸部に隣接して形成されている(
図2、
図3参照)。このように肩部16に線材11の軸線方向に沿った第1補強部18が形成されていることで、肩部16の軸線方向にかかる力に対して強化することができる。この第1補強部18は、後述する繋ぎ部22に亘って形成されている(
図2B参照)。また、第2補強部19は、肩部16の横方向に突出した圧延部20の端部となる部分を、この横方向に対して直角方向に延設して形成される。すなわち、断面形状が「T」字状になるように形成されている。このように、第2補強部19が形成されていることにより、肩部自体を強化することができると共に、治具等に押圧される範囲をより広く確保できるようになる。
【0047】
また、圧延部20は、肩部16の形状が狭められる方向に向かうように傾斜20aが形成されている。すなわち、横方向への突出が小さくなり、圧延部20の厚みが増しているようになっている。具体的には、切断位置の異なる
図3Bと
図3Cとを比較すると、
図3Bの横方向への突出している幅W1と
図3Cの同様の部分の幅W2は、W1<W2となっている。また、
図3Bの第1補強部の幅X1と
図3Cの同様の部分の幅X2は、X1>X2となっている。また、
図3Bの第2補強部の幅L1と
図3Cの同様の部分の幅L2は、L1>L2となっている。
【0048】
このとき、第2補強部19は、肩部16の外面21の形状に沿って形成されているため、肩部はより強固に形成されるようになる。すなわち、肩部16の肩部端部17に受けた押圧力をPF端子10の軸線方向に伝えるため、この肩部16の狭まる部分には大きな力が加わり変形しやすくなるが、第1補強部18及び第2補強部19が形成されているため強固となり、破壊や損傷を抑制することができる。
【0049】
また、PF部14と肩部16との間には繋ぎ部22が形成されている。この繋ぎ部22はPF部14と肩部16と共に一体に形成されており、肩部16の狭まる部分に続く肩部16及びPF部14を繋ぐ部分となる。この繋ぎ部22は、繋ぎ部22の断面積が線材11の断面積と同じか又は略同じとなるように形成されることにより、高い強度が得られる。具体的には繋ぎ部の断面積をSとし、線材11の断面積Aとしたとき、繋ぎ部22の断面積SはA≧S≧0.9Aの範囲であることが好ましい。また、繋ぎ部22は、PF部14と肩部16と一体に形成されることにより、別々に形成されるよりも高い強度が得られ、また、PF部14と肩部16をより隣接して形成することができるようになり、肩部16と基板面との距離を近くすることができる。
【0050】
このように、肩部16に第1補強部18及び第2補強部19が形成されることにより、PF端子10の基板への挿入の確実性及び安定性を向上させることができ、また、冶具で押圧されたときに肩部の変形や破損を抑制することができる。さらに、繋ぎ部22には肩部16に形成された第1補強部18が延設されて形成されている。このように、肩部16と繋ぎ部22とを繋ぐ部分に渡って第1補強部18が形成されることで、よい強固に形成することができ、座屈等を抑制することができるようになる。また、肩部とプレスフィット部の間に肩部とプレスフィット部より狭めた繋ぎ部を形成することで、プレスフィット部の繋ぎ部側を狭めることができるので、肩部の幅から直接プレスフィット部を形成する場合に比べ、プレスフィット部が十分な弾性力を得ることができるようになる。
【0051】
なお、PF端子の肩部の形状は、実施形態で説明した略五角形状に限られず、肩部端部に冶具等で押圧される大きさを有し、この肩部端部の幅より、PF部と最も隣接する箇所の幅が狭いような形状であればよく、例えば、三角形状、あるいは、曲線で形成された半円形状や半楕円形状、さらに、肩部端部より突出した部分を有するような、六角形状やひょうたん型の形状等、又はこれらに近似する形状で形成することができる。このような形状であっても、第1補強部や第2補強部等を形成したり、PF部と肩部の間に繋ぎ部を形成したりすることもでき、上述したような発明の効果を奏することができる。
【0052】
また、PF端子10の接続部13側には圧入部23が形成されている。この圧入部23は、ハウジング等に圧入し、抜け止めとする部分である。そのため、圧入部23は使用されるハウジング等に合わせて任意の大きさや形状で形成することができる。
【0053】
次に、
図4を参照して、実施形態のPF端子の基板への装着について説明する。まず、PF端子10を基板29に装着するために、基板29に形成されたスルーホール30に対応するようにPF端子10を配置する(
図4A参照)。そして、PF端子10の先端部12をスルーホール30に合わせ挿入し、スルーホール30にPF部14が当接まで行う(
図4B参照)。なお、PF部14はスルーホール30の径よりも大きく形成されているので、PF部14をスルーホール30に挿入するにはPF部14が変形させるような大きな押圧力を必要とする。そのため、治具24を用いてPF端子10を押圧し挿入をするが、この時、PF端子10に形成された肩部16に治具24を当てて押圧し、PF部14が変形されスルーホール30に圧入される。この圧入を所定の位置になるまで行い、PF部14が変形したことによる弾性力により固定及び接続される(
図4C参照)。なお、
図4では、PF端子10が一本の場合を説明したが、複数のPF端子を複数のスルーホールへ接続することもできる。その場合、PF端子を一本ずつ接続させることもできるし、複数本を一度に行うこともできる。
【0054】
[応用例1]
次に、実施形態のPF端子の使用態様の応用例1として、PF端子10を使用したコネクタ27について説明する。まず、
図5Aに示すように、直線状に形成されたPF端子の中央部分を略直角に屈曲させたPF端子10Bを複数本用意する。用意した複数本のPF端子10Bが装着されるように同様に複数の貫通孔28aが形成された合成樹脂製のハウジング28を用意し、このハウジング28の貫通孔28aに複数本のPF端子10Bを接続部13側か所定のところまで挿入する(
図5B参照)。
【0055】
このとき、PF端子10Bの接続部13側に形成された圧入部23がハウジング28の貫通孔28aに圧入されることで、抜け止めがなされる。このハウジング28への挿入は、一本ずつ行うこともできるし、複数本を同時に行うこともできる。以上で、PF端子10Bを備えたコネクタ27の組み立てが完了する。このようにすることで、実施形態にかかるPF端子を備えたコネクタを形成することができる。なお、PF端子が装着されるハウジングは様々な形状とすることができ、コネクタの使用態様にあわせ選択することができるので、汎用性の高いコネクタを得ることができる。
【0056】
次に、完成したコネクタ27を基板29に接続する。
図6Aに示すように、コネクタ27に装着した複数のPF端子10Bの数に対応する複数のスルーホール30が形成された基板29にコネクタ27を合わせ、それぞれのPF端子10Bの先端部12を各スルーホール30に挿入させる。そして、治具等を用いて、スルーホール30にPF端子10のPF部14を圧入させ、この圧入を所定の位置間で行うことで基板29へのコネクタ27の接続が完了する(
図6B参照)。
【0057】
[応用例2]
また、他のPF端子10の使用態様の応用例2を説明する。応用例2として、まず、複数本の実施形態と同じPF端子10を基板29のスルーホール30に接続させる。この接続は、複数本のPF端子10を基板29に形成された複数のスルーホール30に合わせ配置させる(
図7A参照)。そして、複数のPF端子10を冶具等を用いてスルーホール30に圧入させ接続を行う(
図7B参照)。このとき、応用例2では、PF端子10は直線状のものを使用しているが、屈曲させたものを使用してもよい。また、PF端子10を基板29に接続させた状態をユニット31として流通させることもできる。
【0058】
次に、このPF端子10を基板29に接続させたユニット31に、ハウジング28Aを装着させる(
図8A参照)。このハウジング28Aの装着は、PF端子10の接続部13をハウジング28に形成された貫通孔(不図示)に挿入し、圧入部23を圧入させることで行われる(
図8B参照)。このようにして、PF端子10とハウジング28の装着が行われる。このようにすることで、PF端子を幅広く使用することができる。
【0059】
[実施形態2]
次に、実施形態2として、実施形態1で説明したPF端子10が線材に連続して形成されたプレスフィット端子連続体(以下、PF端子連続体という)32について説明する。なお、共通する構成には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0060】
PF端子連続体32は、
図9A及び
図9Bに示すように、実施形態1のPF端子10が長尺な線材11Aに連続して形成された状態のものであり、上述したような実施形態1のPF端子10を単体に分断する前段階の状態のものである。
【0061】
このとき、PF端子連続体32は、一のPF端子10の先端部12と他のPF端子10の接続部13のそれぞれの端部が連結された一本の線状部材として形成されている。なお、この先端部12と接続部13が連結した部分が連結部25となり、この連結部25は、先端部12と接続部13とに形成されたテーパー12a、13aの部分が連結されることにより、中央部分が最も谷の部分26となっている。また、この最も谷の部分26がPF端子10を個々に分断する際にねじり切られる部分となる。ねじり切るように分断することで、切断面に剪断したときのようなバリの発生を抑制することができる(
図9C〜
図9E参照)。このように実施形態1で説明したPF端子10を形成した1本の線材のPF端子連続体32を形成することで、複数のPF端子10が搬送や運搬、搬入等を行うとき、取り扱いやすくなる。
【0062】
なお、PF端子連続体32は、
図10A及び
図10Bに示すように比較的大きな径の円形に巻回した、PF端子連続体巻き付け体33としたり、また、
図10C及び
図10Dに示すように、PF端子連続体32を芯となるロールやボビン等の筒状部材34に巻き付けたPF端子連続体巻き付け体33Aとすることで、より取り扱いやすくなる。また、このPF端子連続体32を基板やハウジングに連続して圧入するための圧入装置に取り付ける際、このボビン等を圧入装置にセットするようにすることもできる。さらに、このボビン等にPF端子連続体を巻回したPF端子連続体巻き付け体33Aの状態で運搬や販売をすることもできる。
【符号の説明】
【0063】
10、10B:プレスフィット(PF)端子
11:線材
11A:長尺な線材
12:先端部
12a:テーパー
13:接続部
13a:テーパー
14:プレスフィット(PF)部
15:孔
16:肩部
17:肩部端部
18:第1補強部
19:第2補強部
20:圧延部
20a:傾斜
21:外面
22:繋ぎ部
23:圧入部
24:治具
25:連結部
26:谷の部分
27:コネクタ
28、28A:ハウジング
28a:貫通孔
29:基板
30:スルーホール
31:ユニット
32:プレスフィット端子連続体
33、33A:プレスフィット端子連続体巻き付け体
34:筒状部材
35:切断面
36:凹部